説明

配線ボックス用変形防止部材

【課題】コンクリート型枠に配線ボックスを引寄せて固定するとき、配線ボックスが変形するのを防止することができる配線ボックス用変形防止部材を提供する。
【解決手段】配線ボックス用変形防止部材20は、ボルトBを配線ボックス11の底部12に設けられたナットNに螺合して配線ボックス11をコンクリート型枠18に引寄せる際に底部12の変形を防止するために配線ボックス11に取付けられる。配線ボックス用変形防止部材20は、ボルトBが貫通可能な筒状をなす本体21を有する。また、本体21は一端にナットNを囲んで底部12に当接可能な第1当接部を備える。そして、本体21は、第1当接部が底部12に当接した状態で、本体21の他端の第2当接部が配線ボックス11の開口面H上に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線ボックスをコンクリート型枠に引寄せる際に用いられる配線ボックス用変形防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート壁に配線ボックスを埋設する場合、コンクリートを打設する前に、配線ボックスは、その開口端が型枠の内面に密接するように型枠の内側に固定される。配線ボックスを型枠の内側に固定するには、型枠に穿設された透孔から配線ボックス内にボルト体を挿入し、該ボルト体の一端を配線ボックスの底部に設けられたねじ部に螺合する。その後、型枠の外側に突出しているボルト体の他端にナット体を螺進させることにより、配線ボックスが型枠に引寄せられる。その結果、配線ボックスは、その開口端が型枠の内面に密接した状態で固定される。
【0003】
配線ボックスを型枠側へ引寄せる際に、ねじ部の周囲の底部が配線ボックス内へ引寄せられて湾曲するのを防止するために、配線ボックスには一対の突張棒が底部に一体形成されている(例えば、特許文献1参照。)。前記突張棒は、ねじ部を挟んで対向する底部から開口に向かって延設されている。そして、ボルト体にナット体を螺合して配線ボックスを型枠に引寄せたとき、両突張棒の自由端が型枠の内面に当接し、両突張棒によって底部と型枠との間隔が維持される。
【0004】
その結果、突張棒によって、底部が配線ボックス内へ引寄せられるのが阻止され、底部の湾曲を防止するようになっている。これら突張棒は、コンクリートが打設され、型枠が除去された後、基端部から折り取られて配線ボックス内から除去される。また、突張棒の基端部に近い底部の外面には、突張棒の折り取り除去を容易とするために凹部が設けてある。
【特許文献1】実公平5−10500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、突張棒は、ねじ部の周囲に二箇所だけ設けられている。このため、配線ボックスが引寄せられるのに伴い、ねじ部の周囲に発生する応力は、一対の突張棒のみで受承される。そして、一対の突張棒に前記応力が集中して作用すると突張棒が折れ曲がってしまい、底部をはじめ配線ボックスの変形を防止することができなくなるという問題があった。本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、コンクリート型枠に配線ボックスを引寄せて固定するとき、配線ボックスが変形するのを防止することができる配線ボックス用変形防止部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、コンクリート型枠を貫通し該コンクリート型枠内側の配線ボックス内に挿入されたボルトを前記配線ボックス底部のねじ部に螺合して該配線ボックスをコンクリート型枠に引寄せる際に、前記配線ボックスが変形するのを防止するため該配線ボックスに取付けられる配線ボックス用変形防止部材であって、前記ボルトが貫通される筒状の本体を有し、該本体はボルトの貫通方向に沿う本体の一端に前記ねじ部を囲んで前記底部に当接可能な第1当接部を備え、前記貫通方向に沿う本体の他端に、前記第1当接部が底部に当接した状態で、配線ボックスの開口面、又は配線ボックスに取付けられたボックスカバーの開口面と同一平面上に位置し前記コンクリート型枠に当接可能な第2当接部を備えることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線ボックス用変形防止部材において、前記本体は、該本体を配線ボックスの底部に取付けるための取付部を本体の一端側に備えることