説明

配管敷設方法、先導具および配管敷設システム

【課題】推進工法によってコストをかけずに地中に中空の配管を敷設可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の代表的な構成は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法であって、敷設対象区間を挟んで少なくとも2つの立坑を掘削する第1ステップ100と、略円錐形状等の先鋭の先導具で配管の開口端部を覆う第2ステップ102と、配管を押圧する油圧シリンダーおよびこの配管が軸方向に移動するように案内する案内工具を一方の掘削した立坑に設置する第3ステップ104と、先導具が備えられた配管を2つの立坑の間の土壁に向けて、案内工具に載置する第4ステップ108と、載置された配管を油圧シリンダーにて非回転で押圧し、他方の掘削した立坑までこの配管を貫通させる第5ステップ114(122)と、貫通した配管から先導具を取り外す第6ステップ118とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法、並びにこの方法において利用される先導具および配管敷設システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力ケーブルなどが地中配線されるようになってきている。地中配線は主に歩道の下に敷設されるが、歩道のない道路では車道の下に敷設される。また、景観を重視して、電柱から地中に電線を引き下ろし、地中から建物に配線することも行われている。
【0003】
地中から建物などの施設に配線をする場合において、道路脇のU字溝(側溝)やガス管、水道管、植樹、花壇、ガードレールなどの他の埋設設備と配線が交叉することがある。このような場合には、これらの埋設物の下に管路すなわち配管を敷設して、配管内に電力ケーブルが通される。
【0004】
埋設物の下に配管を敷設するには、通常は幹線側と施設側の両方に立坑を掘り、他の埋設設備の下にトンネルを掘り、配管を設置して埋め戻すといういわゆる横掘り(えぐり堀り)工法が行われていた。しかし、横穴を埋め戻す際の土固めが不十分になる印象があり、陥没等の原因となるのではないかというおそれから、昨今は横掘り工法が敬遠される傾向にある。すると、かかる配管の敷設は開削工法によって行う必要がある。
【0005】
開削工法は、敷設対象区間を地表面から掘り下げて、種々の設備を設置した後に埋め戻す工法である。すなわち、横穴がなく、全ての土を十分に突き固めることができると考えられている。しかし、この工法を適用した場合には、既存の他の埋設設備を一度撤去して、配管を設置した後にこれらを作り直さなければならない。そのため、コストの増大や工期の長期化といった問題が生じることとなる。
【0006】
そこで、特許文献1には、地表面または地表面近傍に障害物がある区間に対して、小規模推進工法を適用してこの障害物を避けて推進管(配管)を敷設する技術が開示されている。具体的には、この技術では、駆動モータおよび掘削用スクリュー軸を備える推進器本体と、油圧シリンダーと、支持フレームとからなる推進装置により、推進管(配管)を推進するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2002−81291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の推進装置は、スクリュー軸によって先端のキリを回転させて土砂を掘削する点や、掘削した土砂がスクリュー排土方式等により排土されると想定される点など、様々な点で従来のシールド工法に用いられる掘削機の構成を踏襲している。なおシールド掘削機は、トンネルなどの大規模な穴や、長距離の穴を掘削するための装置である。
【0009】
一般に、シールド掘削機は、土砂を破砕する機構と、破砕した土砂を円滑に排出する機構と、抵抗の高い地中を推進する機構と、地中でも変形などを生じない頑強な構造を備えている。そのため、シールド掘削機は極めて高価なものであり、例えごく短い区間に適用するため簡易化および小型化(コンパクトな構造に)したとしても、それなりにコストが高くなる。ましてや、この工法専用に小型の掘削機を製造するとなると、余計にコストが嵩むこととなる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、推進工法によってコストをかけずに地中に中空の配管を敷設可能な配管敷設方法、並びにこの方法において利用される先導具および配管敷設システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討し、専用の道具をほぼ使用することなく、工事現場に存在する物品を流用して、コストをかけずに推進工法を施工できないかと思量した。