説明

配線・配管材支持具

【課題】障害物等により配線・配管材支持具を固定しにくい場所であっても、釘等の貫通部材の位置を調整して固定することができる配線・配管材支持具を提供する。
【解決手段】本発明の配線・配管材支持具100は、配線・配管材Cを支持するための支持部111と、貫通部材Pが挿通及びスライド可能なガイド溝113を有すると共に、貫通部材Pがガイド溝113を貫通することによって構造物Sに固定される固定部112と、を備える。そして、固定部112はガイド溝113内に貫通部材Pと当接する当接部114を備え、貫通部材Pが当接部114を支点としてガイド溝113に沿って遊動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の構造体に取着され、長尺材である配線・配管材を支持するための配線・配管材支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋等の構造物に対して配線・配管を行う際、配線・配管材を支持するための種々の支持具が用いられている。これら種々の支持具の1つとして、当該支持具を釘又はビス(貫通部材)で構造物の壁面に固定することにより、当該支持具を介して構造物に配線・配管材を敷設するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケーブル間隔保持具が開示されている。このケーブル間隔保持具は、基板(1)(以下、()内で特許文献1の符号を示す。)に複数のケーブルを保持する保持突起(2)を設けたものであり、基板(1)の長手側面の略中央部位から外側面方向に突出した略台形状の固定部(3)を備える。そして、当該固定部(3)に斜めに設けられた挿入孔(3A)に、釘又はビス(以下、釘等)の貫通部材を挿入することによって、基板(1)が構造物の所定面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−197641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のケーブル間隔保持具では、固定部(3)の挿入孔(3A)の形状が、釘等の外径とほぼ一致するように形成されているため、釘等を挿入孔(3A)に挿入するときに、釘等の挿入方向及び進行方向が挿入孔(3A)の内壁によって遊動不能に制限される。このため、ケーブル間隔保持具(配線・配管材支持具)を固定する際、作業者が特定の方向及び位置(挿入穴の延長線上)から釘等を打ち付けなければならず、配線・配管材支持具を固定する場所によっては、障害物等により釘等の打ち付けができないという問題があった。より具体的には、部屋の隅角など壁面に接近した非常に狭い場所に配線・配管材支持具を設置する場合、作業者の手又は金槌や電動ドライバー等の工具が、壁に接触し、或いは、直接に接触しなくとも金槌等を振りかざせば壁に突き当たることによって釘等の打ち付け作業が出来ない状況が生じるため、また、例えば、挿入孔の開穿角度、つまり、釘等の打付方向が設置時に作業者からみて右から左へ傾斜している場合、右利きの作業者は不馴れな左手に金槌を持ち替えて打ち付けなければならない状況が生じるため、設置作業が非常に困難になり、作業の迅速性及び容易性を損なわれるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、障害物等により配線・配管材支持具を固定しにくい場所であっても、釘等の貫通部材の位置を調整して固定することができる配線・配管材支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配線・配管材支持具は、配線・配管材を支持するための配線・配管材支持具であって、配線・配管材を支持するための支持部と、貫通部材が挿通及びスライド可能なガイド溝を有すると共に、貫通部材がガイド溝を貫通することによって構造物に固定される固定部と、を備えてなり、当該固定部はガイド溝内に貫通部材と当接する当接部を備え、貫通部材が当接部を支点としてガイド溝に沿って遊動可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の配線・配管材支持具は、請求項1記載の配線・配管材支持具において、ガイド溝の長さ方向に対向する内壁がガイド溝の開口から当接部に向かうにつれて狭まるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の配線・配管材支持具は、請求項1又は2記載の配線・配管材支持具において、ガイド溝内の当接部はガイド溝の内壁の一部からなると共に貫通部材を保持可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