説明

配線基板、配線基板の製造方法、及びビアペースト

【課題】電気的接続の高い信頼性を有するビアホール導体により層間接続された、Pbフリーのニーズに対応することができる配線基板を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁樹脂層13を介して配設された複数の配線12と、複数の配線12同士を電気的に接続するビアホール導体14とを有する配線基板であって、ビアホール導体14は、金属部分15と樹脂部分16とを含み、金属部分15は、銅粒子17、錫,錫-銅合金、錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域18、ビスマスを主成分とする第2金属領域19とを含み、Cu/Snが、1.59〜21.43であり、銅粒子17は、それらが互いに接触することにより複数の配線12同士を電気的に接続しており、第1金属領域18の少なくとも一部が、銅粒子17同士の接触している部分の周囲を覆っている配線基板11を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂層を介して配された複数の配線同士が電気的に層間接続されてなる多層配線基板に関する。詳しくは、多層配線を層間接続するためのビアホール導体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁樹脂層を介して配された配線同士を層間接続して得られる多層配線基板が知られている。このような層間接続の方法として、絶縁樹脂層に形成された孔に導電性ペーストを充填して形成されるようなビアホール導体が知られている。また、導電性ペーストの代わりに、Cuを含有する金属粒子を充填し、これらの金属粒子同士を金属間化合物で固定したものも知られている。
【0003】
具体的には、例えば、下記特許文献1は、CuSn化合物のマトリクス中に複数のCu粒子からなるドメインを点在させてなるマトリクスドメイン構造を有するビアホール導体を開示している。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2は、Cuを含む高融点粒子相材料と錫または錫合金等の金属から選ばれる低融点材料とを含む、ビアホール導体の形成に用いられる焼結性組成物を開示している。このような焼結性組成物は、液相または過渡的(transient)液相の存在下で焼結される組成物である。
【0005】
また、例えば、下記特許文献3は、Sn−Bi系金属粒子と銅粒子を含む導電性ペーストをSn−Bi系金属粒子の融点以上の温度で加熱することにより銅粒子の外周に固相温度250℃以上の合金層を形成させたビアホール導体用材料が開示されている。このようなビアホール導体用材料は、固相温度250℃以上の合金層同士の接合により層間接続が行われるために、ヒートサイクル試験や耐リフロー試験でも合金層が溶融しないために高接続信頼性を得ることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−49460号公報
【特許文献2】特開平10−7933号公報
【特許文献3】特開2002−94242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたビアホール導体について図15を参照して詳しく説明する。図15は、特許文献1に開示された配線基板のビアホール部分の模式断面図である。
【0008】
図15の配線基板の模式断面図においては、配線基板表面に形成された配線1にビアホール導体2が接している。ビアホール導体2は、金属間化合物であるCu3Sn、Cu6Sn5を含むマトリクス4と、マトリクス4中にドメインとして点在する銅含有粉末3を含む。このビアホール導体2においては、Sn/(Cu+Sn)で表される重量比を0.25〜0.75の範囲にすることにより、マトリクスドメイン構造を形成している。しかしながら、このようなビアホール導体2においては、熱衝撃試験においてボイドやクラック(図15中の5)が発生しやすいという問題があった。
【0009】
このようなボイドやクラックは、例えば熱衝撃試験やリフロー処理においてビアホール導体2が熱を受けた場合に、Sn−Bi系金属粒子にCuが拡散してCu3Sn、Cu6Sn5等のCuSn化合物を生成することに起因する亀裂に相当する。またこのようなボイドは、CuとSnとの界面に形成されたCu−Snの拡散接合部に含有されたCuとSnとの金属間化合物であるCu3Snが、各種信頼性試験の際の加熱により、Cu6Sn5に変化することにより、ビアホール導体2に内部応力が発生することにも起因する。
【0010】
また、特許文献2に開示された焼結性組成物は、例えば、プリプレグをラミネートするための加熱プレス時において発生する、過渡的(transient)液相の存在下または不存在下で焼結される組成物である。このような焼結性組成物は、Cu、Sn、およびPbを含むものであり、加熱プレス時の温度も180℃から325℃と高い温度になるために、一般のガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させてなる絶縁樹脂層(ガラスエポキシ樹脂層と呼ばれることもある)に対応させることは困難であった。また市場から求められている、Pbフリー化に対応することも困難であった。
【0011】
また、特許文献3に開示されたビアホール導体用材料においては、銅粒子の表層に形成される合金層は抵抗値が高い。そのために、Cu粒子や銀(Ag)粉等を含有する一般的な導電性ペーストのようにCu粒子間やAg粒子間の接触のみで得られる接続抵抗値と比較して高抵抗値となるという問題があった。
【0012】
本発明は、高い接続信頼性を有する低抵抗のビアホール導体により層間接続された、Pbフリーのニーズに対応することができる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面である配線基板は、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、絶縁樹脂層を貫通するように設けられた複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体と、を有する配線基板であって、ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを含み、金属部分は、銅(Cu)粒子、錫(Sn),錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域、及びビスマス(Bi)を主成分とする第2金属領域とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であり、銅粒子は、それらが互いに接触することにより複数の配線同士を電気的に接続しており、第1金属領域の少なくとも一部が、銅粒子同士の接触している部分を跨ぐようにその周囲を覆っていることを特徴とする。
