説明

配線回路基板

【課題】グランド層の第1絶縁層または第2絶縁層に対する密着性を向上させることのできる配線回路基板を提供すること。
【解決手段】回路付サスペンション基板1において、第1ベース絶縁層3には、第1グランド開口部78が形成され、第2ベース絶縁層5には、第1グランド開口部78に対応する第2グランド開口部80が形成されており、第1グランド開口部78は、第2グランド開口部80に囲まれており、グランド層6が、第2グランド開口部80を介して、第1グランド開口部78内に、金属支持層2の上面に接触するように充填されているか、あるいは、第1グランド開口部78は、第2グランド開口部80を囲んでおり、第2ベース絶縁層5は、第1グランド開口部78の周端部に充填され、グランド層6が、第2グランド開口部80内に、金属支持層2の上面に接触するように充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、詳しくは、配線回路基板やフレキシブル配線回路基板などの配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体パターンの信号配線の伝送損失を低減させるために、例えば、絶縁層と、それに被覆される導体層と、導体層と間隔を隔てて配置されるグランド層とを備える配線回路基板が提案されている(例えば、下記特許文献1の図8および図10参照。)。
【0003】
特許文献1の配線回路基板では、絶縁層は、第2絶縁層と、その上に形成される第3絶縁層とを備えるとともに、グランド層は、第2絶縁層の下に形成される下部グランド層と、それに接触する側部グランド層と、第3絶縁層の上に、側部グランド層に連続して形成される上部グランド層とを備えている。
【0004】
特許文献1の配線回路基板では、第2絶縁層および第3絶縁層に第1開口部および第2開口部が互いに連通するように同一形状でそれぞれ形成されており、第1開口部および第2開口部に側部グランド層が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−91634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の第1開口部および第2開口部が厚み方向に沿って面一に形成されているので、側部グランド層と、第1開口部および第2開口部との接触面積が小さい。そのため、側部グランド層の第2絶縁層および第3絶縁層に対する密着性が低く、そのため、グランド層の信頼性を十分に向上させることができない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、グランド層の第1絶縁層または第2絶縁層に対する密着性を向上させることのできる配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成される第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に形成される導体層と、前記第1絶縁層の上に、前記導体層を被覆するように形成される第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上に形成されるグランド層とを備え、前記第1絶縁層には、厚み方向を貫通する第1開口部が形成され、前記第2絶縁層には、前記厚み方向を貫通して、前記第1開口部に対応する第2開口部が形成されており、前記第1開口部は、前記厚み方向に投影したときに、前記第2開口部に囲まれており、前記グランド層が、前記第2開口部を介して、前記第1開口部内に、前記金属支持層の上面に接触するように充填されているか、あるいは、前記第1開口部は、前記厚み方向に投影したときに、前記第2開口部を囲んでおり、前記第2絶縁層は、前記第1開口部の周端部に充填され、前記グランド層が、前記第2開口部内に、前記金属支持層の上面に接触するように充填されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の配線回路基板では、前記第1絶縁層における前記第1開口部の周側面が、厚み方向に対して傾斜して形成され、および/または、前記第2絶縁層における前記第2開口部の周側面が、厚み方向に対して傾斜して形成されていることが好適である。
【0010】
また、本発明の配線回路基板では、前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層は、感光性樹脂から形成されていることが好適である。
【0011】
また、本発明の配線回路基板では、前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層は、前記感光性樹脂をフォトマスクを介して露光することにより、形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線回路基板では、第1開口部は、厚み方向に投影したときに、第2開口部に囲まれており、第2開口部内に、第1絶縁層の段差部が形成される。そのため、グランド層は、第2開口部を介して、第1開口部内に、金属支持層の上面に接触するように充填されると、第1絶縁層の段差部に接触して密着することができるので、第1開口部および第2開口部における第1絶縁層に対する密着性を向上させることができる。
【0013】
あるいは、第1開口部は、厚み方向に投影したときに、第2開口部を囲んでおり、第2絶縁層が、第1開口部の周端部に充填されるので、第1開口部内において、第2絶縁層の段差部が形成される。そのため、グランド層は、第2開口部内に、金属支持層の上面に接触するように充填されると、第2絶縁層の段差部に接触して密着することができるので、第1開口部および第2開口部における第2絶縁層に対する密着性を向上させることができる。
【0014】
その結果、グランド層の第1絶縁層または第2絶縁層に対する密着性を向上させることにより、グランド接続の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態としての回路付サスペンション基板の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の後端部の拡大平面図である。
【図3】図3は、図2のA−A1点鎖屈曲線に沿う拡大断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図5】図5は、図2のC−C線に沿う拡大断面図である。
【図6】図6は、図2のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図7】図7は、図3に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持層を用意する工程、(b)は、第1ベース皮膜を形成する工程、(c)は、第1ベース絶縁層を形成する工程、(d)は、導体層を形成する工程を示す。
