説明

配線基板およびその実装構造体

【課題】 実装される電子部品との接続信頼性を改善した配線基板およびそれを備えた実装構造体を提供する。
【解決手段】 本発明の配線基板は、絶縁層と、絶縁層の一主面に形成された導電層とを備え、絶縁層が、可視光の波長よりも粒径が小さく、かつネック構造を介して少なくとも一部が互いに接続している複数の第1無機絶縁粒子13aと、可視光の波長よりも粒径が大きく、かつ第1無機絶縁粒子13aを介して少なくとも一部が互いに接続されている複数の第2無機絶縁粒子13bと、複数の第1無機絶縁粒子13aおよび複数の第2無機絶縁粒子13bの周りに形成された間隙Gと、間隙Gに充填された樹脂部14とを有しており、樹脂部14は、第2無機絶縁粒子13bと屈折率が略同じである樹脂材料からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)に使用される配線基板およびそれを備えた実装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に使用される配線基板としては、例えば特許文献1に開示されたもののように、樹脂材料から成る絶縁層を有する配線基板が用いられている。
【0003】
しかし、従来の配線基板では、絶縁層に、電子部品よりも熱膨張率が大きい樹脂材料を使用しているために、配線基板とこの配線基板に実装される電子部品との熱膨張差が大きくなってしまう。
【0004】
そして、その熱膨張差に起因して、配線基板と配線基板に実装される電子部品との接続部に応力が印加されやすい。その結果、配線基板は、実装される電子部品との接続信頼性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−116174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、実装される電子部品との接続信頼性を改善した配線基板およびそれを備えた実装構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線基板は、絶縁層と、該絶縁層の一主面に形成された導電層とを備え、前記絶縁層が、可視光の波長よりも粒径が小さく、かつネック構造を介して少なくとも一部が互いに接続している複数の第1無機絶縁粒子と、可視光の波長よりも粒径が大きく、かつ前記第1無機絶縁粒子を介して少なくとも一部が互いに接続されている複数の第2無機絶縁粒子と、複数の前記第1無機絶縁粒子および複数の前記第2無機絶縁粒子の周りに形成された間隙と、該間隙に充填された樹脂部とを有しており、該樹脂部は、前記第2無機絶縁粒子と屈折率が略同じである樹脂材料からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板によれば、前記絶縁層が、可視光の波長よりも粒径が小さい第1無機絶縁粒子と、可視光の波長よりも粒径が大きい第2無機絶縁粒子とを有し、かつ複数の第1無機絶縁粒子同士および第1無機絶縁粒子と第2無機絶縁粒子がネック構造を介して結合して骨格構造をなして絶縁層を形成していることから、絶縁層の熱膨張率を低減することができる。その結果、配線基板とこの配線基板に実装される電子部品との接続部への熱応力の印加を低減でき、ひいては配線基板の接続信頼性を向上させることができる。
【0009】
さらに、絶縁層は、該絶縁層が有する間隙に、第2無機絶縁粒子と屈折率が略同じの樹脂部を有していることによって、絶縁層の光の反射を抑制し、絶縁層上に形成された導電層との識別性を向上させることができる。その結果、導電層における配線パターンの検査ミスを低減でき、ひいては配線基板の電気的信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の配線基板およびそれを備えた実装構造体の実施の形態の例を示す、厚み方向に切断した断面図である。
【図2】図2は、図1のR1部分を拡大して示した断面図である。
【図3】図3は、図2のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図4】図4(a)および(b)は、図3(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図であり、図4(c)は、図3(b)のR3部分を拡大して示した断面図である。
【図5】図5(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(b)のR3部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図6】図6(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(b)のR3部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図7】図7(a)ないし(c)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図9】図9(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図10】図10は、図1とは異なる本発明の配線基板の実施の形態の例を示す、厚み方向に切断した断面図である。
【図11】図11(a)および(b)は、図10(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下に、本発明の配線基板およびそれを備えた実装構造体の実施の形態の第1の例(第1実施形態)を、図1〜図9に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2が実装された配線基板3とを含んでいる。
【0013】
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電材料からなるバンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料によって形成されている。
【0014】
配線基板3は、コア基板5と、コア基板5の両主面に形成された一対のビルドアップ層6とを含んでおり、電子部品2を支持するとともに、電子部品2を駆動もしくは制御するための電源や信号を電子部品2へ供給する機能を有する。
【0015】
以下、配線基板3の構成について詳細に説明する。
【0016】
(コア基板)
コア基板5は、配線基板3の剛性を高めつつ一対のビルドアップ層6間の導通を図るものであり、ビルドアップ層6を支持する基体7と、基体7に設けられたスルーホールと、該スルーホール内に設けられ、一対のビルドアップ層6同士を電気的に接続する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8に取り囲まれた絶縁体9を含んでいる。
【0017】
基体7は、第1樹脂層10aと、該第1樹脂層10aの両主面に設けられた第1絶縁層12aとを含んでいる。
