説明

配管接続構造

【課題】 シール性能の低下を招くことなく管部材内への有機溶剤の浸入を防止することができる配管接続構造を提供する。
【解決手段】 二つの管部材11,12間を気密的に封止するための弾性変形可能な環状のシール部材15を、その幅方向で互いに対向する一対の縁部15a,15bのうち一方の縁部15aを含み耐塩素性を有する環状の第一のシール部16と、他方の縁部15bを含み耐有機溶剤性を有する環状の第二のシール部17とを備えるシール部材15で構成し、第二のシール部17が第一のシール部16の一方の管部材11の接続部13の端面13a側に位置するようにシール部材15を両管部材11,12間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続された管部材間にそれらの間を気密的に封止するためのシール部材が設けられた配管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば二つの管部材を互いに接続する配管接続構造として、一方の管部材の端部の内周面に弾性変形可能な環状のシール部材を内周面の周方向に沿って設け、他方の管部材を一方の管部材内にシール部材を介して嵌合することにより、両管部材を互いに接続する配管接続構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この配管接続構造によれば、シール部材の封止作用により、両管部材間を経てそれらの内方に水が浸入することを防止することができる。
【0003】
このシール部材を水道管の接続に用いた場合に水道管内を流れる水道水に含まれる塩素によってシール部材が侵食されることを防止するために、シール部材は、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)及びエチレン・プロピレンゴム(EPDM)等のように塩素により侵食され難い材料で形成されている。これにより、塩素による侵食によってシール部材のシール性能が低下することを、防止することができる。
【特許文献1】特開2004−270883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SBR及びEPDMは、例えばトリクロロエチレンのような有機溶剤が浸透し易いという性質を有する。すなわち、SBR及びEPDMは耐有機溶剤性を有していないため、シール部材を介して互いに接続された管部材が地中に埋設されたとき、地中の土に含まれるトリクロロエチレンがシール部材を浸透し、管部材内に浸入してしまう。特に、シール部材が水道管の接続に用いられている場合、シール部材を浸透した有機溶剤が水道水に混入してしまうため、水道水の汚染を招く。
【0005】
そこで、シール部材を例えばフッ素ゴムのように耐有機溶剤性を有する材料で形成することが考えられる。しかしながら、フッ素ゴムは塩素により侵食され易い材料であることから、シール部材を水道管の接続に用いた場合、水道水に含まれる塩素による侵食によってシール部材のシール性能の低下を招く。
【0006】
そこで、本発明の目的は、シール性能の低下を招くことなく管部材内への有機溶剤の浸入を防止することができる配管接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも二つの管部材を互いに接続する配管接続構造であって、一方の前記管部材は、その一端部に他方の前記管部材が挿入される接続端部を有し、該接続端部の内周面と前記他方の管部材の外周面との間には、前記他方の管部材を取り巻くように配置され、前記両管部材間を気密的に封止するための弾性変形可能な環状のシール部材が設けられており、該シール部材は、その幅方向で互いに対向する一対の縁部のうち一方の該縁部を含み耐塩素性を有する環状の第一のシール部と、他方の前記縁部を含み耐有機溶剤性を有する環状の第二のシール部とを備え、該第二のシール部が前記第一のシール部の前記一方の管部材の前記接続端部の端面側に位置するように前記両管部材間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記各管部材間には、前記シール部材をその幅方向に圧縮するための圧縮手段が設けられており、前記シール部材は、前記圧縮手段による圧縮により前記シール部材の内径及び外径がそれぞれ大きくなるように弾性変形することによって前記両管部材間を封止していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記シール部材には、該シール部材の径方向内方又は外方へ開放し且つ前記シール部材の周方向