説明

配管設備、重合体製造設備および重合体の製造方法

【課題】溶媒、未反応モノマー等の揮発成分を輸送した場合に、閉塞が起こりにくい配管設備、該配管設備を有する重合体製造設備および該重合体製造設備による重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】該主配管に2箇所で連結するバイパス配管を備えてなる気体輸送用の配管設備であって、該主配管は、上記バイパス管との2箇所の連結部位の間に、制御手段および/または測定手段を有し、該バイパス管は、主配管における気体の流れ方向における上流側の連結部で、水平方向を基準として主配管よりも下向きに連結されており、ドレン抜き管を有すると共に、特定の箇所に開閉弁を有し、かつ、主配管における気体の流れ方向が、上記上流側の連結部の通過前後で、それぞれ、特定の向きに設定されてなる気体輸送配管設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管設備、重合体製造設備および重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重合体の製造方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等があげられる。これらの重合方法で得られた生成物中には、溶媒、媒体、未反応モノマー等が含まれているため、該生成物中から重合体を回収することが行われている。
【0003】
例えば、溶液重合法により製造された重合溶液から重合体を回収する方法としては、重合溶液をフラッシュ乾燥機に送り込み、溶媒、未反応モノマーなどの揮発成分を気化させて重合体を回収する方法(特許文献1参照。)、重合体溶液をベント式押出機に供給し、ベント口から溶媒、未反応モノマーなどの揮発成分を除去して、重合体を回収する方法(特許文献2,3参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−442号公報
【特許文献2】特開昭63−314207号公報
【特許文献3】特開昭63−284203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法では、揮発成分をフラッシュ乾燥機や押出機のベント口から輸送するラインが閉塞することがあり、十分満足のいくものではなかった。
【0006】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、上記揮発成分を輸送した場合に、閉塞が起こりにくい配管設備、該配管設備を有する重合体製造設備および該重合体製造設備による重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、主配管と、該主配管に2箇所で連結するバイパス配管を備えてなる気体輸送用の配管設備であって、該主配管は、上記バイパス管との2箇所の連結部位の間に、制御手段および/または測定手段を有し、該バイパス管は、主配管における気体の流れ方向における上流側の連結部で、水平方向を基準として主配管よりも下向きに連結されており、ドレン抜き管を有すると共に、該ドレン抜き管の接続部と主配管における気体の流れ方向における下流側の連結部との間に、開閉弁を有し、かつ、主配管における気体の流れ方向が、上記上流側の連結部の通過前後で、それぞれ、水平方向または水平方向よりも下向き、および、水平方向または水平方向より上向きに設定されてなる気体輸送配管設備にかかるものである。
【0008】
本発明の第二は、上記配管設備を有する重合体製造設備にかかるものである。
【0009】
本発明の第三は、上記重合体製造設備により重合体を製造する方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、重合溶液から分離した揮発成分を輸送した場合に、ラインの閉塞が起こりにくい配管設備、該配管設備を有する重合体製造設備および該重合体製造設備による重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の一例に関して、概略を示した図である。
【図2】本発明における実施形態のうち、バイパス管連結部の一例の概略図である。
【図3】本発明における実施形態のうち、バイパス管連結部の別の例の概略図である。
【図4】本発明における実施形態のうち、バイパス管連結部の別の例の概略図である。
【図5】本発明の実施形態の別の例に関して、概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の配管設備を、図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の配管設備は、図1に示すように、主配管(1)と、該主配管に2箇所で連結するバイパス管(2)を備えている気体輸送用の配管設備である。
【0014】
バイパス管(2)は、継手により主配管(1)に連結されている。継手としては、突合せ溶接式管継手や差込溶接式管継手等、公知のものを使用することができる。連結部における気体の流れ方向は、図1に示すように、連結部の通過前後で変化してもよく、図2に示すように、連結部の通過前後で同じであってもよい。
【0015】
主配管(1)は、上記バイパス管との2箇所の連結部位(4、5)の間に、制御手段および/または測定手段(10)を備えている。制御手段とは、配管内を流動する気体の流量または圧力を制御する手段であり、具体的には、流量制御弁、圧力制御弁、マスフローコントローラーを挙げることができる。また、測定手段は、配管内を流動する気体の温度、流量または圧力を制御する手段であり、具体的には、温度計、圧力計、流量計を挙げることができる。
【0016】
バイパス管は、主配管における気体の流れ方向における上流側の連結部(4)で、水平方向を基準として主配管よりも下向きに連結されている。バイパス管は当該連結部に、図3のように斜め下向きに連結されていてもよいが、図1、図2および図4のように鉛直方向下向きに連結されていることが好ましい。このような構成とすることで、ラインの閉塞を起こりにくくすることができる。
【0017】
バイパス管には、ドレン抜き管(3)が設けられており、該ドレン抜き管の接続部(6)と主配管における気体の流れ方向における下流側の連結部(5)との間に、開閉弁(12)を有している。ドレン抜き管の接続部の位置は、バイパス管の最も低い部分であることが好ましい。また、ドレン抜き管には、開閉弁(11)が設けられている。主配管に気体を流通させている時は、開閉弁(11、12)は閉じられている。