【0018】
第1樹脂層10aは、基体7の主要部をなすものであり、例えば樹脂材と該樹脂材に被覆された基材を含む。第1樹脂層10aの厚みは、例えば0.1mm以上3.0mm以下に設定されている。また、第1樹脂層10aの平面方向への熱膨張率は、例えば3ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定され、第1樹脂層10aの厚み方向への熱膨張率は、例えば30ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0019】
ここで、第1樹脂層10aの熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JISK7197−1991に準じた測定方法により測定される。以下、第2樹脂層10bや第1および第2絶縁層12a、12bをはじめとする各部材の熱膨張率は、第1樹脂層10aと同様に測定される。
【0020】
第1樹脂層10aの樹脂材は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。このような熱硬化性樹脂で形成することによって、第1絶縁層12aとの接着強度を高めることができるともに、後述する樹脂部14と比較して第1樹脂層10aのじん性を高め、クラックを低減することができる。中でも、第1樹脂層10aの樹脂材は、第1樹脂層10aの靱性や第1絶縁層12aとの接着強度の観点から、エポキシ樹脂により形成することが望ましい。
【0021】
この第1樹脂層10aの樹脂材は、ヤング率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定され、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0022】
ここで、第1樹脂層10aの樹脂材のヤング率は、MTS社製ナノインデンターXPを用いて、ISO14577‐1:2002に準じた方法で測定される。以下、第2樹脂層10bや第1および第2絶縁層12a、12bのヤング率は、第1樹脂層10aの樹脂材と同様に測定される。
【0023】
第1樹脂層10aの基材は、第1樹脂層10aの平面方向の熱膨張率を低減するとともに、第1樹脂層10aの剛性を高めるものである。この基材は、例えば複数の繊維からなる織布もしくは不織布または複数の繊維を一方向に配列した繊維群により形成することができる。この繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維または金属繊維等を使用することができる。
【0024】
また、第1樹脂層10aは、着色材粒子11を含むことが望ましい。着色材粒子11は、可視光の波長を選択的に吸収することによって、第1樹脂層10aを着色して、導電層15の識別性を向上させる。その結果、導電層15の検査工程の精度を向上させることができる。
【0025】
この着色材粒子11は、例えばベンガラ、ウルトラマリン、ジンクイエロー、ジンクグリーン、孔雀石、マンガンバイオレット、メチルバイオレット、グラファイトもしくは酸化鉄黒の無機材料または銅フタロシアニンブルーもしくは銅フタロシアニングリーン等の有機材料から成る。また、着色材粒子11の粒径は、例えば0.4μm以上0.9μm以下に設定されている。また、着色材粒子11は、第1樹脂層10a中に分散しており、第1樹脂層10aの樹脂材に、例えば0.1体積%以上5体積%以下含まれている。
【0026】
なお、着色材粒子11の粒径は、第1絶縁層12aの断面を透過型電子顕微鏡で観察し
、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、この撮影した拡大断面にて各粒子の最大径の平均値を算出することによって測定される。また、着色材粒子11の体積%は、次のように測定される。
【0027】
まず、第1樹脂層10aの断面を透過型電子顕微鏡撮影する。次に、撮影した画像から画像解析装置等を用いて、着色材粒子11の面積比率(面積%)を測定し、この測定値の平均値を算出することによって着色材粒子11の体積%が算出される。以下、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの粒径および第1絶縁層12aにおける第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bの合計体積に対する第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの体積%も同様に測定される。
【0028】
第1樹脂層10aの両主面に形成された第1絶縁層12aは、基体7を高剛性かつ低熱膨張率とするものである。この第1絶縁層12aの厚みは、例えば3μm以上100μm以下に設定され、また、第1樹脂層10aの厚みの例えば3%以上10%以下に設定される。また、第1絶縁層12aのヤング率は、例えば10GPa以上50GPa以下に設定され、また、第1樹脂層10aのヤング率の例えば樹脂材の10倍以上100倍以下に設定される。また、第1絶縁層12aは、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定されている。
【0029】
この第1絶縁層12aは、第1無機絶縁粒子13aと、第1無機絶縁粒子13aよりも粒径が大きい第2無機絶縁粒子13bと、樹脂部14とを有している。また、図2および図3に示すように、複数の第1無機絶縁粒子13a同士、および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとが互いにネック構造を介して接続しており、第1無機絶縁粒子13a同士および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとの間隙Gに樹脂部14が配されて形成されている。その結果、互いにネック構造を介して接続することによって、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bが骨格構造をなして第1絶縁層12aの剛性を高めつつ、間隙Gに配された樹脂部14が第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bに印加される応力を緩和することによって、第1絶縁層12aのクラックを低減することができる。
【0030】
ネック構造は、隣接する第1無機絶縁粒子13a同士あるいは第1無機絶縁粒子13aとこの第1無機絶縁粒子13aに隣接する第2無機絶縁粒子13bとを接続する構造であり、それぞれの第1および第2無機絶縁粒子13a、13bの表面の一部の領域で結合して形成されている。第1絶縁層12aは、このようなネック構造を介して第1無機絶縁粒子13a同士および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとを接続しているため、第1絶縁層12a内に開気孔の間隙Gを良好に形成することができる。