に伸びる環状の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記第一のシール部及び前記第二のシール部は、互いにほぼ等しい圧縮率を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第二のシール部には、該第二のシール部と同質の材料からなり、前記一方の管部材の前記接続端部の端面に係合すべく前記シール部材の外方へ突出し且つ該シール部材の周方向に伸びる環状の突起部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記第一のシール部はスチレン・ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴムからなり、前記第二のシール部材はフッ素ゴムからなり、前記第一及び第二の各シール部材は、架橋結合することにより互いに接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、一方の管部材の接続端部の内周面と接続端部に挿入された他方の管部材の外周面との間に、それらの間を気密的に封止するためのシール部材が設けられていることから、シール部材の封止作用により、両管部材間からそれらの内方に水が浸入することを確実に防止することができる。
【0014】
また、シール部材が、その一方の縁部を含む第一のシール部及び他方の縁部を含む第二のシール部を備え、第一のシール部は耐塩素性を有し、第二のシール部は耐有機溶剤性を有し、シール部材は、第二のシール部が第一のシール部の前記一方の管部材の接続端部の端面側に位置するように両管部材間に配置されていることから、シール部材が両管部材間に配置された状態では、耐塩素性を有する第一のシール部の端面が両管部材の内方に面し、耐有機溶剤性を有する第二のシール部の端面が両管部材の外方に面する。
【0015】
これにより、シール部材を水道管の接続に用いた場合、シール部材は、水道管内を流れる水道水の一部が互いに接続された水道管間に入り込んだとき、その水道水を耐塩素性を有する第一のシール部材の端面でせき止めるので、第二のシール部が耐塩素性をたとえ有していない場合でも、水道水に含まれる塩素によってシール部材が侵食されることを確実に防止することができる。従って、水道水に含まれる塩素による侵食によってシール部材のシール性能が低下することを、確実に防止することができる。
【0016】
また、シール部材を介して互いに接続された各管部材を地中に埋設した場合、地中の土に含まれるトリクロロエチレンのような有機溶剤が両管部材間に浸入したとき、シール部材は、その有機溶剤を耐有機溶剤性を有する第二のシール部材の端面でせき止めるので、第一のシール部が耐有機溶剤性をたとえ有していない場合でも、地中に含まれる有機溶剤がシール部材を浸透することを確実に防止することができる。これにより、地中に含まれる有機溶剤がシール部材を浸透して管部材内に浸入することが防止されるので、シール部材が水道管の接続に用いられている場合、有機溶剤が水道水に混入することによる水道水の汚染を確実に防止することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、シール部材は、各管部材間に設けられた圧縮手段によってシール部材の幅方向に圧縮されることにより、その内径及び外径がそれぞれ大きくなるように弾性変形することから、この弾性変形によりシール部材の外面及び内面がそれぞれ一方の管部材の接続端部の内周面及び他方の管部材の外周面に押し付けられる。これにより、両管部材間を容易に気密的に封止することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、シール部材に、該シール部材の径方向内方又は外方へ開放し且つシール部材の周方向に伸びる環状の溝部が形成されていることから、溝部の形成によりシール部材に中空部分が形成されるので、シール部材をその幅方向により容易に圧縮変形させることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第一のシール部及び第二のシール部が互いにほぼ等しい圧縮率を有する。
【0020】
第一のシール部及び第二のシール部の圧縮率が互いに異なる場合、シール部材に該シール部材を例えばその幅方向に圧縮させる外力が作用したとき、第一及び第二の各シール部は互いに追従することなく互いに異なる変形度合で変形するため、第一及び第二の各シール部間に引っ張り力が生じてしまう。このため、この引っ張り力により第一及び第二の両シール部間に亀裂が生じる虞がある。
