説明

配座的に束縛されたポリペプチド配列のコンビナトリアルライブラリー

本発明は、不連続エピトープの近位配置、及び/又は構造支持要素の使用によって、配座エピトープの本質的諸性質を再生することができるという認識、並びに類似の手法を拡張して、受容体のリガンド結合領域、酵素の基質結合領域などのタンパク質の他の3次元構造的又は機能的要素を再生することができるという認識に少なくとも部分的に基づく。本発明は、配座的に束縛されたポリペプチド配列のコンビナトリアルライブラリー、及びその使用に関する。特に、本発明は、配座エピトープのコンビナトリアルライブラリー、及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配座的に束縛されたポリペプチド配列のコンビナトリアルライブラリー、及びその使用に関する。特に、本発明は、配座エピトープのコンビナトリアルライブラリー、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体の結合部位を規定する必要性から、エピトープライブラリーが開発された。すなわち、ParmleyおよびSmith(非特許文献1)は、バクテリオファージ発現ベクターを開発し、それを使用して、短鎖ペプチド配列をその表面に表示するバクテリオファージの大規模なコレクションを構築することができた。次いで、例えば、非特許文献1(上掲)、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5に記載のように、外来エピトープを表示するファージをバイオパニングによって精製することができた。続いて、この技術を拡張して、エピトープライブラリーのバイオパニングによって抗体に対するペプチドリガンドを特定した。エピトープライブラリーは、例えば、ワクチン開発やエピトープマッピングに使用することができた(非特許文献6)。
【0003】
エピトープライブラリーのバイオパニングの公知手法によって、天然タンパク質配列内には存在しないが、天然線状エピトープを模倣する、短鎖(通常、最高約6個のアミノ酸)線状エピトープ配列、又はペプチド配列を特定した。しかし、線状エピトープは、不連続又は配座エピトープの断片であり、線状エピトープがその一部である配座エピトープよりも機能的能力が低い。したがって、配座エピトープを表示することが望ましく、又は構造支持要素の近接若しくは存在のために配座をとる、若しくは配座に近似する、不連続エピトープを近位に配置することによって、配座エピトープの本質的な諸性質を模倣することが望ましい。かかる配座エピトープライブラリーは、すべての配座エピトープの物理的に選択可能なディスプレイを含むことができ、すべての配座エピトープに対する抗体の選択に使用することができ、多数の更なる利点及び用途(utilities)を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Parmley and Smith, Gene 73:305 318(1988)
【非特許文献2】Cwirla, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378 6382(1990)
【非特許文献3】Scott & Smith, Science 249:386 390(1990)
【非特許文献4】Christian, et al., J. Mol. Biol. 227:711 718(1992)
【非特許文献5】Smith & Scott, Methods in Enzymology 217:228 257(1993)
【非特許文献6】Scott, J.K., Trends in Biochem. Sci. 17:241 245(1992)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、不連続エピトープの近位配置、及び/又は構造支持要素の使用によって、配座エピトープの本質的諸性質を再生することができるという認識、並びに類似の手法を拡張して、受容体のリガンド結合領域、酵素の基質結合領域などのタンパク質の他の3次元構造的又は機能的要素を再生することができるという認識に少なくとも部分的に基づく。
【0006】
したがって、一態様においては、本発明は、1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又はかかる断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、集合体の少なくとも一部が、配座的に束縛されたポリペプチド標的を形成し、断片の少なくとも一部が抗体断片以外である、物理的に選択可能なディスプレイに関する。
【0007】
別の一態様においては、本発明は、
(a)1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又はかかる断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、かかる集合体の少なくとも一部が、配座的に束縛されたポリペプチド標的を形成し、断片の少なくとも一部が抗体断片以外である、物理的に選択可能なディスプレイを用意すること、
(b)互いに結合親和性を有する配座的に束縛されたポリペプチド標的と結合相手候補が標的−結合相手コンプレックスを形成する条件下で、ディスプレイを結合相手候補のライブラリーと接触させること、及び
(c)形成された標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部を検出すること
を含む、スクリーニング方法に関する。
【0008】
一実施形態においては、方法は、(d)検出された標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列を特定する追加のステップを含み得る。
【0009】
別の一実施形態においては、検出されたすべての標的−結合相手コンプレックスの形成に関与する標的配列が特定される。
【0010】
更に別の一実施形態においては、結合相手候補は、抗体、抗体断片又は抗体模倣物である。
【0011】
更なる一実施形態においては、標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する抗体、抗体断片又は抗体模倣配列が更に特定される。
【0012】
更なる一実施形態においては、上記方法は、標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列及び抗体、抗体断片又は抗体模倣配列をステップ(d)の前に濃縮及び分離するステップを更に含む。
【0013】
更なる一実施形態においては、方法は、濃縮及び分離に続いて、ステップ(d)の前に、標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列及び抗体、抗体断片又は抗体模倣配列を個別に回収するステップを更に含む。
【0014】
異なる一実施形態においては、標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列は、配座エピトープの一部である。
【0015】
更に別の一態様においては、本発明は、
(a)1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又はかかる断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、集合体の少なくとも一部が配座エピトープを形成する、物理的に選択可能なディスプレイを用意すること、
(b)互いに結合親和性を有する配座エピトープと抗体ライブラリーのメンバーとが配座エピトープ−抗体コンプレックスを形成する条件下で、ディスプレイを抗体ライブラリーと接触させること、及び
(c)形成された配座エピトープ−抗体コンプレックスの少なくとも一部を検出すること
を含む、方法に関する。
【0016】
特定の一実施形態においては、配座エピトープは、遺伝子断片又はその模倣物の直列型又は多量体集合体の発現によって得られる。
【0017】
別の一実施形態においては、遺伝子断片は、生物学的に関連する標的源から生じ、生物学的に関連する標的源は、例えば、細胞、組織、器官及び生物体からなる群から選択され得る。別の生物学的に関連する源としては、幹細胞、活性化された免疫細胞、患部組織、器官及び病的生物体が挙げられる。
【0018】
更なる一実施形態においては、遺伝子断片の少なくとも一部は、生物学的に関連する標的源における遺伝子発現データの分析によって特定される。
【0019】
以下の具体的実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0020】
すべての態様においては、好ましい物理的に選択可能なディスプレイは配座エピトープライブラリーである。
【0021】
種々の実施形態においては、ディスプレイは、1個を超える未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又はかかる断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含み得る。
【0022】
別の実施形態においては、直列型又は多量体集合体の少なくとも一部は、同じポリペプチドの異なる部分に由来する2個以上の配列を含み、これらの配列は細胞内配列を含み得る。特定の一実施形態においては、直列型又は多量体集合体の各々は、同じポリペプチドの異なる部分に由来する2個以上の配列を含み、これらの配列は細胞内配列を含み得る。
【0023】
更なる一実施形態においては、直列型又は多量体集合体は、抗体又は抗体断片、及び抗体又は抗体断片のリガンドを含む。
【0024】
更なる実施形態においては、直列型又は多量体集合体において、断片又は模倣配列の少なくとも一部は互いに直接融合する。
【0025】
異なる実施形態においては、直列型又は多量体集合体において、断片又は模倣配列の少なくとも一部は外来性連結配列によって結合される。
【0026】
更なる実施形態においては、直列型又は多量体集合体において、断片又は模倣配列の少なくとも一部は、構造支持要素からなり、又は構造支持要素を含み、構造支持要素は、例えば、ヘリックスバンドル、βシート構造、三葉(trifoil)構造、膜貫通ヘリックス、細胞外ループなどの1個以上のタンパク質ファミリーに特有なモチーフであり得る。
【0027】
別の一実施形態においては、配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部は、前記直列型又は多量体集合体中に存在する断片の近接の結果として形成される。
【0028】
それとは別に、又はそれに加えて、配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部は、前記直列型又は多量体集合体中の構造支持要素の存在の結果として形成され得る。
【0029】
すべての態様においては、配座的に束縛されたポリペプチド標的及び/又は結合相手候補は、例えば、バクテリオファージ、ほ乳動物、酵母、細菌細胞及び胞子ディスプレイ系、リボソーム、mRNA及びDNAディスプレイなど、ウイルス、真核生物及び細菌及び生体外ディスプレイ系を含めて、ただしこれらだけに限定されない適切なディスプレイ系を用いて表示され得る。特定の一実施形態においては、胞子ディスプレイ系は、Bacillus subtilis又はBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである。
【0030】
すべての態様においては、抗体断片は、これらだけに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)及びdAb断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体又は多重特異性抗体であり得、抗体模倣物は、例えば、Affibody又はアプタマーであり得る。
【0031】
本発明は、さらに、適切なコード配列、ベクター及び組換え宿主細胞を含めて、ただしこれらだけに限定されない、本明細書における物理的に選択可能なディスプレイを作製する方法及び手段に関する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のディスプレイにおいて配座エピトープを提示する2つの手法を示す図である。第1の手法(タイプI)においては、2個のポリペプチド断片は、柔軟なリンカーによって連結され、ディスプレイ媒体に繋留される。この場合、配座エピトープの形成は、柔軟な連結リンカーの結果として、2個の断片の近接、及び折りたたみ性(ability to fold)によって促進される。第2の手法(タイプII)においては、2個のポリペプチド断片は、構造足場によって連結され、ディスプレイ媒体に繋留され、配座エピトープの形成は、構造足場によって促進される。
【図2】配座エピトープと抗体ライブラリーの同時選択方法を示す図である。配座エピトープライブラリーは胞子ディスプレイを用いて提示され、抗体ライブラリーはファージミドライブラリーである。
【図3】エリスロポイエチン(EPO)及び/又はトロンボポイエチン(TPO)の配座エピトープの提示に使用することができる、EPO交差ループ、TPO交差ループ及びEPO/TPO C−D交差ループキメラ構築物を示す図である。
【図4】図3に示したEPO/TPO C−D交差ループキメラ構築物を用いた、トロンボポイエチン(TPO)に対する配座エピトープ特異的抗体の特定、続いてやはり図3に示した未変性TPO交差ループ上の選択を示す図である。
【図5】繋留された抗原−抗体ディスプレイを用いた、配座エピトープのリガンド誘導性安定化を示す図である。
【図6】配座エピトープと抗体ライブラリーの同時選択方法を示す図である。両方のライブラリーは、ファージディスプレイを用いて提示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
A. 定義
特に断らない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994)は、本願で使用する用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。
【0034】
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載の方法及び材料と類似した、又は等価である、多数の方法及び材料を認識するはずである。実際、本発明は、記載の方法及び材料に決して限定されない。本発明では、下記の用語を以下で定義する。
【0035】
本明細書では「エピトープ」という用語は、配列に応じて生成される抗体に単独で、又はより大きい配列の一部として、結合する配列を規定する、少なくとも約3から5、好ましくは少なくとも約5から10、又は少なくとも約5から15個のアミノ酸、典型的には約500以下又は約1,000個のアミノ酸の配列を指す。エピトープは、エピトープが由来する親タンパク質の部分と同一である配列を有するポリペプチドに限定されない。実際、ウイルスゲノムは、常時変化した状態にあり、単離体間で比較的高度の多様性を示す。すなわち、「エピトープ」という用語は、未変性配列と同一である配列、並びに未変性配列における欠損、置換及び/又は挿入などの修飾を包含する。一般に、かかる修飾は、本質的に保存的であるが、非保存的修飾も企図される。この用語は、具体的には、「ミモトープ」、すなわち連続線状未変性配列を識別しないが、又は未変性タンパク質中に必ずしも存在しないが、未変性タンパク質上のエピトープを機能的に模倣する配列を含む。「エピトープ」という用語は、具体的には、線状及び配座エピトープを含む。
【0036】