【0031】
第1無機絶縁粒子13aは、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等の無機絶縁材料から成る。これらの材料の熱膨張率は、一般的な樹脂材料よりも熱膨張率が小さいため、第1絶縁層12aを従来の樹脂基板よりも低熱膨張にすることができる。中でも、無機絶縁材料としては、酸化珪素を用いることが望ましい。酸化珪素は、他の無機絶縁材料と比較して誘電正接が低いため、第1絶縁層12a上に形成された導電層15の信号伝送特性を高めることができる。
【0032】
第1無機絶縁粒子13aは、例えば熱膨張率が0.5ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定される。
【0033】
また、第1無機絶縁粒子13aは、非晶質体を用いることが望ましい。第1無機絶縁粒子13aを非晶質体とすることで、結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減することができ、第1絶縁層12aにおけるクラックの発生を低減できる。また、第1無機絶縁粒
子13aは、本実施形態のように球状であることが望ましい。その結果、第1無機絶縁粒子13aの充填密度を高め、第1絶縁層12aの内部構造を緻密にできる。
【0034】
また、本実施形態において、第1無機絶縁粒子13aの粒径は、可視光の波長の下限値よりも小さい。その結果、第1無機絶縁粒子13aの粒径が非常に微小であることから、比表面積が大きく表面エネルギーが大きくなり、表面の原子が活発に運動するため、第1無機絶縁粒子13aは、他の第1無機絶縁粒子13aと強固に結合する。なお、可視光の波長とは、JISZ8120−2001に準じ、その波長範囲が360nm以上830nm以下のものを指し、可視光の下限値とは360nmをいう。
【0035】
特に、第1無機絶縁粒子13aは、粒径が3nm以上110nm以下であることが望ましい。第1無機絶縁粒子13aが非晶質である場合は、第1無機絶縁粒子13aの結晶開始温度以下といった低温の加熱で第1無機絶縁粒子13aが互いに結合する。そのため、非晶質体である第1無機絶縁粒子13aの結晶構造を維持しつつ、第1無機絶縁粒子13a同士を強固に結合させることができる。
【0036】
一方、第2無機絶縁粒子13bは、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムから成る。これらの材料から成る第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aと同様に、例えば熱膨張率が0.5ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定されている。また、第2無機絶縁粒子13bは、例えば室温(25℃)で、可視光の波長の範囲に対する屈折率が1.40以上1.80以下に設定されている。なお、屈折率の測定方法は、例えばエリプソメータ等の測定装置を用いて、第1無機絶縁層12a中の第2無機絶縁粒子13bの屈折率を測定する。
【0037】
また、第2無機絶縁粒子13bは、特に、酸化珪素を用いることが望ましい。酸化珪素は、他の無機絶縁材料と比較して誘電正接が低いため、第1絶縁層12a上に形成された導電層15の信号伝送特性を高めることができる。酸化珪素から成る第2無機絶縁粒子13bの屈折率は、例えば室温(25℃)で、可視光の波長の範囲に対する屈折率が1.43以上1.45以下に設定される。
【0038】
また、第2無機絶縁粒子13bは、例えば光の透過率が80%以上100%以下に設定されている。なお、光の透過率は、分光光度計(日立U−4100)などを使用して測定される。粒子での測定が難しい場合は、同質の材料からなる板あるいは膜上の試料を用いて測定を行なった値を採用することができる。以下、後述する樹脂部14の光の透過率は、第2無機絶縁粒子13bと同様に測定される。
【0039】
また、第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aと同じ材料で形成することが好ましい。その結果、粒子同士の結合が強固になり、第1絶縁層12aに生じるクラックを良好に低減することができる。なお、第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aと異なる材料で形成しても構わない。
【0040】
第2無機絶縁粒子13bは、非晶質体を用いることが望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子13bの結晶構造に起因した第1絶縁層12aのクラックを低減することができる。
【0041】
また、第2無機絶縁粒子13bは、球状であることが望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子13bの表面が滑らかになり、この表面における応力が分散され、第2無機絶縁粒子13bの表面を起点としたクラックの発生を低減することができる。
【0042】
また、第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aよりも粒径が大きい。その
結果、第1無機絶縁粒子13a同士の結合が破壊されて生じた第1絶縁層12a内のクラックの伸長において、このクラックが粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bを迂回して伸長する分、その伸長に大きなエネルギーが必要となる。それゆえ、第1無機絶縁粒子13aよりも粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bによって、良好に第1絶縁層12aのクラックの伸長を低減することができる。なお、第2無機絶縁粒子13bの粒径は、可視光の波長の下限値(360nm)よりも大きく設定されており、例えば0.5μm以上5μm以下に設定されている。また、第2無機絶縁粒子13bの粒径は、可視光の波長の最大値(830nm)よりも大きく設定されていることが望ましい。
【0043】
なお、第1絶縁層12aは、第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bの合計体積に対して第1無機絶縁粒子13aを20体積%以上90体積%以下含み、前記合計体積に対して第2無機絶縁粒子13bを10体積%以上80体積%以下含んでいる。
【0044】
一方、樹脂部14は、例えばポリエチレン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂等の樹脂材料から成る。この樹脂部14は、ヤング率が例えば0.3GPa以上3GPa以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば50ppm/℃以上120ppm/℃以下に設定されている
