説明

配管補修装置及び配管補修方法

【課題】本発明は、配管の狭隘部や枝分かれ部等の複雑な形状又は配管の径によらず、損傷部を短時間かつ簡易に修復することを目的とするものである。
【解決手段】損傷部10aを補修する場合、まず流入口5dが損傷部10aに臨むようにコネクタ5を配管10に当て、固定用テープ3を用いてコネクタ5を配管10に固定する。このとき、開閉バルブ2は開いておく。この後、コネクタ5と配管10との間の隙間を未硬化の封止樹脂4により封止し、損傷部10aから配管10a外に漏れている流体をキャピラリーチューブ1に通す。そして、封止樹脂4を硬化させる。この後、開閉バルブ2を閉じることにより、流出口6aを閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力流体を搬送する配管に生じた損傷を、配管内に圧力がかかった状態で補修する配管補修装置及び配管補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調・冷熱機器の冷媒管の補修にあたっては、機器を一旦全停止させた後、補修時に大気中に冷媒を放出させないように冷媒銅管内の冷媒を抜き取り、漏洩が発生している配管の再溶接又は取り替えを行っている。
【0003】
しかしながら、上記方法では、補修中、空調・冷熱機器が使用できないこと、配管内の冷媒を一旦抜き取る必要があること、さらに機材の準備等に時間を要するなどの理由から、より簡易な方法で冷媒漏洩を処置することが求められている。
【0004】
これに対し、従来の漏洩応急補修方法では、パッドの内部にニトリルゴムを充填した後、配管の漏洩箇所上に設置し、パッドに荷重を加える。これにより、パッドに加えられた荷重及びニトリルゴムの弾性力によって、配管の流体漏洩箇所が補修される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−4195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の漏洩応急補修方法は、平坦面に生じた漏洩箇所の補修には適用できるが、配管の狭隘部や枝分かれ部に生じた漏洩箇所の修復には適用できない。また、ニトリルゴムを用いているので、高温の流体には適用することができない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、配管の狭隘部や枝分かれ部等の複雑な形状又は配管の径によらず、損傷部を短時間かつ簡易に修復することができる配管補修装置及び配管補修方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る配管補修装置は、流入口が設けられている筒状のコネクタと、コネクタに接続されており、かつ流出口が設けられている可撓性のキャピラリーチューブ本体とを有し、流入口が配管の損傷部に臨むように配管に取り付けられるキャピラリーチューブ、及びコネクタと配管との間の隙間を封止する封止樹脂を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の配管補修装置は、筒状のコネクタと可撓性のキャピラリーチューブ本体とを有するキャピラリーチューブのコネクタを、流入口が配管の損傷部に臨むように配管に取り付け、コネクタと配管との間の隙間を封止樹脂により封止し、キャピラリーチューブ本体の流出口を閉じることにより、配管の狭隘部や枝分かれ部等の複雑な形状又は配管の径によらず、損傷部を短時間かつ簡易に修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による配管補修装置を一部断面で示す構成図である。
【図2】図1のコネクタを示す側面図である。
【図3】実施の形態1による配管補修方法の手順を示す工程図である。
【図4】この発明の実施例1〜3の構成及び評価結果を示す表である。
【図5】比較例1、2の構成及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による配管補修装置を一部断面で示す構成図、図2は図1のコネクタを示す側面図である。図において、配管補修装置(流体漏れ応急補修装置)は、キャピラリーチューブ(内部流体圧力回避装置)1と、開閉バルブ2と、固定用テープ3と、封止樹脂4とを有している。
【0012】
キャピラリーチューブ1は、円筒状のコネクタ5と、コネクタ5に接続(溶接)された可撓性のカラム(細管)6とを有している。コネクタ5は、円筒状の大径部5aと、大径部5aよりも小径でカラム6が接続されている接続部5bと、大径部5aと接続部5bとの間に設けられているテーパ部5cとを有している。
