説明

配線・配管材支持具

【課題】建物構造面に簡単にかつ楽に固定するとともに、壁面への取付位置、高さに対応して楽にかつ安全に固定作業を行なう。
【解決手段】ケーブルを支持する支持部5と、壁面と当接する当接面3に取着されて壁面に貼着される両面接着テープ12からなる貼着部11と、上下両端部に設けられ、壁面に固定される螺子41が挿通される挿通孔を有し、挿通孔は壁面に対して傾斜する方向に貫設され、螺子41は止着作業に適する箇所を任意に選択して挿通される固定部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面、柱、桟等の建物構造面に沿ってケーブル等の配線材や電線管、電力管、給水管等の配管材を配線、配管するために建物構造面に取付けられて配線・配管材を支持する配線・配管材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の配線・配管材支持具は、一般には、例えば、図8に示すように、建物構造面としての壁面Wにタッピンねじ等の螺子や釘等の止着具を介して固定される固定部52と、配線材であるケーブルCを収容して下方から支持する支持部53とで構成されている。固定部52は壁面Wと当接する当接面52aを有し、通常上下2箇所に止着具であるピン43等が壁面Wに直交方向から止着されて支持具51を固定している。支持部53はフック状に形成され、必要に応じて図示しない結束具で支持部53とケーブルCとを結束し、ケーブルCが支持部53から抜脱して落下するのを防止している。このように構成された支持具51は、一般には、図9に示すように、壁面Wに所定間隔で複数配設され、ケーブルCは壁面Wに沿って配線される。なお、壁面Wへの支持具の固定は接着剤による接着固定によって行なわれることもあるが、硬化までに時間を要し、その間支持具51を保持していなければならないことなどから、一般には、螺子、釘等の止着具を使用して行なわれている。
【0003】
しかし、図8及び図9に示す従来の支持具51は、ピン43が壁面Wに対して直交方向から止着されているため、接触などの外力が加わることによってピン43の軸を中心に回動して傾いてしまうことがあり、場合によってはそれにより支持部53で支持されているケーブルCが脱落してしまうことがあった。そこで、壁面Wに対して釘を斜めに打ち込むよう止着具の挿通孔を形成し、回動しにくくした支持具が提案されている。例えば、特開2001−339829公報、特開2002−340234公報にその技術が開示されている。これらの公報に掲載の支持具は、止着具を斜めに打ち込むことにより、比較的安定して壁面に固定され、回動を抑えることができる。なお、加えて、前記特開2002−340234公報に掲載のケーブル支持具は、1本の止着具で固定できるので、作業性がよい。また、この特開2002−340234公報に掲載のケーブル支持具は、支持部からケーブルが脱落するのを防止すべく、弾性を有するフック部を配設し、この開放端部を壁面に当接させてフック部の開放端部を閉塞している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−339829公報
【特許文献2】特開2002−340234公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特開2002−340234公報に掲載のケーブル支持具をはじめとして従来の支持具は、壁面に固定する際、一方の手で支持具と止着具との両方を保持しつつ、他方の手で工具を把持して止着具を打ち付けたり螺着しなければならないから、作業が面倒であった。なお、前記特開2001−339829公報に掲載のコード止めによれば、インサートピンによって支持具を壁面に仮止めできるため、固定する間、手でコード止めを保持している必要はない。しかし、このコード止めは、単体の状態でインサートピンが支持具本体から露出しているので取り扱い時等において危険である。また、インサートピンを壁面に仮止めするには相当の力で押さえる必要があり、場合によってはハンマー等の工具を必要とし、簡単に仮止めできるものではなかった。加えて、ピンをインサートするために膨出部を形成する必要もある。
【0006】
