説明

配管洗浄装置

【課題】
配管を洗浄する装置において、超音波を照射することによって、効率良い配管洗浄装置を提供する。
【解決手段】
便器に洗浄水を供給するための給水管に設置された開閉弁の開閉状態を検知する検知部と、前記便器下流の横引き配管の底部に設置される超音波振動子と、前記超音波振動子を駆動する超音波発振部と、前記超音波振動子の駆動を制御する制御部と、タイマーとを有し、前記開閉弁の閉止を検知して所定時間経過後に前記超音波振動子を所定時間駆動し、前記開閉弁が開状態であるときは前記超音波振動子の駆動を停止することにより、配管が低水位の時に超音波の照射が可能となり、効率良く配管を洗浄できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の洗浄に係り、特に小便器下流の横引き配管に好適な汚れの付着を防止、除去する装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の配管洗浄システムは、トイレに流す洗浄水の放水時、またはトイレのドアのロック時に同期して、横引き配管に対し超音波を照射している(例えば、特許文献1参照)。洗浄水の放水時に超音波を照射すると、照射時に発生する活性種が大量の洗浄水によって希釈され、洗浄効果が低くなる。また、ドアのロック時に同期して超音波照射を行うと、夜間などのトイレが使用されない時間には超音波照射がなされず、結果、微生物が繁殖して配管にスケールが発生してしまう。さらに、使用頻度が高いときに超音波を照射することになるので、照射時に発生する活性種が大量の洗浄水によって希釈されてしまう。すなわち、このような照射方法では洗浄効果が低下する。
また、流路を超音波振動子が移動し、超音波の振動によって汚れを検知し、除去する配管洗浄装置もある(例えば、特許文献2参照)。配管内に大量の水が存在する場合、照射時に発生する活性種が配管内の大量の水によって希釈され、洗浄効果が低下する。
【特許文献1】特開2000−157943号公報
【特許文献2】特開2005−288376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、配管を効率良く洗浄する配管洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、
便器に洗浄水を供給するための給水管に設置された開閉弁の開閉状態を検知する検知部と、
便器下流の横引き配管の底部に設置される超音波振動子と、
超音波振動子を駆動する超音波発振部と、
超音波振動子の駆動を制御する制御部と、
タイマーとを有し、
開閉弁の閉止を検知して所定時間経過後に、超音波振動子を所定時間駆動し、
開閉弁が開状態であるときは超音波振動子の駆動を停止することを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、横引き配管内が低水位のときにのみ超音波を照射し得る。低水位の状態は、水が滞留しスケール汚れが発生しやすい状態にある。そのようなタイミングで超音波を照射するため、高い効率での汚れの付着防止や除去が可能となる。。
【0006】
また、本発明の好ましい態様は、開閉弁の開閉を制御する開閉弁制御部をさらに備えてなり、超音波振動子の駆動を停止した後に、開閉弁を開放することを特徴とする。
【0007】
超音波によって剥離した汚れを放置しておくと、管内の微生物の影響などによって再度汚れが固着することがある。本発明では横引き配管内に浮遊した汚れを洗い流すことによって、汚れの再固着の予防が可能である。
【0008】
また、本発明の好ましい態様は、前記超音波振動子より発せられた超音波の共振周波数を計測する計測部と、前記共振周波数の計測値を記憶する記憶部とをさらに備えてなる。
【0009】
前記計測部と記憶部とを備えることにより、超音波照射条件の多様な制御が可能である。
【0010】
また、本発明の好ましい態様は、共振周波数の計測値と、記憶部に記憶された初動時の共振周波数との差分が所定値よりも小さい時に、超音波振動子を停止することを特徴とする。
【0011】
