説明

配線基板

【課題】半導体素子等の実装持における半導体素子等との接続信頼性の高い配線基板を提供すること。
【解決手段】本発明の配線基板は、金属粒子と前記金属粒子が分散する分散媒とを含む導体パターン形成用インクを液滴吐出法により吐出して形成される導体パターンを備えた配線基板であって、セラミックス基板と、前記セラミックス基板に埋設され、露出面が湾曲凹面となっている導体パターンとを有することを特徴とする。湾曲凹面の曲率半径は、0.025cm以上3cm以下であることが好ましい。また、湾曲凹面の平均深さは、1μm以上30μm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装される回路基板(配線基板)として、セラミックスで構成された基板(セラミックス基板)上に、金属材料で構成された配線が形成されたセラミックス回路基板が、広く用いられている。このようなセラミックス回路基板では、基板(セラミックス基板)自体が、多機能性材料で構成されているため、多層化による内装部品の形成、寸法の安定性等の点で有利である。
そして、このようなセラミックス回路基板は、セラミックス粒子とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体上に、形成すべき配線(導体パターン)に対応するパターンで、金属粒子を含む組成物を付与し、その後、当該組成物が付与されたセラミックス成形体に対し、脱脂、焼結処理を施すことにより製造されている。
【0003】
セラミックス成形体上へのパターン形成の方法としては、スクリーン印刷法が広く用いられている。その一方で、近年、配線の微細化、狭ピッチ化による回路基板の高密度化が求められているが、スクリーン印刷法では、配線の微細化、狭ピッチ化に不利であり、上記のような要求に応えるのが困難である。そこで、近年、セラミックス成形体上へのパターン形成の方法として、液体吐出ヘッドから金属粒子を含む液体材料(導体パターン形成用インク)を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、従来の方法と比較して、微細な導体パターンを形成することが可能であり、回路密度の向上に有利である。
しかしながら、このように導体パターンが微細となっていくと、当該配線基板に半導体等を実装した際の半田やボンディングワイヤでの導体パターンとの接続強度が低下するといった問題があった。特に、セラミックス基板を用いた配線基板は、より厳しい環境での使用が要求されるため、実装により高い接続の信頼性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−84387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体素子等の実装時における半導体素子等との接続信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の配線基板は、金属粒子と前記金属粒子が分散する分散媒とを含む導体パターン形成用インクを液滴吐出法により吐出して形成される導体パターンを備えた配線基板であって、
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板に埋設され、露出面が湾曲凹面となっている導体パターンとを有することを特徴とする。
これにより、半導体素子等の実装時における半導体素子等との接続信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0007】
本発明の配線基板では、前記湾曲凹面の曲率半径は、0.025cm以上3cm以下であることが好ましい。
これにより、半田やボンディングワイヤ等との接触面積をより好適なものとすることができ、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
本発明の配線基板では、前記湾曲凹面の中央部の平均深さは、1μm以上30μm以下であることが好ましい。
これにより、半田やボンディングワイヤ等との接触面積をより好適なものとすることができ、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
【0008】
本発明の配線基板では、前記導体パターンの中央部の平均厚さは、2μm以上25μm以下であることが好ましい。
これにより、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
本発明の配線基板では、前記導体パターンの幅は、50μm以上1000μm以下であることが好ましい。
これにより、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとしつつ、配線密度をより高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す配線基板の最外層に位置する導体パターンの断面図である。
【図3】図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の、概略の工程を示す説明図である。
【図4】図1の配線基板(セラミックス回路基板)の、製造工程説明図である。
【図5】インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
【図6】インクジェットヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《配線基板および導体パターン》
図1は、本発明の配線基板の一例を示す断面図、図2は、図1に示す配線基板の最外層に位置する導体パターンの断面図である。
図1に示すように、配線基板(セラミックス回路基板)30は、セラミックス基板31が多数(例えば10枚から20枚程度)積層されてなる積層基板32と、この積層基板32の最外層、すなわち一方の側の表面に形成された、微細配線等からなる導体パターン(回路)20Aとを有して形成されたものである。
