説明

配管部材の包装方法

【課題】清浄度を確保しつつ配管部材の変形を防止すると共に、費用および時間の節約を図る上で有利な配管部材の包装方法を提供する。
【解決手段】清浄なガスが封入された第1の袋体20で配管本体12を挟み込むと共に、第1の袋体20の折り返された部分同士を留めて第1の袋体20で配管本体12を挟み込んだ状態を保持する。清浄なガスが封入された2つの第2の袋体22で両端の継手14をそれぞれ挟み込むと共に、各第2の袋体22の折り返された部分をそれぞれ第1の袋体20の部分に留めることで第1、第2の袋体22で配管本体12を挟み込んだ状態を保持する。第1、第2の袋体20、22を、第3の袋体24に収容すると共に、清浄なガスを第3の袋体24に充填して密閉する。第1、第2、第3の袋体20、22、24を第4の袋体26に収容すると共に、清浄なガスを第4の袋体26に充填して密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管部材の包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塵埃の付着を嫌う部品を包装する方法として、部品であるプラスチックレンズを保護シートで挟み、袋体に収容すると共に、袋体に清浄なガスを充填して密閉する包装方法が知られている(特許文献1参照)。
ところで、前記の塵埃の付着を嫌う部品が、外径に比べて十分に大きい長さを有し所定の形状に屈曲または湾曲形成された金属製の配管本体と、該配管本体の両端に取着された継手とを備える配管部材であり、前記配管本体の湾曲形成された形状が極めて重要である場合、前記の包装方法を用いると次の不都合が生じる。
すなわち、上述の方法で配管部材を収容した場合、袋体に衝撃が加わると、外力または慣性力により配管部材の部分に無理な力が加わる可能性があり、配管本体が変形してしまい、配管本体の湾曲形成された形状を保つことができなくなる。
そこで、このような配管部材の包装に際しては、湾曲形成された配管部材を収容保持する凹部を有する専用の2つ割りの梱包箱を用いている。
そして、清浄な環境下において梱包箱を洗浄して塵埃を除去したのち、清浄な環境下において梱包箱の凹部に配管部材を収容保持させ、次いで、清浄な環境下において専用の梱包箱と共に配管部材を袋体に収容し、袋体内を真空として密閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−99313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の包装方法では、専用の梱包箱が必要となることは無論のこと、専用の梱包箱の洗浄作業は極めて面倒な作業となるため、多大な費用および時間を要する不利がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、清浄度を確保しつつ配管部材の変形を防止すると共に、費用および時間の節約を図る上で有利な配管部材の包装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、外径に比べて十分に大きい長さを有し所定の形状に屈曲または湾曲形成された金属製の配管本体と、該配管本体の両端に取着された継手とを備える配管部材を清浄な環境下で包装する包装方法であって、清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された第1の袋体で前記配管本体をその長手方向と交差する方向から挟み込むと共に、粘着テープで前記第1の袋体の部分同士を留めて前記第1の袋体で前記配管本体を挟み込んだ状態を保持する第1の包装状態を形成する第1の工程と、清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された2つの第2の袋体で前記両端の継手をそれぞれ挟み込むと共に、粘着テープで前記各第2の袋体の部分をそれぞれ前記第1の袋体の部分に留めることで前記第1、第2の袋体で前記配管本体を挟み込んだ状態を保持する第2の包装状態を形成する第2の工程と、前記第2の包装状態を形成する前記第1、第2の袋体を、透明で可撓可能な材料から形成された第3の袋体に収容すると共に、清浄なガスを前記第3の袋体に充填して密閉することで前記第1、第2の袋体を移動不能とした第3の包装状態を形成する第3の工程と、前記第3の包装状態を形成する前記第1、第2、第3の袋体を、透明で可撓可能な材料から形成された第4の袋体に収容すると共に、清浄なガスを前記第4の袋体に充填して密閉することで第4の包装状態を形成する第4の