説明

配管敷設方法と装置

【課題】簡単な工法で、安全に高い強度で新設管を敷設することができる配管敷設方法と装置を提供するこ。
【解決手段】所定位置に設けられた発進坑2から到達坑4に向けて、所定深さのパイロット孔10を掘削するドリルヘッド6を有する。ドリルヘッド6に連結され、パイロット孔10に沿って発進坑2側から到達坑4側に挿通され、ドリルヘッド6を回転させるドリルパイプ8と。ドリルパイプ8を回転させながら前進及び後退させるドリルユニット12を備える。到達坑4側からドリルパイプ8を介してパイロット孔10内に引き込まれる拡径装置20と、拡径装置20へ液状の遅硬性滑剤31を送る遅硬性滑剤供給装置16を備える。拡径装置20に設けられ拡径された推進孔50に新設管22を引き込むための新設管保持部26と、推進孔50と新設管22の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤31を吐出する遅硬性滑剤吐出部30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス管や水道管、下水管等を、非開削工法によって地中に埋設する配管敷設方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管、水道管、下水管など地中に敷設する際には、新設管を敷設する経路上の道路や地盤を開削し、新設管を配置して埋め戻す方法が一般的であった。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、まず、新設管を敷設する経路の始点位置と終点位置に縦坑を設け、その始点側の縦坑から終点側の縦坑に向けて、ドリルヘッドをドリルユニットにより回転させてパイロット孔を掘削する。次に、終点側の縦坑でドリルヘッドを外して、後方に新設管が連結された拡径装置の先端部にドリルパイプ先端を接続する。そして、ドリルパイプを回転させながらパイロット孔の反対側からドリルパイプを引いて、拡径装置でパイロット孔を拡径しながら新設管を引き込む配管敷設方法がある。この敷設方法では、拡径装置がその移動方向前方の土砂に対してベントナイト泥水を噴射し、掘進する拡径装置及び新設管の引き込み抵抗を軽減している。
【特許文献1】特開2000−248891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、配管を敷設する経路上の道路や地盤を開削し、新設管を配置して埋め戻す方法にあっては、掘削、復旧に多大の労力と費用を要し、更に地上に建造物や河川がある場合は作業自体が不可能である等の問題があった。
【0005】
また、地下水が浸透しやすい軟弱な土質の場合、配管に対して水圧による曲げやその他の土圧等による力が加わりやすいものである。したがって、特許文献1に開示された新設管敷設方法にあっては、比較的柔らかく変形しやすい塩化ビニル等の合成樹脂管を敷設した場合、その合成樹脂の強度を超える力により、配管に大きな曲げ応力等が発生すると、配管自体の形状又は直線性を維持することが困難になり、場合によっては破損する恐れもあった。
【0006】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、簡単な工法で、安全に高い強度で新設管を敷設することができる配管敷設方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、所定位置に設けられた発進坑から到達坑に向けてあらかじめ所定深さのパイロット孔を掘削し、パイロット孔前記到達坑側から拡径装置を挿入し、前記発進坑まで前記拡径装置を進行させて前記パイロット孔を拡径するとともに、新設管を拡径跡の推進孔に挿入する配管敷設方法であって、前記拡径装置から液状の遅硬性滑剤を吐出させ、拡径された前記推進孔と前記新設管の隙間に前記遅硬性滑剤を充填しながら前記新設管を引き込む配管敷設方法である。
【0008】
またこの発明は、所定位置に設けられた発進坑から到達坑に向けて所定深さのパイロット孔を掘削するドリルヘッドと、このドリルヘッドに連結され前記パイロット孔に沿って前記発進坑側から前記到達坑側に挿通され前記ドリルヘッドを回転させるドリルパイプと、前記ドリルパイプを回転させながら前進及び後退させるドリルユニットと、前記到達坑側から前記ドリルパイプを介して前記パイロット孔内に引き込まれる拡径装置と、前記拡径装置へ液状の遅硬性滑剤を送る遅硬性滑剤供給装置と、前記拡径装置に設けられ拡径された推進孔に新設管を引き込むための新設管保持部と、前記推進孔と前記新設管の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤を吐出する遅硬性滑剤吐出部とを備えた配管敷設装置である。
