説明

配水管継手の密封構造

【課題】配水管継手10に設けられたゴム状弾性材料からなるパッキン12の劣化を極力抑えてその使用寿命を向上させる。
【解決手段】配水管20と、この配水管20を接続する継手本体11との間を密封するゴム状弾性材料からなるパッキン12が、継手本体11の内周面に形成されたパッキン保持溝11aに保持され、パッキン12よりも配水管20の端部20a側の外周に位置する継手本体11の内周面に、多数の凹凸11cが形成されたものである。配水管20内を流れる水Wの一部が、配水管20の端部から継手本体11と配水管20との間の円筒状隙間G2へ侵入しても、このような侵入水の流れFは凹凸11cによって減衰され、パッキン12に対する動的接触が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配水管継手において、配水管と、この配水管を接続する継手本体との間で漏水を防止するための密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道水の配水管を接続する継手には、配水管を継手本体に挿し込むことによって、継手本体の内周に取り付けたパッキンが配水管の外周面に密接嵌合し、これによって漏水が防止されると共に抜け止めされるようにしたワンタッチ式の継手(例えば特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2005−133748号公報
【0003】
図2は、この種の配水管継手における従来の密封構造を示す断面図で、参照符号100は配水管継手、参照符号200,200はこの配水管継手100によって互いに接続される一対の配水管である。配水管継手100は、内周に配水管200が挿し込まれる筒状の継手本体101と、配水管200の外周面に食い込むことによってこの配水管200を継手本体101に対して抜け止めする不図示の配水管ホルダと、継手本体101の内周面に形成されたパッキン保持溝101a内に装着されて、その溝内面及び配水管200の外周面に密接嵌合されることにより漏水を防止するパッキン102とを備える。なお、参照符号101bは、継手本体101に対する配水管200の挿入長さを制限するために継手本体101の内周面に形成された突起部である。
【0004】
ここで、配水管200内を流れる密封対象の水道水Wは、殺菌のための塩素を含んでいるため、パッキン102の材質としては、耐水性のあるEPDM(エチレンプロピレンゴム)や、耐塩素性及び耐熱水性のあるFKM(フッ素ゴム)が用いられている。特にFKMは、圧縮状態で塩素水に浸漬した評価試験において高い耐性を示すので、好適に使用されている。
【0005】
しかしながら、配水管200内を水道水が流れる実際の使用では、水道水への静的な浸漬試験での評価結果に比較して早期に材質が劣化してしまうことがあり、問題となっていた。これは、配水管200内を流れる水道水Wの一部が、配水管200の端部から継手本体101と配水管200との間の隙間へ侵入して、図中矢印Fで示されるような渦流を形成しながらパッキン102に動的に接触し、水道水Wに含まれる塩素の攻撃性によって、パッキン102の接液面からゴム材質中の組成物が水中へ浸出し、これによってパッキン102の劣化が促進されるからであることが判明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、配水管継手に設けられたゴム状弾性材料からなるパッキンの劣化を極力抑えてその使用寿命を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る配水管継手の密封構造は、配水管と、この配水管を接続する継手本体との間を密封するゴム状弾性材料からなるパッキンが、前記継手本体の内周面に形成されたパッキン保持溝に保持され、前記パッキンよりも前記配水管の端部側の外周に位置する前記継手本体の内周面に、多数の凹凸が形成されたものである。
【0008】
このように構成すれば、配水管内を流れる水の一部が、配水管の端部開口から継手本体と配水管との間の隙間へ侵入した水の流れが、パッキンに到達するまでの間に継手本体の内周面に形成された多数の凹凸によって乱流を生じるので減衰され、多数の凹凸によって水との接触面積が大きくなることも、流動エネルギの減衰に寄与するので、パッキンに対する侵入水の動的接触が抑えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る配水管継手の密封構造によれば、配水管継手に設けられたゴム状弾性材料からなるパッキンに対して、密封対象の水の動的接触が抑えられるので、水中の塩素などの物質によるパッキンの浸食が抑制され、その使用寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る配水管継手の密封構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、本発明に係る配水管継手の密封構造の好ましい実施の形態を示す要部断面図で、この図1において、参照符号10は配水管継手、参照符号20,20はこの配水管継手10によって互いに接続される一対の配水管である。
