説明

配管システムとその製造装置と製造方法および補修方法

【課題】水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムの、地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプの内面腐食を防止する。
【解決手段】井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムの、高圧かつ高温で水分や不純物を含む圧縮ガスを流通させるパイプ6の内面に、内面腐食防止用のライニング樹脂層7が形成されている。このライニング樹脂層7の厚さは平均1mm以上である。パイプ6は、直径が50mm以下で長さが200m以上の金属管であり、複数のパイプ6が連結されて井戸とガス生産プラントとを接続する配管システムが構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管システムとその製造装置と製造方法および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に深い井戸を掘って地下水を採取し、その地下水中に溶け込んでいる水溶性天然ガスを分離して取り出して利用することが行われている。地下水の採取法としては、井戸内で圧縮ガスを噴射して、そのガスの浮力によって地下水を上昇させて井戸の外部に押し出す、いわゆるガスリフト法がある。通常、井戸からガス生産プラントまでつなぐ配管システムを構成しておき、その配管システムを通してガスリフト用の圧縮ガスを井戸に供給している。地下水を採取するための井戸を掘るべき位置と、ガス生産プラントを設置するのに適した位置との関係から、配管システムは、最大で数kmに達するような著しく長いものになる場合がある。
【0003】
ところで、特許文献1〜4には、都市ガスの供給を行うために主に建物内や建物の周囲に配設されたパイプの内面に、ガス漏れ防止用のライニング樹脂層を形成する方法が開示されている。これらのパイプは、長さが短く、建物内またはその周囲の比較的環境が良好な場所に配設されている。また都市ガスは除湿されたガスであり水分(湿気)を含まない。これらの条件の下ではパイプの内面から腐食するおそれはほとんどない。ただし、特許文献1〜4の構成でも、建物の周囲において雨水等によりパイプの外面から腐食や損傷する可能性はあるので、その場合にパイプ内から外部にガスが漏れるのを防ぐために、パイプの内面にガス漏れ防止用のライニング樹脂層が形成されている。
【特許文献1】特許第3081349号公報
【特許文献2】特許第3107485号公報
【特許文献3】特許第3170271号公報
【特許文献4】特許第2900199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、水溶性天然ガスが溶け込んだ地下水を採取する際にガスリフト法を実施するためにパイプを通して供給する圧縮ガスが、水溶性天然ガスである場合には、そのガスは、高圧(例えば1MPa以上)かつ高温(例えば30℃〜60℃)であり、水分を含んでおり(水蒸気飽和状態である場合もあり)、また微量の不純物を含んでいる。そのため、この配管システムを構成するパイプは、圧縮ガスによって内面から腐食するおそれがある。通常、このパイプは非常に長い金属管であり、水分や不純物によって内面から腐食する可能性がある。
【0005】
パイプの内面腐食の問題は、特許文献1〜4等のような都市ガスを供給するための短いパイプでは生じることはなかったが、水溶性天然ガスが溶け込んだ地下水を採取する際のガスリフト法を実施するための、圧縮ガスを流通させる長いパイプにおいて生じたものである。特許文献1〜4に開示されたライニング樹脂層は、ガス漏れ防止用の薄い層であって、当然のことながら、これでは内面腐食を十分に防ぐことはできない。
【0006】
そこで本発明の目的は、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続するものであって、地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプからなりそのパイプの内面腐食を防止することができる配管システムと、その製造装置と、製造方法および補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムであって、地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプからなり、パイプの内面に内面腐食防止用のライニング樹脂層が形成されているところにある。この構成によると、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続するパイプの、水分を含む圧縮ガスの流通に起因する内面腐食という、従来は認識されていなかった問題を解決することができる。
【0008】
そして、このような配管システムを製造する際には、ライニング樹脂層を形成する工程の前にパイプ内へライニング樹脂を注入する工程を行う。パイプ内へライニング樹脂を注入する工程では、上下動可能な落とし蓋とその落とし蓋の下面または下方に位置するゴム板とを内蔵している、ライニング樹脂を収容するための容器を、パイプの一端部に接続し、容器に圧縮空気源を接続した状態で、圧縮空気源から容器に圧縮空気を供給することによって落とし蓋を押圧して、落とし蓋およびゴム板の下方に位置するライニング樹脂を容器内からパイプ内へ押し出し、圧力計によって容器内の圧力を測定するとともに、流量計によって、圧縮空気源から容器に供給される圧縮空気の流量を測定して、圧力計によって測定された圧力が、圧縮空気源から容器に供給される圧縮空気の圧力と一致し、かつ、流量計によって測定された圧縮空気の流量が0になった時点で、容器内のライニング樹脂のパイプ内への注入の完了を検知することが好ましい。
【0009】
この方法によると、落とし蓋を用いることにより、容器内のライニング樹脂に均等に万遍なく圧力を加えて効率よくパイプ内に注入できる。さらに、容器内の圧力と圧縮空気の供給量を監視することによって、ライニング樹脂の注入完了を信頼性高く即座に検知することができる。従って、ライニング樹脂の注入が完了したら、直ちに次の工程(例えばライニング樹脂層の形成工程)に移行することができ、作業効率が向上するとともに、ライニング樹脂が硬化開始する前に次工程に移行できるため、層形成の作業性がよい。
【0010】
また、複数のパイプが連結されて構成される配管システムの製造方法において、複数のパイプを連結する工程の前、かつライニング樹脂層を形成する工程の前に、ガス生産プラントから井戸までの範囲内の任意の位置に圧縮空気源を設け、複数のパイプのうち、ライニング樹脂層の形成を行う1本のパイプに隣接するパイプから、圧縮空気源に最も近いパイプに至るまでの全てのパイプを、各パイプの両端部の位置にそれぞれ設けられた作業用の立坑内に配置され各パイプの端部にそれぞれ接続された作業立管同士を接続することによって、一時的に仮連結し、かつ圧縮空気源に最も近いパイプを圧縮空気源に接続することによって、圧縮空気源から、ライニング樹脂層の形成を行うパイプ以外の仮連結されたパイプを介して、隣接するパイプに至る仮の配管を構成し、ライニング樹脂層の形成を行うパイプを、隣接するパイプに間接的に接続することが好ましい。
