説明

配線基板およびその製造方法

【課題】貫通孔と貫通導体との間の隙間を抑制することができる配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】上面から下面にかけて貫通する貫通孔2を有する絶縁板1と、貫通孔2内に配置され、側面が貫通孔2の内側面に接している貫通導体3とを備え、貫通導体3は、金属粒子が焼結して形成されているとともに、その焼結の温度で収縮しない導電性粒子4を含有している配線基板である。導電性粒子4によって焼結時の貫通導体3(金属ペースト)の収縮量を抑制し、貫通導体3と貫通孔2との間に隙間が生じることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有する絶縁板と、貫通孔内に配置されて側面が貫通孔の内側面に接している貫通導体とを備える配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品搭載用等に使用される配線基板として、セラミック焼結体からなり、主面(上面や下面)に配線導体が形成された絶縁板と、その絶縁板を厚み方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された貫通導体(いわゆるビア導体)とを備えたものが用いられている。絶縁板の上下面の配線導体同士が貫通導体を介して互いに電気的に接続されている。
【0003】
このような配線基板は、例えば絶縁板の上面の配線導体に電子部品の電極や電子部品の電気検査を行なうためのプローブが接続され、下面の配線導体が回路基板等の外部電気回路基板に接続される。そして、絶縁板の上面の薄膜配線等の配線導体と、貫通導体と、絶縁板の下面の配線導体とを介して、電子部品が外部電気回路と電気的に接続され、信号の送受や、電子部品に対する電気的な検査等が行なわれる。
【0004】
貫通導体を有する配線基板は、セラミック焼結体からなる絶縁板を作製し、この絶縁板の所定位置にドリル加工等の機械的な孔あけ加工やレーザ加工によって開口が円形状等の貫通孔を形成し、この貫通孔内に金属ペーストを充填した後、金属ペーストを加熱して焼結させ、同時にこの焼結体の側面を貫通孔の内側面に付着させて貫通導体とすることによって製作されている。なお、金属ペーストは、銀−パラジウム等の金属粒子(粉末状の原料)を有機溶剤およびバインダ等とともに混練することによって作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−94840号公報
【特許文献2】特開平10−93224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の配線基板およびその製造方法においては、金属粒子の焼結による貫通導体(貫通導体となる金属ペースト)の収縮が生じるため、貫通導体の側面と貫通孔の内側面との間に隙間(いわゆるセパレーション)が生じやすいという問題点があった。
【0007】
本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、絶縁板の貫通孔内の内側面と、この貫通孔内に配置された、金属粒子が焼結してなる貫通導体の側面との間に隙間が生じることが抑制された配線基板、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有する絶縁板と、前記貫通孔内に配置され、側面が前記貫通孔の内側面に接している貫通導体とを備える配線基板であって、前記貫通導体は、金属粒子の焼結体中に前記金属粒子と焼結していない導電性粒子が分散して形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記導電性粒子がグラファイト粒子であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記グラファイト粒子の表面が金属層で被覆されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記貫通孔は、前記絶縁板の上面側における横断面の面積が下面側における横断面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項2または請求項3記載の配線基板。
【0012】
本発明の配線基板の製造方法は、上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有する絶縁板を準備する工程と、
金属粒子を含む金属ペーストを前記貫通孔内に充填する工程と、
前記貫通孔内に前記金属ペーストを充填した前記絶縁板を加熱して、前記金属ペーストの金属粒子を焼結させるとともに、該金属粒子の焼結体を前記貫通孔の内側面に付着させる工程とを備え、