そして、さらに研究を重ねることにより、総合作業車に装備されている抜柱機やバックホーなどを流用した簡易な推進工法を考え出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために本発明にかかる配管敷設方法の代表的な構成は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法であって、敷設対象区間を挟んで少なくとも2つの立坑を掘削する第1ステップと、略円錐形状または略多角錘形状の先鋭の先導具で配管の開口端部を覆う第2ステップと、配管を押圧する油圧シリンダーおよびこの配管が軸方向に移動するように案内する案内工具を一方の掘削した立坑に設置する第3ステップと、先導具が備えられた配管を2つの立坑の間の土壁に向けて、案内工具に載置する第4ステップと、載置された配管を油圧シリンダーにて非回転で押圧し、他方の掘削した立坑までこの配管を貫通させる第5ステップと、貫通した配管から先導具を取り外す第6ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、煩雑な掘削機構や排土機構を要せずに、敷設対象区間に配管を貫通させることができる。すなわち、先鋭の先導具を取り付けて配管を押圧するのみで、配管を貫通させることができる。また、先導具で配管の開口を覆うことで配管内部への土砂の侵入も防止される。
【0014】
また、この推進工法は、先導具を除き工事現場に存在する物品のみで施工することができる。この工法の専用品である先導具についても、極めて安価に製造することができるので、従来よりもコストを大幅に削減することが可能である。
【0015】
上記第5ステップは、油圧シリンダーのストローク全開まで載置された配管を押圧し、油圧シリンダーのピストンを戻し、ピストンと配管の間の空間を埋める補助工具を介在させ、補助工具を介して、油圧シリンダーにて配管を再度押圧するとよい。
【0016】
この構成によれば、油圧シリンダーのストローク長に制限されることなく、配管を押圧することができる。
【0017】
上記第5ステップは、油圧シリンダーのストローク全開まで載置された配管を押圧し、油圧シリンダーのピストンを戻し、押圧された配管の後端に、追加の配管を継ぎ足し可能にする管継手を取り付け、管継手を介して追加の配管を継ぎ足し、油圧シリンダーにて、継ぎ足された追加の配管を押圧するとよい。
【0018】
この構成によれば、土壁を貫通する長さのストロークを有する油圧シリンダーを使用できない場合であっても、管継手で追加の配管を連結することで、他方の掘削した立坑までこれを貫通させることができる。
【0019】
上記課題を解決するために本発明にかかる配管敷設方法の他の代表的な構成は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法であって、敷設対象区間の少なくとも一方の側に立坑を掘削する第1ステップと、配管の開口端部に先鋭の先導具を取り付ける第2ステップと、配管を押圧する油圧シリンダーおよびこの配管が軸方向に移動するように案内する案内工具を、立坑または敷設対象区間の他方の側に設置する第3ステップと、先導具が備えられた配管を案内工具に載置する第4ステップと、載置された配管を油圧シリンダーにて非回転で押圧し、地表面近傍または地中に存在する他の埋設設備の下を通すようにこの配管を推進する第5ステップと、を含み、配管は、立坑から敷設対象区間の他方の側の地表面にわたって斜めに敷設されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、敷設対象区間の片側に立坑を掘削するのみで、他の埋設設備の下を通して管路を敷設することができる。そのため、さらなるコストの削減を実現することができる。また、これによりバリエーションが増加し、それぞれの現場に合わせた工法を採用可能となる。
【0021】
上記課題を解決するために本発明にかかる先導具の代表的な構成は、中空の配管の開口端部に冠着される口金部と、口金部の内側に配管の開口端部に当接するように設けられ、この配管の進入を規制する進入規制部と、を有し、口金部と反対側が略円錐形状または略多角錘形状の先鋭であることを特徴とする。
【0022】