【0011】
この方法によると、圧縮空気源を、運搬および設置に適した場所に固定することができ、従来は大きな負担になっていた圧縮空気源の運搬をなくすことができる。それによって、配管システムの製造が非常に容易になる。しかも、固定された圧縮空気源から圧縮空気を供給するための専用の配管を設けることなく、配管システムが完成する前のパイプを圧縮空気の供給用に利用するため、作業コストや作業時間の上昇を抑えることができる。
【0012】
ライニング樹脂層の形成を行うパイプを、ライニング樹脂を収容する容器と圧縮空気供給機構とを介して、隣接するパイプに接続し、任意の位置に設けられた圧縮空気源から、ライニング樹脂層の形成を行うパイプ以外の仮連結されたパイプと、圧縮空気供給機構とを介して、容器に圧縮空気を供給し、容器に供給された圧縮空気によってライニング樹脂を加圧して容器内からパイプ内へ押し出してもよい。
【0013】
また、本発明の配管システムの補修方法は、パイプの内面の任意の箇所に内面腐食防止用のライニング樹脂層を形成する工程を含む。さらに、ライニング樹脂層を形成する工程の前に、パイプを部分的に切断して、補修すべき部分を含む領域を切り離す工程と、補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程とを含む。
【0014】
そして、パイプの補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程では、前記した本発明の配管システムの製造方法と同様に、上下動可能な落とし蓋とその落とし蓋の下面または下方に位置するゴム板とを内蔵している、ライニング樹脂を収容するための容器を、補修すべき部分を含む領域の一端部に接続し、容器に圧縮空気源を接続した状態で、圧縮空気源から容器に圧縮空気を供給することによって落とし蓋を押圧して、落とし蓋およびゴム板の下方に位置するライニング樹脂を容器内から補修すべき部分を含む領域の内部へ押し出し、圧力計によって容器内の圧力を測定するとともに、流量計によって、圧縮空気源から容器に供給される圧縮空気の流量を測定して、圧力計によって測定された圧力が、圧縮空気源から容器に供給される圧縮空気の圧力と一致し、かつ、流量計によって測定された圧縮空気の流量が0になった時点で、容器内のライニング樹脂の、補修すべき部分を含む領域の内部への注入の完了を検知することが好ましい。
【0015】
また、補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程の前に、ガス生産プラントから井戸までの範囲内の任意の位置に圧縮空気源を設け、圧縮空気源に近接する位置においてパイプを切断して、当該切断個所を圧縮空気源に接続し、圧縮空気源に接続された切断個所から、補修すべき部分を含む領域に隣接する切断個所までを、圧縮空気を供給するための仮の配管としてもよい。その場合、パイプの補修すべき部分を含む領域の一端部を、ライニング樹脂を収容する容器と圧縮空気供給機構とを介して、補修すべき部分を含む領域に隣接する切断個所に接続し、補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程では、任意の位置に設けられた圧縮空気源から、仮の配管と圧縮空気供給機構とを介して、容器に圧縮空気を供給し、容器に供給された圧縮空気によってライニング樹脂を加圧して容器内から前記パイプ内へ押し出すことが好ましい。
【0016】
これらの補修方法では、パイプ全体を所定長さ以下の領域毎に分割し、分割された全ての領域を補修すべき部分を含む領域として、ライニング樹脂を注入する工程とライニング樹脂層を形成する工程とを順次実施してもよい。
【0017】
なお、以上説明した配管システムとその製造装置と製造方法および補修方法において、内面腐食防止の効果を高めるために、ライニング樹脂層の厚さが平均1mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来は問題視されていなかったパイプの内面腐食を防ぐことができ、このパイプを含む配管システムの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1には、本発明の一実施形態の配管システムを含む設備全体が模式的に示されている。水溶性天然ガスが溶け込んでいる地下水を汲み出すための井戸1と、詳述しないが地下水から天然ガスを分離し、その天然ガスのうちの一部を燃料や化学工業の原料として利用するために取り出すガス生産プラント2と、汲み上げた地下水を、井戸1からガス生産プラント2へ輸送するパイプライン3と、地下水の汲み上げに用いられる圧縮ガスをガス生産プラント2から井戸1へ送る配管システム4を有している。本発明は、この配管システム4に適用されている。ただし、パイプライン3には本発明は適用されていない。ガス生産プラント2では、天然ガスが分離された後の地下水から有用な成分(例えばヨード)を取り出す作業が行われることもある。
【0021】
ここで、井戸1の構成と地下水を汲み出す原理について、図2に示す例を参照して説明する。図2に示す例では、井戸1の坑内に、下部が多数の微細な孔を有する孔明管16aになっているケーシングパイプ16が挿入されており、このケーシングパイプ16の上部に抗口装置28が接続されている。そして、配管システム4に接続されている吹込管5が、抗口装置28を介して坑内に挿入されており、また、抗口装置28の、吹込管5よりも上方に、パイプライン3に接続されている導出部28aが設けられている。
【0022】
この構成において、坑内に地下水が溜まった状態で坑内に挿入された吹込管5の先端からガスを噴き出させる。すると、浮力によって気泡bが上昇する際に、ガスの噴き出し位置よりも上方に位置する地下水が押し上げられて、外部に押し出される。このように、ガスの浮力を利用して地下水の汲み出しを行う技術を、一般に「ガスリフト法」という。こうして井戸1の外部に押し出された地下水は、導出部28から、図1に示すパイプライン3を通ってガス生産プラント2に送られる。そして、ガス生産プラント2において、地下水中に溶け込んでいた天然ガスを分離し、その一部を都市ガス等の様々な用途に用いるために取り出す。一方、天然ガスのうち、都市ガス等用に取り出されずに残されたガスは、配管システム4を通じて井戸1に戻され、ガスリフト法を実施するために吹込管5から坑内に噴き出させられる。このガス生産プラント2の構成および動作は従来と同様であるため、ここでは詳述しない。
【0023】