また、樹脂部14の屈折率は、第2無機絶縁粒子13bと略同じに設定されている。この樹脂部14の屈折率は、第2無機絶縁粒子13bの屈折率の0.98倍以上1.02倍以下に設定されている。
【0045】
また、樹脂部14は、第1絶縁層12aにおいて例えば25体積%以上38体積%以下に設定されている。
【0046】
一方、基体7には、この基体7を厚み方向に貫通し、例えば直径が0.1mm以上1mm以下の円柱状であるスルーホールが設けられている。スルーホールの内部には、コア基板5の上下のビルドアップ層6を電気的に接続するスルーホール導体8がスルーホールの内壁に沿って筒状に形成されている。このスルーホール導体8としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料によって形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0047】
筒状に形成されたスルーホール導体8の中空部には、絶縁体9が柱状に形成されている。絶縁体9は、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
【0048】
(ビルドアップ層)
一方、コア基板5の両主面には、上述した如く、一対のビルドアップ層6が形成されている。一対のビルドアップ層6のうち、一方のビルドアップ層6は電子部品2に対してバンプ3を介して接続され、他方のビルドアップ層6は、図示しない接合材を介して図示しない外部配線基板と接続される。
【0049】
各ビルドアップ層6は、図1および図2に示すように、複数の第2樹脂層10b、複数の第2絶縁層12b、複数の導電層15および複数のビア導体16を含んでいる。第2樹脂層10b、第2絶縁層12bおよび導電層15は、順次複数回積層されており、導電層15は、第2絶縁層12b上に平面視で離して配置するように複数形成されており、第2樹脂層10bは、この導電層15の側面および上面に接着している。また、導電層15およびビア導体16は、互いに電気的に接続されており、接地用配線、電力供給用配線および/または信号用配線を構成している。
【0050】
第2樹脂層10bは、互いに厚み方向に離して配置した複数の第2絶縁層12bを接着するとともに、平面視で離して配置した導電層15同士の間に配されて短絡を防止するものである。第2樹脂層10bは、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂により形成することができる。中でも、第2樹脂層10bのじん性や第2絶縁層12bとの接着強度の観点から、エポキシ樹脂を用いることが望ましい。
【0051】
第2樹脂層10bは、厚みが例えば3μm以上30μm以下に設定され、ヤング率が例えば0.2GPa以上20GPa以下に設定される。また、第2樹脂層10bは、厚み方向および平面方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0052】
また、第2樹脂層10bは、着色材粒子11を含むことが望ましい。着色材粒子11は、可視光の波長を選択的に吸収および反射することによって、第1樹脂層10aを着色して、導電層15の識別性を向上させることができる。
【0053】
第2絶縁層12bは、第2樹脂層10b上に形成され、上述した基体7に含まれる第1絶縁層12aと同様の構成を有しており、その結果、第1絶縁層12aと同様の効果を奏する。
【0054】
複数の導電層15は、第2絶縁層12b上に部分的に形成され、厚み方向または平面方向に互いに離して配置している。導電層15は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができる。また、導電層15は、その厚みが3μm以上20μm以下に設定され、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0055】
ビア導体16は、厚み方向に互いに離して配置した導電層15同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体16は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0056】
ところで、第1無機絶縁粒子13aの粒径が可視光の波長よりも小さいことから、可視光は、第1無機絶縁粒子13aによって反射されにくいため、第1絶縁層12aおよび第2絶縁層12b(以下、「第1、第2絶縁層12a、12b」という。)内を透過しやすい。そして、仮に第2無機絶縁粒子14bと樹脂部14との屈折率が異なる場合、可視光が、可視光の波長よりも大きい球状の第2無機絶縁粒子13bに到達すると、入射してきた方向と同じ方向に光が反射(再帰性反射)しやすい。
【0057】
すなわち、可視光は、可視光の波長よりも大きい第2無機絶縁粒子13bの外表面に達すると、一般的に透光性の高い酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等から成る第2無機絶縁粒子13bの中に入る。そして、第2無機絶縁粒子13bと樹脂部14との屈折率が異なると、可視光は、第2無機絶縁粒子13bの内表面において反射し、第2無機絶縁粒子13bの外へ出る。この際、可視光は、第2無機絶縁粒子13bの中に入る際の屈折と、第2無機絶縁粒子13bの内表面における反射と、第2無機絶縁粒子13bの外に出る際の屈折とによって、第2無機絶縁粒子13bに対して入射してきた方向と同じ方向に光が反射することになり、再帰性反射が起こる。
【0058】
その結果、例えば光を照射して反射光のコントラストによって、第1、第2絶縁層12a、12b上に形成された導電層15の配線パターンを検査する際に、第1、第2絶縁層12a、12bが再帰性反射を起こしやすいと、金属光沢を有する導電層15と、照射し
た光を同様に反射する部材として認識されてしまい、導電層15と第1、第2絶縁層12a、12bとの識別性が低下しやすい。
【0059】
一方、本実施形態においては、第1、第2絶縁層12a、12bは、可視光の波長よりも大きい第2無機絶縁粒子13bの周囲に、第2無機絶縁粒子13bと屈折率が略同じである樹脂部14とを有している。それゆえ、可視光が第2無機絶縁粒子13b内に入り第2無機絶縁粒子13bと樹脂部14との境界面に到達した際に、可視光は、樹脂部14の屈折率が第2無機絶縁粒子13bと略同じであることによって、反射されずに直進していく。その結果、第1、第2絶縁層12a、12bの再帰性反射を低減できるために、第1、第2絶縁層12a、12bと導電層15との識別性を向上させることができる。
【0060】
また、この第1、第2絶縁層12a、12bが有する間隙Gの幅は、可視光の波長よりも小さいことが望ましい。一般的に、可視光の波長よりも小さい部材は、可視光の反射等が小さくなる。それゆえ、第1、第2絶縁層12a、12bの間隙Gを可視光の波長よりも小さくすることによって、第1、第2絶縁層12a、12bの可視光の透過率をより向上させることができる。その結果、第1、第2絶縁層12a、12bの再帰性反射をさらに低減するこができ、良好に導電層15の識別性を向上させることができる。
