説明

配線パターンの形成装置及び形成方法

【課題】微細かつ低抵抗な配線パターンを、耐熱性の低い安価な基体上に形成する。また、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成を、安価な設備費で生産性良く行う。
【解決手段】基体1上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成する配線パターン作成工程と、基体1上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元し、配線パターンを導体化する還元工程とを含む。還元工程において、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体1の表面に供給しながら、不活性ガスへ紫外光を照射し、または不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスのバックプレーン等に使用される銅配線基体の製造に好適な、配線パターンの形成装置及び形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に代表される銅配線基板の製造では、基板の一面側全体に銅めっきを施し、配線として残したい部分の表面をレジストで保護した後、不要な銅めっき膜をエッチングで除去し、その後にレジストを除去して、配線パターンを形成している。しかしながら、配線パターンを形成する基体の表面に銅めっきを施す際、従来の電解めっき法では、導電性基体を用い、あるいはめっき部分に予め導電性を付与する必要がある。また、基体はめっき浴に耐性であることを求められるため、基体の材料が制約されてしまう。パターニングについても、一般的にはフォトリソグラフィー法を用いることから、設備費や生産コストが掛かる問題がある。
【0003】
さらに、近年、電子ペーパーやフラットパネルディスプレー等の電子デバイスに使用されるバックプレーンでは、配線パターンの微細化、及び高速応答性の要求から低抵抗化が進むと共に、低価格化のために生産コストの低減やスループットの向上が求められている。
【0004】
これらに対応する方法として、特許文献1には、金属酸化物微粒子を含むインクジェット用インクをインクジェット法により基板上に塗布する金属含有薄膜の形成方法が開示されている。また、特許文献2には、酸化銅のナノ粒子を用いた配線パターンを低温で還元処理する配線パターンの形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−277627号公報
【特許文献2】特開2004−119686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、液滴をインクジェットノズルから1〜数滴ずつ吐出するため、生産性が上がらない。また、インクジェットノズルの詰まり等による吐出不良の懸念があり、量産性に不安が残る。また、金属酸化物(酸化第二銅)の還元処理において、処理温度が高いことによる基体材料の制約の問題がある。一方、特許文献2に記載の技術は、減圧雰囲気の下で還元性気体を導入しながら、基体をプラズマに曝すものであるが、減圧条件は、設備コストが上昇する上、生産性が悪い。また、減圧下では放熱し難いことから、基体の温度が上昇し易いため、耐熱性の低いフィルム状基体は損傷を受ける懸念があった。
【0007】
本発明の課題は、微細かつ低抵抗な配線パターンを、耐熱性の低い安価な基体上に形成することである。また、本発明の課題は、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成を、安価な設備費で生産性良く行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線パターンの形成装置は、基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成する配線パターン作成手段と、配線パターン作成手段により基体上に作成された配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基(ラジカル)で還元して、配線パターンを導体化する還元手段とを有するものである。
【0009】
また、本発明の配線パターンの形成方法は、基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成する配線パターン作成工程と、基体上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元して、配線パターンを導体化する還元工程とを含むものである。
【0010】
基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成し、基体上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元するため、配線パターンの導体化が低温で行われる。従って、従来は耐熱性の高い基体(セラミック、ガラス、耐熱性樹脂等)に限定されていた還元処理を、幅広い基体材料に行うことが可能となる。有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸 安息香酸、またはオキソカルボン酸を用いることができる。
【0011】
さらに、本発明の配線パターンの形成装置は、還元手段が、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを基体の表面に供給する反応槽と、反応槽内で不活性ガスへ紫外光を照射して、不活性ガス中の有機酸を遊離基化する紫外光照射装置とを有するものである。また、本発明の配線パターンの形成方法は、還元工程において、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体の表面に供給しながら、不活性ガスへ紫外光を照射して、不活性ガス中の有機酸を遊離基化するものである。
【0012】