配管システム4は、長さが数十m〜数kmのパイプ6、一例としては長さが約200mのパイプ6が複数連結されて、井戸1とガス生産プラント2との間の地中を延びている。このパイプ6は、鉄などの金属管であり、直径が50mm以下程度の細い管である。そして、図3に示すように、パイプ6の内面には、厚さが平均1mm以上の内面腐食防止用のライニング樹脂層7が設けられている。前記したようにこのパイプ6内は、地下水から取り出された、水分を含む(例えば水蒸気飽和状態の)水溶性天然ガスが流れる。このガスは、高圧(例えば1MPa以上)かつ高温(例えば30℃〜60℃)であり、水分(湿気)を含み、また様々な不純物を含んでいるので、金属管であるパイプ6を内面から腐食させるおそれがあるという問題がある。この問題は、不純物と水分とを含む水溶性天然ガスを、金属管内を輸送する際にのみ問題になるものであって、用途の異なる従来の様々な配管システムでは生じていなかった新しい問題である。そして、本発明では、パイプ6の内面に、厚さが平均1mm以上という従来には考えられなかった厚いライニング樹脂層7を、内面腐食防止のために形成している。この厚い内面腐食防止用のライニング樹脂層7によって、パイプ6の内面が保護され、内部を流れる水溶性の圧縮ガスにより腐食することがなく耐久性が向上するという、従来にない効果を発揮することができる。
【0024】
なお、厳密には、長さが数十m〜数km(例えば約200m)であるパイプ6も、長さが数m(例えば約3m)のパイプ部材をつなぎ合わせることによって構成されたものであるのが一般的である。すなわち、本願出願時の技術水準では、長さが数十m以上のパイプ6を一度に形成するのは困難であるので、長さが数m程度のパイプ部材を多数形成し、それらのパイプ部材をつなぎ合わせて、長さが数十m以上のパイプ6を構成するのが一般的である。また、パイプの地中への埋設作業や本発明のライニング樹脂層の形成作業は、数百m以下、具体的には200m以下程度のパイプ6に対して実施するのが好ましく、それよりも長いパイプ6に対して実施するのは、作業が困難であり、作業効率が悪い。そこで、長さが数m程度のパイプ部材を多数つなぎ合わせて、長さ200m程度のパイプ6を構成し、そのパイプ6を地中に埋設し、長さ200m程度のパイプ6を1つの単位としてライニング樹脂層の形成等の作業を実施する。その後、長さ200m程度のパイプ6同士を接続して、最終的に長さが数kmにも及ぶ長い配管システムを構成するのが一般的である。ただし、以下の説明および図面では、説明の簡略化のために、パイプ6が複数のパイプ部材をつなぎ合わせることによって構成されていることについては、説明および図示を省略している。なお、もしも長さが数十m〜数km(例えば約200m)であるパイプ6を一度に形成することが可能である場合には、前記したように複数のパイプ部材をつなぎ合わせてパイプ6を構成する必要はない。
【0025】
次に、この配管システム4の製造方法およびそのための装置について説明する。図4に模式的に示すように、この配管システム4は、井戸1とガス生産プラント2との間の数kmにわたる距離を接続するものであり、長さ約200mの金属管であるパイプ6を複数つないだものであり、地中に埋められている。このパイプ6のそれぞれの内面に、ライニング樹脂層7を形成する。具体的には、まず、地面を掘って各パイプ6を地中に埋める際に、図5に示すように、各パイプ6の両端部の位置には作業用の立坑8を設け、この立坑8内に作業立管9を配設し、パイプ6の両端にそれぞれ接続しておく。それから、各パイプ6の内面に、前記した内面腐食防止用のライニング樹脂層7を形成する。ライニング樹脂層7の形成にあたって、処理を行うパイプ6の一方の端部に、作業立管9を介して、ライニング樹脂の供給装置であるランチャー10を取り付ける。処理を行うパイプの他方の端部には、作業立管9を介して、あふれ出した余分な樹脂等を受けるためのキャッチャー11を配置する。そして、ランチャー10から作業立管9を通して所定量の内面腐食防止用のライニング樹脂7aをパイプ6内に供給する。ライニング樹脂7aをパイプ6内に注入したら、このライニング樹脂7aの後方にボールピグ12を配置する。そして、図6に模式的に示すように、パイプ6内のボールピグ12に加圧することによって、ボールピグ12がパイプ6内を移動し、その際に、ボールピグ12の外周面とパイプ6の内面との間の隙間にライニング樹脂層7が形成される。従って、パイプの内径をD1、ボールピグの直径をD2、ライニング樹脂層の厚さをTとすると、(D1−D2)/2=Tである。本実施形態では、例えばD1=40mm、T=1mmであり、D2=38mmのボールピグ12が用いられる。
【0026】
従来のランチャー10は、一般的に、容器20と、コンプレッサー(圧縮空気源)14と、圧縮空気供給機構13を含んでいる。しかし、本実施形態では、コンプレッサー14はランチャー10に含まれず、井戸1からガス生産プラント2までの範囲の任意の位置に設けられている。その点について以下に説明する。
【0027】
従来のとおりコンプレッサー14がランチャー10に含まれる場合、図5に示すように、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ(例えば図5のパイプ6A)の一方の端部の近傍に、容器20と圧縮空気供給機構13とコンプレッサー14とを配置し、他方の端部の近傍にキャッチャー11を配置して、ライニング樹脂7aのパイプ6A内への注入と、パイプ6A内におけるライニング樹脂層7の形成とを行うことになる。その場合、1つのパイプ6Aのライニング樹脂層7の形成が完了したら隣接するパイプ(例えば図6のパイプ6B)の一方の端部に容器20および圧縮空気供給機構13およびコンプレッサー14を移動し、他方の端部にキャッチャー11を移動して、隣接するパイプ6B内へのライニング樹脂7aの注入とパイプ6B内におけるライニング樹脂層7の形成とを行う。全てのパイプ6にライニング樹脂層7を形成してから、作業立管9を外して各パイプ6を互いに連結し、さらに、図4に示すように一端のパイプ6を井戸1の吹込管5に、他端のパイプ6をガス生産プラント2にそれぞれ接続し、その他、必要に応じて他の部材との接続や加工を行って配管システム4を完成させる。
【0028】
ところで、通常、水溶性天然ガスを採取するための井戸1は交通の不便な地域に設けられることが多く、1個所のガス生産プラント2に複数の井戸1が接続されていることが多い。ガス生産プラント2と井戸1とを接続する配管システム4は、前記したように数kmもの長距離になる場合があり、その数kmの間には、山間部など一般車両の進入が困難な場所も多い。そのため、前記したように各パイプ6の一方の端部に容器20および圧縮空気供給機構13およびコンプレッサー14を配置し、1つのパイプ6の作業が完了する度に、その都度、容器20および圧縮空気供給機構13およびコンプレッサー14を移動させる場合には、運搬作業が非常に大変である。なぜならば、容器20および圧縮空気供給機構13およびコンプレッサー14をトラックなどの一般車両に載せて搬送できる範囲は限られており、山間部等でも走行可能な特殊車両を用いてこれらを運搬することや、車両が進入できない区間については作業者が手で持ち運ぶことが必要になるからである。特に、本発明の技術分野(水溶性天然ガスの採取用の井戸1に接続する配管システム4)においては、パイプ6の内面腐食防止用のライニング樹脂層7の形成にあたって、コンプレッサー14の運搬が大きな負担となっている。キャッチャー11は、溢れた樹脂や飛び出したボールピグ12を受け止めることができさえすれば何でもよいので、小型かつ軽量の構成にすることが容易であるため、運搬が比較的容易であり、あまり問題にならない。また、容器20および圧縮空気供給機構13も比較的小型化および軽量化が可能であるため、運搬はさほど大変ではない。それらに対して、コンプレッサー14は、小型化および軽量化が困難であるので、運搬が非常に大変であり最大の問題になっている。
