説明

配管材及びその製造方法

【課題】継手部分を小さくできて、配管施工工数を少なくすることができる、さらに、複合管端面の金属製中間層が内部を流れる水等の流体に接触することがない配管材、及びこの配管材を、環境や人による強度のバラツキを生じることなく、配管本体部となる複合管が長尺であっても、容易かつ、複合管に損傷を与えることなく製造することができる配管材の製造方法を提供する。
【解決手段】複合管1の一端に形成した拡径部1bに、係合部32を備えた抜け止め部材3aの拡径筒部31を外嵌させるとともに、インコア部材2のインコア本体21を内嵌した状態で、金型8内に、拡径部1b、抜け止め部材3a及びインコア部材2をセットし、複合管1の内層12と同じ樹脂をキャビティ81内に射出して、射出樹脂部4aを成形すると同時に、射出樹脂部4aと内層12との界面を融着するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合管(以下、「複合管」と記す)の端部に他の配管材との接続構造を有する継手部が予め設けられ、給水・給湯配管や、冷暖房用の冷温水配管、あるいは温水設備などに使用する配管材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水・給湯配管や、冷暖房用の冷温水配管、あるいは温水設備などに使用する管として、例えば、内外層がポリエチレン等の熱可塑性樹脂で形成され、中間層がアルミニウムなどの金属で形成された3層以上の層からなる複合管が用いられている。
このような複合管は、従来、かしめ継手(特許文献1参照)、ワンタッチ継手(特許文献2参照)、袋ナットを締め付ける方式の継手(特許文献3参照)等の管継手を用いて他の金属製の配管材と接続されるようになっている。
【0003】
また、製造コストダウンと省資源化を目的に、塑性変形可能であるプラスチック管と、このプラスチック管の先端部側に嵌め込んである環状のスペーサ部材と、このスペーサ部材に接続される接続部材とから構成され、上記プラスチック管の先端部側の外周に凸部を形成してあり、上記スペーサ部材は、その内周に接続凹部を形成してあって、この接続凹部に上記プラスチック管の凸部が圧入されている配管の接続体が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285405号公報
【特許文献2】特許4179919号公報
【特許文献3】特開平6−346994号公報
【特許文献4】特開2009−197926号公報
【特許文献5】特許第4464847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の接続に用いられる管継手は、継手本体が、かしめや締め付けに耐えるように、金属材料(主に銅合金)で形成されているため、以下のいずれかの問題がある。
(1)金属価格の変動によりコストが高く、また安定供給のリスクが高い。
(2)重量が重くなる。
(3)腐食の発生リスクがある。
(4)継手を構成する部材の点数が多く、それらの組立が必要なため、組立工数、時間を要し、コストアップの要因となっている。
(5)組立時に不良部材を間違って使用するおそれや、組立間違いなどの製品不良が発生するおそれがある。
(6)管継手に抜け止めや止水の構造を持たせるため、管継手全体が大きくなり、狭い場所での配管ができないという問題がある。
(7)管の端面に流体が触れるため、上記複合管の場合、中間層の金属が腐食し、管の寿命を低下させるおそれがある。
【0006】
一方、樹脂製配管材と樹脂製配管材との接続方法としては、上記のメカニカルな接続方法以外にバット融着や電気融着継手を用いた接続方法がある。
しかしながら、バット融着は、接合しようとする配管材の端面を熱板等で溶融したのち、端面同士を突き合わせて接合するようになっている。したがって、バット融着では、上記中間層に溶融しない金属層を備えている複合管の場合、他の配管材の管端面を複合管の管端面に押し付けた際に、溶融樹脂に面圧を加えることが難しく、うまく融着できないとい問題がある。
【0007】
他方、電気融着継手では、管の外周面で接続するが、上記複合管の場合、樹脂製の外層肉厚が薄く、溶融樹脂が十分に確保できない。さらに管の偏平などがあり、周方向で均一に溶融し、面圧をたてるのが困難であることから、安定した融着強度が発現できないという問題がある。
【0008】
また、接続対象物を射出成形する成形金型内に直管状の管の管端部を臨ませて、接続対象物を射出成形すると同時に管の端部を接続対象物に接続するようにした管の接続構造が既に提案されている(特許文献5)。