【0009】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記新設管保持部に設けられ、前記遅硬性滑剤は、前記新設管内に挿通されたホースを経て前記到達坑側に設置された前記遅硬性滑剤供給装置から供給されるものである。前記遅硬性滑剤吐出部の吐出口の周回には、前記遅硬性滑剤の流動誘導溝を設けることが好ましい。
【0010】
また、前記遅硬性滑剤吐出部は、前記拡径装置の拡径部に設けられ、前記遅硬性滑剤は、前記ドリルパイプを経て前記発進坑側に設置された前記遅硬性滑剤供給装置から供給され、前記ドリルパイプによる前記拡径部の回転により、前記新設管の周囲に充填されるものでも良い。
【発明の効果】
【0011】
この発明の配管敷設方法と装置によれば、パイロット孔の拡径作業と同時に遅硬性滑剤を充填することにより、新設管の挿入抵抗を低下させ新設管の挿入負荷が軽減され、短時間かつ低コストで新設管の敷設を行うことができる。さらに、敷設後は新設管の外周面に遅効性滑剤の硬化層が一体化されて強度が高くなり、土圧や地下水の水圧などによる力が加わっても、配管自体の形状又は直線性を維持することができる。
【0012】
またこの発明の配管敷設装置によれば、遅硬性滑剤を配管孔と新設管の隙間全体に偏りなく充填することができ、新設管の挿入をより容易なものにするとともに、新設管の外周面全体の強度を偏りなく一律に向上させることができる。さらに、既存の設備をそのまま利用することができ、設備コストの増加なく、高い強度で新設管の敷設が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の配管敷設方法と装置の一実施形態について、図1〜図5を基に説明する。この実施形態の配管敷設装置は、所定位置に設けられた縦坑である発進坑2から到達位置の縦坑である到達坑4に向けて、あらかじめ所定深さのパイロット孔10を掘削するドリルヘッド6を備えている。ドリルヘッド6は、ドリルヘッド6に連結されパイロット孔10に沿って発進坑2側から到達坑4側に挿通されドリルヘッド6を回転させるドリルパイプ8が接続されている。ドリルパイプ8は、例えば発進坑2内に設置されたドリルユニット12により回転駆動される。
【0014】
ドリルユニット12は、発進坑2の周囲に位置した車両1に載せられた発電機3と油圧ユニット5により駆動される図示しない油圧モータを備え、ドリルパイプ8を回転させる。ドリルユニット12は、発進坑2内で位置決めする油圧シリンダ装置14と保持部材15により位置決め固定されている。また、車両1には、図示しない潤滑剤の泥水タンクや、その駆動装置も設けられている。
【0015】
発進坑2から所定距離離れた到達坑4及びその周辺には、パイロット孔10内に挿入される拡径装置20と、到達坑4の近傍に位置し拡径装置20へ液状の遅硬性滑剤を送る遅硬性滑剤供給装置16と、拡径装置に遅硬性滑剤を送るホース18が設けられている。拡径装置20は、パイロット孔10の内径寸法よりも径が大きい部分を有する円錐状の拡径部24と、新設管22の一端を保持する新設管保持部26を備える。
【0016】
拡径部24は、円錐状の頂部にドリルヘッド6を取り外されたドリルパイプ8が接続され、新設管保持部26に対して、回転自在の継ぎ手である連結部28を介して回転自在に設けられている。また、車両1の泥水タンクからドリルパイプ8を介して供給される潤滑剤の泥水が吐出される吐出穴25が、拡径部24の周囲に複数形成されている。
【0017】
新設管保持部26は、遅硬性滑剤31を吐出する遅硬性滑剤吐出部30を備え、遅硬性滑剤吐出部30には、ホース18を介して遅硬性滑剤31を受け入れる受入口32と、それを吐出する吐出口34を有する。吐出口34の後方には、新設管22の先端部を保持する係合部36が設けられている。
【0018】
遅硬性滑剤31は、施工工事中は液状の流動体であって圧入時の摩擦を減少させるとともに、施工工事終了後1〜4ヶ月で硬化して補強材としての機能を果たす材料である。例えば、株式会社薬材開発センター社から販売されているCaO、SiO等を主成分としたセメント系の材料である商品名AHLや、高炉スラグを利用したユニオンヒューム管株式会社の遅効性滑材を用いることができる。
【0019】