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第2の包装状態により配管本体と2つの継手は個別に自由に移動できなくなっており、第3の包装状態により、配管部材は第1、第2の袋体を介して第3の袋体によって該第3の袋体の内部で動かないように保持され、さらに、第3の袋体は第4の袋体に挿入されているので、第4の袋体に衝撃が加わった場合、その衝撃は第1乃至第4の袋体で吸収され、また、屈曲または湾曲形成された配管本体の形状が外力または慣性力により変形されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】配管部材10の平面図である。
【図2】第1の包装状態を示す説明図である。
【図3】図2のAA線断面図である。
【図4】第2の包装状態を示す説明図である。
【図5】図4のBB線断面図である。
【図6】第3の包装状態を示す説明図である。
【図7】第4の包装状態を示す説明図である。
【図8】各継手14が第5の袋体28に収容された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明方法で包装を行う配管部材について説明する。
図1に示すように、配管部材10は、配管本体12と、2つの継手14とを備える。
配管本体12は、金属製であり、外径に比べて十分に大きい長さを有し所定の形状に屈曲または湾曲形成されている。この屈曲または湾曲形成された形状が配管部材10にとって極めて重要である。
配管本体12を構成する金属材料としては、ステンレス、あるいは、ニッケル合金など従来公知のさまざまな金属材料が使用可能である。
2つの継手14は、配管本体12の両端に取着され、本実施の形態では、継手14も配管本体12と同様の金属材料で形成されている。
また、本実施の形態では、配管本体12の外径は、例えば、1/8インチ以下(0.32mm以下)であり、配管本体12の長さは例えば数十mm、あるいは、100mm以上であり、外径と長さの比率は数十倍あるいは百倍以上である。
したがって、配管本体12は十分な剛性を有しておらず、継手14あるいは配管本体12に荷重や衝撃が掛かると、配管本体12が変形し、配管本体12が前記の所定形状を保てなくなってしまう。
【0009】
次に、包装方法について説明するが、以下に説明する各工程の全ては、クリーンルームなどのように予め規定された清浄度を有する環境下で、言い換えると、清浄な環境下において実施される。
【0010】
まず、配管部材10を、清浄な環境下において純水などの洗浄液を用いて洗浄したのち、乾燥する。
また、後述する第1乃至第4の袋体20、22、24、26および粘着テープ18A、18B、18Cも清浄な環境下において純水などの洗浄液を用いて洗浄したのち、乾燥するか、あるいは既に規定清浄度を満足しているものを入手して使用する。
これにより、配管部材10、第1乃至第4の袋体20、22、24、26、粘着テープ18A、18B、18Cは塵埃が除去された清浄な状態となっている。
【0011】
1)第1の工程
図2、図3に示すように、清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された第1の袋体20で配管本体12をその長手方向と交差する方向から挟み込むと共に、粘着テープ18Aで第1の袋体20の折り返された部分同士を留めて第1の袋体20で配管本体12を挟み込んだ状態を保持する第1の包装状態を形成する。
第1の袋体20に封入する清浄なガスは、金属製の配管本体12、継手14に酸化などの影響を与えることを防止する上で不活性ガスであることが好ましい。
このような不活性ガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガスなどの従来公知のさまざまなガスが使用可能であるが、窒素ガスがコスト面で有利である。
なお、以下に示す第2の袋体22に封入する清浄なガス、第3、第4の袋体24、26に充填する清浄なガスも前記と同様である。
また、第1の袋体20、および、以下に示す第2、第3、第4の袋体22、24、26を構成する透明で可撓可能な材料としては、ポリエチレンなど従来公知のさまざまな合成樹脂材料が使用可能である。
また、粘着テープ18A、および、以下に示す粘着テープ18B、18Cとしては、配管部材10に対する塵埃の付着を防止する上で発塵性を有しないものを用いることが好ましい。
【0012】
2)第2の工程
