説明

配線基板及び配線基板の形成方法

【課題】反りを抑制でき、絶縁膜の縁の必要な膜厚の確保が可能な配線基板を提供する。
【解決手段】膜形成領域上には絶縁材料パターン9Bが液滴吐出装置のノズル118から第1液滴D3を吐出して形成される。絶縁材料パターン9Bは、紫外域の光を照射されて半硬化状態にされる。次に、下地領域20上に絶縁材料パターン11Bが液滴吐出装置のノズル118から第2液滴D4を吐出して形成される。絶縁材料パターン11Bは、紫外域の光を照射されて半硬化状態にされる。半硬化状態にある絶縁材料パターン9B',11B'は、加熱されて硬化する。ビアホールを縁取る第1膜部(絶縁材料パターン9B'を硬化したもの)を形成する第1液滴D3は、絶縁材料を含む無溶剤型の液滴であり、該絶縁パターン以外の第2膜部(絶縁材料パターン11B'を硬化したもの)を形成する第2液滴D4は、絶縁材料を含む溶剤型の液滴である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材料を含む液滴を膜形成領域に吐出して該膜形成領域に液状絶縁膜を形成し、該液状絶縁膜を硬化させて前記膜形成領域に絶縁膜を形成した配線基板及び配線基板の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板における絶縁膜を液滴吐出法(インクジェット法)で形成する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
ビアホールを備えた絶縁層をインクジェット法で設ける場合には、絶縁材料を含む液滴を下地の上に吐出することによってビアホールを備えた液状の絶縁膜が形成された後、液状の絶縁膜が乾燥硬化される。そして、導電性材料を含む液滴がビアホールの中に吐出されてビアホールを埋めた形のビア配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7(a)に示すように、液状の絶縁膜50の縁部(つまり、液状絶縁膜50と大気51と下地52との境界)では、下地52−液状絶縁膜50間(固体−液体間)の表面張力F1と、大気51−液状絶縁膜50(気体−液体間)の表面張力F2と、下地52−大気51間(固体−気体間)の表面張力F3とが釣り合う形に液状絶縁膜50の境界が形成される。液状絶縁膜50のこうした境界の形状は、下地52からせり上がる形をなす。
【0005】
液状絶縁膜50を乾燥させて硬化させる際には、液状絶縁膜50の縁部において乾燥速度が高くなると、液状絶縁膜50の構成材料が該縁部から内部へと拡散することとなり、液状絶縁膜50の膜厚が前記した境界に近くなるにつれて薄くなる。このような液状絶縁膜50の縁部における膜厚分布は、液状絶縁膜50における接触角θ1が小さくなるほど(つまり液滴の粘度が低くなるほど)顕著になる。
【0006】
溶剤を含む溶剤型の液滴を用いた場合には、溶剤を含まない無溶剤型の液滴に比べて絶縁膜50の縁部の厚みが薄くなる。図7(b)に鎖線で示す液状絶縁膜50Aは、溶剤型の液滴を用いた例を示し、実線で示す絶縁膜50Bは、固化後の絶縁膜の例を示す。図7(c)に鎖線で示す液状絶縁膜50Cは、無溶剤型の液滴を用いた例を示し、実線で示す絶縁膜50Dは、固化後の絶縁膜の例を示す。
【0007】
溶剤型の液滴を用いて形成された絶縁膜50Bにビア配線53を形成すると、絶縁膜50Bの縁部の形状に沿う形にビア配線53が形成されることから、ビア配線53におけるビア開口径Rがビアホール径rよりも著しく大きくなってしまう。そうすると、液滴吐出法によって形成されるビア配線のこのような事情に基づいて他の配線や素子の構成の設計がされなければならず、多層基板の微細化や高集積化が極めて困難となる。
【0008】
無溶剤型の液滴を用いて絶縁膜50Dを形成した場合には、溶液が含まれない分だけ絶縁膜50Dの縁部における接触角θ2が大きくなり、絶縁膜50Dの縁部における膜厚を稼ぐことができる。しかし、無溶剤型の液滴を用いた絶縁膜50Dそのものの圧縮応力F4が高くなってしまい、このような圧縮応力の作用によって配線基板の反りが誘発されるという問題がある。
【0009】
本発明は、反りを抑制でき、絶縁膜の縁の必要な膜厚の確保が可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配線基板は、絶縁材料を含む液滴が膜形成領域に吐出されて該膜形成領域に液状絶縁膜が形成され、該液状絶縁膜が硬化されて前記膜形成領域に硬化絶縁膜が形成される配線基板を対象とし、前記硬化絶縁膜は、前記膜形成領域の縁に形成された第1膜部と、前記縁を除いた前記膜形成領域に形成された第2膜部とを備え、前記第1膜部を形成する第1液滴と前記第2膜部を形成する第2液滴とは、硬化前後における体積変化量に関して異なり、前記第1液滴の体積変化量は、前記第2液滴の体積変化量よりも小さい。
