説明

配管結束用バンドクリップ構造

【課題】複数の種々の配管をホルダ部材に固定し、配管間に隙間を確保して、ホルダ部材をバンド締結し、自動車等に固定するのに好適な配管結束用バンドクリップの提供を目的とする。
【解決手段】サイドフレーム15に当接する基板6と、該基板6の一端部に、サイドフレーム15に配設された取付孔16に嵌入して基板6を固定する脚部7と、複数の配管9を支持する支持孔10を有するホルダ2と、基板6の他端部にホルダ2を保持する可撓性部材で形成されたバンド4を固着する基部3と、ホルダ2の外周部に配設された第1平面部8と、基部3にホルダ2が回動しないように第1平面部と係合する第2平面部31とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワイヤリングハーネスや配管、あるいは索導ケーブル等をまとめて自動車等の車体のフレームに固定するための配管結束用バンドクリップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のワイヤリングハーネスや配管あるいは索導ケーブル等(以下、配管という)を自動車等のフレームに沿って配索する際に、複数の配管をまとめてフレームに固定するための配管結束用バンドクリップとして、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
図4に示すように、特許文献1に開示の配管結束用バンドクリップ01の構造は、フレーム015に配設された取付孔016に脚部07が嵌入して取付けられている。
脚部07の基部側にはバンド04が一体的に形成され、複数の配管09をバンド04にて束ね、係止部041にて緊締を維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の配管結束用バンドクリップ01では、複数の配管09をバンド04で束ねる際に、配管09同士が接触する部分と共に、配管方法及び、配管の形状誤差に伴う僅かな隙間が形成される。さらに、配管の材質、太さが異なるために、自動車の走行振動で配管夫々の振動の違い及び、束ね方による配列が不安定(前のクリップの時は上に位置していた配管が、次のクリップの時は下側になる)となり、配管同士の接触部分で摩擦が生じ、配管上に堆積した砂等による研磨材作用によって、配管の摩耗を促進するおそれがある。
また、配管中を流れる作動媒体には、高温の作動油が流れるパワーステアリング作動油、ヒーター配管等がある一方、ブレーキ作動油のように高温にならないように配慮する必要のある配管もある。そのような配管同士の接触により、配管中の液体の熱授受が発生するおそれがある。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の配管結束用バンドクリップ01は、配管09同士が接触する部分が存在する場合があるため、一方がパワーステアリング用の高温になる配管であり、他方がブレーキ用の配管であった場合、高温のパワーステアリング用の配管からブレーキ用の配管に熱が伝わり、ブレーキ用配管中の作動媒体の温度が上昇し、ブレーキの機能上好ましくない問題が発生する場合がある。
また、トラックなどの商用車のフレームでは、配管及び電気配線(ハーネス)をフレームに支持するための支持部材(クリップなど)やその他機器をフレームに取付けるため、所定間隔毎(以下、ホールパターンともいう)に設けられた取付孔を備えたホールパターン式フレームが採用されることがある。このホールパターン式フレームは、予め所定間隔毎に取付孔を設けておくことで、支持部材やその他機器をフレームに取付ける場合の孔あけ作業が不要となることで作業性が向上する。また、トラックでは、トラックの仕様(架装)によって架装機器の後付けが行なわれているが、架装機器を取付ける際の取付孔が予め決められたホールパターンで配置されているため、レイアウトの自由度も高く、汎用性に優れている。
例えば、特許文献1に記載の配管結束用バンドクリップ01を格子状のホールパターンが設けられたホールパターン式フレームに採用した場合、フレームの車両前後方向に延びる配管を配管結束用バンドクリップ01によって取付けられると、配管及び配管結束用バンドクリップ01と該配管と同一高さに配置される他の孔が重なり合ってしまうことにより、他の孔を使用してフレームに対して機器(架装機器等)を取付けることができなくなり、ホールパターン式フレームのメリットであるレイアウト上の自由度や汎用性が損なわれてしまうという問題が発生する。
