説明

配管位置表示装置及び配管位置計測用治具

【課題】効率よく配管を所定位置に設置し、モジュールの作成支援を行うことができる配管位置表示装置、及び、配管の位置を計測するための計測ターゲットを配管の中心位置に容易且つ迅速に設置できるようにした配管位置計測用治具を提供することを目的とする。
【解決手段】三次元計測器に接続された制御機又は無線モニタにおいて、モニタの画面上に配管の設置位置(目標値)と三次元計測器により計測された現在位置(計測値)とを視覚的(三次元座標上の点)又は数値により表示させる。この表示を参考にして配管を移動させることによって、配管を設計値の位置に効率よく設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管位置表示装置及び配管位置計測用治具に係り、特に施工における配管やサポートなどの設置作業において、三次元計測器による計測結果を用いて、配管などを所定の場所へ効率よく誘導する配管位置表示装置、及び、配管の位置を計測するための計測ターゲットを配管の中心位置に設置するための配管位置計測用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管モジュール組立作業では、現場担当者が現地基準に基づいてフレームを設置し、その中へ配管を設置する。しかしながら、配管の設置位置については、物差しや下げ振りなどを用いて配管端面位置を確認しながら所定位置へ誘導していた。
【0003】
本願出願人は、位置を確認、指示する方法として特許文献1に記載の据付位置自動記録装置などを提案している。また、所定位置へ配管などを誘導する技術としては、特許文献2のような自走式作業装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の据付位置自動記録装置では、指示位置周辺は連続面上で設計値に基づいた点を提示するため、配管端面などの位置を逐次監視し、設計値の位置へ誘導することはできない。一方、特許文献2に記載の自走式作業装置では、装置を誘導することが可能となるが、配管そのものを誘導するためには装置自身が自己の位置を逐次計測する必要があるために本発明で目的とする配管位置の誘導には使用できない。
【特許文献1】特願2005−204452号
【特許文献2】特開2001−289638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録装置を必要とせず、人力に頼っていた従来技術では、加工場の原点および基準軸にフレームの原点と基準軸をあわせた後に、図面で指示されている設計値の場所へ配管などを誘導・設置することでモジュールを作成していた。しかし、配管の現在位置の確認(計測値の取得)はコンベックスなどを用いて行っており、設計値と計測値の比較を行い、配管の誘導方向を直感的に決定することは困難であった。さらに、配管の中心位置を何らかの治具を使わずに複数回にわたって計測することは不可能に近い。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、従来技術の欠点を解消し、効率よく配管を所定位置に設置し、モジュールの作成支援を行うことができる配管位置表示装置、及び、配管の位置を計測するための計測ターゲットを配管の中心位置に容易且つ迅速に設置できるようにした配管位置計測用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の配管位置表示装置は、配管を設置する三次元位置を示す設計値、三次元計測器により計測された現在の配管の三次元位置を示す計測値、及び、前記設計値と前記計測値との差の各々に関する情報を、モニタの画面上において、数値により、又は、三次元座標上で視覚的に、逐次更新しながら表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、配管などの対象物を効率よく所定の位置に誘導することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の配管位置表示装置は、請求項1に記載の発明において、無線通信により前記情報の一部又は全部を取得して前記情報をモニタの画面上に表示することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、計測器周辺でなくても、配管の移動を行う作業員が配管の設置位置や現在位置等に関する情報をモニタ画面で確認することができるため、作業効率が向上する。
【0011】
請求項3に記載の配管位置表示装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記表示手段は、前記情報を前記モニタの画面上における三次元座標上に視覚的に表示する場合に、前記三次元座標上の前記設計値が示す配管の位置と前記計測値が示す配管の位置の各々に配管の図形を表示することを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、誘導対象となる配管の図形が表示されるため、数値情報での表示に比べて、より直感的な作業が実現する。
【0013】