次に、前記特開2001−339829公報に掲載のコード止めは、ピンが斜め上方から斜め下方に向けて壁面に打ち込まれるものであるから、コード止めを壁面等の比較的低い位置に固定する場合は楽にピンの打込み作業を行なうことができるものの、コード止めを壁面等の高所に固定する場合は、高所に登ってコード止めより高い位置からピンの打込み作業を行なわなければならないため、作業し難く、また、高所作業のため危険を伴った。
また、前記特開2002−340234公報に掲載のケーブル支持具は、釘や木ネジ等の止着具が斜め下方から斜め上方に向けて壁面に打ち込まれるものであるから、上記コード止めとは逆に、止着具を壁面等の高所に固定する場合はケーブル支持具より下方から止着具を打ち込むことはできるものの、ケーブル支持具を壁面等の比較的低い位置に固定する場合は、腰をかがめて無理な低い姿勢で打込み作業を行なわなければならないことがあるため、作業性が低下し、作業者に多大な負担を強いることもあった。
即ち、いずれの公報のコード止め及びケーブル支持具においても、止着具の取付位置が高所及び低所のいずれかである場合には作業上の不具合を生じ、高所、低所のいずれにも対応して止着具を楽にかつ安全に固定することはできなかった。
【0007】
このように、従来の支持具は、壁面への固定作業が面倒であった。また、壁面への支持具の取付位置、高さがいずれの場合であってもそれに対応して楽にかつ安全に支持具の固定作業を行なうことはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は、建物構造面に簡単にかつ楽に固定できるとともに、壁面への取付位置、高さに対応して楽にかつ安全に固定作業を行なうことができる配線・配管材支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の配線・配管材支持具は、建物構造面に沿って配線・配管材を支持するものであって、前記建物構造面と当接する当接面を備えた基部と、前記基部の反当接面側に形成されて前記配線・配管材を支持する支持部と、前記当接面に取着されて該建物構造面に貼着される両面接着テープからなる貼着部と、前記基部の上側に形成され、前記建物構造面に固定する止着部が上方から下方に挿通される方向に傾斜する挿通孔を有する上側固定部と、前記基部の下側に形成され、前記止着部が下方から上方に挿通される方向に傾斜する挿通孔を有する下側固定部とを備え、前記上側固定部及び前記下側固定部は、これらのいずれか一方が選択されて前記建物構造面に固定されたとき、前記選択された一方の固定部のみでも、前記貼着部による接合と相俟って、前記支持具を前記建物構造面に安定して固定し得る強度及び剛性を備えたものである。
【0010】
この支持具は、通常、建物構造面に上下方向に固定されて配線・配管材を下方から支持し、建物構造面に沿って所定間隔をおいて複数固定される。但し、建物構造面に斜め方向、水平方向に固定することもできる。ここで、建物構造面は、建物の壁材、柱、桟等の表面を意味する。支持部は、一般には、請求項2に記載のように、フック状に形成されるが、配線・配管材を支持できるものであればその形状は特に問わない。固定部は、支持部の両側に設けられ、支持具が上下方向に固定される場合には、支持部の上側及び下側に設けられたものとなる。建物構造面に固定するための止着具はピン、釘、螺子等を使用できるが、接合強度等を考慮すれば、螺子を使用するのが望ましい。固定部において止着具が挿通される挿通孔は、止着具として螺子を使用した場合は、接合強度上、内壁を螺子によって螺刻されながら挿通されるのが望ましい。建物構造面に対する挿通孔の傾斜角度は一般には45度程度であるが、作業性等を考慮して最適値に設定すればよい。
【0011】
請求項2の配線・配管材支持具は、支持部が、フック状に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、建物構造面に固定する際に、貼着部によって支持具を建物構造面に仮固定できる。このため、ドライバ等の工具を使用して固定する際、支持具を保持している必要がない。その結果、作業を迅速かつ楽に行なうことができ、特に、多数の支持具を所定間隔で建物構造面に固定する作業においてその効果は大きい。また、螺子を使用して固定する場合は、螺子が挿通孔内に螺入されることに追随して支持具が回動してしまうのを防止できる。そして、仮固定の段階で、簡単に固定位置を変更したり、修正することができる。加えて、貼着部はそのまま建物構造面に貼着され、固定部による接合強度の補強としても機能する。
【0013】
