説明

配線基板用金属球

【課題】 本発明の目的は、搭載性が良く、配線基板の層間導通用途に適した配線基板用金属球を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、Agおよび/またはCuを合計で20質量%以上80質量%以下含み、残部Biおよび不可避的不純物からなり、粒径が0.03mm以上0.5mm以下の球状に凝固されてなる配線基板用金属球であって、該金属球の真円度が粒径の5%以下である、配線基板用金属球である。
また、本発明の配線基板用金属球中には、Agを45質量%以上75質量%以下含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の層間導通に用いる金属球に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が搭載される多層配線基板における板厚方向の層間導通は、片面あるいは両面に金属配線パターンを形成したガラス入り熱硬化性樹脂などの絶縁基板を複数枚積層して、スルーホールと呼ばれる貫通孔を基板に開けた後、孔部を電気めっきすることによって形成するのが一般的である。この製法では、各層の導通部の位置が共通となり配線設計が制限されるため、比較的微細で高密度な配線が要求される場合には、あらかじめ各層に導通部を形成した後、積層する方法が適用されている。導通部の形成には、めっきや導体ペーストを用いる方法があり、その一手法として、Cuなどの金属にはんだを被覆した金属球を孔に埋め込む方法が開示されており、前記方法と比較してコストや信頼性の点で優れているとされている。(特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開平9−293968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今の電子機器の小型化に伴う、配線基板における高密度化、微細化の流れにおいて、配線基板の導通部も微小なものが要求されている。さらに、携帯電子機器はコモディティ化が進み、一層の低コスト化が必要となってきている。上記のはんだを被覆した金属球を用いる方法では、金属の球状化とその表面へのはんだ層の形成とを別々の工程としなければならず、しかも品質管理のためには各工程後に分級や選別が必要となり、コストがかかる。
また、金属球のサイズが小さいほど、はんだを均一に、且つ平滑に被覆することが困難となり、結果として金属球の真円度が増加し転がりにくくなる。このような金属球を配線基板に埋め込む場合、金属球の転がりを利用して金属球を配線基板上の孔に埋め込む方法では、金属球の停滞によって孔への供給や、基板上に残った余剰球の除去処理が頻繁に必要となり、生産効率を著しく低下させる。
また、配線基板の孔位置に合わせて高精度に配置したノズル部分を真空に引き、この部分に金属球を吸着させ、所定の位置に配列する方法では、金属球の表面の凸凹が激しいと吸着できず、金属球が入らない孔ができ、基板そのものが不良となるおそれがある。
【0005】
また、金属球に被覆したはんだが配線金属と接合された後、その接合部に残ったはんだは、配線基板への部品はんだ付けの際に基板内で再溶融する可能性が高い。はんだが再溶融した場合、はんだと配線金属との拡散により厚い化合物相が形成されると、外部からの機械的衝撃や熱応力によっては、配線基板の接合信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、搭載性が良く、配線基板の層間導通用途に適した金属球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、配線基板用金属球において、室温における平衡状態にて融点の異なる金属相のみ安定に存在するBi−Cu合金および/またはBi−Ag合金に着目し、配線基板用金属球の製造を検討した結果、融点の異なる2つの金属相からなる真円度の小さい金属球が製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、Agおよび/またはCuを合計で20質量%以上80質量%以下含み、残部Biおよび不可避的不純物からなり、粒径が0.03mm以上0.5mm以下の球状に凝固されてなる配線基板用金属球であって、該金属球の真円度が粒径の5%以下である、配線基板用金属球である。
本発明の配線基板用金属球中には、Agを45質量%以上75質量%以下含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の組成に調整したAgおよび/またはCuとBiとの合金を球状に凝固させることにより、融点の異なる2つの金属相を有する真円度の小さい球が得られる。したがって、従来のはんだを被覆した金属球と同等の機能を有する金属球をより少ない工程で製造できることから、配線基板用金属球のコスト低減に有効な技術となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の重要な特徴は、Agおよび/またはCuとBiとの合金溶湯から直接微小球体を形成することで、2つの金属相を有する真円度の小さい金属球を得る点にある。以下に詳細を説明する。