上記の先導具を配管の開口端部に取り付けることで、配管を好適に推進することができる。特に、先導具には開口端部の進入を規制する進入規制部が設けられているため、開口端部の先導具への入り込み(めり込み)が防止されている。そのため、敷設対象区間への配管貫通後、容易に先導具を取り外すことができる。なお、先導具は、略円錐形状または略多角錘形状であるため、直線的に配管を推進させることが可能である。
【0023】
上記課題を解決するために本発明にかかる配管敷設システムの代表的な構成は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設システムであって、配管の開口端部を覆う略円錐形状または略多角錘形状の先鋭の先導具と、配管を押圧する油圧シリンダーと、油圧シリンダーに油圧を印加する油圧印加機器と、敷設対象区間を挟んで掘削された2つの立坑の間の土壁に向けて先導具が備えられた配管を載置し、この配管が軸方向に移動するように案内する案内工具と、を含むことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、推進工法によってコストをかけずに地中に中空の配管を敷設することができる。なお、上述した配管敷設方法および先導具における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該配管敷設システムにも適用される。
【0025】
上記油圧シリンダーは抜柱機であって、油圧印加機器はバックホーであるとよい。このような工事現場に存在する物品を流用することで、コストを殆どかけずに推進工法を施工可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、推進工法によってコストをかけずに地中に中空の配管を敷設可能な配管敷設方法、並びにこの方法において利用される先導具および配管敷設システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態にかかる配管敷設方法を例示するフローチャートである。
【図2】第1実施形態にかかる配管敷設システムの概略図である。
【図3】第1実施形態にかかる先導具について説明する図である。
【図4】配管について説明する図である。
【図5】一方の立坑に油圧シリンダーおよび案内工具を設置した状態を例示する図である。
【図6】バックホーについて説明する図である。
【図7】土壁の貫通手順を例示する図である。
【図8】土壁の他の貫通手順を例示する図である。
【図9】第2実施形態にかかる配管敷設方法について説明する図である。
【図10】第2実施形態にかかる配管敷設方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる配管敷設方法を例示するフローチャートである。また、図2は、第1実施形態にかかる配管敷設システムの概略図である。以下、図1および図2を参照しながら、例示するフローチャートに則って、配管敷設システム200について詳細に説明する。
【0030】
まず、ステップ100(第1ステップ)では、地表面に他の埋設設備244が存在する敷設対象区間を挟んで、少なくとも2つの立坑202a、202bを掘削する。これにより、立坑202a、202bの間に土壁222が形成される。立坑202a、202bの掘削には、バックホー240等が利用される。
【0031】
掘削された立坑202a、202bの縁には矢板204a、204bが打ち込まれ、土留めされる。かかる矢板204a、204bは、一般に立坑202a、202bの深さが1.0m以上の場合に打設すべきとされている。しかし、推進工法では、通常よりも土砂が崩壊しやすいと想定されるため、それ以下でも土留めをするとよい。
【0032】
次に、ステップ102(第2ステップ)では、略円錐形状または略多角錘形状の先鋭の先導具206で敷設対象区間を貫通させる中空の配管210の開口端部210a(図4参照)を覆う。なお、本実施形態では敷設対象区間は数m程度であって、配管210の直径は充分小さいものとする。
【0033】
図3は、第1実施形態にかかる先導具について説明する図である。先導具206は、図3(a)に例示する円筒材208より製造される。円筒材208は、その内径が配管210の外径よりも若干大きい寸法である。図3(b)に例示するようにこの円筒材208の一端を複数の三角形状を形成するように切断して、図3(c)に例示するように先端をすぼめて溶接することにより、先鋭部206cが形成される。図3(b)では4つの三角形を形成しているため、ここでは先鋭部206cの形状が略四角錐形状となる。
