説明

配管用管材及び排水管システム

【課題】建築物での火災発生時に火災発生階より上層階へ火炎、煤煙、有毒ガス等の流出通路とはならないようにした排水管システムを、低コストで構築できるようにする。
【解決手段】建築物の床スラブ3へ貫通設置する不燃性の継ぎ手用管材4とこの継ぎ手用管材4へ接続する配管ライン5とにより構築する排水管システム2で、配管ライン5における長手方向の一部又は全部に、両端部を管接続部17として不燃材料によって形成された管本体18を有し且つこの管本体18の内周面に所定の温度で膨張する熱膨張性耐火材20を有した配管用管材1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管システムを構築するうえで好適に使用できる配管用管材及びこの配管用管材を用いた排水管システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどの建築物では、その最下階から最上階にわたって各階を貫く状態で排水管システムが設けられている(例えば、特許文献1等参照)。この種の排水管システムは、各階を仕切る床スラブに対し、排水集合管やストレート管継ぎ手などの継ぎ手用管材を貫通状態に配置し、これら複数階の床スラブ相互間で継ぎ手用管材同士を、ストレート管などを用いた配管ラインで接続するという排水配管構造になっている。
排水集合管、排水用特殊管継手等の継ぎ手用管材として、鋳鉄などを素材とする金属製のものや硬質塩化ビニル管の外面を耐火モルタル被覆した耐火二層構造製などのものがあることは周知である。また配管ラインに用いるストレート管等についても、鋳鉄管や鋼管等の金属製のもの、或いは硬質塩化ビニルなどを素材とする樹脂管、更には樹脂管をセラミックや(耐火)モルタルなどで被覆した耐火二層管などがあることは周知である。
【特許文献1】特開平10−195947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
排水管システムが備え付けられた建築物において、階下にて火災等が発生した場合に火炎や煤煙、有毒ガスが排水管システムを通じて上層階へ流出するのを防止するには、従来、排水管システム全体に耐火性を持たせる必要があると考えられていた。
しかし、排水管システム全体に耐火性を持たせようとすれば、継ぎ手用管材だけでなく配管ラインの全てを金属製などの不燃材料製のものとする必要があり、高コストになるということがあった。
また継ぎ手用管材が、床スラブ上に配管される横枝管との接続を可能にした排水集合管である場合において、この排水集合管から所定距離(例えば区画貫通部から1m)内の横枝管に対し、不燃処理を施さなければならないといった規定(例えば消防法)が適用されると、該当する横枝管には耐火二層管や金属管が必要とされ、この点でも高コストの問題が生じていた。言うまでもなく、横枝管として耐火二層管や金属管を用いた場合、施工が面倒となるといった問題も生じていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、建築物での火災発生時に火災発生階より上層階へ火炎、煤煙、有毒ガス等の流出通路とはならないようにした排水管システムを構築できるようにする配管用管材及びこの配管用管材を用いた排水管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る配管用管材は、不燃材料によって形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿った状態で、所定温度で膨張する熱膨張性耐火材が設けられたものである。
詳しくは、建築物の床スラブへ貫通設置する不燃性の継ぎ手用管材へ接続する配管用管材であって、不燃材料によって形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿った状態で、所定温度で膨張する熱膨張性耐火材が設けられたものである。
【0006】
管本体において、その管形体はストレート管状である場合をはじめ、短管や曲がり管状(エルボ状やベンド状等を含む)である場合など、特にその長さや形体が限定されるものではない。場合によっては、ストレート管状形態の中途部分へ点検孔を設ける場合や通常のストレート管同士を直結する場合等に用いる継ぎ手部材状形態として実施してもよい。
管本体に設けられる管接続部は受口でもよいし挿口でもよい。
また管本体は、形成素材の面でも鋳鉄管である場合をはじめ、塩ビライニング鋼管や耐火二層管である場合など、要は不燃性(所定温度で溶損も焼損もしない特性)を具備するものであればよい。
【0007】
なお、熱膨張性耐火材は管本体の内周面に露出させる状態(排水流に接触するような状態)で設けてもよいし、管本体内の排水流の流路空間に対して可燃性又は熱可塑性の素材を隔てた状態(排水流と接触しないように覆われた状態)で設けてもよい。また熱膨張耐火材は、管本体における長手方向の一部に設けるだけで十分であるが、全長にわたって設けてもよい。
ここで「熱膨張性耐火材」とは、その体積や形状的な特性として、所定温度以下では所定形状を維持し、管本体の内周面に露出状態で設ける場合でも排水の流れを阻害しない形状とされたものであって、火災時などに所定の温度を超えたときには膨張して、管本体においてこの熱膨張性耐火材が設けられた箇所の内部、又はそこから近い継ぎ手用管材内へと膨出しその内部を閉塞(充満)させるものを言う。また一旦、所定の膨張を起こした後は、その後の加熱で溶損及び焼損をしないものである。
【0008】
またここで「所定の温度」とは、特定の材質の熱膨張性耐火材が有する固有の熱膨張を起こす温度のことであり、熱膨張性耐火材の材質によって個々に異なる。例えば200℃等とすればよいが、具体的にどの温度で熱膨張を起こす熱膨張性耐火材を選択するかは、排水集合管等の継ぎ手用管材や熱膨張性耐火材を具備しない他の配管用管材の材質や、建物の耐火設計の考え方等により定まってくるものである。
このような熱膨張性耐火材を有する構成の配管用管材を採用して排水管システムを構築すれば、建築物で火災等が発生した場合にあっても、火災熱によって熱膨張性耐火材が所定の温度を超えて加熱された時点で当該熱膨張性耐火材が膨張し、管本体内を閉塞させることができる。
【0009】
従って、この管本体に溶損及び焼損をしない不燃性のものが使用され、床スラブを貫設する継ぎ手用管材にも不燃性のものが使用されることから、熱膨張性耐火材が設けられた位置の上方に設けられた継ぎ手用管材の内部を介することを原因として、火災発生階より上の床スラブ上(上層階)へ火炎、煤煙、有毒ガスなどが流出するといったことは防止される。
また、熱膨張性耐火材が設けられた位置の上方に設けられた継ぎ手用管材が排水集合管や排水用特殊管継手であって、この継ぎ手用管材に横枝管が接続されている場合に、この横枝管内を通じて火炎、煤煙、有毒ガスなどが床スラブ上へ流出するといったことも防止される。
【0010】