この接続構造を採用して接続対象物としての継手部を管端に一体成形された配管材を製造しようとした場合、金属材料の使用量を少なくすることができるとともに、継手部分を小さくできて、配管施工工数を少なくすることができるという利点がある。さらに、管が複合管であっても端面の金属製中間層が内部を流れる水等の流体に接触することがない配管材、及び、この配管材を、環境や人による強度のバラツキを生じることなく、配管本体部となる複合管と継手部との安定した接続品質を得るという利点がある。
【0009】
しかし、上記接続構造においては、以下のような欠点がある。
すなわち、射出樹脂が硬化するまで複合管をズレ動かないように、金型外で支持固定する必要があるが、複合管の他端を治具で押えるか、複合管の金型外に出た部分の外面を治具で強く締付けるなどしないと、射出樹脂圧で複合管が金型から容易に押し出されてしまう。
また、複合管が長尺の場合、複合管の他端を治具で押えることが困難であり、複合管の外面を強く締め付けると、管の損傷や変形につながり、安定して良好な品質が得られにくい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、継手部分を小さくできて、配管施工工数を少なくすることができる。さらに、複合管端面の金属製中間層が内部を流れる水等の流体に接触することがない配管材、及びこの配管材を、環境や人による強度のバラツキを生じることなく、配管本体部となる複合管が長尺であっても、容易かつ、複合管に損傷を与えることなく製造することができる配管材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる配管材は、熱可塑性樹脂製の外層及び内層と、金属製の中間層とを備えた複合管からなる配管本体部と、この配管本体部の端部に一体化されて、他の継手と接続される継手部とを備え、前記継手部が、他の継手との連結保持具の一部が係合する鍔状の係合部を有する配管材であって、前記配管本体部が、複合管本体部と、この複合管本体部に連設され、管端に向かって徐々に拡径する拡径部とを有し、前記継手部が、インコア部と、抜け止め筒部と、射出成形部とを備え、前記インコア部は、前記拡径部の開口端より外径が小径のインコア本体を有するインコア部材が、前記インコア本体の一端部を、前記拡径部の開口端側から配管本体部内に臨ませ、前記拡径部の内周面との間に隙間を形成するとともに、前記インコア本体の一端部周面が配管本体部の内周面に密着し、インコア本体の他端が前記拡径部の開口端からはみ出すように装着された状態になっていて、前記抜け止め筒部は、少なくとも内周面が一端から他端に向かって徐々に拡径する拡径筒部と、拡径筒部より外側に張り出す前記係合部を有する抜け止め部材が、前記拡径筒部を前記拡径部に外嵌するように装着された状態になっており、前記射出成形部は、複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する射出樹脂が、少なくとも前記インコア本体と、拡径部の内周面との間の隙間に充満するとともに、インコア本体の前記拡径部の開口端からはみ出した部分の外周面を囲むように射出成形されて形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の配管材において、配管本体部を構成する複合管としては、特に限定されず、内層及び外層が複層になっているものでも構わないし、内層と外層とが異なる熱可塑性樹脂で形成されていても構わない。そして、例えば、外層が高密度ポリエチレン、内層が耐熱性ポリエチレン、中間層がアルミニウムで形成された、積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックス等の市販のものを用いることができる。
複合管本体部と拡径部とは、特に限定されないが、例えば、直管の複合管の管端部に円錐形状の拡径治具を圧入して管端部を拡径することによって形成することができる。
【0013】
この拡径部のテーパ角は、テーパ角が大きいほど抜け止め部材の抜け阻止力を大きくすることができ、内径の拡大も大きいが、逆に継手の外径が大きくなりすぎたり、管の伸び以上に大きく拡径すると、破壊するおそれがある。また、使用する複合管に応じて好ましい拡径率があり、例えば、複合管として積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックスを用いた場合、中間層のアルミニウムの破断伸びを考慮すると、拡径率が27%以下、実際には9〜25%程度となるテーパ角とすることが好ましい。
なお、上記拡径率(%)は、以下の式
(拡径部の最大外径−拡径前の複合管の外径)/(拡径前の複合管の外径)×100
から求めることができる。
【0014】