【0011】
本発明の配線基板の製造方法は、絶縁材料を含む液滴を膜形成領域に吐出して該膜形成領域に液状絶縁膜を形成し、該液状絶縁膜を硬化して前記膜形成領域に硬化絶縁膜を形成する配線基板の形成方法を対象とし、前記膜形成領域の縁に第1液滴を吐出して第1膜部を形成する工程と、前記縁を除いた前記膜形成領域に第2液滴を吐出して第2膜部を形成する工程とを備え、前記第1膜部を形成する第1液滴と前記第2膜部を形成する第2液滴とは、硬化前後における体積変化量に関して異なり、前記第1液滴の体積変化量は、前記第2液滴の体積変化量よりも小さい。
【0012】
硬化絶縁膜の縁が体積変化の小さい第1液滴を用いて形成されるため、硬化絶縁膜の縁の膜厚を確保することができる。又、該縁以外の硬化絶縁膜の部分が体積変化の大きい第2液滴を用いて形成されるため、基板の反りが抑制される。
【0013】
好適な例では、前記第1液滴は、無溶剤型の液滴であり、前記第2液滴は、溶剤型の液滴である。
溶剤型の液滴は、硬化後には溶剤が抜けるため、体積変化が大きく、無溶剤型の液滴は、硬化後の体積変化が溶剤型の液滴に比べて小さい。従って、無溶剤型の液滴は、硬化絶縁膜の縁を形成する第1液滴として好適であり、溶剤型の液滴は、該縁以外の硬化絶縁膜の部分を形成する第2液滴として好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配線基板は、反りを抑制でき、硬化絶縁膜の縁の必要な膜厚を確保できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本実施形態の液滴吐出装置を示す斜視図。(b)は、液滴吐出装置における制御部の機能ブロック図。
【図2】(a)は、液滴吐出装置におけるヘッドを示す斜視図。(b)は、ヘッドの断面図。
【図3】(a),(b),(c),(d)は、配線基板の製造方法を説明する断面図。
【図4】(a),(b),(c)は、配線基板の製造方法を説明する断面図。
【図5】(a),(b),(c),(d)は、配線基板の製造方法を説明する断面図。
【図6】(a),(b),(c),(d)は、配線基板の製造方法を説明する断面図。
【図7】(a),(b),(c)は、液状膜の境界の変化を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1(a)は、インクジェット装置である液滴吐出装置1,2,3,4,5,6を示す。図では1台の液滴吐出装置のみが図示されているが、本実施形態では、複数(本実施形態では6台)の液滴吐出装置1,2,3,4,5,6が使用される。液滴吐出装置1,2,3,4,5,6は、液状材料111を吐出するために用いられるが、液滴吐出装置1,2,3,4,5,6は、同じ構成であるので、液滴吐出装置1の構成についてのみ説明する。
【0017】
液滴吐出装置1は、液状材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、光照射装置140と、支持部104aとを備えている。
【0018】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114〔図2(a)参照〕を保持している。ヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状材料111の液滴を吐出する。吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、タンク101内の液状材料111がチューブ110を介してヘッド114に供給される。
【0019】
ステージ106は、基板10Aを固定する機能を有する。基板10Aは、ポリイミド製の基板である。
第1位置制御装置104は、支持部104aによってグランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向(本実施形態では鉛直方向)とに沿って移動させる機能を有する。又、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。
【0020】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向とに直交する方向である。
【0021】