これらのことから、熱膨張性耐火材を有する構成の配管用管材とその直上の床スラブへ貫設する継ぎ手用管材に不燃性材料で製作されたものを使用することで、熱膨張性耐火材を有する構成の配管用管材とその直下の床スラブへ貫設する継ぎ手用管材との間に用いる配管用管材(立管や横枝管など)に、不燃性材料で製作されたものを採用しなくてもよい。そして、この場合排水管システム全体としての低コスト化を図ることができる。
また、横枝管のすべてに硬質塩化ビニル樹脂管等の可燃性管材を採用することもでき、この場合高コストの問題を解消できるだけでなく、施工性の向上や工期の短縮の面で有益となる。
【0011】
管本体の少なくとも一方の管接続部は、接続相手の管端部を外嵌する受口として形成することができる。
受口のタイプとしてはワンタッチ挿入タイプ(受口内部に装着するリングパッキンへ接続相手の管端を圧入させるタイプ)でもよいし、メカニカルタイプ(受口まわりにフランジが設けられており、このフランジにパッキンを介して押し輪を押し付けることによりパッキンの径方向内方への膨張で接続相手の管端部外面を押圧するタイプ)でもよい。
管本体の内部に、内周面を径方向外方に窪ませた状態で耐火材収納部を設けて、この耐火材収納部に熱膨張性耐火材を収納させるようにすればよい。
【0012】
このような耐火材収納部を設けることで、この耐火材収納部へ収納する熱膨張性耐火材はその内周面を管本体の内周面と面一又はほぼ面一に揃った状態にすることができる。そのため熱膨張性耐火材が排水流の抵抗となるのを防止できる。また耐火材収納部は、熱膨張性耐火材の位置決めや位置ズレ防止にも好適となる。
ここにおいて熱膨張性耐火材の内周面を「管本体の内周面と面一又はほぼ面一に揃った状態」とは、管本体内を流れる排水流や固形物、空気流等に対して熱膨張性耐火材が著しい流れ抵抗とならない程度の寸法範囲を言う。耐火材収納部は、このような状態に熱膨張性耐火材を収納できる形状になっているということである。
【0013】
なお、管本体の少なくとも一方の管接続部に受口を形成させる場合、この受口に隣接又は近接する状態で耐火材収納部を設けることもできる。このように耐火材収納部と受口とを隣接又は近接させることで、耐火材収納部及び受口を形成させるために管本体の一部外径を拡大させる領域を集中させることができ、その結果、管本体としての構造が簡潔となり、製造コストの低コスト化が図れる。
耐火材収納部と受口とを隣接又は近接させる場合において、耐火材収納部と受口との境部に対し、径方向内方へ突出して受口へ嵌め込まれる接続相手の管端を当て止めする(要するに管荷重を支持する状態になる)管止め部を設けるのが好適となる。
【0014】
このような管止め部を設けると、耐火材収納部へ収納した熱膨張性耐火材に対して接続相手の管荷重が直接的に負荷されるのを防止できる。そのため、熱膨張性耐火材の潰れ変形を防止できると共に、接続相手の管端挿入長さを所定に保持できることに伴って確実な配管ができる利点に繋がる。また、受口に隣接又は近接する位置に熱膨張性耐火材を設けることに代えて又はこれに加えて、受口内の奥側に熱膨張性耐火材を設けることもできる。
熱膨張性耐火材は、管本体の内周面と同径又はほぼ同径の中央孔を形成するリング壁を有した保護部材に対し、上記リング壁の外周面を取り囲む状態で設けることができる。なお、リング壁は、熱可塑性及び耐水性、又は可燃性及び耐水性を備えた素材により形成されることが好ましい。
【0015】
ここにおいてリング壁の中央孔が「管本体の内周面と同径又はほぼ同径」であるとは、管本体内を流れる排水流や固形物、空気流等に対してリング壁が著しい流れ抵抗とならない程度の寸法範囲を言う。
このような保護部材を採用することで、熱膨張性耐火材としての保形性が良好となり、市場での流通面や管本体への収納作業面などで取り扱いが便利となる。また管本体内へ収納した状態で使用する際に、リング壁により、熱膨張性耐火材を排水流から非接触の状態に保持させることができるので、清潔性を保てると共に排水流との接触に伴う摩耗や発傷の防止が図れる。
【0016】
更に、保護部材は、配管ライン中を清掃する際に使用する器具(掻き具や詰まり解消具等)によって熱膨張性耐火材が傷つけられることがないようにする作用を奏し、高温の排水が流されるような環境下では、熱膨張耐火材が誤った膨張作用を起こすのを防止する作用をも奏することになる。
このような保護部材は、リング壁のみによって形成されたものとすることができる。このようにすることで、低コスト化や軽量化を図ることができる。
また保護部材は、リング壁だけでなく、このリング壁から所定距離離れた外周側に設けられる外包部を有する円環状のケースを形成したものとすることもできる。この場合、リング壁と外包部との周間を満たすように熱膨張性耐火材を装填するものとする。
【0017】
保護部材として、上記のようなケースを形成させると、熱膨張性耐火材としての保形性が一層良好となるので、市場での流通面や管本体への収納作業面などでの取り扱いも更に便利となる。また、清潔性を保つ作用についても一層良好なものとすることができる。
管本体は金属製とすることができる。
また、管本体は、樹脂製の内装管とこの内装管の外周面を被覆するモルタル等の耐火被覆層とを有する耐火二層構造のものとすることができる。この場合、内装管の内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態で熱膨張性耐火材を設けてもよい。
【0018】
この場合、内装管が溶損乃至燃焼することで熱膨張性耐火材が膨張することになり、耐火被覆層がこの熱膨張性耐火材の外周面側をバックアップして膨張作用を径方向内方へ向かわせることになる。
熱膨張性耐火材の外周面は上記した耐火被覆層によって覆うようにしてもよいが、耐火性を有する他の素材(例えば金属)で形成したバックアップ部により、熱膨張性耐火材の外周面を覆うようにしてもよい。
本発明に係る排水管システムは、建築物の床スラブへ貫通設置する不燃性の継ぎ手用管材とこの継ぎ手用管材へ接続する配管ラインとにより構築する排水管システムで上記配管ラインにおける長手方向の一部又は全部に、本発明に係る配管用管材が設けられたものとして構成される。なお、配管用管材が設けられる配管ラインは、複数階の床スラブ相互間で継ぎ手用管材同士を接続する立主管とするのが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る配管用管材及びこの配管用管材を用いた排水管システムであれば、建築物での火災発生時に火災発生階より上層階へ火炎、煤煙、有毒ガス等の流出通路とはならないようにした排水管システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図2乃至図5は、本発明に係る配管用管材1の第1実施形態を示したものであり、図1はこの第1実施形態の配管用管材1を採用して構築した排水管システム2を示している。
この排水管システム2は、集合住宅やビルなどの建築物に備え付けられるもので、建築物の各階層ごとに設けられた床スラブ3に対して貫設する継ぎ手用管材4と、この継ぎ手用管材4へ接続する配管ライン5とにより構築される。