また、固定部は支持部の両側に設けられ、各挿通孔は互いに異なる方向から貫設されているので、止着具の止着作業に適した固定部を任意に選択することができる。その結果、特に、支持具の取付位置が高所にある場合には、楽にかつ安全に作業でき、支持具の取付位置が比較的低所にある場合には、腰を曲げるなどの無理な姿勢での作業を回避でき、楽に作業できる。
そして、固定部の挿通孔は建物構造面に対して傾斜する方向に貫設されているので、支持具を建物構造面に安定して固定でき、固定時及び固定後において、支持具が止着具の軸を中心に回動するのを防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、支持部がフック状に形成されているから、支持部を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の配線・配管材支持具を示す斜視図である。
【図2】図1の支持具の正面図である。
【図3】図1の支持具を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は底面図である。
【図4】図1の支持具を壁面に固定する状態を示す斜視図であり、(a)は螺子を下側固定部の挿通孔に螺入する場合、(b)は上側固定部の挿通孔に螺入する場合を示す。
【図5】図1の支持具を壁面に固定した後、ケーブルを支持した状態を示す斜視図である。
【図6】図1の支持具の下側固定部の挿通孔に螺子を螺入することに伴う支持具の回動が防止されることを説明する正面図である。
【図7】本発明の他の配線・配管材支持具を示す正面図である。
【図8】従来の配線・配管材支持具を示す正面図である。
【図9】図8の支持具を使用してケーブルを壁面に沿って配線した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材支持具を図1乃至図6に基づいて説明する。なお、配線・配管材支持具は建物の壁面、柱、桟等の建物構造面に取付けられるものであり、本実施形態においては、建物の壁面に取付けられるものを例示する。ここで、図1は本発明の実施形態の支持具を示す斜視図、図2はその支持具の正面図、図3は支持具を各方向から見た図である。なお、図1において、一点鎖線の円で囲まれた部分は壁面への当接面側から見た支持具の一部を示す。
【0017】
図1乃至図3において、本実施形態の配線・配管材の支持具1は、建物の壁面Wに固定され、配線・配管材を壁面Wに沿って配線、配管するためのものであり、一般には、壁面Wに上下方向に固定され、配線・配管材を下方から支持し、配線・配管材は壁面Wに沿って主に水平方向に配線、配管される。支持具1は、配線・配管材を支持する支持部5と、壁面Wと当接する当接面に取着されて該壁面Wに貼着される両面接着テープからなる貼着部11と、支持部5の両側である支持具1の上端部及び下端部の2箇所に設けられ、壁面Wに固定すべく止着具が挿通される挿通孔によって形成された固定部とを備えて成る。固定部は上端部及び下端部のうち任意の箇所を選択されて止着具が取付けられる。支持具1は、ポリプロピレン等の合成樹脂により一体に形成される。但し、支持具1は2以上の部材によって形成してもよい。配線・配管材は、本実施形態においては、ケーブルを例示するが、この配線材に限られるものではなく、また、支持具1は電線管等の配管材を支持するものであってもよい。
【0018】
支持具1の構成をより詳細に説明すると、まず、支持具1は壁面Wに沿って当接する帯板状の基部2を備えている。この基部2において壁面Wとの対向面は平面に形成され、該壁面Wと当接する当接面3となっている。但し、両面接着テープが取着される部分は凹面3aに形成され、これを収容している。
前記基部2の反当接面4側において上下方向中間位置より所定距離下方には反当接面4と直交して外方に延出する支持部5が一体に設けられている。支持部5は基部2と同一幅に形成され、反当接面4から略水平方向に延びた後、1/4円弧の形状で湾曲して上方に延びている。支持部5の外周面には幅方向中央部分に長手方向に沿って所定高さのリブ6が設けられており、支持部5が簡単に変形したり拡開しないよう全体の強度、剛性が高められている。支持部5の上端部は開口部7が形成され、ケーブルCはこの開口部7から支持部5内に収容され、支持される。
【0019】