【0014】
また本発明の他の一局面である配線基板の製造方法は、保護フィルムで被覆された未硬化状態または半硬化状態のプリプレグに、保護フィルムの外側から穿孔することにより貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔にビアペーストを充填する充填工程と、充填工程の後、保護フィルムを剥離することにより、貫通孔からビアペーストの一部が突出して形成される突出部を表出させる剥離工程と、突出部を覆うように、プリプレグの表面に金属箔を配置する配置工程と、金属箔をプリプレグの表面に圧着する圧着工程と、圧着工程の後、所定の温度で加熱する加熱工程と、を備え、ビアペーストが、Cu粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であり、圧着工程において、突出部を通じてビアペーストを圧縮することにより、Cu粒子同士を接触させて、互いに電気的に接続し、加熱工程において、Sn−Bi系半田粒子の融点以上の温度で加熱する、ことを特徴とする。
【0015】
また本発明の他の一局面であるビアペーストは、Cu粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であることを特徴とする。
【0016】
本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付する図面により、より明白となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多層配線基板のビアホール導体に含有される銅粒子同士が互いに接触して低抵抗の導通路を形成することにより、抵抗値の低い層間接続を実現することができる。また、銅粒子同士が互いに接触している部分が、銅粒子よりも硬い、錫,錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域で覆われていることにより補強されている。これにより、電気的接続の信頼性が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)は、実施形態の多層配線基板11の模式断面図であり、図1(B)は、図1(A)におけるビアホール導体14付近の拡大模式断面図を示す。
【図2】図2は、多数の銅粒子17が接触することにより形成された一つの導通路23に着目して説明するための説明図である。
【図3】図3は、Cu/Snが1.59より小さい場合におけるビアホール導体の一例を示す、模式断面図である。
【図4】図4は、多層配線基板の製造方法の一例を説明するための工程断面図を示す。
【図5】図5は、多層配線基板の製造方法の一例を説明するための図4の続きの工程を示す。
【図6】図6は、配線基板の多層化を説明するための模式断面図を示す。
【図7】図7は実施形態における、プリプレグの貫通孔に充填されたビアペーストを圧縮するときの様子を説明するための断面模式図である。
【図8】図8は、実施例で得られたビアホール導体におけるCu/Snの重量比率に対する抵抗値(1via/mΩ)を示すグラフである。
【図9】図9(A)は、実施例で得られた多層配線基板のビア導体の断面の3000倍の電子顕微鏡(SEM)写真、図9(B)はそのトレース図を示す。
【図10】図10(A)は、実施例で得られた多層配線基板のビア導体の断面の6000倍のSEM写真、図10(B)はそのトレース図を示す。
【図11】図11(A)は、実施例で得られた多層配線基板のビア導体の断面のSEM写真、図11(B)はそのトレース図を示す。
【図12】図12(A)は、図11のSEM像のCu元素のマッピングを行ったときの像、図12(B)はそのトレース図を示す。
【図13】図13(A)は、図11のSEM像のSn元素のマッピングを行ったときの像、図13(B)はそのトレース図を示す。
【図14】図14(A)は、図11のSEM像のBi元素のマッピングを行ったときの像、図14(B)はそのトレース図を示す。
【図15】図15は、従来のビア導体の断面を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0020】
図1(A)は、本発明に係る多層配線基板11の模式断面図である。また、図1(B)は、図1(A)におけるビアホール導体14付近の拡大模式断面図である。
【0021】
多層配線基板11は、銅箔等の金属箔から形成された複数の配線12が、絶縁樹脂層13を貫通するビアホール導体14により電気的に層間接続されている。
【0022】
図1(B)は、ビアホール導体14付近の拡大模式断面図である。図1(B)中、12は配線、13は絶縁樹脂層、14はビアホール導体である。そして、ビアホール導体14は、金属部分15と樹脂部分16とを含む。金属部分15は、多数のCu粒子17と、錫,錫-銅合金,及び/又は錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域18と、Biを主成分とする第2金属領域19とを含む。また、Cu粒子17の少なくとも一部は、それらが互いに接触して低抵抗の導通路を形成することにより、上層の配線12(12a)と下層の配線12(12b)とを電気的に接続している。
【0023】
Cu粒子17の平均粒径は0.1〜20μm、さらには、1〜10μmの範囲であることが好ましい。Cu粒子17の平均粒径が小さすぎる場合には、ビアホール導体14中において、接触点が多くなるため、導通抵抗が大きくなる。また、このような粒径の粒子は高価である傾向がある。一方、Cu粒子17の平均粒径が大きすぎる場合には、100〜150μmφのように径の小さいビアホール導体14を形成しようとした場合に、充填率を高めにくくなる傾向がある。
【0024】
Cu粒子17の純度は、ビアホール導体14の抵抗値を充分に低下させ、また、複数のCu粒子17同士が接触する部分において容易に変形することを可能にするために、90質量%以上、さらには99質量%以上であることが好ましい。なお、Cu粒子17は純度が高いほど柔らかくなる。従って、純度が高い場合には、後述する加圧工程において押し潰されやすくなるために、Cu粒子17同士の接触面積が大きくなりやすい点から好ましい。
【0025】
なお、Cu粒子17の平均粒径や、Cu粒子17同士の接触部20は、形成された配線基板を樹脂埋めした後、ビアホール導体の断面を研磨(必要に応じてFOCUSED ION BEAM等の微細加工手段も使って)して作成した試料を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより確認及び測定される。