【0061】
なお、間隙Gの幅とは、第1絶縁層12aの断面を透過型電子顕微鏡で観察し、複数の第1無機絶縁粒子同士および第1無機絶縁粒子と第2無機絶縁粒子とで形成された間隙Gを20以上50以下含むように拡大した断面を撮影し、この撮影した拡大断面における間隙Gの最大の間隔の平均値を、間隙Gの幅とみなす。
【0062】
また、樹脂部14の樹脂材料は、例えば透過率が80%以上100%以下の樹脂を用いることが望ましい。樹脂部14の光の透過率を上記のように設定すれば、光は透過しやすくなり、第2無機絶縁粒子13bと樹脂部14との境界面で生じる再帰性反射をさらに低減することができ、良好に導電層15の識別性を向上させることができる。
【0063】
また、樹脂部14の樹脂材料は、第2無機絶縁粒子14bとの密着性を向上させるために、シリコーン樹脂等のシラノール基を有する樹脂材料から成ることが望ましい。これらの樹脂部14はシラノール基を有することによって、第2無機絶縁粒子14bと樹脂部14の表面の水酸基同士が水素結合するだけでなく、第2無機絶縁粒子14bの酸素原子と樹脂部14の珪素原子がシラノール結合することになる。それゆえ、第2無機絶縁粒子13bと樹脂部14との熱膨張差によって、第2無機絶縁粒子13bと樹脂部14とが剥離することを抑制し、剥離によって空間ができ、この空間によって境界の屈折率が異なり、再帰性反射が起こることを良好に抑制することができる。その結果、良好に導電層15の識別性を向上させることができる。
【0064】
また、特に第2無機絶縁粒子13bに酸化珪素を使用する場合には、樹脂部14は、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシロキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1、3−ジメチルプチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン(IPA溶液)またはシクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン等の樹脂材料からなることが望ましい。
【0065】
これらの材料からなる樹脂部14の屈折率は、例えば室温(25℃)で、可視光の波長の範囲内において、1.42以上1.45以下に設定されている。
【0066】
また、この中でも、特に3-グリシロキシトリメトキシシランを使用すれば、樹脂自体
の強度が高いため、第1、第2絶縁層12a、12bの強度が高くなるという効果を奏する。
【0067】
一方、本実施形態においては、第1、第2絶縁層12a、12bの下面に形成された第1樹脂層10aおよび第2樹脂層10b((以下、「第1、第2樹脂層10a、10b」という。)は、着色材粒子11を含んでいる。それゆえ、上述した構成によって、良好に第1、第2絶縁層12a、12bを透過した可視光を、この第1、第2樹脂層10a、10bが含んだ着色材粒子11が可視光の波長を選択的に吸収することによって、第1、第2樹脂層10a、10bで可視光が反射して、第1、第2絶縁層12a、12bを再び透過していくことを良好に抑制する。その結果、第1、第2絶縁層12a、12bと導電層15とのコントラストを強調して、導電層15の識別性を向上させるという顕著な効果を奏する。
【0068】
この着色材粒子11は、例えばベンガラは褐色、ウルトラマリンは青色、ジンクイエローは黄色、ジンクグリーンおよび孔雀石は緑、マンガンバイオレットおよびメチルバイオレットは紫色、グラファイトは灰色、酸化鉄黒は黒色に第1、第2樹脂層10a、10bを着色する。中でも、グラファイトや酸化鉄黒等を用いることが望ましい。これらの材料は、灰色または黒色に着色するため、多くの波長の可視光が吸収されることから、第1、第2樹脂層10a、10bにおける可視光の反射を低減することができる。
【0069】
(実装構造体1の製造方法)
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図4から図9に基づいて説明する。この実装構造体1の製造方法は、コア基板5の作製工程と、ビルドアップ層6のビルドアップ工程と電子部品2の実装工程とからなっている。
【0070】
(コア基板5の作製工程)
(1)第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bを含む固形分と、この固形が分散した溶剤17とを有する無機絶縁ゾル12xを準備する。
【0071】
無機絶縁ゾル12xは、例えば固形分を10%体積以上50体積%以下含み、溶剤を50%体積以上90体積%以下含む。これにより、無機絶縁ゾル12xの粘度を低く保持しつつ、無機絶縁ゾル12xより形成される絶縁層の生産性を高く維持できる。
【0072】
無機絶縁ゾル12xの固形分は、例えば第1無機絶縁粒子13aを20体積%以上90体積%以下含み、第2無機絶縁粒子13bを10体積%以上80体積%以下含む。これにより、後述する(3)の工程にて第1絶縁層12aにおけるクラックの発生を効果的に低減できる。
【0073】
なお、第1無機絶縁粒子13aは、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させることにより、作製することができる。この場合、低温条件下で第1無機絶縁粒子13aを作製することができるため、非晶質状態である第1無機絶縁粒子13aを作製することができる。
【0074】
一方、第2無機絶縁粒子13bは、酸化ケイ素から成る場合、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を低減しつつ800℃以上1500℃以下に加熱することに
より、作製することができる。それ故、第2無機絶縁粒子13bは、第1無機絶縁粒子13aと比較して粒径が大きいことから、高温加熱時における凝集体の形成を低減しやすく、高温加熱で容易に作製することができ、ひいては硬度を容易に高めることができる。
【0075】
また、第2無機絶縁粒子13bを作製する際の加熱時間は、1秒以上180秒以下に設定されていることが望ましい。その結果、この加熱時間を短縮することにより、800℃以上1500℃以下に加熱した場合においても、第2無機絶縁粒子13bの結晶化を抑制し、非晶質状態を維持することができる。
【0076】
一方、無機絶縁ゾル12xに含まれる溶剤17は、例えばメタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、および/またはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を使用することができる。
【0077】
(2)次に、図4(a)ないし図5(a)に示すように、銅等により形成された金属箔15xを準備し、金属箔15xの主面に無機絶縁ゾル12xを塗布する。