請求項4に記載の配管位置表示装置は、請求項1、2、又は、3に記載の発明において、前記表示手段は、前記情報を前記モニタの画面上における三次元座標上で視覚的に表示する場合に、前記三次元座標上に前記配管の移動方向を視覚的に表示することを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、配管の誘導方向が直感的に理解できるようになる。
【0015】
請求項5に記載の配管位置表示装置は、請求項4に記載の発明において、前記表示手段は、前記三次元座標上に前記計測器の位置、及び、前記配管の位置を前記三次元計測器により計測するために前記配管に設置された計測ターゲットの位置を視覚的に表示することを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、配管の誘導方向が直感的に理解できるようになる。
【0017】
請求項6に記載の配管位置計測用治具は、請求項1〜5のうちのいずれか1に記載の配管位置表示装置において前記配管の三次元位置を前記三次元計測器により計測するための計測ターゲットを前記配管に設置するための治具であって、前記計測ターゲットが取り付けられる棒状部材の軸心から複数方向に同一張出し量で張り出されると共に、該張り出し量が可変の当接部を備え、該当接部を前記配管の内壁面に当接することによって前記計測ターゲットを前記配管の中心に設置することを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、配管の中心位置に容易且つ迅速に計測ターゲットを設置することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る配管位置表示装置によれば、効率よく配管を所定位置に設置することができるようになる。また、本発明に係る配管位置計測用治具によれば、配管の中心位置に容易且つ迅速に計測用ターゲットを設置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明に係る配管位置表示装置及び配管位置計測用治具を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用される配管施工支援システムの構成図である。同図に示す配管施工支援システムは、計測器10、制御機12、無線モニタ14、配管20、計測ターゲット22、治具24等から構成されている。
【0022】
計測器10は、例えばレーザ光を計測点に照射してその反射を検出することによって、レーザ光の照射方向、飛行時間などから計測点の三次元座標を計測する装置であり、標準の機能として、配管20に設置される計測ターゲット22の位置(三次元座標)を逐次計測しながら、計測ターゲット22が移動した際には計測ターゲット22を自動で追尾する仕様となっている。
【0023】
制御機12は、例えばパソコン(PC)であり、計測器10にケーブル等で接続される。この制御機12によって計測器10が制御され、また、計測器10での計測値が取得され、制御機12のモニタに計測結果等が表示されるようになっている。
【0024】
無線モニタ14は制御機12との間で無線(電波、赤外線等)により接続できるようになっており、制御機12のモニタに表示されたものと同様の内容の画面が無線モニタ14にも表示される仕様となっている。これによって、制御機12のモニタに表示される表示画面が遠隔地でも確認できるようになっている。
【0025】
計測ターゲット22は、計測器10から照射されたレーザ光を光反射率で反射させる反射面を有している。計測ターゲット22が取り付けられる治具24は、計測ターゲット22を配管20の中心に配置するためのもので、詳細を後述するが、治具24には、軸心から放射方向に同一の張出し量で張り出される接地パッドを有しており、それらの接地パッドが配管20の内面に当接することによって軸心が配管20の中心に固定される構造となっている。そのため、治具24の軸心に計測ターゲット22を取り付け、治具24を配管20に取付けることによって、配管20の中心位置に計測ターゲット22が設置されるようになっている。
【0026】
図2は、上記配管施工支援システムでの作業手順を示したフローチャートである。まず、施工現場の設計図面として作成されたCADデータから配管据付位置の設計値(三次元位置情報)、即ち、配管20を据付位置に据え付けた場合に配管20に設置された計測ターゲット22が計測されるべき位置(設計値)を任意のパソコンなどで抽出する(ステップS10)。そして、それらの設計値を制御機12に転送し、制御機12のモニタにおいてそれらの設計値を一覧表示する(ステップS12)。尚、計測器10を施工現場の任意の位置に配置した場合に、例えば、事前に設計図面の中の所定の位置に対応した実際の位置の三次元座標を計測して設計図面の座標系と施工現場の実際の座標系とを一致させる処理が行われている。
【0027】