【図8】図8は、図7に引き続き、図3に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、(e)は、第2ベース皮膜を形成する工程、(f)は、第2ベース絶縁層を形成する工程、(g)は、グランド層を形成する工程、(h)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【図9】図9は、本発明の配線回路基板の他の実施形態としての回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(支持側グランド端子を露出させる態様)の拡大断面図である。
【図10】図10は、本発明の配線回路基板の他の実施形態としての回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(第2グランド開口部が第1グランド開口部に囲まれる態様)の拡大断面図である。
【図11】図11は、比較例1の回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(第2グランド開口部および第1グランド開口部が同一径に形成される態様)の拡大断面図である。
【図12】図12は、比較例1の回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(第2グランド開口部および第1グランド開口部が同一径に形成されるととともに、それらが位置ずれする態様)であり、(a)は、断面図(b)は、各第平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態としての回路付サスペンション基板の斜視図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の後端部の拡大平面図、図3は、図2のA−A1点鎖屈曲線に沿う拡大断面図、図4は、図2のB−B線に沿う拡大断面図、図5は、図2のC−C線に沿う拡大断面図、図6は、図2のD−D線に沿う拡大断面図を示す。図7は、図3に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、図7(a)は、金属支持層を用意する工程、図7(b)は、第1ベース皮膜を形成する工程、図7(c)は、第1ベース絶縁層を形成する工程、図7(d)は、導体層を形成する工程を示す。図8は、図7に引き続き、図3に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、図8(e)は、第2ベース皮膜を形成する工程、図8(f)は、第2ベース絶縁層を形成する工程、図8(g)は、グランド層を形成する工程、図8(h)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【0017】
なお、図2において、後述する導体層4およびグランド層6の相対配置を明確に示すために、カバー絶縁層7を省略している。
【0018】
図1において、回路付サスペンション基板1は、磁気ヘッド(図示せず)を実装するとともに、磁気ヘッドにライト信号を送信、および、磁気ヘッドからリード信号を受信するリード・ライト基板(図示せず)に接続されて、ハードディスクドライブ(図示せず)に搭載される。この回路付サスペンション基板1は、長手方向(先後方向)に延びる金属支持層2と、金属支持層2によって支持される導体層4およびグランド層6が一体的に形成されている。
【0019】
金属支持層2は、平板状の金属箔や金属薄板からなり、先端部(長手方向一端部)において、磁気ヘッドが実装されるジンバル26が形成されている。
【0020】
導体層4は、磁気ヘッドと、リード・ライト基板とを電気的に接続する。
【0021】
導体層4およびグランド層6は、1対の信号・グランド配線(配線対30)として設けられる。回路付サスペンション基板1では、配線対30が2組設けられている。すなわち、配線対30は、後述する配線形成部10(図2参照)において、回路付サスペンション基板1の左右方向(長手方向に直交する方向、幅方向)両側にそれぞれ設けられている。
【0022】
右側の配線対(右側の配線対)30A、および、左側の配線対(左側の配線対)30Bにおいて、導体層4は、磁気ヘッドの端子に接続するためのヘッド側信号端子13と、リード・ライト基板の端子(図示せず)に接続するための外部側信号端子9と、ヘッド側信号端子13および外部側信号端子9を接続するための信号配線8とを一体的にそれぞれ備えている。
【0023】
また、右側の配線対30A、および、左側の配線対30Bにおいて、グランド層6は、磁気ヘッドの端子に接続するためのヘッド側グランド端子52と、金属支持層2に接続するための支持側グランド端子59と、ヘッド側グランド端子52および支持側グランド端子59を接続するためのグランド配線58とを一体的に備えている。
【0024】
また、回路付サスペンション基板1は、図4に示すように、金属支持層2と、金属支持層2の上に形成される絶縁層としての第1ベース絶縁層3と、第1ベース絶縁層3の上に形成される導体層4と、第1ベース絶縁層3の上に、導体層4を被覆するように形成される第2絶縁層としての第2ベース絶縁層5と、第2ベース絶縁層5の上に形成されるグランド層6とを備えている。また、回路付サスペンション基板1は、第2ベース絶縁層5の上に、グランド層6を被覆するように形成されるカバー絶縁層7を備えている。
【0025】
次に、回路付サスペンション基板1の後端部について、図2〜図6を参照して詳述する。なお、以降の説明では、右側の配線対30Aおよび左側の配線対30Bのうち、右側の配線対30Aのみを例示して説明するが、左側の配線対30Bについては、右側の配線対30Aの説明と同様であり、その説明を省略する。
【0026】
図2において、回路付サスペンション基板1の後端部には、配線形成部10と、端子形成部12と、配線形成部10および端子形成部12の間に連続して形成される中間部11とが一体的に設けられている。
【0027】
配線形成部10では、図4に示すように、金属支持層2の上に、第1ベース絶縁層3が形成されている。第1ベース絶縁層3は、金属支持層2の上面に、信号配線8に対応するように、積層されている。
【0028】
第1ベース絶縁層3の上には、信号配線8が形成されている。信号配線8は、図1に示すように、回路付サスペンション基板1の先端部に向かって直線状に延びるように形成されている。
【0029】
第1ベース絶縁層3の上には、図4に示すように、第2ベース絶縁層5が、信号配線8を被覆するように積層されている。
【0030】
第2ベース絶縁層5の上には、グランド配線58が、信号配線8と厚み方向(上下方向)に投影したときに、重複するように形成されている。
【0031】
第2ベース絶縁層5の上には、カバー絶縁層7が、グランド配線58を被覆するように積層されている。
【0032】
配線形成部10は、右側の配線対30A、すなわち、信号配線8およびグランド配線58が厚み方向において重複する部分に対応する領域として形成されている。
