説明

配管

【課題】配管内側の劣化を漏水前に知ることが可能な配管を得る。
【解決手段】ホース12は、内側から順に、内管層20、補強層30及び外皮層40を備え、内管層20は、内管内層22と内管外層24とで構成された2層構造とされ、補強層30は、内側補強層32と外側補強層34とで構成された2層構造とされる。内管外層24は視認性の高い色に着色された材料で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を流体が流れる配管に関し、特に、塩素を含む水等が内部を流れる可能性がある配管に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の例として、特許文献1には、内側より内面樹脂層、内管ゴム層、補強層及び外被ゴム層を順次積層して構成し、柔軟性、耐冷媒透過性及び耐熱耐久性に優れた冷媒輸送用複合ホースが記載されている。また、特許文献2には、内面層チューブを共重合フッ素系樹脂で構成し、塩素による劣化防止等を図った給水・給湯用ホースが記載されている。
【0003】
ところで、このような配管では、たとえば内部を流れる水に含有される塩素等の影響で、配管内側が劣化することがあるため、このような劣化を事前に認識できるようにすることが望まれる。たとえば特許文献3には、配管継手部をカバー体で被覆し、配管から流れ出た液体を色で表示する表示手段を設けた配管継手部の漏水発見装置が記載されている。しかし、引用文献3に記載のものでは、配管継手部からの漏水した後に、これを検知できるものであるため、配管の劣化を漏水前に知ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−336956号
【特許文献2】特開2006−144875号
【特許文献3】特開2004−183849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、配管内側の劣化を漏水前に知ることが可能な配管を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、内部を流体が流れる配管であって、前記配管の最も外側を覆う外層部と、前記外層部よりも内側に配置された1層又は複数層の非外層部と、を有し、前記非外層部の少なくとも1層が、視認可能に着色された着色層部とされている。
【0007】
この配管では、外層部よりも内側の非外層部の少なくとも1層が着色層部とされており、視認可能に着色されている。したがって、配管の内部の劣化が着色層部に達し、着色層部も劣化して配管から分離されると、着色層部の一部が配管内部の流体と共に流れる。そして、流体が配管から排出される(たとえば水道水の場合には蛇口等から水道水が吐出される)と、着色層部を視認することで、配管の内側の劣化を知ることができる。
【0008】
着色層部は、外層部よりも内側の非外層部に設けられている。したがって、配管の劣化を、外層部に達する前に知ることができる。
【0009】
請求項1に記載の発明において、着色層部としては、たとえば、請求項2に記載のように、着色剤を含有する材料により構成できる。この構成では、内管内部の劣化により、材料そのものが剥落して内管内部の液体に混入する。特に、請求項3に記載のように、前記着色層部が複数層とされ、層ごとに異なる色に着色されていると、配管の劣化の進行の程度を、剥落して排出された着色層部の色で知ることができる。
【0010】
着色剤としては、請求項4に記載のように、顔料、染料、添加剤(タルクやフィラー等)、合成着色料があるが、特に、食品に用いる合成着色料とすれば、食品衛生性にも影響を与えないという効果が得られる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記非外層部が、前記配管の最も内側に位置する内層部と、前記外層部の内側に位置する補強層部と、前記内層部と前記補強層部の間に位置する前記着色層部と、を有する。
【0012】
この配管では、内側から内層部、着色層部、補強層部(ここまでが非外層部)、外層部が順に並ぶ層構成とされる。したがって、最も内側の層(内層部)が劣化しただけでは、着色層部は剥落しない。そして、劣化が進行して次の着色層部に達すると、着色層部が流体と共に排出され、劣化を知ることができる。この状態でも、着色層部の外側には補強層部が位置しており、配管を補強しているので、漏水は確実に防止される。そして、最も内側の層を着色層部とした構成と比較して、劣化が着色層部に達するまでは実質的に配管を使用できることになる。
【0013】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記着色層部が、水溶性塗料を含んでいる。
【0014】