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の配線ボックス用変形防止部材において、前記本体は、前記ボルトを前記ねじ部へ案内するために、前記貫通方向に沿った本体の他端側から一端側に向かって縮径形成された案内孔を備えることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の配線ボックス用変形防止部材において、前記案内孔を形成する案内面を、漏斗状の面形状に形成したことを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の配線ボックス用変形防止部材において、前記本体の他端側には連結部材が取付けられ、該連結部材は一端側が本体の他端側に取付けられた状態で、他端が前記配線ボックスの開口面又は前記ボックスカバーの開口面と同一平面上に位置するように形成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンクリート型枠に配線ボックスを引寄せて固定するとき、配線ボックスが変形するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した配線ボックス用変形防止部材の一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。まず、配線ボックスについて説明する。図1及び図2に示すように、配線ボックス11は、四角板状をなす底部12と、該底部12の四側周縁に立設された側壁13とから、一面に開口を有する有底四角箱状に形成されている。配線ボックス11の底部12の中央部には、配線ボックス11内へ円筒状に膨らむ膨出部14が設けられている。この膨出部14にはナットN(図6参照)が埋設され、このナットNによって配線ボックス11にねじ部が設けられている。そして、膨出部14の中心に穿設されたねじ孔14aからナットN内にボルトBを挿入することが可能になっている。また、底部12は、各側壁13の底部12側の縁部中央と膨出部14とを繋ぐように四箇所に突条15を備えている。各突条15は直線状に延びるように形成されている。また、底部12の一部たる各突条15には、円穴状をなす係合凹所16が一箇所又は二箇所に凹設されている。
【0012】
次に、配線ボックス用変形防止部材(以下、単に変形防止部材と記載する)20について説明する。図1に示すように、変形防止部材20は、前記配線ボックス11をコンクリート型枠(以下、単に「型枠」と記載する)18に引寄せる際に、配線ボックス11の前記底部12が変形するのを防止するために配線ボックス11に取付けられる。図3及び図4に示すように、変形防止部材20は全体が合成樹脂材料によって形成されている。変形防止部材20は筒状をなす本体21を有し、本体21はその内側にボルトBを貫通可能に形成されている。そして、本体21に対してボルトBが貫通される方向を貫通方向とする。また、本体21はその一端部に前記膨出部14を被覆可能な略円筒状に形成された被覆部22を備えている。さらに、本体21は、前記被覆部22以外の部位に該被覆部22に向かって縮径する円錐筒状をなす案内部23を備えている。
【0013】
図4に示すように、前記被覆部22は、その周壁22dの内径が前記膨出部14の直径よりわずかに大きく形成されている。また、被覆部22は、その端面22eから被覆部22の奥方へ凹むように形成されている。被覆部22内の中央部には、ボルトBが貫通可能な挿通孔22aが形成されている。この挿通孔22aの直径は、ボルトBの直径よりわずかに大きく形成されている。前記周壁22dには、凹溝22bが周壁22dの周方向へ等間隔おきに四箇所に形成されている。さらに、前記周壁22dの外面には一対の係合突部22cが相対向するように形成されている。両係合突部22cは、それぞれ前記係合凹所16に係合可能に形成されている。そして、前記係合突部22cを係合凹所16に係合させることにより、本体21が底部12に取付けられるようになっている。すなわち、係合突部22cにより、本体21を底部12(配線ボックス11)に取付ける取付部が構成され、この取付部(係合突部22c)によって変形防止部材20が底部12から外れないようになっている。
【0014】