吐出ヘッド部103は、第1位置制御装置104の作動によってX軸方向に移動され、基板10Aは、第2位置制御装置108の作動によってステージ106と共にY軸方向に移動される。これらの作動によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、及びノズル118〔図2(a),(b)参照〕は、基板10Aに対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向及びY軸方向に相対的に移動(相対的に走査)する。
【0022】
光照射装置140は、基板10Aに付与された液状材料111に紫外光を照射する装置である。
制御部112は、液状材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0023】
図1(b)に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、光源駆動部205と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とを備えている。
【0024】
入力バッファメモリ200は、液滴吐出装置1の外部に位置する外部情報処理装置(図示略)から、液状材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に出力し、処理部204は、吐出データを記憶装置202に格納する。
【0025】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に出力する。走査駆動部206は、このデータと、吐出周期とに応じたステージ駆動信号を第1位置制御装置104と第2位置制御装置108とに出力する。この結果、被吐出部に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に出力する。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から液状材料111の液滴D〔図2(a),(b)参照〕が吐出される。
【0026】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、光照射装置140をON状態及びOFF状態のどちらかの状態に制御する。つまり、処理部204は、ON状態又はOFF状態を示すそれぞれの信号を光源駆動部205へ出力する。又、液滴吐出装置1は、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118を基板10Aに対して相対移動させると共に、被吐出部に向けてノズル118から液状材料111を吐出する。なお、液状材料111の液滴が着弾する部分を「被吐出部」とも表記する。
【0027】
図2(a),(b)に示すように、液滴吐出装置1におけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。ヘッド114は、振動板126と、液溜まり129と、複数の隔壁122と、複数の振動子124と、ノズルプレート128と、供給口130と、孔131とを備えている。液溜まり129は、振動板126とノズルプレート128との間に位置しており、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状材料111が液溜まり129に充填される。
【0028】
複数の隔壁122は、振動板126とノズルプレート128との間に位置している。振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122とによって囲まれた部分は、ノズル118に対応して設けられたキャビティ120である。キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。液溜まり129内の液状材料111は、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介してキャビティ120に供給される。
【0029】
ノズルプレート128は、複数のノズル118のそれぞれの開口量を規定する。
振動子124は、キャビティ120に対応して振動板126上に位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bとを含む。制御部112は、一対の電極124A、124Bの間に駆動電圧を与える。これにより、一対の電極124A、124Bに対応するノズル118から液状材料111の液滴Dが吐出される。
【0030】