【0034】
先導具206の非切断側には、配管210の開口端部210aに冠着される口金部206aが設けられる。図3(d)に例示するように、口金部206aの内側には、配管210の進入を規制する進入規制部206bが設けられる。本実施形態では、進入規制部206bは、所定の厚みを有する金属板であって、口金部206aの内側に溶接されている。
【0035】
なお、図3(e)に例示するように、先導具206の先端に鋼棒206dを取り付けてもよい。これにより、先導具206が備えられた配管210を推進する際に、土砂を好適に緩めることができ、後続する配管210を推進しやすくすることができる。特に、掘削対象物が比較的硬い粘土などの場合に、かかる鋼棒206dは有効である。
【0036】
図4は、配管について説明する図である。配管210は、塩化ビニル管または亜鉛鋼管等であって、所定以上の強度を有する。本実施形態では、上記のように口金部206aの内径が配管210の外径よりも若干大きい寸法となる。これより、図4(a)に例示するように、口金部206aが配管210の開口端部210aに冠着される。
【0037】
また、図4(b)に例示するように、管継手212によって配管210同士を連結可能となっている。本実施形態では、管継手212は中空であって、その内径が口金部206aと同等になっている。そして、管継手212の内側には配管210の端部を挿通不能に規制するフランジ状のリブ(不図示)が立設されている。これより、配管210同士をインローによって連結することができる。
【0038】
図1および図2に戻り、次に、ステップ104(第3ステップ)では、一方の掘削した立坑202aに、油圧シリンダー214および案内工具218を設置する。そして、ステップ106では、油圧シリンダー214に油圧ケーブル216を接続する。
【0039】
図5は、一方の立坑に油圧シリンダーおよび案内工具を設置した状態を例示する図である。油圧シリンダー214は、油圧ケーブル216がジョイント部214a、214bに接続して油を導入することで、ピストン214c先端に備えられた水平押出部214dを水平に押し出したり、戻したりする。油圧シリンダー214には、総合作業車に装備されている抜柱機を用いることができる。油圧シリンダー214は、軽量で小型であるほど容易に立坑202aに搬入することができる利点がある。
【0040】
一方、案内工具218の本体部分はH鋼218aで形成されていて、中途部に三角片218bが溶接され、後端に背板218cが設けられている。また、H鋼218aのフランジ面に沿って、2本のガイド棒218dが載置されている。このガイド棒218dは、その上に載置される配管210の移動を円滑にする役割を担っている。
【0041】
図5(a)に例示するように、立坑212aの床面には水平性を出すためのレベル調節板224が敷かれる。そして、矢板204aの一部が解かれ、露出した敷設対象区間の土壁222に向けて、案内工具218がレベル調節板224上に設置される。
【0042】
また、案内工具218の前端を挟むようにして、立坑202a床面に2本の振留パイプ226が打ち込まれる。これにより、案内工具218の左右へのずれが防止される。なお、振留パイプ226の打ち込みに際しては、埋蔵物が無いことを確認するために探針を実施する。
【0043】
図5(b)に例示するように、油圧シリンダー214は、三角片218bに水平押出部214dをくぐらせて、H鋼218a上に載置される。そして、背板218cに引っ掛けられた鉤状固定具220aが取り付けられて、締結部材220bによって背板218cに鉤状固定具220aが締結されることで、案内工具218に固定される。これにより、油圧シリンダー214の浮き上がりが防止されている。
【0044】
なお、図5中に示す水準器228および補助工具230については、後ほど図7および図8と併せて説明する。
【0045】
図6は、バックホーについて説明する図である。本実施形態では、油圧を印加する油圧印加機器としてバックホー240を利用する。バックホー240には、油圧系統から分岐する分岐管250が延設されている。
【0046】
図6(a)に例示するように、分岐管250の先端には連結アダプター252が備えられていて、非使用時には防護カバー254で被覆されている。図6(b)に例示するように、油圧ケーブル216連結時には防護カバー254が取り外され、バックホー240の油圧系統より、油圧が印加される。
【0047】
なお、総合作業車のクレーン等の油圧系統を分岐して油圧シリンダー214に油を導入し、油圧を印加することも可能である。しかし、通常、バックホー240の方が高い導入油圧が得られるため好適である。