【0021】
これに対し、本発明によれば、前記したように、第一のシール部及び第二のシール部が互いにほぼ等しい圧縮率を有することから、シール部材に該シール部材を例えばその幅方向に圧縮させる外力が作用したとき、第一及び第二の各シール部は互いに追従して変形する。これにより、シール部材の変形時に第一及び第二の各シール部間に引っ張り力が生じることが防止されるので、第一及び第二の両シール部間に引っ張り力が生じることによる第一及び第二の各シール部間への亀裂の発生を確実に防止することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、第二のシール部に、該第二のシール部と同質の材料からなり、一方の管部材の接続端部の端面に係合すべくシール部材の外方へ突出し且つ該シール部材の周方向に伸びる環状の突起部が形成されていることから、突起部が形成された分、シール部材の耐有機溶剤機能を担う部分の体積が増加するので、有機溶剤が両管部材内に浸入することをより確実に防止することができる。
【0023】
従来、互いに接続された両管部材内への外方からの有機溶剤の浸透をより確実に防止するために、第二のシール部の体積を増大させるべく該第二のシール部の厚さ寸法を増大させることが考えられるが、両管部材間でシール部材に径方向に沿った圧縮力が作用したとき第一及び第二の各シール部を互いに等しい変形度合いで変形させるために第一のシール部の厚さ寸法も増大させる必要があるため、シール部材が全体的に大きくなり、製造コストの増大を招く。
【0024】
これに対し、本発明によれば、前記したように、第二のシール部に形成された突起部は一方の管部材の接続端部の端面に係合することから、両管部材がシール部材を介して互いに接続された状態では、突起部は両管部材の外方に露出する。これにより、両管部材間でシール部材にその径方向への圧縮力が作用したとき、この圧縮力は突起部に作用することはない。これにより、第二のシール部に突起部が形成されることに伴って第一のシール部の厚さ寸法を増大させる必要はないので、シール部材が全体的に大きくなることによる製造コストの増大を確実に防止することができる。
【0025】
更に、突起部が前記一方の管部材の接続端部の端面に係合することから、シール部材に前記一方の管部材内に押し込む外力が作用したとき、該外力が突起部に該突起部を圧縮する圧縮力として受け止められるので、前記一方の管部材内へのその軸線に沿ったシール部材の移動が規制される。これにより、シール部材が両管部材間を移動することにより前記他方の管部材から脱落したり、前記他方の管部材を前記一方の管部材の接続端部に嵌合したときにシール部材が前記他方の管部材の外周面から受ける摩擦力により前記一方の管部材内に向けて連行されてシール部材が両管部材間の適正な位置からずれたりすることが防止されるので、両管部材間でのシール部材の移動による両管部材間のシール性の低下を確実に防止することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、第一のシール部がスチレン・ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴムからなることから、シール部材を水道管の接続に用いた場合に水道水に含まれる塩素によりシール部材が侵食されることが防止され、また、第二のシール部材がフッ素ゴムからなることから、シール部材を介して互いに接続された各管部材を地中に埋設した場合に地中に含まれる有機溶剤がシール部材を浸透して各管部材内に浸入することが防止される。
【0027】
また、第一及び第二の各シール部材が架橋結合することにより互いに接合されていることから、互いに異なる材料からなる第一及び第二のシール部を互いに容易に一体的に接合することができる。これにより、塩素による侵食を防止する機能及び有機溶剤の浸透を防止する機能の両機能を有するシール部材を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0029】
図1は、二つの管部材11,12を互いに直列的に接続する接続構造に、本発明に係る配管接続構造10を適用した例を示す。
【0030】
本発明に係る管部材11,12は、図1に示す例では、それぞれ例えば塩化ビニルのような樹脂材料で成形された円筒部材からなる。二つの管部材11,12のうち一方の管部材11は、その一端部に、他方の管部材12が接続される接続部13を有する。接続部13は、図示の例では、その口径が他方の管部材12の外径よりも大きくなるように設定されている。この接続部13の形成により、前記一方の管部材11には該管部材の周方向に廻る段部14が形成されている。