横引き配管内の汚れの量が多くなればなるほど、共振周波数の計測値と、横引き配管が清潔な状態での共振周波数との差分が大きくなる。また、横引き配管内の汚れが液体よりも固体である場合に前記差分が大きくなる。したがって、前記差分を見ることにより、横引き配管内の汚れを定量することができる。共振周波数の計測値と、記憶部に記憶された初動時の共振周波数との差分が小さい時は、汚れが少なく洗浄する必要がないと判断することができる。そのため、超音波振動子の駆動を停止し、配管洗浄の省電力化を可能とした。
【0012】
また、本発明の好ましい態様は、計測部が計測した共振周波数の値と、記憶部に記憶された初動時の共振周波数との差分が所定値よりも大きい時に、前記超音波振動子の振動を強めることを特徴とする。
【0013】
超音波振動子の振動を強くすることにより、超音波による物理的・化学的なエネルギーは強くなる。これにより、横引き配管内に強く固着した汚れを速やかに除去することを可能とした。
【0014】
また、本発明の好ましい態様は、超音波振動子を駆動した直後の共振周波数から超音波振動子の駆動を停止する直前の共振周波数を差し引いた値が正である場合、前記超音波振動子の駆動を停止した後に、前記開閉弁を開くことを特徴とする。
【0015】
共振周波数を計測することで汚れが剥離・除去されたことを確認後、開閉弁を開くことで浮遊した汚れを洗い流すことを可能とした。
【0016】
また、本発明の好ましい態様は、横引き配管および超音波振動子の少なくとも一方の温度を計測する温度計をさらに備えてなり、横引き配管および超音波振動子の少なくとも一方の温度が所定値以上の場合に超音波振動子を停止することを特徴とする。
【0017】
過負荷状態での超音波振動子の駆動を止めることにより、本発明の装置や横引き配管が過熱によって破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配管を効率良く洗浄する配管洗浄装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施形態1
図1は実施形態1の構成を示す概念図である。
本発明の配管洗浄装置の構成は検知部としてのセンサ3と、超音波振動子8と、超音波発振部9と、タイマー6と、制御部5と、によって構成されている。
制御部5は情報通信のため、センサ3と、超音波発振部9と、タイマー6に接続されている。また、超音波発振部9は超音波振動子8と接続されている。
電源はそれぞれの構成部材に供給されれば、如何なる形態でも良い。図1では省略しているが、本形態では、電源は制御部5へ供給され、制御部5からセンサ3と、超音波振動子8と、超音波発振部9と、タイマー6へ供給される。
また、図1には本発明の構成を理解し易くするため、構成要素ごとに分けて記載しているが、センサ3と、制御部5と、超音波発振部9が一つのケースに収容されていても良い。
【0020】
センサ3は、便器4に洗浄水を供給するための給水管から横引き配管7に至るまでの場所に設置する。好ましくは、便器4に洗浄水を供給するための給水管から便器4に至るまでの管路1に設置する。センサ3は便器4に洗浄水を供給するための給水管に設置された開閉弁2の開閉状態を検知するための手段である。本発明においては定性センサ、定量センサのいずれも利用できる。定性センサは、例えば、人体検知センサとしてのマイクロ波センサや赤外線センサ等がある。定量センサは、例えば、光の透過率、電気伝導度、水の運動エネルギー、静電容量等の計測器が挙げられる。定量センサにて検知された流量が所定値を超えた場合に、制御部5では開閉弁2が開状態であると判断される。
なお、人体検知センサおよび開閉弁の駆動装置を備えた公知の自動洗浄装置を本発明の検知部としても良い。その際、自動洗浄装置に具備している人体検知センサからの信号や開閉弁2の開閉操作に伴い発生する信号を利用する。
【0021】
超音波振動子8は交流電圧の印加により20kHz〜2MHz、好ましくは汚れの分解効率が高くなる200kHz〜2MHzの固有共振周波数の超音波を発生する圧電素子で形成される。超音波振動子8から発生した超音波によって、横引き配管7に付着した汚れを除去および付着の予防を行う。
【0022】
超音波振動子8の設置部位は、汚れが付着し易い横引き配管7の底部である。特に汚れが付着し易い、便器4と横引き配管7の結合部分の底部や横引き配管7を構成する配管同士の接合部分の底部に設置することが好ましい。