【0026】
多数のCu粒子17は、互いに接触しており、配線12aと配線12bとの間に低抵抗の導通路を形成する。従って、配線12aと配線12bとの接続抵抗を低くすることができる。
【0027】
なお、ビアホール導体14においては、図1(B)に示すように、多数のCu粒子17が整然と整列することなくランダムに接触することにより、複雑なネットワークを有するように低抵抗の導通路が形成されている。このようなネットワークを形成することにより電気的接続の信頼性を高めることができる。また、多数のCu粒子17同士が接触する位置はランダムである。ランダムな位置でCu粒子17同士を接触させることにより、熱を受けたときにビアホール導体14の内部で発生する応力や、外部から付与される外力をその変形により分散させることができる。
【0028】
ビアホール導体中に含有されるCu粒子17の体積割合としては、30〜90体積%、さらには、40〜70体積%であることが好ましい。Cu粒子の体積割合が低すぎる場合には、多数のCu粒子により形成された導通路による電気的接続の信頼性が低下する傾向があり、高すぎる場合には、抵抗値が信頼性試験で変動しやすくなる傾向がある。
【0029】
図1(B)に示すように、錫(Sn),錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域18の少なくとも一部は、銅粒子同士の接触している部分をその周囲を跨ぐように覆っている。このように、銅粒子同士の接触している部分の周囲を第1金属領域18で覆うような構造を形成させることにより、その接触部20が補強される。
【0030】
第1金属領域18は、錫,錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分として含有する。具体的には、例えば、Sn単体,Cu6Sn5,Cu3Sn等を主成分として含む。また、残余の成分としては、BiやCu等の他の金属元素を本発明の効果を損なわない範囲、具体的には、例えば、10質量%以下の範囲で含んでもよい。
【0031】
また、金属部分15においては、図1(B)に示すように、Biを主成分とする第2金属領域19が、Cu粒子17とは接触せず、第1金属領域18と接触するように存在している。ビアホール導体14においては、第2金属領域19がCu粒子17とは接しないように存在するために、ビアホール導体14に対する上述のような電気的影響を抑制することができる。
【0032】
第2金属領域は、Biを主成分として含有する。また、残余の成分としては、BiとSnとの合金または金属間化合物等を本発明の効果を損なわない範囲、具体的には、例えば、20質量%以下の範囲で含んでもよい。
【0033】
なお、第1金属領域と第2金属領域とは互いに接しているために、通常、何れもBi及びSnの両方を含む。この場合において、第1金属領域は第2金属領域よりもSnの濃度が高く、第2金属領域は第1金属領域よりもBiの濃度が高い。また、第1金属領域と第2金属領域との界面は、明確であるよりも、不明確であるほうが好ましい。界面が不明確である場合には、熱衝撃試験等の加熱条件においても界面に応力が集中することを抑制することができる。
【0034】
ビアホール導体14を構成する金属部分は、銅粒子17、錫,錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域18、及びビスマスを主成分とする第2金属領域19とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲である。このCu/Sn比の意義については後に詳述する。
【0035】
一方、ビアホール導体14を構成する樹脂部分16は、硬化性樹脂の硬化物からなる。硬化性樹脂は特に限定されないが、具体的には、例えば、耐熱性に優れ、また、線膨張率が低い点からエポキシ樹脂の硬化物がとくに好ましい。
【0036】
ビアホール導体中の樹脂部分16の体積割合としては、0.1〜50体積%、さらには、0.5〜40体積%であることが好ましい。樹脂部分16の体積割合が高すぎる場合には、抵抗値が高くなる傾向があり、低すぎる場合には、製造時に導電性ペーストの調製が困難になる傾向がある。
【0037】
次に、多層配線基板11におけるビアホール導体14の作用について、図2を参照して模式的に説明する。
図2は、多数のCu粒子17同士が接触することにより形成された一つの導通路23に着目して説明する説明図である。また、便宜上、樹脂成分16は表示していない。さらに、21はビアホール導体14の作用の説明に用いるために示した仮想のばねである。
図2に示すように、導通路は多数のCu粒子17同士が互いにランダムに接触することにより形成され、配線12aと配線12bとを電気的に層間接続している。そして、多数のCu粒子17が接触している接触部20においては、接触部20の周囲を被覆し、且つ接触部20を跨ぐように第1金属領域18が形成されている。
【0038】
多層配線基板11の内部に内部応力が発生した場合、多層配線基板11の内部には矢印22aに示すように外向きに力が掛かる。このような内部応力は、例えば、半田リフロー時や熱衝撃試験の際に、各要素を構成する材料の熱膨張係数の違いによって発生する。
【0039】
このような外向きの力は、柔軟性の高いCu粒子17自身が変形するとともに、Cu粒子17同士の接触位置が多少ずれることにより緩和される。このとき、第1金属領域18の硬さは、Cu粒子17の硬さよりも硬いために、接触部20の変形に抵抗しようとする。従って、Cu粒子17間の接触部20が変形に無制限に追従しようとした場合には、第1金属領域18がある程度の範囲で変形を規制するために、Cu粒子間の接触部20が離間するまでは変形しない。これは、Cu粒子17が接触して形成する導通路をばねに喩えた場合、導通路にある程度の力が掛かった場合には、ある程度まではばねが伸びるがごとく変形に追従するが、さらに変形が大きくなりそうな場合には、硬い第1金属領域18により変形が規制される。このことは、多層配線基板11に、矢印22bに示すような内向きの力が掛かった場合にも同様の作用を奏する。このように、導通路があたかもばね21のように外力及び内力のいずれの方向の力に対しても、力を緩和するように作用することにより、電気的接続の信頼性を確保することができる。
【0040】
次に、上述したような多層配線基板の製造方法の一例を説明するために、各製造工程について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0041】