【0018】
主配管における気体の流れ方向が、上記の上流側の連結部(4)の通過前後で、それぞれ、水平方向または水平方向よりも下向き、および、水平方向乃至水平方向より上向きに設定されている。上流側の連結部(4)を通過する前においては、主配管における気体の流れ方向は図2のように水平方向でもよいが、図1、図3および図4のように水平方向よりも下向きであることが好ましく、図1または図4のように鉛直方向下向きであることがより好ましい。また、上流側の連結部(4)を通過した後においては、主配管における気体の流れは図1〜図3のように水平であってもよく、図4のように水平方向より上向きであってもよい。このような構成とすることで、ラインの閉塞を起こりにくくすることができる。
【0019】
また、上記の上流側の連結部(4)と、上記制御手段および/または測定手段(10)の間、および該制御手段および/または測定手段(10)と主配管における気体の流れ方向における下流側の連結部(5)の間の2箇所に、開閉弁(13、14)を備えていることが好ましい。このような構成をとることで、当該制御手段および/または測定手段を取り外す必要がある場合に、当該開閉弁(13、14)を閉じ、バイパス管に設けられた開閉弁(12)を開いて気体を流すことができるので、本発明の配管設備を有する重合体製造設備の運転を停止することなく、当該制御手段および/または測定手段を取り外すことができる。
【0020】
また、上流側の連結部(4)から、上記の下流側の連結部(5)に向けてバイパス管に気体を流通させた場合に、流れ方向が水平方向より上向きとなる部位を有するようにバイパス管が配設されていることが好ましい。
【0021】
また、図5に示すように、バイパス管は、バイパス管とドレン抜き管との接続部(6)と、上記上流側の連結部(4)との間に開閉弁(15)を備えており、
バイパス管とドレン抜き管との接続部(4)と該開閉弁(15)との間のバイパス管に、弁を有する気体導入用配管(21)が接続されていることが好ましい。気体導入用配管の弁は開閉弁であっても制御弁であってもよい。図5に示すように、バイパス管のうち、上流側の連結部(4)から、上記の下流側の連結部(5)に向けてバイパス管に気体を流通させた場合に、開閉弁(15)および気体導入用配管(21)は、気体の流れ方向が下向きになっている部分においてバイパス管に接続されていることがより好ましい。このような構成をとれば、ドレンを抜く際に、開閉弁(12)および(15)を閉じ、ドレン抜き管に備えられた開閉弁(11)を開き、気体導入用配管(21)から気体を導入することで、本発明の配管設備を有する重合体製造設備の運転を停止することなく、効率よくドレン抜きをすることができる。気体導入用配管から導入する気体は、窒素であることが好ましい。
【0022】
本発明の配管設備は、重合体製造における気体輸送に好適に用いられる。特に、重合体製造設備において、フラッシュ乾燥機から気体を輸送する配管設備、ベント式押出機のベント口から気体を輸送する配管設備に、好適に用いられる。
【0023】
本発明の配管設備を有する重合体製造設備は、ポリスチレンやポリエチレン等の樹脂、およびスチレン・ブタジエンゴムやエチレン・プロピレン・ジエンゴム等のゴム等の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0024】
1・・・主配管
2・・・バイパス管
3・・・ドレン抜き管
4〜7・・・管同士の連結部
10・・・制御手段および/または測定手段
11〜15・・・開閉弁
21・・・気体導入用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主配管と、該主配管に2箇所で連結するバイパス配管を備えている気体輸送用の配管設備であって、
該主配管は、上記バイパス管との2箇所の連結部位の間に、制御手段および/または測定手段を有し、
該バイパス管は、主配管における気体の流れ方向における上流側の連結部で、水平方向を基準として主配管よりも下向きに連結されており、ドレン抜き管を有すると共に、該ドレン抜き管の接続部と主配管における気体の流れ方向における下流側の連結部との間に、開閉弁を有し、かつ、
主配管における気体の流れ方向が、上記上流側の連結部の通過前後で、それぞれ、
水平方向または水平方向よりも下向き、
および、
水平方向または水平方向より上向き
に設定されている
気体輸送配管設備。
【請求項2】
上記の上流側の連結部と、上記の制御手段および/または測定手段の間、および該制御手段および/または測定手段と上記の下流側の連結部の間の2箇所に、開閉弁を備えている請求項1に記載の配管設備。
【請求項3】
上記の上流側の連結部から、上記の下流側の連結部に向けてバイパス管に気体を流通させた場合に、当該気体の流れ方向が水平方向より上向きとなる部位を有するようにバイパス管が配設されている請求項1または2に記載の配管設備。
【請求項4】
主配管における気体の流れ方向が、上記の上流側の連結部の通過前において、鉛直方向下向きとなるように設定されている請求項1〜3のいずれかに記載の配管設備。
【請求項5】
バイパス管は、バイパス管とドレン抜き管との接続部と、上記上流側の連結部との間に開閉弁を有し、
バイパス管とドレン抜き管との接続部と該開閉弁との間のバイパス管に、弁を有する気体導入用配管が接続されている請求項1〜4のいずれかに記載の配管設備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の配管設備を有する重合体製造設備。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の配管設備を、フラッシュ乾燥器から気体を輸送する配管設備及び/又はベント式押出機のベント口から気体を輸送する配管設備に有する重合体製造設備。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の重合体製造設備により重合体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−177046(P2012−177046A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41476(P2011−41476)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】