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたものであり、複数の種々の配管をホルダ部材に固定し、配管間に隙間を確保して、ホルダ部材をバンド締結し、自動車等に固定するのに好適な配管結束用バンドクリップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するため、複数の配管をまとめて、被取付部材に取付ける配管結束用バンドクリップ構造において、前記被取付部材に当接する基板と、該基板の一端部に前記被取付部材に配設された取付孔に嵌入して前記基板を固定する脚部と、前記複数の配管を支持する支持孔を有する円筒状のホルダと、前記基板の他端部に前記ホルダを保持する可撓性部材で形成されたバンド部材を固着する基部と、前記ホルダの外周部に配設された第1係合部と、前記基部に形成され、前記ホルダが回動しないように前記第1係合部と係合する第2係合部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成にすることにより、ホルダによって複数の配管間の隙間を維持すると共に、ホルダの周方向の回動を防止するので、車両走行による振動で、配管どうしの接触による摩耗又は、破損を防止できる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記ホルダの円筒形状外周部には、前記バンド部材が巻回されるガイド溝が形成され、該ガイド溝の幅は前記バンド部材の幅より若干広くするとよい。
【0010】
このような構成にすることにより、バンド部材の幅より若干広いホルダのガイド溝にバンド部材が巻回される構造なので、バンド部材に対するホルダの配管軸線方向の位置決めがなされることにより、配管組付けのバラツキが抑制される。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記脚部と前記基部とが一定の間隔を有して配設するとよい。
【0012】
このような構成にすることにより、被取付部材に固着した脚部と配管を保持する基部とが離れているので、基板が配管重量の影響によって被取付部材側に寄せられることにより、フレーム内にコンパクト収容させることができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、被取付部材は、所定間隔毎に配置された取付孔を有するホールパターン式フレームで構成されており、一定の間隔が、所定間隔の1/2に設定されているとよい。
【0014】
このような構成にすることにより、フレームの車両前後方向に延設された配管を保持する基部が取付孔と重なり合ってしまうことを防止でき、ホールパターン式フレームのメリットであるレイアウト上の自由度や汎用性を損なうことなく配管を保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホルダによって複数の配管間の隙間を維持すると共に、ホルダの周方向の回動を防止するので、車両走行による振動で、配管どうしの接触による摩耗又は、破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の配管結束用バンドクリップ構造をフレームに取付状態図、(B)は図1(A)の側面図を示す。
【図2】図1のP矢視図を示す。
【図3】(A)は本発明のホルダ正面図、(B)はその側面図を示す。
【図4】従来技術の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1、図2及び、図3に示すように、本発明の配管結束用バンドクリップ1は、円筒状のホルダ2と、ホルダ2が取付けられる基部3と、ホルダ2を基部3に取付けるための可撓性部材で成形されたバンド部材であるバンド4と、基部3が形成されている基板6と、基板6に形成され、被取付部材であるサイドフレーム15に配設された取付孔16に挿入して基板6を取付ける脚部7とで構成されている。
また、本実施形態では、ホルダ2は可撓性を有したゴム製であり、基部3、基板6及び、脚部7は可撓性を有する樹脂製である。なお、ホルダ2はゴム製でなくても可撓性を有していれば良く、樹脂製でも良い。
本実施形態の商用車が採用しているシャシフレーム構造は、車両前後方向に延在した断面コ字状の2本のサイドフレーム15を車幅方向に間隔を有して、断面コ字状の開口部を車両内側に向け配設し、そのサイドフレーム15間を複数のクロスメンバ(図示省略)によって連結した所謂、梯子型シャシフレームが採用されている。
そして、サイドレーム15のウエブには図1(B)に示すように、所定の間隔(車両の前後方向N間隔、上下方向M間隔)で格子状に複数配置されたホールパターン式フレームとして構成されている。
【0018】
図3に示すように、ホルダ2は円筒状であり、両端面は軸線L1に対し略直角な平面形状となっている。
