説明

配管の振動検知装置

【課題】水撃作用によるか地震によるかを問わず、配管のどこの位置で振動が生じたのかを手軽な機器のみを用いて簡単に検知できるようにすること。
【解決手段】建物11の側に設置されて隙間を開けて配管31を包囲する枠体111と、配管31を接触状態で包囲する配管包囲体131とを、予め決められた引張力を超えると破断するセンサ151で緩みなく結合する。センサ151が破断した箇所は、配管31がある程度の限度を越えて振動して枠体111から離反した箇所であるので、センサ151の破断状態を見ることで、水撃作用や地震という原因如何によらず、その箇所の配管31に振動が発生したかどうかを一見して見極めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラントに這い回された配管に水撃作用や地震等によって発生した振動を検知する配管の振動検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントには、各種の配管が張り巡らされている。水等の流体を流通させる配管では、水撃作用が発生することがある。水撃作用が生ずると、配管の振動や騒音の問題のみならず、配管に疲労や損傷を引き起こす。これに加えて、エロージョン(腐食)によるバルブや菅壁の損傷も水撃作用の発生が原因となっている。このため、配管のどこの位置で水撃作用が発生したのかを見極める必要がある。
【0003】
配管のどこの位置で水撃作用が発生したのかを検知する技術としては、例えば特許文献1に記載された発明がある。特許文献1に記載された発明は、配管内を流れる流体の流量や圧力を検出する汎用の機械式トランスデューサに水撃圧を検知する検知機能を持たせるようにしたものである。
【0004】
これに対して、配管の振動について考えると、配管は、水撃作用によってのみ振動を発生するわけではなく、地震によっても振動する。ある程度の限度を越えて配管が振動すると、水撃作用の場合と同様に、配管に与えられる疲労や損傷が心配である。このため、水撃作用の場合だけでなく、地震によって発生する配管の振動についても、その発生場所を見極めたい。ところが、特許文献1に記載されている発明は、専ら水撃作用の検知を旨とするものであり、地震により発生する配管の振動まで検知するものではない。
【0005】
水撃作用によるか地震によるかを問わず、配管のどこの位置で振動が生じたのかを検知する技術としては、例えば特許文献2に記載された発明がある。特許文献2に記載された発明は、配管に振動計を設置し、正常時の振動と比較解析して配管の異常を検知するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−327895公報
【特許文献2】特開平05−172625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された発明は、水撃作用によるか地震によるかを問わず、配管のどこの位置で振動が生じたのかを検知できる点で優れている。しかしながら、振動計の設置やその配線の引き回し、振動計の出力を電気的に取り込んで解析する回路等、その実現には大掛かりな設備が必要となる。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、水撃作用によるか地震によるかを問わず、配管のどこの位置で振動が生じたのかを手軽な機器のみを用いて簡単に検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配管の振動検知装置は、固定構造物の側に設置されて隙間を開けて配管を包囲する枠体と、前記配管を接触状態で包囲する配管包囲体と、前記枠体と前記配管包囲体とを緩みなく結合し、予め決められた引張力を超えると破断するセンサと、を備えることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管がある程度の限度を越えて振動すると枠体からある程度の距離を越えて離反し、これによって、センサに予め決められた引張力を超えた力が加わってセンサが破断するので、水撃作用や地震という原因如何によらず、ある程度の限度を越えて振動した配管の位置を手軽な機器のみを用いて簡単に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は天井面に固定されて建物内を這い回されている配管の斜視図、(b)は配管に本実施の一形態である配管の振動検知装置を設置した状態を示す斜視図。
【図2】本実施の一形態である配管の振動検知装置を示す斜視図。
【図3】枠体を支持する支持部を伸縮機構と共に示す分解斜視図。
【図4】配管包囲体に設けられている径可変機構を示す分解斜視図。
【図5】配管包囲体に設けられているセンサの長さ可変機構を示す縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)に示すように、固定構造物である建物11内には、その天井面12に配管31が吊り下げられて這い回されている。配管31は、天井面12に固定された配管サポート51に支持されている。配管サポート51は、配管31を包囲して保持するリング形状の保持体52に保持棒53が連結され、この保持棒53の図示しない基部が天井面12にねじ止めされることで配管31を支持している。このような配管サポート51は、一例として金属材によって強固に形成されている。
【0013】
配管31は、配管サポート51に支持されているとはいえ、振動の発生によって、図1(a)中に矢印で示す方向に揺動することがある。この場合の振動は、配管31内で発生する水撃作用や、建物11全体を揺らす地震等を原因として発生する。本実施の形態の配管の振動検知装置101は、ある程度の限度を越えた振動が配管31に発生した場合、その事実を検知して知らせるものである。
【0014】