本明細書では「配座エピトープ」という用語は、適切に折りたたまれた完全長未変性タンパク質中の対応する配列の構造的特徴を有するタンパク質の不連続部分によって形成されるエピトープを指す。エピトープを規定する配列(配座エピトープを構成する不連続部分を含む配列)の長さは、これらのエピトープがタンパク質の3次元構造によって形成されるので、大きく変動し得る。したがって、エピトープを規定するアミノ酸は、比較的少なく、分子の長さ方向に広く分散し、折りたたみによって正しいエピトープ配座をとることができる。エピトープを規定する残基間のタンパク質部分は、エピトープの配座構造に重要でない場合もある。例えば、これらの介在配列の欠損又は置換は、エピトープ配座に重要である配列が維持されるのであれば、配座エピトープに影響を及ぼさないことがある。したがって、本明細書では「配座エピトープ」は、未変性配座エピトープと同一である必要はないが、未変性配座エピトープの(定性的な抗体結合性などの)本質的諸性質を再生する(示す)配座的に束縛された構造を含む。
【0037】
「線状エピトープ」は、不連続又は配座エピトープの断片である。
【0038】
エピトープを含む所与のポリペプチドの領域は、当分野で周知の任意の数のエピトープマッピング技術を用いて特定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, N.J.を参照されたい。
【0039】
「配座的に束縛されたポリペプチド標的」という句は、適切に折りたたまれた完全長未変性タンパク質中の対応する配列の構造的特徴を有する、タンパク質の不連続部分、又は未変性タンパク質中に存在しない人工配列によって、形成される結合性配列を指す。この用語は、具体的には、配座エピトープを含み、受容体、酵素及び他のタンパク質の結合領域(ポケット)を模倣した配列を含めて、かかる結合領域も含む。すべての場合において、配座的に束縛されたポリペプチド標的を規定する配列は、これらの配座的に束縛された結合領域がタンパク質の3次元構造によって形成されるので、大きく変動し得る。したがって、配座的に束縛されたポリペプチド標的を規定するアミノ酸は、比較的少なく、分子の長さ方向に広く分散し、折りたたみによって正しい配座をとることができる。結合領域を規定する残基間のタンパク質部分は、配座構造に重要でない場合もある。例えば、これらの介在配列の欠損又は置換は、適切な配座に重要である配列が維持されるのであれば、配座的結合領域に影響を及ぼさないことがある。したがって、本明細書では「配座的に束縛されたポリペプチド標的」は、未変性タンパク質中に存在する構造要素と同一である必要はないが、かかる未変性構造の(結合性などの)本質的諸性質を再生する(示す)配座的に束縛された構造を含む。
【0040】
「結合相手」又は「複数の結合相手」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、生体外及び/又は生体内条件下で、共有結合又は非共有結合性会合によって互いに結合することができる2個以上のポリペプチド配列を指す。かかる結合相手の例としては、抗体と抗原、リガンドと受容体、酵素と基質、リガンド結合抗体とかかるリガンド結合抗体を認識する抗免疫グロブリン抗体、抗イディオタイプ抗体とそれに結合する抗体が挙げられるが、これらだけに限定されない。これらの結合相手は、該結合相手が天然に存在する、又は導入された、細胞、組織、器官又は生物体から単離することができ、又はその一部であり得る。結合は、2個を超える結合相手の会合によって起こり得る。
【0041】
「結合相手コンプレックス」又は「標的−結合相手コンプレックス」とは、特異的に検出可能な様式で互いに結合する、標的と標的に結合する分子など、(上で定義した)2個以上の結合相手の会合を意味し、したがって、例えば、リガンドと受容体、抗体と抗原、酵素と基質、抗体と抗イディオタイプ抗体、リガンド結合抗体とそれに結合する抗体の会合を意味する。
【0042】
「固体支持体」という用語は、標的とその結合相手候補及び標的−結合相手コンプレックスが連結され得る不溶性マトリックスを指すのに本明細書では使用される。典型的には、固体支持体は、本質的に、細胞、胞子、ウイルス粒子、バクテリオファージ粒子など、ただしこれらだけに限定されない生物である。
【0043】
「複合体(conjugate)」、「複合型(conjugated)」及び「複合化(conjugation)」という用語は、共有又は非共有結合の任意及びすべての形態を指し、直接の遺伝子又は化学融合、リンカー又は架橋剤を介したカップリング、及び例えばロイシンジッパーを用いた、非共有結合性会合体(associate)を含むが、これらだけに限定されない。
【0044】
「直列型又は多量体集合体」、「直列型集合体」及び「多量体集合体」という用語は、最も広い意味で使用され、(上で定義した)複合化又はコンプレックス形成を含めて、任意の手段によって互いに会合した2個以上のポリペプチド断片を指す。ここで、「断片」は、未変性ポリペプチドの部分と同一であり得、及び/又は未変性ポリペプチド標的中に存在しない人工配列であり得る。「直列型集合体」とは2個の断片の会合を指し、「多量体集合体」とは2個を超える断片の会合を指す。
【0045】
「融合」という用語は、1本のポリペプチド鎖中の異なる起源のアミノ酸配列の、それらのコードヌクレオチド配列のインフレームの組合せによる、組合せを指すのに本明細書では使用される。「融合」という用語は、その末端の1つとの融合に加えて、内部の融合、すなわち、ポリペプチド鎖内の異なる起源の配列の挿入を明示的に包含する。
【0046】
本明細書では「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語はすべて、共有結合性「ペプチド結合」によって連結されたアミノ酸の一次配列を指す。一般に、ペプチドは、少数のアミノ酸、典型的には約2から約50個のアミノ酸からなり、タンパク質よりも短い。本明細書では「ポリペプチド」という用語は、ペプチド及びタンパク質を包含する。
【0047】
本発明の状況において「抗体」(Ab)という用語は、最も広い意味で使用され、特異抗原、並びに免疫グロブリン、及び抗原特異性を欠く他の抗体様分子に対して結合特異性を示すポリペプチドを含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで産生され、骨髄腫によって高レベルで産生される。本願では「抗体」という用語は、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片を含むが、これらだけに限定されない。
【0048】
「未変性抗体」は、通常、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、ジスルフィド結合数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖及び軽鎖は、規則的に間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、可変ドメイン(V)とそれに続く幾つかの定常ドメインを一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、その他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並ぶ。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの界面を形成すると考えられる(Chothia et al., J. Mol. Biol. 186:651(1985)、Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:4592(1985))。
【0049】
抗体鎖に関連した「可変」という用語は、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する特定の各抗体の結合及び特異性に関与する、抗体鎖の部分を指すのに使用される。かかる可変性は、いずれも軽鎖及び重鎖可変ドメイン中の超可変領域と称する3個のセグメントに集中する。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。未変性重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、4個のFR(それぞれFR1、FR2、FR3及びFR4)を各々含み、4個のFRは、主としてβシート形状をとり、3個の超可変領域によって連結される。3個の超可変領域は、βシート構造を連結するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域は、他方の鎖の超可変領域と一緒に、FRによって近位に共に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991), pages 647−669参照)。定常ドメインは、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0050】
本明細書では「超可変領域」という用語は、抗原結合性を担う、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」、すなわち「CDR」由来のアミノ酸残基を含む(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基30−36(L1)、46−55(L2)及び86−96(L3)、並びに重鎖可変ドメイン中の30−35(H1)、47−58(H2)及び93−101(H3)(MacCallum et al,. J Mol Biol. 1996)。
【0051】
「フレームワーク領域」という用語は、より異なる(divergent)CDR領域間に存在する、当分野で認められた抗体可変領域の部分を指す。かかるフレームワーク領域は、典型的には、フレームワーク1から4(FR1、FR2、FR3及びFR4)と称され、CDRが抗原結合性表面を形成できるように、重鎖又は軽鎖抗体可変領域中に存在する3個のCDRを3次元空間に保持する足場を提供する。
【0052】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、異なるクラスに帰属させることができる。5つの主要な抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、その幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に更に分割することができる。
【0053】
異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0054】
任意の脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプの1つに帰属させることができる。
【0055】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般に抗原結合又はその可変ドメインを含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体、並びに一般に、ポリペプチドに特異的抗原結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0056】
「モノクローナル抗体」という用語は、B細胞の単一クローンによって合成される抗体分子を指すのに使用される。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特別な方法による抗体の生成を要すると解釈すべきではない。したがって、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975)、Eur. J. Immunol. 6:511(1976)によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって作製することができ、組換えDNA技術によって作製することができ、又はファージ若しくは別の抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0057】
「ポリクローナル抗体」という用語は、B細胞集団によって合成された抗体分子集団を指すのに使用される。
【0058】
「単鎖Fv」、すなわち「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VドメインとVドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの総説については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer−Verlag, New York, pp.269−315(1994)を参照されたい。単鎖抗体は、例えば、国際公開第88/06630号及び同92/01047号に開示されている。
【0059】
二重特異性抗体は、VドメインとVドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短かすぎて同じ鎖上でのこれら2個のドメインの対形成が不可能であるリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を生成させた、二価の二重特異的な抗体である(例えば、Holliger, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444 6448(1993)、及びPoljak, R.J., et al., Structure 2:1121 1123(1994)参照)。
【0060】
「ミニボディ」という用語は、80kDaの二価の二量体(scFv−CH3)に自己組織化するscFv−CH3融合タンパク質を指すのに使用される。
【0061】
「アプタマー」という用語は、タンパク質標的に高い特異性及び親和性で結合する合成核酸リガンドを指すのに本明細書では使用する。アプタマーは、タンパク質機能の強力な阻害剤として公知である。
【0062】
「Affibody」という用語は、ブドウ球菌性プロテインAに由来するZドメインの3ヘリックス足場に典型的には基づく、操作された標的特異的非免疫グロブリン結合タンパク質を指すのに使用される。58アミノ酸Zドメインは、Staphylococcus aureusプロテインA(SPA)中の5個の相同ドメイン中の1個(Bドメイン)に由来する。SPAは、免疫グロブリンのFc領域に強く結合する。Zは、IgG含有樹脂を用いることによって組換えタンパク質の親和性精製のための安定化遺伝子融合相手として最初は開発された。SPAのBドメインとFc断片のコンプレックスの構造によれば、結合性表面はヘリックス1及び2上に露出した残基からなるのに対して、ヘリックス3は結合に直接関与しない。Affibodyは、通常、ヘリックス1及び2のFc結合性表面における典型的には13個の残基が無作為化されたコンビナトリアルライブラリーから選択される。次いで、タンパク質を標的にした特異的結合剤は、所望の標的に対するファージディスプレイライブラリーのバイオパニングによって特定される。かかるAffibodyは、種々の生化学アッセイ及び臨床応用において、免疫グロブリンの代替として使用することができる。
【0063】
dAb断片(Ward et al., Nature 341:544 546(1989))は、Vドメインからなる。
【0064】
1個以上のCDRは、分子に共有結合的又は非共有結合的に組み込まれて、分子を「イムノアドヘシン」にすることができる。イムノアドヘシンは、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込むことができ、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結することができ、又はCDRを非共有結合的に取り込むことができる。CDRによって、イムノアドヘシンは特定の目的抗原に特異的に結合することができる。