次に、液滴吐出装置1,2,3,4,5,6を用いた配線基板の製造方法を説明する。
まず、図3(a)に示す基板10Aの1つの表面SがUV洗浄される。表面Sは、UV洗浄によって洗浄されるのみならず、液状の絶縁材料7Aに対して適切な親液性を呈するようになる。UV洗浄後の表面Sは、液滴吐出装置1によって吐出される液状の絶縁材料7Aを受ける被吐出部になる。
【0031】
次に、図3(a)に示すように、液滴吐出装置1を用いて表面Sの全面に絶縁材料層7Bが形成されてゆく。具体的には、基板10Aが液滴吐出装置1のステージ106上に位置決めされ、液滴吐出装置1は、表面Sに対するノズル118の相対位置を2次元的(つまりX軸方向及びY軸方向)に変化させる。そして、液滴吐出装置1は、第1吐出データに応じて、表面Sに向けて液状の絶縁材料7Aの液滴D1を所定の周期でノズル118から吐出する。すると、表面Sの全域に亘って所定ピッチで複数の液滴D1が着弾して濡れ広がる。着弾した複数の液滴D1が濡れ広がると、表面Sを覆う絶縁材料層7Bが得られる。
【0032】
次に、図3(b),(c)に示すように、得られた絶縁材料層7Bは、光照射装置140から紫外域に属する光を所定時間にわたって照射される。これにより、絶縁材料層7Bが硬化して絶縁層7が得られる。
【0033】
次に、図3(d)に示すように、液滴吐出装置2を用いて絶縁層7上に導電性材料層8Bのパターンが形成される。導電性材料層8Bのパターン形成は、以下のように行われる。
【0034】
まず、基板10Aが液滴吐出装置2のステージ106上に位置決めされる。すると、液滴吐出装置2は、絶縁層7の表面に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置2は、第2吐出データに応じて、導電性材料層8Bのパターンに対応する位置にノズル118が達する毎に、絶縁層7の表面に向けて液状の導電性材料8Aの液滴D2をノズル118から吐出する。これにより、複数の液滴D2が絶縁層7上に着弾して濡れ広がる。着弾した複数の液滴D2が濡れ広がると、絶縁層7上に導電性材料層8Bのパターンが形成される。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、導電性材料層8Bのパターンがクリーンヒータ(図示略)を用いて所定温度で所定時間にわたって加熱される。そうすると、図4(b)に示すように、導電性材料層8Bにおける銀粒子が燒結又は融着することによって導電層8のパターンが得られる。本実施形態では、導電層8のパターンを配線パターン25とも表記する。
【0036】
図4(c)に示すように、配線パターン25は、配線25Aと配線25Bと配線25Cとを含む。配線25A、25B、25Cは、いずれもストライプ状の形状を有している。配線25A、25B、25Cは、いわゆる「べた膜」である絶縁層7のほぼ同一のレベルにある表面上に位置している。但し、配線25A、25B、25Cのうちのどの2つの配線も、絶縁層7の表面上では互いから物理的に分離されている。なお、配線25Aと配線25Bとは、互いに電気的に接続されるべき配線である。一方、配線25Cは、配線25Aと配線25Bとのどちらからも電気的に絶縁されるべき配線である。
【0037】
配線25A上にはポスト形成領域18Aが設定されており、配線25B上にはポスト形成領域18Bが設定されている。ポスト形成領域18A、18Bとは、後に導電ポストが設けられる領域のことである。膜形成領域となる下地領域19Aは、ポスト形成領域18Aを囲むように位置しており、膜形成領域となる下地領域19Bは、ポスト形成領域18Bを囲むように位置している。
【0038】
次に、図5(a)に示すように、液滴吐出装置3を用いて下地領域19A,19B上に絶縁材料パターン9Bが設けられる。絶縁材料パターン9Bの形成は、以下のように行われる。
【0039】
まず、基板10Aが液滴吐出装置3のステージ106上に位置決めされる。そうすると、液滴吐出装置3は、基板10Aと基板10A上の一つ以上の層とからなる基体10Bの表面に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置3は、第3吐出データに応じて、下地領域19A,19Bの縁191A,191Bに対応する位置にノズル118が達する毎に、下地領域19A,19Bの縁191A,191Bに向けて液状の絶縁材料9Aの第1液滴D3をノズル118から吐出する。そうすると、下地領域19A,19Bの縁191A,191B上に複数の第1液滴D3が着弾して濡れ広がる。着弾した複数の第1液滴D3が濡れ広がると、下地領域19A,19Bの縁191A,191B上に絶縁材料パターン9Bが形成される。