インコア部を構成するインコア部材の材質は、射出成形部を射出成形する際に、射出樹脂の熱によって溶融しなければ特に限定されないが、例えば、砲金など銅合金、ステンレス鋼等の金属、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)などのエンジニアリングプラスチックやガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックが挙げられる。
インコア部材は、特に限定されないが、複合管の管端から突出するインコア本体の他端にフランジ部を備えていてもよい。
【0015】
抜け止め筒部を構成する抜け止め部材は、継手本体より強度的に優れ、射出成形部を射出成形する際に、射出樹脂の熱によって溶融しなければ特に限定されないが、例えば、砲金など銅合金、ステンレス鋼等の金属、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)などのエンジニアリングプラスチックやガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックが挙げられる。
また、上記インコア部材及び抜け止め部材は、いずれも射出成形部の内面側もしくは外面側に独立して設置されるのがのぞましい。ただし、内面から外面に連続して形成されていても、射出成形部と密着接続され、水が通らない構造であれば特に限定されない。
【0016】
射出成形部を構成する樹脂としては、使用環境による制約(温度、圧力、水質等)、製造条件による制約等により各種材質を選定可能だが、複合管の内層との融着性を考慮し、内層と同じ材料を選定することが望ましい。
【0017】
連結保持具としては、係合部に係合して配管材の継手と、他の継手との連結状態を保持できれば、特に限定されないが、例えば、両継手の接合部を弾性的にクリップする対向して設けられた2つのクリップ部を有するとともに、両クリップ部に設けられたスリット状の係合孔内に、本発明の配管材の係合部を、他の継手の係合部とともに、挿入してクリップ部に係合状態として連結状態を保持するようにした、ファスナークリップやクイックファスナー(例えば、特開2010-151305参照)と称されるものが用いられる。
【0018】
本発明にかかる配管材の製造方法は、射出成形金型のキャビティ内に複合管の管端部が臨むように複合管を配置した状態で、キャビティ内に射出樹脂を射出充填して、継手本体を成形することを特徴としている。
【0019】
本発明の配管材の製造方法は、抜け止め部材の拡径筒部を、複合管の拡径部に外嵌させるとともに、インコア部材のインコア本体を拡径部側端から複合管内に挿入装着した状態で、複合管の管端部、抜け止め部材及びインコア部材を射出成形金型のキャビティ内に装着したのち、キャビティ内に複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する熱可塑性樹脂を射出充填して、射出成形部を成形するようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる配管材は、以上のように、熱可塑性樹脂製の外層及び内層と、金属製の中間層とを備えた複合管からなる配管本体部と、この配管本体部の端部に一体化されて、他の継手と接続される継手部とを備え、前記継手部が、他の継手との連結保持具の一部が係合する鍔状の係合部を有する配管材であって、前記配管本体部が、複合管本体部と、この複合管本体部に連設され、管端に向かって徐々に拡径する拡径部とを有し、前記継手部が、インコア部と、抜け止め筒部と、射出成形部とを備え、前記インコア部は、前記拡径部の開口端より外径が小径のインコア本体を有するインコア部材が、前記インコア本体の一端部を、前記拡径部の開口端側から配管本体部内に臨ませ、前記拡径部の内周面との間に隙間を形成するとともに、前記インコア本体の一端部周面が配管本体部の内周面に密着し、インコア本体の他端が前記拡径部の開口端からはみ出すように装着された状態になっていて、前記抜け止め筒部は、少なくとも内周面が一端から他端に向かって徐々に拡径する拡径筒部と、拡径筒部より外側に張り出す前記係合部を有する抜け止め部材が、前記拡径筒部を前記拡径部に外嵌するように装着された状態になっており、前記射出成形部は、複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する射出樹脂が、少なくとも前記インコア本体と、拡径部の内周面との間の隙間に充満するとともに、インコア本体の前記拡径部の開口端からはみ出した部分の外周面を囲むように射出成形されて形成されているので、継手部分を小さくできて、配管施工工数を少なくすることができる、さらに、複合管端面の金属製中間層が内部を流れる水等の流体に接触することがない。
【0021】
