説明

配管・配索用ガイドブラケット

【課題】異なる経路で配設される配管・配索を1つのガイドブラケットで支持できるようにする。
【解決手段】板状の固定部材11の一端11aに面積が拡大された支持部12を有しており、支持部12の周縁に、固定部材11の長手方向前後に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の切欠部3a,3a'、3b,3b'と、固定部材11の長手方向と交叉する方向に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の追加切欠部13a,13a'、13b,13b'とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に配置されるチューブ、ホース等の配管及び電線束等の配索を支持するための配管・配索用ガイドブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には空気・水・油等を移送するためのチューブ、ホース等の配管及び電線束等の配索からなる可撓長尺物(本発明では配管・配索と称す)が種々の経路で多数配設されており、これらの配管・配索は車両の振動等によって揺れ動くことがないように、車両のシャシフレーム間等の所定の箇所に固定したガイドブラケットに対して固縛バンドを用いて支持している。
【0003】
図6は、車両のシャシフレーム間に備えられる配管・配索1の一例を示したもので、多数のナイロンチューブ1aが種々の経路で配置された場合を示している。このようなナイロンチューブ1aを支持しておくために、車両の所定箇所にはガイドブラケット2が固定してあり、ガイドブラケット2に形成したコの字形の切欠部3に掛けた固縛バンド4によってナイロンチューブ1aを束ねるようにして揺動しないように支持している。この時、一般に広く利用されているナイロンチューブ1aは柔らかく、従って、固縛バンド4で強く固縛した場合には、ナイロンチューブ1aが変形して流体の流動を悪化させる問題や、傷付くことにより流体が漏出する問題が考えられ、又、図6に示さない電線束を前記固縛バンド4で強く固縛した場合には内部の信号線等が損傷する等の問題が考えられるため、前記固縛バンド4は所定の決められた強さでナイロンチューブ1a或いは電線束を固縛するようにしている。
【0004】
図7は前記ガイドブラケット2の一例を示したもので、このガイドブラケット2は、狭幅の鋼板材をL字形に折り曲げた固定部材5を設け、該固定部材5の一端5aに支持板6を固定しており、前記固定部材5の他端5bをボルト等の固定具7によって車両の所定箇所に固定するようにしている。前記支持板6は、前記固定部材5の幅方向両側に突出した張出部6a,6bを有しており、該張出部6a,6bにおける前記固定部材5の長手方向前後縁には、コの字形を有する切欠部3a,3a'と切欠部3b,3b'が夫々対向して形成されている。即ち、図7では、張出部6aに設けた一対の切欠部3a,3a'と、張出部6bに設けた一対の切欠部3b,3b'を備えた場合を示している。8はコの字形の切欠部3a,3a'、3b,3b'の底辺を形成する直線底面示す。
【0005】
そして、前記支持板6の上部に、該支持板6の幅方向に延びた経路のナイロンチューブ1aを載置し、幅方向一側の切欠部3a,3a'に固縛バンド4を配置してナイロンチューブ1aを所定の強さで絞めることにより固縛し、幅方向他側の切欠部3b,3b'に固縛バンド4を配置してナイロンチューブ1aを所定の強さで絞めることにより固縛し、これによりナイロンチューブ1aを2個所で支持している。
【0006】
上記ガイドブラケットに類似した構成を有するものとしては、パネルに電線束、電気接続箱、配管等を固定するためのボルト係止クリップがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−173630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図7に示したガイドブラケット2においては、以下のような問題を有していた。
【0009】
図7のガイドブラケット2の支持板6は、前記固定部材5の幅方向の張出部6a,6bの前後に対称に切欠部3a,3a'、3b,3b'を形成した構成であるため、図8に実線で示すように、支持板6の幅方向に延びて配置されるナイロンチューブ1aを支持することはできるが、図8中二点鎖線で示すように、支持板6の幅方向と斜めに交叉する方向に延びて配置されるナイロンチューブ1aは支持することができない場合がある。即ち、支持板6の幅方向と斜めに交叉する方向に延びたナイロンチューブ1aを支持板6に支持しようとしてコの字形の切欠部3a,3a'、3b,3b'に固縛バンド4を配置した場合、図8に示すように、固縛バンド4が切欠部3a'、3bに引っ掛からなくなり、このためにナイロンチューブ1aを確実に固定することが困難になる場合がある。