【0021】
継ぎ手用管材4は、建築物の床スラブ3に上下貫通して設けられた貫通孔6に対して貫通状態とされ、この継ぎ手用管材4の外周部と貫通孔6の内周面との間にモルタル7等の不燃性材料が詰められ、継ぎ手用管材4と貫通孔6との間に不燃性材料が介在された状態で、継ぎ手用管材4は床スラブ3に固定される。また、継ぎ手用管材4は不燃材料(例えば鋳鉄等の金属)を素材として形成されており、火災時等において所定温度環境下に所定時間曝されても、溶損も焼損もしない。
継ぎ手用管材4は例えば排水集合管や排水用特殊管継手であって、継ぎ手用管本体10には、立て管からの排水と横枝管からの排水が合流する継ぎ手用管本体10部分すなわち横枝管14からの排水が流入する継ぎ手用管本体10部分に配管用管材1の内径より大きな内径を有する膨大部を有し、継ぎ手用管本体10の上部側に上部管接続部11が設けられていると共に継ぎ手用管本体10の下部側に下部管接続部12が設けられ、また継ぎ手用管本体10の膨大部側部には横向き又は屈曲して上向きに突出する横管接続部13が設けられている。この横管接続部13は床スラブ3の上部に位置付けられた状態で横枝管14が接続されるようになっており、この横枝管14により、各階に設置された便器等の排水設備から排水を集めるように配管される。継ぎ手用管材4は、不燃材料製であり、例えば鋳鉄管、塩ビライニング鋼管、耐火二層管など、要は所定温度で溶損も焼損もしない材料で形成されている。また、継ぎ手用管材4は、床スラブ3へ上下貫通するにあたり、少なくとも上部管接続部11及び横管接続部13は床スラブ3より上階層空間に突出し、少なくとも下部管接続部12は床スラブ3より下階層空間に突出する状態で貫通している。さらに、前記膨大部内には排水流への旋回力を付与するための管軸に対して傾斜する傾斜板もしくは傾斜突起を設けることができる。これら傾斜板または傾斜突起を設ける場合、管周方向1箇所もしくは複数個所に設け、又は管軸方向位置を変えて2段にわたって設けることができる。
【0022】
なお、建築物の各階で横枝管14は1本とは限らず、複数本配管される場合には継ぎ手用管材4として、横管接続部13が管軸方向同位置において周方向に複数設けられたもの(二方タイプ、三方タイプ又は四方タイプ等)、及び管軸方向に位置をずらして2段に横管接続部13が設けられたものを選択することになる。
本発明においては、配管ライン(配管路)5における長手方向の一部又は全部として配管用管材1が用いられる。配管ライン5は継ぎ手用管材4高さ部分を除く1階層高さを1本配管で行える長さを有するストレート管(直管)形状の配管用管部材1で構成される場合もあり、その他、短管形状や曲がり管(エルボやベンド等を含む)形状などの配管用管部材1と通常のストレート管を適宜組み合わせて接続したりすることで構成される場合もある。場合によっては、継ぎ手部材(ストレート管の中間へ点検孔を設ける場合の点検孔を具備した継ぎ手部材やストレート管同士を直結する場合の短管形状の継ぎ手部材等)形状をなし通常のストレート管と組み合わせて構成されることもある。
【0023】
すなわち配管用管材1は、ストレート管状、短管状、曲がり管状、継ぎ手部材状などの形状として実施される。
本発明は、通気立て管と排水立て管と並設した二管式排水管システムに適用することもできるが、好ましくは単管式排水システムに適用するのがよく、実施例の図面は単管式排水システムを前提とした図示になっている。
単管式排水システムにおいては配管ライン5の頂上部には建築物屋上へと繋がる伸頂通気管を接続することが通例であり、配管ライン5の最下部ではベンドを介して床下配管または地下埋設の横主管を接続することが多い。上記のように継ぎ手用管材4の横管接続部13に横枝管14が接続される場合、この横枝管14も配管ライン5に含めることができる。
【0024】
図3に示すように、本第1実施形態の配管用管材1は、ストレート管形状をなし、1階層分を区切る上下の床スラブ3相互間で継ぎ手用管材4同士を接続する長さを有している。もちろんこの配管用管材1の長さは適用する場所により適宜調整できる。この配管用管材1は、両端部を管接続部17として不燃材料によって形成された管本体18を有している。そして、この管本体18の内周面に所定の温度で膨張する熱膨張性耐火材20が設けられている。
管本体18が不燃材料製であることについては、例えば鋳鉄管、塩ビライニング鋼管、耐火二層管など、要は所定温度で溶損も焼損もしない材料で形成された管であればよいということである。
【0025】
図1で例示した継ぎ手用管材4は、上部管接続部11が受口で下部管接続部12が挿口とされているので、本第1実施形態の配管用管材1において、一方の管接続部17は継ぎ手用管材4の上部管接続部11と接続可能な挿口17Aとして形成され、他方の管接続部17は継ぎ手用管材4の下部管接続部12と接続可能な受口17Bとして形成されている。
この受口17Bはワンタッチ挿入タイプ(図2に示す様に受口17Bの内部にリングパッキン19を装着してこのリングパッキン19へ接続相手の管端を圧入させるタイプ)である。この受口17Bとして形成された方の管接続部17に近接して熱膨張性耐火材20が設けられている。
【0026】
なお、挿口17Aは管本体18の一部であって互いに一体化されており、多くの場合は挿口17Aと管本体18の受口17Bを除く管部分とは内外径共に同径であるために、配管用管材1の外見上からは両者を明確に区別できないこともある。殊に、配管施工現場にて管本体18を現場に応じた長さに切断することで、その切り口部分に挿口17Aを形成させるという場合も少なくない。このようなことから、挿口17Aとは、この配管用管材1と継ぎ手用管材4との接続時に、配管用管材1が継ぎ手用管材4の上部管接続部(受口)11に嵌め込まれる管本体18部分を指す。
【0027】
熱膨張性耐火材20は、例えば黒鉛を含有させたブチルゴムやウレタンゴム等によって形成されたもので、火災時などに所定の温度(例えば200℃)を超えると膨張し、膨張後の体積が膨張前に比べて5〜40倍に達するといった特性を有している。例えば、積水化学工業株式会社の商品名「フィブロック」を使用することができる。また、この他に、因幡電機産業株式会社製の商品名「熱膨張性耐熱シール材IP」(120℃から膨張を開始し、体積が4倍以上に膨張する)、ニチアス株式会社製の商品名「パーモフレックス(熱膨張性シート)」(850℃、30分加熱後に発泡して4倍以上に膨張する)、および株式会社古河テクノマテリアル製の商品名「ヒートメル」(膨張開始温度120℃、顕著な膨張温度260℃、4〜8倍に膨張する)等を、熱膨張耐火材20として使用することができる。なお、熱膨張性耐火材20は、上記したものに限られず、他の種々のものを使用することができる。
【0028】
このように、熱膨張性耐火材20は、反応温度、膨張率の異なる多種多様のものを使用でき、したがって建築物内の施工場所に応じて要求される反応温度、管径等の諸条件を満たす最適なものを選択して使用できる。
