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配線パターンとこれを用いた電子素子、有機半導体素子、積層配線パターンおよび積層配線基板
説明

配線パターンとこれを用いた電子素子、有機半導体素子、積層配線パターンおよび積層配線基板

【課題】導電パターンの角部の盛り上がりが少なく、絶縁層を介して積層配線構造とした場合でも絶縁特性の良好な配線パターンと、これを用いた電子素子等を提供する。
【解決手段】濡れ性変化層2に、エネルギーを付与して高表面エネルギー部3とし、その上に導電性液体により導電パターン5を形成して配線パターン1とする。その際、導電パターンの平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線形状とし、その断面視形状は該角部の盛り上がりが少なく、パターン中央部となだらかに連なり全体が略平坦な形状とする。配線パターン1を用いて積層配線パターン、積層配線基板を構成する。又は濡れ性変化層2の低表面エネルギー部に接して半導体層を設け、電子素子、有機半導体素子を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターンにおける導電パターンの形状に関し、詳しくは、濡れ性変化層とその高表面エネルギー部上に設けられた導電パターン層を備えた構成体からなり、その導電パターンの角部に形成される導電層膜の盛り上がりを低く抑制した配線パターンと、この配線パターンを用いた電子素子や有機半導体素子(例えば、薄膜トランジスタ等)、積層配線パターン、あるいは積層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来半導体素子や電子回路等に使われる配線の形成にはフォトリソグラフィ法が用いられているが、高価な設備を必要とするほか、工程が複雑で長くコストを上昇させる原因となっている。製造コストを低減するために、近年、導電性微粒子を含む液体を直接基材に塗布して配線パターンを形成する技術が注目され、種々の提案がされている。
【0003】
例えば、少なくとも1つの角を有する線パターンの該角を構成する少なくとも2本のラインの他にこの角から更に少なくとも1つの突出部を形成するように、パターン形成材料を含有する液体を基板上に塗布して線パターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、撥水性の基板にインクを塗布して配線を形成する場合に、配線の曲がり角でインクの集中が発生し、曲がり角以外の部分のインクが少なくなって配線が断線するなどの不具合が発生することがあるが、特許文献1によれば、配線を伸ばして角部を交点とすることによってインク集中を避けることにより、バルジ(液溜まり)発生による断線や短絡などが防止されるとされている。
【0004】
また、膜パターンの幅を広くするため、先ず液滴により膜パターンの中央部を形成し(第1工程)、形成された中央部に対して一方の側部を形成し(第2工程)、さらに形成された中央部に対して他方の側部を形成(第3工程)する形成方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この提案によれば、第2工程、第3工程では線幅中央部の液滴は乾燥しているか、少なくとも高粘度状態になるため、線幅側部に液滴を塗布しても液滴が流動して集中することがなくなるため、膜パターンの幅広化において問題となる基板面内でのバルジ(液溜まり)発生による断線や短絡などが防止されるとされている。
【0005】
上記特許文献1、特許文献2の手法では、液滴集中による基板面内方向(線パターン間、膜パターン間)のショートや断線は防止できるが、配線の端部(角部)において発生する基板断面方向(膜厚方向)の液滴の盛り上がりは解消できない。このため、例えば、上記線パターン、あるいは膜パターン上に絶縁層を介して電極パターンを設けた場合には絶縁不良を生じ、層間での配線ショートを起しやすいという問題がある。
【0006】
また、所定液滴径で描画した配線の凹部を埋めるように小径の液滴を吐出して膜パターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3には、基板上に薄膜パターンを形成する際、液滴同士が引き合って一体化(バルジを形成)しないように液滴を吐出する方法が記載されている。このように形成された膜パターンによれば、配線部を形成するエッジ部分(配線側部)に鋭角な部分がなくなり、高周波ノイズの発生を低減することができるとされている。
【0007】
上記特許文献3の手法は、特許文献3の図1、2にも示されているように基板面内方向において液滴ドットが繋がって形成される最初のパターンの側面領域に発生する凹部を小径の液滴で埋めることにより高周波ノイズの発生を抑制するものであり、基板断面方向(膜厚方向)の液滴の盛り上がりを防止するものではない。また、バルジを形成しないように基板上に吐出された液滴を逐次乾燥した状態としながら薄膜パターンを形成するものであり、所定の薄膜パターン領域に液滴を一体化して濡れ広がらせてから乾燥する手法には適用が困難である。
【0008】
あるいは、フォトリソグラフィ工程の回数を削減した薄膜トランジスタ、表示素子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。特許文献4は、ゲート電極の形状に関する発明であり、ゲート電極を凹部を有する形状にすることで、それ以降のプロセスで形成されるゲート絶縁膜やソース・ドレイン電極の位置ずれを小さくする方法に関するものである。電極の概念的な構成は特許文献4の図1〜7、9〜12等に記載されているが、印刷法によって電極層を形成する場合の電極の端部(特に角部)において発生する膜の盛り上がり問題やそれに対する対策に関しては配慮されておらず、したがってこれらに関する記述もされていない。
【0009】
先に、本発明者らは、エネルギーの付与によって臨界表面張力が変化する濡れ性変化材料を用い、印刷法が適用できて簡便に微細パターンが形成できる積層構造体を提案した(例えば、特許文献5参照。)。この積層構造体の導電層に関しては、例えば、特許文献5の図1、6〜10のように一般的な構成として概念的に示されている。しかし、液滴(導電性液体)を用いて角部を有する導電パターンを形成した場合に、該角部において発生する導電膜の盛り上がりに関しては考慮されておらず、またこれに関する記述もない。このため、上記積層構造体に絶縁層を介して配線パターンを設け積層配線構造とした場合に導電膜の盛り上がりに基づく絶縁不良を起し易いという難点がある。
【0010】
【特許文献1】特開2003−142802号公報
【特許文献2】特開2004−290958号公報
【特許文献3】特開2004−335849号公報
【特許文献4】特開2005−285843号公報
【特許文献5】特開2005−310962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、エネルギーの付与によって臨界表面張力(表面エネルギー)が変化する濡れ性変化材料を用いて導電性液体(以降、インクと表現することがある。)を付与して導電パターン(以下、パターンと略称することがある。)を形成すると、インクは表面エネルギーの大きい領域である高表面エネルギー部に閉じ込められる。そして、パターン中央部近傍にはインク量が周辺に比べて多く存在し、インクに接する大気中のインク溶媒の蒸気圧が高くなるため、インクの蒸発速度が遅くなる。つまり、単位時間あたりの蒸発量が小さくなる。一方パターン外周部ではインクに接する大気中のインク溶媒の蒸気圧が低いため、インクの蒸発速度は速くなり、単位時間あたりの蒸発量が大きくなる。
【0012】
図1の部分平面図に示すように、特にパターンの角部はインクによって被覆されている面積が小さいため、大気中のインク溶媒の蒸気圧が特に低く、そのためインクの蒸発速度が非常に速い。この蒸発速度の差によって、濡れ性変化材料の高表面エネルギー部にパターンとして付与されたインク中には蒸発速度の遅い部分(パターン中央部)から蒸発速度の速い部分(パターン外周部、特に角部)に向かってインクの流れが生じる。図2にインクの流れの様子を示す。また、直角の角部を有する濡れ性領域にインクを付与した場合のインクの流れを概念的に等時線で示した概略模式図を図3に示す。
【0013】
図3は、濡れ性領域の周辺部でインクが蒸発してパターン外周部へインクの流れが生じる様子を示している。つまり、t=t4の時間が経過すると線L4のラインはパターン外周部に到達する。そのため外周部から線L4までの間にあるインク固形分が外周部付近に集まり、外周部の膜厚が厚くなる。このとき、角部であるB部では、線L4とパターン外周部との間の距離が角部ではないA部と比べて広いため、外周部付近に集まる固形分の量が多くなって角部Bの方が外周部の膜厚が厚くなり、角部に凸状の膜厚ピーク(凸状隆起)、いわゆる「盛り上がり」を形成し、パターンは連山形状を呈する。なお、盛り上がりの厚い部分では、場合により、乾燥後にヒケが発生して膜表面に凹みが生じることもある。