また、ホルダ2には複数(本実施形態では3本を記載)の配管9A、9B、9C(以後配管の符号は夫々を代表して「9」とする。)それぞれを支持する配管径に沿った支持孔10(以後支持孔の符号は夫々を代表して「10」とする。)が形成されている。
それぞれの支持孔10はホルダ2の軸線L1に沿って全域にわたり円筒状に形成されている。それぞれの支持孔10の外周側には、配管9を支持孔10に嵌入するための切り込み11が形成されている。なお、支持孔10に嵌入するための切り込み11は、配管9が挿入でき且つ支持可能な隙間が設定されている。
【0019】
そして、ホルダ2の中央部には、空間部13が形成されている。空間部13はホルダ2の軸線L1に沿って全域にわたり円筒状に形成されている。
この空間部13は、配管9を支持孔10に嵌入する際に、ホルダ2を形成する部材の一部が空間部13側に突出可能にして、ホルダ2への配管9の嵌入を容易にするために設けられている。なお、ホルダ2の材質として柔軟性のある樹脂材を用いた場合には、必ずしも空間部13を設けなくても良い。
円筒状のホルダ2の外周には、バンド4が巻回するガイド溝12が形成されている。
ガイド溝12はホルダ2がホルダ2の軸線L1方向にずれないようにするために形成されており、バンド部材に対するホルダの配管軸線方向の位置決めがなされることにより、配管の組付性が向上されている。
さらに、ホルダ2の円筒状外周部の一部には、ホルダ2の軸線L1に沿って全域にわたる第1係合部である第1平面部8が形成されている。
【0020】
バンド4は、図1に示すように、ホルダ2の円筒状のガイド溝12を巻回するのに十二分の長さの可撓性を有する材料で帯状に形成され、その一方の面には、多数の係止突起(図示省略)が突設され、係止部41に形成されている係合爪(図示省略)がその任意位置で係合できるようになっている。この係合爪は、バンド4の挿入方向に対してフリーで、抜け出し方向に対して係止する一方向に作用するように形成されている。
バンド4の長さはホルダ2の円筒状の太さが変化した場合にも対応できる汎用性をもたせた長さに形成されている。
【0021】
基板6の他端側部に形成された基部3には、バンド4の長手方向が基板6の基部3と脚部7とを結ぶ線の方向に沿い且つ、係止部41が脚部7と反対方向に延出した状態で固着されている。
また、基部3のホルダ2が当接する面には、ホルダ2に配設されている第1平面部8に対向した第2係合部である第2平面部が形成されている。
ホルダ2の円筒状外周部に形成された第1平面部8と、第2平面部とを当接させて、バンド4にて締結することにより、ホルダ2は周方向の回動が阻止される。
【0022】
基板6は、断面矩形の平板であり、基部3及び脚部7よりも大きく形成されている。基板6の一端側部分に、被取付部材であるサイドフレーム15に当接する面から、該面を基準にして略直角に突出した脚部7が形成されている。
【0023】
この脚部7は通称、モミの木状の形状をしたクランプ部材で、先端側から基板6に向かい円錐状に拡開した傘部の厚みが薄く且つ、可撓性を有した係止部が脚部7の軸線に沿って幾重にも配置され、サイドフレーム15の板厚が変化しても取付けられるように対応できる汎用性を有した構造となっている。
サイドフレーム15の取付孔16に脚部7を挿入すると、係止部が取付孔16の外周部に係止して基板6が取付けられる。
【0024】
また、図1(A)及び(B)に示すように、基部3と脚部7とは、一定の間隔M/2を有して形成されている。
一定の間隔M/2は、サイドフレーム15に設けられた取付孔16同士の所定間隔Mの1/2の間隔に設定されている。このように基部3と脚部7との間隔を設定することにより、サイドフレーム15の車両前後方向に延設された配管9を保持する基部3が他の取付孔16と重なり合うことを防止して、ホールパターン式フレームのメリットであるレイアウト上の自由度や汎用性を損なうことなく配管9をサイドフレーム15に保持することができる。
【0025】
ここで、配管結束用バンドクリップ1のサイドフレーム15への取付け方法について、図1を参照して説明する。なお、サイドフレーム15には、配管結束用バンドクリップ1を取付けるための取付孔16が形成されている。最初に、ホルダ2の支持孔10に各配管9を切り込み11から押し込む。このとき、切り込み11は、弾性変形により変形するので、配管9を押し込むことが容易にできる。
【0026】
次に、配管結束用バンドクリップ1の脚部7をサイドフレーム15の取付孔16に挿入する。続いて、ホルダ2の第1平面部8を基部3の第2平面部に当接させ、バンド4をホルダ2のガイド溝12に巻回し、バンド4の脚部7側に延在している端部42を係止部41に挿入し、バンド4の端部42を脚部7と反対側の方向に引っ張るようにして緊締する。係止部41の係止爪と係止溝との係合によってバンド4が係止される。
