説明

配線基板及びその製造方法と半導体装置

【課題】接続パッド上にはんだが設けられるフリップチップ実装用の配線基板において、接続パッドのピッチを狭小化できる配線基板を提供する。
【解決手段】複数の接続パッド22と接続パッド22にそれぞれ繋がる引き出し配線部24とが表層側の絶縁層30に配置された構造を含み、引き出し配線部24は接続パッド22から屈曲して配置され、接続パッド22上に突出するはんだ層42が設けられており、接続パッド22は長方形状を有し、引き出し配線部24は接続パッド22の長手方向の端部全体から屈曲して引き出されており、接続パッド22と引き出し配線部24とが表層側の絶縁層30から露出して設けられている。引き出し配線部24上のはんだが屈曲部B側に移動して接続パッド22上に突出するはんだ層42が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法と半導体装置に係り、さらに詳しくは、半導体チップなどがフリップチップ接続される接続パッド上にはんだ層を備えた配線基板及びその製造方法と半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップをフリップチップ実装するための配線基板がある。半導体チップをフリップチップ実装する方式としては、配線基板の接続パッド上に予めはんだを形成しておき、半導体チップのバンプをはんだを介して配線基板の接続パッドに接合する方式がある。半導体チップのバンプと配線基板の接続パッドとの十分な接合強度を得るには、配線基板の接続パッド上に十分なボリュームのはんだを確保する必要がある。
【0003】
図1には、従来技術の配線基板の接続パッドの様子が示されている。図1に示すように、配線基板100では、接続パッド220を備えた複数の配線200が層間絶縁層300の上に形成されており、複数の配線200の接続パッド220を含む領域の上に開口部400aが設けられたソルダレジスト400が形成されている。
【0004】
ソルダレジスト400の開口部400aに露出する配線200は、中央部に配置された接続パッド220とその上下に繋がる引き出し配線部240とから構成される。引き出し配線部240は接続パッド220の長手方向と同一方向に延在して接続パッド220と共に直線状に配置されている。また、接続パッド220の幅WAは引き出し配線部240の幅WBより太く設定されている。
【0005】
そして、配線200の接続パッド220上に突出するはんだ層が形成される。はんだ層の形成方法としては、ソルダレジスト400の開口部400aに露出する配線200(引き出し配線部240及び接続パッド220)の上にはんだをパターン化して形成し、リフロー加熱する。
【0006】
このとき、図2に示すように、はんだが溶融する際に、はんだの表面張力によって引き出し配線部240上のはんだが幅広の接続パッド220上に移動することにより、接続パッド220上にはんだが集中して配置される。このようにして、接続パッド220の上に所要のボリュームのはんだ層(斜線部)が上側に突出した状態で形成される。
【0007】
これに類似した技術として、特許文献1には、電子部品がフリップチップ実装されるフリップチップ実装基板において、ソルダレジストの開口部に配線パターンと接続パッドとを露出させ、配線パターンの幅に対して接続パッドの幅を大きく設定し、配線パターン上のはんだを接続パッド上に集めてはんだバンプを形成することが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、屈曲した構造のバンプ受けパッドと直線状のパターン線とを使用することにより配線パターンの微細化を図ると共に、バンプ受けパッド及びパターン線の上に設けられるレジストを同一の円筒状で除去することにより各バンプ受けパッドの露出面積を同一にしてそれに形成される導電性バンプの高さのばらつきを防止することが記載されている。
【0009】
特許文献3には、プリント配線板の金属端子のプリコートしたい部分にはんだ粉末を選択的に接着させた後に、フラックスを塗布し、リフロー加熱してはんだ粉末を溶融するはんだコーティング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−77471号公報
【特許文献2】特開2004−40056号公報
【特許文献3】特開平7−94853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年では、半導体チップの高性能化によってそのパッドピッチが狭小化してきており、それに伴って配線基板の接続パッドのピッチの狭小化が要求されている。上記した従来技術において、はんだの表面張力を利用して接続パッド220上にはんだを安定して配置するためには、接続パッド220の幅WAを引き出し配線部240の幅WBより数十μm程度太く設定する必要がある。
【0012】
接続パッド220の幅WAが引き出し配線部240の幅WBより十分に太くないと、はんだが接続パッド220の中央部からずれた位置に配置されたり、高さがばらついたりするからである。