図4及び図5に示すように、配管用管材1において、管本体18の内部にはその内周面を径方向外方へ窪ませるようにして成る耐火材収納部21が設けられ、この耐火材収納部21に熱膨張性耐火材20が収納されている。
この耐火材収納部21は受口17Bに対して挿口17A方向奥側に隣接又は近接する状態で設けられている。また、これら耐火材収納部21と受口17Bとの境部となる位置付けで、径方向内方へ突出する管止め部22が設けられている。
【0029】
この管止め部22は管本体18に対し、鋳造、削りだし、別体リングの溶接等、適宜採用した方法により一体的に設けられている。なお、後述の図22の本第7実施形態や図23の第8実施形態などのような樹脂製内装管の場合は、管止め部は樹脂製内装管に段部や突起部として一体的に樹脂成形されるのが好適である。
また、この管止め部22は管本体18の内周全周にわたり連続して突出するようになっており、内フランジの形体を呈している。なお、内周全周にわたる連続突出とすることが限定されるものではなく、周方向の1箇所だけ又は複数箇所で径方向内方へ突出させたものとしてもよい。
【0030】
耐火材収納部21を設けることで、この耐火材収納部21へ収納する熱膨張性耐火材20はその内周面を管本体18の内周面と面一又はほぼ面一に揃わせる状態にできる。このようにすることで熱膨張性耐火材20が排水流の抵抗となるのを防止できる。また耐火材収納部21は、熱膨張性耐火材20の位置決めや位置ズレ防止にも好適となる。
耐火材収納部21の容積、すなわち、この耐火材収納部21へ収納する熱膨張性耐火材20の形状や体積は、熱膨張を起こす前の状態で排水流の抵抗とならないことを前提にして設定されるが、加えて、熱膨張性耐火材20が熱膨張を起こしたときには配管用管材1の管本体18内を確実に閉塞できるようにすることを予定して設定されている。
【0031】
耐火材収納部21と受口17Bとを隣接又は近接させる構造は、これら耐火材収納部21及び受口17Bを形成させるために管本体18の一部外径を拡大させる領域を集中させることができ、その結果、管本体18としての構造が簡潔となり、製造コストの低コスト化が図れることになる。
耐火材収納部21と受口17Bとの境部に管止め部22を設けることで、図2に示すように、接続相手の管端として受口17Bへ嵌め込まれる継ぎ手用管材4の下部管接続部12は、この管止め部22に当て止めされる状態(管荷重が支持される状態)となる。すなわち、継ぎ手用管材4の下部管接続部12が管止め部22を超えて耐火材収納部21へと嵌め込まれるようなことはない。
【0032】
結果として、耐火材収納部21へ収納した熱膨張性耐火材20に対して継ぎ手用管材4の荷重が直接的に負荷されることがなく、熱膨張性耐火材20の潰れ変形を防止できることになる。また同時に、受口17Bに対して継ぎ手用管材4の下部管接続部12が挿入される長さを所定に保持できるため、確実な配管ができるといった利点も得られる。
受口17Bには、継ぎ手用管材4の下部管接続部12との嵌合状態に水密性(漏水防止作用)を保持させるためにリングパッキン19を装填するが、このリングパッキン19が位置ズレや変形を起こさないようにするうえでも、管止め部22は有益となる。
【0033】
熱膨張性耐火材20は、所定の温度以下にあるときに適度な弾性を生じる素材(例えばリングパッキン19に用いるような素材)と混練一体化した材料で、リング状乃至筒状に成形したものを準備しておき、これを弾性変形によって径方向内方へ折り縮めるようにして耐火材収納部21内へ嵌め入れ、その後に耐火材収納部21内で元形状に復元させれば簡単に収納できる。
なお、熱膨張性耐火材20を設けるための上記方法は一例であって限定されるものではなく、例えば熱膨張性耐火材20の元になる軟質素材を耐火材収納部21内へ流し込んだ後に加硫工程を行い、耐火材収納部21内で熱膨張性耐火材20が一体固着化したような状態にさせる方法等も有効である。
【0034】
このような本発明に係る配管用管材1を具備した排水管システム2であれば、集合住宅やビルなどの建築物で火災等が発生し、何らかの原因で下層階の継ぎ手用管材4や配管ライン5内を通じて火炎、煤煙、有毒ガス等が立ち昇ることがあったとしても、熱膨張性耐火材20の設けられた位置では、この熱膨張性耐火材20が所定温度(例えば200℃)を超えた時点で膨張して配管用管材1の管本体18内を閉塞することになる。そのため、この熱膨張性耐火材20が設けられた位置より上層階へは通路が遮断され、火炎、煤煙、有毒ガス等が立ち昇ることは防止される。
【0035】
また、継ぎ手用管材4は不燃性であるために溶損も焼損もしないから、結果として、床スラブ3に形成された貫通孔6は、この継ぎ手用管材4及びモルタル7等を充填した不燃性材料によって閉塞状態が維持される。
このようなことから排水管システム2の溶損乃至焼損が原因になって火災発生階より上層階へ火炎、煤煙、有毒ガスなどが流出するといったことは防止されるのである。また、床スラブ3上で起きた火災に対し、床スラブ3の下方から新鮮な空気を吸い上げるのを防止できるから、火災の拡大を最小限に抑制できるという効果もある。
【0036】
また、継ぎ手用管材4の横管接続部13に接続された横枝管14に対しても火炎が及ばないため、この横枝管14としては、継ぎ手用管材(排水集合管)4から所定距離(例えば半径1m)内であっても、わざわざ不燃処理を施す必要がなくなる。すなわち、横枝管14に耐火二層管や金属管を採用する必要がなく、硬質塩化ビニル製の樹脂管等の可燃性の管を使用することができるので、この点でも高コスト化の問題を解消でき、施工性の向上や工期の短縮の面でも有益となる。
また、熱膨張性耐火材20を設ける位置は、配管用管材1の管本体18内周面に沿った状態であればよく、管本体18における管軸方向位置は、管本体18の全長わたり設ける場合を含めて、特に限定するものではない。
[第2実施形態]
図6及び図7は、本発明に係る配管用管材1の第2実施形態を示している。本第2実施形態の配管用管材1では、耐火材収納部21と受口17Bとの境部に設けられる管止め部22が別体形成されており、耐火材収納部21と受口17Bとの境部に形成される段差部23に係合状態とされる以外、管本体18とは何ら固定されない構造となっている。
【0037】
この点を除けば、その他の構成、細部構造、材質、作用効果等に関しては上記第1実施形態と略同様である。
なお、このように管止め部22を管本体18と別体のままとし且つ固定しない構造にする場合、図8乃至図10に示すように、熱膨張性耐火材20は保護部材24を具備したものとして構成することができる。
この保護部材24は、管本体18の内周面と同径又はほぼ同径の中央孔26を形成するリング壁27を有したものであって、熱膨張性耐火材20は、このリング壁27の外周面を取り囲む状態で設けられる。
【0038】