【0014】
例えば、図4の平面図に模式的に示すような角部が直角である導電パターンを濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に形成すると、図中ハッチングを施したパターン端部や、パターンの曲がっている部分、特に角部の膜厚が厚くなって盛り上がりを形成する。このように膜厚分布の大きい導電パターンは膜厚の厚い部分と薄い部分とで乾燥状態や焼成状態が異なりやすく、その結果、導電性のばらつきも発生しやすい。
そして、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電パターン層が形成されてなる構成体、いわゆる配線パターン上に絶縁膜を成膜し、その上にさらに電極層(別の導電パターン層)を形成して積層配線基板とした場合、導電パターン層の膜厚に大きな盛り上がりがあると、その盛り上がり部分で電極間の絶縁膜厚さが相対的に薄くなって電界が集中しやすくなる。そのため、絶縁膜の絶縁破壊が生じやすくなり、積層配線基板として機能しなくなるといった問題点がある。図5に、膜厚の盛り上がり部において電極間の電界が集中しやすくなる様子を説明するための断面模式図を示す。
【0015】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に形成された導電パターン層(以降、導電層と表現することがある。)を備え、且つ、導電パターンの角部において発生する導電層膜の盛り上がりが少なく、絶縁層を介して積層配線構造とした場合においても絶縁不良を回避することができる配線パターンと、該配線パターンを用いた電子素子、有機半導体素子、積層配線パターン、積層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(1)〜(14)に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0017】
(1):エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターン層と、を有する配線パターンにおいて、
前記導電パターン層の平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であることを特徴とする配線パターンである。
【0018】
導電性液体(以降、インクと表現することがある。)を用いて高表面エネルギー部領域にのみ、角部に面取りが施された矩形の配線が施されるため、導電パターン層の膜厚ピークがなだらかで導電パターン全体が3次元的に起伏の少ない配線パターンが提供される。すなわち、導電パターンの断面視形状は、角部に形成される導電膜の盛り上がりと、パターン中央部が丘陵状になだらかに連なった起伏の少ない形状であるため、絶縁層を介して積層配線構造とした場合においても絶縁不良を回避することができる。
また、上記角部に面取りが施された導電パターンの形成には、印刷法のような低コストで、材料使用効率の高い方法が適用でき、高表面エネルギー部全域にインクが濡れ広がりながらも低表面エネルギー部にインクが付与されることがなく形成されるため、微細で高精度の配線パターンが提供される。この配線パターンを用いることにより、各種の電子素子、有機半導体素子、積層配線パターンあるいは積層配線基板などが構成できる。
【0019】
(2):上記(1)に記載の配線パターンにおいて、前記低表面エネルギー部に接して半導体層が設けられていることを特徴とする。
【0020】
低表面エネルギー部に接するようにして半導体層を設ければ、濡れ性変化層と半導体層との界面特性が極めて良好なものとなり、半導体層の移動度を高くすることができる。このような構成の配線パターンとすれば、例えば、ダイオード、トランジスタ、光電変換素子、熱電変換素子等の構成要素として好適に適用することができる。
【0021】
(3):上記(2)に記載の配線パターンにおいて、前記半導体層が有機半導体層であることを特徴とする。
【0022】
半導体層を有機半導体層とすれば、濡れ性変化層による有機半導体の特性向上がより顕著に現れるため、さらに半導体層の移動度を高くすることができる。
【0023】
(4):上記(1)〜(3)のいずれかに記載の配線パターンにおいて、前記配線パターンの一面上に、絶縁層を介して別の導電パターンが設けられていることを特徴とする。
請求項
【0024】
(1)における配線パターンに絶縁層を介して別の導電パターンを設けることにより、積層配線パターンあるいは積層配線基板の構成要素として好適に適用できる。また、(2)、(3)における配線パターンに絶縁層を介して別の導電パターンを設けることにより、各種電子素子の構成要素として好適に適用できる。特に、膜厚差の小さい導電パターンを1層目に用いるため、絶縁膜を介して設ける2層目の別の導電パターンとの絶縁不良が回避され絶縁特性が向上する。
【0025】
(5):上記(4)に記載の配線パターンにおいて、前記別の導電パターンが、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電性液体を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0026】
前記同様、低コストかつ材料使用効率の高い印刷法が適用でき、微細な導電パターンが設計通り高精度に形成された配線パターンが提供される。
【0027】
(6):上記(1)〜(5)のいずれかに記載の配線パターンにおいて、前記平面視形状における角部に施された面取りが、ラウンド形状であることを特徴とする。
【0028】
上記面取りがラウンド形状(円弧形状)であると、角部での導電膜の盛り上がりがさらに抑制できてパターン断面全体の膜厚差が小さくなり、3次元的な起伏がより少なく均質な導電パターン層を有する配線パターンが提供され、絶縁層を介して積層配線構造とした場合においても絶縁特性がさらに向上する。
【0029】
(7):上記(1)〜(6)のいずれかに記載の配線パターンにおいて、前記導電パターンが、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電性液体を用いてインクジエット法により形成されたものであることを特徴とする。
【0030】
より小さな液滴を供給できるインクジェット法を利用して、高表面エネルギー部に導電パターン層を形成することにより、濡れ性変化層の低表面エネルギー部と高表面エネルギー部における表面エネルギーの影響を受けやすくすることができ、微細な導電パターンが確実に形成された配線パターンが提供される。
【0031】
(8):上記(1)〜(7)のいずれかに記載の配線パターンを構成要素として有することを特徴とする電子素子である。
【0032】
前記いずれかの配線パターンを構成要素とすれば、層間の絶縁性に優れた各種電子素子(有機半導体素子、薄膜トランジスタ、電子素子アレイなど)が、歩留まり高く、省資源、かつ低コストで提供される。
【0033】
(9):エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターン層と、該低表面エネルギー部に接して設けられた有機半導体層と、を有する配線パターンの一面上に、濡れ性変化層を介するか、もしくは有機半導体層上に絶縁層を形成し、該絶縁層を介して別の導電パターンを設けてなる有機半導体素子であって、
前記導電パターン層の平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であることを特徴とする有機半導体素子である。
【0034】
低表面エネルギー部に接するようにして有機半導体層を設けることにより、濡れ性変化層による半導体特性向上がより顕著に現れ、移動度が高く、しかも層間の絶縁性の高い有機半導体素子が提供される。また、提供される有機半導体素子は省資源、低コストで得られ、かつ歩留まりが高い。特に、濡れ性変化層自身がゲート絶縁層を兼ねることができるため、さらに低コストな有機半導体素子が提供される。
【0035】
(10):上記(9)に記載の有機半導体素子において、前記平面視形状における角部に施された面取りが、ラウンド形状であることを特徴とする。
【0036】
前記同様、導電パターンの角部での導電層膜の盛り上がりがさらに抑制でき、3次元的な起伏がより少なく均質な導電パターンを有する有機半導体素子が提供され、絶縁特性がさらに向上する。
【0037】
(11):上記(10)に記載の有機半導体素子において、前記有機半導体素子が、薄膜トランジスタ(TFT)であることを特徴とする。
【0038】
上記有機半導体素子を薄膜トランジスタ構成とすれば、積層部分の絶縁不良低減等の特性に優れたTFT素子が省資源かつ低コストで提供される。