【0010】
又、図9に示すように、固縛バンド4がコの字形の切欠部3a,3a'、3b,3b'の直線底面8に対して大きく傾いて当節するために角部4aに応力が集中する場合があり、この場合には固縛バンド4が破断する可能性がある。
【0011】
更に、前記したように、支持板6の幅方向と斜めに交叉する方向に延びて配置されるナイロンチューブ1aの場合には、図10に示すように、固縛バンド4の角部4aがナイロンチューブ1aの表面に当接することがあり、この時、一般に広く用いられているナイロンチューブ1aは柔らかい材質であるのに対して固縛バンド4は強度保持のために高い硬度を有していることから、車両の振動等によって前記固縛バンド4の角部4aがナイロンチューブ1aの外周面に繰り返し衝突することによりナイロンチューブ1aが損傷する可能性がある。
【0012】
このように、図7のガイドブラケット2は、支持板6の幅方向に延びる経路のナイロンチューブ1aを支持する場合にのみ有効に用いられるものであるため、前記ナイロンチューブ1aが他の方向へ伸びて配置される場合には、そのナイロンチューブ1aの経路に支持板6の幅方向が一致するように、支持板6を固定部材5に固定した新たなガイドブラケット2を製作して支持する必要がある。
【0013】
従って、従来のガイドブラケット2は、ナイロンチューブ1aが配置される経路ごとに設計したものを用いる必要があるため、部品点数が増加し、少量生産となることにより高コストになる問題がある。
【0014】
又、実車組み付け時に、ナイロンチューブ1aの張力によるバラツキ等でナイロンチューブ1aが計画した経路を通らなかった場合には、新たな経路に合致した新たなガイドブラケット2に交換する必要があり、そのために、やり直し工数が増加して生産性が低下するという問題がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、異なる経路で配設される配管・配索を1つのガイドブラケットで支持できるようにした配管・配索用ガイドブラケットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の配管・配索用ガイドブラケットは、板状の固定部材の一端に面積が拡大された支持部を有しており、該支持部の周縁に、前記固定部材の長手方向前後に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の切欠部と、前記固定部材の長手方向と交叉する方向に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の追加切欠部とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の配管・配索用ガイドブラケットおいては、固定部材の長手方向と直交する方向に延びて支持部に配置される配管・配索は、支持部周縁における前後に対向して形成した切欠部に固縛バンドを配置して支持部に支持させることができ、固定部材の長手方向と直交する以外の角度で交叉する方向に延びて支持部に配置される配管・配索は、支持部周縁における固定部材の長手方向と交叉する方向に対向して形成した追加切欠部に固縛バンドを配置して支持部に支持させることができる。
【0018】
上記配管・配索用ガイドブラケットにおいて、前記切欠部の底辺が、曲線底面を形成していることは好ましい。
【0019】
上記配管・配索用ガイドブラケットにおいて、前記固定部材と前記支持部が板材の打ち抜きにより一体に形成されたことは好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配管・配索用ガイドブラケットによれば、複数の異なる経路に配置される配管・配索を、1つのガイドブラケットを用いて支持することができるため、部品共通化によりガイドブラケットの種類が減少し、量産によるコストダウンが図れるという優れた効果を奏し得る。
【0021】
前記切欠部の底辺を曲線底面としたことにより、配管・配索を支持する固縛バンドが直角の方向からずれていても、曲線底面に固縛バンドが馴染むことにより固縛バンドに応力が集中する問題を防止できる効果がある。
【0022】
又、前記固定部材と前記支持部を板材の打ち抜きにより一体に形成したことにより、ガイドブラケットの生産性を更に高めてコストダウンを図れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の配管・配索用ガイドブラケットの一実施例を示す斜視図である。
【図2】支持部に配管・配索を支持する第1の支持例を示す平面図である。