そして、図5及び図6に示すように、被覆部22によって膨出部14を被覆し、係合突部22cによって変形防止部材20を底部12に取付けたとき、各凹溝22bの内側に前記突条15が収容される。このとき、凹溝22bの内面が底部12の一部たる突条15に当接し、周壁22dの端面22eが底部12に当接するとともに、係合突部22cの先端も底部12の一部たる係合凹所16の内底面に当接するようになっている。すなわち、ボルトBの貫通方向に沿う本体21の一端となる周壁22dの端面22e、凹溝22bの内面、及び係合突部22cの先端は、膨出部14(ねじ部)を囲む状態で底部12に当接する第1当接部を構成している。また、変形防止部材20を底部12に取付けたとき、挿通孔22aの中心軸線はナットNの中心軸線と一致するようになっている。さらに、変形防止部材20を底部12に取付けたとき、各凹溝22bの内面が突条15の外面に当接可能となり、係合突部22cは係合凹所16の内面に当接可能となる。そして、前記凹溝22b及び係合突部22cは、変形防止部材20の周方向への回転を防止する回り止め手段を構成している。
【0015】
次に、前記案内部23について説明する。図3及び図6に示すように、案内部23の内側には案内孔23aが形成されている。この案内孔23aは、前記貫通方向に沿う本体21の他端側から一端側に向かって直径が縮径するように形成されている。すなわち、案内孔23aは、本体21の他端側が最も広く開口するように形成され、挿通孔22aに向かって徐々に狭くなるように形成されている。そして、案内孔23aの直径は、本体21の他端側が最も大径であり、かつ、ボルトBの直径より大きく、挿通孔22aに近づくに従いボルトBの直径に近づくようになっている。
【0016】
また、案内孔23aを形成する案内部23の内周面は、前記貫通方向に沿う本体21の他端側から一端側に向かって傾斜するように形成され、該案内部23の内周面によって本体21内には案内面Aが形成されている。したがって、案内面Aは前記挿通孔22aを中心とした漏斗状の面形状に形成されている。
【0017】
さらに、案内面Aは鏡面加工が施されている。このため、案内面Aは、本体21におけるその他の周面よりも日光等を反射しやすくなっている。ボルトBの貫通方向に沿う本体21の他端面たる端面23dにおいて、案内部23の径方向に相対向する位置には位置決め突起23cが突設されている。本体21において、被覆部22と案内部23とを繋ぐように補強リブ25が、本体21の周方向へ等間隔をおいて四箇所に形成されている。
【0018】
そして、被覆部22によって膨出部14を被覆し、凹溝22bの内面、周壁22dの端面22e、及び係合突部22cの先端が底部12に当接した状態では、案内部23の端面23dが配線ボックス11の各側壁13の端面と同じ高さに位置するようになっている。ここで、全ての側壁13の端面が位置する平面を配線ボックス11の開口面Hとする。そして、案内部23の端面23dは、前記開口面H上に位置し、該端面23dは本体21の第2当接部を構成している。なお、端面23dが開口面H上に位置するとは、端面23dが開口面Hと一致する状態は当然であり、端面23dが開口面Hより前方へわずかに突出した状態又は後方へわずかに後退した状態も含む。すなわち、配線ボックス11を型枠18側へ引寄せたとき、該配線ボックス11の引寄せ側に設置された型枠18の内面に、配線ボックス11の開口端が密接するのを妨げないような端面23dの位置であればよい。
【0019】
次に、上記構成の変形防止部材20を用いた配線ボックス11の型枠18への固定方法について図5及び図6を用いて説明する。なお、配線ボックス11の前後には型枠18が配設され、その一対の型枠18の内側に配線ボックス11が図示しない支持手段によって支持されているものとする。また、図5及び図6では配線ボックス11の前側(開口側)に配設された一方の型枠18のみを図示する。
【0020】
まず、支持手段によって配線ボックス11が支持された状態において、被覆部22によって膨出部14を被覆し、係合突部22cを係合凹所16に係合させる。すなわち、取付部によって変形防止部材20を配線ボックス11の底部12に取付ける。さらに、各凹溝22bの内面を突条15に当接させ、周壁22dの端面22e(凹溝22bの内面)、及び係合突部22cの先端を底部12に当接させる。このとき、案内部23の端面(第2当接部)23dが、配線ボックス11の開口側に位置され、開口面Hと同一平面上に位置される。また、一対の係合凹所16と一対の係合突部22cの係合、及び凹溝22bと突条15の当接によって、変形防止部材20が周方向へ移動することなく底部12上に位置決めされる。