【0033】
中間部11は、図2に示すように、配線形成部10と次に説明する端子形成部12とを連結する中間領域として形成されている。
【0034】
中間部11において、図5に示すように、金属支持層2の上に第1ベース絶縁層3が形成されている。第1ベース絶縁層3は、金属支持層2の上面に積層されている。中間部11の第1ベース絶縁層3は、配線形成部10の第1ベース絶縁層3(図4参照)から連続して形成されている。
【0035】
第1ベース絶縁層3の上には、信号配線8が形成されている。信号配線8は、図1に示すように、中間部11において、その途中が左側へ屈曲する平面視略L字形状に形成されている。
【0036】
第1ベース絶縁層3の上には、図5に示すように、信号配線8を被覆する第2ベース絶縁層5が積層されている。第2ベース絶縁層5は、信号配線8およびグランド配線58に対応するように設けられており、より具体的には、信号配線8の上面および側面と、信号配線8の周囲の第1ベース絶縁層3の上面とに、平面視略L字形状(図2参照)に形成されている。
【0037】
中間部11において、第2ベース絶縁層5の上に、グランド配線58が形成されている。
【0038】
グランド配線58は、図2に示すように、中間部11において、その途中が左側へ屈曲する平面視略L字形状に形成されている。
【0039】
すなわち、中間部11のグランド配線58において、配線形成部10のグランド配線58から直線的に連続する屈曲前部分は、図4に示すように、中間部11の信号配線8に対して平面視(上下方向に投影したとき)において重なるように配置されている。
【0040】
一方、中間部11のグランド配線58において、端子形成部12のグランド配線58と直線的に連続する屈曲後部分は、図5に示すように、中間部11の信号配線8に対して、平面視において後側に配置されている。
【0041】
すなわち、中間部11において、図2に示すように、信号配線8は、グランド配線58よりも先側で幅方向外側へ屈曲しており、そのため、グランド配線58は、屈曲前部分の途中まで信号配線8の屈曲前部分すべてと重なり、それ以後の屈曲前部分および屈曲後部分では、信号配線8と重ならないように配置されている。つまり、図5に示すように、グランド配線58の屈曲後部分は、厚み方向に投影したときに、信号配線8の屈曲後部分の後側に間隔を隔てて並列配置されている。
【0042】
また、グランド配線58は、配線形成部10のグランド配線58が形成される絶縁層(図4参照)と同一の絶縁層の上、すなわち、第2ベース絶縁層5の上に形成されている。また、グランド配線58は、次に説明する支持側グランド端子59に連続するように形成されている。
【0043】
第2ベース絶縁層5の上には、グランド配線58を被覆するカバー絶縁層7が形成されている。
【0044】
端子形成部12には、図2に示すように、外部側信号端子9および支持側グランド端子59が形成されており、外部側信号端子9が形成される領域が信号端子形成領域74とされ、支持側グランド端子59が形成される領域がグランド端子形成領域75とされている。
【0045】
信号端子形成領域74において、図6に示すように、金属支持層2には、外部側信号端子9に対応する支持開口部73が形成されている。
【0046】
支持開口部73は、金属支持層2の厚み方向を貫通し、図2に示すように、左右方向に長い平面視略矩形状に形成されている。
【0047】
また、図6に示すように、信号端子形成領域74において、支持開口部73の周囲の金属支持層2の上に、第1ベース絶縁層3が形成されている。
【0048】
第1ベース絶縁層3には、支持開口部73に連通する第1ベース開口部76が形成されている。第1ベース開口部76は、第1ベース絶縁層3の厚み方向を貫通し、平面視において支持開口部73と同一形状となるように形成されている。
【0049】
図6に示すように、第1ベース開口部76の先後方向両側の第1ベース絶縁層3の上に、外部側信号端子9が形成されており、外部側信号端子9は、図2に示すように、第1ベース開口部76を先後方向に横切るように形成されている。外部側信号端子9は、信号配線8の幅より広幅の角ランドとして形成されている。
【0050】
外部側信号端子9の下面は、図6に示すように、支持開口部73および第1ベース開口部76から露出している。
【0051】
第1ベース開口部76の周囲の第1ベース絶縁層3の上に、外部側信号端子9の先後方向両端を被覆するように、第2ベース絶縁層5が形成されている。
【0052】
第2ベース絶縁層5には、第1ベース開口部76に連通する第2ベース開口部83が形成されている。
【0053】
第2ベース開口部83は、第2ベース絶縁層5の厚み方向を貫通し、図2に示すように、平面視において第1ベース開口部76と同一形状となるように形成されている。
【0054】
また、第2ベース絶縁層5の上に、カバー絶縁層7が形成されている。
【0055】
カバー絶縁層7には、カバー開口部77が形成されている。カバー開口部77は、カバー絶縁層7の厚み方向を貫通し、図2に示すように、平面視において第2ベース開口部83と同一形状となるように形成されている。
【0056】
図6に示すように、信号端子形成領域74において、外部側信号端子9は、下面が支持開口部73および第1ベース開口部76から露出し、上面が第2ベース開口部83およびカバー開口部77から露出するフライングリードとして形成されている。
【0057】
グランド端子形成領域75は、図2に示すように、信号端子形成領域74の後側に間隔を隔てて並列配置されている。
【0058】
グランド端子形成領域75において、図3および図6に示すように、金属支持層2の上に第1ベース絶縁層3が形成されている。
【0059】
第1ベース絶縁層3には、厚み方向を貫通する第1開口部としての第1グランド開口部78(図7(c)参照)が形成されている。
【0060】
第1グランド開口部78は、図2の破線で示すように、平面視略円形状に形成されている。なお、第1ベース絶縁層3には、図3および図6に示すように、第1グランド開口部78に臨む部分(具体的には、第1グランド開口部78の周囲)が第1段差部15として形成される。
【0061】
また、第1ベース絶縁層3における第1グランド開口部78の第1周側面79は、厚み方向に対して傾斜する傾斜面として形成されている。具体的には、第1周側面79は、下方に向かうに従って第1グランド開口部78の平断面積が小さくなる(つまり、縮径する)テーパ状に傾斜している。
【0062】
第1ベース絶縁層3の上に、第2ベース絶縁層5が形成されている。
【0063】
第2ベース絶縁層5には、厚み方向を貫通して、第1グランド開口部78に対応する第2開口部としての第2グランド開口部80が形成されている。
【0064】
第2グランド開口部80は、図2の破線で示すように、厚み方向に投影したときに、第1グランド開口部78を囲むように形成されている。具体的には、第2グランド開口部80は、第1グランド開口部78と中心が共通する平面視略形状に形成されている。つまり、第2グランド開口部80は、平面視において、第1グランド開口部78より大きい相似形状に形成されている。