【0065】
本明細書では「抗体結合領域」という用語は、抗原に結合可能である、免疫グロブリン又は抗体可変領域の1個以上の部分を指す。典型的には、抗体結合領域は、例えば、Fab、F(ab’)、単一ドメイン、単鎖抗体(scFv)などの抗体軽鎖(VL)(又はその可変領域)、抗体重鎖(VH)(又はその可変領域)、重鎖Fd領域、組合せ抗体軽鎖及び重鎖(又はその可変領域)、又は完全長抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE若しくはIgM抗体である。
【0066】
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、典型的には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選択されるアミノ酸など、その分野で認められた定義を有するアミノ酸を指す。ただし、修飾、合成又は希少アミノ酸を所望のとおりに使用することができる。したがって、37 CFR 1.822(b)(4)に記載の修飾及び異常アミノ酸は、この定義に具体的に含まれ、参照により本明細書に明確に援用される。アミノ酸は、種々の亜群に細分することができる。すなわち、アミノ酸は、非極性側鎖(例えば、Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負に帯電した側鎖(例えば、Asp、Glu)、正に帯電した側鎖(例えば、Arg、His、Lys)、又は無電荷の極性側鎖(例えば、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp及びTyr)を有するとして分類することができる。アミノ酸は、低分子アミノ酸(Gly、Ala)、求核性アミノ酸(Ser、His、Thr、Cys)、疎水性アミノ酸(Val、Leu、Ile、Met、Pro)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、Asp、Glu)、アミド(Asp、Glu)及び塩基性アミノ酸(Lys、Arg)として分類することもできる。
【0067】
「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA分子、RNA分子、その類似体(例えば、ヌクレオチド類似体又は核酸化学反応を用いて作製される、DNA又はRNA)などの核酸を指す。所望のとおりに、ポリヌクレオチドは、例えば当分野で認められた核酸化学反応を用いて、合成的に作製することができ、又は例えばポリメラーゼを用いて、酵素的に作製することができ、必要に応じて修飾することができる。典型的な修飾としては、メチル化、ビオチン化、及び当分野で公知の他の修飾が挙げられる。また、核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、所望であれば、検出可能な成分と連結することができる。
【0068】
「変異誘発」という用語は、別段の記載がない限り、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を変更する当分野で認められた任意の技術を指す。変異誘発の好ましいタイプとしては、誤りがちなPCR変異誘発、飽和変異誘発、又は他の部位特異的変異誘発が挙げられる。「ベクター」という用語は、細胞中で自己複製可能であり、DNAセグメント、例えば遺伝子又はポリヌクレオチドが、付着したセグメントが複製されるように作用可能に結合することができる、rDNA分子を指すのに使用される。1個以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導可能なベクターを本明細書では「発現ベクター」と称する。「制御配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に結合したコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適切な制御配列としては、プロモーターが挙げられ、場合によってはオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0069】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係にあるときに、「作動可能に結合」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に結合している。プロモーター又はエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に結合している。又は、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置する場合、コード配列に作動可能に結合している。一般に、「作動可能に結合した」とは、結合したDNA配列が隣接すること、また、分泌リーダーの場合、隣接し、読み相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、隣接されなくともよい。結合は、好都合な制限酵素切断部位における連結によってなされる。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを慣例的実務に従って使用する。
【0070】
アミノ酸配列同一率は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402(1997))を用いて決定することができる。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードすることができ、又はNational Institute of Health、Bethesda、MDから入手することができる。NCBI−BLAST2は、幾つかの検索パラメータを使用し、検索パラメータのすべては、例えば、unmask=yes、strand=all、expected occurrences=10、minimum low complexity length=15/5、multi−pass e−value=0.01、constant for multi−pass=25、dropoff for final gapped alignment=25、及びscoring matrix=BLOSUM62を含めて、デフォルト値に設定される。
【0071】
「ロイシンジッパー」という用語は、幾つかのタンパク質中に保存ドメインとして存在する4又は5個のロイシン残基を典型的には含む、7残基繰り返しモチーフを指すのに使用される。ロイシンジッパーは、短い平行らせんコイルとして折りたたまれ、ロイシンジッパーがドメインを形成するタンパク質のオリゴマー化の原因であると考えられる。
【0072】
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のポリヌクレオチドプローブなどのハイブリッド形成可能なアレイ要素の規則正しい配列を指す。
【0073】
「遺伝子増幅」という句は、遺伝子又は遺伝子断片の複数の複製物が特定の細胞又は細胞系において形成されるプロセスを指す。複製領域(増幅されたDNAの1配列)は、しばしば「アンプリコン」と称される。通常、生成するメッセンジャーRNA(mRNA)量、すなわち、遺伝子発現レベルは、発現される特定の遺伝子でできた複製物の数の比率も増加する。
【0074】
B. 詳細な説明
本発明の方法を実施するための技術は当分野で周知であり、例えば、Ausubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sons (1997)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, J. Sambrook and D.W. Russell, eds., Cold Spring Harbor, New York, USA, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001、O’Brian et al., Analytical Chemistry of Bacillus Thuringiensis, Hickle and Fitch, eds., Am. Chem. Soc., 1990、Bacillus thuringiensis: biology, ecology and safety, T.R. Glare and M. O’Callaghan, eds., John Wiley, 2000、Antibody Phage Display, Methods and Protocols, Humana Press, 2001、及びAntibodies, G. Subramanian, ed., Kluwer Academic, 2004を含めて、標準の実験室の教科書に記載されている。変異誘発は、例えば、部位特異的変異誘発によって実施することができる(Kunkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:488−492(1985))。PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同4,683,202号、同4,800,159号及び同4,965,188号、並びに”PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification”, H. Erlich, ed., Stockton Press, New York(1989)、及びPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds., Academic Press, San Diego, Calif.(1990)を含めて、幾つかの教科書に記載されている。
【0075】
本発明は、配座エピトープライブラリーなどの配座的に束縛されたポリペプチド標的の物理的に選択可能なディスプレイに関する。本発明によれば、未変性ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又はかかる断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体は、選択可能な様式で表示され、結合相手候補のライブラリーを用いてスクリーニングされる。その断片若しくは配列の近接のために、及び/又は構造支持要素の存在のために、配座エピトープなど、3次元構造要素の一部である、直列型又は多量体集合体中に存在する断片は、配座的に束縛された適切な3次元構造をとり、配座エピトープなどの当該構造要素の本質的諸性質を再現する。次いで、配座的に束縛された構造は、結合相手候補を用いてスクリーニングされ、同定される。したがって、配座エピトープは、ポリペプチド断片の直列型又は多量体集合体の選択可能なディスプレイを抗体ライブラリーを用いてスクリーニングし、対応する標的−抗体コレクションを選択することによって、特定することができる。こうして、すべてのタンパク質のすべての可能な配座エピトープに対して抗体を作製することができる。より一般的な一態様においては、この手法は、配座的に束縛されたポリペプチド構造と抗体、足場、タンパク質、ペプチドなどの結合相手との同時選択に適切である。
【0076】
したがって、本発明は、発現可能な遺伝子断片の直列型又は多量体集合体のクローニング、及び抗体ライブラリーなどの結合相手候補のライブラリーに対するクローン化された集合体のコレクションのスクリーニングを含む。次いで、対応する標的と結合相手(例えば、抗体)のコレクションを濃縮及び分離し、標的と結合(例えば、抗体)の各配列を個別に回収し、配列を決定する。
【0077】
第一ステップでは、2個以上のcDNA断片を、標準クローニングスキームによって、発現ベクターの2個以上のクローニング部位に逐次的にクローン化する。クローニング部位は、遊離アミノ又はカルボキシ末端及び束縛されたループを提示可能な足場上に存在する合成リンカーによって分離される場合もあれば、互いに直接融合する場合もある。配座断片提示の2つの代表例を図1に示し、実施例1に記載する。
【0078】
特定の一実施形態においては、直列型又は多量体集合体に関与する断片は、互いに直接融合し、融合ポリペプチド配列をコードする核酸の発現によって生成される。或いは、コード配列は、直列型又は多量体断片が外来配列によって連結されたポリペプチドの発現をもたらす、外来性の発現可能な配列によって連結され得る。発現可能な配列としては、断片が所望の配座をとることができるように、柔軟性を与え、連結された断片の運動を許容する十分な長さであるが、断片を近位に連結し続けるのに十分な短さであり、その結果、配座の変化を誘発することができる、ペプチドリンカーが挙げられる。かかるリンカーは、通常、約3から約25残基長、又は約5から約20残基長、又は約8から約15残基長、又は約10から約15残基長であるが、連結される断片の性質に応じて、より長いリンカーを使用することもできる。
【0079】
別の一実施形態においては、直列型又は多量体集合体に関与する少なくとも1個の断片は、構造的に束縛され、したがって、例えば、ヘリックス状若しくはβシート構造、又はのモチーフ特性、又はヘリックスバンドル、三葉構造、膜貫通ヘリックス、細胞外ループなどの、よりタンパク質ファミリーであり得る。したがって、導入された配列が最初のタンパク質の一部又は全部の配座要素を採用するように、標的タンパク質の単一の線状又は不連続配列を代替足場上に提示することができる。この手法の例を実施例3に記載する。
【0080】
実施例3で説明し、図3及び4に示した、トロンボポイエチン(TPO)及びエリスロポイエチン(EPO)に加えて、4個の逆平行ヘリックスバンドルを含む4ヘリックス構造は、多数のサイトカイン、かかるインターロイキン、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−23及びそれぞれのファミリーメンバー、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、並びに幾つかの成長因子の共通の構造足場である。1種類のサイトカインに由来する基準4ヘリックスバンドルは、別のサイトカインなどの別のヘリックスバンドルタンパク質由来のエピトープを提示するための構造足場として使用することができる。同様に、7回膜貫通受容体などの受容体由来の細胞外ループは、同じ又は異なるタンパク質由来のエピトープを表示する足場として使用することができる。この手法は、すべての公知の4ヘリックスバンドルタンパク質、又は別の明確に定義された構造モチーフの存在を特徴とするタンパク質に対する抗体の、容易な定方向の抗体選択を可能にする。或いは、これらの足場は、任意の数の標的タンパク質由来の複数のループ、単一若しくは複数のヘリックス置換、又はさらにはループとヘリックスの組合せまでも含むように、操作することができる。ひいては、可溶性単一スパンタンパク質の別の保存された構造要素を利用して、同族のスーパーファミリータンパク質内のそれらの重要な要素に対する抗体認識を与え、誘導することができる。したがって、マルチスパンGタンパク質共役受容体の細胞外ドメインの部分は、実施例4に示すように、無関係なタンパク質足場にグラフトすることができる。
【0081】