【0023】
超音波振動子8の形状は特に問わないが、好ましくは、円筒状の横引き配管7に対して超音波のエネルギーが最も効率的に与えられるよう円筒状の曲面に貼り付けることができるような柔軟性を持つ程度の厚みを有する圧電素子を用いる。
【0024】
タイマー6は開閉弁2の閉状態の継続時間や超音波振動子8の駆動時間を計測し、それらの時間を制御部5へ伝達するための部位である。なお、タイマー6は制御部5に組み込まれていても良い。
【0025】
超音波発振部9は制御部5から送信される超音波振動子8のON/OFF信号に基づいて、超音波振動子8に交流電圧を印加する。また、超音波発振部9は変調および変圧機構を備え、超音波振動子8に好適な交流電圧を印加する。
【0026】
制御部5はマイクロコンピュータにて構成されてなり、センサ3やタイマー6から受信した情報を基に超音波発振部9に超音波振動子8のON/OFF信号や、変調・変圧を指示する信号を送信することにより、超音波振動子の駆動を制御する。制御部5はセンサ3、超音波発振部9、タイマー6に接続されており、記憶されている動作プログラムに則って、それらと連動する。
【0027】
図2は実施形態1の制御部5の動作プログラムを例示するフローチャートである。
本配管洗浄装置設置時をフローチャート内のSTARTとする。まず、ステップ1では制御部5が開閉弁2の開閉状態をモニタリングし、開閉弁2が開状態になればステップ2へ移行する。ステップ2では制御部5がタイマー6の計測を開始させる。ステップ4ではセンサ3が開閉弁2の閉状態を検知し、開状態であれば「NO」となり、ステップ3へ進み、制御部5がタイマー6を初期化し、再度0から開閉弁2の閉状態の時間計測を開始させる。ステップ4でセンサ3が開閉弁2の閉状態を検知した場合「Yes」となり、ステップ5に進む。
【0028】
ステップ5では制御部5が、タイマー6によって計測された時間が所定時間経過したかどうか判断する。所定時間は使用頻度に応じて、0.1〜12時間の範囲内に設定する。使用頻度の高い、1日300人使用する便器でも超音波による洗浄が出来るよう、下限を0.1時間とする。また一方で、使用頻度の低い、1日1人しか使用しない便器では低頻度の洗浄で清潔状態を保つことが出来るため、上限を12時間とする。本例では2時間と設定した。
ステップ5でタイマー6が所定時間経過していない場合、すなわち便器4が最後に使用された時刻から2時間経過していない場合は「NO」となり、ステップ4へ戻る。ステップ5でタイマー6が所定時間経過した場合、すなわち便器4が最後に使用された時刻から2時間経過した場合は「Yes」となり、ステップ6へ進む。これにより、横引き配管7内に汚れが発生するタイミングでの超音波の照射を可能とした。すなわち横引き配管7が低水位である時に超音波の照射を可能とした。
【0029】
ステップ6では制御部5から送信されたON/OFF信号に基づいて、超音波発振部9が超音波振動子8の駆動を開始するために超音波振動子8に交流電圧を印加する。
ステップ7ではセンサ3が開閉弁2の閉状態を検知し、開閉弁2が開状態の場合は「NO」となり、ステップ9へ進み、超音波振動子8の駆動を停止する。開閉弁2が閉状態の場合は「Yes」となり、ステップ8へ進む。
制御部5は超音波振動子8の駆動中、センサ3から開閉弁2の開閉状態を受信する。開閉弁2が開状態になると、洗浄水が横引き配管7内に流れ、効率的な超音波振動子の駆動ができなくなるため、超音波振動子8の駆動を停止させるよう超音波発振部9に指示を行なう。
【0030】
ステップ8では超音波振動子8を長時間駆動させ続けることによる超音波振動子8や横引き配管7に損傷を軽減するために、制御部5が超音波振動子8の駆動が所定時間経過したかを判断する。ステップ8で超音波振動子8の駆動が所定時間に達していない場合は「NO」となり、ステップ5へ戻り超音波振動子の駆動を継続する。ステップ8で超音波振動子8の駆動が所定時間に達した場合は「Yes」となり、ステップ9に進み、超音波振動子8の駆動を停止する。超音波振動子8の駆動時間は任意に決めて良いが、好ましくは1〜30分とする。1分より短いと超音波の効果が少ないため下限を1分とする。また、30分以上だと配管や超音波を破損、故障させてしまうため上限を30分とする。本例では5分と設定している。