【0065】
また、第2ベース絶縁層5において、図3および図6に示すように、第2グランド開口部80に臨む部分(具体的には、第2グランド開口部80の周囲)が第2段差部16として形成とされる。
【0066】
従って、第1ベース絶縁層3の第1段差部15と、第2ベース絶縁層5の第2段差部16とは、径方向内側に向かうに従って、階段状に下降する2段の段差部を形成する。
【0067】
また、第2ベース絶縁層5における第2グランド開口部80の第2周側面81は、厚み方向に対して傾斜する傾斜面として形成されている。具体的には、第2周側面81は、下方に向かうに従って第2グランド開口部80の平断面積が小さくなる(つまり、縮径する)テーパ状に傾斜するように形成されている。
【0068】
第2グランド開口部80の周囲の第2ベース絶縁層5の上に支持側グランド端子59が形成されている。
【0069】
支持側グランド端子59は、厚み方向に投影したときに、外形が、第1グランド開口部78および第2グランド開口部80を含む、略円形状に形成されている。
【0070】
そして、支持側グランド端子59の内部は、第2グランド開口部80を介して、第1グランド開口部78内に充填されている。
【0071】
具体的には、支持側グランド端子59は、第2ベース絶縁層5の第2段差部16から内側に向かって、第2ベース絶縁層5の第2グランド開口部80の第2周側面81に沿って落ち込むように形成され、次いで、第2グランド開口部80内において、第2グランド開口部80の内側に形成される第1ベース絶縁層5の第1段差部15の上面に沿って形成される。続いて、支持側グランド端子59は、第1ベース絶縁層3の第1グランド開口部78の第1周側面79に沿って落ち込むように形成され、その後、第1段差部15の内側の金属支持層2(第1グランド開口部78から露出する金属支持層2)の上面に形成されている。
【0072】
これによって、支持側グランド端子59は、第1グランド開口部78内の金属支持層2の上面に接触する。つまり、支持側グランド端子59は、金属支持層2と電気的に接続される。これによって、グランド層6は、接地(グランド接続)される。
【0073】
また、第2ベース絶縁層5の上に、支持側グランド端子59を被覆するように、カバー絶縁層7が形成されている。
【0074】
また、図1に示すように、回路付サスペンション基板1の先端部において、右側の配線対30Aおよび左側の配線対30Bは、ジンバル26近傍において並列配置されている。つまり、右側の配線対30Aのヘッド側信号端子13およびヘッド側グランド端子52と、左側の配線対30Bのヘッド側信号端子13およびヘッド側グランド端子52とが幅方向に並列配置されており、上記した端子形成部12および中間部11と同一構成とされている。
【0075】
また、回路付サスペンション基板1の中間部(先端部と後端部との間、先後方向途中部)は、後端部における配線形成部10と同一構成とされている。
【0076】
次に、この回路付サスペンション基板1の製造方法について、図7および図8を参照して説明する。
【0077】
まず、この方法では、図7(a)に示すように、金属支持層2を用意する。金属支持層2を形成する金属材料としては、例えば、ステンレス、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレス(例えば、AISI(米国鉄鋼協会)の規格に基づく、SUS304など)などが用いられる。金属支持層2の厚みは、例えば、10〜30μm、好ましくは、15〜25μmである。
【0078】
次いで、この方法では、図7(b)および図7(c)に示すように、第1ベース絶縁層3を金属支持層2の上に、第1グランド開口部78および第1周側面79(傾斜面)を有するように形成する。
【0079】
第1ベース絶縁層3を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が用いられる。これらのうち、好ましくは、感光性樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。
【0080】
第1ベース絶縁層3を形成するには、例えば、図1(b)に示すように、まず、金属支持層2の上面全面に感光性樹脂の溶液(ワニス)を塗布して乾燥することにより、第1ベース皮膜20を形成する。
【0081】
その後、フォトマスクとしての第1階調フォトマスク14を介して第1ベース皮膜20を露光する。
【0082】
第1階調フォトマスク14は、第1遮光部分17、第1光半透過部分18および第1光全透過部分19からなるマスクパターンを備えている。第1光半透過部分18は、第1遮光部分17から第1光全透過部分19に近接するに従って、光透過率が次第に大きくなるように設定されている。
【0083】
そして、第1階調フォトマスク14を第1ベース皮膜20の上側に配置する。
【0084】
具体的には、第1光全透過部分19を、第1ベース絶縁層3(図7(c)参照)を形成する部分に対向させ、第1光半透過部分18を、第1周側面79(図7(c)参照)を形成する部分に対向させ、第1遮光部分17を、第1ベース絶縁層3を形成しない部分(第1グランド開口部78を含む、図7(c)参照)に対向させる。
【0085】
その後、第1ベース皮膜20を、上方から第1階調フォトマスク14を介して露光する。
【0086】
その後、現像液により、第1遮光部分17に対向する部分、つまり、未露光部分を溶解させるとともに、第1光半透過部分18に対向する部分、つまり、露光の度合が調整された半露光部分を部分的に溶解させて現像して、その後、必要により硬化させる。
【0087】
これにより、図1(d)に示すように、第1ベース絶縁層3を、第1グランド開口部78および第1周側面79を有するパターンで形成する。
【0088】
このようにして形成される第1ベース絶縁層3の厚みは、例えば、1〜25μm、好ましくは、1〜10μmである。
【0089】
また、第1グランド開口部78の内径D1は、例えば、10〜100μm、好ましくは、15〜60μmである。
【0090】
第1周側面79と金属支持層2の上面とのなす角度(傾斜角度)αは、例えば、0.35〜85度、好ましくは、0.5〜45度である。
【0091】
次いで、この方法では、図1(d)に示すように、導体層4を第1ベース絶縁層3の上に、上記したパターンで形成する。
【0092】
導体層4を形成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはそれらの合金などの金属材料が用いられる。これらのうち、好ましくは、銅が用いられる。
【0093】
導体層4を形成するには、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などの公知のパターンニング法が用いられる。好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0094】