次に、制御機12のモニタに一覧表示された設計値のうちから計測を行う点(目標とする設計値)を作業員が指定する(ステップS14)。続いて、計測器10により計測点(計測ターゲット22)の計測を開始する(ステップS16)。これによって、計測器10により計測された計測点の座標値(計測値)が制御機12に読み込まれ、計測ターゲット22が配置されるべき設計値(ステップS14で指定された設計値)と計測値とを対応付けてそれらの差が算出される(ステップS18)。そして、制御機12のモニタにおいて計測値、設計値の位置関係が三次元情報として数値的、視覚的に表示される(ステップS20)。尚、表示画面の内容については後述する。
【0028】
また、制御機12から無線モニタ14に情報が送信され、制御機12のモニタに表示された表示画面と同様の内容が無線モニタ14にも遠隔表示される(ステップS22)。これによって、遠隔地で作業する作業員へも表示画面の内容が提示され、計測器10および制御機12周辺に作業員がいなくとも設計値と計測値の状況を確認することができ、配管20を誘導しながらどちらの方向にどの程度配管20を誘導すべきかを確認することができるようになっている。尚、無線モニタ14は、制御機12と同様の内容の画面を表示するために、制御機12から配管20の設計値、計測値、それらの差に関する情報の全てを取得するようにしてもよいし、一部の情報、例えば、計測値のみの情報を取得し、他の情報は制御機12と同様に事前に取得しておくか、又は、自己の演算機能により算出するようにしてもよい。また、ステップS16からステップS22の処理は繰り返し実行され、配管20の位置の移動に伴い、制御機12や無線モニタ14での表示が逐次更新される。
【0029】
計測が終了すると、計測終了時の三次元計測結果と設計値の一覧表が制御機12のモニタに並列表示される(ステップS24)。
【0030】
図3は、制御機12や無線モニタ14に表示される表示画面の一例を示した図である。同図の表示画面によれば、2次元画面に想定された三次元座標の空間において、現在据え付けようとしている配管20の計測ターゲット22に関して、設計値(目標値)を示すポイントP0、計測値を示すポイントP1が表示される。また、他の配管の据付位置の設計値を示すポイントP2や、他の配管に設置され既に計測が終了している計測ターゲット22の計測終了時の計測値を示すポイント(計測終了点)P3が表示される。尚、目標値(ポイントP0)は、図2のフローチャートのステップS14において複数の設計値のうちから指定された目標の設計値を示す。
【0031】
更に、表示画面には、計測値として得られたリアルタイムの座標値が数値により表示されると共に、設計値(目標値)と計測値との差が数値により表示される。このように三次元座標上における設定値と計測値との表示により、それらの情報が視覚的に把握できると共に、それらの差も視覚的に把握することができるようになっている。また、計測値や、計測値と設計値との差の数値による表示によりそれらの正確な情報を把握することができるようになっている。尚、同図の表示画面において設計値(目標値)も数値で表示するようにしてもよい。また、同図の表示画面は逐次更新されており、配管20の実際の位置が移動に伴い、計測値のポイントP1も三次元座標上で移動する。
【0032】
図4は、制御機12や無線モニタ14に表示される表示画面の他の例を示した図である。同図の表示画面では、基本的に図3と同様の情報が表示されるが、図3と相違する点として、三次元座標上において設計値(目標値)のポイントP0と計測値のポイントP1が表示されると共に、設計値の参照元になる配管20の図形データに基づいて、三次元座標上に、配管20が設置されるべき位置と、実際の配管の位置とに配管20の図形が表示されるようになっている。
【0033】
図5は、制御機12や無線モニタ14に表示される表示画面の他の例を示した図である。同図の表示画面では、基本的に図4と同様の情報が表示されるが、図4と相違する点として、配管20の図形以外に、計測器10の図形がその設置位置に対応する三次元座標上の位置に表示される。また、計測点(計測ターゲット22)の移動方向が矢印A1により表示される。尚、計測器10の設置位置は、設計図面の座標系で表される位置の点を複数計測することで把握可能であり、計測点の移動方向については逐次計測を行った最終の計測点の位置と直近の計測点の三次元座標を結ぶことで表示可能である。
【0034】
次に、計測ターゲット22を配管20の中心に配置するための治具24の構造について説明する。設計図面上において、配管の据付位置を示す設計値は、配管の中心によって示されることが多い。そのため、配管の位置を計測する場合には、配管の中心を計測する必要がある。そこで、配管の中心に計測ターゲット22を設置するための治具24が使用される。図6(A)、(B)は、治具24の構造を示した正面図及び側面図である。同図に示す治具24は、計測ターゲット22が先端に取付けられる調整ボルト(棒状部材)50と、調整ボルト50に対し、放射方向の三方向に張り出される接地パッド52、52、52と、調整ボルト50に対して接地パッド52、52、52を同一の張出し量で張り出す張出部54、54、54等から構成されている。
【0035】
