説明

配管移動量測定装置

【課題】コンパクトな配管移動量測定装置を提供する。
【解決手段】配管移動量測定装置1は固定装置2、ケガキ針6及び記録板保持台10を備え、固定装置2は本体13及びクランプ装置3を有する。配管14に取り付けられるクランプ装置3は本体13に設置される。ケガキ針6は軸方向に移動可能に本体13に取り付けられる。ケガキ針6の先端が、記録板保持台10に取り付けられた記録板11の上面に接触する。一対のケガキ針9A,9Bが、先端が互いに向き合うように、本体13の下面に取り付けられる。ケガキ針9A,9Bの各先端は、ケガキ針6の側面に接触している。熱膨張により配管14が移動したとき、配管14の水平面内での移動の軌跡はケガキ針6によって記録板11に描かれ、配管14の上下方向の移動量はケガキ針9A,9Bによってケガキ針6の側面に描かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管移動量測定装置に係り、特に、原子力プラントに適用するのに好適な配管移動量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの配管系は、必要な箇所でハンガー及び架台等の支持装置により支持されている。しかしながら、原子炉プラントの運転中に、配管内部に高温流体(蒸気または高温水)が流れるので、配管が熱膨張して変位する。原子力プラントの配管系は、運転中における配管の熱膨張を許容し、地震時における配管拘束機能を効果的に発揮できるように、支持装置を設置している。
【0003】
支持装置の配置の妥当性を検証するために、原子力プラントの運転中において、配管の熱膨張による移動量を確認する必要がある。特に、配管系が三次元形状で複雑な場合には、熱膨張による配管系全体の移動挙動を把握することが必要になる。
【0004】
配管の移動量を測定する案が、特開昭60−100008号公報及び特開昭62−28608号公報に記載されている。特開昭60−100008号公報は、配管の移動軌跡をケガキ針及びケガキ板により記録することを記載している。特開昭62−28608号公報に記載された配管移動量測定装置は、配管付近に並行に水平板及び垂直板を設け、配管に設けた2本の触針の先端をそれぞれの板に接触させている。配管が水平方向に移動したときには1本の触針によって水平板に移動の傷痕が描かれ、配管が垂直方向に移動したときには他の触針によって垂直板に移動の傷痕が描かれる。水平板及び水直板に描かれたそれぞれの傷痕に基づいて配管の水平方向及ぶ垂直方向のそれぞれの移動量を知るこができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−100008号公報
【特許文献2】特開昭62−28608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開昭62−28608号公報に記載された配管移動量測定装置は、水平板及び垂直板を備えているので、配管の移動量を三次元的に測定することができる。しかしながら、その配管移動量測定装置は、水平板及び水直板を備えているので、これらの板の保持装置を含めると構造が複雑になる。
【0007】
本発明の目的は、小型の配管移動量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、配管に取り付けられる固定装置と、固定装置に、軸方向に移動可能に取り付けられ、配管の軸心と直交する方向に伸びる第1ケガキ針と、第1ケガキ針の先端が接触する記録板を保持する記録板保持台と、固定装置に設置されて第1ケガキ針の側面に接触する第2ケガキ針とを備えたことにある。
【0009】
第1ケガキ針の側面に接触する第2ケガキ針が固定装置に取り付けられているので、第1ケガキ針の軸方向に移動する配管の移動量を第2ケガキ針によって第1ケガキ針の側面に描くことができる。このため、1つの記録板を取り付ける記録板保持台を設ければよいので、配管移動量測定装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配管移動量測定装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な一実施例である配管移動量測定装置の構成図である。
【図2】図1のII−II矢示図である。
【図3】図1のIII−III矢示図である。
【図4】図1に示す水準器の詳細構成図である。
【図5】図1に示す配管移動量測定装置を沸騰水型原子力プラントの主蒸気配管に設置した状態を示す説明図である。
【図6】図1に示す配管移動量測定装置を沸騰水型原子力プラントの給水配管に設置した状態を示す説明図である。
【図7】図1に示す配管移動量測定装置のケガキ針の表面に配管の移動時に付けられた傷痕を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の好適な一実施例である配管移動量測定装置を、図1、図2及び図3を用いて説明する。
【0014】
本実施例の配管移動量測定装置1は、固定装置2、ケガキ針6及び記録板保持台10を備えている。固定装置2は、本体13、クランプ装置3及び支持部材4を有する。支持部材4はクランプ装置3に取り付けられる。本体13はボルト5によって支持部材4に設けられたフランジに着脱可能に取り付けられる。
【0015】