【0039】
(12):上記(1)〜(7)のいずれかに記載の配線パターンが絶縁膜を介して複数積層したことを特徴とする積層配線パターンである。
【0040】
膜厚差の小さい導電パターンが設けられた配線パターンを複数積層する構成であるため、絶縁膜を介して設けられる各導電パターン間に縁不良を発生することなく、絶縁特性(耐電圧特性等)が向上した積層配線パターンが提供される。この積層配線パターンを利用すれば、各種の電子素子や表示装置等の多層配線が可能である。
【0041】
(13):上記12に記載の積層配線パターンにおいて、前記配線の角部に面取りが施された矩形が、それぞれ他の配線パターンと積層断面方向で重ならないように形成されていることを特徴とする。
【0042】
多層構成される各導電パターン層の角部が重ならない構造とされれば、多層配線構造における層間の絶縁特性がさらに向上し、信頼性が一層向上する。また、絶縁層の薄膜化を図ることができ、多層配線構造体をコンパクトにすることができる。
【0043】
(14):上記(1)〜(7)のいずれかに記載の配線パターンが、基板上に形成されたことを特徴とする積層配線基板である。
【0044】
角部の盛り上がりとパターン中央部の膜厚差が小さい導電パターン層が設けられた配線パターンを基板上に形成した構成であるため、絶縁層を介して積層配線構造とした場合においても絶縁不良を回避することができる。この積層配線基板を用いれば、各種電子素子や表示装置等の配線基板として好適に利用することが可能である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の構成とされた配線パターンによれば、微細かつ高精度な導電パターン層が高表面エネルギー部上に形成され、しかも面取りが施された導電パターンの角部で膜厚の盛り上がりが少ないため、絶縁層を介して積層配線構造とした場合でも絶縁不良を発生することがない。ここで、低表面エネルギー部に接するようにして半導体層を設ければ、半導体層の移動度を高くした配線パターンとすることが可能である。
さらに、上記構成に絶縁層を介して別の導電パターンを設ければ、積層配線パターン、積層配線基板、あるいは各種電子素子(ダイオード、トランジスタ、光電変換素子、熱電変換素子等)の構成要素として好適に利用することができる配線パターンとすることが可能である。
半導体層として有機半導体層を設ければ、半導体特性向上がより顕著に現れて移動度が高く、しかも省資源、低コスト、かつ歩留まり良く有機半導体素子とすることができる。有機半導体素子を薄膜トランジスタ構成とすれば、積層部分においても絶縁不良等のない動作特性の優れたTFT素子が提供される。
上記配線パターンを複数積層した構成とすれば、耐電圧特性等の絶縁特性に優れた多層配線構造の積層配線パターンが提供され、上記各種の電子素子や表示装置等に適用することができる。あるいは、配線パターンを基板上に設けた構成とすれば、各種電子素子や表示装置等の配線基板として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
前述のように本発明における配線パターンは、エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターン層と、を有する配線パターンにおいて、
前記導電パターン層の平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であることを特徴とするものである。
すなわち、本発明における導電パターン層は、インクを高表面エネルギー部に濡れ広がらせて角部に面取りが施された矩形の配線(平面視形状)を形成するものであり、該面取り形状と、高表面エネルギー部表面との相互関係を好適に保ち、その断面視形状において、角部に大きな凸状の膜厚ピーク、いわゆる「盛り上がり」を形成させず、この盛り上がりとパターン中央部が丘陵状になだらかに連なり、パターン全体が3次元的に起伏の少ない形状とするものである。パターン断面形状全体が略平坦な形状に近いものが好ましい。
【0047】
以下、本発明の配線パターンについて図に基づいて説明する。
[配線パターン]
図6は、配線パターンの原理的構成例を示す部分平面図(a)および(a)におけるAA断面を示す断面図である。図6において、配線パターン1は、濡れ性変化層2の高表面エネルギー部3上に導電性液体により形成された導電パターン層(導電層)5を有する構成体からなる。
すなわち、濡れ性変化層2には、エネルギーを付与されたより臨界表面張力の大きな高表面エネルギー部3と、エネルギーを付与されない臨界表面張力の小さな低表面エネルギー部4とを有しており、高表面エネルギー部3上に導電パターン層5が設けられている。各高表面エネルギー部3の距離は、例えば、1〜5μm程度の微小ギャップに設定されている。また、濡れ性変化層2は、エネルギーの付与によって臨界表面張力、いわゆる表面エネルギーが変化する材料によって形成される。
【0048】
そして本発明における導電パターン層(5)の特徴は、図7に示すように、平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であり、その断面視形状は該角部に形成される導電層膜の盛り上がりが抑制され、パターン断面全体が3次元的に起伏の少ない形状とされるものである。すなわち、角部を面取り形状とすることでインク流れの等時線とパターン外周部との距離の差が小さくなってインクの流れムラが少なくなり、また流れの速度差が小さくなるので、導電パターン層の角部での導電層膜の盛り上がりが抑制でき、パターン断面全体の膜厚差を小さくすることができる。
なお、インクを乾燥、あるいは必要により焼成して成膜することにより、導電性パターン層が形成される。
【0049】
上記面取りを図8に示すようなラウンド形状(円弧形状)とすると、インクの流れの等時線と導電パターン輪郭の形状が近くなってインクの流れにムラがなくなり、パターン角部での導電層膜の盛り上がりがさらに抑制でき、パターン断面全体の膜厚差をより小さくすることができる。なお、図9に示すように、ラウンドをパターン幅全体ではなく角部ごとに設けてもよい。
【0050】
本発明によれば、導電パターン層の角部での膜厚増大(盛り上がり)が小さく、また膜厚増大に伴うヒケによる窪みも発生しない。このため、膜厚ピークがなだらかで導電パターン全体が3次元的に起伏の少ない配線パターンとなるので、絶縁層を介して別の電極層(導電パターン層)を設けた場合にも絶縁不良が発生しない。本発明の構成からなる配線パターンは、低コストで、材料使用効率の高い印刷法が適用でき、微細で高精度な導電パターンを備えたものであることから、各種の電子素子、有機半導体素子、積層配線パターンあるいは積層配線基板などの構成要素として利用することが可能である。
【0051】
図10の断面模式図に示すように、前記図6に示した低表面エネルギー部4に接して半導体層6を設けた配線パターン1’とすることができる。このような構成の配線パターンとすれば、後述のように濡れ性変化層と半導体層との界面特性を極めて良好なものとすることができ、高移動度の半導体層を有する配線パターンとすることができる。ここで、有機半導体層を用いれば、後述するように、有機半導体の特性が濡れ性変化層によってより顕著に向上し、さらに移動度の速い半導体層を備えた配線パターンが得られる。
【0052】
さらに、上記構成体の一面上に、絶縁層を介して別の導電パターンを設けた配線パターンとすることができる。
図11に、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターンを有する構成体(図6)上に絶縁層を介して別の導電パターンを設けた配線パターン1’’の断面模式図を示す。このような構成とすれば、積層配線パターンあるいは積層配線基板の構成要素として好適に適用できる。
なお、図示しないが図10の低表面エネルギー部に接するようにして半導体層を設け、この構成体に絶縁層を介して別の導電パターンを設けた配線パターンとすれば、例えば、ダイオード、トランジスタ、光電変換素子、熱電変換素子など各種の電子素子の構成要素として好適に適用できる。濡れ性変化層自身を絶縁層として別の導電パターンを設ければ、さらに低コストな電子素子の構成要素として好適に適用できる。
【0053】
次に、濡れ性変化層について詳しく説明する。
図6に示すように濡れ性変化層2は、エネルギーの付与によって臨界表面張力(表面エネルギー)が変化する材料により形成されるが、このような材料としては、単一の材料からなっていても良いし、2種類以上の材料から構成されていても良い。2種類以上の材料から構成する場合には、具体的には、電気絶縁性のより大きな材料と、濡れ性変化のより大きな材料を混合することにより、電気絶縁性に優れ、かつ、濡れ性変化にも優れた濡れ性変化層2を形成することが可能となる。
【0054】