の配線・配管材支持具は、請求項1から3いずれか記載の配線・配管材支持具において、ガイド溝は、貫通部材が配線・配管材の配線・配管方向に沿って遊動可能に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の配線・配管材支持具は、請求項1から4いずれか記載の配線・配管材支持具において、構造物への取付面をさらに備え、ガイド溝が取付面に対して傾斜するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の配線・配管材支持具によれば、固定部が釘等の貫通部材を挿通可能な幅で形成されたガイド溝と、貫通部材と当接する当接部とを有し、貫通部材が当接部を支点としてガイド溝の長さ方向にのみ遊動可能であるように構成されている。すなわち、固定部を介して構造物に配線・配管材支持具を貫通部材で固定する際、貫通部材をガイド溝に挿通させると、貫通部材の一部を当接部に当接させることにより、当該当接部(又は貫通部材の一部)を支点として貫通部材をガイド溝の長さ方向に遊動させることができる。このため、作業者が貫通部材を打ち付けて構造物に配線・配管材支持具を固定する際、貫通部材をガイド溝の長さ方向に沿って遊動させて、貫通部材の進行方向(角度)を適宜変更することが可能である。つまり、作業者が打ち付け作業の実施し易い方向から貫通部材を配線・配管材支持具及び構造物に打ち付けることができる。また、貫通部材がガイド溝の長さ方向にのみ遊動可能であることにより、貫通部材をガイド溝の幅方向にぐらつかないように安定配置することができ、貫通部材を容易に打ち込むことが可能である。したがって、本発明は、設置作業が迅速且つ容易にできる配線・配管材支持具を提供するものであり、ひいては、配線・配管材作業の迅速化及び容易化を達成する。
【0013】
請求項2に記載の配線・配管材支持具によれば、請求項1の配線・配管材支持具の効果に加えて、ガイド溝の長さ方向に対向する内壁がガイド溝の開口から当接部に向かうにつれて狭まるように構成されていることにより、貫通部材が一方の内壁から他方の内壁に亘ってガイド溝に沿って遊動可能である。すなわち、貫通部材の遊動範囲は、ガイド溝の長さ方向に対向する内壁によって制限されるので、貫通部材がガイド溝の長さ方向に必要以上に傾斜することを防ぎ、且つ、内壁は貫通部材のガイド部としても機能し得るため、配線・配管材支持具の設置作業を容易にする。
【0014】
請求項3に記載の配線・配管材支持具によれば、請求項1又は2の配線・配管材支持具の効果に加えて、当接部がガイド溝の内壁を兼ねていることにより、配線・配管材支持具を簡易な構造とすることができる。また、当接部が貫通部材を保持可能に構成されていることにより、貫通部材を当接部内で保持することができる。すなわち、貫通部材をガイド溝に挿通した後に作業者が貫通部材から手を離しても貫通部材を落とさないで設置作業を実施することができる。
【0015】
請求項4に記載の配線・配管材支持具によれば、請求項1から3のいずれかの配線・配管材支持具の効果に加えて、貫通部材が配線・配管材の配線・配管方向に沿って遊動可能にガイド溝が形成されていることにより、配線・配管材と貫通部材とが干渉することを回避することができ、配線・配管材を損傷するおそれを軽減する。
【0016】
請求項5に記載の配線・配管材支持具によれば、請求項1から4のいずれかの配線・配管材支持具の効果に加えて、ガイド溝が取付面に対して傾斜して形成されていることにより、貫通部材の進行方向を取付面に対して傾斜させた状態で、貫通部材を構造物に打ち込むことができる。すなわち、貫通部材が配線・配管材支持具を貫通して構造物に斜めに打ち込まれるため、当該配線・配管材支持具が貫通部材を軸に回転することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における、配線・配管材支持具の斜視図。
【図2】図1の配線・配管材支持具の側面図。
【図3】図1の配線・配管材支持具を示し、(a)は図2のA−A断面図、(b)は(a)のB−B断面図。
【図4】図1の配線・配管材支持具を構造物に設置する際の貫通部材の位置決めの形態を示した概略図であって、(a)側面図、(b)はC−C断面図、(c)は正面図。
【図5】図1の配線・配管材支持具を構造物に固定した形態を示す側方断面図。
【図6】本発明の一変形例の配線・配管材支持具を示す概略図。
