説明

配管クリーニング方法及び配管検査方法

【課題】十分に配管内壁を覆い、信頼性の高い保護が可能な配管クリーニング方法及び配管検査方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る配管のクリーニング方法は、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、第一の樹脂層上に、第一の樹脂とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、を有する。
また本発明の他の一観点に係る配管検査方法は、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、第一の樹脂層上に、第一の樹脂層とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、第二の樹脂層表面の色を測定する工程、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管クリーニング方法に関する。より具体的には、配管内に付着した錆を取り除き、コーティング層を施す配管クリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雑排水は配管を介して家庭内や工場内に供給される。しかしながら、配管に鉄等の金属を用いている場合、配管が腐食することにより、配管内の空洞を狭くし、配管をつまらせてしまうおそれがある。また、雑排水にはカルシウム等のミネラル分が含まれており、このミネラル分が配管内に析出することでも上記問題が発生するおそれがある。このため、配管を好適な状態に保つためには、一定の期間毎に配管の清掃を行なっておくことが好ましい。
【0003】
配管の清掃は、配管内から水を除去し、配管の一方からブレード(羽根)のついたスクリューを投入し、他方から真空に引くことで上記スクリューを回転させ、配管内の錆や炭酸カルシウム等の堆積物を除去し、その後、樹脂等のポリマーをコーティングする方法が好適である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記堆積物の除去は物理的な切削であり、できる限り切削後の配管内壁が平坦になるよう工夫するものであるが、新品と同様の平坦性を確保することは容易でない。この結果、配管内の樹脂等はある程度凹凸が付された状態で塗布しなければならず、樹脂の塗布が不十分であると、その不十分な位置から再び水が配管内面に触れ、腐食が再び始まってしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、十分に配管内壁を覆い、信頼性の高い保護が可能な配管クリーニング方法及び配管検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る配管クリーニング方法は、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、第一の樹脂層上に、第一の樹脂層とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、を有する。
【0007】
また、本発明の他の一観点に係る配管検査方法は、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、第一の樹脂層上に、第一の樹脂層とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、第二の樹脂層表面の色を測定する工程、を有する。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によって、十分に配管内壁を覆い、信頼性の高い保護が可能な配管クリーニング方法及び配管検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る配管クリーニング方法の概略を示す図である。
【図2】堆積物を除去する工程前後の配管の断面のイメージ図である。
【図3】第一の樹脂層を形成した後の配管の断面のイメージ図である。
【図4】第二の樹脂層を形成した後の配管の断面のイメージ図である。
【図5】色ムラが発生する場合の配管の断面のイメージ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書においては同一又は同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る配管クリーニング方法(以下「本方法」という。)の工程の手順を示す図である。本方法は、本図で示すように、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程S1、配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程S2、第一の樹脂層上に、第一の樹脂層とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程S3、を有する。
【0012】
本実施形態において、配管内壁に付着した堆積物を除去する工程S1(図2参照)は、配管内壁に付着した堆積物により阻害されている雑排水等の流路を十分に確保するための工程である。ここで「堆積物」とは、配管内壁に付着して水等の流れの障害となるものであり、限定されるわけではないが、例えば錆、炭酸カルシウム等が該当する。
【0013】