また、2種類以上の材料を混合することによって、濡れ性変化は大きいが成膜性に問題のある材料を用いることが可能となるため、材料の選択幅が広がる。具体的には、一方の材料の濡れ性変化はより大きいが凝集力が強いため成膜することが困難な材料である場合に、この材料と成膜性の良いもう一方の材料とを混合することで、所望の濡れ性変化層を容易に作製することが可能となる。
【0055】
図12の断面模式図に示す二種類の材料構成からなる場合を例として濡れ性変化層2について説明する。図12は、例えば、第二の材料72よりも電気絶縁性に優れた第一の材料71から構成される層上に、第一の材料71よりも濡れ性変化に優れた第二の材料72からなる層が明確に分離され積層された構造となっている。
【0056】
このような構造は、第一の材料71からなる層を作製した後に第二の材料72からなる層を順次積層して作製することが可能である。作製方法としては、真空蒸着などの真空プロセスを用いることも可能であるし、溶剤を用いた塗布プロセスを使用することも可能である。
【0057】
また、第一の材料71と第二の材料72を混合した溶液を基板に塗布、乾燥することにより、作製することも可能である。これは第二の材料72の極性が相対的に小さい場合、あるいは相対的に分子量の小さい場合などでは、乾燥時において溶媒が蒸発するまでの間に第二の材料72が表面側に移行して層を形成することを利用するものである。なお、塗布プロセスを用いた場合は、図13の断面模式図に示すように、第一の材料71からなる層と第二の材料72からなる層は、界面によって明確に分離されない場合が多い。
【0058】
本実施の形態において、相対的に電気絶縁性に優れた第一の材料71と相対的に濡れ性変化の大きい第二の材料72の組成割合([第一の材料71]/[第二の材料72])は、重量比で50/50〜99/1である。第二の材料72の重量比が増加するにつれ濡れ性変化層2の電気絶縁性が低くなり、例えば、電子素子として用いる場合、その絶縁層としては不向きとなる。一方で第一の材料71の重量比が増すと濡れ性変化が小さくなるため、導電層のパターニングが良好でなくなる。両者の混合比([第一の材料71]/[第二の材料72])は、望ましくは60/40〜95/5、更に望ましくは70/30〜90/10である。
【0059】
なお、図13の断面模式図に示すように、第一の材料71からなる層と第二の材料72からなる層は界面によって明確に分離されていなくてもよい。図13或いは図14に示すように、膜厚方向に対して所定の濃度分布で第一の材料71と第二の材料72が混在していてもよい。
【0060】
2種類以上の材料から濡れ性変化層2が構成されている場合は、2層以上の積層構造からなっていても構わないし、層構造を持たずに膜厚方向に対して所定の濃度分布で材料が混在していてもよい。
【0061】
図15の平面模式図に示すように、濡れ性変化層表面2a(図示しない基板と接していない側)は、第二の材料72が均一に分散した表面からなっていることが望ましい。しかしながら、微細なパターニングが可能であるならば、図16の平面模式図に示すように第二の材料72が均一に分散した中に第一の材料71が分散している状態、あるいは図17の平面模式図に示されるように層分離を起こし、いわゆる海島構造になっていても構わない。
【0062】
前記図6において、導電パターンとして形成される導電パターン層(導電層)5は、導電性材料を含有する導電性液体(インク)を濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に付与し、加熱、紫外線照射等によって固化することによって得られる層である。
ここで、導電性材料を含有する導電性液体(インク)とは;
1:導電性材料を溶媒に溶解したもの、
2:導電性材料の前駆体若しくは前駆体を溶媒に溶解したもの、
3:導電性材料粒子を溶媒に分散したもの、
4:導電性材料の前駆体粒子を溶媒に分散したもの、
等を言う。
【0063】
より具体的には、Ag、Au、Ni等の金属微粒子を有機溶媒や水に分散したもの、あるいはドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を例示することができる。
【0064】
上記インクの適当な粘度は、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上でインクが濡れ広がることで導電パターンが形成されるため、インクが濡れ性変化層に付与された後、濡れ性領域(高表面エネルギー部)上で濡れ広がる程度に低粘度であることが必要である。インクの乾燥速度によって適当な粘度範囲は多少変化するが、100mPa・s以下、好ましくは50mPa・s以下であれば、インクが高表面エネルギー部に濡れ広がってパターニングできる。
【0065】
濡れ性変化層2に戻ってさらに説明する。
濡れ性変化層2は、熱、紫外線、電子線、プラズマ等のエネルギーを与えることによって、臨界表面張力が変化する材料からなる層で、エネルギー付与前後での臨界表面張力の変化量が大きいものが好ましい。このような材料の場合、濡れ性変化層2の一部分にエネルギーを付与し、高表面エネルギー部3と低表面エネルギー部4とからなる臨界表面張力の異なるパターンを形成することにより、導電性材料を含有する導電性液体(インク)が、高表面エネルギー部3には付着しやすく(親液性)、低表面エネルギー部4には付着しにくく(疎液性)なるため、パターン形状に従ってインクが親液性である高表面エネルギー部3に選択的に付着し、それを固化することにより導電層5が形成される。
【0066】
上記濡れ性変化層2の一部にエネルギーを付与する方法としては、(a)大気中で操作できる、(b)高い解像度が得られる、(c)層内部へのダメージが少ない等の点から紫外線照射を用いるのが好ましい。
【0067】
ここで、固体表面に対する液体の濡れ性、いわゆる付着性について付言する。図18(図2)は固体11表面上で液滴12が接触角θで平衡状態にある時の模式図で、ヤングの式(1)が成立する。
【0068】
γ=γSL+γcosθ …(1)
式(1)中、γは固体11の表面張力、γSLは固体11と液体(液滴12)の界面張力、γは液体(液滴12)の表面張力である。
【0069】
表面張力は表面エネルギーと実質的に同義であり、全く同じ値となる。cosθ=1の時、θ=0°となり、液体(液滴12)は完全に濡れる。この時のγの値はγ−γSLとなり、これをその固体11の臨界表面張力γと呼ぶ。γは表面張力の判っている何種類かの液体を用いて、表面張力と接触角の関係をプロットし、θ=0°(cosθ=1)となる表面張力を求めることにより容易に決定できる(Zismanプロット)。γの大きい固体11表面には液体(液滴12)が濡れやすく(親液性)、γの小さい固体11表面には液体(液滴12)が濡れにくい(疎液性)。
【0070】
接触角θの測定は液滴法で行うのが簡便である。
液滴法には;
(a):読取顕微鏡を液滴12に向け、顕微鏡内のカーソル線を液滴12の接点に合わせて角度を読取る接線法、
(b):十字のカーソルを液滴12の頂点に合わせ、一端を液滴12と固体11試料の接する点に合わせた時のカーソル線の角度を2倍することにより求めるθ/2法、
(c):モニター画面に液滴12を映し出し、円周上の1点(できれば頂点)と液滴12と固体11試料の接点(2点)をクリックしてコンピュータで処理する3点クリック法、
がある。(a)→(b)→(c)の順に精度が高くなる。
【0071】
図19は、後述(実施例1)の側鎖付ポリイミド(構造式(VI))を濡れ性変化層2に用い、紫外線未照射部と紫外線照射部とのZismanプロットを行ったものである。
図19から紫外線未照射部の臨界表面張力γは約24mN/m、紫外線照射部の臨界表面張力γは約45mN/mであり、その差Δγは約21mN/mであることが判る。
【0072】
前記図6における高表面エネルギー部3と低表面エネルギー部4とのパターン形状に従って導電性材料を含有する導電性液体(インク)が親液性である高表面エネルギー部3にのみ確実に付着するためには、表面エネルギー差が大きいこと、言い換えれば、臨界表面張力の差Δγが大きいことが必要である。
【0073】
下記表1はガラス基板上に種々の材料からなる濡れ性変化層2を形成し、エネルギー付与部と未付与部とのΔγ並びにポリアニリン(水溶液系導電性高分子)の選択付着性を評価したものである。選択付着性はエネルギー付与部と未付与部とからなるパターンの境界を含むエリアにポリアニリン水溶液を滴下し、余分の溶液を除去した後に未付与部に対するポリアニリンの付着(パターン不良)の有無を観察した。なお、表1中、AのポリビニルフェノールはマルカリンカーM(丸善化学製)、BのポリイミドはRN−1024(日産化学製)、Cの含フッ素アクリレートポリマーはAG−7000(旭硝子製)Dの側鎖付ポリイミドはPIX−X491−E01(チッソ製)である。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から、濡れ性変化層2の低表面エネルギー部4における臨界表面張力と高表面エネルギー部3における臨界表面張力との差(Δγ)は、10mN/m以上であることが望ましく、15mN/m以上であることがさらに望ましいことが判る。