あるいは、本発明の配線パターンの形成装置は、還元手段が、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを基体の表面に供給する反応槽と、反応槽内で不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化する大気圧プラズマ発生装置とを有するものである。また、本発明の配線パターンの形成方法は、還元工程において、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体の表面に供給しながら、不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化するものである。
【0013】
カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスへ紫外光を照射し、または不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化するので、減圧設備が必要なく、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成が、安価な設備費で生産性良く行われる。不活性ガスとしては、取り扱いが簡単で入手が容易な窒素ガス又はヘリウムガスを用いることができる。これらの不活性ガスを用いることにより、プラズマを発生するための放電が安定化する。
【0014】
さらに、本発明の配線パターンの形成装置は、配線パターン作成手段が、現像トナーとして、主に酸化銅あるいは酸化銅を主体とする合金を含む現像液又は現像粉を使用した電子写真装置であるものである。また、本発明の配線パターンの形成方法は、配線パターン作成工程において、電子写真方式を用い、現像トナーとして、主に酸化銅あるいは酸化銅を主体とする合金を含む現像液又は現像粉を使用して、基体上に配線パターンを作成するものである。電子写真方式を用いて基体上に配線パターンを作成するので、フォトリソグラフィー法を用いる場合に比べ、設備費や生産コストが低減する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成し、基体上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元して、配線パターンを導体化することにより、微細かつ低抵抗な配線パターンを、耐熱性の低い安価な基体上に形成することができる。
【0016】
さらに、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体の表面に供給しながら、不活性ガスへ紫外光を照射し、または不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化することにより、減圧設備を用いることなく、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成を、安価な設備費で生産性良く行うことができる。そして、不活性ガスを用いることにより、プラズマを発生するための放電を安定化させることができる。
【0017】
さらに、配線パターン作成工程において、電子写真方式を用いて基体上に配線パターンを作成することにより、フォトリソグラフィー法を用いる場合に比べ、設備費や生産コストを低減することができる。また、フォトリソグラフィー法を用いる場合、洗浄・現像・エッチング・剥離の各工程で大量の廃液が発生するが、電子写真方式ではこの様な廃液が少ないため、環境負荷の小さい製造プロセスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態による配線パターンの形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】電子写真装置の一例を示す図である。
【図3】図3(a)は本発明の一実施の形態による還元装置を示す図、図3(b)は本発明の他の実施の形態による還元装置を示す図、図3(c)は本発明のさらに他の実施の形態による還元装置を示す図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態による還元装置を示す図である。
【図5】反応ガス供給装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態による配線パターンの形成装置の概略構成を示す図である。配線パターンの形成装置は、基体クリーニング装置10、対向ローラ20、電子写真装置30、定着装置40、還元装置50a、及び駆動ローラ60を含んで構成されている。フィルム状の基体1は、駆動ローラ60により、図面右方向へ連続的に搬送される。まず、パターニングの前処理として、基体1が基体クリーニング装置10と対向ローラ20との間を通過する間に、基体1の配線パターンを形成する表面のクリーニングが行われる。基体クリーニング装置10は、洗浄液によるウェット処理、エアーカーテンによるエア吹き付け、異物の吸引等により、異物除去及び次工程に適した表面状態への改質を行う。基体クリーニング装置10によるクリーニングを終えた基体1は、電子写真装置30へ供給される。
【0020】
図2は、電子写真装置の一例を示す図である。電子写真装置30は、感光体31、除電機構32、感光体クリーニング機構33、帯電機構34、画像露光機構35、現像機構36、及び転写機構37を含んで構成されている。感光体31は、図示しない回転駆動機構により、矢印で示す様に反時計回りに回転される。感光体31の表面は、まず、除電機構32により残留電荷が除去され、続いて、感光体クリーニング機構33によりクリーニングされる。感光体クリーニング機構33によりクリーニングされた感光体31の表面には、帯電機構34により帯電が施され、次いで画像露光機構35により画像露光が行われ、現像機構36により潜像の現像が行われて、配線パターンが作成される。そして、感光体31の表面に作成された配線パターンは、転写機構37により基体1の表面に転写される。
【0021】
帯電機構34には、コロトロン帯電器、スコロトロン帯電器、ローラ帯電器などが適用可能であるが、直流に交流を重畳した近接帯電方式や接触帯電方式が望ましい。画像露光機構35の光源としては、LD、LEDランプ、キセノンランプなど発光物全般が用いられる。現像機構36では、現像トナーとして、主に酸化銅あるいは酸化銅を主体とする合金を含む現像液又は現像粉が使用される。転写機構37には、転写ベルト、転写ローラ、または転写チャージャによる転写方式が用いられる。