【0021】
次に、図6に示すように、型枠18に透孔18aを穿設する。この透孔18aは、ボルトBを挿通可能とするようにボルトBの直径よりわずかに大きく形成されている。そして、透孔18aから型枠18の内側に設置された配線ボックス11の位置を確認する。このとき、案内部23の案内面Aは鏡面加工が施されているため、型枠18と端面23dとの間から案内部23内へ侵入した日光等が案内面Aに反射する。この反射光によって、作業者は、変形防止部材20の位置を確認することができる。
【0022】
続いて、案内面Aからの反射光によって案内孔23aの位置を確認しながら、透孔18a内にボルトBを挿入し、さらに、案内部23の案内孔23aへボルトBを挿入する。このとき、案内孔23aは、本体21の他端側が最も広く開口し、透孔18aよりも広くなっている。このため、透孔18aに挿入されたボルトBを案内孔23aへ容易に挿入することができる。そして、案内孔23aへ挿入されたボルトBが案内面Aに接触すると、該ボルトBは、漏斗状をなす案内面Aによって挿通孔22aへと速やかに案内される。さらに、挿通孔22aはナットNの真上に位置し、その直径がボルトBよりわずかに大きく形成されている。このため、ボルトBが、案内面Aによって挿通孔22aに案内され挿入されると、ボルトBは本体21を貫通し、挿通孔22aからナットNへ挿入されるように案内される。したがって、本発明の配線ボックス用変形防止部材20は、本体21の他端から該本体21内に挿入されたボルトBをナットN(ねじ部)へ案内するための配線ボックス用案内部材として用いることも可能である。
【0023】
続いて、配線ボックス11の底部12のナットNにボルトBの一端を螺合する。続けて、型枠18の外側まで延設されたボルトBの他端にナット体30を螺合する。すると、ナット体30の螺進に伴い、配線ボックス11が型枠18に引寄せられていく。そして、位置決め突起23cが型枠18の内面に食い込むと、ナット体30をボルトBに螺進させるとき、配線ボックス11が連れ周りすることが規制される。
【0024】
さらに、配線ボックス11の開口端が型枠18内面に当接しているため、ナットNの周囲が型枠18側へ引寄せられる。そして、ナットNの周囲が型枠18側へ引寄せられると、ナットNの周囲に位置する膨出部14には型枠18側へ引寄せる応力が作用する。しかし、底部12における膨出部14の周囲には、変形防止部材20の第1当接部たる、凹溝22bの内面、周壁22dの端面22e、及び係合突部22cが底部12に当接し、型枠18にはその変形防止部材20の第2当接部たる案内部23の端面23dが当接している。
【0025】
特に、変形防止部材20は円筒状をなし、第1当接部が膨出部14を囲むようにして底部12に当接し、第2当接部もコンクリート型枠18に当接している。このため、膨出部14及びその周囲に発生する応力は、そのまま変形防止部材20全体で受承されることとなる。すなわち、前記応力を二本の突張棒のみで受承する場合と比較して該応力を受承する面積が大きくなり、さらには、応力を変形防止部材20に均等に分散して受承することができる。また、変形防止部材20は筒状をなすため、棒状をなす突張棒で応力を受承する場合と比較して座掘しにくくなる。その結果、ナットNの周囲が型枠18側へ引寄せられ、前記応力が発生しても、変形防止部材20によって型枠18と底部12との間隔を維持することができ、膨出部14の周囲たる底部12や、その底部12の周囲の側壁13が変形することが防止される。そして、ナット体30のボルトBに対する螺合が完了すると、配線ボックス11の各側壁13の端面(開口端)が型枠18の内面に密接した状態で配線ボックス11が型枠18の内側に固定される。
【0026】
その後、型枠18間にコンクリートが打設されてコンクリート壁内に配線ボックス11が埋設される。そして、型枠18除去後、配線ボックス11内から変形防止部材20が除去される。このとき、変形防止部材20は係合凹所16と係合突部22cとの係合のみで配線ボックス11内に位置決めされているため、配線ボックス11から容易に除去される。