一方、前記基部2の反当接面4側において上下方向中間位置より所定距離上方には外方に向けて閉塞片8が一体に延設されている。閉塞片8は基部2と同一幅で略半円状に形成され、先端部が支持部5の先端部の内側に重ね合わされ、これにより、支持部5の開口部7を、ケーブルCを支持部5内に挿入可能に閉塞し、支持部5内に収容されたケーブルCが開口部7から抜脱するのを防止している。即ち、ケーブルCを支持部5内に挿入するときは、閉塞片8を弾性的に撓ませてその先端部を基部2側に後退させ、支持部5の先端部との間に生じた空間からケーブルCを挿入することができる。ケーブルCが挿入された後は、閉塞片8は弾性復帰し、開口部7を閉塞するから、その後にケーブルCが引張られたりしても支持具1から抜脱することがない。なお、ケーブルCを交換その他により支持具1から取外すときは、閉塞片8の先端部を弾性的に基部2側に撓ませて支持部5の先端部との間に取出空間を形成すればよい。閉塞片8はこのように弾性的に撓むものであるから、全体が薄肉に形成され、可撓性を有する。なお、ケーブルCが平形等の断面が小さい場合は、閉塞片8はその先端部周辺のみを薄肉に形成し、この部分のみを撓ませて挿脱のための空間を形成するようにしてもよい。
【0020】
次に、貼着部11は、基部2の当接面3における上下方向の中間部に両面接着テープ12が取着されることによって形成されている。両面接着テープ12は周知の接着テープであり、表面の剥離紙12aを剥がすことによって壁面Wに貼着することができる。基部2の上下方向の中間部には、前述のように、両面接着テープ12より僅かに大きい面積を有する凹面3aが形成されており、両面接着テープ12はこの凹面3a内に貼着されて基部2に取着されている。凹面3aの深さは両面接着テープ12の厚さより僅かに小さくして、壁面Wへの貼着前において両面接着テープ12が僅かに当接面3より外部に突出するように形成されており、後に止着具によって支持具1が壁面Wに固定されたとき、両面接着テープ12は凹面3a内に圧縮され、その表面は他の当接面3とほぼ面一となるように設定されている。また、両面接着テープ12は、壁面Wへの貼着前においては、当接面3より突出していた方が剥離紙12aを掴持して剥離し易い。なお、凹面3aは、深すぎると、両面接着テープ12の表面が壁面Wと当接しなかったり壁面Wへの弾発力が小さくなって壁面Wに強固に貼着することができなくなり、浅すぎると、両面接着テープ12の突出量が大きくなり、基部2の上下端部において壁面Wとの間に大きな隙間を生じ、基部2の壁面Wとの当接状態が不安定化するので、これらの点や両面接着テープ12の厚さ等を考慮して深さを設定するのが望ましい。また、両面接着テープ12は、凹面3aを形成することなく、全体を平面とした当接面3に取着してもよい。但し、両面接着テープ12が厚過ぎると、上述のように、上下端部において壁面Wとの間に大きな隙間を生ずるので、注意を要する。
【0021】
次に、基部2の上端部には上側固定部21が一体に設けられている。上側固定部21は閉塞片8の基端部との間の隅部に架設されるように台座状に設けられており、基部2の当接面3に対して所定角度傾斜する傾斜面22を有している。上側固定部21は、壁面Wに固定するためのタッピンねじ等の螺子41が挿通する挿通孔23が傾斜面22と直交してこの傾斜面22から基部2にかけて貫設されており、その挿通孔23の軸は基部2の当接面3つまりは壁面Wに対して約45度の角度で傾斜している。即ち、挿通孔23は螺子41が図2の斜め右上方から斜め左下方に向けて取付けられるようになっている。ここで、傾斜面22は螺子41の頭部底面が当接する座面ともなっている。挿通孔23は螺子41の外径より僅かに小さい内径に形成されており、螺子41は、雄ねじが挿通孔23の内壁を僅かに刻設しながら挿入され、挿通孔23を貫通した後、壁面Wに螺着されるようになっている。なお、挿通孔23は螺子41が内壁を螺刻することなく単に挿入されるだけのものであっても構わない。但し、挿通孔23の内壁が螺子41で僅かに螺刻されるものであると、螺子41は壁面Wと挿通孔23との双方に螺着されることになるので、支持具1をより強固に安定して壁面Wに固定することができる。ここで、螺刻の程度が大きいと、支持具1全体が螺子41の螺着に追随して壁面Wに対して回動する力が大きくなるので、挿通孔23の内径はこれらのバランスをとって設計するとよい。なお、挿通孔23の断面は丸孔形状であってもよく、正四角孔形状などであってもよい。上側固定部21は上記のように、基部2と閉塞片8の基端部との間の隅部に架設するようにして設けられているので、この部分の強度、剛性が高まり、支持具1を安定して壁面Wに固定することができる。