前記貫通孔内に前記金属ペーストを充填した前記絶縁板を加熱する工程において、前記金属粒子の焼結の温度で前記金属粒子と焼結しない導電性粒子を添加した前記金属ペーストを加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配線基板によれば、貫通導体は、金属粒子の焼結体中に、この金属粒子と焼結していない導電性粒子が分散されて形成されていることから、焼結時の収縮量が小さく抑えられている。つまり、導電性粒子の分、貫通導体となる金属ペーストの収縮が抑制されている。そのため、金属ペーストの収縮による貫通導体の側面と貫通孔の内側面との間の隙間が生じることを効果的に抑制することができる。また、分散しているものが導電性粒子であるため、貫通導体の電気抵抗を低く抑えることができる。
【0014】
また、本発明の配線基板によれば、導電性粒子がグラファイト粒子である場合には、グラファイトの導電性が良好であり、低酸素環境下では溶融温度が高いことから、例えば還元雰囲気や真空雰囲気で金属ペーストを焼成するときに、電気抵抗を低く抑えながら、収縮を抑制することが可能な貫通導体を形成することができる。
【0015】
また、本発明の配線基板によれば、グラファイト粒子の表面が金属層で被覆されている場合には、グラファイト粒子に対する金属ペーストの濡れ性を向上させることができるため、金属ペーストとグラファイト粒子との混合がより容易である。そのため、生産性がより高い配線基板とすることができる。
【0016】
また、本発明の配線基板は、貫通孔が、上側における横断面の面積が下側における横断面の面積よりも大きいものである場合には、下側において上側よりも貫通孔内の金属ペーストの体積が小さく、収縮量(絶対量)を小さく抑えることができる。そのため、金属粒子に比べて密度が小さいグラファイト粒子が、貫通孔に充填した金属ペースト中において貫通孔の下側で少なくなり、金属ペーストの収縮を抑制する効果が比較的小さくなったとしても、金属ペーストの収縮に起因する貫通導体と貫通孔との間の隙間の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明の配線基板の製造方法によれば、上記各工程を備え、貫通孔内に金属ペーストを充填した絶縁板を加熱する工程において、金属粒子の焼結の温度で金属粒子と焼結しない導電性粒子を添加した金属ペーストを加熱することから、金属ペーストの収縮を、金属粒
子との焼結による収縮が生じない導電性粒子により抑制することができる。そのため、貫通導体と貫通孔との間に隙間が生じることを抑制して配線基板を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、(b)は(a)のB−B線における断面図である。
【図4】本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の配線基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。
【0020】
図1において、1は絶縁板,2は貫通孔,3は貫通導体,4は導電性粒子,5は配線導体である。絶縁板1に形成された貫通孔2内に貫通導体3が配置され、貫通導体3の側面が貫通孔2の内側面に接して(付着して)配線基板が基本的に形成されている。また、絶縁板1の上下の配線導体5が貫通導体3を介して電気的に接続されている。
【0021】
絶縁板1は、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミック焼結体,ガラス母材中に結晶成分を析出させた結晶化ガラスまたは雲母やチタン酸アルミニウム等の微結晶焼結体からなる、金属材料とほぼ同等の精密な機械加工が可能なセラミック材料(いわゆるマシナブルセラミックス)等のセラミック焼結体により形成されている。
【0022】
絶縁板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作することができる。すなわち、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末に適当な有機バインダおよび有機溶剤を添加混合して作製したスラリーをドクターブレード法やリップコータ法等のシート成形技術でシート状に成形することによってセラミックグリーンシートを作製して、その後、セラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工によって適当な形状および寸法とするとともに、これを約1300〜1500℃の温度で焼成することによって製作することができる。
【0023】
絶縁板1は、四角板状や円板状等であり、例えば上面が、実装や電気チェックを行なう電子部品(図示せず)を搭載(電子部品を配線基板に電気的および機械的に接続して電子装置とするための実装、または電子部品に対して電気的なチェックを施すための一時的な載置)するための部位として使用される。電子部品としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子,弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子,容量素子,抵抗器,半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。