【0031】
他方の管部材12は、一端部に前記一方の管部材11の接続部13内に挿入される挿入端部12aを有する。前記一方の管部材11の接続部13の口径が、前記したように、前記他方の管部材12の外径よりも大きくなるように設定されていることから、接続部13内への挿入端部12aの挿入状態では、前記一方の管部材11の接続部13における内周面11aと前記他方の管部材12の挿入端部12aにおける外周面12bとの間に隙間が形成される。
【0032】
前記一方の管部材11の接続部13と前記他方の管部材12の挿入端部12aとの間に形成された隙間には、接続部13及び挿入端部12a間を気密的に封止するための弾性変形可能なシール部材15が設けられている。
【0033】
シール部材15は、図2に示す例では、筒状をなしており、その軸線方向で互いに対向する一対の縁部15a,15bのうち一方の縁部15aを含む環状の第一のシール部16と、他方の縁部15bを含む環状の第二のシール部17とを備える。
【0034】
第一及び第二の各シール部16,17の外径は、それぞれ前記一方の管部材11の内径よりも小さくなるように設定されており、第一及び第二の各シール部16,17の内径は、それぞれ前記他方の管部材12の外径よりも小さくなるように設定されている。また、第一及び第二の各シール部16,17は、それぞれほぼ等しい圧縮率を有する。
【0035】
第一のシール部16は、塩素により侵食し難い耐塩素性を有する材料からなり、図示の例では、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)からなる。また、第一のシール部16は、図示の例では、シール部材15の前記他方の縁部15bを除く部分を構成している。
【0036】
第二のシール部17は、トリクロロエチレンのような有機溶剤の浸透を阻止する耐有機溶剤性を有する材料からなり、図示の例では、フッ素ゴムからなる。また、第二のシール部17は、図示の例では、シール部材15の前記他方の縁部15bを構成している。第二のシール部17の外周面17aには、第二のシール部17の外方に開放し且つ該シール部の周方向に伸びる溝部18が形成されている。
【0037】
第一及び第二の各シール部16,17は、図示の例では、それぞれ別体で形成され、互いに対向させた端面16a,17bを互いに架橋結合させることにより、互いに一体的に形成されている。
【0038】
シール部材15は、図1に示すように、その第二のシール部17が第一のシール部16の前記一方の管部材11の接続部13の端面13a側に位置するように両管部材11,12間に前記他方の管部材12の外周面12b上をその周方向に廻るように配置されており、図示の例では、その軸線方向に圧縮変形することによって両管部材11,12間を封止している。
【0039】
各管部材11,12間には、シール部材15をその軸線方向に圧縮するための圧縮手段19が設けられている。圧縮手段19は、図示の例では、前記一方の管部材11に形成された前記した段部14と圧縮部材20とで構成されている。
【0040】
圧縮部材20は、図示の例では、前記一方の管部材11の接続部13及び前記他方の管部材12の挿入端部12a間に挿入される筒状の挿入部21と、該挿入部の一方の端部21aから挿入部21の外方に張り出す張出部22とを有する。
【0041】
張出部22は、接続部13及び挿入端部12a間への挿入部21の挿入時に接続部13の端面13aに当接可能であり、該端面に例えば接着材により接合される。
【0042】
挿入部21のその軸線方向の長さ寸法は、接続部13及び挿入端部12a間への挿入時に、張出部22が接続部13の端面13aに当接する前に、挿入部21の他方の端部21bがシール部材15の第二のシール部17に当接して挿入部21と前記一方の管部材11の段部14との間でシール部材15が挟持される大きさに設定されている。これにより、張出部22が接続部13の端面13aに当接した状態では、挿入部21及び段部14からシール部材15に該シール部材をその軸線方向に圧縮する圧縮力が付与される。
【0043】
両管部材11,12を互いに接続する際、先ず、シール部材15を前記一方の管部材11の接続部13内に前記した姿勢で挿入する。このとき、第一及び第二の各シール部16,17の外径が、前記したように、それぞれ前記一方の管部材11の内径よりも小さくなるように設定されていることから、接続部13及びシール部材15間に大きな摩擦力が生じることなく接続部13内へのシール部材15の挿入を容易に行うことができる。続いて、前記他方の管部材12の挿入端部12aを圧縮部材20の挿入部21内に挿入することにより挿入端部12aに圧縮部材20を装着する。