【0022】
電子写真装置30により表面に配線パターンが作成された基体1は、定着装置40へ搬送され、定着装置40により配線パターンの定着が行われる。そして、定着装置40により配線パターンの定着が行われた基体1は、還元装置50aへ搬送される。
【0023】
図3(a)は本発明の一実施の形態による還元装置を示す図である。還元装置50aは、タイミングローラ51、テンションローラ52、前バッファ槽53、排気管54、反応槽55、反応ガス供給管56、紫外光照射装置57、及び後バッファ槽58を含んで構成されている。
【0024】
フィルム状の基体1は、タイミングローラ51の駆動力により、テンションローラ52から前バッファ槽53に搬入され、次いで反応槽55に搬入され、最後に後バッファ槽58に搬入されて、後バッファ槽58から搬出される。前バッファ槽53及び後バッファ槽58には、排気管54がそれぞれ連結されており、還元処理の反応ガスが外部に流出するのを防いでいる。反応槽55には、反応ガス供給管56が連結されており、反応ガス供給管56から反応槽55内へ、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスが噴出される。反応槽55内へ噴出された不活性ガスは、配線パターンが作成された基体1の表面へ供給される。
【0025】
反応槽55内には、紫外光照射装置57が設けられており、紫外光照射装置57から、短波長の紫外光が、基体1の表面へ供給された不活性ガスへ照射される。紫外光照射装置57から照射された紫外光により、基体1の表面へ供給された不活性ガス中の有機酸が遊離基化され、有機酸の遊離基により、基体1の表面に作成された配線パターン中の酸化銅が還元されて、配線パターンが導体化される。
【0026】
基体1上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成し、基体1上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元するため、配線パターンの導体化が低温で行われる。従って、従来は耐熱性の高い基体(セラミック、ガラス、耐熱性樹脂等)に限定されていた還元処理を、幅広い基体材料に行うことが可能となる。
【0027】
紫外光照射装置57に使用する光源には、低圧水銀ランプ(波長254nm,185nm)、キセノンエキシマランプ(波長172nm)、クリプトンキセノンランプ(波長146nm)、またはアルゴンキセノンランプ(波長126nm)が用いられる。還元反応を効率的に進めるには、より高エネルギーである波長172nm以下が望ましい。還元処理を終えたフィルム状の基体1は、反応ガスの外部流出防止のための後バッファ槽58を経由して、次工程へ送られる。本実施の形態では、酸化銅を主体とする配線パターンに導電性を付与できるが、バルク銅と比べると抵抗率は高い。
【0028】
図3(b)は本発明の他の実施の形態による還元装置を示す図である。本実施の形態の還元装置50bでは、前バッファ槽53と反応槽55の間に、反応ガス供給槽531が設けられている。反応ガス供給槽531には、反応ガス供給管561が連結されており、反応ガス供給管561から反応ガス供給槽531内へ、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスが噴出される。反応ガス供給槽531内へ噴出された不活性ガスは、配線パターンが作成された基体1の表面へ供給され、基体1は、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを伴ったまま反応槽55へ搬入されるので、反応槽55内で、配線パターン中の酸化銅の還元反応が迅速に進む。
【0029】
また、前バッファ槽53、反応ガス供給槽531、及び反応槽55には、フィルム状の基体1を加温するための加温装置80が設けられている。加温装置80には、プレートヒーター、IRヒーター、ハロゲンヒーター等の発熱物全般を使用することができる。加温装置80で基体1を加温することにより、配線パターン中の酸化銅の還元反応がさらに迅速に進む。
【0030】
図3(c)は本発明のさらに他の実施の形態による還元装置を示す図である。本実施の形態の還元装置50cでは、加温装置として、ヒーターローラ81を使用している。ヒーターローラ81は、配線パターンの形成された基体1の表面側に設置されている。このとき、配線の無い基体1の裏面側に、冷却ローラ82を設置すると、さらに耐熱性の低い材料を、基体1に用いることができる。ヒーターローラ81は、発熱物全般が適用できる。冷却ローラ82は、フィルム状の基体1の冷却性能を有していれば、冷却シートや冷却ベルトでも構わない。
【0031】
図3(a),(b),(c)に示した実施の形態では、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスへ紫外光を照射する簡単な処理で、不活性ガス中の有機酸が遊離基化されるので、減圧設備が必要なく、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成が、安価な設備費で生産性良く行われる。不活性ガスとしては、取り扱いが簡単で入手が容易な窒素ガス又はヘリウムガスを用いることができる。これらの不活性ガスを用いることにより、紫外光を照射する際、空気の様に紫外光で分解されて酸素が発生することがない。
【0032】
図4(a)は本発明のさらに他の実施の形態による還元装置を示す図である。還元装置50dは、タイミングローラ51、テンションローラ52、前バッファ槽53、排気管54、反応槽55、反応ガス供給管56、後バッファ槽58、及び大気圧プラズマ発生装置90を含んで構成されている。
【0033】