【0013】
配線基板の配線を形成するにあたり、形成可能な最小ピッチが40μm(ライン:スペース=20:20μm)の場合は、スペースを微細化することは困難であるので接続パッドの幅(ライン)を太くする分だけそのピッチを広げる必要がある。
【0014】
例えば、前述した図1において、接続パッド220の幅WAを引き出し配線部240の幅WBより15μm太く設定する場合は、形成可能な最小ピッチが40μmであっても配線のピッチは55μm(ライン:スペース=35:20μm)と大きくなってしまう。
【0015】
これは、フォトリソグラフィに基づくパターニング技術の実力が向上しない限り、それ以上の狭小ピッチには対応できないことを意味し、半導体チップのパッドのさらなるピッチ狭小化に容易に対応できない問題がある。
【0016】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、接続パッド上にはんだが設けられるフリップチップ実装用の配線基板において、接続パッドのピッチを狭小化できる配線基板及びその製造方法と半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は配線基板に係り、複数の接続パッドと前記複数の接続パッドにそれぞれ繋がる引き出し配線部とが表層側の絶縁層に配置された構造を有する配線基板であって、前記引き出し配線部は前記接続パッドから屈曲して配置され、前記接続パッド上に突出するはんだ層が設けられており、前記接続パッドは長方形状で形成され、前記引き出し配線部は前記接続パッドの長手方向の端部全体から屈曲して引き出されており、前記接続パッドと前記引き出し配線部とが前記表層側の絶縁層から露出して設けられていることを特徴とする。
【0018】
本願発明者は、表面張力を利用してはんだを引き出し配線部から接続パッド上に集中して配置する方法において、はんだが屈曲部側に向けて移動して集中する特性を有することを見出した。本発明では、この原理を利用して接続パッドから屈曲して引き出し配線部を設けることにより、接続パッド上に引き出し配線部上のはんだを集中させるようにしている。
【0019】
従来技術のように直線状の配線の一部の幅を太くして接続パッドを構成する方法では、接続パッドの幅を引き出し配線部の幅より数十μm太く設定する必要があり、接続パッドのピッチ狭小化に容易に対応できない。
【0020】
しかしながら、本発明では配線の屈曲部にはんだが集中する特性を利用するので、引き出し配線部のピッチを対応可能な最小ピッチに設定し、その屈曲部側に接続パッドを設ければよい。従って、接続パッドの幅は、引き出し配線部の屈曲角度に対応する分だけ太くなるだけなので、従来技術よりも接続パッドのピッチの狭小化を図ることができる。しかも、引き出し配線部上のはんだを接続パッドの上に安定して集中させて配置することができる。
【0021】
本発明の一つの態様では、接続パッド及び引き出し配線部は、最上の保護絶縁層(ソルダレジスト)の開口部に露出した状態で絶縁層の上に配置されていてもよいし、保護絶縁層を省略し、接続パッド及び引き出し配線部の上面が露出するように絶縁層にそれらが埋設されていてもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するため、本発明は配線基板の製造方法に係り、複数の接続パッドと前記複数の接続パッドにそれぞれ繋がる引き出し配線部とが表層側の絶縁層に配置された構造を有し、前記引き出し配線部が接続パッドから屈曲して配置された配線基板を用意する工程と、前記接続パッド及び前記引き出し配線部の上にはんだを形成する工程と、前記はんだをリフロー加熱することによって、前記引き出し配線部の上の前記はんだを前記接続パッド上に移動させて集めることにより、前記接続パッド上に突出するはんだ層を形成する工程とを有し、前記配線基板を用意する工程において、前記接続パッドは長方形状で形成され、前記引き出し配線部は前記接続パッドの長手方向の端部全体から屈曲して引き出されており、前記接続パッドと前記引き出し配線部とが前記表層側の絶縁層から露出して設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明の配線基板の製造方法を使用することにより、上記した配線基板を容易に製造することができる。本発明の好適な態様では、引き出し配線部の屈曲角度は接続パッドのピッチが所要の寸法以下になるように調整される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明では、接続パッド上にはんだが設けられる配線基板において、従来技術よりも接続パッドを狭ピッチ化できると共に、接続パッド上に安定してはんだが集中して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は従来技術の配線基板の接続パッドを示す平面図である。
【図2】図2は従来技術の配線基板の接続パッド上にはんだ層が形成される様子を示す平面図である。
