説明

配線基板の製造装置及び配線基板の製造方法

【課題】配線膜を良好に形成する。
【解決手段】配線基板の製造装置1は、基板K上に所定の配線パターンの配線膜を形成して配線基板を製造する配線基板の製造装置であって、基板Kに非導通の金属膜を形成する金属膜の形成装置2と、基板Kに形成された非導通の金属膜上に、導電性インクの液滴を吐出して配線膜を形成する配線膜の形成装置3とを備える。これにより、導電性インク中の金属粒子が非導通の金属膜に密着して固定されるため、加熱などによる乾燥後も基板上の配線膜の形状を維持することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配線基板の製造装置及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、配線基板を製造する際には、リソグラフィ技術が多く用いられている。ところが、このリソグラフィ技術では、製造工程数が多く、配線基板を簡便に作成することが困難であり、製造時間も長くなってしまう。このため、製造工程数の削減、すなわち製造時間の短縮のため、スクリーン印刷が用いられることがあるが、このスクリーン印刷では、印刷時に基板への接触が生じるため、形状を安定させて配線膜を形成することは難しい。
【0003】
そこで、配線膜の形状を安定化させるため、基板に非接触で配線膜を形成する技術として、インクジェット方式の塗布方法が用いられる(例えば、特許文献1参照)。このインクジェット方式の塗布では、配線形成用のインクを吐出させることにより基板上にインクによって配線パターンが描画される。その後、基板上のインクが加熱により乾燥され、基板上に配線膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−102485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のようにインクによる配線パターンの描画後に乾燥工程が存在する場合などには、その乾燥工程の加熱によりインクの粘度が低下し、基板上のインクが表面張力により丸まるような現象が生じることがある。このため、基板上の配線膜の形状は安定せず、配線基板の品質が低下してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、配線膜を良好に形成することができる配線基板の製造装置及び配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る配線基板の製造装置は、基板に非導通の金属膜を形成する金属膜の形成装置と、基板に形成された非導通の金属膜上に、導電性インクの液滴を吐出して配線膜を形成する配線膜の形成装置とを備える。
【0008】
本発明の実施形態に係る配線基板の製造方法は、基板に非導通の金属膜を形成する工程と、基板に形成された非導通の金属膜上に、導電性インクの液滴を吐出して配線膜を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線膜を良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る配線基板の製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す配線基板の製造装置が製造する配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1に示す配線基板の製造装置が備える金属膜の形成装置が形成する非導通の金属膜の大きさを示す平面図である。
【図4】図1に示す配線基板の製造装置が備える描画装置の概略構成を示す図である。
【図5】非導通の金属膜が基板上に存在する場合の加熱による配線膜の変化を説明するための説明図である。
【図6】図5の比較例として、非導通の金属膜が基板上に存在しない場合の加熱による配線膜の変化を説明するための説明図である。
【図7】非導通の金属膜の厚さとその表面抵抗値との関係を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係る配線基板の製造装置が製造する配線基板の概略構成を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る配線基板の製造装置が製造する配線基板の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係る配線基板の製造装置1は、基板K上に非導通の金属膜M1(図2参照)を形成する金属膜の形成装置2と、基板K上の非導通の金属膜M1上に配線膜M2(図2参照)を形成する配線膜の形成装置3とを備えている。
【0013】
金属膜の形成装置2は、試料台2a上の基板Kに金属製のターゲット2bの粒子を付着させ、基板Kの表面に非導通の金属膜M1を形成するスパッタリング装置である。詳述すると、このスパッタリング方式の金属膜の形成装置2は、真空中に不活性ガスを注入しながら、試料台2a上の基板Kとターゲット2bとの間に電圧を印加し、グロー放電を発生させて不活性ガスをイオン化し、さらに、そのガスイオンをターゲット2bに衝突させてターゲット2bの粒子をはじき飛ばし、その粒子を試料台2a上の基板Kの表面に付着させて非導通の金属膜M1を形成する。なお、基板Kとしては、例えば、樹脂やセラミック製の基板が用いられる。
【0014】