アディティブ法では、まず、金属支持層2および第1ベース絶縁層3の上面全面に、図示しない第1金属薄膜(種膜)を形成する。第1金属薄膜としては、銅、クロム、ニッケルおよびそれらの合金などの金属材料が用いられる。第1金属薄膜は、スパッタリング、めっきなどの薄膜形成方法により、形成する。好ましくは、スパッタリングにより第1金属薄膜を形成する。
【0095】
次いで、第1金属薄膜の表面に、ドライフィルムレジストを設けて、これを露光および現像し、導体層4と逆パターンの図示しないめっきレジストを形成する。次いで、電解めっきにより、めっきレジストから露出する第1金属薄膜の表面に、導体層4を形成し、次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の第1金属薄膜をエッチングなどにより除去する。
【0096】
このようにして形成される導体層4の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜15μmである。
【0097】
また、各信号配線8(図2参照)の幅は、例えば、10〜300μm、好ましくは、15〜150μmである。また、各ヘッド側信号端子13および各外部側信号端子9(図2参照)の幅は、例えば、10〜15000μm、好ましくは、30〜1000μmである。
【0098】
これによって、図1が参照されるように、導体層4は、信号配線8、外部側信号端子9およびヘッド側信号端子13が一体的に形成される配線回路パターンとして形成される。
【0099】
次いで、この方法では、図8(e)および図8(f)に示すように、第2ベース絶縁層5を、第1ベース絶縁層3の上に、第2グランド開口部80および第2周側面81を有する上記したパターンで形成する。
【0100】
第2ベース絶縁層5を形成する絶縁材料としては、上記した第1ベース絶縁層3と同様の絶縁材料が用いられる。
【0101】
第2ベース絶縁層5を形成するには、例えば、図8(e)に示すように、金属支持層2、第1ベース絶縁層3および導体層4およびの上面全面に、感光性樹脂の溶液(ワニス)を塗布して乾燥することにより、第2ベース皮膜21を形成する。
【0102】
その後、フォトマスクとしての第2階調フォトマスク22を介して第1ベース皮膜20を露光する。
【0103】
第2階調フォトマスク22は、第2遮光部分23、第2光半透過部分24および第2光半透過部分25からなるマスクパターンを備えている。第2光半透過部分24は、第2遮光部分23から第2光半透過部分25に近接するに従って、光透過率が次第に大きくなるように設定されている。
【0104】
そして、第2階調フォトマスク22を第2ベース皮膜21の上側に配置する。
【0105】
具体的には、第2光半透過部分25を、第2ベース絶縁層5(図8(f)参照)を形成する部分に対向させ、第2光半透過部分24を、第2周側面79(図8(f)参照)を形成する部分に対向させ、第2遮光部分23を、第2ベース絶縁層5を形成しない部分(第2グランド開口部80(図8(f)参照)、および、第2ベース開口部83(図2参照)を含む)に対向させる。
【0106】
その後、第2ベース皮膜21を、上方から第2階調フォトマスク22を介して露光する。
【0107】
その後、現像液により、第2遮光部分23に対向する部分、つまり、未露光部分を溶解させるとともに、第2光半透過部分24に対向する部分、つまり、露光の度合が調整された半露光部分を部分的に溶解させて現像して、その後、必要により硬化させる。
【0108】
これにより、図8(f)に示すように、第2ベース絶縁層5を、第2グランド開口部80および第2周側面81を有するパターンで形成する。
【0109】
このようにして形成される第2ベース絶縁層5の厚みは、例えば、1〜50μm、好ましくは、1.5〜15μmである。
【0110】
また、第2グランド開口部80の内径D2は、第1グランド開口部78の内径D1に対して、例えば、100%を超え、好ましくは、110〜900%であり、具体的には、例えば、20〜200μm、好ましくは、35〜100μmである。
【0111】
また、第2周側面81と第1ベース絶縁層の上面とのなす角度(傾斜角度)βは、例えば、0.35〜85度、好ましくは、0.5〜45度である。
【0112】
次いで、この方法では、図8(g)に示すように、グランド層6を上記したパターンで形成する。
【0113】
グランド層6を形成する材料としては、上記した導体層4と同様の材料が用いられる。
【0114】
グランド層6を形成するには、上記と同様のパターンニング法が用いられ、好ましくは、アディティブ法が用いられる。
【0115】
アディティブ法では、まず、金属支持層2、第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5の上面全面に、図示しない第2金属薄膜(種膜)を形成する。第2金属薄膜としては、上記と同様の金属材料が用いられる。第2金属薄膜は、上記と同様の薄膜形成方法、好ましくは、スパッタリングにより、形成する。
【0116】
次いで、第2金属薄膜の表面に、ドライフィルムレジストを設けて、これを露光および現像し、グランド層6と逆パターンの図示しないめっきレジストを形成する。次いで、電解めっきにより、めっきレジストから露出する第2金属薄膜の表面に、グランド層6を形成し、次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の第2金属薄膜をエッチングなどにより除去する。
【0117】
このようにして形成されるグランド層6の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜15μmである。また、各グランド配線58の幅は、信号配線8の幅と同幅または相異なっていてもよく、例えば、10〜300μm、好ましくは、15〜150μmである。
【0118】
各支持側グランド端子59の外径は、例えば、100〜1000μm、好ましくは、150〜500μmである、
各ヘッド側グランド端子52(図1参照)の幅は、例えば、10〜15000μm、好ましくは、30〜1000μmである。
【0119】
次いで、この方法では、図8(h)に示すように、カバー絶縁層7を、カバー開口部77(図2参照)を有する上記したパターンで形成する。
【0120】
カバー絶縁層7を形成する絶縁材料としては、上記した第1ベース絶縁層3と同様の絶縁材料が用いられる。
【0121】
カバー絶縁層7を形成するには、例えば、金属支持層2、第2ベース絶縁層5およびグランド層6の上面全面に、感光性樹脂の溶液(ワニス)を塗布して乾燥することにより、カバー皮膜(図示せず)を形成する。その後、カバー皮膜を、フォトマスクを介して露光および現像する。
【0122】
その後、カバー皮膜を必要により硬化させることにより、カバー絶縁層7を、カバー開口部77を有する上記したパターンとして形成する。