【図3】図3は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッドを示す平面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッド上にはんだ層を形成する方法を示す断面図(その1)である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッド上にはんだ層を形成する方法を示す断面図及び平面図(その2)である。
【図6】図6は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッド上にはんだ層を形成する方法を示す断面図(その3)である。
【図7】図7は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッドと従来技術の配線基板の接続パッドとの対応可能ピッチを表にして比較した図である。
【図8】図8は、図7において引き出し配線部のライン及びスペースの幅から接続パッドのライン及びスペースの幅を算出するための計算式の説明を補足する図である。
【図9】図9は本発明の第1実施形態の第1変形例の配線基板の接続パッドを示す平面図である。
【図10】図10は本発明の第1実施形態の第2変形例の配線基板の接続パッドを示す平面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッドに半導体チップをフリップチップ接続する方法及び半導体装置を得る方法を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の第2実施形態の配線基板の接続パッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図3は本発明の第1実施形態の配線基板の接続パッドを示す平面図、図4〜図6は同じく配線基板の接続パッド上にはんだを形成する方法を示す平面図及び断面図である。
【0028】
図3に示すように、第1実施形態の配線基板10では、最上にソルダレジスト12(保護絶縁層)が設けられており、その開口部12aに層間絶縁層30の上に形成された複数の配線20が露出している。ソルダレジスト12の開口部12aに露出する配線20は、中央部に配置された接続パッド22とその上下端部からそれぞれ屈曲して延在する引き出し配線部24とにより構成される。
【0029】
接続パッド22は長さL(例えば50〜150μm)をもった長方形状で形成され、その長手方向が垂直方向を向いて配置されている。一方、上側の引き出し配線部24は、接続パッド22の上部の水平辺HS(拡大図参照)から屈曲角度θで左側に傾いて屈曲して配置されている。また同様に、下側の引き出し配線部24は、接続パッド22の下側の水平辺から屈曲角度θで右側に傾いて屈曲して配置されている。
【0030】
このように、第1実施形態では、接続パッド22の両端部から引き出し配線部24がそれぞれ屈曲して配置されており、2つの屈曲部Bの間に接続パッド22が配置されている。
【0031】
本願発明者は、表面張力を利用してはんだを引き出し配線部から接続パッド上に集中して配置する方法を鋭意研究した結果、上記した引き出し配線部24上のはんだが屈曲部B側に向けて移動して集中する特性を有することを見出した。
【0032】
後に説明するように、屈曲部Bで挟まれた部分を接続パッド22とすることにより、従来技術のような直線状の配線の一部の幅を太くして接続パッドを構成する方法よりも接続パッドのピッチを狭小化でき、かつはんだを安定して接続パッドに集中して配置することができる。
【0033】
次に、本実施形態の配線基板の接続パッド上にはんだ層を形成する方法について説明する。まず、図4(a)に示すような配線基板10を用意する。図4(a)は上記した図3の配線基板10のI―Iに沿った断面(接続パッド22の断面部)のうち配線20下の層間絶縁層30から上側を模式的に示したものである。
【0034】
図4(a)では、最上の配線20としてその接続パッド22が示されている。配線20は銅などの金属から形成され、層間絶縁層30は樹脂などから形成される。
【0035】
配線基板10の最上には複数の配線20(接続パッド22及び引き出し配線部24(図3))を露出させる開口部12aが設けられたソルダレジスト12(保護絶縁層)が形成されている。
【0036】
なお、図3及び図4(a)においてソルダレジスト12を省略した形態としてもよい。あるいは、ソルダレジスト12を省略し、かつ配線20の上面と層間絶縁層30の上面とが同一面となるように、配線20が層間絶縁層30に埋め込まれた形態であってもよい。つまり、この場合は、層間絶縁層30の上面側に配線20の上面のみが露出し、その側面及び下面が層間絶縁層30に埋め込まれる。
【0037】
また、配線基板10は、フリップチップ実装用の配線基板であれば各種のものを使用することができる。
【0038】