【図7】本発明の一変形例の配線・配管材支持具を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態としての配線・配管材支持具100の斜視図である。図1に示すとおり、配線・配管材支持具100は、長手平板状の基部110と、当該基部110の前面に設けられた配線・配管材を支持するための支持部111と、当該配線・配管材支持具100を構造物Sに固定するための固定部112と、を備える。後述するように、固定部112に釘又はビスである貫通部材Pを、配線・配管材支持具100及び構造物Sに打ち込むことによって、配線・配管材支持具100を構造物Sに設置する。以下、各部についてそれぞれ詳細に説明する。
【0020】
図2に示すとおり、基部100の前面から複数の支持壁111aが張り出し形成されている。これら隣接する支持壁111aによって、配線・配管材Cを支持するための敷設空間として支持部112がそれぞれ形成されている。
【0021】
また、当該複数の支持壁111aが上方に傾斜していると共に、支持部111の開口が狭まるように支持壁111a先端が屈曲形成されている。配線・配管材Cを支持部111内に配置(挿通)するとき、支持部111の開口を広げることができるように、支持壁111aの先端は弾性変形可能に構成されている。つまり、本実施形態の配線・配管材支持具100は、配線・配管材Cが支持部111内に一旦配置されると、支持壁111aを意図的に弾性変形させない限り、支持部111から離脱しにくい構造を有している。
【0022】
さらに、基部100の後面には、構造物に(密着)設置される平面状の取付面116が設けられている。そして、取付面116には、略中央(固定部112の長手方向両脇)に、2つの円錐状の突起117が突出形成されている。この突起117は、配線・配管材支持具100を構造物に固定するときに構造物Sに食い込んで、取付面116と構造物Sとの間の滑り止め(回り止め)機能を有する。なお、この突起117は、構造物(設置表面)Sが柔らかい場合や粗い場合に特に有効に機能する。しかしながら、配線・配管材支持具を固定する構造物Sが硬質な平滑面である場合には、当該突起を取付面に設けなくてもよい。
【0023】
次に、固定部112が配線・配管材支持具100の略中央に所定厚で形成されている。当該固定部112にはガイド溝113が穿設されている。このガイド溝113は、該配線・配管材支持具100を厚み方向に貫通するように一方の開口113aから他方の(後部)開口113dまで延びている。図2及び図3(a)に示すとおり、当該開口113aは、配線・配管材支持具100の長手方向に所定のガイド溝幅Wを有するとともに、幅方向に沿って所定のガイド溝長L1を有している。このガイド溝113は、その深さ方向(配線・配管材支持具100を厚み方向)に亘って、その幅方向(配線・配管材支持具100の長手方向)の内壁113b及びその長さ方向(配線・配管材支持具100の幅方向)の内壁113cで区画形成されている。なお、ガイド溝113が厚み方向の断面視で長円状になるように、各内壁113cは(支持具100の)正面視略半円状に湾曲している。
【0024】
そして、図2に示すとおり、ガイド溝113は、配線・配管材支持具100の長手方向に直交しないように開口113aが下方を向いて傾斜していると共に、配線・配管材支持具100の厚み方向に亘って一定のガイド溝幅Wを有するように形成されている。好適には、このガイド溝幅Wは、貫通部材Pを把持可能な幅(すなわち、貫通部材Pの貫通部の径とほぼ同じ幅)で形成される。なぜなら、貫通部材Pとガイド溝113の(配線・配管材し治具100の長手方向の)内壁113bとが摩擦接触することにより、設置時に貫通部材Pがガイド溝113から落下することを防止できるからである。
【0025】
さらに、ガイド溝113の内壁113bには、複数の凸条115がガイド溝長方向に沿って並設されている(図2(a)及び図2(b)参照)。この凸条115は、貫通部材Pをガイド溝113内に挿入した際、貫通部材Pに当接可能に隆起しているため、内壁113c及び貫通部材P間における滑り止め機能を有している。
【0026】
図3(a)に示すとおり、ガイド溝113の内壁113cが配線・配管材支持具100の幅方向に交互に張り出すと共に厚み方向に非連続的に整列している。すなわち、ガイド溝113の長さは内壁113cによって区画されている。当該ガイド溝113は、前面側に開口113aを有するとともに、ガイド溝113の深部(取付面116側)に当接部114を有する。そして、ガイド溝113の縦断面視(図3(a))は、ガイド溝113の長さが開口113aから当接部114にかけて徐々に減少するように構成されている。換言すると、配線・配管材支持具100の幅方向両側の内壁113c同士の距離が開口113aから当接部114に向かうにつれて狭まるように、両内壁113cが角度α(本実施形態では、α〜25°であるが任意に設定可能)で傾斜している。より具体的には、開口113aがガイド溝長L1を有し、当接部114がガイド溝長L2(<L1)を有するように構成されている。