【0040】
本実施形態では、第1液滴D3は、アクリル系の紫外線硬化性樹脂製の無溶剤型液滴である。
次に、図5(b),(c)に示すように、得られた絶縁材料パターン9Bが半硬化されて絶縁材料パターン9B'が形成される。絶縁材料パターン9B'の形成は、以下のように行われる。
【0041】
まず、光照射装置140から紫外域の波長を有する光が所定時間だけ絶縁材料パターン9Bに照射される。これにより、半硬化状態にある絶縁材料パターン9B'が得られる。2つの絶縁材料パターン9B'の内側は、それぞれビアホール40A,40Bとなる。つまり、2つの絶縁材料パターン9B'は、ビアホール40A,40Bをそれぞれ縁取っている。
【0042】
「絶縁材料パターン」又は「絶縁材料」が半硬化するとは、「絶縁材料パターン」又は「絶縁材料」に含まれる光硬化性材料の状態が、吐出時の状態と、光照射による実質的な硬化状態との間の状態になることを意味する。吐出時の状態とは、光硬化性材料がノズル118から吐出され得る粘性を有している状態である。
【0043】
次に、下地領域20が親液化される。ここで、下地領域20とは、下地領域19A,19Bに接すると共に、下地領域19A,19Bを囲んでいる領域である。下地領域20の親液化は、所定波長の光を所定時間だけ下地領域20の表面に均一に照射することによって行われる。そうすると、下地領域20の一部である絶縁層7の表面は、後述する液状の絶縁材料11A〔図5(c)参照〕に対して親液性を呈するようになる。
【0044】
絶縁層7の表面を親液化する理由は次の通りである。絶縁層7を得るための硬化工程、又は配線パターン25を得るための焼成(加熱)工程を経ると、絶縁層7の表面は、液状の絶縁材料11Aに対して撥液性を呈するようになる。物体表面が撥液性を呈する場合には、広い面積に亘って均一な層を形成することが困難になる。本実施形態では、焼成工程の後で絶縁層7の表面が親液化されるので、絶縁材料11Aの液滴が濡れ広がる程度(親液性の程度)が絶縁層7の表面に亘って再び大きくなる。このため、表面が平坦な硬化絶縁膜30を絶縁層7上に亘って絶縁層7上に形成することが可能である。
【0045】
次に、液滴吐出装置4を用いて、下地領域20上に絶縁材料パターン11Bが形成される。絶縁材料パターン11Bの形成は、以下のように行われる。
まず、図5(c)に示すように、基板10Aが液滴吐出装置4のステージ106上に位置決めされる。そうすると、液滴吐出装置4は、下地領域20に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、液滴吐出装置4は、第4吐出データに応じて、絶縁材料パターン11Bに対応する位置にノズル118が達する毎に、絶縁層7の表面または配線パターン25の表面へ液状の絶縁材料11Aの第2液滴D4がノズル118から吐出される。すると、下地領域20上に複数の第2液滴D4が着弾して濡れ広がる。そして、着弾した複数の第2液滴D4が濡れ広がると、絶縁層7上及び配線パターン25上に絶縁材料パターン11Bが形成される。
【0046】
本実施形態では、第2液滴D4は、ポリイミド系樹脂を有機溶剤に分散させた溶剤型の液滴である。
絶縁材料パターン9B及び絶縁材料パターン11Bは、液状絶縁膜である。
【0047】
絶縁層7の表面は、先の親液化工程によって、液状の絶縁材料11Aに対して親液性を呈する。このため、絶縁層7の表面に着弾した絶縁材料11Aの第2液滴D4は、これらの表面上で均一に濡れ広がる。
【0048】
次に、図5(d)に示すように、得られた絶縁材料パターン11Bが半硬化されて絶縁材料パターン11B'が形成される。具体的には、光照射装置140から紫外域の波長を有する光が所定時間だけ絶縁材料パターン11Bに照射されて半硬化状態にある絶縁材料パターン11B'が得られる。
【0049】
半硬化状態にある絶縁材料パターン11B'が得られた後、基体10Bが加熱され、絶縁材料パターンにおける樹脂がほぼ完全に硬化する。この結果、図6(a)に示すように、半硬化状態の絶縁材料パターン9B'が硬化した硬化絶縁膜30を構成する第1膜部9となり、半硬化状態の絶縁材料パターン11B'が硬化した硬化絶縁膜30を構成する第2膜部11となる。
【0050】
第1液滴D3の吐出による絶縁材料パターン9Bの形成、絶縁材料パターン9Bを半硬化して絶縁材料パターン9B'を形成する工程、基体10Bの加熱によって絶縁材料パターン9B'を硬化して第1膜部9を形成する工程からなる一連の工程は、膜形成領域の縁に第1液滴D3を吐出して第1膜部9を形成する工程である。