次いで、図4(b)に示すように、ソルダレジスト12の開口部12aに露出する配線20(接続パッド22及び引き出し配線部24(図3))に粘着層40を形成する。図4(a)の構造体を金属の表面のみに選択的に粘着剤を形成する液に浸漬させることにより、配線20に粘着層40を選択的に形成することができる。粘着層40の一例としては、イミダゾール系の有機被膜から形成される。
【0039】
続いて、図4(c)に示すように、配線20(接続パッド22及び引き出し配線部24(図3))の上の粘着層40に多数のはんだ粉42aを付着させることにより、配線20をはんだ粉42aで被覆する。はんだ粉42aの材料としては、例えば、錫(Sn)−銀(Ag)はんだが使用される。このとき、層間絶縁層30やソルダレジスト12の上に静電気などで付着した不要なはんだ粉42aが除去される。
【0040】
次いで、図4(d)に示すように、はんだ粉42aを付着させた配線20の上にフラックス44を塗布する。さらに、はんだの組成に応じたリフロー温度ではんだ粉42aをリフロー加熱する。このとき、フラックス44によって各はんだ粉42aの表面の酸化層が除去されて多数のはんだ粉42aが溶融して一体化する。
【0041】
またこのとき、図5の平面図に示すように、接続パッド22の上下側に繋がる引き出し配線部24に付着したはんだ粉42aは溶融する際にはんだの表面張力によって屈曲部B側に向かって移動し、これによってはんだが接続パッド22の上に集中して配置される。前述したように、配線上のはんだは溶融する際に屈曲部側に向けて移動する特性を有するからである。
【0042】
このようにして、図5の断面図及び平面図に示すように、接続パッド22の上に十分なボリュームのはんだ層(はんだバンプ)42(図5の平面図では斜線部)が上側に突出して形成される。図5の断面図では、その下の平面図のII−IIに沿った断面が模式的に描かれている。
【0043】
はんだ層42のボリューム(量や高さ)は、はんだ粉42aの径、又は接続パッド22や引き出し配線部24の長さ(面積)によって調整可能である。接続パッド22上に形成されるはんだ層42の高さは例えば10〜30μmであり、フリップチップ実装される半導体チップの仕様に合わせて適宜調整される。
【0044】
なお、はんだ層42の材料として、はんだ粉42aを使用したが、はんだペーストをスクリーン印刷などで配線20の上に形成してもよいし、あるいは、電解めっきによって配線20の上にはんだを形成してもよい。その後に、はんだペーストやはんだめっき層を同様にリフロー加熱すればよい。
【0045】
その後に、図6の上図に示すように、配線基板10の上面のフラックス44の残渣を除去して洗浄する。図6の下図は、図6の上図の接続パッド22及び引き出し配線部24の幅方向中央で切断した部分断面図である。図6の下図に示すように、引き出し配線部24上の大部分のはんだが接続パッド22上に集まって突出するはんだ層42(バンプ)が形成されるが、引き出し配線部24の上に薄膜のはんだが残存した状態となる。
【0046】
以上により、配線基板10の接続パッド22上にはんだ層42が上側に突出して形成されてフリップチップ実装用の配線基板10が得られる。
【0047】
本実施形態では、引き出し配線部24を接続パッド22から屈曲させて配置することにより、はんだを接続パッド22上に集中させる手法を採用している。これにより、従来技術よりも接続パッド22の幅を小さくすることができ、接続パッド22のピッチを狭小化することができる。
【0048】
本願発明者は、本実施形態の引き出し配線部24が接続パッド22から屈曲する構造(図3)において、引き出し配線部24の屈曲角度θ(図3)を変えて得られる接続パッドのピッチを従来技術の接続パッドのピッチと比較した。
【0049】
図7は本実施形態の接続パッド及び従来技術の接続パッドの各対応可能ピッチを表にして比較した図である。
【0050】
図7に示すように、配線基板のデザインルール(形成可能な最小ピッチ)として、ピッチ40μm(ライン(L):スペース(S)=20:20μm)とピッチ30μm(ライン(L):スペース(S)=15:15μm)の場合を想定した。また、従来技術(図1参照)では、接続パッドの幅WAが引き出し配線部の幅WBより10μm太い場合を想定した。
【0051】
最初に、配線基板のL/Sのデザインルールがピッチ40μm(L:S=20:20μm)場合について説明する。この場合、従来技術(図1)では、接続パッド220の幅WAを10μm太らせるとその対応可能ピッチは、50μm(L(20μm)+S(20μm)+WA(30μm)−W2(20μm))となる。
【0052】
これに対して、本実施形態の接続パッド22のピッチを比較してみる。図7に示すように、まず、引き出し配線部24を最小ピッチ40μm(ライン(L1):スペース(S1)=20:20μm)で形成する際の接続パッド22のライン(L2):スペース(S2)の各幅を算出してみる。図8を参照すると、接続パッド22のライン(L2)の幅は、引き出し配線部24のライン(L1)/COSθの計算式によって算出される。また同様に、接続パッド22の間のスペース(S2)の幅は、引き出し配線部24のスペース(S1)/COSθの計算式によって算出される。