【0011】
配水管継手10は、筒状の継手本体11と、この継手本体11の内周に挿し込まれた配水管20の外周面に食い込むことによってこの配水管20を継手本体11に対して抜け止めする不図示の配水管ホルダと、継手本体11の内周面に形成されたパッキン保持溝11aに保持されて、その溝内面及び配水管20の外周面に密接嵌合されることにより漏水を防止するパッキン12とを備える。なお、参照符号11bは、継手本体11に対する配水管20の挿入長さを制限するために継手本体11の長手方向中間位置の内周面に形成された突起部である。
【0012】
パッキン12は、耐水性のあるゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)、なかでも耐塩素性及び耐熱水性のあるFKM(フッ素ゴム)からなるものであって、図示の例では断面が円形をなすいわゆるOリングが使用され、継手本体11のパッキン保持溝11aの底面と、配水管20の外周面との間に、適当に圧縮された状態で介在している。
【0013】
パッキン12による密封部よりも配水管20の端部20a側(密封対象の水が流入する側)の外周に位置する継手本体11の内周面、言い換えればパッキン保持溝11aよりも突起部11b側の内周面には、多数の凹凸11cが形成されている。この凹凸11cは、円周方向へ延びる凸部と溝が軸方向交互に形成されたものでも良いし、らせん状に延びるものであっても良いし、軸方向及び円周方向に対して適当な密度で形成されたものでも良い。
【0014】
なお、図1には主に突起部11bの左側(上流側)の構造が示されているが、突起部11bの右側(下流側)の密封構造も、左側と同様(対称)となっており、すなわち突起部11bとその右側に存在する不図示のパッキン保持溝との間の内周面にも多数の凹凸11cが形成されている。
【0015】
上記構成において、配水管20内を水道水Wが図中左側から右側へ流れるものと仮定すると、この水道水Wの一部は、継手本体11の突起部11bとこれに対向する配水管20の端部20aとの間の隙間G1から継手本体11の内周面と配水管20の外周面との間の円筒状隙間G2へ侵入する。
【0016】
しかしながら、継手本体11と配水管20との間の円筒状隙間G2へ侵入した水の流れは、継手本体11の内周面に形成された多数の凹凸11cによって乱され、しかもこの凹凸11cによって水との接触面積が大きくなるため、流動抵抗が大きくなって流動エネルギが有効に減衰され、パッキン保持溝11a付近の空間Sに到達するまでに流れFが著しく低減され、パッキン12に対する動的接触が抑制される。したがって、パッキン12のゴム組成物が、水道水W中の塩素の攻撃性によって浸食されにくくなり、パッキン12の劣化が促進されるのを有効に防止することができる。
【0017】
なお、上述の作用は突起部11bの右側(下流側)でも同様に行われる。
【0018】
ところで、流れFをパッキン12に対して確実に遮断するには、継手本体11の内周面に形成された凹凸11cの内径(凸部の内径)を配水管20の外径に近付けることによって、配水管20との間の円筒状隙間G2を径方向に対してある程度小さくすることが望ましいが、前記円筒状隙間G2はそれほど小さくしなくても、多数の凹凸11cによって流れFを十分に低減することができる。したがって、継手本体11の内周へ配水管20,20を挿し込むことによって互いに接続する際に、配水管20の端部20aが凹凸11cに引っ掛かったりすることにより接続作業が困難になるようなことはなく、良好な作業性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る配水管継手の密封構造の好ましい実施の形態を示す要部断面図である。
【図2】配水管継手における従来の密封構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 配水管継手
11 継手本体
11a パッキン保持溝
11c 多数の凹凸
12 パッキン
20 配水管
20a 端部
G1 隙間
G2 円筒状隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管と、この配水管を接続する継手本体との間を密封するゴム状弾性材料からなるパッキンが、前記継手本体の内周面に形成されたパッキン保持溝に保持され、前記パッキンよりも前記配水管の端部側の外周に位置する前記継手本体の内周面に、多数の凹凸が形成されたことを特徴とする配水管継手の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−151289(P2010−151289A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332726(P2008−332726)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】