説明

配管装置

【課題】 配管の一部を一対の袖として残し、散水孔の出口側の閉鎖蓋として利用し、散水孔の出口側を奥まった位置に持つ袖を互いに接着して散水孔を閉塞するようにする。
【解決手段】 平面状の素材1をその両側の縦方向側部2が重なるように折り曲げ、これら縦方向側部の縁3から距離をあけて素材同士を直線状にミシン縫いするか不連続に溶着することにより、熱媒体を搬送する縦方向の筒部分4を構成する。この筒部分の側部に直線状に並ぶ散水孔5を造作すると同時に、奥まった位置に散水孔の位置する前記筒部分の壁に連続した相対する袖6を形成する。散水の不要な場所では袖同士を接着剤で張り付けてその奥に位置する散水孔5を塞ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水する散水配管部分と散水をしない通水配管部分を選択的に造作可能な配管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配管壁に散水孔を備えた各種の散水ホースが市販され、様々な用途に使われている。これら散水ホースの散水孔は、打抜き工具を用い、またレーザー穿孔機を使用するなどして形成している。素材厚が薄いものでは微小な切断スリットを設けたものもある。
一般的な散水用途では、使用時間が限定され消費水量も大量にはならないため、バルブを用いて水量調節する使い方で実用上問題はなかった。
【0003】
しかし、大量の熱媒体を長時間散水する場合、散水を避けたい箇所や散水の不要な場所が途中にあっても、散水孔を選択的に閉塞することはできないので、散水はそのまま続けられ熱媒体は無駄になる。
配管壁にテープを巻いて局部的に散水孔を塞ぐこともあるが、これは一時しのぎに過ぎず、簡単にしかも確実に散水孔を塞ぐことができない。
結果的に、節水を意図した効果的な散水の行えない欠点があった。
【0004】
限られた量の熱媒体を散布する用途において、この欠点は散布面積の拡大要求に対して大きな障害となっている。具体的には、融雪分野では水量不足は雪の溶けムラによる残雪の原因となり、また屋根冷却では室内側への輻射高温域が形成されて冷却効果の半減するなどの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、配管経路に沿った任意の場所で、選択的に散水ノズルの出口側を閉塞できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平面素材の側縁を2枚合わせに重ねて配管の筒部分を製作する際、重ね合わせた部分の一部を袖として残し、散水孔の出口側の接着固定閉鎖蓋として利用することを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配管装置は、配管経路に沿った袖が配管装置に当初から存在し、これが散水孔の前方にカーテン状に位置するため、これを開いたり閉じれば散水孔を露出させたり覆うことができ、熱媒体の散布形態はスプレー水であったり流下水に変化する。接着剤を用いて袖同士を固着すれば散水孔に蓋をした状態で確実に塞ぐことができる。
また、袖を上下に引っ張ることで散水孔の輪郭形状を変化させたり、散水孔の向きを変化させるなどの調整ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
必要箇所の散水孔を閉鎖して散水を停止するという目的を、配管装置の一部分をそのまま活用することで実現した。
【実施例1】
【0009】
図1に示す配管装置は、平面状の素材1から構成されている。この素材1は、図2に示すように、その両側の縦方向側部2が重なるように折り畳むか折り曲げられる。
【0010】
図3は、これら縦方向側部の縁3から距離をあけて素材同士を直線状にミシン縫いして、熱媒体を搬送する縦方向の筒部分4を形成している。同時に、縫い目は散水孔5を形作っている。
こうして作られた散水孔は、合わさった上下の素材の外側をミシン糸の上糸と下糸が縫い目ごとに拘束するスリットの形態となる。スリットの幅は縫い目の幅に相当し、縫い目の幅を大きくしたり小さくすれば、散水量は増減する。
筒部分4に熱媒体を通水すれば筒部分は膨らみ、ミシン糸の上糸と下糸の拘束に抗して散水孔は上下に広がるようになる。なお、ミシン糸が素材1を貫通する部分では、ミシン糸に接着剤を含浸させておけば、ミシン糸穴からの熱媒体の漏出を少なくできる。
【0011】
素材が熱可塑性材料から構成されている場合、前述したミシン縫いに代えて、ウエルダーにより素材を不連続に溶着することができる。この場合、非溶着部分にスリット状の散水孔が形成される。
【0012】
前述したようにして、筒部分4の造作にあたり、筒部分の側部に直線状に並ぶ散水孔5が形作られると同時に、奥まった位置に散水孔5の位置する前記筒部分の壁に連続した相対する袖6が造作される。