本発明にかかる配管材の製造方法は、抜け止め部材を複合管に外嵌させた状態で複合管の管端部を拡径することによって拡径部を形成し、その後、抜け止め部材の拡径筒部を、形成された前記拡径部に外嵌させた状態にして、複合管の管端部及び抜け止め部材をインコア部材とともに射出成形金型のキャビティ内に装着したのち、複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出充填して、射出成形部を成形することによって、上記本発明の配管材を製造するようにしたので、成形条件を一定とすることで、環境や人による強度のバラツキを生じることなく、配管本体部となる複合管と継手部との安定した接続品質を得ることができる。
そして、射出成形部を射出成形すると同時に複合管が射出成形部と融着状態で接続されるので、迅速、安価に本発明の配管材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる配管材の第1の実施の形態をあらわし、その他の継手への装着前の状態の断面図である。
【図2】図1の配管材の、他の継手への装着状態をあらわす断面図である。
【図3】図1の配管材の製造方法の1例を概略的に説明する図である。
【図4】図1の配管材の作用効果を概略的に説明する図であって、同図(a)は本発明の止水状態をあらわし、同図(b)は比較例としての配管材の止水状態をあらわしている。
【図5】本発明にかかる配管材の第2の実施の形態をあらわし、その他の継手への装着前の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる配管材の第1の実施の形態をあらわしている。
【0024】
図1及び図2に示すように、この配管材Aは、複合管1からなる配管材本体の端部に継手部を一体に備えている。
複合管1は、高密度ポリエチレンからなる外層11と、耐熱性ポリエチレンからなる内層12と、アルミニウムからなる中間層13の3層構造になっていて、複合管本体部1aと拡径部1bとを備えている。また、外層11と中間層13の界面、及び中間層13と内層12の界面は、図示していないが、変性オレフィン系接着剤を介して接合されている。
拡径部1bは、複合管本体部1aの端部から4.5°〜8.5°の広がり角で管端に向かって徐々に拡径している。
【0025】
継手部は、インコア部材2aからなるインコア部と、抜け止め部材3aからなる抜け止め筒部と、射出成形部4aと、リング状シール材としてのOリング5とを備えている。
インコア部材2aは、砲金など銅合金、ステンレス鋼等の金属、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)などのエンジニアリングプラスチックやガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックからなり、インコア本体21と、フランジ部22とを備えている
【0026】
インコア本体21は、通水筒部21aと、嵌合突条部21bと、抜け止め突条部21cとを備えている。
通水筒部21aは、その外径が複合管本体部1aの内径より少し小径(例えば、複合管本体部1aが16Aサイズの場合、1〜2mm小径)で、周壁の肉厚が1.0mmで、その長さは、拡径部1bの軸方向の長さより長くなっている。
【0027】
嵌合突条部21bは、通水筒部21aの一端部で外側に張り出すように設けられ、その外径が複合管本体部1aの内径と略同じか少し大きくなっているとともに、先端側の外周縁がテーパ状に面取りされている。
フランジ部22は、通水筒部21aの他端部で外側に張り出すように設けられ、その外径が、後述する他の継手としての金属製継手6の受口61の内径と略同じになっている。
【0028】
そして、インコア部材2aは、嵌合突条部21bが複合管本体部1aの端部に嵌り込んで、その外周面が複合管本体部1aの内周面に密着するとともに、インコア本体21の嵌合突条部21b側が拡径部1b内に入り込み、フランジ部22側が複合管1の管端から突出した状態になっている。
【0029】
抜け止め部材3aは、砲金など銅合金、ステンレス鋼等の金属、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)などのエンジニアリングプラスチックやガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックからなり、拡径筒部31と、係合部32とを備えている。
【0030】
拡径筒部31は、一端の内径が複合管本体部1aの外径と略同じか少し大径の内径をしていて、他端に向かって徐々に内径が大きくなり、軸方向の長さがほぼ拡径部1bの軸方向の長さと同じになった筒状をしている。