本発明の方法に使用することができる他の足場は、その内容全体を参照により本明細書に明確に援用する、Binz et al., Nature Biotechnology 23(10):1257−1268(2005)に記載されている。かかる足場としては、CTLA−4、テンダミスタット(tandamistat)、フィブロネクチン、ネオカルチノスタチン、CMB4−2、リポカリン、T細胞受容体、プロテインAドメインプロテインZ)、lm9、設計されたARタンパク質、ジンクフィンガー、pVIII、トリすい臓ポリペプチド、GCN4、WWドメイン、Src相同領域3(SH3)、Src相同領域2(SH2)、PDZドメイン、TEM−1β−ラクタマーゼ、GFP、チオレドキシン、ブドウ球菌性ヌクレアーゼ、PHDフィンガー、Cl−2、BPTI、APPI、HPSTI、エコチン、LACI−D1、LDT−I、MTI−II、サソリ毒、昆虫デフェンシンAペプチド、EETI−II、Min−23、CBD、PBP、チトクロムB562、Ld1受容体ドメインA、γクリスタリン、ユビキチン、トランスフェリン、C型レクチン様ドメイン、Avimers(Avidia/Amgen)及びミクロプロテイン(microproteins)(Amunix)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0082】
直列型又は多量体断片は、単一遺伝子、分化細胞、組織、器官又は生物体を含めて、任意の公知のポリヌクレオチド源に由来し得る。したがって、例えば、特定の遺伝子に由来する無秩序な断片又は所望の断片と、同じ遺伝子の別の断片との同時発現、及びそれに続く抗体ライブラリーを用いたスクリーニングによって、所望のエピトープに対する抗体、及び単一標的のすべてのエピトープに対する抗体が得られる。この手法は、発現された遺伝子を、抗体選択のための物理的に表現されたクローンコレクションに変換し、完全長遺伝子のクローニングを不要にする戦略も提供する。
【0083】
別の一実施形態においては、マイクロアレイ又は遺伝子増幅試験の結果を、遺伝子の発現差異(過剰又は低発現)、及び遺伝子の構造上の決定要因について分析することができる。マイクロアレイ技術の特定の一実施形態においては、cDNAクローンのPCR増幅された挿入断片を高密度アレイ中の基質に塗布する。好ましくは、少なくとも10,000個のヌクレオチド配列を基質に塗布する。マイクロチップ上に各10,000要素で固定された、マイクロアレイ化された遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに適している。蛍光標識されたcDNAプローブは、対象組織から抽出されたRNAの逆転写によって蛍光性ヌクレオチドを組み入れることによって、作製することができる。チップに塗布された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットと特異的にハイブリッド形成する。非特異的に結合したプローブを厳密な洗浄によって除去した後、チップを共焦点レーザー顕微鏡法、又はCCDカメラなどの別の検出方法によって、走査する。各アレイ化要素のハイブリダイゼーションの定量化によって、対応するmRNA存在量を評価することができる。二色蛍光を用いて、2つのRNA源から作製された別々に標識されたcDNAプローブをアレイと対でハイブリッド形成させる。したがって、各指定遺伝子に対応する2つのRNA源由来の転写物の相対存在量を同時に測定する。小規模のハイブリダイゼーションによって、多数の遺伝子に対する発現パターンを簡便かつ迅速に評価することができる。かかる方法は、細胞1個当たり数個の複製物が発現される希少転写物を検出し、発現レベルの少なくとも約2倍の差を再現性良く検出するのに必要な感度を有することが示された(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(2):106−149(1996))。マイクロアレイ分析は、Affymetrix GenChip技術、Incyteのマイクロアレイ技術などの市販装置によって製造者の手順に従って実施することができる。
【0084】
遺伝子発現の大規模分析のためのマイクロアレイ法の開発によって、癌分類の分子マーカーを系統的に探索し、種々の腫ようタイプにおいて結果を予測することが可能になる。
【0085】
(患部組織、例えば癌組織において、同じ細胞型の正常組織よりも過剰又は低発現される決定要因などの)異なって発現される決定要因を特定した後、決定要因を、例えばペプチド合成の公知の化学的方法によって、再合成することができる。この再合成プロセスは、これらの決定要因を標準化し、膨大なコンビナトリアルクローン化可能成分を含む定方向物理ライブラリー(directed physical library)を与えると予想される。
【0086】
RNA又は全DNAを標的細胞から取り出し、続いて本発明に従ってかかるRNA又はDNAに由来する発現配列の直列型又は多量体集合体をスクリーニングすることによって、標的組織、器官又は生物体由来のすべてのエピトープを特定することができる。したがって、例えば、この実施形態によって、幹細胞、患部組織、活性化された免疫細胞などに由来する抗原決定基に対する抗体を特定することができる。RNA及びDNA抽出の一般的方法は当分野で周知であり、Ausubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sons(1997)を含めて、分子生物学の標準的教科書に開示されている。癌生検試料などのパラフィン包埋組織からRNAを抽出する方法は、例えば、Rupp and Locker, Lab Invest. 56:A67(1987)、及びDe Andres et al., BioTechniques 18:42044(1995)に開示されている。特に、RNAの単離は、Qiagenなどの商業製造者から得られる精製キット、緩衝剤セット及びプロテアーゼを用いて、製造者の指示に従って実施することができる。例えば、培養細胞由来の全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを用いて単離することができる。他の市販RNA単離キットとしては、MasterPure(商標) Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標)、Madison、WI)、Paraffin Block RNA Isolation Kit(Ambion, Inc.)などが挙げられる。組織試料から得られる全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を用いて単離することができる。腫ようから調製されるRNAは、例えば塩化セシウム密度勾配遠心法によって、単離することができる。
【0087】
クローニング及び発現ベクターは、当分野で周知であり、市販されている。ベクター成分としては、一般に、シグナル配列、複製開始点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列のうちの1個以上が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0088】
本明細書においてベクター中でDNAをクローン化又は発現するのに適切な宿主細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物(ほ乳動物)細胞である。適切な原核生物としては、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serrafia、例えば、Serratia marcescans、及びShigella、並びにB. subtilis、B thuringiensis、B. licheniformis(例えば、1989年4月12日に公表されたDD266,710に開示されたB. licheniformis 41P)などのBacilli、P. aeruginosaなどのPseudomonas、及びStreptomycesが挙げられる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC 31,446)であるが、E.coli B、E.coli X 1776(ATCC 31,537)、E coil W3110(ATCC 27,325)などの他の系統も適切である。これらの例は、説明のためのものであって、限定的なものではない。
【0089】
適切な酵母としては、Saccharomyces cerevisiae、又は一般的なパン酵母が挙げられる。また、Schizosaccharomyces pombe;例えば、K. lactis、K. fragilis(ATCC 12,424)、K. bulgaricus(ATCC 16,045)、K. wickeramii(ATCC 24,178)、K. waltii(ATCC 56,500)、K. drosophilarum(ATCC 36,906)、K. thermotolerans、K. marxianusなどのKluyveromyces宿主;yarrowia(EP 402,226);Pichia pastoris(EP 183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP 244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces;並びに糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びA. nidulans、A. nigerなどのAspergillus宿主など、幾つかの他の属、種及び系統も本明細書において一般に利用可能であり、有用である。
【0090】
無脊椎多細胞生物の例としては、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、Bombyx moriなどの宿主から得られる昆虫宿主細胞を含めて、植物及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞の移入用ウイルス株としては、例えば、Autographa californica NPVのL−1変種、及びBombyx mori NPVのBm−5系統が挙げられる。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。
【0091】
適切なほ乳動物宿主細胞系の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);懸濁培養増殖用にサブクローニングされたヒト胚性腎臓系293(293細胞)、Graham et al, J. Gen Virol. 36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243−251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト頚癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);スイギュウラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫よう(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞癌系(Hep G2)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0092】
宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。市販培地としては、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などが挙げられる。また、Ham et al., Meth. Enz. 58:44(1979)、及びBarnes et al., Anal. Biochem. 102:255(1980)に記載の培地のいずれかを宿主細胞用培地として使用することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前に使用された条件であり、製造者の指示に含まれ、又は当業者に明らかである。
【0093】
一実施形態においては、直列型又は多量体集合体を構成する両方/全部の断片が無作為に選択される。例えば、この手法を使用して、標的集団に由来するすべての発現可能なエピトープを発現させることができる。
【0094】
先に考察したように、抗体及び他のポリペプチドを含めて、異種タンパク質を表示する系は、当分野で周知である。抗体断片は、抗体遺伝子をコードする繊維状ファージの表面で表示される(Hoogenboom and Winter J. Mol. Biol., 222:381 388(1992)、McCafferty et al., Nature 348(6301):552 554(1990)、Griffiths et al. EMBO J., 13(14):3245−3260(1994))。抗体ライブラリーを選択及びスクリーニングする技術の総説については、例えば、Hoogenboom, Nature Biotechnol. 23(9):1105−1116(2005)を参照されたい。また、Escherichia coli(Agterberg et al., Gene 88:37−45(1990)、Charbit et al., Gene 70:181−189(1988)、Francisco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2713−2717(1992))、及びSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母(Boder and Wittrup, Nat. Biotechnol. 15:553−557(1997)、Kieke et al., Protein Eng. 10:1303−1310(1997))の表面での異種タンパク質及びその断片のディスプレイのための当分野で公知の系がある。他の公知のディスプレイ技術としては、リボソーム又はmRNAディスプレイ(Mattheakis et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 91:9022−9026(1994)、Hanes and Pluckthun, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937−4942 (1997))、DNAディスプレイ(Yonezawa et al., Nucl. Acid Res. 31(19):e118(2003))、細菌ディスプレイなどの微生物細胞ディスプレイ(Georgiou et al., Nature Biotech. 15:29−34(1997))、ほ乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ(Isticato et al., J. Bacteriol. 183:6294−6301(2001)、Cheng et al., Appl. Environ. Microbiol. 71:3337−3341(2005)、及び2006年11月13日に出願された同時係属中の仮特許出願第60/865,574号)、レトロウイルスディスプレイなどのウイルスディスプレイ(Urban et al., Nucleic Acids Res. 33:e35(2005)、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ(Odegrip et al., Proc. Acad. Natl. Sci. USA 101:2806−2810(2004)、Reiersen et al., Nucleic Acids Res. 33:e10(2005))、ミクロビーズディスプレイ(Sepp et al., FEBS Lett. 532:455−458(2002))などが挙げられる。
【0095】