【0013】
大径部5aには、漏洩流体が流入する流入口5dが設けられている。コネクタ5は、流入口5dが配管10の損傷部(流体漏洩箇所)10aに臨むように配管10に取り付けられている。テーパ部5cの内面の断面は、テーパ状になっている。即ち、テーパ部5cは、円錐状の内部孔を有している。
【0014】
カラム6の第1の端部は、接続部5bに接続されている。カラム6の第2の端部には、漏洩流体を外部へ流出させるための流出口6aが設けられている。カラム6の中間部は、配管10に螺旋状に巻き付けられている。
【0015】
開閉バルブ2は、カラム6の第2の端部に接続されている。流出口6aは、開閉バルブ2を操作することにより開閉される。
【0016】
固定用テープ3は、必要に応じて用いられ、コネクタ5を配管10に固定する。封止樹脂4は、配管10の損傷部10aの周辺部とコネクタ5とを覆って、コネクタ5と配管10との間の隙間を封止する。封止樹脂4としては、例えば熱硬化性樹脂が用いられている。また、封止樹脂4としては、ホットメルト(熱可塑性樹脂)を用いることもできる。
【0017】
次に、損傷部10aの補修手順について説明する。図3は実施の形態1による配管補修方法の手順を示す工程図である。損傷部10aを補修する場合、まず流入口5dが損傷部10aに臨むようにコネクタ5を配管10に当てるとともに(ステップS1)、カラム6の中間部は、配管10に巻き付ける。そして、固定用テープ3を用いてコネクタ5を配管10に固定する(ステップS2)。このとき、開閉バルブ2は開いておく。
【0018】
この後、コネクタ5と配管10との間の隙間を未硬化の封止樹脂4により封止し、損傷部10aから配管10a外に漏れている流体をキャピラリーチューブ1に通す(ステップS3)。そして、封止樹脂4を硬化させる(ステップS4)。このとき、補修時間を短縮するために、加熱装置により封止樹脂4を加熱して封止樹脂4の硬化を促進(加速)させてもよい。
【0019】
この後、開閉バルブ2を閉じることにより、流出口6aを閉じる(ステップS5)。これにより、配管10からの流体の漏洩が止められ、損傷部10aの応急補修が完了する。
【0020】
このような配管補修装置及び配管補修方法によれば、コネクタ5に可撓性のカラム6が接続されているので、コネクタ5を損傷部10aに固定し樹脂封止した後、流出口6aを閉じる作業は、損傷部10aから離れた位置で行うことができ、また、必要に応じてカラム6を配管10に巻き付けておくこともできる。このため、配管10の狭隘部や枝分かれ部等の複雑な形状又は配管10の径によらず、損傷部10aを短時間かつ簡易に修復することができる。また、例えば空調装置の室外機の内部など、多くの配管10が複雑に配置されている箇所においても、配管補修作業を容易に行うことができる。
【0021】
また、接続部5bよりも大径の大径部5aに流入口5dが設けられているコネクタ5を用いたので、損傷部10aに流入口5dを容易に連通させることができる。
【実施例】
【0022】
以下、この発明の配管補修装置及び配管補修方法の具体的な実施例及び比較例について説明する。図4はこの発明の実施例1〜3の構成及び評価結果を示す表である。また、図5は比較例1、2の構成及び評価結果を示す表である。
【0023】
(1)基材
配管:銅管(φ1/4インチ(6.35mm))、住友金属社製
キャピラリーチューブ:銅管(φ1/4インチ(6.35mm))、TASCO社製、TA147W-2
開閉バルブ:ボールバルブ(φ1/4インチ(6.35mm))、ROTEX社製、RP4203(1/4”×1/4”BV)
固定用テープ:自己融着ブチルゴムテープ(登録商標)T300、日東シンコー社製
封止樹脂:2液スティック型エポキシパテ、レクターシール社製、EP-200
ガス:窒素ガス(≧99.99%)、イワタニ社製
【0024】
(2)実験装置
冷媒が漏洩した状況を模擬する系として、φ50μmのピンホールを有する冷媒用銅管にレギュレータを介して所定の圧力(3.5MPa)の窒素ガスを供給できるリーク試験装置を用意した。
【0025】
(3)評価手法
流体が漏洩している際の配管も内部圧力を3.5MPaとし、実施例1〜3及び比較例1、2で示す構成で流体漏洩部を補修した。補修が完了した時点では、圧力が必然的に初期の圧力よりも低下している。このため、補修の良否判断については、補修完了時点での圧力に対する7日後の残圧の残率で評価した。なお、補修時間は樹脂を混練した時点からの時間と定義した。
【0026】
実施例1.