【0027】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)変形防止部材20を筒状に形成した。さらに、凹溝22bの内面、周壁22dの端面22e、及び係合突部22cの先端を膨出部14の周囲たる底部12に当接させたとき、端面(第2当接部)23dが配線ボックス11の引寄せ側に設置されたがコンクリート型枠18に当接するように形成した。そして、配線ボックス11が型枠18側へ引寄せられたとき、膨出部14及びその周囲に発生する応力を変形防止部材20で均等に分散して受承することができる。このため、変形防止部材20は、前記応力を受承しても傾倒したり変形したりせず、変形防止部材20によって底部12とコンクリート型枠18の間隔を一定に維持して、配線ボックス11の底部12をはじめ、側壁13等が変形するのを防止することができる。
【0028】
(2)変形防止部材20は、被覆部22が膨出部14全体を被覆する状態で底部12上に設置される。このため、変形防止部材20に、その径方向へ移動させる力が作用しても被覆部22と膨出部14の当接によって変形防止部材20の移動を阻止することができる。したがって、案内孔23a及び挿通孔22aと、ナットNとの対応関係がずれることを阻止することができ、案内孔23aに挿入されたボルトBをナットNへと容易に挿入することができる。
【0029】
(3)被覆部22には一対の係合突部22c、及び凹溝22bが形成されている。そして、一対の係合突部22cを係合凹所16に係合させ、凹溝22bを突条15に被せることによって、変形防止部材20に、その周方向へ移動させる力が作用しても変形防止部材20の移動を阻止することができる。したがって、案内孔23a及び挿通孔22aと、ナットNとの対応関係がずれることを阻止することができ、変形防止部材20内へ挿入されたボルトBをナットNへと容易に挿入することができる。
【0030】
(4)変形防止部材20の案内部23には一対の位置決め突起23cが形成されている。そして、配線ボックス11を型枠18へ引寄せたとき、一対の位置決め突起23cが型枠18の内面に食い込むようになっている。したがって、ナット体30をボルトBに螺進させたとき配線ボックス11が連れ周りしようとしても、位置決め突起23cの食い込みによって変形防止部材20を介して配線ボックス11の連れ周りを規制することができる。
【0031】
(5)案内部23の案内面Aは鏡面加工が施されているため、型枠18と端面23dとの間から案内部23内へ侵入した日光等が案内面Aに反射する。この反射光によって、作業者は、変形防止部材20の位置を容易に確認することができる。したがって、ボルトBを案内孔23aに挿入する作業を速やかに行うことができる。
【0032】
(6)案内孔23aは、挿通孔22aに向かって縮径するように傾斜形成され、案内孔23aを形成する案内面Aは漏斗状に形成されている。このため、案内孔23a(案内面A)によって、該案内孔23aへ挿入されたボルトBを挿通孔22aへ速やかに案内することができる。したがって、案内孔23aによりボルトBを、挿通孔22a、及びその挿通孔22aの真下に位置するねじ孔14a(ナットN)へ案内することができる。その結果、型枠18の外側から配線ボックス11の視認が困難な状況において、ボルトBをナットNに螺合する作業の簡易化に寄与することができる。
【0033】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 実施形態では、端面23dに一対の位置決め突起23cを形成したが、端面23dの周方向全体に位置決め突起23cを多数形成してもよい。又は、位置決め突起23cを削除してもよい。
【0034】
・ 実施形態では、案内部23の案内面Aを鏡面加工したが、鏡面加工を施さなくてもよい。その代わりに、案内部23の内側に蓄光材を設けたり、蓄光塗料を塗布したりしてもよい。
【0035】
・ 実施形態では、配線ボックス11の係合凹所16に係合突部22cを係合させたが、係合突部22cを削除してもよい。又は、係合突部22cの形成箇所を係合凹所16に合わせて変更してもよい。さらに、底部12の膨出部14の周縁部に、周壁22dが係合可能な円環状をなす係合凹所16を形成し、その係合凹所16に周壁22dを係合させてもよい。このとき、端面22eを係合凹所16の内底面(底部12)に当接させる。
【0036】
・ 図7及び図8に示すように、配線ボックス11の開口側にボックスカバー40を取付けた場合、ボックスカバー40の開口面H(前面)上に変形防止部材20の他端が位置するように、本体21の他端側に連結部材41を取り付けてもよい。前記ボックスカバー40は四角枠状をなすとともに中央部に環状をなす塗り代部40aが立設されている。そして、塗り代部40aの内側には、配線ボックス11内へ配線器具等を収容させるための開口が形成されている。また、連結部材41は、合成樹脂材料により円筒状に形成されている。連結部材41はその一端側に小径部42を備え、他端側に前記小径部42より大径をなす大径部43を備えている。前記小径部42は、本体21の案内部23内に嵌入可能な大きさに形成されている。また、小径部42と大径部43の境界となる段差部には、前記位置決め突起23cが係止可能な係止穴44が凹設されている。