【0053】
この計算式に基づいて、引き出し配線部24のライン(L1):スペース(S1)が最小の20:20μmで形成される場合、屈曲角度θによって接続パッド22のライン(L2):スペース(S2)の幅がどのように変化するか算出した。この接続パッド22のライン(L2)及びスペース(S2)の幅を加算した値が本実施形態の接続パッドの対応可能ピッチとなる。
【0054】
図7に示すように、引き出し配線部24の屈曲角度θが大きくなるにつれて接続パッド22のライン(L2):スペース(S2)の各幅が大きくなり、従来技術の対応可能ピッチ(50μm)よりもピッチが小さくなる屈曲角度θは36.5°以下である。例えば、屈曲角度θが25°の場合は、対応可能ピッチが44.14μmとなり、従来技術の対応可能ピッチ(50μm)よりもピッチを5.86μm小さくすることが可能である。このように、配線基板のデザインルールがピッチ40μm(L:S=20:20μm)の場合は、屈曲角度が36°程度まで従来技術より接続パッド22の狭ピッチ化が可能であることが分る。
【0055】
本願発明者は、引き出し配線部24の屈曲角度θを変えた実験サンプルを作成し、前述した方法によって接続パッド22上にはんだ層を形成した。その結果によれば、引き出し配線部24の屈曲角度が20°以上ではんだ層が接続パッド22の中央部に形成され、かつはんだ層の高さのはらつきがスペック範囲であり、安定して歩留りよくはんだ層を形成できることが分かった。しかしながら、引き出し配線部24の屈曲角度θが20°を下回ると、はんだ層が接続パッド22の中央部から多少ずれて配置されたり、はんだ層の高さのばらつきが大きくなったりすることがあった。
【0056】
従って、引き出し配線部24のピッチが40μmの場合は、引き出し配線部24の屈曲角度θをはんだ層が良好に形成される20°から対応可能ピッチを従来技術より狭くできる36.5°の範囲に設定することが好ましい。引き出し配線部24の屈曲角度θをこの範囲に設定することにより、従来技術よりも接続パッドの対応可能ピッチを狭小化できると共に、表面張力によってはんだ層を接続パッドの中央部に高さのばらつきが発生することなく安定して配置することができる。
【0057】
次に、配線基板のデザインルールがピッチ30μm(L:S=15:15μm)場合について説明する。この場合、従来技術では、接続パッド220の幅WAを10μm太らせるとその対応可能ピッチは40μm(L(15μm)+S(15μm)+WA(25μm)−W2(15μm)となる。
【0058】
そして、上記した計算式によって、引き出し配線部24の屈曲角度θに対する接続パッド22のライン(L2):スペース(S2)を同様に算出した。
【0059】
引き出し配線部24の屈曲角度θが大きくなるにつれて接続パッド22のライン(L2):スペース(S2)が大きくなり、従来技術の対応可能ピッチ(40μm)よりもピッチが小さくなる屈曲角度θは41°以下である。例えば、屈曲角度θが25°の場合は、対応可能ピッチが33.1μmとなり、従来技術の対応可能ピッチ(40μm)よりもピッチを6.9μm小さくすることが可能である。
【0060】
このように、配線基板のデザインルールがピッチ30μm(L:S=15:15μm)の場合は、屈曲角度が41°程度まで従来技術より接続パッド22の狭ピッチ化が可能であることが分る。
【0061】
以上のように、接続パッド22に繋がる引き出し配線部24を屈曲させることにより、引き出し配線部24上のはんだを表面張力によって接続パッド22上に安定して集めて配置することが可能である。しかも、従来技術と違って接続パッド22のライン幅を引き出し配線部24のライン幅から数十μm太くする必要がなく、引き出し配線部24の屈曲角度θに対応して接続パッド22のラインの幅が太くなるだけである。例えば、配線基板のデザインルールがピッチ40μmの場合、引き出し配線部24の屈曲角度θが35°のとき、接続パッド22のラインの幅は引き出し配線部24から4.4μm程度太くなるだけである。
【0062】
従来技術では、接続パッド22のライン幅を引き出し配線部24より4μm程度太くしただけでは、はんだが上手く接続パッドに集まらず、その高さもかなりばらつくことが確認されており、本実施形態の接続パッドから引き出し配線部を屈曲させる方式は有用であることが理解される。
【0063】
図9には本実施形態の第1変形例の配線基板の接続パッドが示されている。前述した図3では、接続パッド22の上側に繋がる引き出し配線部24が垂直方向から左側に傾いて屈曲部Bを構成し、接続パッド22の下側に繋がる引き出し配線部24が垂直方向から右側に傾いて屈曲部Bを構成している。
【0064】
図9に示すように、第1変形例の配線基板10aでは、接続パッド22の上下側に繋がる引き出し配線部24が垂直方向からそれぞれ左側に傾いて屈曲している。つまり、接続パッド22の上下側の引き出し配線部24は接続パッド22の中央を軸として対称となって配置されている。