【0078】
無機絶縁ゾル12xの塗布は、例えばディスペンサー、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷を用いて行なうことができる。このとき、上述した如く、無機絶縁ゾル12xの固形分が50体積%以下に設定されていることから、無機絶縁ゾル12xの粘度が低く設定され、塗布された無機絶縁ゾル12xの平坦性を高くすることができる。
【0079】
また、第1無機絶縁粒子13aの粒径は、上述したように、3nm以上に設定されているため、これによっても無機絶縁ゾル12xの粘度が良好に低減され、塗布された無機絶縁ゾル12xの平坦性を向上させることができる。
【0080】
(3)続いて、図5(b)に示すように、無機絶縁ゾル12xを乾燥させて溶剤17を蒸発させる。
【0081】
ここで、溶剤17の蒸発に伴って無機絶縁ゾル12xが収縮するが、かかる溶剤17は第1および第2無機絶縁粒子13a、13bの間隙Gに含まれており、第1および第2無機絶縁粒子13a、13b自体には含まれていない。このため、無機絶縁ゾル12xが粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bを含んでいると、その分、溶剤17が充填される領域が少なくなり、無機絶縁ゾル12xの溶剤17の蒸発時、無機絶縁ゾル12xの収縮量が小さくなる。すなわち、第2無機絶縁粒子13bによって無機絶縁ゾル12xの収縮が規制されることとなる。その結果、無機絶縁ゾル12xの収縮に起因するクラックの発生を低減することができる。また、仮にクラックが生じても、粒径の大きい第2無機絶縁粒子13bによってこのクラックの伸長を妨げることができる。
【0082】
無機絶縁ゾル12xの乾燥は、例えば加熱および風乾により行なわれる。乾燥温度が、例えば20℃以上溶剤17の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定され、乾燥時間が、例えば20秒以上30分以下に設定される。その結果、溶剤17の沸騰が低減され、沸騰の際に生じる気泡の圧力によって第1および第2無機絶縁粒子13a、13bが押し出されることが抑制され、この粒子の分布をより均一にすることが可能となる。
【0083】
(4)図6(a)に示すように、残存した無機絶縁ゾル12xの固形分を加熱し、第1無機絶縁粒子13a同士および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとをネ
ック構造を介して接続させる。
【0084】
ここで、本実施形態における無機絶縁ゾル12xは、粒径が微小に設定された第1無機絶縁粒子13aを有している。その結果、無機絶縁ゾル12xの加熱温度が比較的低温、例えば第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの結晶化開始温度未満と低温であっても、第1無機絶縁粒子13a同士を強固に接続させることができる。
【0085】
なお、第1無機絶縁粒子13a同士を強固に接続させることができる温度は、例えば第1無機絶縁粒子13aの粒径を110nm以下に設定した場合は250℃程度であり、前記粒径を15nm以下に設定した場合は150℃程度である。また、第1および第2無機絶縁粒子13a、13bに含まれる酸化ケイ素の結晶化開始温度は1300℃程度である。
【0086】
無機絶縁ゾル12xの加熱温度は、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの結晶化開始温度未満に設定されていることが望ましい。その結果、結晶化した粒子が相転移によって収縮することを低減し、第1絶縁層12aにおけるクラックの発生を低減できる。
【0087】
さらに、このように低温で加熱することによって、第1無機絶縁粒子13aおよび第2無機絶縁粒子13bの粒子形状を保持しつつ、第1無機絶縁粒子13a同士および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとを近接領域のみで接続させることができる。その結果、ネック構造を形成しつつ、第1無機絶縁粒子13a同士および第1無機絶縁粒子13aと第2無機絶縁粒子13bとを接続させることができ、ひいては第1無機絶縁粒子13a同士の間に開気孔の間隙Gを容易に形成することができる。
【0088】
なお、無機絶縁ゾル12xの加熱は、温度が例えば100度以上700度未満に設定され、時間が例えば0.5時間以上24時間以下に設定されていることが望ましい。
【0089】
(5)図6(b)に示すように、液状樹脂15xを第1無機絶縁粒子13a同士の間隙Gに充填した後、液状樹脂15xを加熱して重合させて樹脂部14を形成することによって、第1絶縁層12aを形成する。その結果、金属箔15xと第1絶縁層12aとを含む積層シート18を作製することができる。
【0090】
ここで、液状樹脂15xは、分子量が小さいことによって粘度を低く設定した樹脂材料を使用する。その結果、液状樹脂15xは、第1無機絶縁粒子13aの骨格構造上に液状樹脂15xを塗布することによって、この液状樹脂15xが毛細管現象によって間隙G内に充填される。なお、液状樹脂15xの粘度は、例えば室温(25℃)において0.001Pa・s以上50Pa・s以下に設定されている。また、液状樹脂15xの加熱温度は、例えば150℃以上250℃以下に設定され、液状樹脂15xの加熱時間は、例えば0.5時間以上6時間以下に設定されている。なお、液状樹脂15xは、ISO472:1999に準ずるA−ステージの状態である。
【0091】
(6)図7(a)に示すように、第1樹脂前駆体シート10axを準備し、第1樹脂前駆体シート10axの両主面に積層シート18の第1絶縁層12aを積層した後、前記積層体を上下方向に加熱加圧することにより、図7(b)に示すように、第1樹脂前駆体シート10axを硬化させて第1樹脂層10aを形成する。
【0092】
第1樹脂前駆体シート10axは、例えば未硬化の着色材粒子11を含んだ熱硬化性樹脂と基材とを含む複数の樹脂シートを積層することにより作製することができる。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA−ステージまたはB−ステージの状態であ
る。
【0093】
積層シート18は、金属箔15xと第1樹脂前駆体シート10axとの間に第1絶縁層12aが介在されるように積層される。
【0094】
前記積層体の加熱温度は、第1樹脂前駆体シート10axの硬化開始温度以上熱分解温度未満に設定されている。具体的には、第1樹脂前駆体シートがエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂からなる場合、前記加熱温度が例えば170℃以上230℃以下に設定される。また、前記積層体の圧力は、例えば2MPa以上3MPa以下に設定され、加熱時間および加圧時間は、例えば0.5時間以上2時間以下に設定されている。なお、硬化開始温度は、樹脂が、ISO472:1999に準ずるC−ステージの状態となる温度である。