非導通の金属膜M1は、不連続の金属膜であり、高い表面抵抗(例えば、1.0×1011[Ω/□]程度)、すなわち絶縁性を有する無機膜である。この非導通の金属膜M1は、例えば、金属材料が基板Kの表面全体にわたって粒状(点状)に付着することで形成されるものであり、基板Kに配線膜M2を固定するアンカー層として機能する。このような非導通の金属膜M1は、例えば、樹脂体に金属のような光沢をつける装飾膜として使用されることもある。なお、図2では、非導通の金属膜M1は連続した一層として示されているが、これは簡略化して示したものであり、実際には、前述のように不連続な金属層である(他の図でも同様である)。
【0015】
前述の非導通の金属膜M1の形成では、図3に示すように、非導通の金属膜M1の大きさ(非導通の金属膜M1の平面積)を基板Kの大きさ(基板Kの平面積)以下で配線膜M2の大きさ(配線膜M2の平面積)、すなわち配線膜M2を形成する領域R1の大きさ以上とするように非導通の金属膜M1を形成する。これにより、基板Kの表面において配線膜M2を形成する領域R1には、必ず非導通の金属膜M1が存在することになる。
【0016】
配線膜の形成装置3は、基板Kに形成された非導通の金属膜M1上に配線膜M2形成用の導電性インクを塗布して配線パターンを描画する描画装置3aと、その基板K上の非導通の金属膜M1に描画された導電性インクを乾燥させる乾燥装置3bとを備えている。
【0017】
描画装置3aは、インクジェット方式の塗布により、基板Kに形成された非導通の金属膜M1上に配線膜M2形成用の導電性インクの液滴を吐出し、配線パターンを描画するインクジェット塗布装置である(詳しくは、後述する)。
【0018】
乾燥装置3bは、ホットプレート3b1上に基板Kを載置し、その基板Kに形成された非導通の金属膜M1上に描画された導電性インク(導電性インク膜)を加熱する加熱装置である。この加熱により導電性インクが乾燥されて、配線膜M2が非導通の金属膜M1上に形成される。この配線膜M2は導電性を有し、配線パターンに合わせて形成された金属膜である。
【0019】
なお、第1の実施形態では、前述の各装置間の基板Kの移動はロボットハンドリングやベルトコンベアなどの搬送装置により行われるが、これに限るものではない。また、前述の金属膜の形成装置2としてスパッタリング装置を用いているが、これに限るものではなく、例えば、金属材料を蒸発させて基板Kの表面に付着させ、その基板Kの表面に非導電の金属膜M1を形成する蒸着装置を用いても良い。また、スパッタリング装置でも、グロー放電を生じさせる方式に限らず、高周波方式やマグネトロン方式、イオンビーム方式など他の方式によるものを用いても良い。
【0020】
また、第1の実施形態では、乾燥装置3bとして加熱装置を用いているが、これに限るものではなく、乾燥対象の材料に応じて、減圧装置などの他の装置を用いても良い。このような乾燥装置3bは、導電性インクの種類、すなわち自然乾燥など乾燥の仕方によっては不要となるため、必須の装置ではなく、乾燥工程も必須の工程ではない。なお、自然乾燥するような導電性インクでも、基板上に塗布された導電性インクが密着力不足により丸まるような現象が生じることがある。
【0021】
次に、前述の描画装置3aについて図4を参照して詳しく説明する。
【0022】
図4に示すように、描画装置3aは、基板Kが載置されるステージ11と、そのステージ11をY軸方向に移動させるステージ移動装置12と、ステージ11上の基板Kに向けて液滴を吐出する複数の塗布ヘッド13と、それらの塗布ヘッド13を支持するヘッド支持部14と、ステージ移動装置12やヘッド支持部14などを支持する架台15と、各部を制御する制御装置16とを備えている。
【0023】
ステージ11は、基板Kを載せる載置面を有しており、Y軸方向に移動可能にステージ移動装置12上に設けられている。このステージ11には、基板Kを自重により載置しているが、これに限るものではなく、例えば、その基板Kを保持するために静電チャックや吸着チャックなどの機構を設けても良い。
【0024】
ステージ移動装置12は、ステージ11をY軸方向に案内して移動させる移動装置であり、架台15の上部に固定されて設けられている。このステージ移動装置12は制御装置16に電気的に接続されており、その駆動が制御装置16により制御される。ステージ移動装置12としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などが用いられる。
【0025】
各塗布ヘッド13は、Y軸方向と直交するX軸方向に沿って、例えば千鳥状あるいは直線状にステージ11のX軸方向の幅全域にわたって配列されてヘッド支持部14に設けられている。これらの塗布ヘッド13は、ステージ11上の基板Kの上面に向けて導電性インクを複数の吐出孔(例えば、ノズル)から個別に液滴として吐出(噴射)するインクジェット方式の塗布ヘッドである。各塗布ヘッド13は制御装置16に電気的に接続されており、その駆動が制御装置16により制御される。
【0026】
前述の導電性インクは、その導電性インクを貯留するインクタンクからチューブなどの配管を介して各塗布ヘッド13に供給される。この導電性インクとしては、例えば、基板K上に残留物として残留する金属粒子と、その金属粒子が分散している分散媒とを含む溶液が用いられる。
【0027】
ヘッド支持部14は、X軸方向に長尺な門型の形状に形成されており、架台15上のステージ移動装置12を跨ぐように架台15の上面に設けられている。このヘッド支持部14の梁部がX軸方向に平行にステージ11の載置面に対して水平にされ、ヘッド支持部14の脚部が架台15の上面に固定されている。