図1に示したように、流体漏洩部にコネクタを当てて固定用テープで固定した。この後、EP-200(Rector seal社)56gを混練し、コネクタの周囲を封止した。そして、室温で10分間放置した後、90〜120℃/10分ホットブラスターにより封止樹脂を加熱して硬化促進させた。この後、10分間自然冷却し、ボールバルブを閉じた。この結果、封止樹脂から内部ガスがリークすることなく、耐久日数7日間以上を達成した。
【0027】
実施例2.
実施例1と同様の工程により、EP-200(Rector seal社)56gを混練し、コネクタの周囲を封止した。そして、室温で24時間放置した後、ボールバルブを閉じた。この結果、封止樹脂から内部ガスがリークすることなく、耐久日数7日間以上を達成した。
【0028】
実施例3.
実施例2においてボールバルブを接続しない系で、同様の補修作業を実施した。封止樹脂を室温で24時間放置した後、キャピラリーチューブ本体の先端にピンチでかしめ作業を施した。この結果、封止樹脂から内部ガスがリークすることなく、耐久日数7日間以上を達成した。
【0029】
比較例1.
EP-200(Rector seal社)56gを混練し、流体漏洩部を直接封止した。この結果、直ちに内部ガスがリークした。
【0030】
比較例2.
図1のキャピラリーチューブを固定用テープにより配管に固定した後、封止樹脂による封止を行わず、ボールバルブを閉じた。この結果、内部ガスがリークした。
【符号の説明】
【0031】
1 キャピラリーチューブ、2 開閉バルブ、3 固定用テープ、4 封止樹脂、5 コネクタ、5a 大径部、5b 接続部、5c テーパ部、5d 流入口、6 毛細管カラム、6a 流出口、10 配管、10a 損傷部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口が設けられている筒状のコネクタと、前記コネクタに接続されており、かつ流出口が設けられている可撓性のキャピラリーチューブ本体とを有し、前記流入口が配管の損傷部に臨むように前記配管に取り付けられるキャピラリーチューブ、及び
前記コネクタと前記配管との間の隙間を封止する封止樹脂
を備えていることを特徴とする配管補修装置。
【請求項2】
前記キャピラリーチューブ本体に設けられ、前記流出口を開閉する開閉バルブをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の配管補修装置。
【請求項3】
前記コネクタは、前記配管に当てられる円筒状の大径部と、前記大径部よりも小径で前記キャピラリーチューブ本体が接続されている毛細管カラムと、前記大径部と前記毛細管カラムとの間に設けられており、内面の断面がテーパ状の接続部とを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管補修装置。
【請求項4】
前記封止樹脂は、熱硬化性樹脂又はホットメルトであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の配管補修装置。
【請求項5】
流入口が設けられている筒状のコネクタと、前記コネクタに接続されており、かつ流出口が設けられている可撓性のキャピラリーチューブ本体とを有するキャピラリーチューブの前記コネクタを、前記流入口が配管の損傷部に臨むように前記配管に当てる工程、
前記コネクタと前記配管との間の隙間を未硬化の封止樹脂により封止し、前記損傷部から前記配管外に漏れている流体を前記キャピラリーチューブに通す工程、
前記封止樹脂を硬化させる工程、及び
前記流出口を閉じる工程
を含むことを特徴とする配管補修方法。
【請求項6】
前記コネクタを前記配管に当てた後、テープにより前記コネクタを前記配管に固定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の配管補修方法。
【請求項7】
前記キャピラリーチューブ本体に設けられているバルブを閉じることにより、前記流出口を閉じることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の配管補修方法。
【請求項8】
前記キャピラリーチューブ本体の前記流出口側の端部をかしめることにより、前記流出口を閉じることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の配管補修方法。
【請求項9】
前記封止樹脂の硬化を加速するために加熱装置により前記封止樹脂を加熱することを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の配管補修方法。
【請求項10】
前記キャピラリーチューブ本体を前記配管に巻き付ける工程をさらに含むことを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の配管補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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