フィルム状の基体1は、タイミングローラ51の駆動力により、テンションローラ52から前バッファ槽53に搬入され、次いで反応槽55に搬入され、最後に後バッファ槽58に搬入されて、後バッファ槽58から搬出される。前バッファ槽53及び後バッファ槽58には、排気管54がそれぞれ連結されており、還元処理の反応ガスが外部に流出するのを防いでいる。反応槽55には、反応ガス供給管56が連結されており、反応ガス供給管56から反応槽55内へ、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスが噴出される。反応槽55内へ噴出された不活性ガスは、配線パターンが作成された基体1の表面へ供給される。
【0034】
反応槽55内には、大気圧プラズマ発生装置90が設けられており、大気圧プラズマ発生装置90により、大気圧中で、基体1の表面へ供給された不活性ガスからプラズマが発生される。大気圧プラズマ発生装置90は、誘電体91に囲まれた電極92により、フィルム状の基体1を上下から挟んで構成されている。大気圧プラズマ発生装置90からにより不活性ガスから発生された大気圧プラズマにより、基体1の表面へ供給された不活性ガス中の有機酸が遊離基化され、有機酸の遊離基により、基体1の表面に作成された配線パターン中の酸化銅が還元されて、配線パターンが導体化される。本実施の形態では、基体1が大気圧プラズマに直接曝されるため、基体1の温度が上がるので、基板1をさらに加温する必要は無いが、加温をしても構わない。
【0035】
図4(b)は本発明の他の実施の形態による還元装置を示す図である。本実施の形態の還元装置50eでは、前バッファ槽53と反応槽55の間に、反応ガス供給槽531が設けられている。反応ガス供給槽531には、反応ガス供給管561が連結されており、反応ガス供給管561から反応ガス供給槽531内へ、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスが噴出される。反応ガス供給槽531内へ噴出された不活性ガスは、配線パターンが作成された基体1の表面へ供給され、基体1は、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを伴ったまま反応槽55へ搬入されるので、反応槽55内で、配線パターン中の酸化銅の還元反応が迅速に進む。
【0036】
また、前バッファ槽53、及び反応ガス供給槽531には、フィルム状の基体1を加温するための加温装置80が設けられている。加温装置80には、プレートヒーター、IRヒーター、ハロゲンヒーター等の発熱物全般を使用することができる。加温装置80で基体1を加温することにより、配線パターン中の酸化銅の還元反応がさらに迅速に進む
【0037】
図4(c)は本発明のさらに他の実施の形態による還元装置を示す図である。本実施の形態の還元装置50fでは、大気圧プラズマ発生装置90の誘電体91に囲まれた電極92を対向させて設置し、対向した電極92間に、ガス供給管59から不活性ガス、またはカルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを供給する。その状態で、電極92間に交流電圧を掛けて、不活性ガスから大気圧プラズマを発生させる。そして、反応ガス供給槽531に連結された反応ガス供給管561から、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを基体1の表面へ供給しながら、発生したプラズマを、不活性ガス、またはカルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスの気流で基体1の表面に作用させることにより、還元反応を進行させる。図4(c)に示す様に、反応槽55内で基体1の裏面側に加温装置80を設置して基体1を加温すると、配線パターン中の酸化銅の還元反応がさらに迅速に進む。
【0038】
図4(a),(b),(c)に示した実施の形態では、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスから大気圧プラズマを発生させる簡単な処理で、不活性ガス中の有機酸が遊離基化されるので、減圧設備が必要なく、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成が、安価な設備費で生産性良く行われる。不活性ガスとしては、取り扱いが簡単で入手が容易な窒素ガス又はヘリウムガスを用いることができる。これらの不活性ガスを用いることにより、大気圧プラズマを発生させる際、大気圧プラズマを発生するための放電が安定化する。
【0039】
図5は、反応ガス供給装置の一例を示す図である。反応ガス供給装置70は、窒素ボンベ71、流量調節器72,73、流量計74、混合気ユニット75、湿潤反応ガス発生器76、及び圧力計77を含んで構成されている。窒素ボンベ71から供給された窒素は、ドライ窒素ラインと湿潤窒素ラインとに分岐される。ドライ窒素ラインは、流量調節器72、流量計74を経由して、混合気ユニット75に到達する。一方、湿潤窒素ラインは、流量調節器73、流量計74を経由して、湿潤反応ガス発生器76に到達する。湿潤反応ガス発生器76では、還元剤を希釈した液体中をバブリングで通気して、湿潤反応ガスを発生させる。還元剤には、蟻酸の他に、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、安息香酸、オキソカルボン酸等の有機酸が使用できる。湿潤反応ガス発生器76で発生した湿潤反応ガスは、混合気ユニット75によりドライ窒素と混合されて、反応ガス供給管56、反応ガス供給管561、及びガス供給管59へ送られる。また、図示していないが、湿潤反応ガス発生器76を複数台設け、異なる還元剤を通気後に混合する方式も組合せによっては有効な手段である。
【0040】
以上説明した実施の形態によれば、基体1上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成し、基体1上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元して、配線パターンを導体化することにより、微細かつ低抵抗な配線パターンを、耐熱性の低い安価な基体上に形成することができる。
【0041】