【0028】
架台15は、床面上に設置され、ステージ移動装置12やヘッド支持部14などを床面から所定の高さ位置に支持する支持台である。この架台15の上部にステージ移動装置12やヘッド支持部14などが設けられている。また、架台15の内部には、制御装置16が設けられている。
【0029】
制御装置16は、各部を集中的に制御する制御部と、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。各種情報としては、形成する配線の形状としての配線パターン(塗布パターンデータ)や塗布速度などの塗布情報などがあり、それらの情報はあらかじめ記憶部に記憶されている。なお、記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。
【0030】
このような描画装置3aは、制御装置16により塗布パターンデータなどに基づいてステージ移動装置12及び各塗布ヘッド13を制御し、非導通の金属膜M1形成済みの基板Kが載置されたステージ11をY軸方向に移動させ、ステージ11上の基板Kを各塗布ヘッド13に対して相対移動させながら、その基板Kに向けて導電性インクの液滴を順次吐出する塗布を行い、基板Kの非導通の金属膜M1上に導電性インクの液滴を所定の配線パターンに合わせて配設し、導電性インクによって所定の配線パターンを描画する。基板Kに配設された導電性インクの液滴は互いに付着し合って導電性インク膜となる。
【0031】
その後、前述の導電性インク膜が乾燥装置3bによる加熱によって乾燥され、導電性インク中の金属粒子が非導通の金属膜M1に密着し、その非導通の金属膜M1上に配線膜M2が形成される。これにより、配線基板が完成する。
【0032】
次に、非導通の金属膜M1が基板K上に存在する場合と、非導通の金属膜M1が基板K上に存在しない場合とにおいて、形成される配線膜M2の形状の違いについて図5及び図6を参照して説明する。なお、図5及び図6では、配線パターンP1は、直線のみで示されているが、これは簡略化して示したものであり、実際には、複雑な形状の配線パターンである。
【0033】
まず、図5に示すように、基板K上に非導通の金属膜M1が存在する場合である。この場合には、基板Kに形成された非導通の金属膜M1上に導電性インクを塗布し、この導電性インクによって配線パターンP1を形成し(図5中の左図参照)、その後、基板K上の配線パターン(形成する配線の形状に合わせて形成された導電性インク膜)P1を加熱する(図5中の右図参照)。このとき、導電性インクに含まれる金属粒子と非導通の金属膜M1とは密着しており、この密着力は加熱時でも導電性インクの表面張力に打ち勝つため、基板K上の配線パターンP1の形状は崩れずに維持される。
【0034】
次に、図6に示すように、基板K上に非導通の金属膜M1が存在しない場合である。この場合には、基板K上に直接導電性インクを塗布し、この導電性インクによって配線パターンP1を形成し(図6中の左図参照)、その後、前述と同様に、基板K上の配線パターンP1を加熱する(図6中の右図参照)。このとき、導電性インクに含まれる金属粒子と基板Kの表面とは十分に密着せず、導電性インクは加熱時に表面張力により丸まるため、基板K上の配線パターンP1の形状は崩れてしまう。
【0035】
ここで、非導通の金属膜M1は、導電性インクに含まれる金属粒子との付着性が良い材料(例えば、導電性インクに含まれる金属粒子と同じ材料)により形成される。例えば、非導通の金属膜M1は、Au、Ag、Cu、Ni、Ti、Sn及びCrのいずれかの単体又は合金により形成されることが望ましい。
【0036】
一例として、非導通の金属膜M1の材料としてSnを用いた場合には、図7に示すように、表面抵抗値は膜厚100[nm]以下で1.0×1011[Ω/□]となる。したがって、非導通の金属膜M1の材料としてSnを用いる場合には、非導通の金属膜M1の膜厚を100[nm]以下にするように基板K上に非導通の金属膜M1を形成する。これにより、非導通の金属膜M1は十分な絶縁性を有することになる。
【0037】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、基板K上に非導通の金属膜M1を形成し、その非導通の金属膜M1上に導電性インクの液滴を吐出して配線膜M2を形成する。これにより、導電性インク中の金属粒子が非導通の金属膜M1に密着して固定されるため、加熱などによる乾燥後も基板K上の配線膜M2の形状を維持することが可能となるので、配線膜M2を良好に形成することができる。したがって、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0038】
また、インクジェット方式によって、導電性インクの液滴を基板K上の配線を形成する部分、つまり、配線パターンに合わせて直接滴下するようにしたので、リソグラフィ技術やスクリーン印刷技術に比べて、マスクの配置工程などの工程数を削減することが可能となるので、配線膜M2の形成時間、ひいては、配線基板の製造時間の短縮を図ることができる。
【0039】