本実施形態において、堆積物を除去する方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、(1)配管の一方からブレード(羽根)のついたスクリューを投入し、他方から真空に引くことで上記スクリューを回転させ、配管内の錆や炭酸カルシウム等の堆積物を除去する方法、(2)ホース及びこのホースの先端に付されたブレード付ノズルを有し、このホースに高圧の水を供給し、ブレード付ノズルを回転させて堆積物を除去する方法を例示することができるが、これに限定されない。
【0014】
配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程S2(図3参照)は、配管内壁が水等と直接接触し錆等の酸化物を析出させてしまうことを防止するために行なう工程である。樹脂層としては、後述の通り、流動性のある状態で配管内に塗布し、乾燥させる工程によって硬化することのできる樹脂である限りにおいて限定されないが、エポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は耐水性、耐薬品性に優れている。なおここで「エポキシ樹脂」とは分子内に存在するエポキシ基によって架橋され、硬化した樹脂である。なお、樹脂には、後述の色の違いを出すため予め顔料等を含ませて色付けしておくことが好ましい。
【0015】
本実施形態において、第一の樹脂層を形成する工程S2は、実現することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、配管の下流側に吸引ポンプを接続し、空気を吸引する一方、上流側から硬化前の樹脂を注入し、配管内壁を均一になるよう塗布した後、乾燥及び硬化させる工程であることが好ましい。
【0016】
また本工程において、第一の樹脂層の厚さは、配管の径や樹脂の種類等によって適宜調整可能であり限定されるわけではないが、例えば0.1mm以上1mm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上0.5mm以下の範囲である。0.1mm以上とすることで、第一の樹脂層表面の平坦化を確保することができるとともに、この上に第二の樹脂層を形成した場合、第二の樹脂層が適正な厚さを保つことができているか十分に確認することができる程度まで第一の樹脂層の色を十分確認することが可能となり、厚さを0.2mm以上とすることでこの効果がより顕著となる。
【0017】
また、本実施形態において、配管内壁に第一の樹脂層を形成する前に、配管内壁を十分に洗浄、乾燥をさせておくことが好ましい。洗浄、乾燥を行うことで、第一の樹脂層を配管内壁表面に強固に接着させることができる。
【0018】
配管内壁に第二の樹脂層を形成する工程S3(図4参照)は、第二の樹脂層によって第一の樹脂を覆う工程である。また本実施形態において、第二の樹脂層の色は、第一の樹脂層の色が異なる。このようにすることで、第二の樹脂層において不均一な部分(薄い部分)が存在した場合、この不均一な部分が色ムラとなって確認することができるようになる。ここで「色が異なる」とは、色における色相、明度、彩度の少なくともいずれかが異なっていることを意味する。
【0019】
なお本工程においては、限定されるわけではないが、第二の樹脂層よりも第一の樹脂層の方が暗い色、黒に近い色又は濃い色(以下「暗い色等」という。)であることが好ましい。このようにすることで、暗い配管内において第二の樹脂層が明るく形成されるため見やすくなるとともに、この明るさの中に暗い色等が存在するとこの部分を視認、発見しやすくなるといった効果がある。この場合のイメージ図を図5に示しておく。図5で示すように、配管内において完全に除去しきれない堆積物などによって凹凸が存在した場合、第一の樹脂層を形成したとしても、他の平坦な部分に比べてその凹凸の部分に形成される樹脂の厚さは薄くなってしまう。そしてその上に第二の樹脂を形成した場合、配管内は平坦性を確保することができるが、この凹凸の部分はどうしても薄くなってしまうこととなる。このような場合であっても、本工程を採用することで、色ムラが発生していれば、この部分の樹脂層の厚さが薄くなっていることが確認できるため、より信頼性の高い配管クリーニング方法を実現することができる。
【0020】
第一の樹脂層と第二の樹脂層の色を異ならせる方法としては、適宜調整が可能であり限定されるわけではないが、一方の樹脂層(上記好ましい例の場合は第一の樹脂層)に、顔料を0.1重量%以上1重量%以下の範囲で多く含ませることが好ましく、より好ましくは第二の樹脂層に含まれている顔料とは別の顔料を第一の樹脂層に0.1重量%以上1重量%以下の範囲で含ませておくことが好ましい。顔料を0.1重量%以上含ませることで二つの樹脂層の色の違いを人間の目で見て確認することができる程度にすることが可能となる一方、1重量%以下とすることで、樹脂層の本来の性能への影響を抑え、第一の樹脂層と第二の樹脂層間の剥離を防止することができる。具体的には、例えば第一の樹脂層と第二の樹脂層には予め青の顔料が含まれている場合に、第一の樹脂層に別途黒の顔料を0.1重量%以上1重量%以下の範囲で含ませることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態において、第一の樹脂と第二の樹脂の色を異ならせる材料(顔料)以外の材料は同じであることが好ましい。性能は同じで色のみが異なることとなるため、改めて塗り重ねても樹脂層間の特性の違いによって生じる剥離の可能性を低くすることができるといった利点がある。即ち、第一の樹脂層と第二の樹脂層は、含まれる顔料の種類(数)とその顔料の濃度のみが異なることが好ましい。