【0024】
絶縁板1は、例えば図2に示すように複数の貫通孔2および貫通導体3が配列されたものであってもよい。この場合には、広い面積の電子部品である、シリコンウエハ等の半導体基板に多数の半導体集積回路素子が縦横の並びに配列形成された半導体素子(図示せず)等に対応する、広い面積の配線基板を提供することができる。なお、図2は、本発明の
配線基板の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0025】
図1に示す例において、絶縁板1の上面および下面に、それぞれ配線導体5が形成されている。配線導体5は、例えば電子部品と電気的に接続されて、この電子部品に対する信号の送受や、電子部品に対する電気的なチェックを行なうためのプローブを接続するための端子として機能する。絶縁板1の上下面の配線導体5は、絶縁板1の上面から下面にかけて(厚み方向に)貫通する貫通孔2内に配置され、側面が貫通孔2の内側面に接している貫通導体3を介して互いに電気的に接続されている。
【0026】
配線導体5と電子部品との電気的な接続は、例えば配線導体5の所定部分に電子部品の電極(図示せず)をはんだ等の導電性接続材を介して接合することによって行なわれる。この場合、配線導体5について、例えば図1に示したように貫通導体3の端面を覆う円形状等の比較的大きなパターンで(いわゆる接続パッドとして)形成しておいて、はんだの接合面積をより広くして、電子部品に対する電気的な接続の信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0027】
配線導体5は、例えば、銅や銀,パラジウム,金,白金,ニッケル,コバルト,タングステン,モリブデン,マンガン,チタン等の金属材料またはこれらの金属材料の合金材料からなる。配線導体5は、例えばタングステンからなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製したタングステンの金属ペーストを、絶縁板1となるセラミックグリーンシートの主面にスクリーン印刷法等の方法で所定パターンに塗布し、その後、セラミックグリーンシートと同時焼成することによって形成することができる。また、配線導体5は、銅やチタン,クロム、アルミニウム、金、白金、ニッケル等の金属材料をスパッタリング法や蒸着法、めっき法等の薄膜形成法によって絶縁板1の主面から貫通導体3の端面にかけて被着させることによって形成することもできる。貫通導体3の形成方法については後述する。
【0028】
貫通孔2は、例えば、直径が100μm〜700μm程度の円形状であり、この貫通孔2の内側に貫通導体3が配置されている。貫通孔2は、円形状に限らず、楕円形状や四角形状,角を円弧状に成形した四角形状等の形状でもかまわない。貫通孔2の長さは、絶縁板1の厚みと同様であり、例えば、約0.2〜3mm程度である。
【0029】
貫通孔2は、例えば、セラミック焼結体からなる絶縁板1に、炭酸ガスレーザ,YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等のレーザ光の照射による孔あけ加工(レーザ加工)を施すことによって形成されている。貫通孔2は、絶縁板1となるセラミックグリーンシートに機械的な打ち抜き加工やレーザ加工を施しておいて、このセラミックグリーンシートを焼成する方法で形成することもできる。
【0030】
貫通孔2について、(未焼成の上記セラミックグリーンシートの状態ではなく)セラミック焼結体からなる絶縁板1に孔あけ加工を施して形成した場合には、焼成時の収縮に起因する寸法精度の低下の影響を受けない。そのため、この場合には、絶縁板1における貫通孔2の位置精度を高くする上で有利である。
【0031】
貫通導体3は、基本的に金属粒子(個々の金属粒子は図示せず)が焼結されて形成されている。金属粒子の材料としては、例えば、銅や銀,パラジウム,金,白金,ニッケル,コバルト,タングステン,モリブデン,マンガン、チタン等の金属材料またはこれらの金属材料の合金材料が挙げられる。貫通導体3は、例えば、後述する上下の配線導体5等の、絶縁板1の上下にそれぞれ配置される導体の間を電気的に接続するためのものである。貫通導体3の電気抵抗を低く抑えることを考慮すれば、金属粒子を形成する金属材料とし
ては銅または銀が特に適している。
【0032】
また、金属粒子は、例えば円形状や楕円形状,不定形状またはこれらがつながった形状等であり、円形状の場合であれば、直径が約5〜10μm程度である。
【0033】