【0011】
本発明の配線基板用金属球は、配線基板への部品のはんだ付け温度(鉛フリーはんだの場合、230〜260℃程度)より高温の融点を持つBi(融点約271℃)を採用することにより、配線基板の製造後に実施される部品のはんだ付けの熱による、導通部と配線金属との金属間化合物の形成を抑止することができる。そして、本発明の配線基板用金属球は、Biと金属間化合物を形成せず、かつ室温における平衡状態にてそれぞれの金属相のみ安定に存在するAg、Cuを組み合わせることで、配線基板の製造時に溶融しないコアを確保し、配線基板内に高精度に導通部を形成することができる。そして、本発明の配線基板用金属球を用いることにより、配線基板の積層においては、Biを溶融させて配線金属と金属球を接合せしめ、同時に未溶融のコアによって配線基板の積層時の圧力による導通部近傍の変形を最小限に抑えることで、寸法精度の良い配線基板を得ることができる。
【0012】
本発明の配線基板用金属球におけるBiは、配線基板の製造時に溶融され、配線基板中の配線金属と接合あるいは密着することで、導通部を形成する役割を果たす。また、Ag、Cuは、配線基板の製造時に溶融しないコアとなり、配線基板の積層時の圧力による導通部近傍の変形を最小限に抑える働きをする。配線基板用金属球中のAg、Cuが少ないとBiの溶融時にコアの役割を果たすことが困難となる。一方、配線基板用金属球中のAg、Cuが多いとBiの溶融時に液相が少なくなるため、配線金属との十分な接合が得られない。したがって、金属球に対するコアの体積率は、配線金属間の絶縁体の厚みと配線金属の変形能、金属球との接合面積によって種々設定することができる。
【0013】
また、AgはCuに比べて酸化膜が分解しやすいことから、配線金属との接合信頼性が高まる可能性はあるが、CuはAgよりも安価であることから、CuとAgの比率は接合信頼性と要求コストによって種々選択することができる。したがって、本発明の配線基板用金属球が含むAgおよび/またはCuは、合計で20質量%以上80質量%以下とする。
また、本発明においては、Agを選択してBiと金属球を形成することにより、Bi−Cuよりも良好な真円度が得られる。これは、CuとAgの融点の差に起因するものと考えられる。また、上記で説明したCu球にはんだを被覆した金属球における金属球に対するはんだの比率は、25体積%〜55体積%のものが一般的に用いられている。本発明における金属球は、はんだを被覆した金属球の代替として使うものであり、AgとBiは比重が近いことから、より好ましくは、Agを45質量%以上75質量%以下含むことが好ましい。
【0014】
本発明の配線基板用金属球は、配線基板内に埋め込んで使用されるので、配線基板の導通部の寸法に合わせる必要がある。配線基板内で信号配線の役割を果たす金属球は、配線の自由度を高め、実装面積を抑制する目的で高密度化しており、絶縁層間距離および金属球の搭載性を鑑みると、その粒径は0.03mm以上必要である。
一方、配線基板内の電源線の役割を果たす金属球は、電流密度の増加による発熱や送電ロスを抑制する目的で大径化されることがあり、前記実装面積が増大する影響を鑑みるとその粒径は0.5mm以下がよい。本発明の配線基板用金属球の粒径範囲は、好ましくは、0.05mm〜0.3mmがよい。
【0015】
本発明における真円度は、上記理由で配線基板への埋め込み時にその生産性を大きく左右する。ここで、本発明における真円度は、球を投影した時にできる円の最大径と最小径との差であり、粒径は投影面積の円相当径とする。本発明における真円度は、粒径の5%以下でないと配線基板への搭載に支障を生ずる。より好ましくは3%以下がよい。
【0016】
本発明の配線基板用金属球は、溶融した合金を球状に凝固させることができる如何なる製造方法でも適用することができる。好ましくは、例えば特開2001−262204号公報、米国特許公報US5266098等に記載されているような、均一液滴噴霧法を用いるのがよい。
均一液滴噴霧法とは、底部にノズルを有するるつぼ内で金属を溶解し、溶融金属をノズルから押し出すことにより金属球を製造する方法であり、押し出す際に溶融金属に振動を付与することで、押し出された溶融金属を体積の均一な金属球を形成する方法である。溶融した金属は、全ての構成成分の拡散が固体に比べると非常に高速で生じているので、均質に混ざり合った溶融金属から直接液滴を作製し、凝固させて金属球とすることにより、全ての金属球ごとの成分比は等しくなる。したがって、Ag、CuとBiのような2相に分離する金属球でも組成比が偏ることなく製造することができる。
【0017】