本実施形態の製造方法においては、はじめに、図4(A)に示すように、未硬化または半硬化状態(Bステージ)のプリプレグ25の両面に保護フィルム26が貼り合わされる。
【0042】
プリプレグとしては、繊維基材に樹脂ワニスを含浸させた後、乾燥させることにより得られる、未硬化状態または半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグが好ましく用いられる。繊維基材は織布でも不織布でもよい。その具体例としては、例えば、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等のガラス繊維布のほか、例えば、クラフト紙、リンター紙、天然繊維布、アラミド繊維を含む有機繊維布等が挙げられる。また、樹脂ワニスに含有される樹脂成分としては、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、樹脂ワニスは、さらに、無機充填材等を含んでもよい。
【0043】
保護フィルムとしては、各種樹脂フィルムが用いられる。その具体例としては、例えば、PET(ポリエチレンフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの厚みとしては0.5〜50μm、さらには、1〜30μmであることが好ましい。このような厚みの場合には、後述するように、保護フィルムの剥離により、充分な高さのビアペーストからなる突出部を表出させることができる。
【0044】
プリプレグに保護フィルムを貼り合わせる方法としては、プリプレグ表面にタック性がある場合にはそのタック性により貼り合わせることができる。
【0045】
次に、図4(B)に示すように、保護フィルム26が配されたプリプレグ25に保護フィルム26の外側から穿孔することにより、貫通孔27を形成する。穿孔には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等の非接触による加工方法の他、ドリルを用いた穴あけ等各種方法が用いられる。貫通孔の直径としては10〜500μm、さらには50〜300μm程度が挙げられる。
【0046】
次に、図4(C)に示すように、貫通孔27の中にビアペースト28を満充填する。
ビアペースト28は、Cu粒子と、SnとBiとを含有するSn−Bi系半田粒子と、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂成分を含有する。
Cu粒子の平均粒径は、0.1〜20μm、さらには、1〜10μmの範囲であることが好ましい。Cu粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、貫通孔27中に高充填しにくくなり、また、高価である傾向がある。一方、Cu粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、径の小さいビアホール導体14を形成しようとした場合に充填しにくくなる傾向がある。
【0047】
また、Cu粒子の粒子形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、球状、扁平状、多角状、麟片状、フレーク状、あるいは表面に突起を有するような形状等が挙げられる。また、一次粒子でもよいし、二次粒子を形成していてもよい。
【0048】
Sn−Bi系半田粒子は、SnとBiとを含有する半田粒子であれば特に限定されない。Sn−Bi系半田粒子は、構成比を変化させたり各種元素を添加することにより、その共晶点を138℃〜232℃程度にまで変化させることができる。さらに、インジウム(In)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)等を添加することにより、濡れ性、流動性等を改善させることもできる。これらの中では、共晶点が138℃と低い、環境問題に考慮した鉛フリー半田である、Sn−58Bi系半田等が特に好ましい。
Sn−Bi系半田粒子の平均粒径は0.1〜20μm、さらには、2〜15μmの範囲であることが好ましい。Sn−Bi系半田粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、比表面積が大きくなり表面の酸化皮膜割合が大きくなり溶融しにくくなる傾向がある。一方、Sn−Bi系半田粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、ビアホールヘの充填性が悪くなる傾向がある。
【0049】
好ましい硬化性樹脂成分であるエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、またはその他変性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0050】
また、エポキシ樹脂と組み合わせて硬化剤を配合してもよい。硬化剤の種類はとくに限定されないが、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を持つアミン化合物を含有する硬化剤を用いることが特に好ましい。このような硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化触媒として作用するとともに、Cu粒子、及びSn−Bi系半田粒子の表面に存在する酸化皮膜を還元することにより、接合時の接触抵抗を低減させる作用も有する点から好ましい。これらの中でも、とくにSn−Bi系半田粒子の融点よりも高い沸点を有するアミン化合物は、接合時の接触抵抗を低減させる作用がとくに高い点から好ましい。
【0051】
アミン化合物の具体例としては、例えば、2-メチルアミノエタノール(沸点160℃)、N,Nジエチルエタノールアミン(沸点162℃)、N,Nジブチルエタノールアミン(沸点229℃)、Nメチルエタノールアミン(沸点160℃)、Nメチルジエタノールアミン(沸点247℃)、Nエチルエタノールアミン(沸点169℃)、Nブチルエタノールアミン(沸点195℃)、ジイソプロパノールアミン(沸点249℃)、N,Nジエチルイソプロパノールアミン(沸点125.8℃)、2,2'-ジメチルアミノエタノール(沸点135℃)、トリエタノールアミン等(沸点208℃)が挙げられる。
【0052】
ビアペーストは、Cu粒子と、SnとBiとを含有するSn−Bi系半田粒子と、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂成分とを混合することにより調製される。具体的には、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤と所定量の有機溶媒を含有する樹脂ワニスに、Cu粒子及びSn−Bi系半田粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混合することにより調製される。