係合部32は、拡径筒部31の他端に沿って設けられ、拡径筒部31より外側にリング状に突出して設けられ、その内径が拡径筒部31の他端内径と同じになっている。
【0031】
そして、抜け止め部材3aは、拡径筒部31が複合管1の拡径部1bに外嵌され、係合部32が拡径部1bの先端から突出した状態になっている。
【0032】
射出成形部4aは、複合管1の拡径部1bと、抜け止め部材3aの係合部32と、インコア本体21と、嵌合突条部21bとによって囲まれた隙間部分に充満し、複合管1の内層12との界面部分が内層12と融着された状態になっている。
また、射出成形部4aは、通水筒部21aの抜け止め部材3aの係合部32の端面から通水筒部21aのフランジ部22に到る部分が、通水筒部21a及び抜け止め突条部21cの周囲を囲繞するように設けられ、フランジ部22側の端部を除き、フランジ部22と略同じ外径をしていて、フランジ部22側の端部が、段状に小径化し、フランジ部22との間にOリング5の嵌合溝41を形成している。
【0033】
Oリング5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)やフッ素ゴムなどの合成ゴムで形成されていて、嵌合溝41に嵌合されている。
そして、この配管材Aは、射出成形部4aの係合部32から外側に突出した部分及びインコア部材2aのフランジ部22が継手6の受口61に挿入される差口部となっている。
【0034】
つぎに、図1及び図2を参照してこの配管材Aの他の継手としての金属製継手6との接続方法について、説明する。
すなわち、この継手6は、一方に受口61を備え、他方にねじ筒部62を備えている。
受口61は、その内周面が配管材Aのインコア部材2aのフランジ部22から嵌合溝41を含む射出成形部4aからなる差口部の外周面とほぼ同じ形状をした筒状をしていて、外側に鍔状に張り出す係合部61aをその先端に備えている。
係合部61aは、係合部32とほぼ同じ外径をしている。
【0035】
そして、配管材Aは、図1に示すように、差口部を受口61内を臨むように配置し、図2に示すように、差口部を受口61内に挿入嵌合させる。
この状態で、継手6の係合部61aと、係合部32の端面同士がほぼ密着状態となるとともに、Oリング5が受口61の内周面に密着して止水状態が確保される。
【0036】
つぎに、両係合部32,61aの一部が連結保持具7の対向するクリップ部71(図1,2では片側しかあらわれていない)にそれぞれ設けられた係合孔71a内に入り込むように、連結保持具7を取り付けて、係合部32と係合部61aとの接合部両側を両クリップ部71によって弾性的にクリップしたのち、両クリップ部71の開放端を、連結保持具7の離脱防止部材72に対向して設けられた係止爪72aに係止させる。
【0037】
つぎに、この配管材Aの製造方法を、工程順に説明する。
(1)例えば、既存の複合管にまず抜け止め部材3aを外嵌する。なお、両端に継手部を形成する場合は、2つの抜け止め部材3aを係合部32側が外側になるように背合わせ状態で外嵌する。
(2)既存の複合管の端部を拡径治具(図示せず)を用いて拡径することによって拡径部1bを形成して複合管1を形成する。
(3)射出成形金型8の可動型(または固定型)側にインコア部材2aをセットする。
(4)抜け止め部材3aを複合管本体部1a側からスライドさせて拡径筒部31を拡径部1bに外嵌させるとともに、嵌合突条部21bの外周面が拡径部1b基端の複合管本体部1aの内周面に圧接されるように、複合管1の管端部及び抜け止め部材3aを射出成形金型8の可動型(または固定型)側にセットする。
(5)射出成形金型8の可動型と固定型とを閉合する。すなわち、この状態で図3に示すように、複合管1の拡径部1b、抜け止め部材3a及びインコア部材2aが入れ子状態になって射出成形金型8のキャビティ81内にセットされる。
(6)キャビティ81内に内層12と同じ耐熱性ポリエチレン樹脂を射出充填し、射出成形部4aを成形する。
(7)Oリング嵌合溝41にOリング5を装着する。
【0038】
この配管材Aは、上記のように構成されているので、以下のような優れた性能を備えている。
(1)内層12と射出成形部4aとが、その界面で融着されているので、この融着部によってシールされて、中間層13のアルミニウムが配管中を流れる水に接触して腐食することがない。すなわち、安定した施工状態を常に確保することができる。
(2)複合管1が拡径部1bを備え、この拡径部1bに抜け止め部材3aの拡径筒部31が外嵌されているので、配管内を流れる流体圧によって複合管1が継手部から離脱する方向に力が加わろうとした場合、抜け止め部材3aの拡径筒部31がその内周面で、複合管1の拡径部1bの外周面を受けてしっかり保持される。