本発明の配線基板用金属球の製造温度は、上記理由により少なくとも合金の液相線より高い温度でノズルより押し出すことが望ましく、長時間の出湯において製造安定性を高めるには、さらに高温で押し出してもよい。特に、本発明のBiの酸化物であるBiの融点は約880℃であり、Cuの酸化物であるCuOの融点が約1200℃であり、これらはそれぞれの金属の融点よりも高い。したがって、原料の酸化度合いや合金の組成比に応じて、るつぼ内の溶融金属を加熱することによって、ノズル近傍における溶湯の粘性が低下し、ノズルが閉塞することなく出湯することができる。
【0018】
溶融した金属の凝固および金属球を回収する雰囲気は、大気中であると金属球表面が過剰に酸化することによって、溶湯の表面張力による球状化を阻害するため、He、Ar等の不活性ガス中で冷却凝固させることが望ましい。また、不活性ガスの圧力や温度も、真円度に代表される球の形状や必要な冷却距離に応じて種々選択することができる。
本発明における配線基板用金属球で採用するBiは、凝固収縮時に約3%体積膨張するため、表面の一部にBiが凝固した凸部が見られることがある。この金属球表面の凸部は、AgやCuの凝固とも密接に関係しており、AgやCuの凝固シェルが形成された後でBiを凝固させると、凸部が形成されると考えられる。また、Biを過冷させるとBi凝固時に結晶成長の駆動力が高まり、凸部が形成されると考えられる。そこで、凸部の形成を低減させるためには、少なくともBiの融点直上からBiの凝固完了までは徐冷させることが望ましい。具体的には、大気圧下におけるAr雰囲気での回収で達成できる。粒径や組成によっては、冷却速度を調整するためにAr圧力を低減させたり、チャンバー内に加熱ヒータ等を設けて適宜冷却雰囲気を設定することでも達成できる。
【実施例】
【0019】
上述した均一液適法により、るつぼの底部に設けたノズルから表1に示す組成の溶湯を押し出し、滴下した溶湯を凝固させ配線基板用金属球を作製した。このとき、ノズル径を45μmに調整し、ノズルから溶湯を押し出す際、表1に示す出湯温度に設定して、押出した液滴はゲージ圧で20kPaのArガス中で凝固させ回収した。回収した金属球からφ90μm前後のものを分級して、組成ごとに金属球50個について真円度を測定した。
【0020】
表1中の本発明例(a)〜(d)の配線基板用金属球は、平均の真円度/粒径の百分率が5%以下であり、良好な形状を呈していた。また図1に示すように、本発明例(c)の外観は良好な球形であり、配線基板用金属球として供するに十分な形状を有していた。一方、比較例(b)において、平均の真円度/粒径の百分率は5.9%であり、真円度が悪いことを確認した。
【0021】
本発明例(c)の配線基板用金属球を精密研磨によって調整し、日立製作所製 走査電子顕微鏡S−3500Nで断面組織を観察し、堀場製作所製 エネルギー分散型X線装置EMAX−7000で構成元素の線分析を行った。図2の上部に示す断面組織写真において、写真中央の水平線はX線を走査したライン分析箇所であり、図2下部に示す2つのグラフ中の線はライン分析箇所におけるAg、Biのそれぞれのカウント数を示す。ライン分析中のBi/Ag比の高い箇所は写真中の結晶の間隙に対応していることから、本発明の配線基板用金属球の組織は、Agの結晶間にBiが存在する2相組織となっていると推定される。本発明の配線基板用金属球は、接合時にBiのみが溶融してAgおよび/またはCuがコアとして残る、理想的な相構成を持つと考えられる。
【0022】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明例の配線基板用金属球の外観を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明例の配線基板用金属球の断面組織写真および元素ライン分析を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Agおよび/またはCuを合計で20質量%以上80質量%以下含み、残部Biおよび不可避的不純物からなり、粒径が0.03mm以上0.5mm以下の球状に凝固されてなる配線基板用金属球であって、該金属球の真円度が粒径の5%以下であることを特徴とする配線基板用金属球。
【請求項2】
Agを45質量%以上75質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板用金属球。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−123681(P2010−123681A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294677(P2008−294677)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】