【0022】
一方、基部2の下端部には、同様にして、下側固定部31が一体に設けられている。下側固定部31は支持部5の基端部との間の隅部に架設されるように台座状に設けられており、基部2の当接面3に対して所定角度傾斜する傾斜面32を有している。下側固定部31は、螺子41が挿通する挿通孔33が傾斜面32と直交してこの傾斜面32から基部2にかけて貫設されており、その挿通孔33は基部2の当接面3に対して約70度の角度で傾斜している。即ち、挿通孔33は螺子41が図2の斜め右下方から斜め左上方に向けて取付けられるようになっており、壁面Wに対する傾斜方向及び傾斜角度は前記上側固定部21の挿通孔23とは相違している。ここで、傾斜面32は螺子41の頭部底面が当接する座面ともなっている。挿通孔33は上側固定部の挿通孔23と同様に、螺子41の外径より僅かに小さい内径に形成されており、螺子41は、雄ねじが挿通孔33の内壁を僅かに刻設しながら挿入され、挿通孔33を貫通した後、壁面Wに螺着されるようになっている。なお、この挿通孔33も螺子41が内壁を螺刻することなく単に挿入されるだけのものであってもよい。そして、下側固定部31も、基部2と支持部5の基端部との間の隅部に架設するようにして設けられているので、この部分の強度、剛性が高まり、支持具1を安定して壁面Wに固定することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、斜め上方或いは斜め下方からの螺子41の挿入作業性等を考慮して、前述のように、上側固定部21の挿通孔23は壁面Wに対して約45度、下側固定部31の挿通孔33は約70度に設定しているが、この傾斜角度は取付現場などを考慮して、最適値に設定すればよい。
【0024】
次に、このように構成された本実施形態の支持具1を壁面Wに固定する方法を説明する。
今、ケーブルCを高所において壁面Wに沿って配線するものとする。それには、まず、貼着部11に取着されている両面接着テープ12の剥離紙12aを剥がし、その後、支持部5が下側となるようにして支持具1を上下方向の姿勢で壁面Wの所定位置に貼着する。これにより、支持具1は壁面Wに仮固定されることとなり、この時点で固定位置の変更を生じた場合は、両面接着テープ12を剥がし、再度所定位置に貼着し直す。ここで、貼着部11は、両面接着テープ12の全面が壁面Wに貼着されて所要の接着強度を有するから、単に一時的に支持具1を仮保持するのみでなく、支持具1が壁面Wに沿って移動したり、回動して傾斜するのを防止する。
【0025】
支持具1が壁面Wに仮固定されたら、図4(a)に示すように、通常のドライバ或いは電動ドライバ等の工具42を使用して螺子41を下側固定部31の挿通孔33にその内壁を螺刻しながら挿通し、更に、壁面Wに螺着する。このとき、支持具1は貼着部11の両面接着テープ12により壁面Wに仮固定されているので、螺子41が挿通孔33に螺入されるときに手で支持具1を保持している必要がない。また、支持具1は螺子41の螺入に追随して壁面Wに沿って回動し、傾斜しようとするが、貼着部11によってそれが阻止され、垂直の取付姿勢に維持される。更に、下側固定部31の挿通孔33は図2の斜め右下方から斜め左上方に向けて貫設されているので、高所に登ることなく支持具1の斜め右下方から螺子41を螺着することができ、或いは、高所に登るにしても、支持具1の斜め下方から螺子41を取着すればよいため、比較的低い高さにおいて作業することができる。ここで、ケーブルCを壁面Wに沿って配線するために、支持具1は通常、壁面Wに沿って所定間隔毎に複数固定されるから、複数の支持具1を貼着部11の両面接着テープ12によって複数の支持具1を一度に先に壁面Wに仮固定しておいてから、電動ドライバ等の工具42を使用して順に螺子41を下側固定部31の挿通孔33に挿通し、壁面Wに螺着するようにしてもよい。このようにして螺子41を取着すれば、作業の効率化が図れる。
【0026】
一方、作業者の肩より下ぐらいの比較的低い位置でケーブルCを壁面Wに沿って配線する場合は、まず、高所において固定する場合と同様に、貼着部11に取着されている両面接着テープ12の剥離紙12aを剥がした後、支持具1を上下方向の姿勢で壁面Wの所定位置に貼着する。これにより、支持具1は壁面Wの所定位置に仮固定される。支持具1が仮固定されたら、ドライバ等の工具42を使用して、図4(b)に示すように、螺子41を上側固定部21の挿通孔23内にその内壁を螺刻しながら挿通し、更に、壁面Wに螺着する。このとき、上側固定部21の挿通孔23は図2の斜め右上方から斜め左下方に向けて貫設されているので、腰を曲げるなど低い無理な姿勢で作業する必要がなく、螺子41を斜め上方から楽な姿勢で取着することができる。