貫通導体3は、例えば銀や銅の粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製した金属ペーストを貫通孔2内に真空吸引を併用したスクリーン印刷法等の方法で埋め込んだ後、この金属ペーストを絶縁板1とともに加熱して金属粒子を焼結させることによって、貫通孔2内に充填させて配置させることができる。この場合、貫通導体3を形成する金属材料に、絶縁板1(貫通孔2の内側面)に対する密着性を向上させること等のためにガラス成分や活性金属であるチタンやアルミニウム等を添加してもよい。なお、金属粒子が焼結して貫通導体3となる時に、同時に貫通導体3の側面が貫通孔2の内側面に付着する。貫通導体3の側面と、貫通孔2の内側面とは、例えば絶縁板1となるセラミックグリーンシートに含まれる酸化ケイ素等のガラス成分を介して互いに接合している。また、活性金属であるチタンが絶縁板1の貫通孔2内側面へ拡散することで接合される。
【0034】
また、貫通導体3は、金属粒子と焼結しない(金属粒子との間で焼結体を形成しない)導電性粒子4を含んでいる。すなわち、貫通導体3は、金属粒子の焼結体中に、金属粒子と焼結していない導電性粒子4が分散して形成されている。
【0035】
このような配線基板によれば、貫通導体3が上記構成であることから、焼結時に貫通導体3の収縮量が小さく抑えられている。つまり、導電性粒子4の分、貫通導体3となる金属ペーストの収縮が抑えられている。そのため、金属ペーストの収縮による貫通導体3の側面と貫通孔2の内側面との間に隙間が生じることを効果的に抑制することができる。
【0036】
このような導電性粒子4を形成する材料としては、グラファイトや、貫通導体3を形成する金属粒子よりも融点が高い金属材料が挙げられる。例えば、金属粒子として銅または銀を用いた場合であれば、導電性粒子4としてはタングステンやモリブデン等のいわゆる高融点金属材料の粒子を用いることができる。このような高融点金属材料の粒子は、貫通導体3を形成する金属粒子同士の焼結温度(例えば金属粒子が銅または銀である場合には約900〜1000℃)では、金属粒子と焼結しない。
【0037】
また、導電性粒子4は、セラミック焼結体からなる粒子の表面に金属層を被着させたものであってもよい。なお、このようなセラミック焼結体からなる粒子の表面に被着させる金属層も、貫通導体3の金属粒子と焼結しない(焼結温度が金属粒子の焼結温度よりも高い)金属材料を用いて形成する必要がある。
【0038】
導電性粒子4がグラファイト粒子である場合には、グラファイトの導電性が良好であり、低酸素環境下で溶融温度が高いことから、例えば還元雰囲気や真空雰囲気で金属ペーストを焼成するときに、電気抵抗を低く抑えながら、収縮を抑制することが可能な貫通導体3を形成することができる。したがって、貫通導体3の導通抵抗を低く抑えながら、貫通導体3と貫通孔2との間のセパレーションを抑制する効果を得る上で、導電性粒子4がグラファイト粒子(符号なし)であることが好ましい。
【0039】
また、導電性粒子4としてグラファイト粒子(符号なし)を用いた場合には、グラファイト粒子の表面を金属層(図示せず)で被覆するようにしてもよい。グラファイト粒子の表面が金属層で被覆されている場合には、グラファイト粒子に対する金属ペーストの濡れ性を向上させることができるため、金属ペーストとグラファイト粒子との混合がより容易である。そのため、配線基板としての生産性をより高くすることができる。
【0040】
導電性粒子4(グラファイト粒子)の表面を被覆する金属層は、例えば貫通導体3を形成する金属粒子と同様の金属材料(銅や銀等)を用いて形成することができる。
【0041】
上記導電性粒子4を被覆する金属層は、めっき法や蒸着法等の方法で導電性粒子4の表面に被着させることができる。この金属層は、必ずしも導電性粒子4の表面の全面を被覆している必要はなく、部分的に導電性粒子4を形成しているグラファイトが露出していてもかまわない。この場合、グラファイトの露出している範囲を導電性粒子4の表面の全面に対して50%程度以下に抑えれば、上記金属ペーストの濡れ性を向上させる効果を有効に得ることができる。
【0042】
導電性粒子4は、貫通導体3の全域において偏りなく収縮を抑える効果を得るために、貫通導体3を形成する金属粒子の焼結体の全域に分散していることが好ましい。言い換えれば、導電性粒子4は、上記程度の寸法(例えば直径が約200μm〜700μm程度の円形状)の貫通孔2内に配置された貫通導体3に偏りなく分散できる程度の大きさおよび形状とである。そのため、導電性粒子4は、例えば球状や楕円球状であり、球状である場合には直径が約10〜20μm程度の大きさとすればよい。また、導電性粒子4が球状以外の形状である場合には、上記直径が約10〜20μm程度の球状のものと同じ程度の体積に調整すればよい。
【0043】
このような導電性粒子4は、金属ペーストの収縮を効果的に抑制する上では、金属ペースト中に5体積%以上程度の割合で含まれていることが好ましい。また、導電性粒子4は、貫通導体3の導通抵抗を低く抑えること等も考慮すれば、7〜10体積%程度の割合で含まれていることがより好ましい。