【0048】
図1および図2に戻り、次に、ステップ108(第4ステップ)では、先導具206を取り付けた配管210をH鋼218aに載置する。図5(b)に例示するように、この配管210は、先導具206が土壁222に向けられた状態で載置される。
【0049】
図7は、土壁の貫通手順を例示する図である。以下、単一の配管210で土壁222を貫通可能な場合(ステップ110のYes)について、図7を参照しながら説明する。
【0050】
図7(a)に例示するように、ステップ112では、水準器228を当てて上下左右のぶれを監視しながら油圧シリンダー214の水平押出部214dを押し出し、載置された配管210を非回転で押圧する。これにより、配管210を土壁222に向かって推進する。
【0051】
上記の推進に際しては、案内工具218がH鋼218aのフランジ面に沿って配管210を軸方向に移動するように案内する。そして、先導具206が略円錐形状または略多角錘形状であるため、土壁222の土砂に対しても真っ直ぐ推進させることができる。
【0052】
配管210が土壁222を貫通する前に、ストローク全開まで水平押出部214dを押し出してしまった場合には(ステップ114のNo)、ピストン214cが初期位置(押圧前位置)に戻される。そして、図7(b)に例示するように、ステップ116として、ピストン214cと配管210の間に補助工具230が載置される。
【0053】
補助工具230は、鉄鋼材であって、ピストン214cと配管210の間の空間を埋める。かかる補助工具230により、水平押出部214dを押し出して再度配管を推進することが可能となる。よって、油圧シリンダー214のストローク長に制限されることなく、配管210を推進することができる。
【0054】
配管210が土壁222を貫通するまで(ステップ114のYes)、ステップ112〜ステップ116が繰り返される(第5ステップ)。なお、図7(c)に例示するように、補助工具230の長さは、ステップ112〜ステップ116が繰り返される度にピストン214cと配管210の間の空間が広がるため、より長いものが使用される。
【0055】
なお、他方の立坑202bでは、推進する配管210が貫通しそうになった時点で、配管210が出てくると予測される地点の周辺の矢板204bが取り除かれる。
【0056】
図7(d)に例示するように、ステップ118(第6ステップ)では、配管210から先導具206が取り外される。本実施形態では、進入規制部206bにより先導具206への配管210の進入が規制されているため、開口端部210aが変形して抜けなくなるおそれが低減されている。そのため、容易に先導具206を取り外すことができる。
【0057】
ここでは、先導具206を取り外した配管210内部に、土壁222の掘削土砂が侵入することはない。先導具206が、しっかりと開口端部210aを覆っているためである。そのため、せいぜい取外し口の僅かな付着土砂を取り除く程度で、配管210内部に電力ケーブル等を通すことが可能である。
【0058】
図8は、土壁の他の貫通手順を例示する図である。以下、複数の配管210を連結して土壁222を貫通させる場合(ステップ110のNo)について、図8を参照しながら説明する。
【0059】
図8(a)に例示するように、ステップ112と同様にステップ120では、水準器228を当てて上下左右のぶれを監視しながら、載置された配管210を押圧し、土壁222に向かってこれを推進する。
【0060】
配管210が土壁222を貫通する前に、ストローク全開まで水平押出部214dを押し出してしまった場合には(ステップ122のNo)、ピストン214cが初期位置(押圧前位置)に戻される。そして、図8(b)に例示するように、ステップ124として、管継手212によって、追加の配管210が継ぎ足される。なお、油圧シリンダー214のストロークよりも追加の配管210が長い場合にはそのまま載置することができない。そこで、このような場合には、補助工具230を用いて既存の配管210をさらに推進してから、追加の配管210を連結する。
【0061】
追加の配管210は、土壁222を貫通するまで(ステップ122のYes)継ぎ足され、ステップ120〜ステップ124が繰り返される(第5ステップ)。
【0062】