【0022】
また本実施形態において、第二の樹脂層を形成する工程S3は、実現することができる限りにおいて限定されるわけではないが、上記第一の樹脂層を形成する工程S2と同じ方法を採用することができ、上記同様、配管内壁に第二の樹脂層を形成する前に、配管内壁を十分に洗浄、乾燥をさせておくことが好ましい。
【0023】
また本工程において、第二の樹脂層の厚さは、配管の径や樹脂の種類によって適宜調整可能であり限定されるわけではないが、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上であり、第一の樹脂層の厚さと合わせて0.3mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上となることが好ましい。第二の樹脂層の厚さを0.1mm以上とすることで、色ムラの発生を抑える即ち十分な樹脂層の厚さを保つことにより配管内壁の耐水性を十分に確保することが可能となり、0.2mm以上となることでこの効果がより顕著となる。
【0024】
また、第一の樹脂層と第二の樹脂層の厚さの比は適宜調整可能であるが、第一の樹脂層の厚さを1とした場合、第二の樹脂層は、0.5以上3以下であることが好ましく、より好ましくは1以上である。この範囲とすることで、樹脂層の塗布工程において不備があった場合にその色ムラを発見しやすくなるといった効果がある。
【0025】
また、本実施形態において、上記第一の樹脂、第二の樹脂の少なくともいずれかには抗菌剤が含まれていることが好ましい。雑排水には含まれる各種雑菌が含まれており、これが排水内において繁殖することで配管内の環境を悪化させ腐食を促進させてしまうといった問題があるが、本実施形態では抗菌剤を含ませることで雑菌の繁殖を抑えることができる。なおここで抗菌剤としては限定されるわけではなく、例えば銀、銅等の金属イオンを含む無機系の抗菌剤や、化学合成した有機物を用いる有機系の抗菌剤であっても良い。
【0026】
また本実施形態において、含ませる抗菌剤の量は、効果がある限りにおいて限定されるわけではないが、例えば樹脂層(第一の樹脂層及び第二の樹脂層の少なくともいずれか)に0.1重量%以上5重量%以下の範囲で含まれていることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。0.1重量%以上とすることで雑排水に対しても十分な抗菌効果を得ることができ、0.5重量%以上とすることでこの効果がより顕著となる。一方で、5重量%以下とすることで樹脂層の効果を安定的に確保できるといった効果があり、3重量%以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0027】
本実施形態に係るクリーニングされた配管は、第一及び第二の樹脂層で覆われているため、一層である場合に比べ非常に厚くすることが可能となり十分な耐水性を得ることができるようになる。そして、本クリーニング方法では、第一の樹脂層と第二の樹脂層の厚さが異なっているため、色又は色の濃さを測定することで、第一の樹脂層の厚さが適切であるか否か、第二の樹脂層の厚さが適切であるか否か、を確認することができる。
【0028】
以上、本発明によって、十分に配管内壁を覆い、信頼性の高い保護が可能な配管クリーニング方法及び配管検査方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、配管クリーニング方法、配管検査方法として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、
前記配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、
前記第一の樹脂層上に、前記第一の樹脂とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、を有する配管のクリーニング方法。
【請求項2】
前記第一の樹脂層及び前記第二の樹脂層の少なくともいずれかは、抗菌剤が含まれている請求項1記載の配管のクリーニング方法。
【請求項3】
前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層は、顔料の濃度の差によって色を異ならせている請求項1記載の配管のクリーニング方法。
【請求項4】
前記第一の樹脂層に含まれる顔料の濃度は、前記第二の樹脂層に含まれる顔料の濃度よりも0.1重量%以上1重量%以下の範囲で多く含まれている請求項3記載の配管のクリーニング方法。
【請求項5】
配管内壁に付着した堆積物を除去する工程、
前記配管内壁に第一の樹脂層を形成する工程、
前記第一の樹脂層上に、前記第一の樹脂層とは色の異なる第二の樹脂層を形成する工程、
前記第二の樹脂層表面の色を測定する工程、を有する配管検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34951(P2013−34951A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173837(P2011−173837)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(509053363)株式会社タイコー (4)
【Fターム(参考)】