次いで、図4、図5に示すように、清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された2つの第2の袋体22で両端の継手14をそれぞれ挟み込むと共に、粘着テープ18Bで各第2の袋体22の折り返された部分をそれぞれ第1の袋体20の部分に留めることで第1、第2の袋体22で配管本体12を挟み込んだ状態を保持する第2の包装状態を形成する。
したがって、第2の包装状態において、配管本体12と2つの継手14は、第1、第2の袋体20、22を介して互いに拘束される。すなわち、配管本体12と2つの継手14は個別に自由に移動できにくくなる。
【0013】
3)第3の工程
次いで、図6に示すように、第2の包装状態を形成する第1、第2の袋体20、22を、透明で可撓可能な材料から形成された第3の袋体24に収容すると共に、清浄なガスを第3の袋体24に充填して密閉することで第3の包装状態を形成する。
第3の袋体24の密閉は、例えばヒートシールなど従来公知のさまざまな方法によって行うことができる。
本実施の形態では、第3の袋体24は清浄なガスが充填された状態で、該第3の袋体24に収容された、第2の包装状態を形成する第1、第2の袋体20、22が動かない大きさで形成されている。
したがって、第3の包装状態において、配管部材10は配管本体12および2つの継手14が第1、第2の袋体20、22を介して互いに拘束され、かつ、配管部材10は第1、第2の袋体20、22を介して第3の袋体24によって該第3の袋体24の内部で動かないように保持される。言い換えると、第3の包装状態では、第1、第2の袋体20、22が移動不能とされる。
【0014】
4)第4の工程
次いで、図7に示すように、第3の包装状態を形成する第1、第2、第3の袋体20、22、24を、透明で可撓可能な材料から形成された第4の袋体26に収容すると共に、清浄なガスを第4の袋体26に充填して密閉することで第4の包装状態を形成する。
第4の袋体26の密閉も、第3の袋体24の密閉と同様に、例えばヒートシールなど従来公知のさまざまな方法によって行うことができる。
このような第4の包装状態において、第3の袋体24と第4の袋体26との間に空間が形成されているため、第3の袋体24は第4の袋体26の内部で多少移動できる状態となっている。
以上で配管部材10の包装が完了する。
なお、配管部材10の包装が完了したならば、例えば、クッション材などを介して立方体状の木材や金属からなる梱包箱に梱包し、配管部材10の配送を行う。
【0015】
次に作用効果について説明する。
第4の包装状態の配管部材10がクッション材などを介して収容された梱包箱に衝撃が加わった場合、第2の包装状態により配管本体12と2つの継手14は個別に自由に移動できなくなっており、第3の包装状態により、配管部材10は第1、第2の袋体20、22を介して第3の袋体24によって該第3の袋体24の内部で動かないように保持され、さらに、第3の袋体24は第4の袋体24に挿入されているので、屈曲または湾曲形成された配管本体12の形状が配管本体12自体の慣性力により変形されることが防止される。
また、万が一、例えば、ロッドなどが梱包箱を貫通して第4の袋体26に当たり、第4の袋体26に衝撃が加わった場合、その衝撃は第1乃至第4の袋体20、22、24、26で吸収されるので、その衝撃で屈曲または湾曲形成された配管本体12の形状が変形されることが防止される。
したがって、従来の高価な専用の2つ割りの梱包箱が不要となることは無論のこと、専用の2つ割りの梱包箱の面倒な洗浄作業も必要なくなるため、清浄度を確保しつつ配管部材10の変形を防止すると共に、費用および時間の節約を図る上で有利となる。
【0016】
また、第3の袋体24が清浄なガスと共に第4の袋体26に密閉されているので、搬送中に万が一第4の袋体26が破損したとしても、清浄なガスが充填された第3の袋体24の内側に配管部材10が位置しているため、配管部材10に塵埃が付着することを防止でき、配管本体12の清浄度を確保する上で有利となる。
また、第3の袋体24が清浄なガスと共に第4の袋体26に密閉されているので、第3の袋体24に密閉された清浄なガスの内圧を長時間保持する上で有利となり、屈曲または湾曲形成された配管本体12の形状の変形を防止する上で有利となる。
【0017】
また、第1、第2の袋体20、22に清浄なガスが充填されているため、清浄な環境下において配管部材10を取り出す際に、第1の袋体20または第2の袋体22を誤って破損してしまったとしても、配管部材10に塵埃が付着することを防止でき、配管本体12の清浄度を確保する上で有利となる。
【0018】
また、第1乃至第4の袋体20、22、24、26が透明であるため、配管部材10を容易に視認でき、配管部材10の包装作業および取り出し作業の効率化を図る上で有利となる。