【0095】
(7)図7(c)に示すように、基体7を厚み方向に貫通するスルーホール導体8およびスルーホール導体8の内部に絶縁体9を形成し、しかる後、基体7上にスルーホール導体8に接続される導電層15を形成する。
【0096】
スルーホール導体8および絶縁体9は、次のように形成される。まず、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7および金属箔15xを厚み方向に貫通したスルーホールを複数形成する。次に、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させることにより、円筒状のスルーホール導体8を形成する。次に、円筒状のスルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填することにより、絶縁体9を形成する。
【0097】
また導電層15は、金属箔15xに形成されたスルーホール内より露出する絶縁体9およびスルーホール導体8上に、例えば無電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、金属箔15xと同じ金属材料からなる金属層を被着させる。次に、フォトリソグラフィー技術、エッチング等を用いて金属箔15xおよび/または金属層をパターニングすることにより、導電層15を形成する。なお、金属箔15xを一旦剥離させた後、金属層を基体7上に形成し、この金属層をパターニングして導電層15を形成してもよい。
【0098】
(8)導電層15における配線パターンの検査を行なう。配線パターンの検査は、例えば、光学式自動外観検査(Automated Optical Inspection)装置によって行なうことができる。具体的には、まず配線基板3に、明度、彩度、色相を任意に選択した可視光を照射し、その反射光をCCD等の受光素子でとらえる。そして、配線部(主に銅からなる)とその他の部分(主に樹脂からなる)とを画像処理して、反射光について最もコントラスト差が認められるパラメータを基に配線パターンを識別して配線形状を割り出し、これを設計データと比較して適否を判定する。この場合、例えば明度を基に配線パターンの検査を行なう際には、その明度差が絶縁層8と導電層15とでは、例えば10%以上であれば、両者を識別することができる。ここで、明度は、例えば分光光度計(日立U-4100)によって測定される。
【0099】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0100】
(ビルドアップ層6のビルドアップ工程)
(9)図8(a)および図8(b)に示すように、コア基板5の両主面それぞれに第2樹脂前駆体シート10bxを介して積層シート18を積層した後、この積層体を上下方向に加熱加圧することにより、第2樹脂前駆体シート10bxを硬化させて第2樹脂層10bを形成する。
【0101】
本工程の積層シート18は、第2絶縁層12bおよび金属箔15xを有しており、例えば(1)〜(5)の工程と同様に作製することができる。また、第2樹脂前駆体シート10bxは、第2樹脂層10bを構成する上述した未硬化の熱硬化性樹脂により形成される。
【0102】
前記積層体を形成する際には、積層シート18の第2絶縁層12bを第2樹脂前駆体シート10bxに当接させる。また、前記積層体の加熱加圧は、例えば(6)の工程と同様に行なうことができる。
【0103】
(10)図9(a)に示すように、第2絶縁層12bから金属箔15xを剥離した後、第2樹脂層10bおよび第2絶縁層12bを厚み方向に貫通するビア導体16を形成するとともに、第2絶縁層12b上に導電層15を形成する。
【0104】
金属箔15xの剥離は、例えば硫酸および過酸化水素水の混合液、塩化第二鉄溶液または塩化第二銅溶液等を用いたエッチング法により、行なうことができる。
【0105】
ビア導体16および導電層15は、具体的に次のように形成される。まず、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置により、第2樹脂層10bおよび第2絶縁層12bを貫通するビア孔を形成する。次に、例えばセミアディティブ法、サブトラクティブ法またはフルアディティブ法等により、ビア孔にビア導体16を形成するとともに第2絶縁層12b上に導電材料を被着させて導電層15を形成する。なお、この導電層15は、第2絶縁層12bから金属箔15xを剥離せず、この金属箔15xをパターニングすることにより形成しても良い。
【0106】
なお、導電層15を形成した後は、(8)と同様に配線パターンの検査を行なう。
【0107】
(11)図9(b)に示すように、(9)および(10)の工程を繰り返すことにより、コア基板5の上下にビルドアップ層6を形成する。なお、本工程を繰り返すことにより、ビルドアップ層6をより多層化することができる。
【0108】
以上のようにして、配線基板3を作製することができる。
【0109】
(電子部品2の実装工程)
(12)配線基板3に対してバンプ4を介して電子部品2をフリップ実装することにより、図1(a)に示した実装構造体1を作製することができる。
【0110】
なお、電子部品2は、ワイヤボンディングにより配線基板3と電気的に接続しても良いし、あるいは、配線基板3に内蔵させても良い。
【0111】
(第2実施形態)
次に、本発明の配線基板および実装構造体の実施の形態の第2の例(第2実施形態)を、図10、図11に基づいて詳細に説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成に関しては、記載を省略する。
【0112】
(実装構造体)
図10には第2実施形態の実装構造体に係る配線基板3を示した。この配線基板3は配線基板3と異なり、図10に示すように、第2樹脂層10bは、第1領域19aと第2領域19bとを含んでおり、第2樹脂層10bが含む着色材粒子11が、第2樹脂層10bの第1領域19aに配されている。
【0113】
第1領域19aは、導電層15の識別性を向上させるものであり、例えば、樹脂部14と同様の樹脂材料と着色材粒子11とから形成されている。具体的には、この第1領域19aは、樹脂部14と一体形成されており、第2絶縁層12bの間隙Gよりも粒径の大きい着色材粒子11を含んでいる。
【0114】
なお、第1領域19aの厚みは、例えば0.5μm以上5μm以下に設定されて、ヤング率は、例えば0.2GPa以上5GPa以上に設定されて、また、熱膨張係数は、例えば30ppm/℃以上150ppm/℃以下に設定されている。
【0115】
一方、第2領域19bは、例えば互いに厚み方向に離して配置した複数の第2絶縁層12bを接着するとともに、平面視で離して配置した導電層15同士の間に配されて短絡を抑制するものである。この第2領域19bは、例えば第2樹脂層10bと同様の材料のみからなる。
【0116】