【0044】
次に、圧縮部材20が装着された前記他方の管部材12の挿入端部12aを前記一方の管部材11の接続部13内に挿入し、更に、シール部材15内に挿入する。このとき、第一及び第二の各シール部16,17の内径が、前記したように、それぞれ前記他方の管部材12の外径よりも小さくなるように設定されていることから、挿入端部12aとシール部材15との間に大きな摩擦力が生じることなくシール部材15内への挿入端部12aの挿入を容易に行うことができる。
【0045】
その後、圧縮部材20の張出部22が接続部13の端面13aに当接するまで挿入部21を接続部13内に挿入し、張出部22を接続部13の端面13aに接合する。このとき、前記したように、挿入部21及び段部14からシール部材15に該シール部材をその軸線方向に圧縮する圧縮力が付与されることから、この圧縮力により、シール部材15は、第一及び第二の各シール部16,17の内径及び外径がそれぞれ大きくなるように軸線方向に圧縮変形する。このとき、第一及び第二の各シール部16,17は、前記したように、それぞれほぼ等しい圧縮率を有することから、第一及び第二の各シール部16,17は互いに追従して変形する。これにより、シール部材15の圧縮変形時に第一及び第二の各シール部16,17間に引っ張り力が生じることが防止される。また、前記したように、第二のシール部17の外周面17aに、第二のシール部17の外方に開放し且つ該シール部の周方向に伸びる溝部18が形成されていることから、溝部18の形成によりシール部材15に中空部分が形成されるので、挿入部21及び段部14から圧縮力が付与されたとき、シール部材15はその軸線方向により容易に圧縮変形する。
【0046】
シール部材15の圧縮変形により、第一及び第二の各シール部16,17のそれぞれの外周面16b,17a及び内周面16c,17c(図1参照。)がそれぞれ接続部13における内周面11a及び挿入端部12aにおける外周面12bに押し付けられる。これにより、接続部13における内周面11a及び挿入端部12aにおける外周面12b間がシール部材15により気密的に封止される。
【0047】
これにより、前記一方の管部材11及び前記他方の管部材12は、それらの間がシール部材15により気密的に封止された状態で、該シール部材を介して互いに接続される。
【0048】
このように、前記一方の管部材11の接続部13の内周面11aと接続部13に挿入された前記他方の管部材12の挿入端部12aにおける外周面12bとの間に、それらの間を気密的に封止するためのシール部材15が設けられていることから、シール部材15の封止作用により、両管部材11,12間からそれらの内方に水が浸入することを確実に防止することができる。
【0049】
また、シール部材15は、耐塩素性を有する第一のシール部16及び耐有機溶剤性を有する第二のシール部17を備え、第二のシール部17が第一のシール部16の前記一方の管部材11の接続部13の端面13a側に位置するように両管部材11,12間に配置されていることから、シール部材15が両管部材11,12間に配置された状態では、耐塩素性を有する第一のシール部16の端面は両管部材11,12の内方に面し、耐有機溶剤性を有する第二のシール部17の端面は両管部材11,12の外方に面する。
【0050】
これにより、シール部材15を水道管の接続に用いた場合、シール部材15は、水道管内を流れる水道水の一部が互いに接続された水道管間に入り込んだとき、その水道水を耐塩素性を有する第一のシール部材16の端面でせき止める。これにより、第二のシール部17が耐塩素性をたとえ有していない場合でも、水道水に含まれる塩素によってシール部材15が侵食されることを確実に防止することができる。従って、水道水に含まれる塩素による侵食によってシール部材15のシール性能が低下することを、確実に防止することができる。
【0051】
また、シール部材15を介して互いに接続された各管部材11,12を地中に埋設した場合、地中の土に含まれるトリクロロエチレンのような有機溶剤が両管部材11,12間に浸入したとき、シール部材15は、その有機溶剤を耐有機溶剤性を有する第二のシール部材17の端面でせき止める。これにより、第一のシール部16が耐有機溶剤性をたとえ有していない場合でも、地中に含まれる有機溶剤がシール部材15を浸透することを確実に防止することができる。これにより、地中に含まれる有機溶剤がシール部材15を浸透して各管部材11,12内に浸入することが防止されるので、シール部材15が水道管の接続に用いられている場合、有機溶剤が水道水に混入することによる水道水の汚染を確実に防止することができる。
