説明

配管洗浄方法及び配管洗浄治具

【課題】使用済燃料を溶解する溶解槽の溶解液を送液するジェットポンプの吸引配管を効率的に洗浄する。
【解決手段】溶解槽内部に接続されている吸引配管2から溶解槽内の溶解液を吸引して送出流路に送出するジェットポンプ1のストレーナ1dを吸引配管へのストレーナ接続口1cから取り外し、取り外したストレーナの代わりにジェットポンプ点検口から配管洗浄治具3を挿し込んで該配管洗浄治具の筒体の先端部分をストレーナ接続口に気密状態に接合し、前記筒状体内を通して吸引配管へ洗浄流体を圧送して吸引配管内の洗浄を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管洗浄方法及び配管洗浄治具に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済燃料の再処理では、せん断機でせん断した使用済燃料を溶解槽で硝酸を供給しながら加熱することで溶解する。使用済燃料の溶解に伴って発生するスラッジは、溶解槽のスワーフバスケットで捕集されるか、溶解液に同伴して清澄工程で除去されるが、一部のスラッジについては、溶解槽の内部に堆積することになる。
【0003】
溶解槽の溶解液送液は、蒸気で駆動するジェットポンプを使用して行うが、溶解槽の内部に配置されているジェットポンプ吸引配管がスラッジにより狭窄したり閉塞したりすることがある。
【0004】
したがって、溶解液の送液を円滑に行うためには、ジェットポンプ吸引配管に付着したスラッジを取り除くための配管洗浄を行うことが必要である。
【0005】
従来の使用済燃料を溶解する溶解槽の溶解液を送液するジェットポンプ吸引配管の洗浄は、フリージングデバイスを使用して吐出側配管を外側から冷却することにより配管内の溶液を凍らせて凍結栓を生成した上で、蒸気供給系統から高圧水の噴射を行い、スラッジにより狭窄したり閉塞している吸引配管のスラッジを物理的に除去するようにして行っている。
【0006】
しかしながら、このフリージングデバイスによる洗浄方法は、凍結栓生成のために、大量の水を使用することから放射性廃液の発生量が多いこと、また、放射性廃液の発生量が多いことから、繰り返し洗浄には不向きである。
【0007】
また、配管内の洗浄には、ワイヤー式洗浄機を使用する洗浄方法もあるが、配管が長くて屈曲個所が多い使用済燃料溶解槽の溶解液を送液するジェットポンプの吸引配管洗浄に適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−147296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、使用済燃料を溶解する溶解槽の溶解液を送液するジェットポンプ吸引配管を洗浄するのに好適な配管洗浄方法及び該方法の実施に好適な配管洗浄治具を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配管洗浄方法は、溶解槽内部に接続されている吸引配管から溶解槽内の溶解液を吸引して送出流路に送出するジェットポンプのストレーナを吸引配管へのストレーナ接続口から取り外し、ジェットポンプ点検口を開口し,取り外したストレーナの代わりに前記ジェットポンプ点検口から配管洗浄治具を挿し込んで該配管洗浄治具の筒体の先端部分をストレーナ接続口に気密状態に接合し、前記筒状体内を通して吸引配管へ洗浄流体を圧送して吸引配管内の洗浄を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の配管洗浄治具は、軸方向に相対的に摺動可能な2重構造であって先端部分は内側筒体が外側筒体よりも先に突出する突出部を形成した筒状体と、前記突出部の外周に嵌着されて該突出部の突出量を短くするように内側筒体を摺動させることにより軸方向に縮んで外径を大きくするように外周を膨出させる弾性体と、前記内側筒体内に設けられて該内側筒体の基端部と先端部を連通する洗浄流体流路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配管洗浄方法及び該方法の実施に好適な配管洗浄治具によれば、ジェットポンプにおけるストレーナ取り付け部を利用して配管洗浄治具を取り付けて該ジェットポンプへの吸引配管を容易に効率的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】再処理施設における溶解槽内の溶解液を送液するジェットポンプを示すものであり、(a)は縦断正面図、(b)は右側面図である。