【0027】
このようにして、本発明の配管結束用バンドクリップ1をサイドフレーム15に取付ける。
【0028】
本実施形態によると、ホルダ2によって複数の配管9間の隙間を維持すると共に、ホルダ2の周方向の回動を防止するので、車両走行による振動で、配管どうしの接触による摩耗又は、破損を防止できる。
また、ホルダ2は可撓性を有したゴム製なので、各配管9が均等に締付けられ、且つ、中心部に空間部13を有しているので、配管9を支持孔10に嵌入する際に、ホルダ2を形成する部材の一部が空間部13側に突出することにより、ホルダ2への配管9の嵌入を容易にすることができる。
【0029】
また、バンド4の幅より若干広いホルダのガイド溝12にバンド4が巻回される構造なので、バンド4に対するホルダ2の配管軸線方向の位置決めがなされることにより、配管の組付け時のバラツキを抑制することができる。
【0030】
また、基部3と脚部7とは、一定の間隔M/2を有しているので、基板6が配管9の重量の影響によってサイドフレーム15側に寄せられることにより、断面コ字状のサイドフレーム15内にコンパクト収容させることができる。
【0031】
さらにサイドフレーム15がホールパターン式フレームで構成されており、基部3と脚部7と一定の間隔が、取付孔16間の間隔Mの1/2に設定されているので、サイドフレーム15の車両前後方向に延設された配管9を保持する基部3が取付孔16と重なり合ってしまうことを防止でき、ホールパターン式フレームのメリットであるレイアウト上の自由度や汎用性を損なうことなく配管9をサイドフレーム15に保持することができる。
【0032】
なお、図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではない。
例えば、図3(A)に示すように、支持孔10の大きさは、配管9の径に合わせて適宜変更することができる。
また、本実施形態では基部3、バンド4、基板6及び脚部7を一体成形して作製したが、例えば、基部3の基板6からの厚さを大きくして、基板6との間に取付孔を形成し、別途作製したバンド4を取付孔に貫通させて取付けることも容易にできる。
さらに、脚部7も別途形成し、基板6に形成した取付孔に脚部7を挿入し、基板6とサイドフレーム15を挟持する構造でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、車両のフレーム等の被取付部材に複数の配管をまとめて保持する、自動車等に固定する配管結束用バンドクリップとして用いられると良い。
【符号の説明】
【0034】
1 配管結束用バンドクリップ
2 ホルダ(支持部材)
4 バンド(バンド部材)
6 基板
7 脚部
8 第1平面部(第1係合部)
9 配管
10 支持孔
11 切り込み
12 ガイド溝
13 空間
15 サイドフレーム
16 クリップ取付孔
31 第2平面部(第2係合部)
41 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配管をまとめて、被取付部材に取付ける配管結束用バンドクリップ構造において、
前記被取付部材に当接する基板と、
該基板の一端部に前記被取付部材に配設された取付孔に嵌入して前記基板を固定する脚部と、
前記複数の配管を支持する支持孔を有するホルダと、
前記基板の他端部に前記ホルダを保持する可撓性部材で形成されたバンド部材を固着する基部と、
前記ホルダの外周部に配設された第1係合部と、
前記基部に形成され、前記ホルダが回動しないように前記第1係合部と係合する第2係合部と、を備えたことを特徴とする配管結束用バンドクリップ構造。
【請求項2】
前記ホルダの円筒形状外周部には、前記バンド部材が巻回されるガイド溝が形成され、該ガイド溝の幅は前記バンド部材の幅より若干広くなっていることを特徴とする請求項1記載の配管結束用バンドクリップ構造。
【請求項3】
前記脚部と前記基部とが一定の間隔を有して配設されていることを特徴とする請求項1記載の配管結束用バンドクリップ構造。
【請求項4】
前記被取付部材は、所定間隔毎に配置された前記取付孔を有するホールパターン式フレームで構成されており、
前記一定の間隔が、所定間隔の1/2に設定されていることを特徴とする請求項3記載の配管結束用バンドクリップ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−122583(P2012−122583A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275587(P2010−275587)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】