【0052】
また、前記したように、第一のシール部16及び第二のシール部17が互いにほぼ等しい圧縮率を有する。
【0053】
第一のシール部16及び第二のシール部17の圧縮率が互いに異なる場合、シール部材15に該シール部材を例えばその軸線方向に圧縮させる外力が作用したとき、第一及び第二の各シール部16,17は互いに追従することなく互いに異なる変形度合で変形するため、第一及び第二の各シール部16,17間に引っ張り力が生じてしまう。このため、この引っ張り力により第一及び第二の両シール部16,17間に亀裂が生じる虞がある。
【0054】
これに対し、本実施例によれば、前記したように、第一のシール部16及び第二のシール部17が互いにほぼ等しい圧縮率を有することから、シール部材15に該シール部材を例えばその軸線方向に圧縮させる外力が作用したとき、第一及び第二の各シール部16,17は互いに追従して変形する。これにより、シール部材15の変形時に第一及び第二の各シール部16,17間に引っ張り力が生じることが防止されるので、第一及び第二の両シール部16,17間に引っ張り力が生じることによる第一及び第二の各シール部16,17間への亀裂の発生を確実に防止することができる。
【0055】
更に、前記したように、第一及び第二の各シール部材16,17が架橋結合することにより互いに接合されていることから、互いに異なる材料からなる第一及び第二のシール部16,17を互いに容易に一体的に接合することができる。これにより、塩素による侵食を防止する機能及び有機溶剤の浸透を防止する機能の両機能を有するシール部材15を容易に形成することができる。
【0056】
本実施例では、シール部材15の圧縮変形を容易にするための溝部18を第二のシール部17に形成した例を示したが、これに代えて、溝部18を第一のシール部16に形成することができる。
【0057】
また、本実施例では、シール部材15をその軸線方向に圧縮することにより両管部材11,12間をシール部材15で封止した例を示したが、これに代えて、シール部材15をその厚さ方向に圧縮することにより両管部材11,12間を封止することができる。
【0058】
この場合、シール部材15の厚さ寸法が前記第一の管部材11の接続部13と前記第二の管部材12の挿入端部12aとの間に形成された隙間の大きさよりも大きくなるように、シール部材15を形成することができる。
【0059】
また、この場合、シール部材15の第二のシール部17に、図3に示すように、該第二のシール部と同質の材料からなり、第二のシール部17の外方へ突出し且つ該シール部の周方向に伸びる環状の突起部23を形成することができる。図3に示す例では、突起部23は、前記一方の管部材11の接続部13の端面13aに係合可能である。
【0060】
図3に示す例によれば、前記したように、第二のシール部17に、接続部13の端面13aに係合する突起部23が形成されていることから、突起部23が形成された分、シール部材15の耐有機溶剤機能を担う部分の体積が増加するので、有機溶剤が両管部材11,12内に浸入することをより確実に防止することができる。
【0061】
従来、互いに接続された両管部材11,12内への外方からの有機溶剤の浸透をより確実に防止するために、第二のシール部17の体積を増大させるべく該第二のシール部の厚さ寸法を大きく増大させることが考えられるが、両管部材11,12間でシール部材15に径方向に沿った圧縮力が作用したとき第一及び第二の各シール部16,17を互いに等しい変形度合いで変形させるために第一のシール部16の厚さ寸法も大きく増大させる必要があるため、シール部材15が全体的に大きくなり、製造コストの増大を招く。
【0062】
これに対し、図3に示す例によれば、第二のシール部17に形成された突起部23は接続部13の端面13aに係合することから、両管部材11,12がシール部材15を介して互いに接続された状態では、突起部23は両管部材11,12の外方に露出する。これにより、両管部材11,12間でシール部材15にその径方向への圧縮力が作用したとき、この圧縮力は突起部23に作用することはない。これにより、第二のシール部17に突起部23が形成されることに伴って第一のシール部16の厚さ寸法を増大させる必要はないので、シール部材15が全体的に大きくなることによる製造コストの増大を確実に防止することができる。
【0063】