ステップ9で超音波振動子8の駆動を停止後はステップ10でタイマー6を初期化し、ENDに進み、再度STARTから開始する。
この一連の動作により、横引き配管7の洗浄を効率良く行なうことができる。
【0031】
実施形態2
図3は実施形態2の構成を示す概念図である。
本発明の実施形態2の構成は開閉弁制御部10が付加された点で実施形態1と異なり、その他の構成は実施形態1と同様である。開閉弁制御部10への電源は商用電源から制御部5へ供給され、制御部5から開閉弁制御部10へ供給される。
開閉弁制御部10は、制御部5から送られる信号に基づいて開閉弁2を開閉するための部位である。人体検知センサおよび開閉弁の駆動装置を備えた公知の自動洗浄装置を本発明の開閉弁制御部10に利用しても良い。その際は、制御部からの信号に基づいて駆動装置が作動するよう情報の送受信ができる構成にする。
【0032】
制御部5が超音波振動子の駆動停止後、制御部5が開閉弁制御部10に信号を送信し、開閉弁2を開状態とすることにより、洗浄水が流れる。洗浄水が流れることによって横引き配管7内の汚れが下流の排水管に流れる。これにより、横引き配管7内に残留した汚れの再固着を防止することが出来る。
【0033】
実施形態2の制御部5の動作は、図2のステップ9〜10の間に図4のステップ11を挿入したフローチャートで例示する。
ステップ9にて制御部5が超音波振動子の駆動を停止した後に、ステップ11に進む。ステップ11では、制御部5が開閉弁制御部10に一定時間開閉弁2を開状態とするよう指示を行なう。開閉弁が閉状態になった後にステップ10でタイマー6を初期化する。
この一連の動作により、汚れの再固着を防止することができる。他の動作は実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0034】
実施形態3
図5は実施形態3の構成を示す概念図である。
本発明の実施形態3の構成は超音波振動子8より発せられた超音波の共振周波数を計測する計測部11と、共振周波数の計測値を記憶する記憶部12とを備えている点で実施形態1と異なり、その他の構成については実施形態1と同一である。計測部11と、記憶部12は情報通信のため、制御部5に接続されている。電源についても実施形態1と同様であるが、本例では、電源は制御部5へ供給され、制御部5から計測部11と記憶部12に供給される。
計測部11は超音波発振部9が超音波振動子8に入力する電圧の時間的変動を計測するための部位である。たとえば、オシロスコープや交流電圧計などが利用できる。
【0035】
本実施形態における配管洗浄装置は、センサ3からの信号とタイマー6からの計測時間情報によって、制御部5が超音波のON/OFFタイミングを判断する。超音波発振部9は制御部5から送信されたON/OFF信号に基づいて、超音波振動子8に交流電圧を印加する。超音波振動子8の駆動に伴って、計測部11が共振周波数を計測する。計測部11が計測した共振周波数の値と記憶部12が記憶した共振周波数との差分によって制御部5が超音波の継続または停止を判断し、横引き配管7内に付着した汚れの除去および予防を効率良く行なう。
【0036】
実施形態3の制御部5の動作は、図2のステップ6〜7の間に図6のステップ12〜15を挿入したフローチャートで例示する。
ステップ6では制御部5が超音波発振部9に超音波振動子8の駆動を開始するよう指示を行なう。ステップ12では制御部5が計測部11に共振周波数f1を計測させる。ステップ13では制御部5がf1とf0との差分の絶対値が所定値aより小さいと判断した場合はステップ15へ進み、超音波振動子の駆動を停止するよう超音波発振部9へ指示を行なう。また、ステップ13で制御部5がf1とf0の差分の絶対値が所定値a以上と判断した場合はステップ14へ進み、超音波振動子8の駆動を継続させる。
なお、f0は、本装置を設置時、すなわち装置の初動時の、横引き配管7に汚れが存在しない状態で計測した共振周波数の値であり、記憶部12に記憶されている。また、所定値aは横引き配管7内に汚れの存在を判断する閾値であり、記憶部12に記憶されている。横引き配管7は勾配があり、配管が汚れていない場合は水がほとんど存在しないため、水の有無を汚れの有無とみなす。所定値aは横引き配管7の材質、厚み、および径に応じて適宜決定される。