【0044】
上記配線基板において、例えば、絶縁板1の上面の配線導体5に電子部品(図示せず)の電極や電子部品の電気検査を行なうためのプローブ(図示せず)が接続され、下面の配線導体5が回路基板等の外部電気回路基板(図示せず)に接続される。そして、絶縁板1の上面の配線導体5と、貫通導体3と、絶縁板1の下面の配線導体5とを介して、電子部品が外部電気回路と電気的に接続され、信号の送受や、電子部品に対する電気的なチェック等が行なわれる。なお、電子部品に対する電気的なチェックは、例えば半導体集積回路素子の集積回路が正常に作動するか否かの検査である。
【0045】
この場合には、半導体基板(シリコンウエハ等)に形成された多数の半導体集積回路素子に対して、個片に切断する前に一括して検査を行なうために、例えば図2に示したように、複数の貫通導体3が、半導体基板と同じ程度の大きさの絶縁板1に配列形成されたものが使用される。この場合の配線基板は、いわゆるプローブカードとして使用することができる。
【0046】
図3(a)は、本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線における断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。図3に示す例において、配線基板は、貫通孔2の横断面の面積が上側(絶縁板1の上面側)において下側(絶縁板1の下面側)よりも大きい。この場合には、下側において上側よりも貫通孔2内の金属ペーストの体積が小さく、収縮量(絶対量)が小さい。そのため、金属粒子に比べて密度が小さいグラファイト粒子(導電性粒子4)が、貫通孔2に充填した金属ペースト中において絶縁板1の下面側で少なくなり、金属ペーストの収縮を抑制する効果が比較的小さくなったとしても、金属ペーストの収縮に起因する貫通導体3と貫通孔2との間の隙間の発生を抑制することができる。
【0047】
つまり、この場合(貫通孔2がいわゆるテーパ状である場合)には、グラファイト粒子である導電性粒子4の分散量が相対的に小さくなりやすい貫通孔2の下側で貫通導体3(
金属ペースト)の量を少なくして、貫通導体3の焼成時の収縮量を小さく抑えることができる。なお、貫通孔2の上(下)側は、貫通孔2内に金属ペーストおよび導電性粒子4を充填する時の上(下)側であり、実際に配線基板を使用する時の上下左右の方向とは異なる場合がある。
【0048】
貫通孔2について、上記のようにテーパ状とする場合、例えば貫通導体3を形成する金属粒子が銅または銀であり、導電性粒子4がグラファイト粒子であり、貫通孔2の長さが約0.2〜3mm程度のときであれば、上側における断面の面積は、下側における断面の面
積に対して約1.5〜3倍程度に設定すればよい。
【0049】
図4は、本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。図4において図1および図3と同様の部位には同様の符号を付している。
【0050】
図4に示す例においては、複数の配線基板を上下に積層して(多層配線基板として)用いている。この例においては、それぞれ別々に作製した2つの配線基板を、ガラスや樹脂等の接合材(図示せず)を介して接合している。また、上下の配線基板の貫通導体3同士は、はんだや導電性接着剤等の導電性接合材(図示せず)を介して機械的および電気的に接続されている。
【0051】
上下の配線基板は、それぞれ貫通孔2がテーパ状であり、上側の配線基板の貫通導体3の下端部分(面積が比較的小さい面)が下側の配線基板の貫通導体3の上端部分(面積が比較的大きい面)と接続されている。そのため、上下の貫通導体3同士の位置合わせが容易であり、絶縁基体としての製作も容易である。
【0052】
このような場合には、例えば3mmを超えるような比較的厚い配線基板の製作が容易である。また、このような厚い配線基板に形成する長い貫通孔2内の貫通導体3において、導電性粒子4としてのグラファイト粒子の偏り、つまり貫通導体3となる金属ペーストの収縮を抑制する効果の偏りをより有効に抑制することもできる。
【0053】
次に、本発明の配線基板の製造方法について、図5を参照して説明する。図5(a)〜(d)は、それぞれ本発明の配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。図5において図1と同様の部位には同様の符号を付している。なお、以下の説明において前述した配線基板と同様の事項については説明を省略する。
【0054】
まず、図5(a)に示すように、上面から下面にかけて貫通する貫通孔2を有する絶縁板1を準備する。
【0055】