これより、土壁222を貫通する長さのストロークを有する油圧シリンダー214を使用できない場合であっても、管継手212で追加の配管210を連結することで、他方の掘削した立坑202bまでこれを貫通させることができる。本実施形態では、先導具206の外径と管継手212の外径がほぼ等しいので、ステップ120〜ステップ124において配管210推進時に管継手212が周囲の土砂に引っ掛かって過度な荷重がかかることはない。
【0063】
なお、他方の立坑202bでは、推進する配管210が貫通しそうになった時点で、配管210が出てくると予測される地点の周辺の矢板204bが取り除かれる。図8(c)に例示するように、この時点で追加の配管210の継ぎ足しをやめて、補助工具230によって土壁222ぎりぎりまで、既存の配管210を推進してもよい。
【0064】
図8(d)に例示するように、ステップ120〜ステップ124で、連結した配管210が土壁222を貫通したら、上記と同様にステップ118(第6ステップ)として、配管210から先導具206が取り外される。そして、複数の配管210内部に電力ケーブル等が通されることとなる。
【0065】
以上、上述した構成によれば、煩雑な掘削機構や排土機構を要せずに、敷設対象区間に配管210を貫通させることができる。すなわち、先鋭の先導具206を取り付けて配管を押圧するのみで、敷設対象区間が長くない場合には配管210を貫通させることができる。なお、敷設対象区間が極めて短い場合には、油圧シリンダー214に代えて手回しジャッキを用いることもできる。手回しジャッキは油圧シリンダー214よりも労力がかかるが、持ち運びの点では有効である。
【0066】
また、上述した構成では、先導具206を除き工事現場に存在する物品(例えばバックホー240、抜柱機やH鋼218a等)のみで施工することができる。この工法の専用品である先導具206についても、円筒材208から極めて安価に製造することができる。よって、従来の推進工法や開削工法よりもコストを大幅に削減することが可能である。
【0067】
なお、上述した各ステップ100〜ステップ124は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、ステップ102、ステップ104、ステップ106の順序が置換されてもよく、特にその順番が限定されることはない。また、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0068】
[第2実施形態]
図9および図10は、第2実施形態にかかる配管敷設方法について説明する図である。
ここでは、敷設対象区間の一方の側に立坑302を掘削して、地表面近傍または地中に存在する他の埋設設備244の下を通すように配管210を推進する。そして、立坑302から敷設対象区間の他方の側の地表面にわたって斜めに配管210を敷設する。
【0069】
この際、地表面近傍の硬い土砂を掘削しなければならないので、先端が開口した先鋭の先導具306を配管210に取り付けてもよい。かかる先導具306の形状は、例えば図3(b)に図示したものと同一にすることができる。なお、当然ながら、端部が塞がれた非開口の先導具206を用いてもよい。先導具306によれば、土砂をその内部に取り込ませながら容易に配管210を推進することができる。また、推進路上に樹木の根などが存在しても切断しながら推進可能となる。
【0070】
以下、具体例を挙げて説明する。図9(a)に例示するように、案内工具218の背板218cを固定パイプ326で固定し、配管210を地表面近傍より推進して他の埋設設備244の下を通過させてよい。補助工具230や管継手212は、第1実施形態のように適宜使用される。これにより、図9(b)に例示するように、反対側に掘削された立坑302まで配管210を到達させることができる。なお、油圧シリンダー214および案内工具218を設置する側に、バックホー240等で矢板を必要としない簡易な発進立坑を掘削してもよい。
【0071】
また、図10(a)に例示するように、立坑302に油圧シリンダー214および案内工具218を設置して、地表面近傍に向かって他の埋設設備244の下を通過するように配管210を推進してもよい。これにより、図10(b)に例示するように、敷設対象区間の反対側の地表面まで配管210を到達させることができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法、並びにこの方法において利用される先導具および配管敷設システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