【0029】
そこで、このような負担を軽減するための方策として、本出願人は、コンプレッサー14を運搬不要にすることを考えた。具体的には、図7に示すように、井戸1からガス生産プラント2までの範囲のうちの任意の位置、すなわち、コンプレッサー14の搬入および設置に最も適した位置にコンプレッサー14を固定するようにした。そして、このコンプレッサーに最も近い位置にあるパイプ6Cから、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ6Aに隣接するパイプ6Bまで、一時的に仮連結させて仮の配管15を形成し、この仮の配管15のパイプ6Cをコンプレッサー14に接続する。要するに、本実施形態では、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ6Aの近傍にコンプレッサー14を配置していないが、離れた位置にあるコンプレッサー14から仮の配管15を介して圧縮空気が供給できるようにして、パイプ6Aの近傍にコンプレッサー14が配置されている場合と同様に圧縮空気を利用して、ライニング樹脂7aのパイプ6A内への注入と、パイプ6A内におけるライニング樹脂層7の形成とを行えるようにした。従って、コンプレッサー14の位置は任意に選択することができるので、運搬および設置に最適な位置を選んでコンプレッサー14を固定すればよい。そして、このコンプレッサー14を移動することなく、仮の配管15を構成するパイプ6群の接続を少し変えるだけで、全てのパイプ6のライニング樹脂層7の形成工程に利用することができる。この仮の配管15は、圧縮空気供給のためだけの配管を別途形成するわけではなく、配管システム4を完成させる前の、ライニング樹脂層7の形成前または形成後のパイプ6を、作業立管9を介して一時的に互いに仮連結することによって構成している。従って、作業コストや作業時間を低く抑えることができ、非常に効率的である。このように、配管システム4を構成するパイプ6自体を、パイプ6のライニング樹脂層7の形成のための圧縮空気供給用の仮の配管15として利用することは、従来は全く考えられていなかった技術である。
【0030】
具体的には、図7に示す例では、ガス生産プラント2内にコンプレッサー14を固定し、多数のパイプ6のうち、ライニング樹脂層7の形成を行う対象の1本のパイプ6A以外のパイプ6の端部にそれぞれ接続された作業立管9同士を連結部15aによって互いに仮連結することによって、ガス生産プラント2からパイプ6Aに隣接するパイプ6Bに至る仮の配管15を形成する。すなわち、ライニング樹脂層7の形成を行う対象のパイプ6Aに隣接するパイプ6Bから、コンプレッサー14に最も近い位置のパイプ6Cに至るまでの全てのパイプ6および作業立管9を仮連結して、仮の配管15を形成し、ガス生産プラント2内の固定のコンプレッサー14に接続している。そして、この仮の配管15を、ライニング樹脂7aのパイプ6Aへの注入と、パイプ6A内におけるライニング樹脂層7の形成とに用いられる圧縮空気を供給するために使用する。なお、仮の配管15を構成するパイプ6は、ライニング樹脂層7の形成前であっても、ライニング樹脂層7の形成後であっても構わない。コンプレッサー14から供給される圧縮空気は、通常は不純物や水分を含んでいないため、ライニング樹脂層7の形成前のパイプ6であっても、この工程において内面腐食が生じる可能性はほとんどない。
【0031】
ここで、本実施形態における、ライニング樹脂7aのパイプ6Aへの注入工程と、パイプ6A内におけるライニング樹脂層7の形成工程の具体例について、詳細に説明する。まず、ライニング樹脂7aのパイプ6Aへの注入工程に先だって、ライニング樹脂層7の形成を行う対象のパイプ6Aの一端を容器20に接続し、他端をキャッチャー11に接続する。そして、容器20に、圧縮空気供給機構13を介して仮の配管15を接続する。仮の配管15には、前記したようにガス生産プラント2に固定されたコンプレッサー14が接続されている。そして、前記した例と同様に、容器20から作業立管9を通して所定量の内面腐食防止用のライニング樹脂7aをパイプ6A内に供給する際に、コンプレッサー14を作動させ、仮の配管15および圧縮空気供給機構13を介して容器20に圧縮空気を供給する。この圧縮空気によって加圧された容器20内のライニング樹脂7aがパイプ6A内に注入される。続いて、図示しないが、パイプ6A内のライニング樹脂7aの後方にボールピグ12を配置するとともに、容器20を、圧縮空気供給機構13とパイプ6Aとの間から外して、圧縮空気供給機構13とパイプ6Aとを直接接続する。そして、コンプレッサー14を用いて、仮の配管15および圧縮空気供給機構13を介して、パイプ6A内に圧縮空気を供給する。この圧縮空気によって加圧されたボールピグ12が、ライニング樹脂7aを押しながらパイプ6A内を移動していく。このときに、移動するボールピグ12の外周面とパイプ6Aの内面との間の隙間に、ライニング樹脂層7が形成されていく(図5参照)。このように、パイプ6A内へのライニング樹脂7aの注入と、ボールピグ12を移動させることによるライニング樹脂層7の形成のいずれにも、固定のコンプレッサー14から仮の配管15を介して供給された圧縮空気を利用している。この構成では、コンプレッサー14が、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ6Aの近傍に位置していなくても、圧縮空気供給機構13と、仮の配管15と、任意の位置に設けられた固定のコンプレッサー14とによって、ライニング樹脂7aの注入およびライニング樹脂層7の形成のための加圧力を得ることができる。
【0032】
以上説明した通り、図7に示す構成によると、容器20と圧縮空気供給機構13とコンプレッサー14とキャッチャー11のうちで、最も大型で運搬しにくいコンプレッサー14を、任意の位置(例えばガス生産プラント2内)に固定し、運搬不要にしている。それによって、パイプ6の内面へのライニング樹脂層7の形成のための作業が容易になる。特に、この作業のための装置を、交通の不便な山間部等で運搬する上で、特に大型かつ重量であり搬送を困難にする最大の要因であるコンプレッサー14が運搬不要で、比較的小型かつ軽量の容器20と圧縮空気供給機構13とキャッチャー11のみを搬送すればよいので、作業性が非常に良好になる。容器20と圧縮空気供給機構13とキャッチャー11のみであれば、山間部等においても特殊車両を用いず作業者が手で持ち運ぶことが比較的容易に可能である。
【0033】
次に、本発明の一実施形態における、パイプ6のライニング樹脂層7の形成方法について、詳細に説明する。
【0034】