【0076】
本発明の配線パターンにおいては、前述(図10)のように、低表面エネルギー部4に接して半導体層を設けた構成体とすることができる。この場合、半導体層6は濡れ性変化層2の低表面エネルギー部4に接するため、その部位の物性が半導体層6の特性に影響を与えると考えられる。
【0077】
図20は、後述の図23に示す構造の電子素子(TFT)を、濡れ性変化層2の材料を変えて作製し、その移動度をエネルギー未付与の状態である濡れ性変化層2の臨界表面張力γに対してプロットしたものである。
図20中、Aは側鎖付ポリイミド、Bはポリビニルフェノール、Cは有機シリカ、Dは熱酸化膜、Eはポリイミド、FはSiO2(スパッタ膜)である。ただし、ソース電極5aとドレイン電極5bとはAu蒸着膜をリフトオフすることにより形成した。
【0078】
図20より移動度はγが40mN/mを超えると急激に減少することが判る。この結果から濡れ性変化層の、低表面エネルギー部の臨界表面張力(γ)は40mN/m以下であることが望ましい。
ここで、臨界表面張力(γ)が20mN/mより小さいと、ほとんどの溶媒をはじいてしまう。このため、半導体層6を塗布によって形成する場合には、臨界表面張力(γ)は20mN/m以上であることが望ましい。
【0079】
また、濡れ性変化層2には側鎖に疎水性基を有する高分子材料を用いるのが望ましい。具体的には、図21の概念図に示すように、ポリイミドや(メタ)アクリレート等の骨格を有する主鎖Lに直接或いは結合基(図示せず)を介して疎水性基を有する側鎖Rが結合しているものを挙げることができる。
【0080】
疎水性基としては、末端構造が−CF2CH3、−CF2CF3、−CF(CF3)2、−C(CF3)3、−CF2H、−CFH2等である基が挙げられる。分子鎖同士を配向しやすくするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。さらには、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロアルキル基(以下、「Rf基」と記す。)が好ましく、特に炭素数4〜20のRf基が好ましく、とりわけ、炭素数6〜12のRf基が好ましい。Rf基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。さらに、疎水性基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基はCn2n+1−(ただし、nは4〜16の整数)で表わされる基が好ましく、特に、nが6〜12の整数である場合の該基が好ましい。パーフルオロアルキル基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造が好ましい。
上記材料については特開平3−178478号公報等に詳しく記載されて周知であり、加熱状態で液体又は固体と接触させたときに親液性となり、空気中で加熱すると疎液性となる性質もある。このように、接触媒体の選択と熱エネルギーの付与によって臨界表面張力を変化させることもできる。
【0081】
さらに、疎水性基としては、フッ素原子を含まない−CH2CH3、−CH(CH3)2、−C(CH3)3等の末端構造を有する基を挙げることができる。この場合にも、分子鎖同士を配向しやすくするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。疎水性基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。上記アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又は炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。Rの結合部位が多いほど表面エネルギーが低く(臨界表面張力が小さく)、疎液性となると考えられる。紫外線照射等によって、結合の一部が切断されるか、或いは、配向状態が変化するために臨界表面張力が増加し、親液性になるものと推察される。
【0082】
濡れ性変化層2上に半導体層を形成することを考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料としては、ポリイミドを含むことが望ましい。ポリイミドは耐溶剤性並びに耐熱性に優れているため、濡れ性変化層2上に半導体層を形成する際に、溶媒や焼成による温度変化によって、膨潤したりクラックが入ったりするといったことがない。
【0083】
また、濡れ性変化層2を2種類以上の材料から構成する場合においては、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料以外の材料もポリイミドからなることが望ましい。
【0084】
本発明において用いられる側鎖に疎水性基を有するポリイミドとしては、例えば、下記一般式(I)〜(V)で示されるジアミン化合物(アミノ基は省略)と、酸無水物とから誘導されるものが挙げられる。
【0085】
【化1】

【0086】
(式中、Xは−CH2−又はCH2CH2−であり、A1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン又は1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、A2、A3及びA4は各々独立して単結合、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン又は1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、B1、B2、B3は各々独立して単結合又はCH2CH2−であり、B4は炭素数1〜10までのアルキレンであり、R3、R4、R5、R6、及びR7は各々独立して炭素数が1〜10までのアルキルであり、pは1以上の整数である。)
【0087】
【化2】

【0088】
(式中、T、U及びVは各々独立してベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、これらの環上の任意のHは炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のフッ素置換アルキル、F、Cl又はCNで置換されていてもよく、m及びnは各々独立して0〜2の整数であり、hは0〜5の整数であり、RはH、F、Cl、CN又は1価の有機基であり、mが2の場合の2個のU又はnが2の場合の2個のVは各々同じでも異なっていても良い。)
【0089】
【化3】

【0090】
(式中、連結基ZはCH、CFH、CF2、CH2CH2又はCF2Oであり、環Yは1,4−シクロへキシレン又は1〜4個のHがF又はCH3で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、A6〜A8は各々独立して単結合、1,4−シクロへキシレン又は1〜4個のHがF又はCHで置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、B6〜B8は各々独立して単結合、炭素数1〜4のアルキレン、酸素原子、炭素数1〜3のオキシアルキレン又は炭素数1〜3のアルキレンオキシであり、RはH、任意のCH2がCF2で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、又は1個のCH2がCF2で置き換えられてもよい炭素数1〜9のアルコキシもしくはアルコキシアルキルであり、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は任意の位置である。但し、ZがCH2である場合には、B6〜B8の全てが同時に炭素数1〜4のアルキレンであることはなく、ZがCH2CH2であって、環Yが1,4−フェニレンである場合には、A6及びA7がともに単結合であることはなく、また、ZがCF2Oである場合には、環Yが1,4−シクロへキシレンであることはない。)
【0091】
【化4】

【0092】
(式中、R2は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であり、Z1はCH2基であり、mは0〜2であり、環Aはベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、lは0又は1であり、各Y1は独立に酸素原子又はCH2基であり、各n1は独立に0又は1である。)
【0093】
【化5】

【0094】