【0037】
制御部5が計測部11と記憶部12から受信する共振周波数を用いて、横引き配管7内を洗浄する前に、横引き配管7が汚れているかどうかを判断し、汚れていると判断した場合は超音波振動子8を駆動するよう超音波発振部9に指示を行ない、汚れていないと判断した場合は超音波振動子8の駆動を停止するよう超音波発振部9に指示を行なう。この一連の動作により、超音波による配管の洗浄が横引き配管7への損傷軽減、必要以上に超音波振動子を駆動することがなく、横引き配管7の洗浄を効率良く行なうことができる。その他の動作は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
実施形態4
図5は、実施形態4の構成を示す概念図である。
本発明の実施形態4の構成は実施形態3と同様であるが、計測部11が計測した共振周波数の値と記憶部12が記憶していた値との差分に応じて、超音波振動子8の音波強度を制御する点で実施形態3とは異なる。
【0039】
実施形態4の制御部5の動作は、図2のステップ6〜7の間に図7のステップ16〜19を挿入したフローチャートで例示する。
ステップ6では制御部5が超音波振動子8の駆動を開始させる。ステップ17ではステップ16で算出した共振周波数f1と予め記憶している共振周波数所定値f0との差分の絶対値が、所定値bより小さい場合はステップ19に進んで超音波振動子の駆動を継続し、し、所定値b以上の場合はステップ18に進んで超音波の音波強度を強くして駆動を継続する。なお、所定値bは汚れの多寡や汚れが固体か液体かを判断する閾値であり、記憶部12に記憶されている。所定値bは横引き配管7の材質、厚み、および径等に応じて適宜決定される。
【0040】
制御部5は計測部11から受信する共振周波数を用いて、横引き配管7内を洗浄する前に、共振周波数のズレの大きさによって、横引き配管7の汚れが固体か液体かを判断し、汚れが固体の場合は超音波の音波強度を強くして駆動を行なう。この一連の動作により、超音波による横引き配管7の洗浄時に汚れの多寡や種類によって超音波の音波強度を変化させて照射するため、洗浄を効率良く行なうことができる。他の動作は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
実施形態5
実施形態5は図3に記載の装置に図5の計測部11と記憶部12をさらに付加して構成される。計測部11が計測した共振周波数の値と記憶部12によって記憶された共振周波数の値に基づいて、制御部5は、超音波振動子の駆動停止後、開閉弁制御部10に信号を送信し、開閉弁2を一定時間、開状態とする。これにより洗浄水が流れるので、剥離した汚れの再固着を防ぐことが可能となる。
【0042】
実施形態5の制御部5の動作は、図2のステップ6〜10の部分を図8のステップ20〜30で置換したフローチャートで例示する。
フローチャート内のf2は超音波振動子の駆動終了直前に計測した共振周波数を示す。
ステップ5で制御部5がタイマー6から取得した時間が所定時間経過したと判断した場合、ステップ20に進み、超音波振動子8の駆動を開始させる。ステップ21では計測部11に共振周波数f1を計測させる。ステップ22では制御部5がf1とf0の差分の絶対値が、記憶部12が記憶していた所定値a以上と判断した場合はステップ23に進み超音波振動子8の駆動を継続させる。また、f1とf0の差分の絶対値が所定値aより小さい場合はステップ30に進み、超音波振動子8の駆動を停止させる。ステップ24では開閉弁2が閉状態の場合は「Yes」となり、ステップ25へ進む。また、開閉弁2が開状態の場合は「NO」となり、ステップ30に進む。ステップ25では超音波振動子8の駆動が所定時間に達していない場合「NO」となり、ステップ23へ戻り超音波振動子の駆動を継続する。また、超音波振動子8の駆動が所定時間に達した場合は「Yes」となり、ステップ26へ進み、計測部11に共振周波数f2を計測させる。ステップ27では計測したf1からf2を引いた値が正であった場合にステップ28へ進む。また、負であった場合にはステップ30に進む。ステップ28では超音波振動子8の駆動を停止し、ステップ29に進み、開閉弁2を一定時間開状態にさせる。