また、第4の包装状態において、第3の袋体24と第4の袋体26との間に空間が形成され、第3の袋体24は第4の袋体26の内部で多少移動できる状態となっているので、第4の包装状態の配管部材10がクッション材などを介して収容された梱包箱に衝撃が加わった場合、屈曲または湾曲形成された配管本体12の形状が慣性力により変形されることを防止する上で有利となる。
【0019】
なお、図8に示すように、第1の工程あるいは第2の工程に先立って、各継手14を、透明で可撓可能な材料から形成された第5の袋体28に収容する継手収容工程をさらに行い、第2の工程において、2つの第2の袋体22による両端の継手14の挟み込みを第5の袋体28を介して行なうようにしてもよい。
なお、図8において、符号18Cは、第5の袋体28の開口部の内周を配管本体12の外周に当て付けるために開口部の外周に貼り付けられた粘着テープを示す。
このようにすると、清浄でない環境下において、第4の袋体26、第3の袋体24の双方が万が一破損したとしても、継手14を介して配管本体12の内部通路に塵埃が侵入することを防止する上で有利となる。
【符号の説明】
【0020】
10……配管部材、12……配管本体、14……継手、18A、18B、18C……粘着テープ、20……第1の袋体、22……第2の袋体、24……第3の袋体、26……第4の袋体、28……第5の袋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径に比べて十分に大きい長さを有し所定の形状に屈曲または湾曲形成された金属製の配管本体と、該配管本体の両端に取着された継手とを備える配管部材を清浄な環境下で包装する包装方法であって、
清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された第1の袋体で前記配管本体をその長手方向と交差する方向から挟み込むと共に、粘着テープで前記第1の袋体の部分同士を留めて前記第1の袋体で前記配管本体を挟み込んだ状態を保持する第1の包装状態を形成する第1の工程と、
清浄なガスが封入され透明で可撓可能な材料から形成された2つの第2の袋体で前記両端の継手をそれぞれ挟み込むと共に、粘着テープで前記各第2の袋体の部分をそれぞれ前記第1の袋体の部分に留めることで前記第1、第2の袋体で前記配管本体を挟み込んだ状態を保持する第2の包装状態を形成する第2の工程と、
前記第2の包装状態を形成する前記第1、第2の袋体を、透明で可撓可能な材料から形成された第3の袋体に収容すると共に、清浄なガスを前記第3の袋体に充填して密閉することで前記第1、第2の袋体を移動不能とした第3の包装状態を形成する第3の工程と、
前記第3の包装状態を形成する前記第1、第2、第3の袋体を、透明で可撓可能な材料から形成された第4の袋体に収容すると共に、清浄なガスを前記第4の袋体に充填して密閉することで第4の包装状態を形成する第4の工程と、
を含むことを特徴とする配管部材の包装方法。
【請求項2】
前記第4の袋体は、前記清浄なガスが充填された状態で、該第4の袋体の内部で前記第3の包装状態を形成する前記第3の袋体が動ける大きさで形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の配管部材の包装方法。
【請求項3】
前記清浄なガスは不活性ガスである、
ことを特徴とする請求項1または2記載の配管部材の包装方法。
【請求項4】
前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガスの何れかである、
ことを特徴とする請求項3記載の配管部材の包装方法。
【請求項5】
前記第1の工程あるいは前記第2の工程に先立って、前記各継手を、透明で可撓可能な材料から形成された第5の袋体に収容する継手収容工程をさらに含み、
前記第2の工程において、前記2つの第2の袋体による前記両端の継手の挟み込みは、前記第5の袋体を介して行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の配管部材の包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230841(P2011−230841A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105726(P2010−105726)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】