【0027】
このようにして支持具1を壁面Wに固定した後は、支持部5の開口部7を閉塞する閉塞片8の先端部を基部2側に押圧して支持部5の先端部との間に挿入空間を形成し、そこからケーブルCを支持部5内に収容する。ケーブルCを収容した後の状態を図5に示す。
【0028】
なお、上記では、支持具1を固定する高さに対応して螺子41は上側固定部21の挿通孔23または下側固定部31の挿通孔33に挿通しているが、螺子41が挿通される固定部は定められているわけではなく、上記とは逆の固定部に螺子41を取着してもよいし、上側固定部21及び下側固定部31の双方に取着してもよい。
【0029】
次に、本実施形態の支持具1の作用を説明する。
まず、支持具1は、基部2の当接面3に両面接着テープ12からなる貼着部11を備えているので、螺子41による壁面Wへの固定に先立ち、貼着部11を壁面Wに貼着して仮固定することができる。これにより、ドライバ等の工具42を使用して螺子41を壁面Wに固定する際に、支持具1を片手で保持している必要がない。したがって、作業者は一方の手で螺子41を保持し、他方の手で工具42を保持した状態で、螺子41を固定部に据えると同時に工具42による螺子41の螺着を開始することができ、作業を迅速かつ楽に行なうことができる。特に、この種の壁面Wに沿ってケーブルCを配線すべく多数の支持具1を所定間隔で壁面Wに固定する作業においては、先に、多数の支持具1を一度に壁面Wの所定位置に仮固定した後、螺子41と工具42とを保持して螺子41を螺着する作業に専念することができ、これにより、全ての固定作業を短時間で行なうことができる。ここで、螺子41を支持具1の固定部の挿通孔の内壁を螺刻しつつ固定するに際し、螺子41の螺入による回転に伴って支持具1はそれに引張られて螺入方向に回動しようとする。しかし、両面接着テープ12による接合力は螺子41の固定による接合力と比較すれば当然小さいのであるが、両面接着テープ12はその全面において壁面Wに貼着されるので、壁面Wに対して相応の接合強度を有する。その結果、螺子41を支持具1の固定部の挿通孔内にその内壁を螺刻しつつ挿通させることに伴って支持具1も螺子41を軸として回動してしまうのを防止することができる。したがって、両面接着テープ12は螺子41の螺着に伴う支持具1の回動を阻止する機能も併せ持つ。
【0030】
更に、仮固定の段階で、固定位置を変更したり、修正したい場合は、再度貼着し直すことにより簡単に変更、或いは修正を行なうことができる。また、螺子41を固定した後に位置変更、修正を行なう場合には、先の螺子孔が壁面Wに残ったり、支持具1の固定部の挿通孔の内壁が螺刻により潰れ、再度の螺子固定の支障となることがあるが、両面接着テープ12による仮固定によれば、そのような不具合を生じない。更に、貼着部11による壁面Wへの貼着時には、作業者は支持具1の上下の取付方向に気を配ることができるから、支持具1を上下逆に取付けてしまう誤りを回避できる。その意味で、貼着部11は、間接的ではあるが、上下2箇所の固定部を定められた方向に誤りなく配置するものとしても寄与する。
【0031】
なお、従来の特開2001−339829公報に掲載のコード止めにおいても、インサートピンによる仮止めを行なうことはできる。しかし、このコード止めは、単体の状態でインサートピンの先端が支持具本体から露出しているので取り扱い時等において危険である。また、ピンをインサートするために膨出部を形成する必要もある。更に、インサートピンを壁面に仮止めするには相当の力で押さえる必要があり、場合によってはハンマー等の工具を必要とする。しかし、その点、本実施形態の支持具1は、当接面3に両面接着テープ12を取着したものであり、外部に突起物が突出するものではないから、安全である。また、両面接着テープ12を取着するための特別の膨出部等を形成する必要もなく、更に、剥離紙12aを剥がして押付けるだけで簡単に支持具1を壁面Wに仮固定できる。
【0032】