【0027】
図3(b)は、図3(a)のB−B断面視、すなわち、当接部114におけるガイド溝113の断面視を示している。図3(b)に示すとおり、当接部114は、長さ(径)L2及び幅(径)Wを有する長円(又は楕円)として形成されている。そして、これらL2及びWは、当接部114の長さ(径)L2及び幅(径)Wの両方又はいずれか一方が、使用される貫通部材Pとの径とが対応していることにより、貫通部材Pを当接部114で保持可能であるように設定されるが好ましい。本実施形態では、当接部114は、L2>Wの長円形状からなり、内壁113b間に貫通部材Pを保持可能に形成されている。そして、後述するとおり、貫通部材Pといずれか一方の内壁113cとが当接することにより、貫通部材Pは当接部114を支点として遊動(あるいは傾動)可能である。しかしながら、本発明は実施形態に限定されない。すなわち、当接部114が貫通部材Pに当接し、当該当接部114を支点として貫通部材Pをガイド溝の長さ方向に沿って遊動させることができれば、ガイド溝113の長さL1、当接部114の幅W、及び、長さL2を任意に設定することができる。
【0028】
なお、本実施形態の配線・配管材支持具100は、ポリプロピレン等の硬質樹脂を成型して形成されているが、本発明は、この材料及び製法に限定されることなく、他の材料及び製法を任意に選択可能である。
【0029】
次に、図4(a)〜(c)を参照して、本実施形態の配線・配管材支持具100を構造物Sに設置する際の貫通部材Pの位置決めの態様を説明する。
【0030】
図4(a)は、配線・配管材支持具100のガイド溝113内に釘又はビスである貫通部材Pを挿通した状態の側方断面図である。ガイド溝113の幅Wが一定であり、且つ、幅Wと貫通部材Pの径がほぼ等しく構成されているため、貫通部材Pは配線・配管材支持具100の長手方向(すなわち、ガイド溝113の幅方向)にぐらつくことなくガイド溝113内に配置されている。
【0031】
図4(b)は図4(a)のC−C断面図であり、図4(c)は配線・配管材支持具100及び構造物Sの正面図である。図4(b)に示すとおり、貫通部材Pは、その先端近傍が当接部114(内壁113c)に当接可能に配置されている。本実施形態では、内壁113b間の距離Wと貫通部材Pの先端近傍の径とがほぼ対応しており、ガイド溝113が貫通部材を保持している共に、凸条115が貫通部材Pの螺子ガイド溝と当接して滑り止め機能を発揮することにより、貫通部材Pは、不意にガイド溝113から離脱(落下)しないようにガイド溝113内に保持されている。そして、貫通部材Pの頭部を矢印方向に移動(傾動)させると、貫通部材Pの先端部が当接部114でガイド溝の長さ方向の内壁113cに係止される。すなわち、当接部114を支点として、図4(c)に示すように、貫通部材Pがガイド溝幅の内壁113bにガイドされつつガイド溝113の長さ方向に沿って遊動(又は傾動)する。この貫通部材Pの遊動可能な領域は内壁113c間の角度αによって定められる。そして、作業者は、設置場所等を考慮して適宜に貫通部材Pを位置決めした後に、構造物Sに対して貫通部材Pを所望の角度で打ち込むことにより、配線・配管材支持具100を構造物Sに固定する。
【0032】
図5は、本実施形態の配線・配管材支持具100を貫通部材Pによって構造物(壁面)Sに固定し、且つ、ケーブル(配線・配管材)Cを敷設した形態を示している。なお、本実施形態では、構造物Sは垂直に立設した壁面であるが、本発明の構造物はこれに限定されず、例えば、配線・配管材支持具を天井、床面、傾斜面等の構造物に設置可能であることは云うまでもない。
【0033】
図5に示すとおり、貫通部材Pの頭部が当接部112のガイド溝113縁部に当接するまで貫通部材Pがガイド溝113を貫通し、貫通部材Pの先端が構造物S内に埋め込まれることによって、支持部111内にケーブルCを支持した状態の配線・配管材支持具100が構造物Sに固定されている。この固定状態では、取付面116が構造物Sに当接しており、取付面116の構造物Sに対する固定をより確実にするように、2つの突起117が構造物Sに食い込んでいる。そして、貫通部材Pがガイド溝113の内壁113bに沿って配線・配管材支持具100の長手方向に対して傾斜するように構造物Sに埋設されている。また、前述したように、貫通部材Pは、ガイド溝113の長さ方向に沿って任意に遊動させて位置決めされるので、配線・配管材支持具100の幅方向に対して傾斜又は直交するように配設される。つまり、図5の固定状態では、貫通部材Pは取付面116の法線方向から傾いて配置されている。
【0034】