【0065】
また、図10には本実施形態の第2変形例の配線基板の接続パッドが示されている。図10に示す第2変形例の配線基板10bのように、接続パッド22の上側にのみに引き出し配線部24が屈曲して繋がっていてもよい。つまり、本実施形態では、接続パッド22が屈曲する2つの引き出し配線部24に繋がって2つの屈曲部Bの間に挟まれていてもよいし、接続パッド22の一端のみに屈曲する引き出し配線部24が繋がっていてもよい。
【0066】
図9及び図10においてその他の要素は図3と同一であるので、同一符号を付してその説明を省略する。図9及び図10の第1、第2変形例においても、図3の配線基板10と同様な効果を奏する。
【0067】
次に、本実施形態の配線基板10の接続パッド22に半導体チップをフリップチップ接続する方法について説明する。図11(a)に示すように、金バンプ52を備えた半導体チップ50(LSIチップ)を用意する。図11(a)の例では、半導体チップ50の金バンプ52として、ワイヤバンプ法によって形成されたものが示されている。なお、金バンプ52の他にはんだバンプなどの各種の金属バンプを備えた半導体チップ50を使用してもよい。
【0068】
次いで、図11(b)に示すように、前述した配線基板10の接続パッド22上のはんだ層42に半導体チップ50の金バンプ52を配置し、半導体チップ50を配線基板10側に加温・加圧ボンディングする。これにより、配線基板10の接続パッド22にはんだ層42を介して半導体チップ50の金バンプ52がフリップチップ接続される。
【0069】
図11(c)は図11(b)の構造体を配線20の幅方向中央で切断した断面図であり、配線基板10の厚み方向全体が模式的に示されている。図11(c)に示すように、配線基板10の配線20の一端側にはそれに繋がるランド23が形成されている。そして、ランド23は層間絶縁層30に設けられた貫通電極が充填されたビアホールVHを介して層間絶縁層30の下面に形成された接続部60を備えた最下配線に接続されている。さらに、配線基板10の下面側の最下配線の接続部60に開口部14aが設けられたソルダレジスト14が形成されている。
【0070】
そして、配線基板10と半導体チップ50との隙間にアンダーフィル樹脂54を充填する。さらに、配線基板10の下面側の最下配線の接続部60にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子56を形成する。
【0071】
以上により、本実施形態の配線基板10の接続パッド22に半導体チップ50がフリップチップ接続されて構成される半導体装置1が得られる。本実施形態では、配線基板のデザインルールが同一であっても、従来技術よりも狭小ピッチの接続パッドを備えた配線基板を容易に設計できるので、より高性能な半導体チップが実装された半導体装置を低コストで製造することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
図12は本発明の第2実施形態の配線基板を示す平面図である。前述した第1実施形態の配線基板10の接続パッド22は長さLをもつ長方形状であり、その上下側に引き出し配線部24が屈曲して繋がっている。
【0073】
図12に示すように、第2実施形態の配線基板10cでは、ソルダレジスト12の開口部12aに複数の引き出し配線部24が配置されている。そして、上下側に配置された各引き出し配線部24は屈曲部Bを介してそれぞれ繋がっており、その屈曲部Bがそれぞれ接続パッド22(斜線部)となっている。第2実施形態においても、引き出し配線部24は、接続パッド22の上下部の水平辺HSに対して所要の屈曲角度で傾いて繋がることで接続パッド22から屈曲している。
【0074】
図12のその他の要素は第1実施形態の図3と同一であるので、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、接続パッド22(屈曲部B)及び引き出し配線部24の上にはんだが形成され、はんだがリフロー加熱される。これにより、引き出し配線部24上のはんだが屈曲部B側に向けて移動し、屈曲部Bに配置された接続パッド22に十分なボリュームのはんだ層が上側に突出して形成される。
【0076】
第2実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0077】
1…半導体装置、10,10a〜10c…配線基板、12,14…ソルダレジスト、12a,14a…開口部、22…接続パッド、24…引き出し配線部、20…配線、23…ランド、30…層間絶縁層、40…粘着層、42a…はんだ粉、42…はんだ層、44…フラックス、50…半導体チップ、52…金バンプ、54…アンダーフィル樹脂、56…外部接続端子、最下配線の接続部…60、VH…ビアホール、B…屈曲部、HS…水平辺。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続パッドと前記複数の接続パッドにそれぞれ繋がる引き出し配線部とが表層側の絶縁層に配置された構造を有する配線基板であって、