本発明は、前記したとおり、水溶性天然ガスの採取用の井戸1に接続する配管システム4に関するものであり、パイプ6内を流れる不純物と水分を含むガスによって内面腐食を生じることを問題にしている。そのため、パイプ6の内面に内面腐食防止用のライニング樹脂層7を形成している(図3参照)。このライニング樹脂層7は内面腐食を防止するために、2液混合エポキシ樹脂などからなり、例えば特許文献1〜4等のガス漏れ防止用の樹脂層に比べて膜厚が厚く(厚さが平均1mm以上であり)かつ高粘性である。ライニング樹脂層7の形成にあたっては、前記したとおり、ライニング樹脂7aを容器20からパイプ6内に注入し、続いてボールピグ12をパイプ6内に注入してから、コンプレッサー14から圧縮空気供給機構13を介して圧縮空気をパイプ6内に送り込むことによって、ライニング樹脂7aおよびボールピグ12を移動させる。本発明の場合、従来に比べて高粘性のライニング樹脂を、従来に比べて長く(長さ約200mで)かつ細い(直径約50mm以下の)パイプ6の内面に形成するために、非常に大量に(例えば20リットル程度)容器20からパイプ6に注入する必要がある。一般に、高粘性のライニング樹脂7aを細いパイプ6内に大量に注入することは容易ではない。そこで本実施形態では、効率よく樹脂の注入が行え、しかも樹脂の注入完了が確認できる構成を採用している。その一例について詳細に説明する。
【0035】
図8,9には、本実施形態の容器20と圧縮空気供給機構13の構成について示している。この容器20は、蓋21と、容器20内の圧力を検知する圧力計17とを有している。さらに、容器20内には、落とし蓋18と、落とし蓋18の下方に位置するゴム板19と、落とし蓋18を円滑に上下動させるためのガイド22を有している。また、落とし蓋18には、手動で持ち上げるための取手27が設けられている。
一方、圧縮空気供給機構13は、容器20とコンプレッサー14とを接続するものであり、元栓バルブ23と、空気量調節バルブ24と、減圧弁25と、流量計26を含む。
【0036】
まず始めに、容器20内に所定量(例えば20リットル)のライニング樹脂7aを収容して、そのライニング樹脂7aの上にゴム板19および落とし蓋18を置く。そして、元栓バルブ23を開いて、コンプレッサー14から供給される例えば0.8MPaの圧縮空気を、減圧弁25にて例えば0.4MPaに減圧する。さらに、流量計26を確認しながら空気量調節バルブ24を調節して、流量を例えば80リットル/分に設定する。こうして、コンプレッサー14から圧縮空気供給機構13を介して容器20内に圧縮空気を送り込むことにより、落とし蓋18に圧力を加える。このように圧力を加えられた落とし蓋20は、ガイド22に沿って下降し、それに伴ってライニング樹脂7aが容器20内からパイプ6a内に注入される。
【0037】
このようにして、圧縮空気を利用してライニング樹脂7aを容器20内からパイプ6内に注入することができるが、その後のボールピグ12を用いたライニング工程に効率よく移行するためには、容器20内のライニング樹脂7aが全てパイプ6に注入されてしまったことを、タイムラグ無く確認することが好ましい。そこで本実施形態では、流量計26および圧力計17を監視する。ライニング樹脂7aのパイプ6内への注入開始時点では、流量計は80リットル/分を示し、圧力計17は0MPaから徐々に上昇していく。そして、容器20内で落とし蓋18が移動しなくなると、圧力計17は、供給される圧縮空気と同じ0.4MPaになり、流量計26は0リットル/分になる。言い換えると、圧力計17が0.4MPaを示し流量計26が0リットル/分を示すのは、容器20内のライニング樹脂7aが全てなくなり、図8に2点鎖線で示すように、落とし蓋18およびゴム板19が容器20の下面に密着して移動不能になったときである。このように、圧力計17が測定する容器20内の圧力が、圧縮空気供給機構13から供給される圧縮空気と同じ圧力になり、かつ、流量計26が測定する、容器20内に供給される空気の流量が0になったときに、容器20内のライニング樹脂7aが全てパイプ6内に注入されてしまったと判断できる。
【0038】
なお、この構成では落とし蓋18の下にゴム板19が配置されているので、加圧された落とし蓋18が下降してライニング樹脂7aがパイプ6内に注入されてしまうと、容器20の底の穴をゴム板19が塞いで密着するため、供給された圧縮空気の逃げ場がなくなり、圧力が確実に上昇していく。そして、供給される圧縮空気と同じ0.4MPaになった時点で圧力は変動しなくなる。また、このように逃げ場がない状態で圧縮空気が供給され続けると、容器20内を満たした後はそれ以上圧縮空気が容器20内に入らなくなる。そのことが、流量計17が0リットル/分を示すことによって示される。流量計26と圧力計17のいずれか一方だけでもライニング樹脂7aの注入完了が認識できるが、本実施形態では流量計26と圧力計17とを併用することにより、ライニング樹脂7aの注入完了した時点を認識する信頼性を非常に高くすることができ、即座に次工程に移行することができる。
【0039】
なお、ライニング樹脂7aの注入完了を再確認するために、図示しないが、容器20の上方から液面検査棒を挿入して落とし蓋18の上面に当接させ、その液面検査棒の挿入長さを測定することもできる。その挿入長さが、容器20が空の場合の蓋21から落とし蓋18の上面までの距離に一致したら、ライニング樹脂7aの注入完了が改めて確認されたことになる。
【0040】
本実施形態以外の方法でライニング樹脂7aの注入完了を確認する方法としては、図示しないが、容器20に透明な窓部を設け、その窓部から目視でライニング樹脂7aがなくなったことを確認することが考えられる。しかし、高粘性のライニング樹脂7aが窓部に内側から付着すると、窓部を通して内部を見ることができなくなり、確認不可能になる。また、蓋21を開いて目視で確認したり、前記した液面検査棒のみによって確認したりすることも考えられるが、その場合、蓋21を開いたり液面検査棒を挿入したりした時点でライニング樹脂7aの注入が未完了であると、再度蓋21を閉じたり、液面検査棒を抜き取ったりして、それから圧縮空気を再度供給して落とし蓋18の加圧およびライニング樹脂7aの注入を再開しなければならない。従って、作業効率が非常に悪くなる。一方、蓋21を開けての目視や液面検査棒の挿入のみによってライニング樹脂7aの注入完了を確認できたとしても、その確認がライニング樹脂の注入完了直後であるとは限らない。ライニング樹脂7aの注入が完了して、ある程度の時間が経過した後に、蓋21を開いたり液面検査棒を挿入したりして注入完了が確認されたのだとしたら、時間の無駄があったことになる。いずれにしても、ライニング樹脂7aの注入完了を即座に、しかも信頼性高く確認することによって、作業効率を非常に向上させるという効果は、蓋21を開けての目視や液面検査棒の挿入のみでは不可能である。このような効果は、流量計26と圧力計17とを併用し、さらに穴を密閉できるゴム板19を用いている本実施形態によって初めて可能になる。
【0041】
なお、本実施形態のライニング樹脂7aの注入完了確認は、コンプレッサー14が容器20および圧縮空気供給機構13の近傍に配置されている場合でも、図7に示すようにコンプレッサー14が任意の位置(例えばガス生産プラント2)に配置されている場合でも採用可能である。