したがって、万一、内層12と中間層13の間を接合する接着剤が経年劣化等で接着不十分となっても、射出成形部4aが伸びて層間剥離を起こすことがない。すなわち、耐久性に優れたものとなる。
(3)射出成形部4aの射出成形時には、複合管1が拡径部1bを備え、この拡径部1bが金型8内に臨み、金型8の内壁面に支持されるため、射出樹脂の圧力による複合管1の金型8からの抜けを大きな力で阻止する必要がなく、複合管本体部1aの拡径部1bに隣接する部分をかるく把持するだけでよい。
すなわち、複合管の継手部が設けられる部分もストレートである場合、複合管の他端を治具で押えるか、複合管の金型外に出た部分の外面を治具で強く締付けるなどしないと、射出樹脂圧で複合管が金型から容易に押し出されてしまうが、複合管が長尺の場合、複合管の他端を治具で押えることが困難であり、複合管の外面を強く締め付けると、管の損傷や変形につながることが多いが、本発明のようにすれば、複雑な構造や治具を使用せずとも射出成形時に容易に管の位置決め、固定をすることができる。
(4)Oリング5が射出成形部4aに直接受けられるので、インコア部材2a側からの回り込みによる漏水の恐れがない。すなわち、インコア部材2aと射出成形部4aとは、融着されていないため、配管材A内を流れる流体が、図4(a)に太線で示すように、継手6側から回り込もうとするとともに、流体圧力が高くなると、」インコア部材2aと射出樹脂部4aとの間に流体が入り込む場合があるが、Oリング5が受口61の内周面と、射出樹脂部4aとの間で挟着されて圧縮状態になっており、インコア部材2aと射出樹脂部4aとの間を通ったあるいは継手6側から回り込んだ流体が、Oリング5によって確実に遮られ、図4(a)に二点鎖線で示す経路、すなわち、継手6と射出樹脂部4aとの間及び係合部32と係合部61aとの間を通って外部に漏水することが決してない。一方、図4(b)に示すように、Oリング5が受口61の内周面とインコア部材2bとの間で圧縮状態に挟着する構造の配管材Xとした場合、インコア部材2bと射出樹脂部40との間に流体が流れ込むと、図4(b)に示すような水みちWが形成され、係合部32と係合部61aとの間を通って外部に漏水するおそれがある。
(5)射出成形部4aの内側にインコア部材2aを配置してインコア部を設けているので、射出成形部4aを柔らかい樹脂で形成しても、射出成形部4aが内面側に変形しないので、融着部やシール材部分の長期水密性を確保できる。
(6)インコア部材2aの嵌合突条部21bは、その外周面が複合管本体部1aの内周面と密着するので、射出成形部4aを射出成形する際に複合管本体部側に射出樹脂が流れ込むことがなく、射出成形部4aを正確に射出成形することができる。よって、複合管1が非常に長い場合などでも複雑な金型構造にすることなく、射出成形が可能である。
(7)複合管1の内層12の表面を射出時の射出樹脂温度によって溶融状態として射出成形部4aと内層12とを融着一体化させるので、熱板融着や、電気融着などに比べ、温度、圧力が安定化し、外部環境(外乱)の影響も少なく、安定した融着品質が確保できる。
(8)融着接続を射出成形により行うので、成形条件を一定とすることで、環境や人による強度のバラツキを生じることなく、安定した接続部品質とすることができる。
(9)インコア部材2aを備えているので、射出成形部4aの肉厚を薄くしても十分な強度を確保することができる。
すなわち、射出成形部3aの肉厚を薄くできるので、結果として、継手部全体を非常に小さくすることができて、狭い場所での配管や、継手部近傍での曲げにも対応しやすい。
(10)射出成形部4aを成形すると同時に複合管1と継手部とが接続されるので、迅速、安価に接合構造を形成することができる。また、継手の成形と接続を別工程で行うのに比べ、作業スペースや設備が少なくできるので、プレハブ加工などで最適である。
(11)インコア部材2aが抜け止め突条部21cを備えているので、インコア部材2aの射出樹脂部4aからの抜けをしっかりと防止することができる。
【0039】
図5は、本発明にかかる配管材の第2の実施の形態をあららわしている。
図5に示すように、この配管材Bは、抜け止め部材3bが、係合部32の内周面にそって、リング状の溝33を備え、射出成形部4bが、この溝33に入り込んだ係止リブ部42を備えている以外は、上記配管材Aと同様になっている。
【0040】
この配管材Bは、係止リブ部42によって、抜け止め部材3bの複合管本体部1a側への抜けを確実に防止することができる。
【0041】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、継手本体が複合管の外層及び内層と同じポリエチレンで形成されていたが、複合管と融着可能であれば、他の熱可塑性樹脂でも構わない。