本発明では、ポリペプチド断片の直列型又は多量体集合体(例えば、直列型及び/又は多量体抗原断片)は、その開示全体を参照により本明細書に明確に援用する、Isticato et al., J. Bacteriol. 183:6294−6301(2001)、Cheng et al., Appl. Environ. Microbiol. 71:3337−3341(2005)、及び2006年11月13日に出願された同時係属中の仮特許出願第60/865,574号に記載のように、Bacillus subtilis胞子殻の成分(CorB)を用いた表面ディスプレイ系、及びBacillus thuringiensis(Bt)胞子ディスプレイを含めて、胞子ディスプレイを用いて有利に表示することができる。
【0096】
胞子ディスプレイ系は、表示すべき配列を(Bacillus subtilis胞子コートタンパク質などの)コートタンパク質、又は(Btプロトキシン配列などの)毒素プロトキシンに付着させることに基づく。胞子ディスプレイ系の利点は、理想的な非反応性バックグラウンドを提供すると予想される非真核の性質の均質な粒子表面及び粒径である。また、胞子の粒径は、相互作用に基づいて、選択可能なクローン単離を可能にするフローサイトメトリーによる選択を可能にするのに十分である。
【0097】
胞子の安定性を活用して、胞子形成後に種々の化学的、酵素的及び/又は環境的処理及び改変を実施することができる。すなわち、かかる構造が表示されるときに、構造上のヘリックス構造を、トリフルオロエタノール(TFE)を用いた化学処理によって安定化することができる。また、活性酸素種(例えば、ペルオキシド)又は活性窒素種(例えば、亜硝酸)を用いた処理などの酸化的ストレス処理が可能である。胞子表示ポリペプチドの明確な集団又は粗製集団を、タンパク質分解性曝露などの酵素処理、別の酵素プロセス、リン酸化に曝露することもできる。他の可能な処理としては、過酸化亜硝酸処理によるニトロシル化、組換え、精製又は血清プロテアーゼ処理によるタンパク質分解、照射、(細菌とほ乳動物の両方の)熱ショックタンパク質などの公知シャペロンとの共インキュベーション、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、プロリルイソメラーゼなどの折りたたみタンパク質による処理、凍結乾燥、及びチメロサール(thimerosol)処理などの防腐剤様処理が挙げられるが、これらだけに限定されない。これらの処理は、当分野で周知の方法によって実施することができる。
【0098】
最後に、ファージ表示抗体クローンは、同族抗原を有する個々の胞子と一緒にウェルに同時捕捉することができる。これによって、多重の同時分離(multiplexed co−segregation)、及び抗原−抗体対の救済が可能になる。同様に、これを拡張して、別の結合相手を選択し、救済することもできる。
【0099】
手短に述べると、Bt胞子ディスプレイ系において、Btプロトキシン配列は、化学合成若しくは組換えDNA技術方法、又は当分野で公知の任意の他の技術によって生成された、未変性Btプロトキシンタンパク質から得ることができる。未変性Btプロトキシンタンパク質又はそのコード配列は、例えば、亜種kurstaki、dendrolimus、galleriae、entomocidus、aizawai、morrisoni、tolworthi、alesti、israelensisなどの種々のBt亜種から単離することができる。
【0100】
したがって、Btプロトキシン断片をコードするDNAは、適切なオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを用いて、当分野で公知の方法によって、適切なBt亜種の染色体からPCR増幅することができる。次いで、PCR産物は、例えば、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)などの公知技術によって、製造者の指示に従って精製することができる。
【0101】
プロトキシン断片のクローニングに適切な組換え宿主細胞としては、原核生物、酵母、高等真核生物細胞などが挙げられる。クローニング及び定常的なプラスミド操作に好ましい宿主は、E.coliである。
【0102】
次いで、Btプロトキシン配列を用いて、本発明の直列型又は多量体集合体をBt胞子の表面に表示する。したがって、本発明は、Btプロトキシン配列とポリペプチド配列のかかる直列型又は多量体集合体との複合体にも関する。
【0103】
本発明の直列型又は多量体集合体とBtプロトキシン配列との複合化は、好ましくはBtプロトキシン配列のN又はC末端などの末端における、融合によって実施することができる。或いは、適切なペプチドリンカー配列を使用して、複合体を調製することができる。
【0104】
配列中に存在する断片が、配座的に束縛された構造を形成することが可能である場合、リンカー配列は、表示された集合体とBtプロトキシン配列を、各配列が適切な配座(配座的に束縛された構造)を確実にとることができるのに十分な距離だけ分離する。リンカー配列の長さは、変動し得、一般に1から約50アミノ酸長、より一般的には最高約15アミノ酸長、又は最高約10アミノ酸長、又は最高約8アミノ酸長、又は最高約7アミノ酸長、又は最高約5アミノ酸長、又は最高約3アミノ酸長である。リンカー配列は、当分野で周知の方法によって複合体に組み入れられる。
【0105】
表示された分子の除去を容易にするために、リンカーは、プロテアーゼなどの酵素の基質である配列を含むことができる。したがって、特定の一実施形態においては、所与のプロテアーゼの天然基質をリンカーペプチドとして使用することができ、又はリンカーペプチドに含めることができる。例えば、リンカーは、tobacco etchウイルス(TEV)(ENLYFOG)の基質部位とすることができ、又は該基質部位を含むことができる。或いは、リンカーペプチドは、プロテアーゼの天然基質と異なり得るが、プロテアーゼによって切断し得る配列を含むことができる。すなわち、トリプシン様プロテアーゼはリシン及びアルギニン残基のカルボキシル側で特異的に開裂するが、キモトリプシン様プロテアーゼはチロシン、フェニルアラニン及びトリプトファン残基などにおける切断に特異的であることが知られている。
【0106】
プロトキシン配列と表示される直列型又は多量体集合体との結合は、ヘテロ二量体モチーフを用いて得ることができる。二量体を形成する2成分は、互いに共有結合的に会合する結合相手とすることができ、又は非共有結合性相互作用によって会合し得る結合相手とすることができる。
【0107】
共有結合性会合は、例えば、結合相手のシステイン間のジスルフィド結合の形成によって起こり得る。例えば、ジチオトレイトール、ジチオエリトリトール、βメルカプトエタノール、ホスフィン、水素化ホウ素ナトリウムなど、ジスルフィド結合を分裂させる還元剤で処理することによって、ジスルフィド結合を切断し、表示された集合体を遊離させることができる。好ましくは、チオール基含有還元剤を使用する。
【0108】
非共有結合性会合は、例えば1対のロイシンジッパーペプチドを用いて、得ることができる。ロイシンジッパーは、幾つかのDNA結合タンパク質において最初に同定された(Landschulz et al., Science 240: 1759, 1988)。すなわち、ロイシンジッパードメインは、タンパク質の二量体化の原因である、これら及びタンパク質中に存在する保存されたペプチドドメインを指すのに使用される用語である。ロイシンジッパードメインは、典型的には別のアミノ酸が点在する4又は5個のロイシン残基を含む、7残基繰り返しを含む。
【0109】
ロイシンジッパーペプチドとしては、例えば、周知のc−Jun「ロイシンジッパーペプチド」RIARLEEKVKTLKAQNSELASTANMLREQVAQLKQKVMNY(配列番号1)及びv−Fos「ロイシンジッパーペプチド」LTDTLQAETDQLEDKKSALQTEIANLLKEKEKLEFILAAY(配列番号2)が挙げられる。
【0110】
核内癌遺伝子fos及びjunの産物は、ヘテロ二量体を優先的に形成するロイシンジッパードメインを含む(O’Shea et al., Science 245:646, 1989、Turner and Tjian, Science 243:1689, 1989)。
【0111】
ロイシンジッパーペプチドの別の例としては、酵母転写因子GCN4、及びラット肝臓中に存在する耐熱性DNA結合タンパク質(C/EBP、Landschulz et al., Science 243:1681, 1989);ネズミ癌原遺伝子の遺伝子産物c−myc(Landschulz et al., Science 240:1759, 1988)中に存在するドメインが挙げられるが、これらだけに限定されない。パラミクソウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス及び多数のレトロウイルスを含めて、幾つかの異なるウイルスの膜融合タンパク質も、ロイシンジッパードメインを有する(Buckland and Wild, Nature 338:547, 1989、Britton, Nature 353:394, 1991、Delwat and Mosialos, AIDS Research and Human Retroviruses 6:703, 1990)。合成配列は、安定性などの改善された性質を示すように設計することができるので、天然ロイシンジッパーペプチドに対して、合成ロイシンジッパーペプチドの使用が好ましいことが多い。
【0112】
本発明の融合物を作製するために、増幅されたBtプロトキシンDNA断片を、適切な胞子形成特異的プロモーターの制御下で、表示すべき直列型又は多量体集合体の集合体のコード配列と一緒にインフレームで適切なプラスミドにクローン化することができる。胞子形成特異的プロモーターは、Btプロトキシン断片が生ずる同じBt亜種から得ることができるが、同じBt亜種から得なくてもよい。
【0113】
プロトキシン断片に非相同なポリペプチド融合物のコード配列を含むプラスミドは、基本的にDu et al., Appl. Environ. Microbiol. 71(6):3337−3341(2005)に記載されたように、Macaluso and Mettus, J. Bacteriol. 173:1353−1356(1991)の方法に従って、電気穿孔法によってBtに導入することができる。
【0114】
標的Bt系統のプラスミド形質転換後、細胞を適切な培地中で増殖させて、胞子形成を促進する。その結果、Bt胞子は、融合物中に存在する異種ペプチド又はポリペプチドの表面に表示される。
【0115】
毒素表示された分子複合体は胞子表面に付着するとされるが、本明細書において複合体に関与するプロトキシンは胞子殻の一部であるが、コートタンパク質ではないので、実際には、毒素成分は胞子殻内部に達する。
【0116】
類似の技術は、例えば、米国特許出願公開第20020150594号、同20030165538号、同20040180348号、同20040171065号及び同20040254364号に開示された胞子ディスプレイ系を含めて、付着が胞子コートタンパク質に対するものであるディスプレイを含めて、すべての胞子ディスプレイ系に使用することができる。
【0117】
抗体などの結合相手は、ファージディスプレイによって有利に表示することができる。ファージディスプレイにおいては、単鎖抗体断片(scFv)などの異種タンパク質はファージ粒子のコートタンパク質に結合するが、異種タンパク質が発現されたDNA配列はファージ外被内に収められる。ファージディスプレイ法の詳細は、例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体及び抗体断片の生体外での生成を記述したMcCafferty et al., Nature 348, 552−553(1990))に見いだすことができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13、fdなどの糸状バクテリオファージの主要な又は少数のコートタンパク質遺伝子中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子表面で機能的抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNA複製物を含むので、抗体を機能的性質に基づいて選択すると、その性質を示す抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の諸性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で実施することができる。その総説については、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3, 564−571(1993)を参照されたい。幾つかのV遺伝子セグメント源をファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al., Nature 352, 624−628(1991)は、免疫マウスのひ臓に由来するV遺伝子の小規模無作為コンビナトリアルライブラリーから多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。Marks et al., J. Mol. Biol. 222, 581−597(1991)、又はGriffith et al., EMBO J. 12, 725−734(1993)に記載の技術に基本的に従って、非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、(自己抗原を含めて)多様な抗原に対する抗体を単離することができる。自然な免疫応答においては、抗体遺伝子は、変異を高速で蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化の一部はより高い親和性を与え、それに続く抗原曝露中に、高親和性表面免疫グロブリンを示すB細胞が優先的に複製され、分化する。この自然プロセスは、「鎖シャフリング」として知られる技術を使用することによって模倣することができる(Marks et al., Bio/Technol. 10, 779−783(1992))。この方法では、ファージディスプレイによって得られる「一次」ヒト抗体の親和性は、重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られたVドメイン遺伝子の天然変種(レパートリー)のレパートリーで順次置換することによって改善することができる。この技術によって、nM範囲の親和性を有する抗体及び抗体断片を作製することができる。極めて大きなファージ抗体レパートリーを作製する戦略は、Waterhouse et al., Nucl. Acids Res. 21, 2265−2266(1993)によって記述された。
【0118】
胞子上に表示されたエピトープライブラリーと抗体ライブラリーのファージディスプレイとの同時選択を図2に示す。手短に述べると、ステップ1において、胞子表示配座エピトープライブラリーをファージミド抗体ライブラリーと結合させる。胞子を遠心分離によって収集し、結合していない抗体ファージを洗い流す。次に、マウス抗ファージ抗体及び常磁性抗マウスビーズを添加することによって、結合していない胞子を除去する。ファージ−胞子コンプレックスは磁性カラムに結合する。次いで磁性カラムを洗浄して、結合していない胞子を除去する。これらのステップに従って、ファージ−胞子コンプレックスを回収することができ、ファージを胞子から解離させることができ、ファージと胞子を選択的に増幅することができる。上記ステップを必要に応じて通常更に2から4回繰り返すことができる。ステップ3において、例えば、マウス抗ファージ抗体、及び検出可能な程度に標識された(例えば、蛍光(gluorescent))抗マウス抗体を添加することによって、胞子を個々のマイクロプレートウェルに選別することができる。次いで、ファージを増幅し、胞子表示配列を有するbacillus(例えば、B.thuringiensis)を増殖させることができる。