【0042】
なお、以上の説明では、パイプ6の一方の端部からライニング樹脂7aを注入し、図6に示すようにボールピグ12を用いて一方の端部から他方の端部までライニング樹脂層7を形成している。理論上は、このような方法で所望のライニング樹脂層7が完成する。しかし、実際には、パイプ6の内面の僅かな凹凸等に起因して、ライニング樹脂層7aが全体にわたって十分な厚さが確保できなかったり、塗布漏れが生じたりするおそれがある。そこで、ライニング樹脂層7の塗布漏れを防ぐとともに十分な厚さを確保するために、一方の端部から他方の端部までライニング樹脂層7を形成した後に、他方の端部から一方の端部までライニング樹脂層7を再度重ねて形成することもできる。その場合、図10に示すようにパイプ6の両端部のいずれにもランチャー10とキャッチャー11を用意しておき、前記したのと同様に、始めに、一方の端部にランチャー10を接続し他方の端部にキャッチャー11を接続して、一方の端部付近に所定量のライニング樹脂7aを注入し、ボールピグ12を移動させて一方の端部から他方の端部までライニング樹脂層7を形成する。そして、余ったライニング樹脂7aとボールピグ12は他方の端部から排出させてキャッチャー11にて受け取る。それから、一方の端部にキャッチャー11を、他方の端部にランチャー10を接続し直して、余ったライニング樹脂7aを他方の端部付近に注入し、ボールピグ12を移動させて他方の端部から一方の端部までライニング樹脂層7を重ねて形成する。それでも僅かに余ったライニング樹脂7aが存在したらそのライニング樹脂7aとボールピグ12とは、一方の端部から排出させてキャッチャー11にて受け取る。なお、余ったライニング樹脂7aを他方の端部付近に注入する際には、キャッチャー11を容器20の代用品として用いてもよい。
【0043】
このように、パイプ6に対して一方の端部から他方の端部までライニング樹脂層7を形成した後に、他方の端部から一方の端部まで再度ライニング樹脂層7を重ねて形成する方法を、図7に示すようにコンプレッサー14を任意の位置に配置する構成に採用する場合には、ライニング樹脂層7を形成するパイプ6Aを中心として両側(井戸1側とガス生産プラント2側)にコンプレッサー14が必要になる。従って、多数のパイプ6を1つずつ順番にライニング樹脂層7の形成を行っていくことを考えると、図11に示すように、配管システム4の両端に位置する井戸1の近傍とガス生産プラント2とにそれぞれコンプレッサー14を配置することが好ましい。そして、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ6Aの両側に、仮の配管15をそれぞれ構成する。
【0044】
以上、詳細に説明したとおり、本発明によると、高圧(例えば1MPa以上)かつ高温(例えば30℃〜60℃)であり、水分(湿気)と様々な不純物とを含んでいるガスが流通する、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸1とガス生産プラント2との間を接続するために用いられるパイプ6の内面腐食を、内面腐食防止用のライニング樹脂層7によって防ぐことができ、このパイプ6を含む配管システム4の耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、図7,11に示すように、圧縮空気源であるコンプレッサー14を、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプ6A自体の近傍に配置するのではなく、ガス生産プラント2から井戸1までの範囲内の任意の位置、すなわち運搬および設置に適した位置に固定することにより、従来はコンプレッサー14の運搬により生じていた多大な労力をなくすことができる。しかも、任意の位置に固定されたコンプレッサー14からの、パイプ6Aのライニング樹脂層7の形成のために用いられる圧縮空気の供給を、専用の配管を設けるのではなく、パイプ6A以外のパイプ6群を立管9を利用して一時的に連結することにより構成した仮の配管15を利用して行うことにより、作業コストおよび作業時間の上昇を抑えることができ、非常に効率的である。
【0046】
また、図8,9に示すように、落とし蓋18を内蔵した容器20を用い、圧力計17によって容器20内の圧力を測定して、その測定値を、コンプレッサー14から圧縮空気供給機構13を介して容器20に供給される圧縮空気の圧力と比較し、さらに、流量計26によって、コンプレッサー14から圧縮空気供給機構13を介して容器20に供給される圧縮空気の流量を測定することにより、容器20内の全てのライニング樹脂7aがパイプ6A内に注入完了したことを信頼性高く、しかも即座に検出することができる。従って、次のライニング樹脂層7の形成工程に効率よく移行することができ、作業効率を向上させることができる。
【0047】
以上の説明は、内面に内面腐食防止用のライニング樹脂層が形成されているパイプからなる配管システムを新規に製造するための製造方法に関するものであるが、本発明は、既設の配管システムの補修に応用することもできる。
【0048】
一例としては、既設の配管システムのパイプのうち、補修すべき部分を含む領域の内面に、内面腐食防止用のライニング樹脂層を形成する。すなわち、図12に示すように、パイプ6を部分的に切断して、補修すべき部分を含む領域6Aを切り離す。そして、切り離された、補修すべき部分を含む領域6Aの内部へライニング樹脂を注入してから、注入されたライニング樹脂を、補修すべき部分を含む領域6Aの内面全体に塗布して、厚さが平均1mm以上のライニング樹脂層を形成する。なお、本実施形態では、補修すべき部分を含む領域が、実質的に、ライニング樹脂層7の形成を行うパイプに相当するため、同一の符号「6A」を付与している。
【0049】
より詳しく説明すると、本実施形態では、立坑を形成しその立坑内でパイプ6を部分的に切断して、補修すべき部分を含む領域6Aを切り離す。立坑内には、パイプ6の各端部と接続される作業立管9を形成する。そして、ガス生産プラント2から井戸1までの範囲内の任意の位置にコンプレッサー(圧縮空気源)14を設ける。図12に示す例では、ガス生産プラント2内にコンプレッサー14を固定している。そして、パイプ6の一端部をこのコンプレッサー14に接続する。一方、補修すべき部分を含む領域6Aの端部に接続された作業立管9に、容器20と圧縮空気供給機構13を含むランチャー10を接続する。そして、コンプレッサー14に接続されたパイプ6の他端部に接続された作業立管9を、圧縮空気供給機構13に接続する。こうして、コンプレッサー14に接続されたパイプ6を仮の配管とする。すなわち、ガス生産プラント2内に固定されたコンプレッサー14に接続されたパイプ6を仮の配管として用い、その他端部に接続された作業立管9を介して、ランチャー10の圧縮空気供給機構13に圧縮空気を供給する。そして、この圧縮空気を利用して、容器20から、補修すべき部分を含む領域6Aの内部へのライニング樹脂の注入や、補修すべき部分を含む領域6Aの内面のライニング樹脂層の形成を行う。
