説明

配管用絶縁継手

【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低温の流体に用いられる配管に係り、特に電気的な絶縁をするための絶縁継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、液体ヘリウム等の低温流体により冷却される超電導材料が様々な分野で研究,利用されている。例えば、核融合実験装置においてもプラズマを閉じ込めるための強磁場を発生するため、超電導コイルを用いることが将来必要不可欠であると言われている。このような超電導コイルでは、超電導導体を液体ヘリウムにより強制または浸漬冷却するが、例えば強制冷却方式の場合、液体ヘリウム供給装置および供給配管は、大地電位であるために配管の何れかの位置で超電導コイルと電気絶縁を施す必要がある。この絶縁をするのが絶縁継手であり、超電導コイルに近接した位置に設置した方が、それ以降の液体ヘリウム供給装置までの配管に電位がかからず電気絶縁が不用となるため、作業と保守が容易となる。
【0003】図2および図3は、このような絶縁継手の従来例の断面図を示す。図2に示す絶縁継手は、例えばFRP製の絶縁管1をステンレス製のフランジ2により挟み込み、シール面にインジウム等のシール材3を挿入し、絶縁ボルト4により締付けシールした構成である。この絶縁ボルト4には、さらに全体の寸法を所定に保持するための支持材としての役割がある。また、図3に示す絶縁継手は、例えばFRP製の絶縁管5と接続管6とを特殊な樹脂等により接着し、これをステンレス製のフランジ2により挟み込み、シール面にインジウム等のシール材3を挿入し、絶縁ボルト7で締付けシールした構成である。この絶縁ボルト7にも、上記した絶縁ボルト4と同様に全体の寸法を所定に保持する役割がある。なお、図2および図3に示す絶縁継手は、何れもフランジ2に外部配管を溶接で接合する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる構成の絶縁継手においては、絶縁管1,5とフランジ2または接続管6との間のシール性または接合面の信頼性が低く、特に極低温の流体を流した場合、各部材間の熱膨張率の差および配管の熱変形によってシール部に微小なギャップを生じたり、また、接合部に過大な応力が作用してクラックを生じリークに至るという問題があった。一方、超電導コイル近傍には、真空容器,種々の配線,配管、他の超電導コイルなど多種多様な機器,装置が据付けられているため、低温流体用配管が超電導コイルにアクセスできるスペースが限られていることが多いが、絶縁継手の直径が大きいため超電導コイル近傍に設置できないこともあった。この場合、大地電位より高い電位を保持している配管を、絶縁継手が設置できる位置まで引き出してくる必要があるため、安全性に問題があるだけでなく、配管に絶縁材を巻き付けるというような作業,このための費用の追加という経済性の問題があった。さらに、絶縁継手の設置場所では、取付スペースが限られている場合が多く、一度組立てた後はたとえリーク等が発生しても容易に分解,保守が行えないため、その信頼性の向上は必須課題であった。
【0005】本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは主体部をなす絶縁管と接続管とのシール性や接合部の信頼性を向上し、かつ、コンパクトとして設置場所のスペースを縮小した配管用絶縁継手を提供することにある。
[発明の構成]
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の配管用絶縁継手は、セラミックスから形成された絶縁管の両端にそれぞれ接続管をろう付け接合した継手主体部と、この継手主体部の軸方向一側に接合され外部配管を接続可能とした筒状をなす第1の支持部材と、前記継手主体部の軸方向他側にベローズを介して接合され外部配管を接続可能とした筒状をなす第2の支持部材と、この第2の支持部材と前記第1の支持部材をそれぞれの外周部を介して接続固定する管状の絶縁支持部材とから構成したことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】継手主体部がろう付けにより接合されているので、その接合部の信頼性が向上する。また、継手主体部の軸方向一側にベローズを介して第2の支持部材を接合するので、構成部材の温度変化に起因する力が接合部に作用することがないので、クラックやリークの発生を抑えることができる。さらに、絶縁継手全体を管状の絶縁支持体で接続固定しているので、コンパクトで外形を小さくし設置スペースを縮小することができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例の構成を示す断面図である。図1において、絶縁管10は、セラミックスで製作され、軸方向両側に外径を小さくした突出部10a,10aを設けている。この絶縁管10には、軸方向一側に接続管11が配置され、軸方向他側に接続管12が配置される。接続管11は、例えばコバールのようにセラミックスとの熱膨張率の差が小さい材料で製作され、軸方向一側に設けた凹部11aに絶縁管10の突出部10aを挿入し、ろう付けで絶縁管10と接合する。この接続管11の他側には凹部11bが設けられ、この凹部11bに配管13を挿入し、溶接等で接合する。接続管12は、接続管11と同様に例えばコバールのようにセラミックスとの熱膨張率の差が小さい材料で製作され、軸方向一側に設けた凹部12aに絶縁管10の突出部10aを挿入し、ろう付けで絶縁管10と接合する。この接続管12の軸方向他側には、ベローズ14の軸方向一側がろう付けで接合される。