【0043】
超音波振動子を駆動した直後の共振周波数f1から超音波振動子の駆動を停止する直前の共振周波数f2を差し引いた値が正であれば、超音波照射によって付着した汚れの除去や分解がなされたとみなすことができる。このような状態を放置すれば汚れが再固着する可能性がある。しかし、上記の一連の動作にて洗浄水を流すことにより、汚れの再固着の防止を効率良く行うことができる。その他の制御部5の動作は実施形態1と同様であるため説明を省略する。
なお、超音波振動子を駆動した直後とは、共振周波数を精度良く計測するため、共振周波数の計測値が一定になった後の状態を示す。共振周波数の計測値が一定になるまでの時間は、超音波振動子のサイズ、形状、材質に応じて変化するが、超音波振動子の駆動を開始してから、大体数秒から数十秒である。
また、超音波振動子の駆動を停止する直前は、超音波振動子の駆動が安定しており、共振周波数を精度良く計測可能な状態である。そのため、超音波振動子の駆動を停止する直前の共振周波数f2を計測するための時間は、少なくとも、出力した1波長分の計測時間以上であれば良く、好ましくは2×10−7〜1秒である。
【0044】
実施形態6
図9は実施形態6の構成を示す概念図である。
本発明の実施形態6の装置は、実施形態1の装置に温度計13を付加してなり、温度情報を制御部5に送信するために、制御部5と接続されている。その他の構成は実施形態と同一である。
配管洗浄装置は超音波振動子8の振動によって、横引き配管内7に付着した汚れの除去や付着予防をする際に、横引き配管7、超音波振動子8の少なくとも一方の温度を計測する。温度計13が所定温度以上の温度を計測した時に、制御部5は超音波発振部9へOFF信号を送信し、横引き配管7への損傷軽減、超音波振動子8の故障予防の少なくとも一方を達成する。
【0045】
温度計13は横引き配管7、超音波振動子8の少なくとも一方の温度計測を行い、それらの温度情報を制御部5へ伝達するための部位であり、横引き配管7、超音波振動子8の少なくとも一方に接触するように設置されている。本例では、温度計13は横引き配管7に接して設置されている。温度検知の手段としては、熱電対、サーミスタ、水銀やアルコールの熱膨張による温度計測、いずれの手段を用いても良い。
【0046】
ここで、所定温度とは、横引き配管7や超音波振動子8の耐熱温度に基づいて予め設定した値であり、記憶部12に記憶される。横引き配管7がポリ塩化ビニル樹脂製の場合は値を50〜80℃程度に設定する。また温度計13を超音波振動子8に設置する場合は60〜90℃程度に設定する。
【0047】
実施形態6の制御部5の動作は、図10のステップ31を図2のをステップ7と8の間に挿入したフローチャートで例示する。
ステップ31では制御部5が温度計13で計測された温度が所定温度以下かどうかを判断する。所定温度以上の場合は「NO」となり、ステップ9へ進み、超音波振動子8の駆動を停止させる。また、所定温度以下の場合は「Yes」となりステップ8に進み、超音波振動子の駆動を継続する。
すなわち、横引き配管7、超音波振動子8の少なくとも一方の温度が高い場合は急激な温度上昇による横引き配管7への損傷軽減、超音波振動子8の故障予防の少なくとも一方を行なうため、すぐに超音波振動子8の駆動を停止させるよう制御部5は超音波発振部9に指示を行なう。
【0048】
この一連の動作により、超音波による配管の洗浄が横引き配管7への損傷軽減、超音波振動子8の故障予防の少なくとも一方を行いつつ、横引き配管7の洗浄を効率良く行なうことができる。その他の動作は実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0049】