図例の保護部材24は、リング壁27だけでなく、このリング壁27の外周側に所定間隔をおいて設けられる外包部28をも有し、且つリング壁27と外包部28とは管径方向に延びる壁により連結されており、これにより全体として円環状の中空ケース(容器)25を形成するようになっている。熱膨張性耐火材20は、リング壁27と外包部28との周間を満たすようにして装填されている。
このケース25において、少なくともリング壁27は熱可塑性及び耐水性、又は可燃性及び耐水性を備えた素材(例えば硬質塩化ビニル等の樹脂材)により形成されている。これにより、火災時等、所定温度環境下では溶損乃至焼損して内部の熱膨張性耐火材20に熱が伝わるようになっており、またこの所定温度に達するまでは、熱膨張性耐火材20を排水流から防水して乾燥した清潔な状態に保持できるようになっている。
【0039】
このケース25は、例えば図10に示したように一方の円環状端面をリング蓋29として別部材化させておき、熱膨張性耐火材20の装填後にこのリング蓋29を接着させるような構造とさせればよい。なお、リング蓋29を別部材化させる構造の他、リング壁27や外包部28を別部材化させるような構造でもよい。
このようなケース25を採用することで、熱膨張性耐火材20としての保形性が良好となり、市場での流通面や管本体18(耐火材収納部21)への収納作業面などで取り扱いが便利となる。
【0040】
また管本体18内へ収納した状態で使用する際に、熱膨張性耐火材20を排水流から非接触の状態に保持させることができ、清潔性を保てると共に排水流との接触に伴う摩耗や発傷の防止が図れる。更に、配管ライン5中を清掃する際に使用する器具(掻き具や詰まり解消具等)によって熱膨張性耐火材20が傷つけられることがないようにできる。
ケース25は、図11に示すように、リング壁27と両側の円環状端面25a,25bとを一体化させて断面コ字状とさせたものを形成しておき(形成素材は可熱可塑性及び耐水性、又は可燃性及び耐水性を備えたものとする)、これのコ字状内部へ熱膨張性耐火材20を装填した後、外周側へ、薄い板状又はフィルム状をした樹脂、樹脂含浸紙、金属等より成る外包部28を巻き付け、固着させるようにして形成することもできる。
【0041】
ケース25は、図12に示すように、外包部28や好ましくは少なくとも一方の円環状端面25bを板金プレス成型品として形成させると共に、リング壁27と他方の円環状端面25aは熱可塑性及び耐水性、又は可燃性及び耐水性を備えた素材で形成させるような構造として形成することもできる。
このような構造のケース25であれば、外包部28が軸方向圧縮力に耐える構造となるので、この外包部28により、接続相手の管端として受口17Bへ嵌め込まれる継ぎ手用管材4の下部管接続部12を支持できることになる。すなわち、この外包部28は管止め部22としての作用を兼用できることになり、管止め部22を省略することができるので、管本体18の構造簡潔化及び低コスト化といった利点に繋がる。
【0042】
図12に示したように、ケース25としての一方の円環状端面25bを外包部28と一体で板金プレス成形品とさせる場合であれば、この円環状端面25bが、継ぎ手用管材4の下部管継ぎ手部12を当て止めする状態に使用するのがよい。
[第3実施形態]
図16は、本発明に係る配管用管材1の第3実施形態を示したものであり、図13乃至図15はこの第3実施形態の配管用管材1を採用して構築した種々の排水管システム2を示している。
【0043】
本第3実施形態の配管用管材1は管本体18が短く、取り扱いが非常に容易となる程度までコンパクトに形成されたものであって、この点を除けば、その他の構成、細部構造、材質、作用効果等に関しては上記第1実施形態と略同様である。
このような構成の配管用管材1であれば、1階層分を区切る上下の床スラブ3相互間で継ぎ手用管材4同士を配管用管材1の単管(1本)だけを介して接続するのではなくて、図13に示すように、上層階側の継ぎ手用管材4に対して接続するものとし、この配管用管材1と下層階側の継ぎ手用管材4との上下間を通常のストレート管30で接続させるようにできる。
【0044】
このストレート管30には、鋳鉄管や塩ビライニング鋼管、或いは耐火二層管などの不燃材料によって形成された管を用いてもよい。また、この配管用管材1が上層階側の継ぎ手用管材4又は配管ライン5からの脱落を防止する措置をとることで、ストレート管30として可燃管である樹脂管を用いることも可能になる。この場合、排水管システム2として大幅な低コスト化が可能となる。
図14に示すように、配管用管材1を下層階側の継ぎ手用管材4に接続し、この配管用管材1と上層階側の継ぎ手用管材4との上下間を通常の不燃材料製ストレート管31で接続させることも可能である。
【0045】
図15に示すように、本第3実施形態のような短いタイプの配管用管材1と、上記した第1実施形態のような長いタイプの配管用管材1とを組み合わせて、これらで1階層分を区切る上下の床スラブ3相互間の継ぎ手用管材4同士を接続する(即ち、上下複数箇所に熱膨張性耐火材20を設ける構造にする)ことも可能である。
図17は本第3実施形態の一部を改良させた一例である。その改良点は、管本体18の受口17B内の挿口17A方向の奥側に熱膨張性耐火材20を収納している点であり、熱膨張性耐火材20が保護部材24を具備しており且つこの保護部材24がケース25を形成しているもの(図8乃至図12参照)を採用したところである。管本体18の外形状は、熱膨張性耐火材20を収納する部分を受口17Bの外径と同じ外径に揃えてあり、受口17B部だけを大径部とするストレート管状とすることにより一層の簡潔化を図ってある。
【0046】
なお、この改良形態で示される熱膨張性耐火材20の受口奥側への収納形態は、第3図の本第1実施形態や図16の本第3実施形態で示される受口17Bに隣接又は近接して設けられる熱膨張性耐火材20と併存させることも可能である。
また図27及び図28は、上記実施例と同様に管本体18の受口17B内の挿口17A方向の奥側に熱膨張性耐火材20を収納しており、熱膨張性耐火材20の具備する保護部材24が、ケース25を形成していないでリング壁27のみによって形成された実施形態を示している。なお、管本体18に関しては図17に示したものと同様に外形状を簡潔化させたものを採用した例としてある。
【0047】
この保護部材24はリング壁27のみによって形成されており、熱膨張性耐火材20は、このリング壁27の外周面を取り囲む状態で設けられている。このような保護部材24(即ち、リング壁27そのもの)は、一般に市場で流通している塩化ビニル製等の樹脂パイプを所定長さに切断するだけで形成できるものである。このようなことから、この保護部材24を具備した熱膨張性耐火材20全体(熱膨張性耐火材20として市場を流通する状態)として、低コスト化で軽量化したものを提供できるものである。
なお、図27及び図28に示した熱膨張性耐火材20に対し、その内外周面や上部側及び下部側の環状端面の一部もしくは全部へ、フィルム材や塗装膜、コーティング膜などによる防水処理を施しておくようにしてもよい。
[第4実施形態]
図18は、本発明に係る配管用管材1の第4実施形態を採用して構築した排水管システム2を示している。