【0123】
なお、カバー絶縁層7の形成は、上記の方法に制限されず、例えば、予め樹脂をカバー開口部77が形成されたフィルムに形成して、そのフィルムを、金属支持層2、第2ベース絶縁層5およびグランド層6の上面全面に、公知の接着剤層を介して貼着することもできる。
【0124】
このようにして形成されるカバー絶縁層7の厚みは、例えば、2〜10μm、好ましくは、3〜6μmである。
【0125】
次いで、この方法では、図6に示すように、金属支持層2を開口して支持開口部73を形成し、続いて、第1ベース絶縁層3を開口して第1ベース開口部76を形成する。
【0126】
金属支持層2を開口するには、例えば、化学エッチングなどのウエットエッチングが用いられる。
【0127】
第1ベース絶縁層3を開口するには、例えば、金属支持層2をマスクとして用いるプラズマエッチングなどのドライエッチングなどが用いられる。
【0128】
これにより、外部側信号端子9をフライングリードとして形成することができる。
【0129】
なお、支持開口部73および第1ベース開口部76の長さ(長手方向長さ)は、例えば、50〜1500μmである。
【0130】
その後、必要により、外部側信号端子9の表面に、図示しない金属めっき層を形成する。金属めっき層は、金などの金属材料からなり、例えば、電解めっきや無電解めっきなどのめっきにより形成する。金属めっき層の厚みは、例えば、0.2〜5μmである。なお、ヘッド側信号端子13およびヘッド側グランド端子の表面についても、金属めっき層が同様に形成される。
【0131】
その後、金属支持層2を外形加工して、図1に示すように、ジンバル26を形成することにより、回路付サスペンション基板1を得ることができる。
【0132】
そして、この回路付サスペンション基板1では、図3が参照されるように、第1グランド開口部78は、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80に囲まれており、第2グランド開口部80内に、第1ベース絶縁層3の第1段差部15が形成される。
【0133】
そのため、支持側グランド端子59は、第2グランド開口部80を介して、第1グランド開口部78内に、金属支持層2の上面に接触するように充填されると、第1ベース絶縁層5の第1段差部15に接触して密着することができるので、第1グランド開口部78および第2グランド開口部80における第1ベース絶縁層3に対する密着性を向上させることができる。
【0134】
その結果、支持側グランド端子59の第1ベース絶縁層3に対する密着性を向上させることにより、グランド接続(接地)の信頼性を向上させることができる。
【0135】
さらに、第1ベース絶縁層3における第1グランド開口部78の第1周側面79が、厚み方向に対して傾斜する傾斜面として形成され、かつ、第2ベース絶縁層5における第2グランド開口部80の第2周側面81が、厚み方向に対して傾斜する傾斜面として形成されている。
【0136】
そのため、支持側グランド端子59の第1周側面79および第2周側面81に対する接触面積は、第1周側面79および第2周側面81が厚み方向に沿う垂直面として形成される場合(図11参照)に比べて、増大させることができる。
【0137】
その結果、支持側グランド端子59の、第1周側面79および第2周側面81に対する密着性をより一層向上させることができる。
【0138】
しかも、図3の実施形態では、支持側グランド端子59は、第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5における第1段差部15と第2段差部16とからなる2段の段差部に密着することができるので、第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5に対する密着性をより一層向上させることができる。
【0139】
なお、図7および図8の実施形態では、第1ベース絶縁層3を、第1階調フォトマスク14を介して第1ベース皮膜20を露光することにより形成するとともに、第2ベース絶縁層5を、第2階調フォトマスク22を介して第1ベース皮膜20を露光することにより形成している。
【0140】
しかるに、図11に示すように、第1グランド開口部78および第2グランド開口部80を面一、つまり、同径で形成するには、第1遮光部分17(図7(b)参照)の寸法と、第2遮光部分23(図8(e)参照)の寸法とが同一寸法となる。そうすると、第1遮光部分17の位置に対する第2遮光部分23の位置がわずかにずれる(位置ずれする)と、図12に示すように、その後に形成される第1グランド開口部78が、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80に囲まれることなく、第1段差部15および第2段差部16が交差する。つまり、第1グランド開口部78内に、第2段差部16が侵入して、かかる侵入部分92が第1グランド開口部78内の金属支持層2の上面に接触する。そのため、支持側グランド端子59の、金属支持層2の上面に対する接触面積は、上記した位置ずれによって、低減する。その結果、グランド接続の信頼性を十分に向上させることができない場合がある。
【0141】
しかしながら、図3の実施形態では、第1グランド開口部78が、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80に囲まれるように、第1遮光部分17の内径D1が、第2遮光部分23の内径D2より小さく設定されている。
【0142】
そのため、第1遮光部分17(図7(b)参照)の位置に対する第2遮光部分23(図8(b)参照)の位置がわずかにずれ(例えば、10μm程度、位置ずれし)ても、その後に形成される、第1グランド開口部78が、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80に囲まれる。そのため、第1グランド開口部78内の金属支持層2の上面に対する接触面積は、上記した位置ずれによっても、低減しない。その結果、グランド接続の信頼性を十分に向上させることができる。
【0143】
図9は、本発明の配線回路基板の他の実施形態としての回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(支持側グランド端子を露出させる態様)の拡大断面図、図10は、本発明の配線回路基板の他の実施形態としての回路付サスペンション基板の支持側グランド端子(第2グランド開口部が第1グランド開口部に囲まれる態様)の拡大断面図である。
【0144】
なお、上記した各部に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0145】
図3の実施形態では、グランド端子形成領域75にカバー絶縁層7を設けているが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、カバー絶縁層7を設けることなく、支持側グランド端子59を露出されることもできる。