ケガキ針6は、本体13に、ケガキ針6の軸方向に移動可能に取り付けられる。ケガキ針6の先端部にバネストッパー7が設けられている。コイルバネ8がバネストッパー7よりも本体13側に配置される。コイルバネ8の一端はバネストッパー7に接触しており、コイルバネ8の他端は本体13に接触している。ケガキ針6は、コイルバネ8内を貫通している。ケガキ針6の上端部には、本体13からの抜け落ちを防止するためのストッパ25が設けられている。一対のケガキ針9A,9Bが、これらの先端が互いに向き合うように、本体13の下面に取り付けられている(図2及び図3参照)。ケガキ針9A,9Bのそれぞれの先端は、ケガキ針6の側面に接触している。水準器12A(図4参照)が本体13の上面に取り付けられている。ケガキ針9A及び9Bは、どちらか1本だけを設けてもよい。
【0016】
記録板11が記録板保持台10の上面に取り外し可能に取り付けられる。水準器12B(図4参照)が記録板保持台10の上面に取り付けられている。
【0017】
クランプ装置3が、配管14の移動量を測定したい位置で、配管14に取り外し可能に取り付けられる。クランプ装置3を配管14に取り付けることによって、固定装置2が配管14に固定される(図2参照)。ケガキ針6の軸心は配管14の軸心と直交する方向に位置している。記録板保持台10が、その上面が配管14の軸心と平行になるように、支持架台15に取り付けられる。このため、記録板保持台10に取り付けられた記録板11の上面も、配管14の軸心と平行になっている。支持架台15は、配管14が配置される、建屋内で床、側壁または天井に固定されている。
【0018】
記録板保持台10に取り付けられた記録板11は、本体13に取り付けられているケガキ針6の軸心に対して直交するように配置されている。ケガキ針9A,9Bが取り付けられた本体13の下面は、記録板保持台10と向かい合っている。配管14は、沸騰水型原子力プラントの配管系に含まれている配管である。
【0019】
沸騰水型原子力プラントの主蒸気系の配管(主蒸気配管)17に、配管移動量測定装置1を取り付けた例を、図5を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントでは、バルブ18が設けられた主蒸気配管17が、原子炉圧力容器16に接続されている。主蒸気配管17は、所定の位置で複数の支持装置20によって支持される。配管移動量測定装置1が、上記したように、主蒸気配管17に取り付けられている。
【0020】
沸騰水型原子力プラントの給水系の配管(給水配管)21に、配管移動量測定装置1を取り付けた例を、図6を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントでは、バルブ22が設けられた給水配管21が、図示されていないが、原子炉圧力容器16に接続されている。給水配管21は、所定の位置で複数の支持装置23によって支持される。配管移動量測定装置1が、上記したように、給水配管21に取り付けられている。
【0021】
主蒸気配管17及び給水配管21は、図1に示す配管14に該当する。主蒸気配管17及び給水配管21に保温材が取り付けられている場合には、クランプ装置3は、保温材を取り囲むように取り付けられる。配管移動量測定装置1の主蒸気配管17及び給水配管21等の配管への取り付けは、沸騰水型原子力プラントの運転が停止されている期間内で行われる。
【0022】
水準器12Aを見ながら、本体13の上面が水平になるように、固定装置2がそれぞれの配管に取り付けられる。記録板保持台10は、水準器12Bを見ながら記録板保持台10の上面が水平になるように、支持架台15に取り付けられる。
【0023】
沸騰水型原子力プラントの運転中においては、原子炉圧力容器16内の炉心(図示せず)で発生した蒸気は、主蒸気配管17を通ってタービン(図示せず)に導かれる。主蒸気配管17は、内部を流れる高温の蒸気によって加熱されて高温状態になる。このため、主蒸気配管17は、半径方向及び軸方向に熱膨張する。軸方向の熱膨張が半径方向の熱膨張よりも大きくなる。主蒸気配管17は、熱膨張により軸方向に伸び、軸方向のみならず水平方向及び垂直方向にも移動する。特に、主蒸気配管17の曲がり部では、水平方向及び垂直方向への移動量が大きくなる。
【0024】
給水配管21は、沸騰水型原子力プラントの運転中において、タービンから排気されて復水器(図示せず)で凝縮された凝縮水、すなわち、給水を原子炉圧力容器16に供給する。原子炉圧力容器16内に供給される給水は、給水配管21に設けられた複数基の給水加熱器(図示せず)によって加熱される。給水加熱器によって加熱された高温の給水が流れる部分で、給水配管21の温度が上昇する。このため、給水配管21のその部分での伸び量が大きくなる。
【0025】
主蒸気配管17及び給水配管21に取り付けられた各配管移動量測定装置1は、沸騰水型原子力プラントの運転中において、各配管の熱膨張による移動量を以下のように記録する。主蒸気配管17及び給水配管21は図1に示す配管14として説明する。
【0026】
沸騰水型原子力プラントの運転中では、高温の配管14は三次元的に移動する。配管14の移動量及び移動方向は、配管14の軸心を通る水平面内での、配管14の軸方向、及び配管14の軸方向に直交する方向における配管14の各移動量、及びその水平面に直交する方向における配管14の移動量を測定することによって、知ることができる。配管移動量測定装置1は、それらの3つの方向における配管14の移動量をそれぞれ測定することができる。
【0027】
配管移動量測定装置1のケガキ針6は、配管14の軸心を通る水平面内での、配管14の軸方向、及び配管14の軸方向に直交する方向における配管14の移動に追従して移動する。ケガキ針6の先端が記録板11の上面に接触しているので、配管14の軸心を通る水平面内での、配管14の軸方向、及び配管14の軸方向に直交する方向における配管14の移動に伴う軌跡が、ケガキ針6によって記録板11の上面に描かれる。ケガキ針6の先端がコイルバネ8によって記録板11の上面に押し付けられているので、その軌跡を容易に記録板11の上面に描くことができる。