さらに、拡径装置20の遅硬性滑剤吐出部30の吐出口34には、吐出口34に連通して新設管保持部26の全周に流動誘導溝38が形成されている。流動誘導溝38は、吐出口34から吐出された遅硬性滑剤31が流動誘導溝38に沿って周回し、新設管の外周面全体に偏りなく充填されるように設けられている。また、吐出口34の前方部分(拡径部24側部分)には、遅硬性滑剤31が前方に流入するのを防止する流動防止材40が固定部材42により取り付けられている。
【0020】
流動防止材40は、図3に示すように、遅硬性滑材吐出部30に装着するための取付穴44を有する円筒形の取付部46と、取付部46の一端からラッパ状に延設された開口部48を有している。流動防止材40は、例えばパイロット孔10の拡径作業の途中で拡径装置20の移動を停止させたり、移動の速度を低下させたとき等に、吐出口34から吐出された遅硬性滑剤31が拡径部24側に流入しないように防御する働きをする。なお、流動防止材40の取付部46は必ずしも円筒形である必要はなく、遅硬性滑材吐出部30の外周の形状に合わせて周回するように装着できればよい。
【0021】
次に、配管敷設装置の動作及び配管敷設方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、配管を敷設する経路の両端位置に発進坑2と到達坑4を掘削する。そして、発進坑2にドリルユニット12を設置して固定し、ドリルヘッド6を回転させながらドリルパイプ8を継ぎ足して、ドリルヘッド6を推進させ、パイロット孔10を到達坑に向けて掘削する。パイロット孔10の深さや位置は図示しない受信機により把握しながら、一定の深さで直線的に到達坑4に向かうようにドリルヘッド6の向きを制御する。
【0022】
ドルヘッド6が到達坑4に達すると、ドリルヘッド6を外して、ドリルパイプ8の先端部に拡径装置20の拡径部24の先端部を連結固定する。また、拡径装置20の新設管保持部26には、ポリエチレン等の新設管22の先端部を係合部36に連結する。また、新設管保持部26の遅硬性滑剤吐出部30の受入口32にホース18を接続し、遅硬性滑剤供給装置16により遅硬性滑剤31を供給可能にする。
【0023】
そして、拡径部24をパイロット孔10に挿入するとともに、ドリルパイプ8を図示しない泥水供給装置に接続し、拡径部24の吐出穴25から潤滑剤の泥水を吐出させる。この状態で、ドリルユニット12を回転させて、ドリルパイプ8を発進坑2側へ引く。これにより、拡径装置20が到達坑4からパイロット孔10内へ引き込まれ、パイロット孔10内を拡径装置20が進行して、パイロット孔10を拡径する。
【0024】
パイロット孔10に引き込まれた拡径装置20は、拡径部24回転しながら推進し、パイロット孔10の内径を広げて推進坑50を形成し、新設管保持部26により保持された新設管22を推進坑50内へ引き込む。このとき、連結部28は回転自在であるので、新設管保持部26は回転することなく引き込まれる。
【0025】
また、地上には遅硬性滑剤供給装置16と、遅硬性滑剤供給装置16から拡径装置20の遅硬性滑剤吐出部30に接続されたホース18が設けられ、拡径装置20に遅硬性滑剤31が供給される。これにより、拡径部24の吐出穴25から潤滑剤の泥水が吐出して、上述の拡径装置20による拡径作業の抵抗を減らす。さらに、図4に示すように、遅硬性滑剤吐出部30の吐出口34から遅硬性滑剤31が吐出し、新設管22の敷設抵抗を軽減させるとともに、図5に示すように、新設管22の周囲に遅硬性滑材31の層を形成する。そして、拡径装置20が発進坑2に達して、新設管22が発進坑2内に出ると、新設管22の引き込みが終了する。
【0026】
この配管敷設方法と装置によれば、新設管22の敷設に際して、地盤を開削して新設管22を配置し埋め戻すと言う作業が不要であり、敷設作業が効率化され、正確に短期間で施工することができる。しかも、拡径装置20の拡径部24から潤滑剤の泥水が吐出するとともに、新設管保持部26の遅硬性滑剤吐出部30からは遅硬性滑剤31が吐出し、新設管22の敷設抵抗を軽減する。
【0027】
さらに、新設管22の周囲には遅硬性滑材31の層が形成されるので、新設管22が敷設された区間全長に亘って、新設管22の挿入作業が完了した後、所定の期間が経過すると、遅硬性滑剤31は新設管22の外表面に一体的に硬化し、周囲の土砂を硬化させ、配管の敷設状態の強度を大幅に高いものにする。
【0028】
なお、遅硬性滑剤吐出部30には吐出口34が1箇所だけ設けられているが、複数箇所に設けてもよく、これにより新設管22の外周面全体に偏りなく充填され易くなる。また、流動誘導溝38の形状や本数は図4の実施形態に限定されるものではなく、図6に示すように放射状に流動誘導溝52が形成されたものでも良く、拡径されたパイロット孔10と新設管22の隙間の広さ、パイロット孔10内壁の状態(土砂の粗さや粘度等)及び新設管22の材質、遅硬性滑剤31の流動性等の性質によって、適宜設定することができる。