【0119】
各々が同じ担体を用いて表示される場合、配座エピトープと抗体ライブラリーの同時選択も可能である。ファージディスプレイとして各々提示される配座エピトープと抗体ライブラリーの同時選択の例示的方法を図6に示す。ステップ1において、結合していない抗体ファージを除去する。まず、適切なタグ(例えば、HA)で標識されたファージミド配座エピトープライブラリーを、異なるタグ(例えば、FLAG)で標識されたファージミド抗体ライブラリーと結合させる。HAエピトープファージとコンプレックス型抗体ファージを親和性精製によって分離し、結合していない抗体ファージを洗い流す。次に、コンプレックス型ファージを解離させ、エピトープ及びライブラリーファージミドプールを、例えばE.coliを宿主として用いて、増幅する。ステップ2において、結合していないエピトープファージを除去する。まず、HAタグ付きファージミド配座エピトープライブラリーをFLAGタグ付きファージミド抗体ライブラリーと再結合させ、FLAG抗体ファージとコンプレックス型エピトープファージを親和性精製によって分離する。結合していないエピトープファージを洗い流し、コンプレックス型ファージを解離させ、エピトープ及びライブラリーファージミドプールを、例えばE.coli宿主細胞を用いて、増幅する。
【0120】
本発明をある種のファージ及び胞子ディスプレイ系に関連して説明したが、本発明はそのように限定されない。ファージ及び胞子ディスプレイ系は単なる説明のためのものであって、本明細書に具体的に言及されているかどうかにかかわらず、別のディスプレイも本発明の実施に適切である。
【実施例】
【0121】
本発明の更なる詳細を以下の非限定的実施例に記載する。
(実施例1)
直列に組み立てられた配座cDNA断片(図1及び2)
すべての発現可能なエピトープを標的集団から組み立てるために、まず、標的集団由来の発現された遺伝子のコレクションを用意する。本実施例では、目標は、活性化リンパ球由来のすべての可能な配座エピトープを捕捉することであるが、本明細書に記載の方法は、あらゆる源由来の配座エピトープを捕捉するのにも同様に適切である。
【0122】
まず、全血をBD Vacutainer(登録商標)CPT(商標)細胞調製管に収集することによって、末梢血単核球を3個体から単離する。次に、3個のコレクションの各々からの1e7細胞を混合し、続いて6時間インキュベートして、リンパ球を活性化する。インキュベーション後、新しい組織、又はRNAlaterで安定化された組織からTri試薬(Sigma)によって全RNAを抽出する。続いて、単離されたドナー全RNAを、oligotex精製(Qiagen)によってmRNAに更に精製する。次に、第1の鎖cDNA合成は、ランダム九量体オリゴヌクレオチド及び/又はオリゴ(dT)18プライマーを用いて、AccuScript逆転写酵素(Stratagene)の手順に従って、なされる。手短に述べると、Accuscript RT緩衝剤(Stratagene)中のmRNA 100ng、0.5mM dNTP及びランダム九量体300ng及び又はオリゴ(dT)18プライマー500ngを65℃で5分間インキュベートし、続いて4℃に急冷する。次いで、10×逆転写酵素反応緩衝剤(Stratagene)、100mM DTT、Accuscript RT及びRNAse Blockを添加し、42℃で1時間インキュベートする。70℃で15分間加熱して、逆転写酵素を不活性化する。次いで、これらのcDNA断片を、標準クローニングスキームによって、発現ベクターの2個の直列クローニング部位に順次クローン化することができる。直列部位は、合成リンカーによって分離され、又は遊離アミノ若しくはカルボキシ末端及び束縛されたループを提示可能な足場上に存在する。(図1、タイプI及びタイプII)。本実施例では、これらの発現された直列型断片は、Bacillus thuringiensisプロトキシンとの組換え融合の形で、胞子表面に繋留される。
【0123】
生成した胞子表示コレクションをコンビナトリアル抗体ライブラリーに対してスクリーニングして、活性化リンパ球配座エピトープに対して反応性であるクローンを濃縮する。スクリーニングのために、1000万から1億個のBacillus Thuringiensis胞子を含む1ミリリットルを100億から1000億個のファージと混合し、コレクションを室温で2時間インキュベートする。このインキュベーション後、胞子コレクション及び結合した抗体を遠心分離によって収集する。遠心分離によって、結合していないすべてのファージを除去し、結合していない胞子と胞子−ファージコンプレックスの両方のコレクションを得る。次に、マウスモノクローナル抗ファージ抗体、及び磁性選択の場合は抗マウス常磁性ナノ粒子(Miltenyi)、又はFACSによる濃縮若しくは単離の場合は蛍光複合型抗マウス抗体と一緒に混合物をインキュベートして、胞子−ファージコンプレックスをポジティブ選択する(図2)。次いで、コンプレックスをpH2.2グリシンで10分間処理し、次いで2M Trisで中和する。この酸溶出後、抗体−抗原相互作用を不可逆的に破壊し、ファージを胞子から離れて増幅し、E.coli.及びbacillusを再増殖し、選択することができる。或いは、ファージ及び胞子をコードするDNAを救済し、PCRなどの別の分子生物学的技術を用いて増幅することができる。
【0124】
3から5回の選択後、抗体プールは、活性化リンパ球について更に試験又は選択するのに十分に濃縮されたと予想される。特異的濃縮を実証するために、個体、又は抗体クローンのプールを、可溶性抗体断片として調製し、活性化リンパ球集団を染色する能力についてフローサイトメトリーによって試験する。
【0125】
具体的には、抗体クローン培養物200mlをE.coli系統HB2151中で、50μg/mlアンピシリン及び100μM IPTGを補充した2−YT中で30℃で終夜増殖させる。この終夜増殖後、細胞を遠心分離によって収集する。周辺質に蓄積した抗体タンパク質を単離するために、細胞をまずBBS−10E(200mMホウ酸、150mM塩化ナトリウム及び10mM EDTA)10mlに再懸濁させる。次に、BBS−10EL(200mMホウ酸、150mM塩化ナトリウム、10mM EDTA及び10mg/mlリゾチーム)5mlを添加し、混合物をオービタルシェーカーに37℃で60から90分間置く。このインキュベーション後、抗体を含む溶解物から細胞破片を遠心分離によって除去する。次に、この溶解物を親胞子と一緒にインキュベートして、同族のエピトープとの結合を検出する。具体的には、3%BSAを含むPBSによって最終体積0.1mlで室温で15分間胞子をブロックする。これらのブロックされた胞子に溶解物0.1mlを添加し、混合物を4℃で1時間インキュベートする。次に、PBS 0.8mlを添加して洗浄し、次いで胞子を遠心分離によって再単離する。次いで、マウスモノクローナル抗His6抗体を使用し、4℃で30から60分間インキュベートして、胞子と結合した抗体を検出する。更に1回洗浄後、適切な抗マウスフィコエリトリン蛍光団複合体を用いて結合を検出する。
【0126】
任意の特異抗体に対する同族の抗原を伝統的プロテオミクス及び分子生物学的方法によって特定することができる。或いは、明確に特定された抗体を使用して、配座エピトープを含むその同族の胞子クローンを回収することができる。エピトープは、胞子によって運ばれるプラスミド上にコードされるので、エピトープの配列を決定し、エピトープを使用して、公的に利用可能な配列データベースから親遺伝子又は複数の親遺伝子を特定することができる。
【0127】
本実施例に記載のプロセスは、対象となる任意の特別な細胞集団又は組織に対してすべての可能な抗原を生成すると予想される。これらの断片は無秩序であるので、配座エピトープを評価することができるだけでなく、単一タンパク質由来、さらには複数のタンパク質由来の不連続エピトープも評価することができる。
(実施例2)
単一遺伝子配座断片
指定の抗原に対する抗体の生成においては、典型的には、免疫優性エピトープ又は複数の免疫優性エピトープに対する液性応答が見られる。多くの場合、望ましい機能的抗体は、免疫優性のより低いエピトープを認識する必要があり得る。この場合、免疫優性エピトープを抗体でブロックし、次いで再免疫又は選択しようとすることが多い。次いで、液性応答は、所望の抗体をまだ生成し得る、又は生成し得ない、次に最も接触可能なエピトープに向けられる。新しい抗体発見の目標は、機能的配座エピトープに対する抗体を生成することであるので、選択のためにかかるエピトープ(又は複数のエピトープ)を発現させることになる。単一エピトープは、線状決定要因に対する応答しか生じない場合があり、生成した抗体は未変性タンパク質を認識しない可能性がある。かかる未変性タンパク質に対する配座抗体を生成する見込みを増加させるために、このエピトープは、未変性タンパク質に近似させるために、ある重要な構造要素に関連して発現される必要がある。
【0128】
したがって、所望のエピトープを直列型構築物の単一部位中に合成的に組み立て、次いで、第2の部位に親タンパク質由来の断片を補充する。この第2の断片は、構造的配座触媒として役立つ。特定の一実施形態においては、第1の断片は単一配列を用いて固定され、次いで親タンパク質由来の無秩序な断片が第2の部位に挿入され、次いで第2の部位は、Bacillus thuringiensis胞子コートタンパク質などのBacillus担体に組換えによって繋留される。次に、実施例1に記載のように、このコレクションをコンビナトリアル抗体ライブラリーに対してスクリーニングする。3から5回の二重選択後、この濃縮抗体コレクションを未変性タンパク質に対して対抗選択する。未変性構造を認識する結合抗体を保持し、増幅し、同定する。配座触媒作用は、関連した構造上の代替物によっても提供され得る一般的構造支持を与えると予想される。したがって、第2の部位の別の選択肢として、単一モチーフ、又は代替構造モチーフのコレクションを組み入れて、配座エピトープ形成を補完し、「触媒する」。
【0129】
本実施例においては、単一エピトープの強制認識を記述する。しかし、すべての可能なエピトープの発現が分離されるように、断片を無作為化することもできる。この場合、単一タンパク質に対するすべての可能なエピトープを同時にスクリーニングすることができ、それによって特定のタンパク質に対してすべての可能な抗体溶液を生成することができる。
(実施例3)
可溶性スーパーファミリー配座抗原(図3及び4)
導入された配列が最初のタンパク質の一部又は全部の配座要素を採用するように、標的タンパク質の単一の線状又は不連続配列を代替足場上に提示することができる。本実施例においては、公知の標的抗体相互作用をトロンボポイエチン(Tpo)、4ヘリックスバンドルサイトカイン及び中和抗体の間で再現する。抗Tpo抗体TN1は、Tpo由来の交差ループを認識する。このループが、エリスロポイエチン(Epo)などの密接に関連した代替4ヘリックスバンドルタンパク質に重なるときには、TN1抗体がキメラタンパク質と結合するように十分な構造上の配座を有すると予想される。
【0130】
具体的には、2タイプのEpo−Tpoループタンパク質を構築する。第1のEpo−Tpoループタンパク質は、Tpo由来のアミノ酸57から61をEpo中のアミノ酸57から61の代わりに用いる。これは、交差ループに相当する。ループの前後関係の提示(contextual presentation)が重要であり得るので、Tpo由来の隣接ヘリックス配列を更に含む別のEpo−Tpoループタンパク質も作製する。この場合、Tpo由来のアミノ酸53から68で、Epo中のアミノ酸53から68を置換する。交差ループに更なる配座安定性を付与することを意図して、境界は、TpoとEpoの両方に存在する保存配列によって画定される。TN1抗体の結晶構造はBヘリックスweと幾つかの軽微な近接接触(proximal contact)を示したので、前述のTpoループ構築物の両方を、Epo中のアミノ酸114から139の代わりにTpo由来のアミノ酸110から125による対応するTpo置換、及びEpo中のアミノ酸102から148の代わりにTpo由来のアミノ酸97から134による対応するTpo置換を含む、Epo−Tpo変異体のバックグラウンドにおいても作製する。
【0131】
上記Epo−Tpoループタンパク質を、Bacillusプロトキシン胞子ディスプレイ系と組換え融合させ、胞子をTN1抗体に対してスクリーニングする。これらの構築物は、1回のパニングにおいて、無関係な負の対照抗体よりもTN1抗体に選択的に結合し、TN1抗体を濃縮すると予想される。次に、本発明者らは、3から5回の胞子パニングによって、コンビナトリアル抗体ライブラリーに対して、濃縮性の最も高いETLタンパク質をスクリーニングする。これが終了した後、濃縮された抗体を未変性Tpoタンパク質との結合について対抗選択する。その結果、特定された任意の抗Tpo抗体は、TPO交差ループの事実上の結合剤になる。
【0132】
多数の公知サイトカイン及び成長因子は、極めて変わりやすいループ構造を有する4ヘリックスバンドルタンパク質であるので、Epoなどの代替4ヘリックスバンドル足場を利用して、公知4ヘリックスバンドルタンパク質由来のループのライブラリーを表示することができる。この手法によって、すべての公知4ヘリックスバンドルタンパク質に対する抗体の容易かつ定方向の抗体選択が可能になる。或いは、これらの足場は、任意の数の標的タンパク質由来の複数のループ、単一若しくは複数のヘリックス置換、又はさらにはループとヘリックスの組合せまでも含むように、操作することができる。ひいては、可溶性単一スパンタンパク質の別の保存された構造要素を利用して、同族のスーパーファミリータンパク質内のそれらの重要な要素に対する抗体認識を与え、誘導することができる。
(実施例4)
マルチスパンスーパーファミリー配座抗原−GPCR 図1
実施例3と同様に、導入された配列が、未変性標的タンパク質中に存在する配座要素を部分的又は完全に採用するように、標的タンパク質の単一の線状又は不連続配列を代替足場上に提示することができる。例として、マルチスパンGタンパク質共役受容体の細胞外ドメインの部分を無関係なタンパク質足場にグラフトする。Gタンパク質のB1断片は、それぞれCCR3由来の成熟アミノ末端及びCCR3由来の第3の細胞外ループで置換することができる遊離アミノ末端及び近位ループ構造を有する。以前の研究では、融合物は、親和性が全体として1/1000に低下しても、完全長CCR3受容体に対して同様に位置付けられる親和性で、CCR3同族リガンド、エオタキシン及び変異体に結合した(Datta, Protein Sciences vol. 12, pg.2482, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2003)。これらの結果によれば、可溶性構築物は、受容体を模倣するのに十分な配座要素を部分的に提供し得る。CCR3との品質管理結合(quality control binding)のために、B1キメラを可溶性又はファージ表示されたエオタキシンを用いて試験した。具体的には、アミノ末端(アミノ酸1から34)及びCCR3の第3の細胞外ループ(アミノ酸265から281)を、アミノ末端の2個のアミノ酸の代わりに用い、Gタンパク質のB1ドメイン断片のループアミノ酸18と19の間に挿入する。次に、胞子表面に表示されたこの構築物を、3から5回の濃縮によってコンビナトリアル抗体ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、濃縮プールを、CCR3を過剰発現する操作されたほ乳動物細胞系に対してポジティブ選択する。次いで、生成した抗体クローンを組換え発現させ、精製し、次いでCCR3との結合について、又はエオタキシン中和アッセイにおいて、試験する。