【0051】
第2液滴D4の吐出による絶縁材料パターン11Bの形成、絶縁材料パターン11Bを半硬化して絶縁材料パターン11B'を形成する工程、基体10Bの加熱によって絶縁材料パターン11B'を硬化して第2膜部11を形成する工程からなる一連の工程は、膜形成領域の縁以外の部分に第2液滴D4を吐出して第2膜部11を形成する工程である。
【0052】
硬化絶縁膜30が形成された後、図6(a)に示すように、液滴吐出装置5を用いて第1膜部9に縁取られたビアホール40A,40Bが導電性材料15Aで充填される。導電性材料15Aの充填は、以下のように行われる。
【0053】
まず、液滴吐出装置5は、基体10Bに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、ビアホール40A,40Bに対応する位置にノズル118が達した場合に、液滴吐出装置5は、ノズル118から導電性材料15Aの液滴D5を吐出する。吐出された導電性材料15Aの液滴D5は、ビアホール40A,40Bによって露出した導電層8のパターン(配線パターン25)に着弾する。そして、ビアホール40A,40B内を満たすのに充分な数の液滴D5がビアホール40A,40B内に着弾することによって、図6(a)に示すように、ビアホール40A,40Bが導電性材料15Aで満たされる。
【0054】
次に、液滴吐出装置5を用いて導電性材料15Aの液滴D5が吐出され、図6(b)に示すように、2つのビアホール40A,40Bを結ぶ導電性材料パターン15Bが第1膜部9及び第2膜部11上に形成される。そして、ビアホール40A,40B内の導電性材料15Aと導電性材料パターン15Bとが加熱されて活性化され、導電性材料15Aにおける銀の微粒子が燒結又は融着される。このような活性化の結果、図6(c)に示すように、2つのビアホール40A,40B内に位置する導電ポスト41A,41Bと、導電ポスト41A,41Bに連結された配線パターン15とが得られる。
【0055】
配線パターン25の一部である配線25Aと配線25Cとは、導電ポスト41A,41Bと配線パターン15とによって、互いに電気的に連結される。一方、配線パターン25の一部である配線25Bは、配線25Aに対しても配線25Cに対しても電気的絶縁を保たれる。
【0056】
次に、第1膜部9及び第2膜部11の表面と配線パターン15の表面とが親液化される。その後、図6(c)に示すように液滴吐出装置6による液状の絶縁材料17A(液滴D6)の吐出工程によって、第1膜部9及び第2膜部11と、配線パターン15とを覆う絶縁材料層17Bが形成される。そして、図6(d)に示すように、絶縁材料層17Bが硬化されて絶縁層17が形成される。
【0057】
その後、クリーンオーブンで基体10Bが加熱されて絶縁層17におけるポリマーの重合反応が完全に進行される。以上の工程を経て、基体10Bから図6(c)に示す配線基板10が得られる。
【0058】
本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)硬化絶縁膜30の縁(つまり、絶縁材料パターン9B’)が硬化前後での体積変化の小さい第1液滴D3を用いて形成されるため、硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)の膜厚を確保することができる。
【0059】
(2)高分子材料からなる絶縁膜においては、膜の緻密性が高くなるほど、膜の圧縮応力が高くなり、膜の緻密性が低くなるほど、膜の圧縮応力が低くなる傾向がある。溶剤型の絶縁材料からなる膜では、溶剤が蒸発することによって膜が形成されるため、膜の緻密性が低くなり、反りの生じにくい絶縁膜が形成される。しかし、無溶剤型の絶縁材料からなる膜では、硬化後には緻密性が高い絶縁膜が形成されるため、基板が反り易くなる。
【0060】
硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)以外の硬化絶縁膜30の部分(つまり、絶縁材料パターン11B)が硬化前後での体積変化の大きい第2液滴D4を用いて形成されるため、基板10Aの反りが抑制される。
【0061】
(3)溶剤型の液滴は、硬化後には溶剤が抜けるため、硬化前後での体積変化が大きく、無溶剤型の液滴は、硬化前後での体積変化が溶剤型の液滴に比べて小さい。従って、無溶剤型の液滴は、硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)を形成する第1液滴D3として好適であり、溶剤型の液滴は、硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)以外の硬化絶縁膜30の部分(絶縁材料パターン11B)を形成する第2液滴D4として好適である。