さらに、反応槽55内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体1の表面に供給しながら、不活性ガスへ紫外光を照射し、または不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化することにより、減圧設備を用いることなく、微細かつ低抵抗な配線パターンの形成を、安価な設備費で生産性良く行うことができる。そして、不活性ガスを用いることにより、大気圧プラズマを発生するための放電を安定化させることができる。
【0042】
さらに、配線パターン作成工程において、電子写真方式を用いて基体1上に配線パターンを作成することにより、フォトリソグラフィー法を用いる場合に比べ、設備費や生産コストを低減することができる。また、フォトリソグラフィー法を用いる場合、洗浄・現像・エッチング・剥離の各工程で大量の廃液が発生するが、電子写真方式ではこの様な廃液が少ないため、環境負荷の小さい製造プロセスを提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 基体
10 基体クリーニング装置
20 対向ローラ
30 電子写真装置
31 感光体
32 除電機構
33 感光体クリーニング機構
34 帯電機構
35 画像露光機構
36 現像機構
37 転写機構
40 定着装置
50a,50b,50c,50d,50e,50f 還元装置
51 タイミングローラ
52 テンションローラ
53 前バッファ槽
531 反応ガス供給槽
54 排気管
55 反応槽
56,561 反応ガス供給管
57 紫外光照射装置
58 後バッファ槽
59 ガス供給管
60 駆動ローラ
70 反応ガス供給装置
71 窒素ボンベ
72,73 流量調節器
74 流量計
75 混合気ユニット
76 湿潤反応ガス発生器
77 圧力計
80 加温装置
81 ヒーターローラ
82 冷却ローラ
90 大気圧プラズマ発生装置
91 誘電体
92 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成する配線パターン作成手段と、
前記配線パターン作成手段により基体上に作成された配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元して、配線パターンを導体化する還元手段とを有することを特徴とする配線パターンの形成装置。
【請求項2】
前記還元手段は、
カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを基体の表面に供給する反応槽と、
前記反応槽内で不活性ガスへ紫外光を照射して、不活性ガス中の有機酸を遊離基化する紫外光照射装置とを有することを特徴とする請求項1に記載の配線パターンの形成装置。
【請求項3】
前記還元手段は、
カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤された不活性ガスを基体の表面に供給する反応槽と、
前記反応槽内で不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化する大気圧プラズマ発生装置とを有することを特徴とする請求項1に記載の配線パターンの形成装置。
【請求項4】
前記大気圧プラズマ発生装置に不活性ガスを気流状に供給するガス供給管を備え、前記大気圧プラズマ発生装置から発生されたプラズマを不活性ガスの気流で基板表面に作用させることを特徴とする請求項3に記載の配線パターンの形成装置。
【請求項5】
前記還元手段が用いる有機酸は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸 安息香酸、またはオキソカルボン酸であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の配線パターンの形成装置。
【請求項6】
前記配線パターン作成手段は、現像トナーとして、主に酸化銅あるいは酸化銅を主体とする合金を含む現像液又は現像粉を使用した電子写真装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の配線パターンの形成装置。
【請求項7】
基体上に酸化銅を主体とする配線パターンを作成する配線パターン作成工程と、
基体上に作成した配線パターン中の酸化銅を、カルボン酸構造を有する有機酸の遊離基で還元して、配線パターンを導体化する還元工程とを含むことを特徴とする配線パターンの形成方法。
【請求項8】
還元工程において、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体の表面に供給しながら、不活性ガスへ紫外光を照射して、不活性ガス中の有機酸を遊離基化することを特徴とする請求項7に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項9】
還元工程において、反応槽内で、カルボン酸構造を有する有機酸で湿潤した不活性ガスを基体の表面に供給しながら、不活性ガスからプラズマを発生させて、不活性ガス中の有機酸を遊離基化することを特徴とする請求項7に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項10】
有機酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸 安息香酸、またはオキソカルボン酸を用いることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項11】
配線パターン作成工程において、電子写真方式を用い、現像トナーとして、主に酸化銅あるいは酸化銅を主体とする合金を含む現像液又は現像粉を使用して、基体上に配線パターンを作成することを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の配線パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−182387(P2012−182387A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45558(P2011−45558)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】