【図3】支持部に配管・配索を支持する第2の支持例を示す平面図である。
【図4】支持部に配管・配索を支持する第3の支持例を示す平面図である。
【図5】本発明の配管・配索用ガイドブラケットの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】車両のシャシフレーム間に備えられる配管・配索の一例を示す斜視図である。
【図7】従来のガイドブラケットの一例を示す斜視図である。
【図8】図6の支持部に配管・配索を支持する状態を示す平面図である。
【図9】固縛バンドの角部が切欠部の直線底面に当たる状態を示す説明図である。
【図10】固縛バンドの角部がナイロンチューブの外周面に衝突する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0025】
図1は本発明の配管・配索用ガイドブラケットの一実施例を示すもので、このガイドブラケット10は、板状の固定部材11の一端11aに、固定部材11の幅方向へはみ出すように面積が拡大された例えば円形を有する支持部12が一体に形成されており、前記固定部材11の他端11bはL字形に曲げられていて該他端11bは、ボルト等の固定具7によって車両の所定箇所に固定されるようになっている。
【0026】
前記支持部12の周縁には、図7と同様に、前記固定部材11の長手方向前後に対向して形成された一対の切欠部3a,3a'と、一対の切欠部3b,3b'を備えている。
【0027】
更に、前記支持部12の周縁には、前記固定部材11の長手方向と90゜以外の角度で交叉する方向に対向して形成された一対の追加切欠部13a,13a'が設けてあり、更に、前記追加切欠部13a,13a'とは異なる角度で対向して形成された一対の追加切欠部13b,13b'が設けてある。図1の実施例では、二対の追加切欠部13a,13a'、13b,13b'を設けた場合ついて例示したが、追加切欠部は、支持部12の強度が保持される範囲内において少なくとも一対であれば任意数を設けることができる。前記支持部12は円形の他、楕円形を有していてもよく、又、多角形を有していてもよい。
【0028】
更に、図1の実施例では、前記切欠部3a,3a'、3b,3b'及び前記追加切欠部13a,13a'、13b,13b'は、底辺を曲線状に凹ませた曲線底面14としている。この曲線底面14は半円或いは半楕円であってもよい。
【0029】
前記ガイドブラケット10は、板材の打ち抜きによって前記固定部材11と前記支持部12が一体に形成されるようにして製造することができる。
【0030】
上記実施例の作動について以下に説明する。
【0031】
図2は、図1のガイドブラケット10の支持部12に対し、固定部材11の長手方向と直交する方向に延びた配管・配索1の一例であるナイロンチューブ1aが配置された場合の第1の支持例を示しており、この場合には、支持部12周縁における前後に対向して形成した切欠部3a,3a'、3b,3b'に固縛バンド4を配置して所定の強さで絞めることにより、ナイロンチューブ1aを支持部12に支持させる。
【0032】
図3は、図1のガイドブラケット10の支持部12に対し、固定部材11の長手方向右上から左下に略45゜の角度でナイロンチューブ1aが配置された場合の第2の支持例を示しており、この場合には、前記ナイロンチューブ1aの傾きとは逆に支持部12周縁の左上と右下に形成されている切欠部3aと追加切欠部3b'に固縛バンド4を配置して所定の強さで絞めることにより、ナイロンチューブ1aを支持部12に支持させる。
【0033】
図4は、図1のガイドブラケット10の支持部12に対し、固定部材11の長手方向左上から右下に略45゜の角度でナイロンチューブ1aが配置された場合の第3の支持例を示しており、この場合には、前記ナイロンチューブ1aの傾きとは逆に支持部12周縁の右上と左下に形成した切欠部3bと追加切欠部3a'に固縛バンド4を配置して所定の強さで絞めることにより、ナイロンチューブ1aを支持部12に支持させる。ここで、前記ナイロンチューブ1aと固縛バンド4とができるだけ直交した位置になるように、前記切欠部3a,3a'、3b,3b'及び前記追加切欠部13a,13a'、13b,13b'を選定して固縛バンド4を配置する。
【0034】
図2〜図4に示したように、1つのガイドブラケット10を用いることで異なる3つの経路に配置されるナイロンチューブ1aを支持することができる。このように、前記ガイドブラケット10は、複数の異なる経路に配置されるナイロンチューブ1aを、1つのガイドブラケット10で支持できるため、部品共通化によってガイドブラケット10の種類を減少することができ、量産によるコストダウンを図ることができる。
【0035】