【0133】
第2の例として、CCR2のアミノ末端、及び第3の細胞外ループを、B1ディスプレイ足場上に同様に表示し、中和抗CCR2抗体1D9に対する反応性を試験する。具体的には、アミノ末端(アミノ酸1から42)及びCCR2の第3の細胞外ループ(アミノ酸269から285)を、アミノ末端の2個のアミノ酸の代わりに用い、Gタンパク質のB1ドメイン断片のループアミノ酸18と19の間で置換される。次に、胞子表面に表示されたこの構築物を、3から5回の濃縮によってコンビナトリアル抗体ライブラリーに対してスクリーニングする。濃縮プールを、CCR2を過剰発現する操作されたほ乳動物細胞系に対してポジティブ選択する。生成したクローンを精製し、CCR2との結合について、又はMCP−1中和アッセイにおいて、試験する。実施例1に記載のように、胞子期(spore−phase)スクリーニングを実施する。
【0134】
重要なことには、これら2つの例では第3の細胞外ループを選択したが、第1の細胞外ループを代わりに使用することができ、又は第2の細胞外ループでも代わりに使用することができる。1個を超える細胞外ループを組み入れ、又はこれらのループ由来の膜近傍領域の部分でさえも組み入れて、より多くの配座構成(conformational context)を提供することが必要又は有利であり得る。類似の手法は、すべてのGタンパク質共役受容体(GPCR)、イオンチャネル、並びに他のマルチスパン及び他の可溶性又は統合マルチループタンパク質などの構造モチーフを有する別のタンパク質に適用することができる。
(実施例5)
配座抗原を特定し、生成する生物情報学手法
上記実施例は、個々のタンパク質又はスーパーファミリー、及び無秩序なコレクションを使用する方法を記載する。重要なことには、無秩序なコレクションは、発現されたcDNAに由来する可能性があり、cDNAの表示は、相対発現レベルによって極めて偏り、タンパク質のタイプ、又は未変性タンパク質上の断片の接触性に限定されない。また、無秩序な断片のクローニングにおいては、せいぜい、方向性を制御できるのみに過ぎず、枠の適切な読みを制御することはできない。したがって、そのアミノ又はカルボキシ末端において適切な融合を形成しない多数の非生産的クローンが存在すると予想される。これらの態様の一部は、生物情報学手法によって扱うことができる。
【0135】
例えば、実施例1に記載の活性化リンパ球由来の発現遺伝子断片を直接クローン化する代わりに、活性化リンパ球における遺伝子発現を検討して、発現特性(trait)の変化した目的遺伝子を見つける。一次フィルターとして、本発明者らは、細胞外である目的遺伝子に焦点を合わせることができる。次に、対応するcDNAを合成又は救済し、上記実施例に記載の手順と同様に、その断片をクローン化する。その結果、生産性融合をもたらす適切な配向及び枠にある断片のみが生成する。最終結果として、このコレクションのスクリーニングによって、細胞外タンパク質に対する抗体のみが生成する。
【0136】
追加の生物情報学段階として、上記目的遺伝子を更に検討し、これらのタンパク質の外面に存在する予測溶媒和領域を特定する。次いで、これらの溶媒和領域を合成し、配座足場にクローン化し、コンビナトリアル抗体ライブラリーに対してスクリーニングすることができる。この追加の段階によって、タンパク質の予測曝露領域のみからなる断片を作製し、接触可能なエピトープに対してコレクションを更に生産的にする。
【0137】
どちらの合成手法でも主要な利点は、遺伝子を標準化する能力であり、又は遺伝子誘導レベル、時間的発現などの他の関連する判定基準に基づく指定の偏り(custom bias)までも生じる能力である。この手法は、予測される細胞内タンパク質をコードする遺伝子に対して使用することもでき、細胞内抗体として使用するための抗体を単離することもできる。
(実施例6)
抗体抗原コンプレックスのスクリーニング(図5)
抗体は、その可変領域における特異的相互作用によって抗原に結合する。安定な結合がしばしば形成され、一方又は両方の成分において誘導適合のために維持される。抗体の場合には、リガンド結合抗体とリガンド非結合抗体は構造的に異なることが判明した。この構造上の差は、配座エピトープ提示を利用して、特定の抗体−抗原コンプレックスを認識する抗体をスクリーニングすることによって、活用される。
【0138】
一例においては、抗体を直列型発現プラスミドの第1の部位にクローン化し、同族のエピトープを第2の部位にクローン化する。抗原を抗体の近位に配置することによって、抗原は抗体に対する配座触媒として作用することができる。その結果は、コンプレックススクリーニングに適切な安定な繋留された抗原−抗体コンプレックスである。さらに、抗原結合は、抗体における独特の配座変化を誘発するので、この安定な提示によって、リガンド結合した特定の抗イディオタイプ抗体を効率的に特定することができる。
【0139】
例えば、抗c−myc抗体(9E10)は、柔軟なリンカー[(Gly−Ser)]のアミノ末端において発現され、Bacillusプロトキシンに組換え繋留されたc−mycペプチドエピトープに結合することができる。生成した胞子表示コンプレックスをコンビナトリアルファージ抗体ライブラリーに対してスクリーニングして、抗コンプレックス抗体及び抗リガンド結合抗イディオタイプ抗体を見つける。これらの生成した抗体のどちらかを9E10抗体と一緒に二重特異性抗体の1本のアームとして使用することができる。この二重特異性抗体を細胞外装飾されたc−myc細胞と組み合わせると、2つの結果が得られる。1つは、c−mycと9E10アームの「定方向」反応である。第2の予想される結果は、抗イディオタイプアームが、別の二重特異性抗体分子の9E10+c−mycタンパク質コンプレックス又はリガンド結合9E10アームに結合する、「トランス」反応である。この「トランス」反応は、すべての標的が化学量論的に消費されるまで続く、進行性の反応である。実際には、この「抗体連鎖反応」は、抗体と標的の結合を装飾し、強化して、最大量のFcを標的に送達し、安定化する。
(実施例7)
ファージ−ファージ標的−抗体選択(図6)
上記実施例においては、胞子を使用してエピトープコレクションを表示し、ファージを使用して抗体選択を表示した。コレクションが、選択に対して物理的に識別可能であり、かつ増幅に対して遺伝子的に識別可能である場合、同じディスプレイ系を用いて両方のコレクションを表示することもできる。
【0140】
本実施例においては、第一ステップは、異なる抗生物質耐性、すなわち、エピトープライブラリーの場合のテトラサイクリン耐性と抗体コレクションの場合のアンピシリン耐性を有するプラスミドにおいてコレクションを発現させることである。第二に、ファージコートタンパク質にエピトープタグを付けて、別個のコレクションを物理的に識別する。そうするために、独特の親和性タグをpVIIコートタンパク質のアミノ末端に組換え融合させる。具体的には、まず、FLAG(DYKDDDDK)又はHA(YPYDVPDYA)ペプチドpVIIタグ付きヘルパーファージを作製する。例えば、HAヘルパーファージを使用して、エピトープライブラリーファージミドコレクションを作製することができ、FLAGヘルパーファージを使用して、抗体ファージミドライブラリーコレクションを作製することができる。1e6−7エピトープライブラリーファージミドをPBS+1%BSA 1ml中で1e9−10抗体ライブラリーファージミドと混合し、室温で2時間インキュベートする。次に、抗HA被覆プロテインAビーズを混合物と一緒に4℃で1時間インキュベートする。次いで、ビーズをPBS+0.05% Tween−20で3から5回洗浄する。最後に、ビーズをpH2.2 グリシンで10分間処理し、次いで2M Tris塩基で中和する。このステップは、抗体−抗原コンプレックスを不可逆的に解離させ、それらにE.coliを感染させ、アンピシリン又はテトラサイクリン選択下で増幅させることができる。増幅されたコレクションは、エピトープライブラリー全体、及び生産性抗体のみの結合剤を含む。次の選択ステップは、前のステップに類似しているが、HA沈殿の代わりに抗FLAG沈殿を実施する。したがって、このステップは、結合していないすべてのエピトープライブラリーメンバーを除去し、生産性エピトープ−抗体コレクションのみを強化する。
【0141】
この例は、抗体−抗原相互作用を挙げたが、同じ手法は、任意の数又は種類の相互作用的ファージ表示コレクションにも有効であると予想される。これらは、別の抗体に対する抗体であり得、又は受容体若しくは酵素に対するペプチドでさえあり得る。タグが適切なエピトープ又は抗体集団に各回で適切に再生される場合、単一の免疫学的に異なるヘルパーファージを用いて類似の結果を達成することもできる。この免疫学的に異なる差は、ヘルパーファージコートタンパク質中に設計することができ、又は2種類のファージコートタンパク質間に天然に存在し得る。
(実施例8)
配座エピトープと抗体ライブラリーの同時選択
上記例では、配座エピトープライブラリーコレクションを使用して、未変性タンパク質を認識する抗体、又は天然に提示される標的を濃縮した。しかし、今記述する系を用いて、同時配座標的−抗体選択を実施することができる。この例の目標は、特定の標的−抗体対形成を維持することである。これは、例えば、標的が不溶性胞子粒子に結合し、抗体が可溶性糸状バクテリオファージに融合するときなど、標的コレクションディスプレイが抗体ディスプレイコレクションと実質的に物理的に異なるときにのみ可能である。対形成を維持するために、まず、標的コレクションを抗体コレクションと混合する。適切なインキュベーション時間後、胞子標的コレクションを遠心分離によって収集し、結合していないファージを適切な洗液を用いて除去する。結合していないファージを除去する洗浄ステップ後、コンプレックス型コレクションをモノクローナル抗ファージ抗体と一緒にインキュベートし、次いでファージ結合胞子のポジティブ磁性選択のために常磁性抗マウスビーズと結合させる。或いは、ファージ−胞子及び抗ファージコンプレックスを蛍光団複合型抗マウス抗体を用いて検出することができ、個々の胞子をFACSによってクローン的に選別することができる。対の組合せを適切な条件下で個々に救済して、バクテリオファージを処理可能に(addressably)独立に救済し、Bacillus胞子を増殖させることができる。
【0142】
上記記述においては、本発明を特定の実施形態に関連して説明したが、本発明はそのようには限定されない。実際、本明細書に示し、記載するものに加えて、本発明の種々の改変が、上記記述から当業者に明らかになるはずであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0143】
本明細書を通して引用するすべての参考文献、及びその中で引用される参考文献を、参照によりその全体を本明細書に明確に援用する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、前記集合体の少なくとも一部が、配座的に束縛されたポリペプチド標的を形成し、前記断片の少なくとも一部が抗体断片以外である、物理的に選択可能なディスプレイ。
【請求項2】
配座エピトープライブラリーである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
1個を超えるポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、同じポリペプチドの異なる部分に由来する2個以上の断片、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、異なるポリペプチドに由来する断片、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、抗体又は抗体断片、及び前記抗体又は抗体断片のリガンドを含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が互いに直接融合する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が外来性連結配列によって結合される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記直列型又は多量体集合体において、少なくとも幾つかの前記断片又は配列が、構造支持要素からなる、又は構造支持要素を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項10】
配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中に存在する断片又は模倣配列の近接の結果として形成される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項11】
配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中の構造支持要素の存在の結果として形成される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記構造支持要素が、1個以上のタンパク質ファミリーに特有なモチーフである、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記構造支持要素が、ヘリックスバンドル、βシート構造、三葉構造、膜貫通ヘリックス及び細胞外ループからなる群から選択される、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項14】
配座的に束縛されたポリペプチド標的が受容体配列を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記受容体配列が受容体の構造モチーフを含む、請求項14に記載のディスプレイ。
【請求項16】
生体内及び生体外ディスプレイ系からなる群から選択される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項17】
ウイルス、真核生物、細菌、リボソーム、mRNA及びDNAディスプレイ系からなる群から選択される、請求項16に記載のディスプレイ系。
【請求項18】
バクテリオファージディスプレイである、請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項19】
前記真核生物ディスプレイ系がほ乳動物又は酵母ディスプレイである、請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項20】
前記細菌ディスプレイ系が細菌細胞又は胞子ディスプレイである、請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項21】
前記細菌ディスプレイ系がBacillus subtilis又はBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項22】
前記細菌ディスプレイ系がBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項23】
(a)1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、前記集合体の少なくとも一部が、配座的に束縛されたポリペプチド標的を形成し、前記断片の少なくとも一部が抗体断片以外である、物理的に選択可能なディスプレイを用意すること、