各張出部54、54、54は、調整ボルト50の前側と後側に嵌装された共通の環状部材60、62を備えると共に、各張出部54、54、54ごとに同一長の前側アーム64及び後側アーム66を備えている。尚、前側アーム64と後側アーム66の長さは異なっていてもよい。環状部材60は調整ボルト50の前端に固定され、前側アーム64の基端部がその環状部材60に揺動可能に連結されている。一方、環状部材62は調整ボルト50の後側にスライド可能に配置され、後側アーム66の基端部がその環状部材62に揺動可能に連結されている。そして、前側アーム64と後側アーム66の先端部に接地パッド52が揺動可能に連結されている。従って、環状部材62を調整ボルト50に沿ってスライドさせることによって、各接地パッド52、52、52が同一の張出し量によって張り出されるようになっている。環状部材62の背面側には調整ボルト50に対して固定位置を可変できるストッパ68が配置されており、そのストッパ68の固定位置を変えることによって、接地パッド52、52、52の張出し量を固定することができるようになっている。
【0036】
このような治具24を用いて計測ターゲット22を配管20に設置する場合、治具24を配管中心位置付近に挿入し、ストッパ68と共に環状部材62をスライドさせて、接地パッド52、52、52の張出し量を調整する。そして、接地パッド52、52、52が配管20の内壁に当接した状態でストッパ68を調整ボルト50に固定する。これによって、調整ボルト50の先端に取り付けられた計測ターゲット22が配管20の中心に設置される。尚、図7(A)、(B)は、治具24の外観を示しており、図7(B)は、治具24を配管20に設置した状態を示している。図6では示されていないが、図7(A)、(B)において治具24の調整ボルト50の前端には、放射方向の三方向に棒状部材70、70、70が設けられており、この棒状部材70を配管20の端面に当接させた状態で治具24を配管20に設置すると、計測ターゲット22が配管20の端面の位置(端面からの決められた距離の位置)に設置されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用される配管施工支援システムの構成図。
【図2】配管施工支援システムでの作業手順を示したフローチャート。
【図3】制御機や無線モニタに表示される表示画面の一例を示した図。
【図4】制御機や無線モニタに表示される表示画面の他の例を示した図。
【図5】制御機や無線モニタに表示される表示画面の他の例を示した図。
【図6】治具の構造を示した図。
【図7】治具の外観を示した図。
【符号の説明】
【0038】
10…計測器、12…制御機、14…無線モニタ、16…サービス提供施設、20…配管、22…計測ターゲット、24…治具、50…調整ボルト、52…接地パッド、54…張出部、60、62…環状部材、64…前側アーム、66…後側アーム、68…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を設置する三次元位置を示す設計値、三次元計測器により計測された現在の配管の三次元位置を示す計測値、及び、前記設計値と前記計測値との差の各々に関する情報を、モニタの画面上において、数値により、又は、三次元座標上で視覚的に、逐次更新しながら表示する表示手段を備えたことを特徴とする配管位置表示装置。
【請求項2】
無線通信により前記情報の一部又は全部を取得して前記情報をモニタの画面上に表示することを特徴とする請求項1の配管位置表示装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記情報を前記モニタの画面上における三次元座標上に視覚的に表示する場合に、前記三次元座標上の前記設計値が示す配管の位置と前記計測値が示す配管の位置の各々に配管の図形を表示することを特徴とする請求項1又は2の配管位置表示装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記情報を前記モニタの画面上における三次元座標上で視覚的に表示する場合に、前記三次元座標上に前記配管の移動方向を視覚的に表示することを特徴とする請求項1、2、又は、3の配管位置表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記三次元座標上に前記計測器の位置、及び、前記配管の位置を前記三次元計測器により計測するために前記配管に設置された計測ターゲットの位置を視覚的に表示することを特徴とする請求項4の配管位置表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1に記載の配管位置表示装置において前記配管の三次元位置を前記三次元計測器により計測するための計測ターゲットを前記配管に設置するための治具であって、前記計測ターゲットが取り付けられる棒状部材の軸心から複数方向に同一張出し量で張り出されると共に、該張り出し量が可変の当接部を備え、該当接部を前記配管の内壁面に当接することによって前記計測ターゲットを前記配管の中心に設置することを特徴とする配管位置計測用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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