【0013】
図4は、突出幅の狭い、すなはち丈の短い袖6の例を示している。袖を短くすれば、通水時に筒部分が膨張すると袖は開き、散水孔は露出するようになる。図5では、上下の袖は幅が異なり、上側の袖は下側の袖に被さって間に隙間を形成し、通り抜ける熱媒体の流れを横に拡散させる働きをし、下側の袖は熱媒体の流下案内面として機能する。
【0014】
袖については様々な取扱と加工が可能である。例えば、不要な袖は切除することができる。袖を切除するには、例えば、筒部分に向けて袖にはさみを入れた後、筒部分に沿って袖の付け根をカットすることで行われる。
袖を切除する代わりに、袖を上下に広げれば散水孔は露出し、散水孔からは熱媒体を射出することができる。広げた袖は紐でしばって筒部分に固定したり、あるいは筒部分の壁面に対して接着固定することができる。
また、袖のそれぞれを上下に引っ張られた緊張状態に保持すれば、散水孔の輪郭形状は上下に広がり、直線状の噴射水が形成される。
【0015】
散水の不要な箇所では、袖同士を接着剤で張り付けてその奥に位置する散水孔を塞ぐことが行われる。接着剤は袖の内面に張り付いて散水孔の出口を閉鎖するように機能するので、確実に止水することができる。
【0016】
図6は、前述のごとくして袖を加工した事例を手前から奥にかけて順番に示す説明用の斜視図である。筒部分には通水し膨らませた状態を表している。図中にて、手前の袖は現状のままのものを示し、これに隣接する奥のものは上側の袖を現場で切除して丈を短くしている。さらに、その奥のものは、散水孔の出口に接着剤を塗布し、残余の接着剤で袖を貼り合わせて散水孔を閉塞させた状態にある。最も奥のものは、袖を切除してある。
【0017】
筒部分は、端部開口をホースニップルに差し込みホースバンドで固定するなどの方法で給水系に接続される。その際、筒部分端部の袖は邪魔にならないよう切除しておくことができる。
【0018】
前述した平面状の素材には、織布や不織布のような表面から僅かな滲み出しの期待できる繊維質生地、または水密性の高いテント生地といった柔軟な素材の他、ポリカーボネート薄板のような弾性変形可能な材料が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
散水領域と非散水領域を選択的にカバーすることができるので、比較的口径の大きなものを長距離にわたって敷設すれば、安価な費用で手軽に広域面積を一括して散水を行える。ビルの屋上、屋根、道路、線路、菜園、農業施設などの規模の大きな給水系配管としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 配管装置を構成する素材の一例を示している。
【図2】 図1の素材を折り重ねた状態を示している。
【図3】 素材の自由端側の一部を重ねてミシン縫いした状態を示している。
【図4】 袖の丈の短い事例を示す斜視説明図である。
【図5】 上側の袖の丈を短くした事例を示す斜視説明図である。
【図6】 複数の袖の設置形態と使用形態を示す斜視説明図である。
【符合の説明】
【0021】
1 素材
2 素材の縦方向側部
3 縦方向側部の縁
4 筒部分
5 ミシン縫いの縫い目または不連続な溶着部
6 袖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の素材をその両側の縦方向側部が重なるように折り畳み、これら縦方向側部の縁から距離をあけて素材同士を直線状にミシン縫いするか不連続に溶着することにより、熱媒体を搬送する縦方向の筒部分と、この筒部分の側部に直線状に並ぶ散水孔と、奥まった位置に散水孔の位置する前記筒部分の壁に連続した相対する袖とを形成し、散水の不要な場所では袖同士を接着剤で張り付けてその奥に位置する散水孔を塞ぐことのできる配管装置。
【請求項2】
可撓性のある平面状の素材をその両側の縦方向側部が重なるように折り曲げ、これら縦方向側部の縁から距離をあけて素材同士を直線状にミシン縫いするか不連続に溶着することにより、熱媒体を搬送する縦方向の筒部分と、この筒部分の側部に直線状に並ぶ散水孔と、前記筒部分の壁に連続し、奥まった位置に散水孔の位置する外向きに湾供した相対する袖とを形成し、散水の不要な場所では袖同士を接着剤で張り付けてその奥に位置する散水孔を塞ぐと共に、その他の場所では袖を切除して散水孔を露出させる配管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−270704(P2009−270704A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141641(P2008−141641)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000168861)
【Fターム(参考)】