【図2】本発明の実施例である配管洗浄治具の正面図である。
【図3】本発明の実施例である配管洗浄治具における外側筒体を示すものであり、正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)である。
【図4】本発明の実施例である配管洗浄治具におけるロックナットを示すものであり、正面図(a)と左側面図(b)である。
【図5】本発明の実施例である配管洗浄治具における止め金具を示すものであり、正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)である。
【図6】本発明の実施例である配管洗浄治具における内側筒体を示すものであり、正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)である。
【図7】本発明の実施例である配管洗浄治具における気密弾性体を示すものであり、正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)である。
【図8】本発明の実施例である配管洗浄治具を使用した配管洗浄系統図である。
【図9】本発明の実施例である配管洗浄作業工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の配管洗浄治具は、軸方向に相対的に摺動可能な2重構造であって先端部分は内側筒体が外側筒体よりも先に突出する突出部を形成した筒状体と、前記突出部の外周に嵌着されて該突出部の突出量を短くするように内側筒体を摺動させることにより軸方向に縮んで外径を大きくするように外周を膨出させる弾性体と、前記内側筒体内に設けられて該内側筒体の基端部と先端部を連通する洗浄流体流路を備える。そして、この配管洗浄治具を使用する配管洗浄は、溶解槽内部に接続されている吸引配管から溶解槽内の溶解液を吸引して送出流路に送出するジェットポンプのストレーナを吸引配管へのストレーナ接続口から取り外し、ジェットポンプ点検口を開口し,取り外したストレーナの代わりに前記ジェットポンプ点検口から配管洗浄治具を挿し込んで該配管洗浄治具の筒体の先端部分をストレーナ接続口に気密状態に接合し、前記筒状体内を通して吸引配管へ洗浄流体を圧送して吸引配管内の洗浄を行う。
【実施例】
【0015】
再処理施設における溶解槽内の溶解液を送液するジェットポンプについて図1を参照して説明する。
【0016】
送液の動力であるジェットポンプ1は、ポンプケーシング1aによって形成されたポンプ室1bから吸引配管2に連なるストレーナ接続口1cにストレーナ1dを接続し、送出流路1eに向けてジェット流体を噴出するジェットノズル1fを備える。ジェットノズル1fからジェット流体(蒸気)を噴出すると、ポンプ室1b内の流体も引き込まれて一緒に送出流路1eに送出される。ポンプ室1b内の流体が送出されると該ポンプ室1b内の圧力が低下することから、吸引配管2の溶解液がストレーナ1dを通して吸い出されてポンプ室1b内に流入する。
【0017】
そして、ポンプ室1bに流入した溶解液は、同様にして送出流路1eに送出されて溶解液の送液が実現する。
【0018】
ストレーナ1dは、具体的な図示説明は省略するが、先端を開口し、後端を封止し、中間領域に濾過窓を形成した筒状体であり、後端部にポンプケーシング1aへの係止爪を備える。
【0019】
ジェットポンプ1のストレーナ接続口1cに対するストレーナ1dの接続は、ストレーナ接続口1cと対向するポンプケーシング1aにジェットポンプ点検口1gを形成し、このジェットポンプ点検口1gからストレーナ1dを挿入してその先端をストレーナ接続口1cに接合して後端部の係合爪をポンプケーシング1aに係合させることによりストレーナ1dの開口を吸引配管2に連通させるように固定することにより行う。
【0020】
ジェットポンプ1からのストレーナ1dの取り外しは、ストレーナ1dの係止爪のポンプケーシング1aへの係止を解除し、ジェットポンプ点検口1gから引き抜くようにして行う。
【0021】
このようなジェットポンプ1に接続されている吸引配管2の洗浄は、ジェットポンプ点検口1gからストレーナ1dを取り外し、取り外したストレーナ1dの代わりにジェットポンプ点検口1gから筒状の配管洗浄治具3を挿し込んで該配管洗浄治具3の先端部をストレーナ接続口1cに挿入して気密状態に接合し、前記筒状体内を通して吸引配管2へ洗浄流体を圧送するようにして行う。