200…配管敷設システム、202a…立坑、202b…立坑、204a…矢板、204b…矢板、206…先導具、206a…口金部、206b…進入規制部、206c…先鋭部、206d…鋼棒、208…円筒材、210…配管、210a…開口端部、212…管継手、214…油圧シリンダー、214a、214b…ジョイント部、214c…ピストン、214d…水平押出部、216…油圧ケーブル、218…案内工具、218a…H鋼、218b…三角片、218c…背板、218d…ガイド棒、220a…鉤状固定具、220b…締結部材、222…土壁、224…レベル調節板、226…振留パイプ、228…水準器、230…補助工具、240…バックホー、244…他の埋設設備、250…分岐管、252…連結アダプター、254…防護カバー、302…立坑、306…先導具、326…固定パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法であって、
敷設対象区間を挟んで少なくとも2つの立坑を掘削する第1ステップと、
略円錐形状または略多角錘形状の先鋭の先導具で配管の開口端部を覆う第2ステップと、
前記配管を押圧する油圧シリンダーおよび該配管が軸方向に移動するように案内する案内工具を一方の前記掘削した立坑に設置する第3ステップと、
前記先導具が備えられた配管を前記2つの立坑の間の土壁に向けて、前記案内工具に載置する第4ステップと、
前記載置された配管を前記油圧シリンダーにて非回転で押圧し、他方の前記掘削した立坑まで該配管を貫通させる第5ステップと、
前記貫通した配管から前記先導具を取り外す第6ステップと、
を含むことを特徴とする配管敷設方法。
【請求項2】
前記第5ステップは、
前記油圧シリンダーのストローク全開まで前記載置された配管を押圧し、
前記油圧シリンダーのピストンを戻し、
前記ピストンと前記配管の間の空間を埋める補助工具を介在させ、
前記補助工具を介して、前記油圧シリンダーにて前記配管を再度押圧することを特徴とする請求項1に記載の配管敷設方法。
【請求項3】
前記第5ステップは、
前記油圧シリンダーのストローク全開まで前記載置された配管を押圧し、
前記油圧シリンダーのピストンを戻し、
前記押圧された配管の後端に、追加の配管を継ぎ足し可能にする管継手を取り付け、
前記管継手を介して追加の配管を継ぎ足し、
前記油圧シリンダーにて、前記継ぎ足された追加の配管を押圧することを特徴とする請求項1に記載の配管敷設方法。
【請求項4】
推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設方法であって、
敷設対象区間の少なくとも一方の側に立坑を掘削する第1ステップと、
配管の開口端部に先鋭の先導具を取り付ける第2ステップと、
前記配管を押圧する油圧シリンダーおよび該配管が軸方向に移動するように案内する案内工具を、前記立坑または前記敷設対象区間の他方の側に設置する第3ステップと、
前記先導具が備えられた配管を前記案内工具に載置する第4ステップと、
前記載置された配管を前記油圧シリンダーにて非回転で押圧し、地表面近傍または地中に存在する他の埋設設備の下を通すように該配管を推進する第5ステップと、
を含み、
前記配管は、前記立坑から前記敷設対象区間の他方の側の地表面にわたって斜めに敷設されることを特徴とする配管敷設方法。
【請求項5】
中空の配管の開口端部に冠着される口金部と、
前記口金部の内側に前記配管の開口端部に当接するように設けられ、該配管の進入を規制する進入規制部と、
を有し、
前記口金部と反対側が略円錐形状または略多角錘形状の先鋭であることを特徴とする配管の先導具。
【請求項6】
推進工法によって地中に中空の配管を敷設する配管敷設システムであって、
配管の開口端部を覆う略円錐形状または略多角錘形状の先鋭の先導具と、
前記配管を押圧する油圧シリンダーと、
前記油圧シリンダーに油圧を印加する油圧印加機器と、
敷設対象区間を挟んで掘削された2つの立坑の間の土壁に向けて前記先導具が備えられた配管を載置し、該配管が軸方向に移動するように案内する案内工具と、
を含むことを特徴とする配管敷設システム。
【請求項7】
前記油圧シリンダーは抜柱機であって、前記油圧印加機器はバックホーであることを特徴とする請求項6に記載の配管敷設システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−149186(P2011−149186A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10558(P2010−10558)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】