以下、本発明の一実施形態の配線・配管材支持具100の作用効果について説明する。
【0035】
本実施形態の配線・配管材支持具100では、固定部112が貫通部材Pを挿通可能な幅Wで形成されたガイド溝113と、貫通部材Pと当接可能な当接部114とを有し、ガイド溝113が当接部114からガイド溝開口113aに向かうにつれてガイド溝の長さLが広がるように構成されている。すなわち、配線・配管材支持具100を構造物Sに固定部112を介して固定する際、貫通部材Pをガイド溝113内に挿通させると、貫通部材Pの一部が当接部114と当接することにより、当該当接部114(及び貫通部材Pの一部)を支点として貫通部材Pをガイド溝113の長さ方向にのみ遊動させることができる。このため、作業者が貫通部材Pを打ち付けて構造物Sに配線・配管材支持具100を固定する際、作業者は、貫通部材Pをガイド溝113の長さ方向に沿って遊動させて、貫通部材Pの進行方向を設置場所の障害物等の位置に応じて適宜変更することが可能である。つまり、作業者が打ち付け作業の実施し易い方向から貫通部材Pを配線・配管材支持具100及び構造物Sに打ち付けることができる。例えば、壁隅近傍の壁面Sに配線・配管材支持具100を設置したい場合、貫通部材Pをガイド溝113に沿って作業者の手前側に傾けるように遊動させることで、隣接する壁面に作業を邪魔されずに貫通部材Pを容易に打ち付けることができる。また、貫通部材Pが一方向でなく上下左右に亘って遊動可能であると、貫通部材Pがぐらついて所定位置に定まらないという問題が生じるが、本実施形態の配線・配管材支持具100では、貫通部材Pがガイド溝113の長さ方向にのみ遊動可能であり、ガイド溝113の幅方向に遊動しないので、貫通部材Pをガイド溝113内に安定配置することができ、貫通部材Pを容易に打ち込むことが可能である。さらに、貫通部材Pの遊動範囲は、ガイド溝113の長さ方向の内壁113cによって制限されるので、貫通部材Pがガイド溝113の長さ方向に必要以上に傾いて打ち込みができない状態になることを防止する。そして、当接部114が貫通部材Pを保持可能な幅(L2又はW)を有していることにより、貫通部材Pを当接部114内に保持することができる。すなわち、貫通部材Pをガイド溝113に挿通した後に作業者が貫通部材Pから手を離しても貫通部材Pを落とさないで設置作業を実施することができる。したがって、本発明は、設置作業が迅速且つ容易にできる配線・配管材支持具100を提供するものであり、ひいては、配線・配管材作業の迅速化及び容易化をも達成する。
【0036】
本実施形態の配線・配管材支持具100では、当接部114がガイド溝113の内壁113b、113cを兼ねていることにより、配線・配管材支持具100を簡易な構造とすることができる。また、内壁113cが交互に張り出すように構成されているので、ガイド溝113を型押成形によって形成することができ、すなわち、配線・配管材支持具100を容易に製造することが可能である。さらに、固定部112が配線・配管材支持具100の略中央に形成されていることにより、配線・配管材支持具100を全体としてコンパクトで簡易な形状とすることができる。
【0037】
また、本実施形態の配線・配管材支持具100の幅方向に沿ってガイド溝113が配置されていると共に、その幅方向に沿って配線・配管材が敷設されるように支持部111が配置されている。換言すると、貫通部材Pが配線・配管材Cの配線・配管方向に沿って遊動可能にガイド溝113が形成されている。つまり、配線・配管材支持具100の設置作業中、貫通部材Pが配線・配管方向に沿って遊動されるので、配線・配管材Cと貫通部材Pとが干渉することを回避することができ、作業者が配線・配管材Cを損傷するおそれを軽減することができる。
【0038】
そして、本実施形態の配線・配管材支持具100では、ガイド溝113が配線・配管材支持具100の長手方向に対して傾斜して構成されていることにより、図5に示したとおり、貫通部材Pの進行方向を取付面116の法線方向から傾斜させて、貫通部材Pを構造物Sに打ち込むことができる。すなわち、貫通部材Pが構造物Sに対して斜めに打ち込まれるように配線・配管材支持具100を貫通するため、配線・配管材支持具100が貫通部材Pを軸に回転することを防止できる。
【0039】
次に、本発明の変形例を一実施形態の配線・配管材支持具100と対比しつつ説明するが、一実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0040】
(変形例1)