【0022】
配管洗浄治具3は、図2に示すように、軸方向に相対的に摺動可能な2重構造であって先端部分は内側筒体31を外側筒体32よりも先に突出する突出部を形成した筒状部と、前記内側筒体31の突出部31aの外周に嵌着されて該突出部31aの突出量を短くするように内側筒体31を外側筒体32に対して相対的に摺動させることにより軸方向に縮んで外径を大きくするように外周を膨出させる気密弾性体33と、前記内側筒体31内に設けられて該内側筒体31の基端部と先端部を貫通して先端に開口する洗浄流体流路31bを備える。
【0023】
外側筒体32と内側筒体31の間は複数のOリング34によって摺動可能な気密状態に封止される。
【0024】
外側筒体32は、図3に示すように、その中間部の外周に、ストレーナ1dの基端部と同様に、内側筒体31の突出部31aにおける先端をストレーナ接続口1cに挿入するように接合した状態でポンプケーシング1aに係止できるように係合させる係止爪32aが形成されている。また、基端部には、この外側筒体32を回転させて係合爪32aをポンプケーシング1aに係合させるレバー32bと、内側筒体31に螺合して該内側筒体31を外側筒体32に対して相対的に進退摺動させるロックナット35を備える。このロックナット35は、ネジ本体35aの端面に鍔35bを備え、外側筒体32の基端面にネジ36により固定された止め金具37に前記鍔35bを回転可能に係合するようにして取り付けられる。図4は、ロックナット35を示し、図5は、止め金具37を示している。
【0025】
内側筒体31は、図6に示すように、その基端部は、外側筒体32よりも突出し、その外周にはネジ溝31cが形成され、このネジ溝31cに螺合するロックナット35を捻じ込むことにより該ロックナット35を外側筒体32の基端に当接させた後に内側筒体31を基端方向に引き出すように摺動させて該内側筒体31の突出部31aに嵌着した気密弾性体33を軸方向に圧縮して外径方向に膨張させてストレーナ接続口1cの内壁面に圧接する。突出部31aの先端には気密弾性体33を抜け止めする鍔31aが形成されている。図7は、気密弾性体33を示している。
【0026】
また、内側筒体31の基端に開口する洗浄流体流路31bには、洗浄流体を供給する配管を選択的に接続するための洗浄配管接続端子31dを形成する。
【0027】
前記洗浄配管接続端子31dに接続する洗浄流体供給系は、図8に示すように、加圧系統、試薬供給系統、高圧水供給系統を備える。加圧系統は、手押しポンプ41によって純水を供給する系統である。試薬供給系統は、圧送タンク51に収容したNaOH溶液、HNO溶液、純水をコンプレッサ52により加圧して供給する系統である。そして、高圧水供給系統は、タンク61に収容した純水を高圧水供給装置62によって高圧状態に加圧して供給する系統である。なお、この洗浄流体における試薬は、吸引配管2に堆積するスラッジがモリブデン酸ジルコニウムであることを想定して選択しており、堆積物の種類に応じて設定する。
【0028】
この配管洗浄治具3を使用する吸引配管2の洗浄作業工程を図9を参照して説明する。
【0029】
ステップS1
ジェットポンプ1の流量が所定値に低下したのを送液元貯槽の液位計の液位低下率で確認する。なお,溶解液は該ジェットポンプで送液を継続するか、別系統のジェットポンプにより送液を行って全量送液する。
【0030】
ステップS2
送液元貯槽の液量が所定量以下であることを確認し、ジェットポンプ1のジェットノズル1fからポンプ室1b内に純水を供給する。その後、ジェットポンプ1を起動して送出系統内を蒸気ブローした後にジェットポンプ1を停止する。
【0031】
ステップS3
ジェットポンプ1のストレーナ1dを取り外し、その代わりに配管洗浄治具3を取り付ける。そして、圧送タンク51から純水を供給して吸引配管2内を含む系統内の空気抜きを行う。
【0032】
ステップS4
配管洗浄治具3におけるロックナット35を捻じ込んで先端部の気密弾性体33を膨張させて配管洗浄治具3と吸引配管2を高圧に対して気密状態を保持することができるようにする。そして、圧力計(図示省略)を監視しながら手押しポンプ41により吸引配管2内を加圧し、加圧終了後の圧力降下時間を計測する。