【0146】
図9の実施形態は、図1の実施形態と同種の作用効果を奏することができる。
【0147】
また、図3の実施形態では、第1グランド開口部78を、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80に囲まれるように形成しているが、例えば、図10に示すように、上記の逆、つまり、第2グランド開口部80が、厚み方向に投影したときに、第1グランド開口部78に囲まれるように、第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5を形成することもできる。
【0148】
図10において、第2ベース絶縁層5は、第1ベース絶縁層3の上面に形成され、第1ベース絶縁層3の第1段差部15から、第1ベース絶縁層3の第1周側面79に沿って落ち込むように形成され、その後、第1ベース絶縁層3の第1グランド開口部78内に突出するように形成されている。具体的には、第1ベース絶縁層3の突出部分93は、第1グランド開口部78の周端部に充填されている。第1ベース絶縁層3の突出部分93は、金属支持層2の上面に形成されており、第2段差部16として形成される。
【0149】
第2段差部16は、金属支持層2の上面に接触している。これにより、グランド層6は、接地(グランド接続)される。
【0150】
次に、図10に示す回路付サスペンション基板1の製造方法を説明する。
【0151】
まず、この方法では、図7(a)が参照されるように、金属支持層2を用意する。
【0152】
次いで、この方法では、図7(b)および図7(c)が参照されるように、第1ベース絶縁層3を金属支持層2の上に、第1グランド開口部78および第1周側面79を有するように形成する。
【0153】
第1グランド開口部78の内径D1は、例えば、20〜200μm、好ましくは、35〜100μmである。
【0154】
次いで、この方法では、図7(d)が参照されるように、導体層4を第1ベース絶縁層3の上に、上記したパターンで形成する。
【0155】
次いで、この方法では、図8(e)および図8(f)が参照されるように、第2ベース絶縁層5を、金属支持層2および第1ベース絶縁層3の上に、突出部分93、第2グランド開口部80および第2周側面81を有する上記したパターンで形成する。
【0156】
第2グランド開口部80の内径D2は、第1グランド開口部78の内径D1に対して、例えば、100%未満、好ましくは、10〜90%であり、具体的には、例えば、10〜100μm、好ましくは、15〜60μmである。
【0157】
次いで、この方法では、図8(g)が参照されるように、グランド層6を上記したパターンで形成する。
【0158】
次いで、この方法では、図2が参照されるように、カバー絶縁層7を上記したパターンで形成する。
【0159】
次いで、この方法では、図6に示すように、金属支持層2を開口して支持開口部73を形成し、続いて、第1ベース絶縁層3を開口して第1ベース開口部76を形成する。
【0160】
その後、必要により、外部側信号端子9の表面に、図示しない金属めっき層を形成し、続いて、金属支持層2を外形加工して、図1に示すように、ジンバル26を形成することにより、回路付サスペンション基板1を得る。
【0161】
図10の回路付サスペンション基板1では、第1グランド開口部78は、厚み方向に投影したときに、第2グランド開口部80を囲んでおり、第2ベース絶縁層3が、第1グランド開口部78の周端部に充填されるので、第1グランド開口部78内において、第2ベース絶縁層5の第2段差部16が形成される。そのため、支持側グランド端子59は、第2グランド開口部80内に、金属支持層2の上面に接触するように充填されると、第2ベース絶縁層5の第2段差部16に接触して密着することができるので、第1グランド開口部78および第2グランド開口部80における第2ベース絶縁層5に対する密着性を向上させることができる。
【0162】
その結果、グランド層の第2ベース絶縁層5に対する密着性を向上させることにより、グランド接続の信頼性を向上させることができる。
【0163】
とりわけ、支持側グランド端子59は、第1ベース絶縁層3に形成されることなく、第2ベース絶縁層5の上面および側面(第2周側面79を含む)に連続して形成されている。つまり、1つのベース絶縁層の表面に連続して形成されている。
【0164】
そのため、図10の支持側グランド端子59は、2つのベース絶縁層(第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5)の表面に形成される図3の支持側グランド端子59に比べて、第1ベース絶縁層3および第2ベース絶縁層5の界面から剥離することがなく、第2ベース絶縁層5に対する密着性をより一層向上させることができる。
【0165】
また、上記した実施形態では、本発明の配線回路基板を、金属支持層2を備える回路付サスペンション基板として例示して説明したが、本発明の配線回路基板は、これに限定されず、例えば、図示しないが、金属支持層2を補強層として備えるフレキシブル配線回路基板として形成することもできる。
【実施例】
【0166】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
【0167】
実施例1
(第1グランド開口部が第2グランド開口部に囲まれる態様:図3)
まず、厚み25μmのステンレス(SUS304)箔からなる金属支持層を用意し(図7(a)参照)、次いで、金属支持層の上面全面に、感光性ポリアミド酸樹脂のワニスを塗布して乾燥することにより、第1ベース皮膜を形成した(図7(b)参照)。
【0168】
続いて、上記したマスクパターンを備える第1階調露光フォトマスクを、第1ベース皮膜の上側に配置し、その後、第1階調露光フォトマスクを介して第1ベース皮膜を露光し、続いて、第1ベース皮膜を現像し、さらに加熱硬化した。これにより、厚み5μmのポリイミドからなる第1ベース絶縁層を形成した(図7(c)参照)。
【0169】
また、第1ベース絶縁層には、内径(D1)60μmの平面視円形状の第1グランド開口部と、傾斜角度(α)1.15の第1周側面(傾斜面)とが形成された。
【0170】
次いで、ベース絶縁層の上に、アディティブ法により、導体層を形成した。
【0171】
具体的には、アディティブ法では、金属支持基板および第1ベース絶縁層の上面全面に、第1金属薄膜として厚み0.03μmのクロム薄膜と厚み0.07μmの銅薄膜とを、クロムスパッタリングと銅スパッタリングとによって順次形成し、次いで、導体層の逆パターンのめっきレジストを、第1金属薄膜の表面に形成した。次いで、めっきレジストから露出する第1金属薄膜の表面に、厚み10μmの導体層を、電解銅めっきにより形成した。次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の第1金属薄膜を、化学エッチングにより除去した(図7(d)参照)。