【0037】
そして、底部12に取付けられた変形防止部材20の案内部23に対し、小径部42を嵌入し、位置決め突起23cを係止穴44に係止させる。すると、連結部材41の一端側が本体21の他端側に取付けられる。このとき、位置決め突起23cと係止穴44との係止によって、連結部材41はその周方向への回転が規制された状態で本体21に取付けられる。この取付状態で、連結部材41の大径部43の端面43a(他端面)は、ボックスカバー40の塗り代部40aの開口面H(前面)と同一平面上に位置するようになっている。
【0038】
なお、連結部材41は、配線ボックス11の深さに伴う開口面Hの位置やボックスカバー40の塗り代部40aの厚みに伴う開口面Hの位置の変化に伴い本体21に取付ける個数、又は軸線方向への長さを変更する。また、端面23dに多数の位置決め突起23cを形成し、それら位置決め突起23cと噛合するように、小径部42と大径部43の段差部に多数の突起を形成してもよい。
【0039】
・ 実施形態において、本体21を円筒状に形成し、本体21内にナットNの内径とほぼ同じとなる案内孔23aを形成してもよい。すなわち、ボルトBがナットNに向かうように案内されるのであれば、案内孔23a(案内面A)の形状は任意に変更してもよい。例えば、案内孔23aを、本体21の他端側から一端側に向かって縮径した後、一定の内径で挿通孔22aに向かって延びるように形成してもよい。
【0040】
・ 実施形態では、本体21に被覆部22と案内部23を形成したが、本体21を被覆部22を削除した案内部23のみの構成とし、本体21の一端に位置する案内部23の端面を第1当接部とし、本体21の他端に位置する案内部23の端面23dを第2当接部としてもよい。
【0041】
・ 実施形態では、変形防止部材20を底部12に取付けたが、例えば、本体21の側部に、該本体21を側壁13に取付け可能とする取付部を延設して該取付部によって変形防止部材20を側壁13に取り付けてもよい。すなわち、本体21の一端がナットNを囲んで底部12に当接し、本体21の他端が配線ボックス11の開口面H、又はボックスカバー40の開口面と同一平面上に位置するのであれば、本体21の配線ボックス11に対する取付方法は任意に変更してもよい。
【0042】
・ 実施形態の配線ボックス11よりも深型の配線ボックスに対しては、実施形態の変形防止部材20よりも軸方向への長さが延長された変形防止部材を用い、実施形態の配線ボックス11よりも浅型の配線ボックスに対しては、実施形態の変形防止部材20よりも軸方向への長さが短縮された変形防止部材を用いてもよい。
【0043】
・ 実施形態では、変形防止部材20をほぼ円筒状に形成したが、変形防止部材20を角筒状に形成してもよい。
・ 実施形態において、変形防止部材20を配線ボックス用案内部材として用いる場合は、本体21は、端面22e(第1当接部)が底部12に当接した状態で本体21の端面23d(第2当接部)が開口面Hよりも後退する長さに形成されていてもよい。
【0044】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記本体の第2当接部に、型枠に食い込み可能な位置決め突起を形成した請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の配線ボックス用変形防止部材。
【0045】
(2)前記案内孔を形成する案内面には、鏡面加工が施されている請求項3に記載の配線ボックス用変形防止部材。
(3)コンクリート型枠を貫通し該コンクリート型枠内の配線ボックス内に挿入されたボルトを、配線ボックスの底部に設けられたねじ部に案内するために前記配線ボックスに取付けられる配線ボックス用案内部材であって、前記ボルトが貫通される筒状の本体を有し、該本体はボルトの貫通方向に沿う本体の一端に前記ねじ部を囲んで底部に当接可能な第1当接部を備え、該本体の他端から本体内に挿入された前記ボルトを前記ねじ部へ案内するために前記貫通方向に沿う他端側から一端側に向かって縮径形成された案内孔を備える配線ボックス用案内部材。