【0062】
なお、絶縁材料としては、形成時には液滴として吐出可能な液状であり、その後に固形化可能なものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、樹脂を溶媒に溶解した溶液を塗布した後、溶剤を除去するようにしたもの、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、樹脂溶液、微粒子分散液等種々の樹脂や微粒子を挙げることができる。
【0063】
絶縁材料としては、一般的に、ポリイミド、アクリル樹脂、ノボラック系樹脂等の有機材料が使用される。上記の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、メチルメタクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を採用することができる。
【0064】
絶縁材料は、接触させる樹脂や溶液に溶解あるいは反応してはいけないため、吐出後に光又は熱により硬化する硬化性樹脂であることが好ましい。
このような光硬化性樹脂は、通常少なくとも1個以上の官能基を有し、光重合開始剤に光を照射することにより発生するイオン又はラジカルによりイオン重合、ラジカル重合を行い、分子量を増加させ必要であれば架橋構造の形成を行うモノマーやオリゴマーと、光重合開始剤とを少なくとも有する樹脂組成物を硬化させたものである。ここでいう官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基などの反応の原因となる原子団もしくは結合様式をいう。
【0065】
又、熱硬化性樹脂は、通常少なくとも1個以上の官能基を有し、熱重合開始剤に熱を加えることにより発生するイオン又はラジカルによりイオン重合、ラジカル重合を行い、分子量を増加させ必要であれば架橋構造の形成を行うモノマーやオリゴマーと、熱重合開始剤とを少なくとも有する樹脂組成物を硬化させたものである。ここでいう官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基などの反応の原因となる原子団もしくは結合様式をいう。
【0066】
又、ワニスのように樹脂の溶液では、ポリイミドのようにあらかじめ耐熱性の優れたポリマーを溶解させておき、乾燥により析出させることで、光や熱で硬化させることなく、採用することができる。
【0067】
又、耐熱性と優れた光透過性を獲得できるという点で、微粒子分散液を採用することもできる。微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などの微粒子が挙げられ、これらのうちの一種が用いられ、あるいは複数種が混合されて用いられる。微粒子を採用した場合は、乾燥により堆積することで凝集させ、絶縁層として使用することができる。また、粒子間および基板粒子間で密着性を向上させるため、粒子表面に感光性あるいは感熱性の表面処理を施してもよい。
【0068】
上記絶縁材料の液滴は、目的の機能を損なわない範囲で必要に応じてフッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節材を微量添加することができる。これらの表面張力調節材は、塗布対象物への濡れ性の制御を可能とし、塗布した膜のレベルリング性を改良し、塗膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つものである。
【0069】
このようにして調製した絶縁材料の液滴の粘度は、1〜50mPa・sの範囲内であることが好ましい。液滴吐出装置にて溶液を塗布する場合、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部が液滴の流出により汚染され易く、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるためである。より好ましくは5〜20mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0070】