【0029】
また、遅硬性滑剤吐出部は、図7に示すように、拡径装置20の拡径部24の吐出穴25で兼用しても良い。これにより、遅硬性滑剤31は拡径部24の拡径時の潤滑剤としても機能し、遅硬性滑剤供給装置を別に設ける必要がなく、装置を簡略化することができる。
【0030】
また、拡径装置20においては、拡径部24と新設管保持部26が別個のユニットの他、各部が一体に形成された形態であってもよい。また、新設管の材質は、ポリエチレンに限らず、塩化ビニル等の合成樹脂管やその他の配管でも良く、材質は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態の配管敷設装置を示す拡大断面図である。
【図2】この実施形態の配管敷設方法のパイロット孔を掘削する状態を示す全体断面図(a)と、推進孔を掘削し新設管を敷設する状態を示す全体断面図(b)である。
【図3】この実施形態の拡径装置の流動防止材を示す側面図(a)及び正面図(b)である。
【図4】この実施形態の拡径装置の新設管保持部を示す側面図である。
【図5】図1のA−A断面図である。
【図6】この実施形態の拡径装置の新設管保持部の他の実施形態を示す側面図である。
【図7】この発明の他の実施形態の配管敷設装置を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 発進坑
4 到達坑
6 ドリルヘッド
8 ドリルパイプ
10 パイロット孔
12 ドリルユニット
16 遅硬性滑剤供給装置
18 ホース
20 拡径装置
22 新設管
24 拡径部
26 新設管保持部
28 連結部
30 遅硬性滑材吐出部
31 遅硬性滑剤
38 流動誘導溝
40 流動防止材
50 推進孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に設けられた発進坑から到達坑に向けてあらかじめ所定深さのパイロット孔を掘削し、そのパイロット孔の前記到達坑側から拡径装置を挿入し、前記発進坑まで前記拡径装置を進行させて前記パイロット孔を拡径するとともに、新設管を拡径跡の推進孔に挿入する配管敷設方法において、前記拡径装置から液状の遅硬性滑剤を吐出させ、拡径された前記推進孔と前記新設管の隙間に前記遅硬性滑剤を充填しながら前記新設管を引き込むことを特徴とする配管敷設方法。
【請求項2】
所定位置に設けられた発進坑から到達坑に向けて所定深さのパイロット孔を掘削するドリルヘッドと、このドリルヘッドに連結され前記パイロット孔に沿って前記発進坑側から前記到達坑側に挿通され前記ドリルヘッドを回転させるドリルパイプと、前記ドリルパイプを回転させながら前進及び後退させるドリルユニットと、前記到達坑側から前記ドリルパイプを介して前記パイロット孔内に引き込まれる拡径装置と、前記拡径装置へ液状の遅硬性滑剤を送る遅硬性滑剤供給装置と、前記拡径装置に設けられ拡径された推進孔に新設管を引き込むための新設管保持部と、前記推進孔と前記新設管の隙間に充填される液状の遅硬性滑剤を吐出する遅硬性滑剤吐出部とを備えたこと特徴とする配管敷設装置。
【請求項3】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記新設管保持部に設けられ、前記遅硬性滑剤は、前記新設管内に挿通されたホースを経て前記到達坑側に設置された前記遅硬性滑剤供給装置から供給されることを特徴とする請求項2記載の配管敷設装置。
【請求項4】
前記遅硬性滑剤吐出部の吐出口の周回には、前記遅硬性滑剤の流動誘導溝を設けたことを特徴とする請求項3記載の配管敷設装置。
【請求項5】
前記遅硬性滑剤吐出部は、前記拡径装置の拡径部に設けられ、前記遅硬性滑剤は、前記ドリルパイプを経て前記発進坑側に設置された前記遅硬性滑剤供給装置から供給され、前記ドリルパイプによる前記拡径部の回転により、前記新設管の周囲に充填されることを特徴とする請求項2記載の配管敷設装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−167750(P2009−167750A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9466(P2008−9466)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(500383263)北陸推進工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】