前記引き出し配線部は前記接続パッドから屈曲して配置され、前記接続パッド上に突出するはんだ層が設けられており、
前記接続パッドは長方形状で形成され、前記引き出し配線部は前記接続パッドの長手方向の端部全体から屈曲して引き出されており、前記接続パッドと前記引き出し配線部とが前記表層側の絶縁層から露出して設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記引き出し配線部は前記接続パッドの両端側にそれぞれ繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
cosθを定義するための直角三角形の直角部に対向する辺の長さが前記接続パッドの幅であり、両側にθ角部と直角部が配置される辺の長さが前記引き出し配線部の幅であり、屈曲角度θが20°〜36.5°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記接続パッド上のはんだ層は、前記接続パッド及び前記引き出し配線部の上に形成されたはんだがリフロー加熱されて前記接続パッド上に集められて形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記接続パッドと前記引き出し配線部とは、前記表層側の絶縁層からその上面が露出して設けられており、その側面及び下面は前記表層側の絶縁層に埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記表層側の絶縁層の上にソルダレジストが設けられており、前記ソルダレジストの開口部から露出して前記接続パッドと前記引き出し配線部とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項の配線基板と、
前記配線基板の前記接続パッドに前記はんだ層を介してバンプが接合された半導体チップとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
複数の接続パッドと前記複数の接続パッドにそれぞれ繋がる引き出し配線部とが表層側の絶縁層に配置された構造を有し、前記引き出し配線部が接続パッドから屈曲して配置された配線基板を用意する工程と、
前記接続パッド及び前記引き出し配線部の上にはんだを形成する工程と、
前記はんだをリフロー加熱することによって、前記引き出し配線部の上の前記はんだを前記接続パッド上に移動させて集めることにより、前記接続パッド上に突出するはんだ層を形成する工程とを有し、
前記配線基板を用意する工程において、前記接続パッドは長方形状で形成され、前記引き出し配線部は前記接続パッドの長手方向の端部全体から屈曲して引き出されており、前記接続パッドと前記引き出し配線部とが前記表層側の絶縁層から露出して設けられていることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記配線基板を用意する工程において、前記引き出し配線部は前記接続パッドの両端側にそれぞれ繋がっていることを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記配線基板を用意する工程において、cosθを定義するための直角三角形の直角部に対向する辺の長さが前記接続パッドの幅であり、両側にθ角部と直角部が配置される辺の長さが前記引き出し配線部の幅であり、屈曲角度θが20°〜36.5°の範囲に設定されることを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記配線基板を用意する工程において、前記接続パッドと前記引き出し配線部とは、前記表層側の絶縁層からその上面が露出して設けられており、その側面及び下面は前記表層側の絶縁層に埋め込まれていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記配線基板を用意する工程において、前記表層側の絶縁層の上にソルダレジストが設けられており、前記ソルダレジストの開口部から露出して前記接続パッドと前記引き出し配線部とが設けられていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記引き出し配線部の前記接続パッドからの屈曲角度は、前記接続パッドのピッチが所要の寸法以下になるように調整されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−80125(P2012−80125A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1062(P2012−1062)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−274011(P2007−274011)の分割
【原出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】