【0033】
ステップS5
圧力降下時間または最大加圧圧力を計測(判定)して洗浄処理作業を分岐する。具体的には、圧力降下時間が1秒を超えるか、加圧圧力が0.05MPa以上になるか、を計測する。
【0034】
ステップS6
NOのときには、高圧水による洗浄に分岐する。この洗浄では、配管洗浄治具3に高圧水供給系統を接続してタンク61から吸引配管2内に高圧水を供給する。そして、配管洗浄治具3のロックナット35を緩めて気密弾性体33を小径に復元させて配管洗浄治具3をジェットポンプ点検口1gから抜き取り、ストレーナ1dを取り付ける。
【0035】
ステップS7
ジェットポンプ1を起動して送液量を測定する。送液量が所定量に回復していれば洗浄を終了し、回復していないときにはステップS1に戻る。
【0036】
ステップS8
ステップS5において、YESのときには試薬を使用する洗浄に分岐する。この洗浄では、配管洗浄治具3のロックナット35を緩めて気密弾性体33を小径に復元させることにより、吸引配管2内の気密を解き、ジェットポンプ1を起動して系統内の溶液を排出する。そして、圧送タンク51からNaOHを供給して吸引配管2内を含む系統内の液置換,空気抜きを行う。その後、配管洗浄治具3におけるロックナット35を捻じ込んで先端部の気密弾性体33を膨張させて配管洗浄治具3と吸引配管2を高圧に対して気密状態を保持することができるようにする。圧送タンク51からNaOHを供給(圧力0.4MPa)し、さらに,圧力計(図示省略)を監視しながら、手押しポンプ41により吸引配管2内を加圧し、その圧力降下時間を計測する。
【0037】
ステップS9
配管洗浄治具3のロックナット35を緩めて気密弾性体33を小径に復元させることにより、吸引配管2内の気密を解き、ジェットポンプ1を起動して系統内の溶液を排出する。そして、圧送タンク51からHNOを供給して吸引配管2内を含む系統内の液置換,空気抜きを行う。その後、配管洗浄治具3におけるロックナット35を捻じ込んで先端部の気密弾性体33を膨張させて配管洗浄治具3と吸引配管2を高圧に対して気密状態を保持することができるようする。圧送タンク51からHNOを供給(圧力0.4MPa)し、さらに,圧力計(図示省略)を監視しながら、手押しポンプ41により吸引配管2内を加圧し、その圧力降下時間を計測する。そして、ステップS5に戻る。
【符号の説明】
【0038】
1…ジェットポンプ、1a…ポンプケーシング、1b…ポンプ室、1c…ストレーナ接続口、1d…ストレーナ、1e…送出流路、1f…ジェットノズル、1g…ジェットポンプ点検口、2…吸引配管、3…配管洗浄治具、31…内側筒体、31a…突出部、31a…鍔、31b…洗浄流体流路、31c…ネジ溝、31d…洗浄配管接続端子、32…外側筒体、33…気密弾性体、34…Oリング、35…ロックナット、35a…ネジ部、35b…鍔、41…手押しポンプ、51…圧送タンク、61…タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解槽内部に接続されている吸引配管から溶解槽内の溶解液を吸引して送出流路に送出するジェットポンプのストレーナを吸引配管へのストレーナ接続口から取り外し、取り外したストレーナの代わりにジェットポンプ点検口から配管洗浄治具を挿し込んで該配管洗浄治具の筒体の先端部分をストレーナ接続口に気密状態に接合し、前記筒状体内を通して吸引配管へ洗浄流体を圧送して吸引配管内の洗浄を行うことを特徴とする配管洗浄方法。
【請求項2】
軸方向に相対的に摺動可能な2重構造であって先端部分は内側筒体が外側筒体よりも先に突出する突出部を形成した筒状体と、前記突出部の外周に嵌着されて該突出部の突出量を短くするように内側筒体を摺動させることにより軸方向に縮んで外径を大きくするように外周を膨出させる弾性体と、前記内側筒体内に設けられて該内側筒体の基端部と先端部を連通する洗浄流体流路を備えたことを特徴とする配管洗浄治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127784(P2012−127784A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279175(P2010−279175)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】