【0050】
図示しないが、コンプレッサー14をガス生産プラント2ではなくパイプ6の中間位置に固定する場合には、コンプレッサー14の固定位置に近接する位置において、立坑を形成しその立坑内でパイプ6を部分的に切断すればよい。これにより、コンプレッサー14に近接する切断個所から、補修すべき部分を含む領域6Aに隣接する切断個所までの領域が、切り離された1本のパイプとなる。そして、コンプレッサー14に近接する切断個所を、作業立管9を介してコンプレッサー14に接続するとともに、補修すべき部分を含む領域6Aに隣接する切断個所を、作業立管9を介してランチャー10の圧縮空気供給機構13に接続する。これによって、コンプレッサー14に接続された切断個所から、補修すべき部分を含む領域6Aに隣接する切断個所までのパイプ6を、仮の配管とする。そして、コンプレッサー14から仮の配管を介して供給された圧縮空気を利用して、容器20から、補修すべき部分を含む領域6Aの内部へのライニング樹脂の注入や、補修すべき部分を含む領域6Aの内面のライニング樹脂層の形成を行えばよい。
【0051】
このような方法によると、補修すべき部分を含む領域6Aの近傍までコンプレッサー14を運搬する必要がないので、作業が容易にできる。
【0052】
図12に示す例は、配管システムのうちの一部のみを補修する場合である。これに対し、既設の配管システム全体を補修する場合には、配管システムを構成している長いパイプ全体を一度に処理することは非常に困難である。そこで、配管システムを構成しているパイプ全体を、所定長さ以下の領域毎に(例えば200m毎に)切断して分割し、分割された全ての領域を、前記した補修すべき部分を含む領域6Aとみなして、ライニング樹脂を注入する工程とライニング樹脂層を形成する工程とを順次実施すればよい。その場合、図7に示す例と同様に、コンプレッサー14は1個所に固定して、そのコンプレッサー14に近接するパイプ6Cから、補修すべき部分を含む領域6Aに隣接するパイプ6Bまでを、中間に位置する作業立管9同士を連結することによって仮接続し、仮の配管を構成すればよい。こうすることによって、コンプレッサー14を逐一運搬することなく、各領域を順番に処理(ライニング樹脂の注入およびライニング樹脂層の形成)することができる。この方法によると、作業性を著しく向上させることができる。
【0053】
なお、パイプの補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程では、図8,9を参照して説明したのと同様に、上下動可能な落とし蓋18と、落とし蓋18の下面または下方に位置するゴム板19とを内蔵している、ライニング樹脂を収容するための容器20を、補修すべき部分を含む領域の一端部に接続する。そして、容器20にコンプレッサー(圧縮空気源)14を接続した状態で、コンプレッサー14から容器20に圧縮空気を供給することによって落とし蓋18を押圧して、落とし蓋18およびゴム板19の下方に位置するライニング樹脂を容器20内から補修すべき部分を含む領域の内部へ押し出す。その際に、圧力計17によって容器20内の圧力を測定するとともに、流量計26によって、コンプレッサー14から容器20に供給される圧縮空気の流量を測定する。圧力計17によって測定された圧力が、コンプレッサー14から容器20に供給される圧縮空気の圧力と一致し、かつ、流量計26によって測定された圧縮空気の流量が0になった時点で、容器20内のライニング樹脂の、補修すべき部分を含む領域の内部への注入が完了したと判断する。これにより、ライニング樹脂の注入完了を即座に、しかも信頼性高く確認することができ、作業効率を大きく向上させることができる。
【0054】
既設の配管システムのパイプを補修するためのライニング樹脂層の形成方法は、図6に示す工程と同じ方法でよいので、説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の配管システムと井戸とガス生産プラントを含む設備全体の模式図である。
【図2】井戸における地下水の採取方法の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す配管システムを構成するパイプの断面図である。
【図4】図1に示す配管システムの完成状態を示す模式図である。
【図5】本発明の配管システムの製造装置の一例を示す模式図である。
【図6】ライニング樹脂層の形成工程を示す断面図である。
【図7】本発明の配管システムの製造装置の他の例を示す模式図である。
【図8】本発明の配管システムの製造装置の容器および圧縮空気供給機構の一例を示す構成図である。
【図9】図8に示す容器の内部の部材を示す構成図である。
【図10】本発明の配管システムの製造装置の他の例を示す模式図である。
【図11】本発明の配管システムの製造装置の他の例を示す模式図である。
【図12】本発明の配管システムの補修方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 井戸
2 ガス生産プラント
3 パイプライン
4 配管システム
5 吹込管
6 パイプ
6A ライニング樹脂層の形成を行うパイプ(補修すべき部分を含む領域)
6B 隣接するパイプ
6C 圧縮供給源に最も近いパイプ
7 ライニング樹脂層
7a ライニング樹脂
8 立坑
9 作業立管
10 ランチャー
11 キャッチャー
12 ボールピグ
13 圧縮空気供給機構
14 コンプレッサー(圧縮空気源)
15 仮の配管
15a 連結部
16 ケーシングパイプ
16a 孔明管
17 圧力計
18 落とし蓋
19 ゴム板
20 容器
21 蓋
22 ガイド
23 元栓バルブ
24 空気量調節バルブ
25 減圧弁
26 流量計
27 取手
28 抗口装置
28a 導出部
b 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムであって、
地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプからなり、
前記パイプの内面に内面腐食防止用のライニング樹脂層が形成されている、
配管システム。
【請求項2】
前記ライニング樹脂層の厚さが平均1mm以上である、請求項1に記載の配管システム。
【請求項3】
複数の前記パイプが連結されて構成される請求項1または2に記載の配管システムを製造するための装置であって、
前記複数のパイプを連結する前に、前記ライニング樹脂層の形成を行う前記パイプ以外のパイプの一時的な仮連結を行い、前記仮連結は、前記各パイプの両端部の位置にそれぞれ設けられた作業用の立坑内に配置され、前記各パイプの端部にそれぞれ接続された作業立管同士を接続することによってなされている、配管システム製造装置。
【請求項4】
地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプからなり、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムの製造方法であって、