【0053】
硬化性樹脂成分の、Cu粒子及びSn−Bi系半田粒子を含む金属成分との合計量に対する配合割合としては、0.3〜30質量%、さらには3〜20質量%の範囲であることが低い抵抗値を得るとともに、充分な加工性を確保する点から好ましい。
【0054】
また、金属成分中のCu粒子の含有割合としては、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲になるように含有させることが必要である。この理由は後に詳述する。従って、例えば、Sn−Bi系半田粒子としてSn−58Bi系半田粒子を用いた場合には、Cu粒子及びSn−58Bi系半田粒子の合計量に対するCu粒子の含有割合は、40〜90質量%、さらには、55.8〜65.5質量%であることが好ましい。
【0055】
ビアペーストの充填方法はとくに限定されない。具体的には、例えば、スクリーン印刷などの方法が用いられる。なお、本実施形態の製造方法においては、貫通孔にビアペーストを充填する場合においては、充填工程の後に、保護フィルムを剥離したときに、ビアペーストの一部がプリプレグに形成された貫通孔から突出して突出部が表出するように、プリプレグに形成された貫通孔からはみ出す量を充填する必要がある。
【0056】
次に、図4(D)に示すように、プリプレグ25の表面から保護フィルム26を剥離することにより、ビアペースト28の一部をプリプレグ25に形成された貫通孔から突出部29として突出させる。突出部29の高さhは、保護フィルムの厚みにもよるが、例えば、0.5〜50μm、さらには、1〜30μmであることが好ましい。突出部の高さが高すぎる場合には、後述する圧着工程において貫通孔の周囲のプリプレグにペーストが圧し広がる可能性があるために好ましくなく、低すぎる場合には、後述する圧着工程において充填されたビアペーストに圧力が充分に伝わらなくなる傾向がある。
【0057】
次に、図5(A)に示すように、プリプレグ25の上にCu箔30を配置し、矢印で示す方向にプレスする。それにより、図5(B)に示すようにプリプレグ25とCu箔30とを一体化させる。この場合においては、プレスの当初に、銅箔30を介して突出部29に力が掛かるためにプリプレグ25の貫通孔に充填されたビアペースト28が高い力で圧縮される。それにより、ビアペースト28中に含まれる複数のCu粒子17同士の間隔が狭められ、Cu粒子17同士が接触する。
【0058】
プレス条件はとくに限定されないが、常温(20℃)からSn−Bi系半田粒子の融点未満の温度に金型温度が設定された条件が好ましい。また、本プレス工程において、プリプレグの硬化を進行させるために、硬化を進行させるのに必要な温度に加熱した加熱プレスを用いてもよい。
【0059】
ここで、プリプレグ25の貫通孔に充填された突出部29を有するビアペースト28を圧縮するときの様子について、図7を用いて詳しく説明する。
【0060】
図7は、ビアペースト28が充填されたプリプレグ25の貫通孔周辺の模式断面図である。また、図7(A)は圧縮前、図7(B)は圧縮後を示している。
【0061】
図7(A)に示すように、プリプレグ25に形成された貫通孔から突出した突出部29をCu箔30を介して押圧することにより、図7(B)のように貫通孔に充填されたビアペースト28が圧縮される。その圧縮の際の加圧により、硬化性樹脂成分32の一部はプリプレグ25の中に浸透する。そして、その結果、貫通孔に充填されたCu粒子17及びSn−Bi系半田粒子31の密度が高くなる。
【0062】
そして、このように高密度化されたCu粒子17同士は互いに接触する。圧縮においては、当初はCu粒子17同士は互いに点接触し、その後、圧力が増加するにつれて点接触部が変形して広がり、面接触する。このように、多数のCu粒子17同士を面接触させることにより、上層の配線12aと下層の配線12bとを低抵抗な状態で電気的に接続することができる。すなわち、この工程によれば、Cu粒子17の表面全体がSn−Bi系半田粒子31で覆われることがなく、Cu粒子17が互いに接触する部分を形成することができる。その結果、形成される導通路の電気抵抗を小さくすることができるとともに、後の加熱工程でSn−Bi系半田粒子31を溶融することにより、Cu粒子同士の接触部20を跨ぐようにその表面を第1金属領域18で被覆して、弾性に優れた導通路を形成することができる。
【0063】
次に、圧縮後のビアペースト28をSn−Bi系半田粒子31の融点以上の温度で加熱する。この加熱によりSn−Bi系半田粒子31が溶融する。そして、Cu粒子17の周囲に、錫,錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域18が形成される。この場合において、Cu粒子17同士が接触している部分はこの部分を跨ぐようにして第1金属領域18により覆われる。詳しくは、Cu粒子17と溶融したSn−Bi系半田粒子31が接触することにより、Sn−Bi系半田粒子31中のSnとCu粒子17中のCuとが反応して、Cu6Sn5やCu3Snを含む金属間化合物や錫-銅合金を主成分とする第1金属領域18が形成される。一方、Sn−Bi系半田粒子31に含まれる残されたBiはSnから分離して析出することにより、ビスマス(Bi)を主成分とする第2金属領域19が形成される。
【0064】
よく知られている比較的低温域で溶融する半田材料としては、Sn−Pb系半田、Sn−In系半田、Sn−Bi系半田などがある。これらの材料のうち、Inは高価であり、Pbは環境負荷が高いとされている。
一方、Sn−Bi系半田の融点は、電子部品を表面実装する際の一般的な半田リフロー温度よりも低い140℃以下である。従って、Sn−Bi系半田のみを回路基板のビアホール導体として単体で用いた場合には、半田リフロー時にビアホール導体の半田が再溶融することによりビア抵抗が変動してしまうおそれがある。一方、本実施形態のビアペーストを用いた場合には、Sn−Bi系半田粒子のSnがCu粒子の表面と反応することによりSn−Bi系半田粒子からSn濃度が減少し、一方で、加熱冷却工程を経ることによりBiが析出してBi相が生成される。そして、このようにBi相を析出させて存在させることにより、半田リフローに供してもビアホール導体の半田が再溶融しにくくなる。その結果、半田リフロー後でも、抵抗値の変動が起こりにくくなる。
【0065】
圧縮後のビアペースト28を加熱する温度は、Sn−Bi系半田粒子31の融点以上の温度であり、プリプレグ25の構成成分を分解しないような温度範囲であればとくに限定されない。具体的には、例えば、Sn−Bi系半田粒子としてSn−58Bi系半田粒子を用いる場合には、150〜250℃、さらには160〜230℃程度の範囲であることが好ましい。なお、このときに温度を適切に選択することにより、ビアペースト28中に含まれる硬化性樹脂成分を硬化させることができる。