上記の実施の形態では、金型のキャビティが1つであったが、多数個取りするために、金型内に複数のキャビティを設けるようにしても構わない。
【0042】
上記の実施の形態では、配管材が連結保持具で他の継手と連結固定されるようになっていたが、インコアを、第2鍔部に連続してねじ筒を備えた形状とし、このねじ筒を用いてヘッダー等に直接接合できるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、Oリングを2つ備えていたが、1つでも構わないし、3つ以上でも構わない。
【0043】
上記の実施の形態では、本発明の配管材に接続される他の継手が金属製であったが、エンジニアリングプラスチック製であってもよい。
上記の実施の形態では、Oリング溝が1つであったが、2つ以上設けるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、インコア部材を射出成形金型の可動型(または固定型)にセットしたのち、複合管の拡径部及び抜け止め部材を射出成形金型の可動型(または固定型)側にセットするようにしていたが、インコア部材を、嵌合突条部21bの外周面が拡径部1b基端の複合管本体部1aの内周面に圧接されるようにセットした後に、複合管の拡径部及び抜け止め部材とともに、射出成形金型の可動型(または固定型)側にセットしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
A,B 配管材
1 複合管(配管本体部)
11 外層
12 内層
13 中間層
1a 複合管本体部
1b 拡径部
32 係合部
2a インコア部材(インコア部)
21 インコア本体
21a 通水筒部
21b 嵌合突条部
21c 抜け止め突条部
22 フランジ部
3a,3b 抜け止め部材(抜け止め筒部)
31 拡径筒部
32 係合部
4a,4b 射出成形部
6 継手(他の継手)
7 連結保持具
8 金型
81 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の外層及び内層と、金属製の中間層とを備えた複合管からなる配管本体部と、この配管本体部の端部に一体化されて、他の継手と接続される継手部とを備え、前記継手部が、他の継手との連結保持具の一部が係合する鍔状の係合部を有する配管材であって、
前記配管本体部が、複合管本体部と、この複合管本体部に連設され、管端に向かって徐々に拡径する拡径部とを有し、
前記継手部が、インコア部と、抜け止め筒部と、射出成形部とを備え、
前記インコア部は、前記拡径部の開口端より外径が小径の筒状をしたインコア本体を有するインコア部材が、前記インコア本体の一端部を、前記拡径部の開口端側から配管本体部内に臨ませ、前記拡径部の内周面との間に隙間を形成するとともに、前記インコア本体の一端部周面が配管本体部の内周面に密着し、インコア本体の他端が前記拡径部の開口端からはみ出すように装着された状態になっていて、
前記抜け止め筒部は、少なくとも内周面が一端から他端に向かって徐々に拡径する拡径筒部と、拡径筒部より外側に張り出す前記係合部を有する抜け止め部材が、前記拡径筒部を前記拡径部に外嵌するように装着された状態になっており、
前記射出成形部は、複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する射出樹脂が、少なくとも前記通水筒部と、拡径部の内周面との間の隙間に充満するとともに、通水筒部の前記拡径部の開口端からはみ出した部分の外周面を囲むように射出成形されて形成されていることを特徴とする配管材。
【請求項2】
インコア部材が、インコア本体の他端にフランジ部を備えている請求項1に記載の配管材。
【請求項3】
抜け止め部材を複合管に外嵌させた状態で複合管の管端部を拡径することによって拡径部を形成し、その後、抜け止め部材の拡径筒部を、形成された前記拡径部に外嵌させた状態にし、複合管の管端部及び抜け止め部材をインコア部材とともに射出成形金型のキャビティ内に装着したのち、複合管の内層樹脂に対する熱融着性を有する熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出充填して、射出成形部を成形することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−57671(P2012−57671A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199634(P2010−199634)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】