図1(b)に示すように、建物11は、配管の振動検知装置101を設置している。振動検知装置101は、建物11の側に設置されている枠体111で隙間を開けて配管31を包囲し、配管31を接触状態で包囲する配管包囲体131と枠体111とを、四個のセンサ151で緩みなく結合している。センサ151は、予め決められた引張力を超えると破断する構造のもので、配管31が振動することによって枠体111からある程度離反すると破断する。つまり、配管31は、ある程度の限度を越えて振動すると枠体111からある程度の距離を越えて離反し、これによってセンサ151に予め決められた引張力を超えた力が加わる。したがって、センサ151は、ある程度の限度を越えた振動が配管31に発生した場合に、自らの破断という形態でその事実を報知する。以下、配管の振動検知装置101について詳細に説明する。
【0015】
図2に示すように、配管の振動検知装置101は、一対の支持部171を備えている。支持部171は、建物11の天井面12に捩子止めするための取付孔172が開けられた平板状の基部173に、枠体111を支持する支持棒174を固定したもので、例えば金属材によって形成されている。これらの一対の支持部171は、枠体111の上面両側部に支持棒174を連結させており、枠体111を強固に支持している。
【0016】
枠体111は、例えば樹脂によって形成された矩形枠形状のもので、その上部を支持部171の支持棒174に捩子止め等の手法で固定されている。枠体111は、図2中で右側となる右側片が上側片に対して接離自在となっている。つまり、枠体111は、右側片と上側片との間の部分SFに接離構造(図示せず)を備え、右側片を上側片から離反させると、樹脂によって形成されてある程度の柔軟性を有しているので、下側片との連結部分を回転中心Aとして回転可能である。このような枠体111の構造は、右側片を上側片から離反させことによって生ずる開口から配管31を通し、配管31を枠体111で包囲させるために設けられている。
【0017】
配管包囲体131は、例えば樹脂によって形成された輪形状のもので、一端側から他端側を離反させ、内部に配管31を入れ込むことができるようにしている。つまり、配管包囲体131は、一端側を固定端132として他端側を可動端133とし、固定端132に対して可動端133を連結固定することで輪形状を形成し、この輪形状によって配管31を隙間なく包囲する。そして、固定端132に対して可動端133の連結位置は、小刻みに可変自在となっているので、その連結位置を変えることで輪の大きさ、換言すると、配管31を包囲する包囲径を可変することができる。この可変機構は、配管31を包囲する配管包囲体131の包囲径を可変する径可変機構134である。
【0018】
センサ151は、枠体111の四辺と配管包囲体131とを緩みなく結合し、予め決められた引張力を超えると破断する。枠体111と配管包囲体131とを緩みなく結合するために、センサ151は、枠体111の内側四箇所にセンサ固定片152を形成し、配管包囲体131の外側四箇所にセンサ可動片153を形成する。これらのセンサ固定片152とセンサ可動片153とは、それぞれの位置で相対面する位置に形成されている。そして、センサ151は、その四箇所の設置位置それぞれで、センサ固定片152とセンサ可動片153とをセンサ部材154でつなぐ。センサ部材154は、一端がセンサ固定片152に固定され、他端が自由な長さでセンサ可動片153に連結固定可能な部材である。
【0019】
図3は、枠体111を支持する支持部171を伸縮機構175と共に示す分解斜視図である。支持部171の支持棒174は、基部173に設けられている第1の支持棒174aと、枠体111に固定されている第2の支持棒174bと、これらの第1の支持棒174aと第2の支持棒174bとをつなぐ第3の支持棒174cとの三部材に分割されている。第1の支持棒174aおよび第2の支持棒174bは、共に端部に雄捩子MSを有している。第3の支持棒174cは、その両端に、雄捩子MSに適合する雌捩子FSを有している。そこで、第2の支持棒174bに第3の支持棒174cを捩子止めし、この第3の支持棒174cに第1の支持棒174aを捩子止めすれば、枠体111に基部173を連結することができる。そして、このような構造上、第3の支持棒174cの長さに応じて、支持棒174の全長を適宜設定することができる。そこで、各種長さの第3の支持棒174cを用意しておくことで、所望の長さの支持棒174を得ることができ、固定構造物である建物11の天井面12と枠体111との間の距離を制御することができる。この機構は、天井面12と枠体111との間の距離を可変自在に設定する伸縮機構175である。
【0020】
図4は、配管包囲体131に設けられている径可変機構134を示す分解斜視図である。径可変機構134として、配管包囲体131の固定端132には、頭部が大径に形成されたフック132aが形成されており、可動端133には、そのフック132aに止められる複数個の長さ調節孔133aが形成されている。複数個の長さ調節孔133aは、フック132aの径よりも小径に形成されて、配管包囲体131の長手方向に沿って個配列されている。配管包囲体131は、樹脂によって形成されているので、フック132aを所望の長さ調節孔133aに強く押し当てることによって、長さ調節孔133aの径が広がり、長さ調節孔133aにフック132aを嵌め込むことができる。そして、フック132aを嵌め込む長さ調節孔133aを適宜選択することで、配管31を包囲する配管包囲体131の包囲径を可変することができる。
【0021】