また、突起部23が前記一方の管部材11の接続部13の端面13aに係合することから、シール部材15に前記一方の管部材11内に押し込む外力が作用したとき、該外力が突起部23に該突起部を圧縮する圧縮力として受け止められるので、前記一方の管部材11内へのその軸線に沿ったシール部材15の移動が規制される。これにより、シール部材15が両管部材11,12間を移動することにより前記他方の管部材12から脱落したり、前記他方の管部材12を前記一方の管部材11の接続部13に嵌合したときにシール部材15が前記他方の管部材12の外周面12bから受ける摩擦力により前記一方の管部材11内に向けて連行されてシール部材15が両管部材11,12間の適正な位置からずれたりすることが防止される。従って、両管部材11,12間でのシール部材15の移動による両管部材11,12間のシール性の低下を確実に防止することができる。
【0064】
更に、本実施例では、第一のシール部16がSBRからなり、第二のシール部17がフッ素ゴムからなる例を示したが、これに代えて、第一のシール部16を例えばエチレン・プロピレンゴム(EPDM)のようにSBR以外の耐塩素性を有する材料で形成することができ、また、第二のシール部17をフッ素ゴム以外の耐有機溶剤性を有する材料で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る配管接続構造を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明に係るシール部材を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1及び図2とは別の実施例に係る配管接続構造を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 配管接続構造
11,12 管部材
11a 内周面(一方の管部材の内周面)
12b 外周面(他方の管部材の内周面)
13 接続端部(接続部)
13a 端面
15 シール部材
16 第一のシール部
17 第二のシール部
18 溝部
19 圧縮手段
23 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの管部材を互いに接続する配管接続構造であって、一方の前記管部材は、その一端部に他方の前記管部材が挿入される接続端部を有し、該接続端部の内周面と前記他方の管部材の外周面との間には、前記他方の管部材を取り巻くように配置され、前記両管部材間を気密的に封止するための弾性変形可能な環状のシール部材が設けられており、該シール部材は、その幅方向で互いに対向する一対の縁部のうち一方の該縁部を含み耐塩素性を有する環状の第一のシール部と、他方の前記縁部を含み耐有機溶剤性を有する環状の第二のシール部とを備え、該第二のシール部が前記第一のシール部の前記一方の管部材の前記接続端部の端面側に位置するように前記両管部材間に配置されていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
前記各管部材間には、前記シール部材をその幅方向に圧縮するための圧縮手段が設けられており、前記シール部材は、前記圧縮手段による圧縮により前記シール部材の内径及び外径がそれぞれ大きくなるように弾性変形することによって前記両管部材間を封止していることを特徴とする請求項1に記載の配管接続構造。
【請求項3】
前記シール部材には、該シール部材の径方向内方又は外方へ開放し且つ前記シール部材の周方向に伸びる環状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配管接続構造。
【請求項4】
前記第一のシール部及び前記第二のシール部は、互いにほぼ等しい圧縮率を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配管接続構造。
【請求項5】
前記第二のシール部には、該第二のシール部と同質の材料からなり、前記一方の管部材の前記接続端部の端面に係合すべく前記シール部材の外方へ突出し且つ該シール部材の周方向に伸びる環状の突起部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管接続構造。
【請求項6】
前記第一のシール部はスチレン・ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴムからなり、前記第二のシール部材はフッ素ゴムからなり、前記第一及び第二の各シール部材は、架橋結合することにより互いに接合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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