【0028】
ケガキ針9A,9Bの先端は、軸心が記録板保持台10と直交しているケガキ針6の側面に接触している。また、ケガキ針9A,9Bは、配管14の軸心を通る水平面と直交する方向における配管14の動きに追従してその直交する方項に移動する。このため、配管14の軸心を通る水平面と直交する方向で配管14が移動したとき、この配管14の移動量は、ケガキ針9A,9Bによってケガキ針6の側面に描かれる。配管14の移動時にケガキ針9A,9Bによって描かれる直線状の傷痕24(図7参照)が見えやすいように、ケガキ針6の側面には濃い色(例えば、黒)の塗装が施されている。
【0029】
1つの運転サイクルでの運転が終了したとき、保守点検のために、沸騰水型原子力プラントの運転が停止される。沸騰水型原子力プラントの運転停止期間内で、ケガキ針6が本体13から取り外され、記録板11が記録板保持台10から取り外される。取り外されたケガキ針6の替りに、新しいケガキ針6が本体13に取り付けられる。新しい記録板11が記録板保持台10に取り付けられる。沸騰水型原子力プラントの保守点検が終了した後、沸騰水型原子力プラントの運転が開始される。運転再開後においても、配管移動量測定装置1は、上記したように、配管14の移動量をケガキ針6の側面及び記録板11の上面に記録する。
【0030】
配管14の移動方向及び移動量は、取り外したケガキ針6及び記録板11に描かれた傷痕に基づいて求めることができる。記録板11には、配管14の軸心を通る水平面内での配管14の移動の軌跡が描かれている。しかしながら、配管14がその水平面で移動した場合でも、ケガキ針9A,9Bは固定装置2及びケガキ針6と共に移動するので、ケガキ針9A,9Bはケガキ針6の周方向において同じ位置でケガキ針6の側面に接触している。このため、その水平面に直交する方向での配管14の移動量の最大値が、180°反対の位置に存在する、ケガキ針6の側面に描かれた2本の直線状の傷痕24によって表されている。ケガキ針6によって記録板11に描かれた軌跡、及びケガキ針9A,9Bによってケガキ針6の側面に描かれた傷痕24に基づいて、配管14の移動方向及び最大の移動量を求めることができる。
【0031】
配管14の上下方向に伸びる部分に配管移動量測定装置1を設置した場合は、記録板11には配管14の軸心を通る上下方向の平面内での配管14の移動の軌跡が描かれ、ケガキ針6の側面には、その平面に直交する方向、すなわち、水平方向での配管14の移動量が描かれる。
【0032】
本実施例の配管移動量測定装置1は、特開昭62−28608号公報に記載された配管移動量測定装置のように、水平板及び垂直板の2枚の記録板を設ける必要がなく、1枚の記録板11を設けるだけでよい。他の記録板は、ケガキ針6で代用することができる。また、記録板11を取り付ける記録板保持台10の1つでよい。このため、本実施例の配管移動量測定装置1は、配管14の三次元的な移動を測定できる機能を有し、特開昭62−28608号公報に記載された配管移動量測定装置よりも小型化することができる。
【0033】
水準器12A,12Bの設置により、固定装置2及び記録板保持台11の水平度を容易に調節することができる。このため、配管14の三次元的な移動を記録板11及びケガキ針6に精度良く記録することができる。
【0034】
本実施例の配管移動量測定装置1は、沸騰水型原子力プラントだけでなく、原子力プラントである加圧水型原子力プラント、火力プラント及び化学プラント等のプラントの配管に設置することができる。配管移動量測定装置1は、該当するプラントの配管の三次元的な移動量を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、原子力プラント、火力プラント及び化学プラント等のプラントの配管の移動量を測定する際に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…配管移動量測定装置、2…固定装置、3…クランプ装置、6,9A,9B ケガキ針、7…バネストッパー、8…コイルバネ、10…記録板保持台、11…記録板、12A,12B…水準器、13…本体、14…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に取り付けられる固定装置と、前記固定装置に、軸方向に移動可能に取り付けられ、前記配管の軸心と直交する方向に伸びる第1ケガキ針と、前記第1ケガキ針の先端が接触する記録板を保持する記録板保持台と、前記固定装置に設置されて前記第1ケガキ針の側面に接触する第2ケガキ針とを備えたことを特徴とする配管移動量測定装置。
【請求項2】
一対の前記第2ケガキ針が前記固定装置に設置されている請求項1に記載の配管移動量測定装置。
【請求項3】
水準器が前記記録板保持台及び前記固定装置のそれぞれに設けられている請求項1または2に記載の配管移動量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−256013(P2010−256013A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102537(P2009−102537)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】