したがって、配管の劣化が着色層部に達したときには、水溶性塗料で着色された流体が排出され、劣化を容易に知ることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記着色層部が、水との反応前は無色で水との反応により着色される成分を含有する。
【0016】
したがって、配管の劣化が着色層部に達すると、着色層部が配管内部の水と反応して着色される。着色層部は、水との反応前は無色なので、製造時等の取り扱いに優れる。
【0017】
請求項8に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記着色層部が、水によっては着色されず塩素との反応により着色される成分を含有する。
【0018】
したがって、配管の劣化が着色層部に達すると、着色層部が配管内部の水に含有される塩素と反応して着色される。塩素は一般に、水道水等の配管内部の水には含まれているが、配管外部の水には含まれていないので、着色層部に外部からの水が浸入した場合には着色されない。すなわち、配管内部からの劣化と、外部からの水分浸入とを区別できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、配管内側の劣化を漏水前に知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のホースを部分的に破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明の第1実施形態のホース12が示されている。このホース12は、全体として円筒状に形成されており、内側から順に、内管層20、補強層30及び外皮層40を備えている。さらに、内管層20は、内管内層22と内管外層24とで構成された2層構造とされ、補強層30は、内側補強層32と外側補強層34とで構成された2層構造とされている。
【0022】
内管層20を構成する材料としては、たとえば、ゴム又は熱可塑性エラストマーが好適に使用されるが、ポリブテン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂等で構成することもできる。特に、ホース12内を水道水が流れることが想定される場合には、水道水中に含まれる塩素による劣化を防止するために、少なくとも水又は湯と接する内管内層22の内面をポリブテン樹脂又は架橋ポリエチレン樹脂のいずれかで構成したり、ゴム等の内面にフッ素樹脂をコーティングしたりしてもよい。この場合の内管層20の肉厚は、0.15mm〜0.50mmとすることができる。
【0023】
さらに、内管層20としては、たとえば、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとへキサフルオロプロピレンとからなる共重合フッ素系樹脂を用いると、耐薬品性、非粘着性、ガスバリヤー性、非溶出性、食品衛生性等に優れるため、飲料用、自動車燃料用等として特に好適なものとなる。この場合の内管層の肉厚は0.01〜0.50mmとすることができ、好ましくは0.03〜0.20mmである。
【0024】
この共重合フッ素樹脂層の融点は、100〜200℃であることが好ましい。このような低融点の共重合フッ素樹脂層とすることにより、加工性が向上し、かつ、ポリエチレン等の低融点のものとの多層化ができるようになる。
【0025】
また、この共重合フッ素樹脂層を構成するものは3成分系であり、その一つであるテトラフルオロエチレンを成分に有するフッ素樹脂は、耐薬品性、非粘着性、ガスバリヤー性、非溶出性、食品衛生性等に優れた特性を示す。
【0026】
第二の成分であるビニリデンフルオライドは、食品衛生上の問題がなく、摩擦係数が低く、匂いの吸着が少ないので、特に、飲料用のチューブとして好ましい。また、ビニリデンフルオライドの硬度を低くし、柔軟性を増加させるため、第三の成分としてヘキサフルオロプロピレンを用いることが好ましい。かかる成分を加えると、破断引張強度が増し、曲げ弾性率が小さくなる。又、共重合フッ素樹脂層におけるフッ素含有量が増大するため、表面疎水性、耐バクテリア性、耐汚染性、耐酸性、耐アルカリ性が向上する
【0027】
これに対し、内管外層24は、水道水中の塩素が直接的に触れることは(内管内層22の劣化が進行しない限り)ないので、たとえば、ポリオレフィン系エラストマーや、スチレン系エラストマー等の柔らかい樹脂材料が好ましく用いられる。この内管外層24の肉厚は0.5〜5.0mmとすることでき、好ましくは、1.0〜2.0mmである。
ここで、特に本実施形態では、内管外層24として、上記した材料をさらに、着色したものを用いている。着色する場合の色は、内管外層24が劣化し、内部の流体に削られて混入した場合に視認性の高い色、たとえば、赤、青、緑などに着色されている。着色剤の具体例としては、顔料、染料、添加剤(タルクやフィラー等)、合成着色料が挙げられる特に、食品に用いる合成着色料を用いると、食品衛生性に影響を与えないという効果が得られる。なお、ここでいう「視認性が高い」とは、使用者が通常時との違いを判別(視認)できることを言う。