また、積層基板32は、積層されたセラミックス基板31、31間に、導体パターン(回路)20を備えている。
導体パターン20Aは、金属粒子と当該金属粒子が分散する分散媒とを含む導体パターン形成用インクを液滴吐出法により吐出して形成されるものである。
導体パターン20Aは、図2に示すように、積層基板32の最外層のセラミックス基板31に埋設されており、その露出面が湾曲凹面をなしている。
【0011】
ところで、近年の導体パターンの微細化に伴い、配線基板に半導体等を実装する際に、半田やボンディングワイヤと導体パターンと接触面積が小さいため、接続強度が低下するといった問題があった。特に、セラミックス基板を用いた配線基板は、より厳しい環境での使用が要求されるため、実装により高い接続の信頼性が要求されている。
これに対して、本発明の配線基板では、上述したように、導体パターンの露出面(半田やボンディングワイヤと接触する面)が湾曲凹面となっているため、半田接続やワイヤボンディング接続をする際に半田やボンディングワイヤ等との接触面積を大きくすることができる。その結果、接続強度(密着力)を高いものとすることができ、半導体素子等との接続信頼性の高い配線基板とするとこができる。
また、湾曲凹面となっていることにより、BGA基板としては、BGAボール(半田)のすわりが良くなり、モジュール基板としてはBGAボール(半田)が自発的に湾曲凹面の中央部に移動するためにセルフアライメントが可能になり、ともに位置ずれが抑制されるため、高い位置精度も得られる。
【0012】
このような導体パターン20Aの中央部の平均厚さは、2μm以上25μm以下であるのが好ましく、4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、固体金属(導体パターン)が液体金属(半田)に溶け出す作用、いわゆる、溶食現象(はんだ食われ)による接続不良をより効果的に防止することができ、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
また、導体パターンの幅(図2中Yで示される幅)は、50μm以上1000μm以下であるのが好ましく、100μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとしつつ、配線密度をより高いものとすることができる。
【0013】
また、導体パターン20Aの湾曲凹面の平均曲率半径は、0.025cm以上3cm以下であるのが好ましく、0.05μm以上1μm以下であるのがより好ましい。これにより、半田やボンディングワイヤ等との接触面積をより好適なものとすることができ、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
また、導体パターン20Aの湾曲凹面の平均深さ(図2中Xで示される深さ)は、1μm以上30μm以下であるのが好ましく、3μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、半田やボンディングワイヤ等との接触面積をより好適なものとすることができ、半導体素子等との接続の信頼性をより高いものとすることができる。
また、このような導体パターン20Aの湾曲凹面は、Ni/Auめっき等のめっき処理が施されているのが好ましい。これにより、いわゆるはんだ食われを効果的に防止することができ、接続不良が生じるのを確実に防止することができる。
【0014】
このような導体パターン20Aは、後述するような導体パターン形成用インクにより形成されたパターン(導体パターン前駆体、以下、単に前駆体ともいう。)10を加熱する(焼結する)ことにより形成される薄膜状の導体パターンであって、金属粒子が相互に結合されてなり、少なくとも導体パターン表面において金属粒子同士が隙間なく結合している。
【0015】
導体パターン20Aの比抵抗は、20μΩcm未満であることが好ましく、15μΩcm以下であることがより好ましい。このときの比抵抗は、インクの付与後、650℃以上で加熱、乾燥した後の比抵抗をいう。上記比抵抗が20μΩcm以上になると、導電性が要求される用途、すなわち回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる。
なお、導体パターン20Aは、導体パターン前駆体10を焼結処理として160℃以上で20分以上の条件で加熱することにより得られる。なお、この導体パターン前駆体10の焼結は、後述するようにセラミックス成形体15の脱脂、焼結とともに行うことができる。
【0016】
なお、導体パターン20も、導体パターン20Aと同様に、導体パターン形成用インクにより形成されたものとなっている。
なお、上記のような導体パターン20Aおよび導体パターン20は、携帯電話やPDA等の移動通話機器の高周波モジュール、インターポーザー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、加速度センサー、弾性表面波素子、アンテナや櫛歯電極等の異形電極、その他各種計測装置等の電子部品等に適用することができる。
【0017】
セラミックス基板31は、シート状をなしており、導体パターン20Aおよび導体パターン20を支持する。
また、セラミックス基板31には、導体パターン20A、導体パターン20に接続するコンタクト(ビア)33が形成されている。このような構成によって、上下に配置された導体パターン20A、20間および導体パターン20、20間が、コンタクト33によって導通したものとなっている。
【0018】
なお、セラミックス基板31は、後述するように、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等のセラミックス粉末と、バインダーとを含む材料をシート状にし、その後、加熱処理(焼結処理)することにより得られる基板である。