【0066】
このようにして、上層の配線12aと下層の配線12bとを層間接続するためのビアホール導体が形成される。
【0067】
本実施形態における、ビアペースト28中に含まれる金属成分中のCu粒子の含有割合は、先述したようにCuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲になるように含有させることが必要である。この理由を以下に説明する。
【0068】
図3は、Cu/Snが1.59より小さい場合におけるビアホール導体の一例を示す、模式断面図である。
【0069】
図3に示すように、Cu/Snの比が1.59より小さい場合、ビアホール導体中のCuの割合が少なくなり、多数のCu粒子17同士が互いに接触しにくくなり、Cu粒子17が金属化合物4からなるマトリクス中に点在することになる。この結果、多数のCu粒子17が硬い金属化合物4により硬く束縛されてしまうために、ビアホール導体自身もバネ性が無い硬い状態になる。Cu粒子17に比べ、Cu6Sn5、Cu3Snのような金属間化合物4は硬く、変形しにくい。発明者らの調査によると、ビッカース硬度はCu6Sn5で約378Kg/mm2、Cu3Snで約343Kg/mm2であり、Cuの117Kg/mm2よりも著しく高い。
【0070】
そして、Cu粒子17と金属間化合物4では、互いの熱膨張係数が異なるため、半田リフロー時に、この熱膨張係数の違いによる内部応力が発生し、その結果クラックやボイド24が発生しやすくなる。
【0071】
また、Cu/Snの重量比が1.59より小さい場合には、さらにボイドが発生しやすくなる。このようなボイドの発生原因の重要な要因としては、SnとCuとの接触拡散によるカーケンダル効果(Kirkendall effect)によるカーケンダルボイドが挙げられる。カーケンダルボイドは、Cu粒子の表面とCu粒子同士の隙間に充填されたSnまたはSnを含む合金との界面に発生しやすい。
【0072】
図3に示すようにCu粒子17と金属間化合物4の界面にボイドやクラックが存在する場合、ボイドやクラックが伝播して広がりやすくなる傾向がある。カーケンダルボイドが発生したときにはカーケンダルボイドも伝播して広がりやすくなる傾向がある。とくにビアホール導体の径が小さい場合、クラックやボイドは、金属間化合物4の凝集破壊や、更にはビアホール導体2の断線の発生原因となりやすい。
そして、これら凝集破壊や界面破壊が、ビアホール導体3の内部に発生した場合、ビア部分の電気抵抗が増加し、ビア部分の信頼性に影響を与える。
【0073】
一方、Cu/Snの比が1.59以上の場合について、図1(B)及び図2を参照しながら模式的に説明する。
図1(B)に示すように、Cu/Snの比が1.59以上の場合、金属部分15に含まれる第1金属領域18は、多数のCu粒子17同士が接触する部分を物理的に保護するように存在している。図2に示す矢印22a、22bは、ビアホール導体2に加えられた外力や、ビアホール導体2に発生した内部応力を示す。ビアホール導体に矢印22aに示すような外力や内部応力22bが掛かった場合、柔軟なCu粒子17が変形することにより力が緩和される。また、例え、第1金属領域18にクラックが発生したとしても、多数のCu粒子17同士が接触することにより形成される導通路は確保されるために電気的特性や信頼性に大きな影響を与えない。なお、図1(B)に示すように、金属部分15全体は硬化性樹脂成分16で弾性的に保護されているために、変形はさらに一定の範囲で抑えられる。従って、凝集破壊や界面破壊が発生しにくくなる。
【0074】
またCu/Snが1.59以上である場合には、Cu粒子同士の接触部を跨ぐように、それらの表面に第一領域が形成される。すなわち、Cu/Snが1.59以上の場合には、カーゲンドールボイドは、Cu粒子同士の隙間に充填されたSn−Bi系半田粒子の内部やその界面に発生するのではなく、銅粒子同士の接触部の周囲を跨ぐように覆っている第1金属領域に発生しやすくなる。第1金属領域に発生したカーゲンドールボイドは、ビアホール導体の信頼性や電気特性に影響を与えにくい。電気的導通はCu粒子同士の接触により充分に確保されているためである。
【0075】
次に、図5(C)に示すように、配線12を形成する。配線12は、表層に貼り合わされたCu箔30の表面にフォトレジスト膜を形成し、フォトマスクを介して選択的露光することによりパターニングした後、現像を行い、エッチングにより配線部以外のCu箔を選択的に除去した後、フォトレジスト膜を除去すること等により形成されうる。フォトレジスト膜の形成には、液状のレジストを用いてもドライフィルムを用いてもよい。
このような工程により、上層の配線12aと下層の配線12bとをビアホール導体14を介して層間接続した両面に回路形成された配線基板41が得られる。このような配線基板41をさらに、多層化することにより複数層の回路が層間接続された多層配線基板11が得られる。配線基板41のさらなる多層化の方法について図6を参照して説明する。
【0076】
はじめに、図6(A)に示すように、上述のようにして得られた配線基板41の両表面に、図4(D)で得られたのと同様のビアペースト28からなる突出部29を有するプリプレグ25を配置する。さらに、各プリプレグ25の外表面それぞれにCu箔30を配置して重ね合わせ体を形成させる。そして、この重ね合わせ体をプレス金型に挟み込み、上述したような条件でプレス及び加熱することにより、図6(B)に示すような積層体が得られる。そして、上述したようなフォトプロセスを用いることにより新たな配線42が形成される。このようにして、さらに多層化を図ることができる。このような多層化プロセスを繰り返すことにより、さらなる多層化が可能である。
【0077】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は本実施例の内容により何ら限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0078】
はじめに、本実施例で用いた原材料を以下にまとめて説明する。
・Cu粒子:平均粒子径5μmの三井金属(株)製1100Y
・Sn−Bi系半田粒子:Sn42-Bi58、平均粒子径 5μm、融点138℃、山石金属(株)製
・エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)製jeR871
・硬化剤1:2-メチルアミノエタノール、沸点160℃、日本乳化剤(株)製