また、本実施形態の両面接着テープ12は、螺子固定前の仮固定として作用するが、接着テープ相応の接合強度を有するから、螺子41による壁面Wへの固定の補強材としても機能する。したがって、螺子41による接合と両面接着テープ12による接合とが相俟って支持具1を強固に安定して壁面Wに固定できる。更に、螺子41は一般には上側固定部21及び下側固定部31のいずれか一方を選択して挿通孔に挿通されるのであるから、長期使用により1本のみの螺子41が壁面Wから緩んで支持具1が接触等により螺子41の軸を中心に回動することが生じ得るが、本実施形態の支持具1はそのような不具合を生じない。即ち、後述のように、螺子41は支持具1において壁面Wに対して傾斜する方向に挿通されるため、支持具1が螺子41の軸を中心に回動するのは抑えられる。ところが、その傾斜取付けのみによっては支持具1の回動を十分に阻止することはできず、ある程度の範囲の回動は生じ得る。また、螺子41の緩みによるがた付きも生じ得る。しかし、本実施形態の支持具1は貼着部11が設けられているので、そのような回動やがた付きを生ずるのを確実に防止することができる。これに伴って、支持具1を固定するための螺子41は通常1本で足り、作業も簡略化される。
【0033】
更に、本実施形態の支持具1は、上側固定部21と下側固定部31との2箇所の固定部を備えているので、壁面Wへの支持具1の取付高さに対応して、作業者はそのいずれか一方を任意に選択して螺子41を挿通することができる。その結果、支持具1の取付位置が壁面Wの高所にある場合には、下側固定部31の挿通孔33に対して図2の斜め右下方から斜め左上方に向けて螺子41を螺入すればよいため、比較的低い高さにおいて楽に作業でき、かつ作業時の安全性を高めることができる。一方、支持具1の取付位置が比較的低い位置にある場合には、上側固定部21の挿通孔23に対して図2の斜め右上方から斜め左下方に向けて螺子41を螺入すればよいため、腰を曲げるなどして低い無理な姿勢で作業する必要がなく、作業を楽に行なうことができる。なお、壁面Wが石膏ボード等からなる場合や配線・配管材が重量物である場合など、特に、壁面Wに強固に固定する必要がある場合は、螺子41は上側固定部21及び下側固定部31の双方に取着することもできる。
【0034】
加えて、本実施形態の支持具1において、上側固定部21及び下側固定部31の各挿通孔は壁面Wに対して傾斜する方向に貫設されているので、支持具1を壁面Wに安定して固定できる。即ち、各固定部の挿通孔が、図8に示す従来の支持具51のように、壁面Wと直交する方向に貫設されている場合は、支持具1に接触等の外力が加わったりすると、支持具1は螺子41の軸を中心に回動してしまうことがある。しかし、本実施形態の支持具1は壁面Wに対して挿通孔が傾斜しているので、図6に示すように、下側固定部31の挿通孔33内に螺子41が螺入するとき、或いは支持具1に外力が加わったとき、螺子41の軸を中心に回動しようとしても、壁材によって阻止される。即ち、図6において、例えば、基部2の上端角部2aに着目すれば、螺子41の軸線を示す一点鎖線とこれと直交して上端角部2aを通る二点鎖線との交点Oを回動中心とし、交点Oと上端角部2aとの間隔を回動半径として回動することになるが、この部分には壁材が存在するので、基部2の上端角部2aは壁面Wと干渉して回動を阻止される。その結果、支持具1は壁面Wに安定して固定される。
【0035】
なお、両面接着テープ12は基部2の当接面3において上下方向の中間位置の凹面3aに取着され、螺子41の各挿通孔から離間した位置に取着されているので、螺子41が挿通孔に螺入されることに伴い、或いは外力等が作用することによって支持具1に螺子41を軸に回動させようとするモーメントが生じても、螺子41の軸を中心とする、回動を阻止しようとする両面接着テープ12の反力によるモーメントが発生する。
【0036】
ところで、上記実施形態においては、支持具1を壁面Wに固定するための止着具は、タッピンねじ等の螺子41を使用しているが、これに限られるものではなく、例えば、ピンや釘を使用して固定してもよい。この場合は、止着具を螺着することなく単に打ち付ければよいから、固定作業は楽になる。但し、螺子41に比べて接合強度は小さく、緩み易く、場合によっては壁面Wから抜け落ちる虞もある。また、打ち付けて固定するものであるから、固定部の強度を高めておく必要がある。
【0037】
更に、上記実施形態の支持具1の固定部は、上側固定部21及び下側固定部31の上下2箇所に設けているが、この位置に限られるものではなく、また、3箇所以上に設けてもよい。そして、螺子41等の止着具は1個に限らず、任意に選択しつつ複数箇所に渡って複数個止着してもよい。