【0048】
本第4実施形態の配管用管材1では、管本体18において、受口17Bとされる方の管接続部17からある程度離れた箇所(管本体18の長手方向中途部)に耐火材収納部21が設けられ、この耐火材収納部21に熱膨張性耐火材20が収納されている。この点を除けば、その他の構成、細部構造、材質、作用効果等に関しては上記第1実施形態と略同様である。
[第5実施形態]
図19は、本発明に係る配管用管材1の第5実施形態を採用して構築した排水管システム2を示している。
【0049】
本第5実施形態の配管用管材1では、管本体18において、両側の管接続部17が共に挿口17Aとして形成されており、そのうえで、一方の挿口17A(図19の上側)から離れすぎない範囲であって且つある程度離れた箇所(管本体18の長手方向中途部)に耐火材収納部21が設けられ、この耐火材収納部21に熱膨張性耐火材20が収納されている。
このような配管用管材1は、継ぎ手用管材4として下部管接続部12がメカニカルタイプの受口(受口まわりにフランジ35が設けられてこのフランジ35にパッキン36を介して押し輪37を押し付けることによりパッキン36の径方向内方への膨張で接続相手の管端外面を押圧するタイプ)とされている場合に、好適に採用可能となる。
[第6実施形態]
図21は、本発明に係る配管用管材1の第6実施形態を示したものであり、図20はこの第6実施形態の配管用管材1を採用して構築した排水管システム2を示している。
【0050】
本第6実施形態の配管用管材1は、ストレート管の中間へ点検孔を設ける場合やストレート管同士を直結する場合等に用いる継ぎ手部材形状として実施したもので、両側の管接続部17が共にメカニカルタイプの受口(受口まわりにフランジ40が設けられてこのフランジ40にパッキン41を介して押し輪42を押し付けることによりパッキン41の径方向内方への膨張で接続相手の管端外面を押圧するタイプ)17Cとされている。そして、両側の管接続部17間の中途部分の直管部の管内周面に設けられた窪み部分に熱膨張性耐火材20が収納されている。
[第7実施形態]
図22は、本発明に係る配管用管材1の第7実施形態を示している。本第7実施形態の配管用管材1は、管本体18が、可燃性管である樹脂製の内装管45と、この内装管45の外周面を被覆するモルタル等の耐火被覆層46とを有する耐火二層構造のものとして実施されている。
【0051】
熱膨張性耐火材20は、受口17Bに対して奥側に隣接又は近接する位置において、内装管45の一部分において内装管45の内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態で耐火被覆層46より内側に設けられている。図22図示では、耐熱膨張性耐火材20は内装管45の外周面に直接接触する状態で設けられているが、本発明の「内装管45の内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態」とは、上記のように内装管45の外周面に直接接触する以外に、(1)熱膨張時に熱膨張性耐火材20が変形可能な別の層(例えば、接着樹脂層、劣化防止膜層など)を介して間接的に内装管45外周面に接触する場合、(2)内装管45の外周面と熱膨張性耐火材20の間に隙間空間がある状態で熱膨張性耐火材2を設ける場合、及び(3)内装管(樹脂管)の肉厚中途部に熱膨張性耐火材20を介在させて三層状態にする場合を含んだ意味であり、熱膨張前の常温時には、熱膨張性耐火材20は内装管45の内壁面により管内排水と隔てられ、火災発生時には、熱膨張した熱膨張性耐火材20により溶損乃至燃焼した内装管45を管内方などに押しやると共に、排水流路空間を閉塞するのに十分な膨張しろを確保し得る位置であればよい。
また、熱膨張性耐火材20を設ける管軸方向位置は、内装管45内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態であれば、内装管45又は配管用管材1の管本体部分の全長にわたり設ける場合を含めて、特に限定するものではない。
【0052】
このような配管用管材1を製造するには、裸管状態の内装管45に対し、その長手方向の所定箇所となる外周面に熱膨張性耐火材20を巻き付け、その後、この熱膨張性耐火材20の外周面をも含めて内装管45のまわりへ耐火被覆層46を形成させるための素材を被覆形成させるようにする。
耐火被覆層46として、その形成素材が硬化した時点で、結果としてこの耐火被覆層46の内周面に熱膨張性耐火材20を収納するための耐火材収納部21が形成されていることになる。
【0053】
この配管用管材1を採用して構築した排水管システムでは、内装管45が溶損乃至燃焼することで熱膨張性耐火材20が膨張することになり、このとき耐火被覆層46がこの熱膨張性耐火材20の外周面をバックアップすることになって、熱膨張性耐火材20の膨張作用を径方向内方へ向かわせることになる。これにより、耐火被覆層46により形成される管内が熱膨張性耐火材20によって閉塞される。また、熱膨張前の常温時には、熱膨張性耐火材20は、内装管45の内壁により管内排水流と隔てられ、これと接触することがないので、その腐食や劣化が防止される。
【0054】
なお、図例では、熱膨張性耐火材20の設けられる側の管接続部17が受口17Bとして形成されたものを示しているが、挿口として形成することも可能である。また、図例では受口17Bにパッキングを介し挿口と接続する構造になっているが、変形例として、パッキング構造を取らずに接着構造による受口、挿口接合構造とすることもできる。
さらに変形例として、受口17Bの管軸方向長さを長くして、パッキング設置位置より奥側の受口17B部分において、内装管45の内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態で且つ耐火被覆層46又はこれとは別のバックアップ材より内側に、耐熱膨張性耐火材20を設けてもよい。また、上記耐火二層管は、内装管として可燃性の樹脂管が使用されるが、耐火被覆層46により被覆され、全体として耐火構造となっているので、本発明の不燃性材料によって形成された管本体を構成する一種である。
[第8実施形態]
図23は、本発明に係る配管用管材1の第8実施形態を示している。本第8実施形態の配管用管材1も、管本体18が、樹脂製の内装管45と、この内装管45の外周面を被覆するモルタル等の耐火被覆層46とを有する耐火二層構造のものとして実施されている。
【0055】
そして、受口17Bに対して奥側に隣接又は近接する状態で内装管45の内周面を径方向外方へ窪ませるようにして耐火材収納部21が設けられ、この耐火性収納部21に熱膨張性耐火材20が収納されている。
本第8実施形態が上記した第7実施形態(図22参照)と異なるところは、熱膨張性耐火材20が、内装管45の内周面に接触する状態で設けられている点である。このため、熱膨張性耐火材20は、少なくとも管内排水流に接触する内周面、または全周面にフィルム材や塗装膜、コーティング膜などによる防水処理を施しておくことが好適となる。