以上のような配線基板30は、各種の電子機器に用いられる電子部品となるものであり、各種配線や電極等からなる回路パターン、積層セラミックスコンデンサ、積層インダクター、LCフィルタ、複合高周波部品等を基板に形成してなるものである。
【0019】
《配線基板の製造方法》
次に、本発明の配線基板の製造方法の好適な実施形態について説明する。
図3は、本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の概略の工程を示す説明図、図4は、本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の工程説明図である。
【0020】
本実施形態の配線基板の製造方法は、セラミックス材料とバインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体15を複数用意する工程(セラミックス成形体用意工程)と、セラミックス成形体15のうち少なくとも1つの表面上に、金属粒子と金属粒子が分散する分散媒とを含む導体パターン形成用インク1を液滴吐出法により吐出して、導体パターン前駆体10を形成する工程(導体パターン前駆体形成工程)と、複数のセラミックス成形体15を積層して積層体17を得る工程(積層工程)と、積層体17を加熱して、導体パターン20およびセラミックス基板31を有する配線基板30を得る工程(焼成工程)とを有している。
【0021】
以下、各工程について詳細に説明する。
[セラミックス成形体用意工程(セラミックス成形体形成工程)]
本工程では、セラミックス材料とバインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体(セラミックスグリーンシート)15を複数用意する。
セラミックス成形体15は、後述するように焼結処理されることにより、セラミックス基板31となるものである。
【0022】
セラミックス成形体15は、例えば、以下のようにして形成する。
まず、図3に示すように、原料粉体として、平均粒径が0.1μm以上10μm以下のアルミナ(Al)や酸化チタン(TiO)等からなるセラミックス粉末(セラミックス材料)と、平均粒径が0.1μm以上10μm以下のホウ珪酸ガラスやさらに数種類の酸化物(Al、MgO、CaO、NaO、ZnO、LiO、KO、PbO等)等からなるガラス粉末とを用意し、これらを適宜な混合比、例えば1:1の重量比で混合する。
【0023】
このようなセラミックス材料としては、Al、SiO、MgO、MgO・SiO、2MgO・SiOやTiO,BaTiO,BaSr1−xTiO,SrTiO,CaTiO,PbZrTi1−x,Pb1−xLaZrTi1−x,SrBiTaO等のペロブスカイト構造を持つ複合酸化物やその他の強誘電体材料、あるいは、MgTiO,Ba(Mg1/3Ta2/3)O,Ba(Zn1/3Ta2/3)O,Ba(Ni1/3Ta2/3),Ba(Co1/3Ta2/3),BaNdTi12,BaTi20,LaAlO,PrAlO,SmAlO,YAlO,GdAlO,DyAlO,ErAlO,Sr(Zn1/3Ta2/3)O,Sr(Ni1/3Ta2/3)O,Sr(Co1/3Ta2/3)O,Sr(Mg1/3Ta2/3)O,Sr(Ca1/3Ta2/3)O,BaTi20,Ba(Co1/3Nb2/3)Oなどを主成分とする材料が利用可能であるが、一般的なセラミックス材料であれば、使用可能である。
【0024】
また、ガラス成分としては、結晶化ガラスでも非晶質ガラスでも一般的なガラスであれば使用可能である。例えば、SiO,Al,RO(Rは、Mg,Ca,Sr,Ba)を含むものが挙げられ、具体的には、SiO−BaO系、SiO−Al−BaO系、SiO−Al−BaO−B系、SiO−Al−BaO−ZnO−B系のガラスやBi系のガラスおよびそれらを主成分とするガラスなどが利用可能である。
【0025】
このように、セラミックス成形体15の材料として、ガラス材料を含むことにより、以下のような効果が得られる。ガラス材料は、焼結時において溶融し、導体パターン20を形成されるセラミックス基板31に固定、密着させる機能を有している。このため、形成される導体パターン20A、導体パターン20および配線基板30はより信頼性の高いものとなる。
【0026】
次に、得られた混合粉末に適宜なバインダー(結合剤)や可塑剤、有機溶剤(分散剤)等を加え、混合・撹拌することにより、スラリーを得る。ここで、バインダーとしては、ポリビニルブチラールが好適に用いられるが、これは水に不溶であり、かつ、いわゆる油系の有機溶媒に溶解しあるいは膨潤し易いものである。
次に、得られたスラリーを、ドクターブレード、リバースコーター等を用いてPETフィルム上にシート状に形成し、製品の製造条件に応じて数μm以上数百μm以下の厚さのシートに成形し、その後、ロールに巻き取る。
続いて、製品の用途に合わせて切断し、さらに所定寸法のシートに裁断する。本実施形態では、例えば1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断する。
【0027】
次に、必要に応じて所定の位置に、COレーザー、YAGレーザー、機械式パンチ等によって孔開けを行うことでスルーホール(貫通孔)を形成する。
そして、このスルーホールに、金属粒子が分散した厚膜導電ペーストを充填することにより、コンタクト33となるべき部位(コンタクト前駆体16)を形成する。厚膜導電ペーストとしては、前述したような導体パターン形成用インクを用いることができる。なお、厚膜導電ペーストの充填は、本工程で行うものであってもよいし、後述する導体パターン前駆体形成工程で行うものであってもよく、また、導体パターン前駆体形成工程の後に行うものであってもよい。
以上により、複数のセラミックス成形体15を準備する。
【0028】
[導体パターン前駆体形成工程]