前記パイプの内面に内面腐食防止用のライニング樹脂層を形成する工程を含む、
配管システムの製造方法。
【請求項5】
前記ライニング樹脂層を、厚さが平均1mm以上になるように形成する、請求項9に記載の配管システムの製造方法。
【請求項6】
前記ライニング樹脂層を形成する工程の前に前記パイプ内へライニング樹脂を注入する工程を含み、
前記パイプ内へライニング樹脂を注入する工程では、
上下動可能な落とし蓋と該落とし蓋の下面または下方に位置するゴム板とを内蔵している、ライニング樹脂を収容するための容器を、前記パイプの一端部に接続し、前記容器に圧縮空気源を接続した状態で、前記圧縮空気源から前記容器に圧縮空気を供給することによって前記落とし蓋を押圧して、前記落とし蓋および前記ゴム板の下方に位置する前記ライニング樹脂を前記容器内から前記パイプ内へ押し出し、
圧力計によって前記容器内の圧力を測定するとともに、流量計によって、前記圧縮空気源から前記容器に供給される圧縮空気の流量を測定して、前記圧力計によって測定された圧力が、前記圧縮空気源から前記容器に供給される前記圧縮空気の圧力と一致し、かつ、前記流量計によって測定された前記圧縮空気の流量が0になった時点で、前記容器内の前記ライニング樹脂の前記パイプ内への注入の完了を検知する、
請求項4または5に記載の配管システムの製造方法。
【請求項7】
複数の前記パイプが連結されて構成される配管システムの製造方法であって、
複数の前記パイプを連結する工程の前、かつ前記ライニング樹脂層を形成する工程の前に、
前記ガス生産プラントから前記井戸までの範囲内の任意の位置に圧縮空気源を設け、
複数の前記パイプのうち、前記ライニング樹脂層の形成を行う1本の前記パイプに隣接するパイプから、前記圧縮空気源に最も近いパイプに至るまでの全ての前記パイプを、前記各パイプの両端部の位置にそれぞれ設けられた作業用の立坑内に配置され前記各パイプの端部にそれぞれ接続された作業立管同士を接続することによって、一時的に仮連結し、かつ前記圧縮空気源に最も近い前記パイプを前記圧縮空気源に接続することによって、前記圧縮空気源から、前記ライニング樹脂層の形成を行う前記パイプ以外の仮連結された前記パイプを介して、前記隣接するパイプに至る仮の配管を構成し、
前記ライニング樹脂層の形成を行う前記パイプを、前記隣接するパイプに間接的に接続する
請求項4から6のいずれか1項に記載の配管システムの製造方法。
【請求項8】
前記ライニング樹脂層の形成を行う前記パイプを、前記ライニング樹脂を収容する容器と圧縮空気供給機構とを介して、前記隣接するパイプに接続し、
任意の位置に設けられた前記圧縮空気源から、前記ライニング樹脂層の形成を行う前記パイプ以外の仮連結された前記パイプと、前記圧縮空気供給機構とを介して、前記容器に圧縮空気を供給し、前記容器に供給された圧縮空気によって前記ライニング樹脂を加圧して前記容器内から前記パイプ内へ押し出す、
請求項7に記載の配管システムの製造方法。
【請求項9】
地中に埋め込まれており水分を含む圧縮ガスを流通させるパイプからなり、水溶性天然ガスを含む地下水の採取用の井戸とガス生産プラントとの間を接続する配管システムの補修方法であって、
前記パイプの内面の任意の箇所に内面腐食防止用のライニング樹脂層を形成する工程を含む、
配管システムの補修方法。
【請求項10】
前記ライニング樹脂層を、厚さが平均1mm以上になるように形成する、請求項9に記載の配管システムの補修方法。
【請求項11】
前記ライニング樹脂層を形成する工程の前に、前記パイプを部分的に切断して、補修すべき部分を含む領域を切り離す工程と、前記補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程とを含み、
前記パイプの前記補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程では、
上下動可能な落とし蓋と該落とし蓋の下面または下方に位置するゴム板とを内蔵している、ライニング樹脂を収容するための容器を、前記補修すべき部分を含む領域の一端部に接続し、前記容器に圧縮空気源を接続した状態で、前記圧縮空気源から前記容器に圧縮空気を供給することによって前記落とし蓋を押圧して、前記落とし蓋および前記ゴム板の下方に位置する前記ライニング樹脂を前記容器内から前記補修すべき部分を含む領域の内部へ押し出し、
圧力計によって前記容器内の圧力を測定するとともに、流量計によって、前記圧縮空気源から前記容器に供給される圧縮空気の流量を測定して、前記圧力計によって測定された圧力が、前記圧縮空気源から前記容器に供給される前記圧縮空気の圧力と一致し、かつ、前記流量計によって測定された前記圧縮空気の流量が0になった時点で、前記容器内の前記ライニング樹脂の、前記補修すべき部分を含む領域の内部への注入の完了を検知する、
請求項9または10に記載の配管システムの補修方法。
【請求項12】
前記ライニング樹脂層を形成する工程の前に、前記パイプを部分的に切断して、補修すべき部分を含む領域を切り離す工程と、前記補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程とを含み、
前記補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程の前に、
前記ガス生産プラントから前記井戸までの範囲内の任意の位置に圧縮空気源を設け、
前記圧縮空気源に近接する位置において前記パイプを切断して、当該切断個所を前記圧縮空気源に接続し、前記圧縮空気源に接続された前記切断個所から、前記補修すべき部分を含む領域に隣接する切断個所までを、圧縮空気を供給するための仮の配管とする
請求項9から11のいずれか1項に記載の配管システムの補修方法。
【請求項13】
前記パイプの前記補修すべき部分を含む領域の一端部を、前記ライニング樹脂を収容する容器と圧縮空気供給機構とを介して、前記補修すべき部分を含む領域に隣接する切断個所に接続し、
前記補修すべき部分を含む領域の内部へライニング樹脂を注入する工程では、任意の位置に設けられた前記圧縮空気源から、前記仮の配管と前記圧縮空気供給機構とを介して、前記容器に圧縮空気を供給し、前記容器に供給された圧縮空気によって前記ライニング樹脂を加圧して前記容器内から前記パイプ内へ押し出す、
請求項12に記載の配管システムの補修方法。
【請求項14】
前記パイプ全体を所定長さ以下の領域毎に分割し、分割された全ての領域を前記補修すべき部分を含む領域として前記ライニング樹脂を注入する工程と前記ライニング樹脂層を形成する工程とを順次実施する、
請求項9から13のいずれか1項に記載の配管システムの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−150448(P2009−150448A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327486(P2007−327486)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000157108)関東天然瓦斯開発株式会社 (11)
【Fターム(参考)】