【0056】
その他の構成、細部構造、材質、作用効果等に関しては上記第7実施形態と略同様である。
また、変形例として、図17で示した第3実施形態の改良形態と同様に、内装管45の受口17Bの形成部分を管軸方向に延ばし、受口17Bの奥側に熱膨張性耐火材20を収納するようにしてもよい。この場合、図17の形態と同様に、熱膨張性耐火材20を保護部材で保護することが好適である。また、受口17B奥側に熱膨張性耐火材20を収納する場合、受口17Bに対して隣接又は近接する状態で設けた熱膨張性耐火材20は省略することもできるし、併存することもできる。
[第9実施形態]
図24は、本発明に係る配管用管材1の第9実施形態を示している。本第9実施形態の配管用管材1も、管本体18が、樹脂製の内装管45と、この内装管45の外周面を被覆するモルタル等の耐火被覆層46とを有する耐火二層構造のものとして実施されている。
【0057】
熱膨張性耐火材20は、受口17Bに対して奥側に隣接又は近接する位置において、内装管45の一部分において内装管45外周面に接触する状態で設けられている。
本第9実施形態では、耐火被覆層46における長手方向の一部が全周的に剥離され、内装管45の外周面が露出する状態とされたうえで、この内装管45の露出した外周面に対して熱膨張性耐火材20が巻き付けられるようになっている。そして、この熱膨張性耐火材20の外周面が、耐火性を有する他の素材(例えば金属)で形成したバックアップ部50によって全周的に覆われている。
【0058】
バックアップ材50は、例えば図25に示すように、耐火被覆層46を外嵌可能な締め付けバンド状のものとして、その周方向の一箇所をボルト51とナット52とで締め付ける構造にすることができる。また、バックアップ材の内周面に突起を形成することで、バックアップ材が配管用管材から脱落しないようにすることが可能である。
バックアップ材50は、図26に示すように、ボルト51とナット52とで締め付ける部分とは丁度、半周分をおいた反対側にヒンジ部53を設けて、開閉が容易となる工夫をしてもよい。また図示は省略するが、ヒンジ部53を設けるのではなく、この部分をも分離させておいてボルト51とナット52とで締め付けるような、所謂、二つ割りのバンド構造にすることも可能である。
【0059】
また、本第9実施形態についても、前記本第7実施形態や本第8実施形態で説明したような変形例形態を適用することが可能である。
[その他]
本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば熱膨張性耐火材20は、配管用管材1の周方向で一周させるものとはさせず、周方向で点在するような状態で設けてもよい。また熱膨張性耐火材20は管軸方向及び管径方向に所定厚みを有した円環状にする場合の他、外形状が多角形状に形成されたものにしてもよい。これに応じて、管本体18の耐火材収納部21も、多角形状の開口形状を有したものとすることができる。熱膨張性耐火材20は、配管用管材1に対してその長手方向全長にわたって設けるようにしてもよい。
【0060】
図29及び図30に示すように、配管用管材1は、横枝管14として使用することもできる。
図29は、継ぎ手用管材4として採用される排水集合管において、横管接続部13が挿口とされている場合であって、第1実施形態(図3参照)や、第2実施形態(図16、図17、図27等参照)、或いは第4実施形態(図18参照)として説明した配管用管材1を使用している。
図30は、継ぎ手用管材4として採用される排水集合管において、横管接続部13が受口とされている場合であって第5実施形態(図19参照)として説明した配管用管材1を使用している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態の配管用管材(図3)を採用して構築した排水管システムを示した側面図である。
【図2】図1のA部を拡大し且つ断面を示した図である。
【図3】本発明に係る配管用管材の第1実施形態を示した側面図である。
【図4】第1実施形態の配管用管材について熱膨張性耐火材の収納状態を示した側断面図である。
【図5】第1実施形態の配管用管材について熱膨張性耐火材を収納させる状況を説明した側断面図である。
【図6】本発明に係る配管用管材の第2実施形態について熱膨張性耐火材の収納状態を示した側断面図である。
【図7】第2実施形態の配管用管材について熱膨張性耐火材を収納させる状況を説明した側断面図である。
【図8】熱膨張性耐火材がケースに装填された実施形態を示した平面断面図である。
【図9】熱膨張性耐火材がケースに装填された実施形態を示した側断面図である。
【図10】熱膨張性耐火材がケースに装填された実施形態を示した一部破砕斜視図である。
【図11】ケースの第2例を示した一部破砕斜視図である。
【図12】ケースの第3例を示した一部破砕斜視図である。
【図13】第3実施形態の配管用管材(図16)を採用して構築した排水管システムの第1例を示した側面図である。
【図14】第3実施形態の配管用管材(図16)を採用して構築した排水管システムの第2例を示した側面図である。
【図15】第3実施形態の配管用管材(図16)を採用して構築した排水管システムの第3例を示した側面図である。
【図16】本発明に係る配管用管材の第3実施形態を示した側面図である。
【図17】本発明に係る配管用管材の第3実施形態につきその一部を改良させた実施形態を示した側面図である。
【図18】本発明に係る配管用管材の第4実施形態の配管用管材を採用して構築した排水管システムを示した側面図である。
【図19】本発明に係る配管用管材の第5実施形態の配管用管材を採用して構築した排水管システムを示した側面図である。
【図20】第6実施形態の配管用管材(図21)を採用して構築した排水管システムを示した側面図である。
【図21】本発明に係る配管用管材の第6実施形態を示した側面図である。
【図22】本発明に係る配管用管材の第7実施形態についてその主要部を一部破砕して示した側面図である。
【図23】本発明に係る配管用管材の第8実施形態についてその主要部を一部破砕して示した側面図である。
【図24】本発明に係る配管用管材の第9実施形態についてその主要部を一部破砕して示した側面図である。
【図25】第9実施形態で使用するバックアップ部の第1例を示した斜視図である。
【図26】第9実施形態で使用するバックアップ部の第2例を示した斜視図である。
【図27】図28に示した保護部材が具備された熱膨張耐火材を図17に示した管本体に使用した例を示した側断面図である。
【図28】熱膨張性耐火材が具備する保護部材としてケースを形成しない例を示した一部破砕斜視図である。
【図29】第1、第2、第4実施形態として説明した配管用管材を横枝管に使用した状況を示した側面図である。
【図30】第5実施形態として説明した配管用管材を横枝管に使用した状況を示した側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 配管用管材