【0028】
なお、内管内層22と内管外層24の間には、必要に応じて、これらの接着のための中間層(図1では図示省略)が設けられる。中間層としては、たとえば、グリシジルメタクリレートを含有するエチレン共重合樹脂を、ポリエチレン又はポリプロピレンに配合した層を用いることができ、さらに、エチレン酢酸ビニール、や前記の化合物を主成分とするオレフィン系エラストマー、又はポリスチレン、又はポリエステル系エラストマーに配合したものでもよい。
【0029】
補強層30としては、1層構造としてもよいが、本実施形態では上記したように、内側補強層32と外側補強層34との2層構造としている。内側補強層32は、内管層20の上側にスパイラル状に巻き付けられた繊維糸、で構成されており、ホース12の柔軟性が確保されている。この繊維糸としては、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維やコットン等の植物繊維を使用することができる。
【0030】
これに対し、外側補強層34は、たとえば、φ0.2〜1.0mmの太さの軟質又は硬質の編み組みされた金属硬線(ステンレス細線)、或いは合成繊維を用いた編組層又はスパイラル状の巻回層、或いは、合成繊維上にステンレス細線で構成されている。特に、外側補強層34を金属硬線で構成することで、キンクの発生を効果的に防止すると共に、通水時のホースの耐圧力を確保することができる。なお、外側補強層34の金属硬線の隙間を、内側補強層32を構成する繊維糸が埋めており、いわゆる吹き抜けが防止されている。
【0031】
外皮層40としては、たとえば、スチレン系熱可塑性樹脂で構成することができる。この外皮層40は、外側補強層34を構成する金属硬線を保護し、金属硬線の外傷を防止している。
【0032】
次に、本実施形態のホース12の作用を説明する。
【0033】
本実施形態のホース12では、その内部を水道水が流れることが想定される。このとき、水道水中に含まれる塩素による劣化を防止するために、本実施形態では、少なくとも水又は湯と接する内管内層22の内面をポリブテン樹脂又は架橋ポリエチレン樹脂のいずれかで構成したり、ゴム等の内面にフッ素樹脂をコーティングしたりしているが、それでも、長期使用により、ホース12が内面から劣化することがある。
【0034】
この劣化により、最初は内管内層22が流体(水道水)に削られて剥落するが、劣化の進行により内管外層24も削られて剥落する。そして、内管外層24の剥落片が流体と共に流れて、流体出口(たとえば水道の蛇口)から排出される。内管内層22の剥落片は着色されているので、水道の使用者は容易に剥落片を視認でき、これにより、ホース12の内部が劣化していることを知る。ただし、この段階では、劣化は補強層30や外皮層40には達しておらず、ホース12からの漏水のおそれはない。すなわち、使用者は、ホース12の劣化による漏水の前段階で、ホース12の劣化を知ることができる。
【0035】
なお、上記では、内管外層24を着色した材料で構成した例を挙げたが、このように着色した層は、内管外層24に限定されず、たとえば、内管内層22や、内側補強層32、外側補強層34であってもよい。ただし、外皮層40に着色した場合は、劣化が外皮層40に達するまで、使用者が劣化を知ることができないが、外皮層40の劣化が発生した段階では、短時間で漏水するおそれがある。したがって、着色する層としては、外皮層40以外の層、すなわち、非外層部であることが好ましい。
【0036】
また、内管内層22と着色した材料で構成した場合には、内管内層22が劣化して剥落した段階で、使用者はホース12の劣化を知ることができ、漏水の確実な防止という観点からは好ましい。ただし、ホース12の実使用にあたっては、内管内層22が劣化した段階から短期間で漏水する可能性は低く、その後もある程度の期間の使用は可能である。したがって、ホース12を、漏水を未然に防止しつつより長期間にわたって使用する観点からは、内管内層22よりも内管外層24を着色した材料で構成することが好ましい。
【0037】
さらに、被害層部以外の複数の層を、それぞれ異なる色の材料で構成してもよい。たとえば、内管内層22を青、内管外層24を赤とする、などである。これにより、使用者は、ホース12の劣化の進行程度を視認した剥落片の色によって段階的に知ることが可能になる。
【0038】