(b)互いに結合親和性を有する配座的に束縛されたポリペプチド標的と結合相手候補が標的−結合相手コンプレックスを形成する条件下で、前記ディスプレイを結合相手候補のライブラリーと接触させること、及び
(c)形成された標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部を検出すること
を含む、スクリーニング方法。
【請求項24】
(d)検出された標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列を特定するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
検出されたすべての標的−結合相手コンプレックスの形成に関与する標的配列が特定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ディスプレイが、1個を超えるポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、同じポリペプチドの異なる部分に由来する2個以上の配列、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、異なるポリペプチドに由来する断片、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、抗体又は抗体断片、及び前記抗体又は抗体断片のリガンドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が互いに直接融合する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が外来性連結配列によって結合される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記直列型又は多量体集合体において、2個以上の配列の少なくとも一部が、構造支持要素からなる、又は構造支持要素を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中に存在する断片又は模倣配列の近接の結果として形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
配座的に束縛されたポリペプチド標的の少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中の構造支持要素の存在の結果として形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記構造支持要素が、1個以上のタンパク質ファミリーに特有なモチーフである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記構造支持要素が、ヘリックスバンドル、βシート構造、三葉構造、膜貫通ヘリックス及び細胞外ループからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
結合相手候補が抗体又は抗体断片である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、dAb、scFv及び(scFv)断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体及び多重特異性抗体からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体断片がscFv断片である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体又は抗体断片が抗体ライブラリーの一部である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
結合タンパク質候補が抗体模倣物である、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
抗体模倣物がAffibody又はアプタマーである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記物理的に選択可能なディスプレイが生体内又は生体外ディスプレイ系である、請求項23に記載の方法。
【請求項44】
前記物理的に選択可能なディスプレイが、ウイルス、真核生物、細菌、リボソーム、mRNA及びDNAディスプレイ系からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ディスプレイ系がバクテリオファージディスプレイである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記真核生物ディスプレイ系がほ乳動物又は酵母ディスプレイである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記細菌ディスプレイ系が細菌細胞又は胞子ディスプレイである、請求項44に記載のライブラリー。
【請求項48】
前記細菌ディスプレイ系がBacillus subtilis又はBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体ライブラリーが表示される、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
抗体ディスプレイが生体内又は生体外ディスプレイ系である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
抗体ディスプレイが、ウイルス、真核生物及び細菌ディスプレイ系からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記ディスプレイ系がバクテリオファージディスプレイである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記真核生物ディスプレイ系がほ乳動物又は酵母ディスプレイである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記細菌ディスプレイ系が細菌細胞又は胞子ディスプレイである、請求項51に記載のライブラリー。
【請求項55】
前記細菌ディスプレイ系がBacillus subtilis又はBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
抗体ライブラリーがファージライブラリーであり、物理的に選択可能なディスプレイが胞子ディスプレイ又はファージディスプレイである、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記胞子ディスプレイがBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記配座的に束縛されたポリペプチド標的が受容体配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項59】
結合相手が受容体リガンド候補である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記受容体配列が受容体の構造モチーフを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する抗体配列又は抗体断片配列が更に特定される、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列及び抗体配列をステップ(d)の前に濃縮及び分離するステップを更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
濃縮及び分離に続いて、ステップ(d)の前に、標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列及び抗体配列を個別に回収するステップを更に含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
標的−結合相手コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する標的配列が配座エピトープの一部である、請求項38に記載の方法。
【請求項65】
(a)1個以上の未変性若しくは変種ポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む物理的に選択可能なディスプレイであって、前記集合体の少なくとも一部が配座エピトープを形成する、物理的に選択可能なディスプレイを用意すること、
(b)互いに結合親和性を有する配座エピトープと抗体ライブラリーのメンバーとが配座エピトープ−抗体コンプレックスを形成する条件下で、前記ディスプレイを抗体ライブラリーと接触させること、及び
(c)形成された配座エピトープ−抗体コンプレックスの少なくとも一部を検出すること
を含む、方法。
【請求項66】
(d)検出された配座エピトープ−抗体コンプレックスの少なくとも一部の形成に関与する配座エピトープ及び抗体配列を特定するステップを更に含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
形成されたすべての配座エピトープ−抗体コンプレックスが検出される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
検出されたすべての標的−結合相手コンプレックスの形成に関与する配座エピトープ配列が特定される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ディスプレイが、1個を超えるポリペプチドの離散的若しくは無秩序な断片の、又は前記断片を模倣した配列の、直列型又は多量体集合体を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、同じポリペプチドの異なる部分に由来する断片、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、異なるポリペプチドに由来する断片、又は前記断片を模倣した配列を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記直列型又は多量体集合体の少なくとも一部が、抗体又は抗体断片、及び前記抗体又は抗体断片のリガンドを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が互いに直接融合する、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が外来性連結配列によって結合される、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記直列型又は多量体集合体において、前記断片又は配列の少なくとも一部が、構造支持要素からなる、又は構造支持要素を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
配座エピトープの少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中に存在する断片又は模倣配列の近接の結果として形成される、請求項65に記載の方法。
【請求項77】
配座エピトープの少なくとも一部が、前記直列型又は多量体集合体中の構造支持要素の存在の結果として形成される、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記構造支持要素が、1個以上のタンパク質ファミリーに特有なモチーフである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記構造支持要素が、ヘリックスバンドル、βシート構造、三葉構造、膜貫通ヘリックス及び細胞外ループからなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記抗体ライブラリーが抗体断片を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項81】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、dAb、scFv及び(scFv)断片、抗体断片から形成される線状抗体、単鎖抗体分子、ミニボディ、二重特異性抗体及び多重特異性抗体からなる群から選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗体断片がscFv断片である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記物理的に選択可能なディスプレイが細菌細胞又は胞子ディスプレイである、請求項65に記載の方法。
【請求項84】
前記細菌ディスプレイ系がBacillus subtilis又はBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
抗体ライブラリーがファージライブラリーであり、物理的に選択可能なディスプレイが胞子ディスプレイ又はファージディスプレイである、請求項65に記載の方法。
【請求項86】
胞子ディスプレイがBacillus thuringiensis胞子ディスプレイである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
配座エピトープが、遺伝子断片の直列型又は多量体集合体の発現によって得られる、請求項65に記載の方法。
【請求項88】
遺伝子断片が、生物学的に関連する標的源から生じる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記生物学的に関連する標的源が、細胞、組織、器官及び生物体からなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記生物学的に関連する標的源が、幹細胞、活性化された免疫細胞、患部組織、器官及び病的生物体からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
遺伝子断片の少なくとも一部が、生物学的に関連する標的源における遺伝子発現データの分析によって特定される、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列によって分離された、抗体又は抗体断片をコードするヌクレオチド配列と前記抗体又は抗体断片のリガンドをコードするヌクレオチド配列とを含む、核酸分子。
【請求項93】
請求項92に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項94】
請求項93に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項95】
真核生物又は原核生物宿主細胞である、請求項94に記載の宿主細胞。
【請求項96】
細菌、ほ乳動物又は酵母細胞である、請求項95に記載の宿主細胞。
【請求項97】
E.coli細胞である、請求項95に記載の宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−515463(P2010−515463A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545704(P2009−545704)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/050877
【国際公開番号】WO2008/089073
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508339161)シー レーン バイオテクノロジーズ, エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】