次に、上記のようにして得られたセラミックス成形体15の一方の側の表面に、導体パターン20Aまたは導体パターン20となる導体パターン前駆体10を、コンタクト前駆体16に連続した状態に形成する。すなわち、図4(a)に示すようにセラミックス成形体15上に、導体パターン形成用インク(以下単にインクともいう)1を液滴吐出(インクジェット)法により付与し、導体パターン前駆体10を形成する。
【0029】
本実施形態において、導体パターン形成用インクの吐出は、後述するようなインクジェット装置(液滴吐出装置)100を用いることにより行うことができる。
なお、形成した導体パターン前駆体10について、さらに乾燥処理を施してもよい。乾燥処理は、上記の液滴吐出時におけるセラミックス成形体15の加熱温度と同様の条件で行うことができる。
【0030】
また、液滴吐出方法によりインク1を付与してから、セラミックス成形体15を加熱して水等の水系分散媒を蒸発させ、当該加熱後の導体パターン前駆体10の上に再度インク1を付与する、といった工程を繰り返し行うことで、厚膜の導体パターン前駆体10を形成してもよい。このような場合、セラミックス成形体15に一旦付与されたインク1の粘度が上昇することから、インク1がセラミックス成形体15上に過度に濡れ広がることを防止し、導体パターン前駆体10の厚さ、線幅等をより精度よく目的のものとすることができる。
このようにして導体パターン前駆体10を形成したら、同様の工程により、導体パターン前駆体10を形成したセラミックス成形体15を必要枚数、例えば10枚から20枚程度作製する。
【0031】
[積層工程]
次いで、これらセラミックス成形体15からPETフィルムを剥がし、図4(b)に示すようにこれらを積層することにより、積層体17を得る。
この際に、積層するセラミックス成形体15については、上下に重ねられるセラミックス成形体15間で、それぞれの導体パターン前駆体10が必要に応じてコンタクト前駆体16を介して接続するように配置する。
【0032】
その後、積層したセラミックス成形体15をポリエチレンパックで包装、封入した後、静水圧プレス機にてセラミックス成形体15を構成するバインダーのガラス転移点以上に加熱しつつ、各セラミックス成形体15同士を圧着する。この際に、最外層にある導体パターン前駆体10は、図4(b)に示すように、圧力によってセラミックス成形体15内に埋設され、後述する加熱工程によって導体パターン20Aとなる。
以上により、積層体17を得る。
【0033】
[加熱工程]
次に、このようにして積層体17を形成したら、ポリエチレンパックから開封した後、例えば、ベルト炉などによって加熱処理する。これにより、各セラミックス成形体15は焼結されることで、図1に示すようにセラミックス基板31となり、また、導体パターン前駆体10は、これを構成する銀コロイド粒子が焼結して配線パターンや電極パターンからなる導体パターン(回路)20Aおよび20となる。そして、このように積層体17が加熱処理されることで、この積層体17は図1に示した積層基板32となる。
【0034】
なお、湾曲凹面を備える導体パターン20Aは、例えば、有機物の含有量が比較的大きい導体パターン形成用インクを用いて導体パターン前駆体10を形成し、加熱処理の際にこの導体パターン前駆体10が導体パターン20Aとなる段階で体積収縮することにより、形成することができる。なお、湾曲凹面の形成は、これに限定されず、例えば、レーザー加工等によって形成してもよい。
【0035】
積層体17の加熱温度としては、セラミックス成形体15中に含まれるガラス材料の軟化点以上とするのが好ましく、具体的には、600℃以上900℃以下とするのが好ましい。また、加熱条件としては、適宜な速度で温度を上昇させ、かつ下降させるようにし、さらに、最大加熱温度、すなわち前記の600℃以上900℃以下の温度では、その温度に応じて適宜な時間保持するようにする。
【0036】
このようにガラスの軟化点以上の温度、すなわち前記温度範囲にまで加熱温度を上げることにより、得られるセラミックス基板31のガラス成分を軟化させることができる。したがって、その後常温にまで冷却し、ガラス成分を硬化させることにより、積層基板32を構成する各セラミックス基板31と導体パターン20との間がより強固に固着するようになる。
また、このような温度範囲で加熱することにより、得られるセラミックス基板31は、900°以下の温度で焼結されて形成された、低温焼結セラミックス(LTCC)となる。
【0037】
《液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置》
次に、上述した配線基板の製造方法に用いる液滴吐出装置(インクジェット装置)について図面を参照しつつ説明する。
図5は、液滴吐出装置(インクジェット装置)の一例を示す斜視図、図6は、液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。図5において、X方向はベース130の左右方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
【0038】
液滴吐出装置(インクジェット装置)100は、基材S(セラミックス成形体15)上に導体パターン形成用インク1を吐出し、導体パターンを形成するための装置である。
液滴吐出装置100は、図5に示す液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド。以下、単にヘッドと呼ぶ)110と、ベース130と、テーブル140と、制御装置190と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180とを有している。
【0039】
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等の液滴吐出装置100の各構成部材を支持する台である。