絶縁板1は、前述した材料と同様の材料(酸化アルミニウム質焼結体等のセラミック焼結体)を用い、同様の方法で作製することができる。すなわち、例えば、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末に適当な有機バインダおよび有機溶剤を添加混合して作製したスラリーをシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製し、その後、セラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工によって適当な形状および寸法とするとともに、これを約1300〜1500℃の温度で焼成することによって絶縁板1を作製することができる。
【0056】
この場合、絶縁板1は、例えば四角板状であり、目的(例えば半導体基板用のプローブカード等)に応じた寸法で形成する。配線基板をプローブカードとして用いる場合であれば、絶縁板1にはある程度の剛性が必要であるため、絶縁板1は厚みが1mm以上になるようにして作製する。
【0057】
貫通孔2は、前述したように、作製した絶縁板1に対して炭酸ガスレーザ,YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等のレーザ光の照射による孔あけ加工(レーザ加工)を施すことによって形成することができる。貫通孔2は、上記セラミックグリーンシートに機械的な打ち抜き加工やレーザ加工を施しておいて、このセラミックグリーンシートを焼成する方法で形成することもできる。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、金属粒子(図示せず)を含む金属ペースト13を貫通孔2内に充填する。
【0059】
金属ペースト13は、例えば前述した貫通導体3となる金属材料(銅や銀等)の粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製することができる。また、金属ペースト13の貫通孔2内への充填は、真空吸引を併用したスクリーン印刷法等の方法で行なうことができる。
【0060】
金属ペースト13に用いる金属粒子の形状および寸法は、貫通孔2の寸法や、生産性,コスト等の都合に応じて適宜選定すればよい。例えば、銅の粒子を用いる場合であれば、直径が約5〜10μm程度の球状の金属粒子(銅粒子)を用いればよい。
【0061】
次に、図5(c)に示すように、貫通孔2内に金属ペースト13を充填した絶縁板1を加熱して、金属ペースト13の金属粒子を焼結させるとともに、金属粒子の焼結体を貫通孔2の内側面に付着させる。
【0062】
また、この工程においては、金属粒子の焼結の温度で金属粒子と焼結しない導電性粒子4を金属ペースト13に添加して加熱する。導電性粒子4は、例えば上記金属ペースト13を作製する際に、金属ペースト13中に導電性粒子4を添加しておく。
【0063】
金属ペースト13に添加する導電性粒子4は、例えば前述したようにグラファイトを用いて作製する。導電性粒子4として用いるグラファイト粒子は、例えば塊状のグラファイトに対して機械的な粉砕や分級等の加工を施すことによって作製することができる。
【0064】
また、グラファイト粒子を金属ペースト13に添加して混練する際には、金属粉末とグラファイト粉末とを容器内に入れ混ぜ合わせた後に、この容器内にバインダーを入れて混合し、かくはんする。
【0065】
この工程によって、金属粒子の焼結体に、金属粒子と焼結していない導電性粒子4が分散してなる貫通導体3を形成し、この貫通導体3の側面を貫通孔2の内側面に付着させる。この場合、貫通導体3は、例えば絶縁板1に含まれるガラス材が金属粒子の焼結体中に拡散することによって、貫通孔2の内側面に接合される。
【0066】
金属粒子を焼結させる温度は、用いる金属粒子の材料の融点等に応じて適宜設定すればよい。例えば、金属粒子として銅の粒子を用いた場合であれば、約850〜1000℃に加熱す
ればよい。
【0067】
本発明の配線基板の製造方法によれば、上記各工程を備え、金属粒子の焼結の温度で焼結しない導電性粒子を添加した金属ペースト13を加熱することから、金属粒子を焼結させる際に金属ペースト13の収縮を、収縮しない導電性粒子4によって抑制することができる。そのため、貫通導体3と貫通孔2との間に隙間が生じることを抑制して配線基板を製作することができる。
【0068】
貫通導体3を貫通孔2内に配置した配線基板は、必要に応じて、例えば図5(d)に示
すように配線導体5を被着させる。
【0069】
配線導体5は、例えば、銅やチタン,ニッケルクロム,アルミニウム,金,白金、ニッケル等の金属材料をスパッタリング法や蒸着法、めっき法等の薄膜形成法によって絶縁板1の主面から貫通導体3の端面にかけて被着させることによって形成することができる。
【0070】