また、上記では、ホース12を構成する層のうち、非外層部のいずれかの層を、着色した材料で構成した例を挙げたが、このような着色樹脂で構成された層(上記実施形態では内管外層24)に代えて(あるいはこれと併用して)、内管内層22と内管外層24の間、あるいは、内管外層24と内側補強層32の間に、水溶性塗料を含有する層を設けて、この層を本発明に係る着色層部としてもよい。このように水溶性塗料を含有すると、ホースの劣化が着色層部に達したときには、水溶性塗料で着色された流体が排出され、劣化を容易に知ることができる。着色層部の劣化時には、水溶性塗料で着色された流体が排出され、劣化を容易に知ることができる。着色層部は、内管内層22よりも外側に位置しているので、少なくとも内管内層22が劣化する前段階で水溶性塗料が不用意に配管内部の流体中に溶け出すことはない。水溶性塗料としては、人体に影響がないものが好ましい。
【0039】
また、水溶性塗料を含有する層に代えて、水との反応前は無色で水との反応により着色される成分を含有する層を設け、この層を本発明に係る着色層部としてもよい。この構造では、ホースの劣化が着色層部に達すると、着色層部が配管内部の水と反応して着色される。しかも、着色層部は、水との反応前は無色なので、製造時等の取り扱いに優れる。なお、水と反応して着色される材料(試薬)としては、たとえば、リトマス粉末を挙げることができる。
【0040】
さらに、水溶性塗料を含有する層や、水との反応前は無色で水との反応により着色される成分を含有する層に代えて、水によっては着色されず塩素との反応により着色される成分を含有する層を設け、この層を本発明に係る着色層部としてもよい。この構造では、たとえばホースの内部を流れる流体が一般的な水道水である場合に、ホースの劣化が着色層部に達すると、着色層部が配管内部の水に含有される塩素と反応して着色される。塩素は一般に、水道水等のホース内部の水には含まれているが、ホース外部の水には含まれていないので、着色層部に外部からの水が浸入した場合には着色されない。すなわち、ホース内部からの劣化と、外部からの水分浸入とを区別できるようになる。なお、塩素と反応して着色される材料(試薬)としては、たとえば、塩素との反応でピンク色になるDPD試薬を挙げることができる。
【0041】
上記した水溶性塗料を含有する層や、水との反応前は無色で水との反応により着色される成分を含有する層、さらには、水によっては着色されず塩素との反応により着色される成分を含有する層を、ホース12の最も内側、すなわち内管内層22の内側に設けると、ホース12の劣化前であっても、内部の水が着色されてしまうので、ホース12の最も内側以外を、これらの層とればよい。
【0042】
また、本発明において適用対象となる配管部材も、可撓性、すなわち柔軟性を有し、曲げ変形可能であれよい。すなわち、曲げ変形させることで施工性が高くなる。配管部材としては、上記したホース12に限定されず、たとえば、軟質樹脂製のホースであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
12 ホース
20 内管層
22 内管内層(内層部)
24 内管外層(着色層部)
30 補強層(補強層部)
32 内側補強層
34 外側補強層
40 外皮層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流体が流れる配管であって、
前記配管の最も外側を覆う外層部と、
前記外層部よりも内側に配置された1層又は複数層の非外層部と、
を有し、
前記非外層部の少なくとも1層が、視認可能に着色された着色層部とされている配管。
【請求項2】
前記着色層部が、着色剤を含有する材料により構成されている請求項1に記載の配管。
【請求項3】
前記着色層部が複数層とされ、層ごとに異なる色に着色されている請求項2に記載の配管。
【請求項4】
前記着色剤が、顔料、染料、添加剤、合成着色料のいずれか1つである請求項2又は請求項3に記載の配管。
【請求項5】
前記非外層部が、
前記配管の最も内側に位置する内層部と、
前記外層部の内側に位置する補強層部と、
前記内層部と前記補強層部の間に位置する前記着色層部と、
を有する請求項1に記載の配管。
【請求項6】
前記着色層部が、水溶性塗料を含んでいる請求項5に記載の配管。
【請求項7】
前記着色層部が、水との反応前は無色で水との反応により着色される成分を含有する請求項5に記載の配管。
【請求項8】
前記着色層部が、水によっては着色されず塩素との反応により着色される成分を含有する請求項5に記載の配管。

【図1】
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【公開番号】特開2012−47289(P2012−47289A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190748(P2010−190748)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】