(式中、各Y2は独立に酸素原子又はCH2基であり、R3、R4は独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数3以上のアルキル基、又はパーフルオロアルキル基であり、各n2は独立に0又は1である。)
【0095】
上記化合物についての詳細は、特開2002−162630号公報、特開2003−96034号公報、特開2003−267982号公報等に詳しく記載されている。
【0096】
酸無水物としては、テトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、このようなテトラカルボン酸二無水物については、脂肪族系、脂環式、芳香族系など種々の材料を用いることが可能である。具体的には、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物などである。この他特開平11−193345号公報、特開平11−193346号公報、特開平11−193347号公報等に記載されている材料についても用いることが可能である。
【0097】
上述したように、一般式(I)〜(V)で示されるジアミン化合物から誘導される疎水性基を含むポリイミドは、単独で用いても良いし、他の材料と混合し用いても良い。ただし、混合して用いる場合は、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、混合する材料もポリイミドであることが望ましい。
当然、上記一般式(I)〜(V)で示されないジアミン化合物から誘導される疎水性基を含むポリイミドを用いることもできる。
【0098】
疎水性基を有する側鎖Rが表面に配列している他の効果として、それに接している半導体層6(図10)との界面特性を良好なものとすることができる。半導体層6が有機半導体からなる場合、その効果がより顕著である。
界面特性が良好であるとは;
(a):半導体が結晶質である場合には結晶粒が大きくなり、移動度が増大する、
(b):半導体が非晶質(高分子)である場合には、界面準位密度が減少し、移動度が増大する、
(c):半導体が高分子であり、長鎖アルキル基等の側鎖を有する場合には、その配向が規制されることによりπ共役主鎖の分子軸を概ね一方向に配列させることができ、移動度が増大する、
等の現象が出現することを指す。
【0099】
本発明における濡れ性変化層2の厚さは30nm〜3μmが好ましく、50nm〜1μmがさらに好ましい。これより薄い場合にはバルク体としての特性(絶縁性、ガスバリア性、防湿性等)が損なわれ、これより厚い場合には表面形状が悪化するため好ましくない。
【0100】
導電性材料を含有する導電性液体(インク)を濡れ性変化層2表面に付与する方法として、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等の各種塗布法を用いることができるが、濡れ性変化層の表面エネルギーの影響を受けやすくするためには、より小さな液滴を供給できるインクジェット法が特に好ましい。プリンタに使用されるレベルの通常のヘッドを用いた場合、インクジェット法の解像度は30μm、位置合わせ精度は±15μm程度であるが、濡れ性変化層2における表面エネルギーの差を利用することにより、それよりも微細なパターンを形成することが可能となる。
【0101】
なお、本発明は、パターンの輪郭近傍でのインク乾燥後の膜厚差を小さくすることができるため、インクが濡れ広がることでパターンを形成するパターニングプロセスを適用する際、特に限定されず、各種パターニング方式を用いることが可能である。
【0102】
前記半導体層6としては、CdSe、CdTe、Si等の無機半導体やペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。特に、前述のように有機半導体を用いた場合に、濡れ性変化層2による特性向上の効果がより顕著に現れる。
【0103】
本発明における配線パターンは、一例として図22の断面図(工程順)に示すプロセスにより作製することができる。
まず、図22(a)に示すように、ガラスやポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等のプラスチック、シリコンウェハ、金属等からなる基板7上に濡れ性変化層2を形成する。濡れ性変化層2は、例えば、紫外線の照射によって臨界表面張力が増加し、低表面エネルギー(疎液性)状態から高表面エネルギー(親液性)状態へ変化する材料からなる。その好ましい構造については前述した通りであるが、本発明者らの実験によれば、主鎖がポリイミド骨格よりなり側鎖に長鎖アルキル基を有するものが、特に紫外線照射による濡れ性変化が大きかったものである。
【0104】
このような構造を有するポリマー又はその前駆体を有機溶媒等に溶解又は分散した溶液をスピンコート法、ディップコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法等で基板7上に塗布し、加熱することにより、濡れ性変化層2が形成される。上記溶液の具体例として、液晶表示デバイス用の垂直配向剤(チッソ製PIA−X491−E01、日産化学製SE−1211、JSR製JALS−2021等)が挙げられる。
【0105】
次いで、図22(b)に示すように、濡れ性変化層2の表面にマスク8を通して紫外線を照射する。これにより低表面エネルギー部4と高表面エネルギー部3とからなるパターンが形成される。紫外線としては100nmから300nmの比較的短い波長の光が含まれるのが望ましい。
【0106】
次に、図22(c)に示すように、上記パターンが形成された濡れ性変化層2上に導電性材料を含有する導電性液体(インク)を、例えば、インクジェット法によって供給すると、高表面エネルギー部3のみに導電パターン層5が形成される。
上記プロセスにより、基板7上に、本発明の配線パターン1が作製される。
【0107】
さらに、図22(d)に示すように、低表面エネルギー部に接するようにして、低分子半導体を蒸着するか、高分子半導体又はその前駆体を溶解した溶液をスピンコート法、ディップコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法等で塗布し、加熱することにより、半導体層6を形成することにより、配線パターン1’が作製される。
【0108】
上記配線パターン1上に絶縁層を設け、別の導電パターンを設けることにより、積層配線パターンあるいは積層配線基板が作製できる。また、配線パターン1’の一面上、すなわち、濡れ性変化層を介するか、もしくは有機半導体層上設けた絶縁層を介して、別の導電パターンを設けることにより、ダイオード、トランジスタ、光電変換素子、熱電変換素子等の電子素子を作製することができる。
【0109】
図23に本実施の形態における電子素子の一例を示す。この電子素子31は電界効果型トランジスタ構成の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の例を示している。
【0110】
まず、基板7及び濡れ性変化層2は上述した場合と同様である。濡れ性変化層2には低表面エネルギー部4と高表面エネルギー部3とからなるパターンが形成され、その上に導電性材料を含有する導電性液体(インク)を付与することにより高表面エネルギー部3に導電パターン(導電層)として一対の電極層5a、5bが形成されている。
【0111】
インクとしては、Ag、Au、Ni等の金属微粒子を有機溶媒や水に分散したものやドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を用いることができる。電極層5a、5b間のギャップ精度が本素子の性能を左右するが、本発明においては、低表面エネルギー部4と高表面エネルギー部3とからなるパターンを高精度に形成することができるため、液体付与手段の精度に依らず電極層5a、5bのパターン精度を確保することができる。
その上に半導体層6が蒸着法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等により形成される。半導体層6としては、前述のように有機半導体が特に好ましい。
【0112】
さらにその上に絶縁体層32が蒸着法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等により形成される。
絶縁体層32としては、無機絶縁体及び有機絶縁体が使用可能であるが、半導体層6が有機半導体である場合には、特にその層にダメージを与えない形成方法を採用する必要がある。例えば、高温や高速イオン、活性ラジカル、有機半導体が可溶な溶媒等の使用を伴うものは避けるのが望ましい。そのような観点からは蒸着法によるSiO2、水に可溶なPVA(ポリビニルアルコール)、アルコールに可溶なPVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系溶媒に可溶なパーフルオロポリマー等が好適に使用できる。