・硬化剤2:アミンアダクト系硬化剤(固形物)、融点120〜140℃、味の素ファインテクノ(株)製
・硬化剤3:2,2'-ジメチルアミノエタノール、沸点135℃
・プリプレグ:縦500mm×横500mm、厚100μm、ガラス繊維基材にエポキシ樹脂を含浸させたもの)
・保護フィルム:厚み25μmのPET製シート)
・銅箔(厚み25μm)
【0079】
(ビアペーストの調整)
表1に記載した配合割合でCu粒子、Sn−Bi系半田粒子、エポキシ樹脂、硬化剤を配合し、プラネタリーミキサーで混合することにより、ビアペーストを調製した。
【0080】
(配線基板の製造)
プリプレグの両表面に保護フィルムを貼り合わせた。そして、保護フィルムを貼り合わせたプリプレグの外側からレーザーにより直径150μmの孔を100個以上穿孔した。
次に、調製されたビアペーストを貫通孔に満充填した。そして、両表面の保護フィルムを剥離することにより、貫通孔からビアペーストの一部が突出して形成された突出部を表出させた。
次に、プリプレグの両表面に、突出部を覆うようにして銅箔を配置した。そして、加熱プレスの一対の金型の下型の上に離形紙を介して、銅箔が配置されたプリプレグを載置し、常温25度から最高温度220℃までを60分で昇温して 220℃を60分間キープしたのち、60分間かけて常温まで冷却した。なお、プレス圧は3MPaであった。
【0081】
(評価)
〈抵抗値試験〉
配線基板に形成された100個のビアホール導体の抵抗値を4端子法により測定して求めた。そして、100個の平均抵抗値と最大抵抗値を求めた。なお、最大抵抗値が2mΩ未満の場合をA、2〜3mΩの場合をB、3mΩより大きい場合をCと判定した。なお、最大抵抗値が小さい場合には、抵抗値の標準偏差σも小さくなると言える。
〈剥離試験〉
得られた配線基板の表面の銅箔を剥離(あるいは破壊)したときのビアホール導体の密着性を調べた。このとき剥離ができなかったときをA,困難であったが剥離したときをB、容易に剥離したときをCと判定した。
〈初期抵抗値〉
配線基板に形成された100個のビアホールの連結接続抵抗値を4端子法により測定した。なお、初期抵抗値としては1Ω以下のものをA、1Ω以下のものと1Ωを超えるものが混在していたものをB、全て1Ωを超えていたものをCと判断した。
〈接続信頼性〉
初期抵抗値を測定した配線基板の500サイクルのヒートサイクル試験を行い、初期抵抗値に対する変化率が10%以下のものをA、10%を超えたものをBと判断した。
結果を表1に示す。また、Cu/Snの質量比に対する平均抵抗値をプロットしたグラフを図8に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
図8のグラフから、Cu/Snの重量比率が1.59付近、さらには3付近から抵抗値が急激に下がっていることがわかる。これは、Cu粒子17の割合が多くなることにより、Cu粒子同士の接触率が高くなったためであると思われる。すなわち、隣接するCu粒子17とCu粒子17との間にCuより高い抵抗値を有する金属がほとんど存していないためであると思われる。
【0084】
言い換えれば、急激に抵抗値が増加するCu/Sn1.59未満の場合には、多数のCu粒子17同士の間に高い抵抗値を有する金属が介在しているためであると考えられる。
【0085】
また、表1から、Sn42-58Bi粒子の割合が60質量%以下の場合には、平均抵抗値及び最大抵抗値が3mΩ以下、44.2質量%以下の場合には2mΩ以下と極めて小さくなることが判る。しかしながら、Sn42-58Bi粒子を含有しない場合には剥離が発生しやすいことがわかる。一方、Sn42-58Bi粒子の割合が増加するにつれて、剥離が発生しにくくなることがわかる。
【0086】
また、Sn42-58Bi粒子の割合が10〜60質量%の範囲においては低抵抗化と高信頼性化が両立できていることがわかる。Sn42-58Bi粒子の割合が低すぎる場合には、Cu粒子同士が接触する接触部の周囲に存在する第1金属領域が少なくなるために接続信頼性が不充分になる。一方、Sn42-58Bi粒子の割合が高すぎる場合には第1金属領域が多くなりすぎることにより、Cu粒子同士が接触する接触部が少なくなり、それにより、抵抗値が大きくなる傾向がある。
【0087】
また、ペーストNo.7〜9を用いて得られた多層配線基板を比較すると、硬化剤の沸点がSn42-58Bi粒子の融点138℃よりも高いペーストNo.7、No.8の場合には、抵抗値の低抵抗化と高信頼性化のバランスがより優れていることがわかる。沸点が低い場合は半田の表面にある酸化層を還元し、溶融する前に硬化剤の揮発が始まる為、金属部の領域が小さくなる為、ビアホールの接続信頼性に課題が発生する。なお硬化剤の沸点は、300℃以下が望ましい。300℃より高い場合、硬化剤が特殊となり、その反応性に影響する場合がある。
【0088】
ここで、代表的に、本発明に係るペーストNo.6を用いて得られた多層配線基板のビア導体の断面の電子顕微鏡(SEM)写真及び、そのトレース図を図9〜図10に示す。なお、図9は3000倍、図10は6000倍であり、それぞれSEM写真(A)及びそのトレース図(B)を示している。また、図11は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)に用いたビア導体の断面のSEM写真及びトレース図を示している。
【0089】
図9〜図11から、得られたビアホール導体は、多数のCu粒子17が高充填され、互いに接触していることがわかる。これにより、抵抗値の低い導通路が形成されることがわかる。また、Cu粒子17同士が接触している部分は、この接触部を跨ぐように、錫(Sn)や錫-銅金属間化合物や錫-銅合金を主成分とする第1金属領域18が形成されていることがわかる。また、抵抗値の高いBiを主成分とする第2金属領域19は、実質的にCu粒子と接触していないことがわかる。この第2金属領域は、Sn42-58Bi粒子中のSnがCu粒子17の表面のCuと合金(例えば金属間化合物)を形成することにより、高濃度のBiが析出したと思われる。
【0090】
また、図12に、図11のSEM像をEPMAによりCu元素のマッピングを行ったときの像(A)及びそのトレース図(B)を示す。
【0091】
図12(A)(B)より、得られたビアホール導体には、多数のCu粒子が高密度にランダムに存在することがわかる。また、多数のCu粒子同士は、直接接触することにより電気的に接続していることがわかる。
【0092】
また、図13に、図11のSEM像を用いたSn元素のマッピング像(A)及びそのトレース図(B)を示す。
【0093】
図13(A)(B)より、多数のCu粒子同士が直接接触する接触部の表面には、その接触部を跨ぐように第1金属領域18が形成されていることが判る。