ベローズ14の軸方向他側は、配管15のフランジ15aに接合する。配管15および13の軸方向外側には、支持管取付座16,16が配置される。この支持管取付座16は、中心に配管15または13の内径とほぼ同径の孔を設けた円筒状をなし、軸方向一側には配管13または15を挿入する凹部16a、軸方向他側に外部配管18または19を挿入する凹部16bを設け、外周にはねじ16cを設けており、外部配管18,19とは溶接で接合するようにする。絶縁支持管17は、FRPで製作され、軸方向中間部には、使用時に流通する流体により絶縁支持管17の内外に大きな温度が生じるのを防ぎ、また、絶縁継手を組立てる際に工具等が挿入できる開口部17aを設け、軸方向両側の端部内周には支持管取付座16のねじ16cにねじ込むねじ17bを設けている。組立てる場合には、絶縁管10の両側に接続管11,12をろう付けし、接続管11と配管13を接合し、配管13と一側の支持管取付座16を接合し、接続管12と配管15は中間にベローズ14を接合し、配管15と他側の支持管取付座16を接合することにより、内部側の絶縁管10,接続管11および12,配管13および15,ベローズ14を一体に接続する。この一体に接続したものに絶縁支持管17を軸方向一側より支持管取付座16のねじ16cにねじ込みながら挿入し、全体を一体に接続固定する。
【0009】以上のように構成された実施例は、絶縁部を実績のあるセラミックスの絶縁管10と接続管11,12をろう付で形成したことにり、接合面の信頼性が従来に比べ大幅に向上する。セラミックスの絶縁管10を接合する接続管11および12は、コバールで製作したものを使用するので、両部材間の熱膨張率の差が小さく、温度変化に対しても接合部の信頼性の高いものが得られる。また、絶縁継手を構成する絶縁管10,接続管11および12,配管13および15の熱変形は、中間に接合されているベローズ14により吸収することができ、上記セラミックスの絶縁管10と接続管11および12接合部に無理な力が作用することもなく、その信頼性をさらに向上することができる。
【0010】また、内部を通る流体は、例えば10気圧のような高圧のものであるため、ベローズ14がその内圧により伸びてしまう恐れがあるが、FRPを用いた絶縁支持管17により絶縁継手両端間を接続固定しているので、この伸びを抑え全体の寸法を固定し規定することができる。
【0011】したがって、上記した実施例によれば、絶縁部接合面の信頼性が増し、また、配管等の温度変化に起因する力が接合部に作用することができなくなるため、クラックやリークの発生を抑えることができる。さらに、全体の支持固定を絶縁支持管を介して行っているため、外形寸法が小さくなり、コンパクトな絶縁継手とすることができる。
【0012】なお、上記した実施例では、支持管取付座16と絶縁支持管17をねじ接続としたが、この代りに接着材により接着接合するか、または絶縁支持管17の外周側からねじを支持管取付座16にねじ込んで固定するようにしてもよい。また、配管13,15を省き、接続管11を支持管取付座16に溶接で接合すると共にベローズ14を支持管取付座16にろう付けで接合するようにしてもよい。さらに、上記実施例では絶縁支持管17を用いて外形寸法が小さくなるようにしているが、設置場所にスペースの余裕がある場合には、上記した従来例と同じように絶縁ボルトを用いたり、他の形状の絶縁部材による支持固定構造としてもよい。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、絶縁部を従来から実績のあるセラミックスよりなる絶縁管のろう付けとし、この絶縁管に接続される接続管や配管等の中間にベローズを介挿し、軸方向両端を管状絶縁部材で接続固定するようにしているので、絶縁部の接合面の信頼性やシール性を向上し、かつ、コンパクトとし設置スペースの縮小を実現できる絶縁継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す断面図。
【図2】従来の絶縁継手の構成例を示す断面図。
【図3】従来の絶縁継手の図2と異なる構成例を示す断面図。
【符号の説明】
10…絶縁管、11,12…接続管、13,15…配管、14…ベローズ、16…支持管取付座、17…絶縁支持管、18,19…外部配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックスから形成された絶縁管の両端にそれぞれ接続管をろう付け接合した継手主体部と、この継手主体部の軸方向一側に接合され外部配管を接続可能とした筒状をなす第1の支持部材と、前記継手主体部の軸方向他側にベローズを介して接合され外部配管を接続可能とした筒状をなす第2の支持部材と、この第2の支持部材と前記第1の支持部材をそれぞれの外周部を介して接続固定する管状の絶縁支持部材とから構成したことを特徴とする配管用絶縁継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3373533号(P3373533)
【登録日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【発行日】平成15年2月4日(2003.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−101121
【出願日】平成3年5月7日(1991.5.7)
【公開番号】特開平4−332411
【公開日】平成4年11月19日(1992.11.19)
【審査請求日】平成10年2月19日(1998.2.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)