【0113】
最後に、絶縁体層32上に電極層33が蒸着法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等により形成される。
電極層33としては、各種の導電性薄膜が使用でき、全面に成膜した後に通常のフォトリソグラフィー法やマイクロコンタクトプリンティング法でパターニングしてもよいし、導電性材料を含有する液体をインクジェット法等で供給して直接描画してもよい。
【0114】
図23から明らかなように、この電子素子31はTFT(薄膜トランジスタ)として機能する。即ち、電極層5a、5bはソース電極S及びドレイン電極D、絶縁体層32はゲート絶縁膜、電極層33はゲート電極Gである。電極層5a、5b間のギャップはチャネル長に相当する。
【0115】
本発明の配線パターンでは、濡れ性変化層2の表面エネルギー制御によって導電パターンを形成するため、この濡れ性変化層2自体に別の機能(例えば、水分やガスのバリア層としての機能)を持たせることが可能である。例えば、図23に示す例では基板7の表面を濡れ性変化層2で覆っているので、基板7がプラスチックのようにガスや水分を透過しやすいものであっても濡れ性変化層2がバリア層として機能し、電子素子31への影響を低減させることができる。
【0116】
なお、図23では半導体層6が基板全面(素子全面)に形成されているが、少なくともチャネル領域を含む島状にパターニングしてもよい。その方法として、マスク蒸着法やスクリーン印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等を用いることができる。
【0117】
さらに本実施の形態における電子素子の別の例を図24に示す。
図24に示す電子素子41では、ガラスやポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等のプラスチック、シリコンウェハ、金属等からなる基板7上に、まず、電極層42が蒸着法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法等により形成される。電極層42としては、各種の導電性薄膜が使用でき、全面に成膜した後に通常のフォトリソグラフィー法やマイクロコンタクトプリンティング法でパターニングしてもよいし、導電性材料を含有する液体をインクジェット法等で供給して直接描画してもよい。
【0118】
電極層42を形成した後、その上に図23で説明したのと同様に濡れ性変化層2を形成する。この濡れ性変化層2はゲート絶縁膜を兼ねるので、高絶縁性であることが望ましい。この場合、上層を濡れ性変化層、下層を濡れ性変化機能はないがより絶縁性の高い絶縁体層とする2層構造であってもよい。前記と同様に濡れ性変化層2に低表面エネルギー部4と高表面エネルギー部3とからなるパターンが形成され、その上に導電性材料を含有する導電性液体を付与することにより高表面エネルギー部3に導電層として一対の電極層5a、5bが形成される。
そして、最後に、前記と同様に半導体層6が形成される。図24では、全面に半導体層6が形成されているが、少なくともチャネル領域を含む島状に半導体層6が形成されていてもよい。
【0119】
図24から明らかなように、この電子素子41はTFT(薄膜トランジスタ)として機能する。即ち、電極層42はゲート電極G、濡れ性変化層2はゲート絶縁膜、電極層5a、5bはソース電極S及びドレイン電極Dである。電極層5a、5b間のギャップはチャネル長に相当する。濡れ性変化層2がゲート絶縁膜を兼ねるため、図23に示した構成例に比して、工程が簡略化される。
なお、図24において、電極層42を形成する前に基板7上に、濡れ性変化層2とは別の第2の濡れ性変化層(図示せず)を設け、電極層42のパターニングに利用してもよい。
【0120】
また、本発明においては、前述の配線パターンを、絶縁膜を介して複数積層した構成とすることができる。つまり、前記角部の盛り上がり小さい導電パターン層が設けられた配線パターンを複数積層すれば、各導電パターン層間に絶縁不良を発生せず、絶縁特性が向上して信頼性の高い多層構成からなる積層配線パターンが構成できる。このような積層配線パターンを利用すれば、各種の電子素子や表示装置等の多層配線が可能である。
ここで、導電パターン層における配線の角部に面取りが施された矩形が、それぞれ他の配線パターンと積層断面方向で重ならないように形成されれば、層間の絶縁特性がさらに向上して信頼性が向上するとともに、絶縁層の薄膜化が図れ、コンパクトな多層配線構造体とすることができる。
【0121】
さらに、前記配線パターンを、基板上に形成した構成とすることができる。
このような構成の積層配線基板は、配線パターン上に絶縁層を介して積層配線構造とした場合においても絶縁不良を回避することができるため、各種電子素子や表示装置等の配線基板として好適に利用することが可能である。
【実施例】
【0122】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
【0123】
(実施例1)
ガラス基板上に、焼成後に下記構造式(VI)及び下記構造式(VII)で表される構造体となる前駆体を溶解した混合溶液をスピンコート法により塗布し、280℃で焼成して成膜し濡れ性変化層(以下、濡れ性制御膜と表現することがある。)を設けた。
【0124】
【化6】

【0125】
【化7】

【0126】
次に、線幅80μm、面取り長さ20μmで前記図7のように面取りしたパターン(開口部)を施したマスクを介して紫外線を照射し、濡れ性領域(高表面エネルギー部)を形成した。濡れ性領域の接触角を後述する銀ナノメタルインクで測定したところ、5°以下であった。
【0127】
続いて、インクジェット法によって、導電性液体である銀ナノメタルインクを濡れ性領域に供給し、その後乾燥、焼成を行った。焼成後、顕微鏡観察したところ、形成された導電パターン輪郭部の膜厚増大(盛り上がり)は小さく、盛り上がりに伴うヒケ(窪み)も認められなかった。
また、AFMで膜厚プロファイルを測定したところ、導電パターン中央部の膜厚が100nmであるのに対して導電パターン輪郭部の膜厚は200nmであった。すなわち、配線パターンの導電パターンの平面視形状は角部に面取りが施され、断面視形状は角部とパターン中央部がなだらかに連なった起伏の少ない形状を呈していた。
【0128】
(比較例1)
実施例1において、面取りなしの形状(線幅80μmの矩形状)のパターン(開口部)を施したマスクを介して紫外線を照射により濡れ性領域を形成した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット法で銀ナノメタルインクを供給、乾燥、焼成を行って導電パターンを形成した。
実施例1と同様に、顕微鏡観察を実施した結果、導電パターンの角部の膜厚増大(盛り上がり)は大きく、盛り上がりに伴うヒケ(窪み)も発生していることが確認された。さらに、AFMで膜厚プロファイルを測定したところ、パターン中央部の膜厚が100nmであるのに対して、パターン角部の膜厚は700nmであった。すなわち、断面視形状は角部が突起状に隆起し、パターン中央部に対して起伏の大きい連なり形状を呈していた。
【0129】
(実施例2)
実施例1の構成とした導電パターン上(以下、一層目パターンと記す)にポリイミドをスピンコートし、これを焼成して絶縁膜を形成した後、さらに実施例1と同じ濡れ性制御膜を形成した。ポリイミド絶縁膜と濡れ性制御膜を合計した膜厚を500nmとした。形成される濡れ性パターンが一層目パターンと交差するようにマスクを配置して紫外線を照射し、二層目の濡れ性パターンを形成した。この二層目の濡れ性パターンに、インクジェット法で銀ナノメタルインクを付与、乾燥、焼成して二層目の導電パターンを形成した。
一層目の導電パターンと二層目の導電パターンの間に1MV/cmの電圧を印加したところ、絶縁破壊することなく良好な絶縁性が得られた。
【0130】
(比較例2)
比較例1の構成とした導電パターン上にポリイミドをスピンコート、焼成して絶縁膜を形成した後、さらに実施例1と同じ濡れ性制御膜を形成した。ポリイミド絶縁膜と濡れ性制御膜を合計した膜厚を500nmとした。形成される濡れ性パターンが一層目パターンと交差するようにマスクを配置して紫外線を照射し、二層目の濡れ性パターンを形成した。この二層目の濡れ性パターンに、インクジェット法で銀ナノメタルインクを付与、乾燥、焼成して二層目の導電パターンを形成した。
一層目の導電パターンと二層目の導電パターンの間に1MV/cmの電圧を印加したところ、絶縁破壊が起こった。
【0131】
(実施例3)
図25の平面模式図に示す電極構成(b)を有する薄膜トランジスタ(TFT)を次の条件で10素子作製した。