また、導電性インクに含まれる金属粒子との付着性が良い材料により非導通の金属膜M1を形成することから、非導通の金属膜M1に対する導電性インク中の金属粒子の密着力が向上するので、基板K上の配線膜M2の形状を確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。特に、Au、Ag、Cu、Ni、Ti、Sn及びCrのいずれかの単体又は合金により非導通の金属膜M1を形成することが望ましい。
【0040】
また、非導通の金属膜M1をその大きさが基板Kの大きさ以下で配線膜M2の大きさ以上となるように形成することから、配線膜M2の下、すなわち配線膜M2を形成する領域R1には必ず非導通の金属膜M1が存在することになるので、その領域R1の一部に非導通の金属膜M1が存在せず、その部分に塗布された導電性インクが加熱時などに丸く集まるようなことが無くなる。これにより、基板K上の配線膜M2の形状を確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図8を参照して説明する。
【0042】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0043】
図8に示すように、第2の実施形態では、基板K上に非導通の金属膜M1を形成し、その非導通の金属膜M1上に再度、非導通の金属膜M3を形成し、その後、非導通の金属膜M3上に配線膜M2を形成する。なお、第2の実施形態では、非導通の金属膜M1、M3を二層に形成しているが、これに限るものではなく、三層以上の複数層に形成しても良い。
【0044】
前述の積層では、第1の非導通の金属膜M1と第2の非導通の金属膜M3とは異なる材料により形成される。例えば、配線膜M2の形成にAuやAg、Cuなどの金属粒子と半田(例えば、SnやPbが主成分)の金属粒子とを含む導電性インクを用いる場合には、NiやSn、Tiなどの金属材料により第1の非導通の金属膜M1を形成し、AuやAg、Cuなどの金属材料により第2の非導通の金属膜M3を形成する。なお、第1の非導通の金属膜M1及び第2の非導通の金属膜M3の各々の膜厚は、積層した状態において所定の表面抵抗値、すなわち充分な絶縁性が得られるようにそれぞれ設定されている。
【0045】
このような非導通の金属膜M1、M3を形成する場合には、金属膜の形成装置2において、第1の非導通の金属膜M1の形成後、用いたターゲット2bを異なる材料のターゲットに交換し、前述と同様にスパッタリング法により第1の非導通の金属膜M1上に第2の非導通の金属膜M3を形成する。ただし、これに限るものではなく、前述と同じもう一台の金属膜の形成装置を用意し、第1の非導通の金属膜M1の形成後、もう一台の金属膜の形成装置により第1の非導通の金属膜M1上に第2の非導通の金属膜M3を形成しても良い。なお、装置間の基板Kの移動は前述と同様にロボットハンドリングやベルトコンベアなどの搬送装置により行われる。
【0046】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、基板K上に非導通の金属膜M1、M3を重ねて形成、すなわち非導通の金属膜を積層することによって、導電性インク中の金属粒子が非導通の各金属膜M1、M3に密着して固定されやすくなる。これにより、基板K上の配線膜M2の形状を確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0047】
また、複数層の非導通の金属膜M1、M3を異なる材料により形成することによって、異なる種類の金属粒子を有する導電性インクにより配線膜M2を形成する場合でも、導電性インク中の金属粒子が非導通の各金属膜M1、M3に確実に密着することになる。これにより、基板K上の配線膜M2の形状をより確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図9を参照して説明する。
【0049】
第3の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0050】
図9に示すように、第3の実施形態では、基板K上に非導通の金属膜M1を形成する前に、基板Kの表面にその基板Kからの放出ガスの発生を抑止する抑止膜M4を形成し、その後、抑止膜M4上に非導通の金属膜M1を形成し、その非導通の金属膜M1上に配線膜M2を形成する。
【0051】
抑止膜M4は、基板K上に非導通の金属膜M1を形成する際にその基板Kから発生する放出ガスを抑え込むための層である。この抑止膜M4としては、例えば、SiO(二酸化ケイ素)やSi(チッ化ケイ素)などを用いることが可能である。特に、基板Kが樹脂系の基板である場合には、基板Kは水分を多く含むため、基板K上に非導通の金属膜M1を形成する際にその基板Kから放出ガスが発生しやすい。この放出ガスは基板Kに対する非導通の金属膜M1の結合を妨げてしまう。このため、基板Kと非導通の金属膜M1との間に抑止膜M4を形成する。この抑止膜M4は、前述の抑止機能により、基板Kに非導通の金属膜M1を固定するアンカー層として機能する。
【0052】
このような抑止膜M4を形成する場合には、金属膜の形成装置2において、非導通の金属膜M1の形成前に、抑止膜M4形成用のターゲットを装着し、前述と同様にスパッタリング法により基板K上に抑止膜M4を形成する。ただし、これに限るものではなく、前述と同じもう一台の金属膜の形成装置を用意して、非導通の金属膜M1の形成前に、もう一台の金属膜の形成装置により基板K上に抑止膜M4を形成しても良い。なお、装置間の基板Kの移動は前述と同様にロボットハンドリングやベルトコンベアなどの搬送装置により行われる。