【0094】
なお、図13においては、Cu粒子の表面の大部分が第1金属領域で覆われているように見える。しかし、EPMAではエポキシ樹脂は透過されるために、観察面の表層のSn元素だけでなく、下地のSn元素も検出されている。従って、実際は第1金属領域はCu粒子の表面の大部分を覆っているのではなく、接触部を跨ぐように存在している。このことは、図9〜図11で示したSEM像からもわかる。そして、このような構造によれば、比較的硬い第1金属領域に発生した応力は柔らかいCu粒子17で吸収される。そのために、第1金属領域に発生したクラックが伝播して広がることが抑制される。
【0095】
さらに、図14に、図11のSEM像を用いたBi元素のマッピング像(A)及びそのトレース図(B)を示す。
【0096】
図14より、Biは、第2金属領域がCu粒子と接触しないように存在していることがわかる。このことから、抵抗値の高いBiはCu粒子の接触により形成された導通路に影響を与えていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、携帯電話等に使われる多層配線基板の更なる低コスト化、小型化、高機能化、高信頼性化が実現できる。またビアペースト側からも、ビアの小径化ビアペーストの反応物の形成に最適なものを提案することで、多層配線基板の小型化、高信頼性化に貢献する。
【符号の説明】
【0098】
11 配線基板
12 配線
13 絶縁樹脂層
14 ビアホール導体
15 金属部分
16 樹脂部分
17 Cu粒子
18 第1金属領域
19 第2金属領域
20 接触部
21 バネ
24 ボイド
25 プリプレグ
26 保護フィルム
27 貫通孔
28 ビアペースト
29 突出部
30 Cu箔
31 Sn−Bi系半田粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、前記絶縁樹脂層を貫通するように設けられた前記複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体と、を有する配線基板であって、
前記ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを含み、
前記金属部分は、
銅(Cu)粒子、錫(Sn),錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域、及びビスマス(Bi)を主成分とする第2金属領域とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であり、
前記銅粒子は、それらが互いに接触することにより前記複数の配線同士を電気的に接続しており、前記第1金属領域の少なくとも一部が、前記銅粒子同士の接触している部分を跨ぐようにその周囲を覆っている、ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第2金属領域が、前記金属部分において、前記銅粒子と接触していない請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ビアホール導体中の前記銅粒子の体積割合が30〜90%である請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
保護フィルムで被覆された未硬化状態または半硬化状態のプリプレグに、前記保護フィルムの外側から穿孔することにより貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔にビアペーストを充填する充填工程と、
前記充填工程の後、保護フィルムを剥離することにより、前記貫通孔から前記ビアペーストの一部が突出して形成される突出部を表出させる剥離工程と、
前記突出部を覆うように、前記プリプレグの表面に金属箔を配置する配置工程と、
前記金属箔を前記プリプレグの表面に圧着する圧着工程と、
前記圧着工程の後、所定の温度で加熱する加熱工程と、を備え、
前記ビアペーストが、Cu粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であり、
前記圧着工程において、前記突出部を通じて前記ビアペーストを圧縮することにより、前記Cu粒子同士を接触させて、互いに電気的に接続し、
前記加熱工程において、前記Sn−Bi系半田粒子の融点以上の温度で加熱する、ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアミン系化合物である硬化剤を含有する請求項5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記アミン系化合物の沸点が、前記Sn−Bi系半田粒子の融点以上であり、且つ、300℃以下の範囲である請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
Cu粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、且つ、CuとSnとの重量比(Cu/Sn)が、1.59〜21.43の範囲であることを特徴とするビアペースト。
【請求項9】
前記Cu粒子及び前記Sn−Bi系半田粒子の合計量に対する、Cu粒子の含有割合が40〜90質量%であり、前記Sn−Bi系半田粒子の含有割合が10〜60質量%の範囲である請求項8に記載のビアペースト。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項8または9に記載のビアペースト。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアミン系化合物である硬化剤を含有する請求項10に記載のビアペースト。
【請求項12】
前記アミン系化合物の沸点が、前記Sn−Bi系半田粒子の融点以上であり、且つ、300℃以下の範囲である請求項11に記載のビアペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図15】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−176220(P2011−176220A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40538(P2010−40538)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【特許番号】特許第4616927号(P4616927)
【特許公報発行日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】