【0046】
案内孔は、貫通方向に沿う本体の他端側から一端側に向かって縮径するように形成されている。このため、コンクリート型枠の外側から配線ボックス内へ挿入されたボルトは、本体内、すなわち、案内孔内に挿入されると該案内孔によって本体の一端側に向かって案内され、ねじ部へ向かうように案内される。その結果、案内孔によってボルトをねじ部に螺合する作業を速やかに行うことが可能となる。したがって、本発明によれば、コンクリート型枠の外側から配線ボックスの視認が困難な状況においても、配線ボックス内へ挿入されたボルトをねじ部へ案内することができ、ボルトをねじ部に螺合する作業の簡易化に寄与することができる。すなわち、本発明の目的は、コンクリート型枠の外側から配線ボックスの視認が困難な状況においても、配線ボックス内へ挿入されたボルトをねじ部へ案内することができ、ボルトをねじ部に螺合する作業の簡易化に寄与することができる配線ボックス用案内部材を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態の配線ボックス、配線ボックス用変形防止部材等を示す斜視図。
【図2】実施形態の配線ボックス内を示す正面図。
【図3】実施形態の配線ボックス用変形防止部材の案内部側を主に示す斜視図。
【図4】実施形態の配線ボックス用変形防止部材の被覆部側を主に示す斜視図。
【図5】実施形態の配線ボックスを型枠に固定した状態を示す側面図。
【図6】実施形態の配線ボックスを型枠に固定した状態を示す断面図。
【図7】配線ボックスにボックスカバーを取付けた状態を示す斜視図。
【図8】ボックスカバーが取付けられた配線ボックスを型枠に固定した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
A…案内面、B…ボルト、H…開口面、N…ねじ部としてのナット、11…配線ボックス、12…底部、18…コンクリート型枠、20…配線ボックス用変形防止部材、21…本体、22b…第1当接部を構成する凹溝、22c…取付部及び第1当接部を構成する係合突部、22e…第1当接部を構成する端面、23a…案内孔、23d…第2当接部としての端面、40…ボックスカバー、41…連結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠を貫通し該コンクリート型枠内側の配線ボックス内に挿入されたボルトを前記配線ボックス底部のねじ部に螺合して該配線ボックスをコンクリート型枠に引寄せる際に、前記配線ボックスが変形するのを防止するため該配線ボックスに取付けられる配線ボックス用変形防止部材であって、
前記ボルトが貫通される筒状の本体を有し、該本体はボルトの貫通方向に沿う本体の一端に前記ねじ部を囲んで前記底部に当接可能な第1当接部を備え、前記貫通方向に沿う本体の他端に、前記第1当接部が底部に当接した状態で、配線ボックスの開口面、又は配線ボックスに取付けられたボックスカバーの開口面と同一平面上に位置し前記コンクリート型枠に当接可能な第2当接部を備える配線ボックス用変形防止部材。
【請求項2】
前記本体は、該本体を配線ボックスの底部に取付けるための取付部を本体の一端側に備える請求項1に記載の配線ボックス用変形防止部材。
【請求項3】
前記本体は、前記ボルトを前記ねじ部へ案内するために、前記貫通方向に沿った本体の他端側から一端側に向かって縮径形成された案内孔を備える請求項1又は請求項2に記載の配線ボックス用変形防止部材。
【請求項4】
前記案内孔を形成する案内面を、漏斗状の面形状に形成した請求項3に記載の配線ボックス用変形防止部材。
【請求項5】
前記本体の他端側には連結部材が取付けられ、該連結部材は一端側が本体の他端側に取付けられた状態で、他端が前記配線ボックスの開口面又は前記ボックスカバーの開口面と同一平面上に位置するように形成した請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の配線ボックス用変形防止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−94620(P2006−94620A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275933(P2004−275933)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】