図5は、配管包囲体131に設けられているセンサ151の長さ可変機構157を示す縦断側面図である。前述したように、センサ151のセンサ部材154は、センサ可動片153に対して自由な長さで連結固定可能である。これを実現するのが、センサ可動片153に設けられた弾性フック155である。弾性フック155は、弾性復元力を有する金属製の平板状部材であり、直角に屈曲された基端がセンサ可動片153に形成された固定取付孔156に圧入されてセンサ可動片153に固定されている。弾性フック155は、センサ可動片153の表面に当接しており、弾性力を有するのでセンサ可動片153から離反させることができ、復元力を有するのでその離反させる力を抜けば元の位置に復帰する。そこで、弾性フック155は、この弾性フック155とセンサ可動片153との間へのセンサ部材154の差し込みを許容し、差し込まれたセンサ部材154を強固に位置保持する。弾性フック155によるセンサ部材154の保持力は、センサ部材154が破断する引張力よりも強く設定されている。このような弾性フック155は、センサ部材154の差し込みを容易にするため、自由端側がセンサ可動片153の表面から離反する方向に僅かに反らされている。
【0022】
このような構成において、水撃作用や地震によって配管31が振動した場合、その振動が限度を超えたものであると、センサ151のセンサ部材154が破断する。つまり、配管31がある程度の限度を越えて振動すると枠体111からある程度の距離を越えて離反する。すると、センサ部材154に予め決められた引張力を超えた力が加わり、センサ部材154が破断する。こうして、水撃作用や地震という原因如何によらず、ある程度の限度を越えて振動した配管31の位置を、手軽な機器のみを用いて簡単に検知することができる。
【0023】
ここで、検知すべき配管31に生ずる振動の限度は、予め分かっているはずである。そこで、そのような限度を規定する振動が配管31に生じた場合、配管31がどの程度移動するのかを求める。こうして求めた配管31の移動距離に従い、センサ部材154の破断強度を決定する。つまり、センサ部材154の破断強度は、センサ部材154がどの程度引っ張られると破断するのかということと等価であるため、前記求めた配管31の移動距離だけ引っ張られると破断するよう、センサ部材154を選定する。これによって、配管31が振動した場合、その振動が限度を超えたものであるとセンサ部材154が破断するよう、設定することができる。
【0024】
また、センサ151の主体をなすセンサ部材154として適用可能な材料は、例えば、金属、繊維、樹脂、紙等であり、適用可能な形状は、例えば、線状、帯状等である。本実施の形態でいう「破断」というのは、センサ部材154が全体的に切断される場合のみならず、一部が破られたり断ぜられたりして破壊されるようなものも含まれる。例えば、予め決められた引張力を超えると表面部材が破断し、内部に収納されている目立つ色の部材が露出したり、内部に折り畳まれて収納されている複数の糸状部材や帯状部材が飛び出したり、内部に収納されている粉状物が飛び出して落下したり、内部に充填されている人間に感知可能な特定臭気が飛散したりするようなものも、センサ部材154として用いることができる。
【0025】
本実施の形態では、支持部171に、固定構造物である建物11の天井面12と枠体111との間の距離を可変自在に設定する伸縮機構175を設けたので、天井面12からの設置距離が区々異なる配管31の設置位置に適合する位置に、振動検知装置101を設置することができる。
【0026】
本実施の形態によれば、配管包囲体131の配管31を包囲する包囲径を可変する径可変機構134を設けたので、区々異なる配管31の太さに適合させて、配管31に配管包囲体131を取り付けることができる。
【0027】
本実施の形態によれば、センサ151に、枠体111と配管包囲体131との間の距離に応じて長さを可変する長さ可変機構157を設けたので、区々異なる配管31と枠体111との間の距離に応じて、予め決められた引張力を超えると破断するように、枠体111と配管包囲体131とをセンサ部材154で緩みなく結合することができる。
【符号の説明】
【0028】
11 建物(固定構造物)
111 枠体
131 配管包囲体
134 径可変機構
151 センサ
157 長さ可変機構
171 支持部
175 伸縮機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構造物の側に設置されて隙間を開けて配管を包囲する枠体と、
前記配管を接触状態で包囲する配管包囲体と、
前記枠体と前記配管包囲体とを緩みなく結合し、予め決められた引張力を超えると破断するセンサと、
を備えることを特徴とする配管の振動検知装置。
【請求項2】
前記固定構造物に固定されて前記枠体を支持し、隙間を開けて前記配管を包囲する位置に前記枠体を位置付ける支持部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の配管の振動検知装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記固定構造物と前記枠体との間の距離を可変自在に設定する伸縮機構を備えている、ことを特徴とする請求項2に記載の配管の振動検知装置。
【請求項4】
前記配管包囲体は、前記配管を包囲する包囲径を可変する径可変機構を備えている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の配管の振動検知装置。
【請求項5】
前記センサは、前記枠体と前記配管包囲体との間の距離に応じて長さを可変する長さ可変機構を備えている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の配管の振動検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−68175(P2012−68175A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214605(P2010−214605)
【出願日】平成22年9月25日(2010.9.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】