【0053】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、基板K上にその基板Kからの放出ガスの発生を抑止する抑止膜M4を形成し、その抑止膜M4上に非導通の金属膜M1を形成することによって、基板Kから発生する放出ガスが抑えられ、非導通の金属膜M1が抑止膜M4を介して基板Kに確実に結合することになる。これにより、非導通の金属膜M1が密着性良く基板K上に存在することになるため、前述のように基板K上の配線膜M2の形状を確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0054】
また、スパッタリング法により基板K上に抑止膜M4を形成することによって、スパッタリングによるターゲット2bの粒子の衝突により基板Kの表面が荒らされ、基板Kの表面積が増加するので、基板Kに対する抑止膜M4の密着性が向上する。これにより、基板Kから発生する放出ガスをより確実に抑えることが可能となり、非導通の金属膜M1が抑止膜M4を介して基板Kにより確実に結合することになる。したがって、前述のように非導通の金属膜M1が密着性良く基板K上に存在することになるため、基板K上の配線膜M2の形状を確実に維持することが可能となり、その結果、配線膜M2の形状を安定させて配線基板の品質を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 配線基板の製造装置
2 金属膜の形成装置
3 配線膜の形成装置
K 基板
M1 非導通の金属膜
M2 配線膜
M3 非導通の金属膜
M4 抑止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に非導通の金属膜を形成する金属膜の形成装置と、
前記基板に形成された前記非導通の金属膜上に、導電性インクの液滴を吐出して配線膜を形成する配線膜の形成装置と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造装置。
【請求項2】
前記金属膜の形成装置は、前記導電性インクに含まれる金属粒子との付着性が良い材料により前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造装置。
【請求項3】
前記金属膜の形成装置は、Au、Ag、Cu、Ni、Ti、Sn及びCrのいずれかの単体又は合金により前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の配線基板の製造装置。
【請求項4】
前記金属膜の形成装置は、前記基板に前記非導通の金属膜を異なる材料で積層することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の配線基板の製造装置。
【請求項5】
前記金属膜の形成装置は、前記基板にその基板からの放出ガスの発生を抑止する抑止膜を形成し、その抑止膜上に前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の配線基板の製造装置。
【請求項6】
前記金属膜の形成装置は、スパッタリング法により前記基板に前記抑止膜を形成することを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造装置。
【請求項7】
基板に非導通の金属膜を形成する工程と、
前記基板に形成された前記非導通の金属膜上に、導電性インクの液滴を吐出して配線膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記非導通の金属膜を形成する工程では、前記導電性インクに含まれる金属粒子との付着性が良い材料により前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項7記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記非導通の金属膜を形成する工程では、Au、Ag、Cu、Ni、Ti、Sn及びCrのいずれかの単体又は合金により前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項7又は8記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記非導通の金属膜を形成する工程では、前記基板に前記非導通の金属膜を異なる材料で積層することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記非導通の金属膜を形成する工程では、前記基板にその基板からの放出ガスの発生を抑止する抑止膜を形成し、その抑止膜上に前記非導通の金属膜を形成することを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記非導通の金属膜を形成する工程では、スパッタリング法により前記基板に前記抑止膜を形成することを特徴とする請求項11記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89868(P2013−89868A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230884(P2011−230884)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】