さらに、このようにして調製した絶縁材料の液滴の表面張力は、0.02〜0.07N/mの範囲に入ることが望ましい。液滴吐出装置にて溶液を塗布する場合、表面張力が0.02N/m未満であると、液滴のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲がりが生じ易くなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため液滴の吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
【0071】
(4)ビアのデザインルールは、ビアホールの開口径によって規定されるが、本実施形態では、硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)を形成する第1液滴D3の硬化前後での体積変化が小さいため、縁(絶縁材料パターン9B’)の接触角が硬化後に小さくならない。つまり、硬化におけるビアホールの開口径が大きくならない。従って、硬化絶縁膜30の縁(絶縁材料パターン9B’)のみを無溶剤型の第1液滴D3で形成する構成は、ビアのデザインルールの大きさの抑制に寄与する。
【0072】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○液状の絶縁材料パターン9Bを形成した後に、液状の絶縁材料パターン11Bを形成、絶縁材料パターン9B,11Bを同時に硬化させてもよい。
【0073】
○1つの液滴吐出装置(例えば液滴吐出装置1)が、互いに異なる2つ以上の液状材料を吐出してもよい。この場合、これら2つ以上の液状の材料は、液滴吐出装置1における別々のノズル118から吐出されてもよいし、液滴吐出装置1における1つのノズル118から吐出されてもよい。
【0074】
○基板10Aとして、セラミック基板、ガラス基板、エポキシ基板、ガラスエポキシ基板あるいはシリコン基板などを用いてもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
【0075】
〔1〕前記絶縁膜は、ビアホールを備えており、前記縁は、前記ビアホールを縁取る絶縁材料パターンである請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の配線基板。
【符号の説明】
【0076】
1,2,3,4,5,6…液滴吐出装置。9…第1膜部。10…配線基板。11…第2膜部。9A,11A…絶縁材料。9B,11B…液状絶縁膜を構成する絶縁材料パターン。19A,19B…膜形成領域としての下地領域。191A,191B…縁。30…硬化絶縁膜。D3…第1液滴。D4…第2液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料を含む液滴が膜形成領域に吐出されて該膜形成領域に液状絶縁膜が形成され、該液状絶縁膜が硬化されて前記膜形成領域に絶縁膜が形成される配線基板において、
前記絶縁膜は、前記膜形成領域の縁に形成された第1膜部と、前記縁を除いた前記膜形成領域に形成された第2膜部とを備え、
前記第1膜部を形成する第1液滴と前記第2膜部を形成する第2液滴とは、硬化前後における体積変化量に関して異なり、
前記第1液滴の体積変化量は、前記第2液滴の体積変化量よりも小さい配線基板。
【請求項2】
前記第1液滴は、無溶剤型の液滴であり、前記第2液滴は、溶剤型の液滴である請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
絶縁材料を含む液滴を膜形成領域に吐出して該膜形成領域に液状絶縁膜を形成し、該液状絶縁膜を硬化して前記膜形成領域に絶縁膜を形成する配線基板の製造方法において、
前記膜形成領域の縁に第1液滴を吐出して第1膜部を形成する工程と、
前記縁を除いた前記膜形成領域に第2液滴を吐出して第2膜部を形成する工程とを備え、
前記第1膜部を形成する第1液滴と前記第2膜部を形成する第2液滴とは、硬化前後における体積変化量に関して異なり、
前記第1液滴の体積変化量は、前記第2液滴の体積変化量よりも小さい配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1液滴は、無溶剤型の液滴であり、前記第2液滴は、溶剤型の液滴である請求項3に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245445(P2010−245445A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95187(P2009−95187)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】