まず、図25(a)に示すような、パターン角部にR40μmのラウンドの面取りを施した線幅80μmの導電パターン(ゲートパターン)を、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法で形成した。次に、実施例1と同様のポリイミドをスピンコートし、乾燥、焼成により成膜して濡れ性変化層(濡れ性制御層)を形成した。次に、マスクを介して紫外線を照射し、銀ナノメタルインクを付与、乾燥、焼成して、図25(b)に示すソースとドレインパターンを形成した。
最後に、下記化学式(VIII)に示すようなスキームにより合成した有機半導体である重合体1をトルエンに溶解した溶液をスピンコート法にて塗布し、乾燥させて半導体層を形成した。
【0132】
【化8】

【0133】
以上のように作製したTFTは10素子について評価したところ、10素子全てのゲート電極とソース電極間、あるいはゲート電極とドレイン電極間でのショートがなく、良好に動作した。
【0134】
(比較例3)
実施例3において角部に面取りを施さないゲート電極形状でゲート電極を形成した以外は、実施例3と同様にしてTFTを10素子作製した。
作製したTFTについて実施例3と同様に動作を評価したところ、10素子全てのゲート電極とソース電極間、あるいはゲート電極とドレイン電極間でショートしており動作しなかった。
【0135】
上記結果から判るように、導電パターン層の角部において発生する導電層膜の盛り上がりが少ない配線パターンが得られ、これを構成要素として用いてTFTとした場合、絶縁不良を回避することができ良好に動作する。
したがって、本発明の配線パターンを構成要素として用いれば、電子素子、有機半導体素子、積層配線パターン、積層配線基板を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】導電パターンの角部を説明するための部分平面図である。
【図2】蒸発速度の遅いパターン中央部から蒸発速度の速いパターン外周部に向かうインクの流れを説明する部分平面図(a)と断面図(b)である。
【図3】直角の角部を有する濡れ性領域にインクを付与した場合のインクの流れを概念的に等時線で示す概略模式図である。
【図4】濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に形成された導電パターンに発生する膜厚の盛り上がり部を模式的に示す平面図である。
【図5】導電パターンに膜厚の盛り上がりがあると積層配線基板とした場合に電界が集中しやすくなる様子を概念的に示す断面模式図である。
【図6】本発明における配線パターンの原理的構成例を示す部分平面図(a)および(a)におけるAA断面を示す断面図である。
【図7】本発明における導電パターン層の特徴を説明する平面視形状と断面視形状を示す部分平面図(a)及びCC断面図(b)である。
【図8】本発明における導電パターン層の面取りをラウンド形状とした場合の部分平面図である。
【図9】本発明における導電パターン層の面取りをパターンの角部ごとにラウンド形状とした場合の部分平面図である。
【図10】図6に示した低表面エネルギー部4に接するようにして半導体層6を設けた配線パターンを示す断面模式図である。
【図11】図6に示した低表面エネルギー部4に絶縁層を介して別の導電パターンを設けた配線パターンの断面模式図を示す。
【図12】本発明における濡れ性変化層の構成例を示す断面模式図である。
【図13】本発明における濡れ性変化層の他の構成例を示す断面模式図である。
【図14】本発明における濡れ性変化層の別の構成例を示す断面模式図である。
【図15】本発明における濡れ性変化層表面の構成例を示す断面模式図である。
【図16】本発明における濡れ性変化層表面の他の構成例を示す断面模式図である。
【図17】本発明における濡れ性変化層表面の別の構成例を示す断面模式図である。
【図18】固体表面に対する液体の濡れ性を説明するための模式図である。
【図19】実施例1の側鎖付ポリイミドを濡れ性変化層に用い、紫外線未照射部と紫外線照射部とのZismanプロットを行った場合の表面張力−接触角特性図である。
【図20】電子素子(TFT)に関して濡れ性変化層の材料を変えて作製した場合の結果を示す臨界表面張力−移動度特性図である。
【図21】本発明における側鎖に疎水性基を有する高分子材料を示す概念図である。
【図22】本発明における配線パターンの作製プロセスの一例を工程順に示す断面図である。
【図23】本発明における電子素子の一例を示す断面図である。
【図24】本発明における電子素子の他の例を示す断面図である。
【図25】実施例における薄膜トランジスタ(TFT)の電極構成を示す平面模式図である。
【符号の説明】
【0137】
1、1’、1’’ 配線パターン
2 濡れ性変化層
3 高表面エネルギー部
4 低表面エネルギー部
5 導電パターン層(導電層)
5a、5b 電極層
6 半導体層
7 基板
31 電子素子
32 絶縁体層
33 電極層
41 電子素子
42 電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターン層と、を有する配線パターンにおいて、
前記導電パターン層の平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であることを特徴とする配線パターン。
【請求項2】
前記低表面エネルギー部に接して半導体層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線パターン。
【請求項3】
前記半導体層が有機半導体層であることを特徴とする請求項2に記載の配線パターン。
【請求項4】
前記配線パターンの一面上に、絶縁層を介して別の導電パターンが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線パターン。
【請求項5】
前記別の導電パターンが、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電性液体を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の配線パターン。
【請求項6】
前記平面視形状における角部に施された面取りが、ラウンド形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の配線パターン。
【請求項7】
前記導電パターンが、濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に導電性液体を用いてインクジエット法により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の配線パターン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の配線パターンを構成要素として有することを特徴とする電子素子。
【請求項9】
エネルギーの付与により低表面エネルギー部から高表面エネルギー部に変化して液体に対する濡れ性が向上する濡れ性変化層と、該高表面エネルギー部上に導電性液体により形成された導電パターン層と、該低表面エネルギー部に接して設けられた有機半導体層と、を有する配線パターンの一面上に、濡れ性変化層を介するか、もしくは有機半導体層上に絶縁層を形成し、該絶縁層を介して別の導電パターンを設けてなる有機半導体素子であって、
前記導電パターン層の平面視形状は角部に面取りが施された矩形の配線からなる形状であることを特徴とする有機半導体素子。
【請求項10】
前記平面視形状における角部に施された面取りが、ラウンド形状であることを特徴とする請求項9に記載の有機半導体素子。
【請求項11】
前記有機半導体素子が、薄膜トランジスタ(TFT)であることを特徴とする請求項9または10に記載の有機半導体素子。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の配線パターンが絶縁膜を介して複数積層したことを特徴とする積層配線パターン。
【請求項13】
前記配線の角部に面取りが施された矩形が、それぞれ他の配線パターンと積層断面方向で重ならないように形成されていることを特徴とする請求項12に記載の積層配線パターン。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の配線パターンが、基板上に形成されたことを特徴とする積層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−66567(P2008−66567A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243988(P2006−243988)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】