実施形態1〜6の構成と制御方法は自由に組み合わせても良い。たとえば、実施形態1と、3と、6との組み合わせた場合、すなわち図5の構成に温度計を付加した場合に、共振周波数計測と、横引き配管と超音波振動子の少なくとも一方の温度計測と、超音波による洗浄とを並列処理することが可能となる。これにより、過熱を防止しつつ、横引き配管内が清潔になった時点で超音波振動子の駆動を停止することが出来る。これにより、洗浄をより効率良く行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1に係る配管洗浄装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る配管洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態2に係る配管洗浄装置の構成を示す概念図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る配管洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態3に係る配管洗浄装置の構成を示す概念図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る配管洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態4に係る配管洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態5に係る配管洗浄装置の構成を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態6に係る配管洗浄装置の動作を示す概念図である。
【図10】本発明の実施形態6に係る配管洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1:管路
2:開閉弁
3:センサ
4:便器
5:制御部
6:タイマー
7:横引き配管
8:超音波振動子
9:超音波発振部
10:開閉弁制御部
11:計測部
12:記憶部
13:温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に洗浄水を供給するための給水管に設置された開閉弁の開閉状態を検知する検知部と、
前記便器下流の横引き配管の底部に設置される超音波振動子と、
前記超音波振動子を駆動する超音波発振部と、
前記超音波振動子の駆動を制御する制御部と、
タイマーとを有し、
前記開閉弁の閉止を検知して所定時間経過後に、前記超音波振動子を所定時間駆動し、
前記開閉弁が開状態であるときは前記超音波振動子の駆動を停止する、
配管洗浄装置。
【請求項2】
前記開閉弁の開閉を制御する開閉弁制御部を備え、
前記超音波振動子の駆動を停止した後に、前記開閉弁を開放する、
請求項1に記載の配管洗浄装置。
【請求項3】
前記超音波振動子より発せられた超音波の共振周波数を計測する計測部と、前記共振周波数の計測値を記憶する記憶部とを備える、
請求項1または2に記載の配管洗浄装置。
【請求項4】
前記計測部が計測した共振周波数の値と、前記記憶部に記憶された初動時の共振周波数との差分が所定値よりも小さい時は、前記超音波振動子の駆動を停止する、
請求項3に記載の配管洗浄装置。
【請求項5】
前記計測部が計測した共振周波数の値と、前記記憶部に記憶された初動時の共振周波数との差分が所定値よりも大きい時は、
前記超音波振動子の振動を強める、
請求項3または4に記載の配管洗浄装置。
【請求項6】
超音波振動子を駆動した直後の共振周波数から超音波振動子の駆動を停止する直前の共振周波数を差し引いた値が正である場合、前記超音波振動子の駆動を停止した後に、前記開閉弁を開く、
請求項3〜5のいずれか一項に記載の配管洗浄装置。
【請求項7】
前記横引き配管および前記超音波振動子の少なくとも一方の温度を計測する温度計を備え、
前記横引き配管および前記超音波振動子の少なくとも一方の温度が所定値以上の場合に前記超音波振動子を停止する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の配管洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−114720(P2009−114720A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288193(P2007−288193)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】