2 排水管システム
3 床スラブ
4 継ぎ手用管材
5 配管ライン
17 管接続部
17B 受口(ワンタッチ挿入タイプ)
17A 挿口
17C 受口(メカニカルタイプ)
18 管本体
20 熱膨張性耐火材
21 耐火材収納部
22 管止め部
24 保護部材
25 ケース
26 中央孔
27 リング壁
28 外包部
45 内装管
46 耐火被覆層
50 バックアップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃材料によって形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿った状態で、所定温度で膨張する熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする配管用管材。
【請求項2】
建築物の床スラブへ貫通設置する不燃性の継ぎ手用管材へ接続する配管用管材であって、不燃材料によって形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿った状態で、所定温度で膨張する熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする配管用管材。
【請求項3】
前記管本体の少なくとも一方の管接続部は接続相手の管端部を外嵌する受口として形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の配管用管材。
【請求項4】
前記管本体の内部には内周面を窪ませる状態で耐火材収納部が設けられ、この耐火材収納部に熱膨張性耐火材が収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管用管材。
【請求項5】
前記管本体の少なくとも一方の管接続部は接続相手の管端部を外嵌する受口として形成されており、この受口に隣接又は近接する状態で且つ前記管本体の内周面を径方向外方に窪ませた状態で耐火材収納部が設けられ、この耐火材収納部に熱膨張性耐火材が収納されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管用管材。
【請求項6】
前記管本体には、耐火材収納部と受口との境部で径方向内方へ突出して、受口へ嵌め込まれる接続相手の管端を当て止めする管止め部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の配管用管材。
【請求項7】
前記管本体の少なくとも一方の管接続部は接続相手の管端部を外嵌する受口として形成されており、この受口内の奥側に熱膨張性耐火材が収納されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管用管材。
【請求項8】
前記熱膨張性耐火材は、管本体の内周面と同径又はほぼ同径の中央孔を形成させるリング壁を有した保護部材に対し上記リング壁の外周面を取り囲む状態で設けられており、上記リング壁が熱可塑性及び耐水性、又は可燃性及び耐水性を備えた素材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の配管用管材。
【請求項9】
前記保護部材は、前記リング壁のみによって形成されていることを特徴とする請求項8記載の配管用管材。
【請求項10】
前記保護部材は、前記リング壁と、このリング壁から所定距離離れた外周側に設けられる外包部とを有する円環状のケースを形成しており、上記リング壁と外包部との周間を満たすように熱膨張性耐火材が装填されていることを特徴とする請求項8記載の配管用管材。
【請求項11】
前記管本体は金属製であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の配管用管材。
【請求項12】
前記管本体は樹脂製の内装管とこの内装管の外周面を被覆する耐火被覆層とを有する耐火二層構造となっていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の配管用管材。
【請求項13】
前記管本体は樹脂製の内装管とこの内装管の外周面を被覆する耐火被覆層とを有する耐火二層構造になっており、内装管の内壁面より耐火被覆層側に間隔を隔てて位置する状態で前記熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の配管用管材。
【請求項14】
前記熱膨張性耐火材の外周面側を覆う状態で耐火性のバックアップ部が設けられていることを特徴とする請求項13記載の配管用管材。
【請求項15】
建築物の床スラブへ貫通設置された不燃性の継ぎ手用管材とこの継ぎ手用管材へ接続された配管ラインとにより構築された排水管システムであって、
前記配管ラインとして配管用管材が用いられており、
この配管用管材は、不燃材料によって形成された管本体を有し、所定温度で膨張する熱膨張性耐火材がこの管本体の内周に沿って設けられている
ことを特徴とする排水管システム。
【請求項16】
前記継ぎ手用管材は、管本体の下部側に下部接続部が設けられており、
前記配管用管材は、前記継ぎ手用管材の下部接続部に接続されている
ことを特徴とする請求項15記載の排水管システム。
【請求項17】
前記継ぎ手用管材は、管本体の側部に横管接続部が設けられており、
横管接続部には可燃性管で構成される横枝管が接続されている
請求項15又は請求項16に記載の排水管システム。
【請求項18】
前記配管用管材は、前記継ぎ手用管材の管端部を外嵌する受口を有し、
前記受口に隣接又は近接して熱膨張性耐火材が設けられている
請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載の排水管システム。
【請求項19】
前記配管用管材は、前記継ぎ手用管材の管端部を外嵌する受口を有し、
前記受口内の奥側に熱膨張性耐火材が収納されていることを特徴とする
請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載の排水管システム。
【請求項20】
前記横枝管は、前記横管接続部の接続端から少なくとも1mの範囲内において不燃性材料による被覆がなされていない
請求項17に記載の排水管システム。
【請求項21】
前記可燃性管は樹脂製管である請求項17又は請求項18記載の排水管システム。
【請求項22】
前記継ぎ手用管材と前記床スラブの貫通孔との間に不燃性材料が介在されている
請求項15乃至請求項21のいずれか1項記載の排水管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−106936(P2008−106936A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249355(P2007−249355)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】