又、図3、図4に示したように、支持部12に対して傾斜して配置されたナイロンチューブ1aは、該ナイロンチューブ1aの傾斜と直交するように切欠部3aと追加切欠部3b'及び切欠部3bと追加切欠部3a'に配置される固縛バンド4によって支持されるため、固縛バンド4は切欠部3aと追加切欠部3b'及び切欠部3bと追加切欠部3a'に確実に入り込んで確実に支持することができる。更に、ナイロンチューブ1aに対して固縛バンド4が略直交するようにナイロンチューブ1aの固縛方向を選定して固縛できるため、固縛バンド4はナイロンチューブ1aの外周面に対して平行に接するようになり、よって、図10に示したように、固縛バンド4の角部4aがナイロンチューブ1aの外周面に当接してナイロンチューブ1aを損傷させるといった問題を防止することができる。
【0036】
更に、固縛バンド4は、前記切欠部3a,3a'、3b,3b'及び前記追加切欠部13a,13a'、13b,13b'に備えた曲線底面14に支持されるため、固定部材11の長手方向と斜めに交叉する方向の配管・配索1を支持する際に、固縛バンド4が曲線底面14に馴染むようになり、従って、図9に示したように、角部4aが切欠部3に当たることによって固縛バンド4に応力が集中して破断するといった問題を防止することができる。
【0037】
上記したように、曲線底面14を備えた切欠部に固縛バンド4を掛けて所定の強さで絞めることによりナイロンチューブ1aを固縛した場合には、固縛バンド4が破損する問題が生じないこと、及び、ナイロンチューブ1aが損傷する問題を生じないことが経験的に得られた。従って、固縛バンド4を配置する位置の自由度を広げることができる。
【0038】
図5は、図1のガイドブラケット10の変形例を示すもので、図1では切欠部3a,3a'、3b,3b'及び追加切欠部13a,13a'、13b,13b'の底辺を曲線底面14としているのに対し、図5では直線底面8としている。このように、直線底面8とした場合にも、固定部材11の長手方向と斜めに交叉する方向の配管・配索1を支持する際に、固縛バンド4とナイロンチューブ1aができるだけ直交の状態になるように、任意の切欠部を選定して固縛バンド4を配置できるため、固縛バンド4に大きな応力を生じ問題を防止してナイロンチューブ1aを安全に支持することができる。
【0039】
前記ガイドブラケット10は、前記固定部材11と前記支持部12が一体に形成されるように板材を打ち抜いて製造するようにしたので、ガイドブラケット10の強度を高められると共に生産性を更に高めてコストダウンを図ることができる。
【0040】
上記実施例においては、ガイドブラケット10によって配管・配索1の一例としてナイロンチューブ1aを支持する場合について例示したが、ガイドブラケット10は、ナイロンチューブ以外のチューブ、ホース等の配管及び電線束等の配索のような種々の可撓長尺物を支持する場合にも同様に適用することができる。
【0041】
尚、本発明の配管・配索用ガイドブラケットは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、切欠部の数には限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 可撓長尺物
1a ナイロンチューブ
3a,3a'、3b,3b' 切欠部
4 固縛バンド
10 ガイドブラケット
11 固定部材
12 支持部
13a,13a'、13b,13b' 追加切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の固定部材の一端に面積が拡大された支持部を有しており、該支持部の周縁に、前記固定部材の長手方向前後に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の切欠部と、前記固定部材の長手方向と交叉する方向に対向して形成された少なくとも一対の固縛バンド配置用の追加切欠部とを有することを特徴とする配管・配索用ガイドブラケット。
【請求項2】
前記切欠部の底辺は、曲線底面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の配管・配索用ガイドブラケット。
【請求項3】
前記固定部材と前記支持部は板材の打ち抜きにより一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管・配索用ガイドブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−104522(P2013−104522A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250502(P2011−250502)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】