なお、第2領域19bは、第2樹脂層10bと同様の厚み、熱膨張係数、ヤング率に設定されている。
【0117】
ここで、本実施形態における、第2樹脂層10bは、第1領域19aに集中して着色材粒子11を有していることから、第1実施形態のように着色材粒子11が第2樹脂層10b中に分散された場合と比較して、第2絶縁層12bから透過した光を良好に当てることができ、良好に導電層15の識別性を向上させることができる。また、第1領域19aは、第2絶縁層12bの樹脂部14と一体形成されており、第2絶縁層12bに比較して厚みが薄くかつヤング率が小さい。その結果、第1領域19aの熱膨張は、良好に第2絶縁層12bの骨格構造に抑制されて、配線基板を低熱膨張に保つことができる。
【0118】
なお、第1樹脂層10aに、第1領域19aおよび第2領域19bを形成してもよく、また、第2領域19bに着色材粒子11を含んでも構わない。
【0119】
(実装構造体の製造方法)
次に、上述した第2実施形態の実装構造体1の製造方法を説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の方法に関しては、記載を省略する。
【0120】
上述した第1実施形態の工程(5)において、さらに第1無機絶縁粒子13a同士の間に開気孔の間隙Gよりも小さい着色材粒子11を含んだ液状樹脂15xを準備する。その結果、第1無機絶縁粒子13aの骨格構造上に液状樹脂15xを塗布して、この液状樹脂15xが毛細管現象によって間隙G内に充填される過程において、間隙Gの幅よりも粒径の大きい着色材粒子11は、充填されずに第2絶縁層12bの表面に、液状樹脂15xに保持されて配されることになる。
【0121】
ついで、第1実施形態の液状樹脂15xを加熱して重合させて樹脂部14を形成することによって、第1絶縁層12aを形成する工程において、第1絶縁層12aの表面において着色材粒子11を保持している液状樹脂15xも同時に加熱して重合させることによって、第2樹脂層10bの第1領域19aとなる。
【0122】
また、第2領域19bの作製工程は、第1実施形態の第2樹脂層10bと同様である。また、第1樹脂層10aに、第1領域19aおよび第2領域19bを形成する場合も、上記と同様の工程によって作製される。
【0123】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲におい
て、種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
【0124】
上述した本発明の実施形態においては、本発明に係る配線基板の例としてコア基板およびビルドアップ層からなるビルドアップ多層基板を挙げたが、本発明に係る配線基板の例としては、ビルドアップ多層基板以外にも、例えばインターポーザー基板、コアレス基板またはコア基板のみからなる単層基板やセラミック基板、金属基板、金属板を含んだコア基板も含まれる。
【0125】
また、上述した本発明の実施形態においては、第1樹脂層および第2樹脂層が熱硬化性樹脂により形成されていたが、第1樹脂層および第2樹脂層の少なくとも一方、もしくは双方が熱可塑性樹脂により形成されていても構わない。この熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0126】
また、上述した本発明の実施形態においては、コア基板およびビルドアップ層の双方が絶縁層を備えていたが、配線基板はコア基板またはビルドアップ層の少なくともいずれか一方が絶縁層を備えていれば良い。
【0127】
また、第1絶縁層および第2絶縁層の間隙に充填された樹脂部は、複数の樹脂材料から形成されても構わない。その場合、例えば、間隙に充填された樹脂材料と第2無機絶縁粒子との間にシラノール基を有する樹脂を配することができる。
【0128】
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(3)における溶剤の蒸発と工程(4)における固形分の加熱を別々に行なっていたが、工程(3)と工程(4)を同時に行なっても構わない。
【0129】
また、上述した本発明の実施形態においては、(8)の工程にて未硬化の第2樹脂前駆体シートを第2絶縁層上に載置したが、未硬化で液状の第2樹脂前駆体を第2絶縁層に塗布しても構わない。
【符号の説明】
【0130】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 バンプ
5 コア基板
6 ビルドアップ層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10a 第1樹脂層
10ax 第1樹脂前駆体シート
10b 第2樹脂層
10bx 第2樹脂前駆体シート
11 着色材粒子
12a 第1絶縁層
12b 第2絶縁層
12x 無機絶縁ゾル
13a 第1無機絶縁粒子
13b 第2無機絶縁粒子
14 樹脂部
15 導電層
15x 金属箔
16 ビア導体
17 溶剤
18 積層シート
19a 第1領域
19b 第2領域
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層の一主面に形成された導電層とを備え、
前記絶縁層が、可視光の波長よりも粒径が小さく、かつネック構造を介して少なくとも一部が互いに接続している複数の第1無機絶縁粒子と、可視光の波長よりも粒径が大きく、かつ前記第1無機絶縁粒子を介して少なくとも一部が互いに接続されている複数の第2無機絶縁粒子と、複数の前記第1無機絶縁粒子および複数の前記第2無機絶縁粒子の周りに形成された間隙と、該間隙に充填された樹脂部とを有しており、
該樹脂部は、前記第2無機絶縁粒子と屈折率が略同じである樹脂材料からなる配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂部の屈折率が、前記第2無機絶縁粒子の屈折率の0.98倍以上1.02倍以下である配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記間隙の幅は、可視光の波長よりも小さい配線基板。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板において、
前記絶縁層の他主面に形成された樹脂層をさらに備えており、
該樹脂層が、樹脂と該樹脂に被覆された着色材粒子とを有する配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の配線基板と、
該配線基板に実装された電子部品とを備えた実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−115374(P2013−115374A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262808(P2011−262808)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】