以上の工程によって、プローブカード等として用いられる配線基板を製作することができる。製作した配線基板は、例えば上面側の配線導体5がプローブ(図示せず)を介して半導体素子(図示せず)の電極と電気的に接続され、下面側の配線導体5が外部電気回路と電気的に接続される。外部電気回路は、例えば半導体素子の電気的な検査を行なうための回路備えた検査装置である。上下の配線導体5同士は貫通導体3を介して互いに電気的に接続されている。半導体素子の電極は、プローブおよび配線基板(上面の配線導体5と貫通導体3と下面側の配線導体5と)を介して外部電気回路と電気的に接続され、正常に作動するか否か等の電気的な検査が行なわれる。
【実施例】
【0071】
酸化アルミニウム質焼結体からなる厚みが約3000μm(3mm)の絶縁板に直径が約500μm(長さが約3000μm)の貫通孔を50個、レーザ加工で形成し、この貫通孔内にそれ
ぞれ貫通導体として銅粒子の焼結体を配置して、実施例の配線基板を作製した。貫通導体には、導電性粒子として粒径が約10μmのグラファイト粒子を10体積%の割合で添加した。貫通孔の形状は図1に示したような円柱状とした。
【0072】
銅粒子の焼結体は、粒径が10μmの銅粒子を有機溶剤およびバインダと混練して作製した金属ペーストを貫通孔内に充填し、約900℃に加熱して焼結させることによって形成し
た。この金属ペーストに上記のように導電性粒子を添加しておいて、金属ペーストと同時に加熱した。
【0073】
また、比較例として、導電性粒子を添加しないこと以外は上記と同様とした、従来技術の配線基板を作製した。なお、実施例の配線基板および比較例の配線基板ともに100個ず
つ作製した。
【0074】
作製した実施例および比較例の各配線基板100個について、貫通導体と貫通孔との間の
隙間の有無を断面観察によって検査した。
【0075】
その結果、実施例の配線基板では貫通孔と貫通導体との間の隙間は確認されなかった。これに対し、比較例の配線基板では1個の配線基板において20個の貫通導体に、他の1個の配線基板において10個の貫通導体に、それぞれ貫通導体と貫通孔との間に隙間が発生していた。
【0076】
以上の結果により、本発明の配線基板における、貫通導体と貫通孔との間の隙間の発生を抑制する効果を確認することができた。
【0077】
なお、本発明の配線基板および配線基板の製造方法は、上記実施の形態や実施例に記載した例に限定されるものではなく、種々の変形は可能である。例えば、絶縁板の上面に樹脂絶縁層と、配線導体と電気的に接続された薄膜配線導体とを交互に(必要に応じて複数層)被着させるとともに、薄膜配線導体の一部を最上層の樹脂絶縁層の上面に露出させて、この薄膜配線導体を半導体集積回路素子等の電子部品にプローブ等を介して電気的に接続させるようにしてもよい。この場合には、電子部品への電気的な接続を、より微細で高密度に行なうことができる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・絶縁板
2・・・貫通孔
3・・・貫通導体
4・・・導電性粒子
5・・・配線導体
13・・・金属ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有する絶縁板と、前記貫通孔内に配置され、側面が前記貫通孔の内側面に接している貫通導体とを備える配線基板であって、前記貫通導体は、金属粒子の焼結体中に前記金属粒子と焼結していない導電性粒子が分散して形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記導電性粒子がグラファイト粒子であることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記グラファイト粒子の表面が金属層で被覆されていることを特徴とする請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記貫通孔は、上側における横断面の面積が下側における横断面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項2または請求項3記載の配線基板。
【請求項5】
上面から下面にかけて貫通する貫通孔を有する絶縁板を準備する工程と、
金属粒子を含む金属ペーストを前記貫通孔内に充填する工程と、
前記貫通孔内に前記金属ペーストを充填した前記絶縁板を加熱して、前記金属ペーストの金属粒子を焼結させるとともに、該金属粒子の焼結体を前記貫通孔の内側面に付着させる工程とを備え、
前記貫通孔内に前記金属ペーストを充填した前記絶縁板を加熱する工程において、前記金属粒子の焼結の温度で前記金属粒子と焼結しない導電性粒子を添加した前記金属ペーストを加熱することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−222328(P2012−222328A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90238(P2011−90238)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】