【0038】
また、上記実施形態の支持具1は、下方に支持部5を設け、その上方の開口部7に閉塞片8を設けているが、例えば、図7に示すように、支持具1を、高さ方向の中間位置を境として上下対称の構造に形成することもできる。この場合、各支持部5は互いに閉塞片8としても機能する。即ち、図7の下側の支持部5については本来の支持部となり、上側の支持部5については閉塞片8として機能する。この支持具1においては、例えば、図7に示すように、リブ6は支持部5の先端部まで設けることなく底部側のみに設け、支持部5の先端側は弾性変形するものとし、上下の支持部5間の開口部7を拡開してケーブルCの挿入を容易ならしめることができる。この支持具1は、特に、上下対称となっているので、2個の支持部5のうちいずれを下側に配置してもよく、壁面Wへの貼着時に、上下の方向性を意識し確認することなく貼着作業を行なうことができる。貼着後は、上下いずれかの固定部を適宜選択して螺子41を取付ければよい。
【0039】
加えて、上記実施形態の支持部5は、1/4円弧のフック状に形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、楕円弧状や途中で折曲する鈎状等に形成してもよい。また、支持部5はケーブルCを挿入可能に開口部7を閉塞する閉塞片8を備えているが、必ずしもこの閉塞片8を備える必要はなく、単なるフック状に形成されたものであってもよい。
【0040】
なお、上記実施形態の貼着部11は、両面接着テープ12で形成し、基部2において壁面Wと当接する当接面3の略中央の1箇所に取着しているが、この箇所に限定されるものではなく、当接面3の上端部、下端部に取着したり、略中央部、上端部及び下端部に取着したり、更には、固定部の挿通孔の部分も含め、当接面3の全体に貼着してもよい。
【0041】
また、上記実施形態の支持具1は、壁面Wに上下方向に固定され、支持部5は下方からケーブルCを支持するものを例示しているが、これに限られるものではなく、壁面Wに対して斜め方向或いは水平方向に固定され、ケーブルCは支持部5内を斜め方向或いは上下方向に貫通、支持される場合にも同様に適用される。更に、支持具1は、横桟等の上面に横方向に載置し、サドルなどの配線・配管材を支持するものとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 支持具
3 当接面
5 支持部
7 開口部
8 閉塞片
11 貼着部
12 両面接着テープ
21 上側固定部
23、33 挿通孔
31 下側固定部
41 螺子
C ケーブル
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造面に沿って配線・配管材を支持する配線・配管材支持具であって、
前記建物構造面と当接する当接面を備えた基部と、
前記基部の反当接面側に形成されて前記配線・配管材を支持する支持部と、
前記当接面に取着されて該建物構造面に貼着される両面接着テープからなる貼着部と、
前記基部の上側に形成され、前記建物構造面に固定する止着部が上方から下方に挿通される方向に傾斜する挿通孔を有する上側固定部と、
前記基部の下側に形成され、前記止着部が下方から上方に挿通される方向に傾斜する挿通孔を有する下側固定部と
を備え、
前記上側固定部及び前記下側固定部は、これらのいずれか一方が選択されて前記建物構造面に固定されたとき、前記選択された一方の固定部のみでも、前記貼着部による接合と相俟って、前記支持具を前記建物構造面に安定して固定し得る強度及び剛性を備えたことを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記支持部は、フック状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108626(P2013−108626A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287166(P2012−287166)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2007−187868(P2007−187868)の分割
【原出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】