一実施形態の配線・配管材支持具100では、ガイド溝113の長さがその開口113aから後部開口113dに向かうにつれて狭まっているが、本発明は、貫通部材が遊動可能に当接する当接部を備えていればよく、一実施形態に限定されない。例えば、図6(a)に示す配線・配管材支持具100Aの固定部112Aでは、ガイド溝113Aの開口113aAから当接部114Aに向かうにつれて、内壁113cA間の距離が小さくなり、当接部114Aから後部開口113dAに向かうにつれて内壁113cA間の距離が大きくなっている。
【0041】
(変形例2)
また、一実施形態の配線・配管材支持具100では、ガイド溝113が固定部112に貫通形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6(b)の配線・配管材支持具100Bでは、固定部112Bに設けられたガイド溝113Bの取付面116B側には肉部が形成されている。この肉部を貫通部材Pが貫通することによって、配線・配管材支持具100Bを構造物Wに固定する。この形態であっても、当接部114Bを支点として貫通部材を遊動可能であり、本発明の目的を少なくとも達成することができる。
【0042】
(変形例3)
そして、一実施形態の配線・配管材支持具100では、内壁113c間の距離が開口113aから後部開口113dに向かうにつれて狭まっているが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、図7に示す配線・配管材支持具100Cは、開口113aCから当接部114Cまでの内壁113cの距離が一定であり、当接部114Cにおいて貫通部材Pと当接可能にその幅が狭まっている。さらに、内壁113aCが連続的に形成されていてもよい。すなわち、図7に示すとおり、当接部114Cが、貫通部材Pが遊動するための支点として機能すれば、本発明の目的を達成することが可能である。
【0043】
(変形例4)
そして、一実施形態の配線・配管材支持具100では、固定部112がその略中央に形成されているが、固定部を中央でなく、側方に張り出すように配置してもよく、或いは、その端部に配置してもよい(図示せず)。また、本発明の支持部の形状は実施形態に限定されない。少なくとも配線・配管材を支持するという機能を有していれば、当業者が考え得る限り、どのような構成をとってもよい。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0045】
100 配線・配管材支持具
110 基部
111 支持部
112 固定部
113 ガイド溝
113a 開口
113b 内壁(ガイド溝の幅方向)
113c 内壁(ガイド溝の長さ方向)
114 当接部
115 凸条
116 取付面
117 突起
P 貫通部材
S 構造物
L1 開口でのガイド溝の長さ
L2 当接部でのガイド溝の長さ
W ガイド溝の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線・配管材を支持するための配線・配管材支持具であって、
配線・配管材を支持するための支持部と、
貫通部材が挿通及びスライド可能なガイド溝を有すると共に、前記貫通部材が前記ガイド溝を貫通することによって構造物に固定される固定部と、を備えてなり、
前記固定部は前記ガイド溝内に前記貫通部材と当接する当接部を備え、前記貫通部材が前記当接部を支点として前記ガイド溝に沿って遊動可能であることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記ガイド溝の長さ方向に対向する内壁が前記ガイド溝の開口から前記当接部に向かうにつれて狭まるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。
【請求項3】
前記当接部は前記ガイド溝の内壁の一部からなると共に前記貫通部材を保持可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記貫通部材が配線・配管材の配線・配管方向に沿って遊動可能に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の配線・配管材支持具。
【請求項5】
前記構造物への取付面をさらに備え、前記ガイド溝が前記取付面に対して傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の配線・配管材支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87906(P2013−87906A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230610(P2011−230610)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】