【0172】
なお、各信号配線の幅は50μmであった。また、各外部側信号端子および各ヘッド側信号端子の幅は280μmであった。
【0173】
次いで、金属支持基板、第1ベース絶縁層および導体層の上面全面に、感光性ポリアミド酸樹脂のワニスを塗布して、乾燥することにより、第2ベース皮膜を形成した(図8(e)参照)。
【0174】
続いて、上記したマスクパターンを備える第2階調フォトマスクを、第2ベース皮膜の上側に配置し、その後、第2階調露光フォトマスクを介して第2ベース皮膜を露光し、続いて、第2ベース皮膜を現像し、さらに加熱硬化した。これにより、厚み5μmのポリイミドからなる第2ベース絶縁層を形成した(図8(f)参照)。
【0175】
第2ベース絶縁層には、第1グランド開口部を囲む、内径(D2)100μmの平面視円形状の第2グランド開口部と、傾斜角度(β)1.15の第2周側面(傾斜面)とが形成された。また、第2ベース絶縁層には、外部側信号端子の上面を露出する第2ベース開口部が形成された(図2参照)。
【0176】
次いで、グランド層を、アディティブ法により形成した。
【0177】
アディティブ法では、金属支持基板、第1ベース絶縁層および第2ベース絶縁層の上面全面に、第2金属薄膜として厚み0.03μmのクロム薄膜と厚み0.07μmの銅薄膜とを、クロムスパッタリングと銅スパッタリングとによって順次形成し、次いで、グランド層の逆パターンのめっきレジストを、第2金属薄膜の表面に形成した。次いで、めっきレジストから露出する第2金属薄膜の表面に、厚み10μmのグランド層を、電解銅めっきにより形成した。次いで、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の第2金属薄膜を、化学エッチングにより除去した(図8(g)参照)。
【0178】
支持側グランド端子は、第2グランド開口部を含む外径160μmの円形状に形成されており、その中央が、第1グランド開口部内に、金属支持層の上面に接触するように充填されていた(図3参照)。
【0179】
次いで、金属支持層、第2ベース絶縁層およびグランド層の上面全面に、感光性ポリアミド酸樹脂のワニスを塗布し、乾燥後、露光および現像し、さらに加熱硬化することにより、カバー開口部が形成されるパターンで、厚み5μmのポリイミドからなるカバー絶縁層を形成した(図8(h)参照)。
【0180】
次いで、金属支持層を、化学エッチングにより開口して支持開口部を形成し(図1参照)、続いて、第1ベース絶縁層を、プラズマエッチングにより開口してベース開口部を形成することにより、外部側信号端子をフライングリードとした。
【0181】
その後、金属支持層を外形加工して、ジンバルを形成することにより、回路付サスペンション基板を得た(図1参照)。
【0182】
実施例2
(第2グランド開口部が第1グランド開口部に囲まれる態様:図10)
第1ベース絶縁層の形成において、第1グランド開口部の内径(D1)を100μmに変更し、第2ベース絶縁層の形成において、第2グランド開口部の内径(D2)を60μmに変更するとともに、第2グランド開口部を、第1グランド開口部に囲まれるように、形成した以外は、実施例1と同様にして、回路付サスペンション基板を得た(図1参照)。
【0183】
比較例1
第2ベース絶縁層の形成において、第2グランド開口部の内径(D2)を60μmに変更した、つまり、第1グランド開口部の内径(D1)と第2グランド開口部の内径(D2)とを同径(60μm)とし、それらが互いに重複するように形成した以外は、実施例1と同様にして、回路付サスペンション基板を得た(図10参照)。
【0184】
(評価)
(密着性)
実施例1、2および比較例1の支持側グランド端子の第1ベース絶縁層および第2ベース絶縁層に対する密着性を以下のようにして評価した。
【0185】
すなわち、熱衝撃試験による導通抵抗値変化率を確認することにより、密着性を評価した。
【0186】
その結果、実施例1および2の支持側グランド端子は、比較例1の支持側グランド端子に比べて、第1ベース絶縁層および第2ベース絶縁層に対する密着性が向上していることが確認された。
【符号の説明】
【0187】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持層
3 第1ベース絶縁層
4 導体層
5 第2ベース絶縁層
6 グランド層
14 第1階調フォトマスク
22 第2階調フォトマスク
78 第1グランド開口部
79 第1周側面
80 第2グランド開口部
81 第2周側面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層と、
前記金属支持層の上に形成される第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に形成される導体層と、
前記第1絶縁層の上に、前記導体層を被覆するように形成される第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上に形成されるグランド層と
を備え、
前記第1絶縁層には、厚み方向を貫通する第1開口部が形成され、
前記第2絶縁層には、前記厚み方向を貫通して、前記第1開口部に対応する第2開口部が形成されており、
前記第1開口部は、前記厚み方向に投影したときに、前記第2開口部に囲まれており、前記グランド層が、前記第2開口部を介して、前記第1開口部内に、前記金属支持層の上面に接触するように充填されているか、あるいは、
前記第1開口部は、前記厚み方向に投影したときに、前記第2開口部を囲んでおり、前記第2絶縁層は、前記第1開口部の周端部に充填され、前記グランド層が、前記第2開口部内に、前記金属支持層の上面に接触するように充填されている
ことを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1絶縁層における前記第1開口部の周側面が、厚み方向に対して傾斜して形成され、および/または、
前記第2絶縁層における前記第2開口部の周側面が、厚み方向に対して傾斜して形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層は、感光性樹脂から形成されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層は、前記感光性樹脂をフォトマスクを介して露光することにより、形成されている
ことを特徴とする、請求項3に記載の配線回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−93506(P2013−93506A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235859(P2011−235859)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】