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、基材S(本実施形態ではセラミックス成形体15)を載置するものである。
また、テーブル140の裏面には、ラバーヒータ(図示せず)が配設されている。テーブル140上に載置されたセラミックス成形体15は、その上面全体がラバーヒータにて所定の温度に加熱されるようになっている。
【0040】
セラミックス成形体15に着弾したインク(導体パターン形成用インク)1は、その表面側から分散媒の少なくとも一部が蒸発する。このとき、セラミックス成形体15は加熱されているので、分散媒の蒸発が促進される。そして、セラミックス成形体15に着弾したインク1は、乾燥とともにその表面の外縁から増粘し、つまり、中央部に比べて外周部における固形分(粒子)濃度が速く飽和濃度に達することから表面の外縁から増粘していく。外縁の増粘したインク1は、セラミックス成形体15の面方向に沿う自身の濡れ広がりを停止するため、着弾径しいては線幅の制御が容易になる。
セラミックス成形体15の加熱温度としては、例えば、40℃以上100℃以下で行うのが好ましく、50℃以上70℃以下で行うのがより好ましい。このような条件とすることにより、分散媒が蒸発した際に、クラックが発生するのをより効果的に防止することができる。
【0041】
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モータ172とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140の位置を決定し、これにより、ベース130におけるセラミックスグリーンシート15の位置を決定する。
第1移動手段171は、Y方向と略平行に設けられた2本のレールと、当該レール上を移動する支持台とを有している。第1移動手段171の支持台は、モータ172を介してテーブル140を支持している。そして、支持台がレール上を移動することにより、基材Sを載置するテーブル140は、Y方向に移動および位置決めされる。
【0042】
モータ172は、テーブル140を支持しており、θz方向にテーブル140を揺動および位置決めする。
【0043】
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモータ182と、モータ183、184、185とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110の位置を決定する。
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱と、当該支持柱同士の間に当該支持柱に支持されて設けられ、2本のレールを有するレール台と、レールに沿って移動可能でヘッド110を支持する支持部材(図示せず)とを有している。そして、支持部材がレールに沿って移動することにより、ヘッド110は、X方向に移動および位置決めされる。
【0044】
リニアモータ182は、支持部材付近に設けられており、ヘッド110のZ方向の移動および位置決めをすることができる。
モータ183、184、185は、ヘッド110を、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決めする。
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180とにより、インクジェット装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基材Sとの相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。
【0045】
図6に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によってインク1をノズル(突出部)118から吐出するものである。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインクを吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、インク1に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
【0046】
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバ116およびリザーバ116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
【0047】
リザーバ116には、図示せぬインクタンクよりインク1が供給される。リザーバ116は、各インク室117にインク1を供給するための流路を形成している。
また、ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、インク1を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して開口されている。そして、各インク室117から対応するノズル118に向かって、インク流路が形成されている。
【0048】
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
【0049】
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバ116からインク室117にインク1が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118からインク1が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、インク1の吐出条件を制御し得るようになっている。
【0050】
制御装置190は、インクジェット装置100の各部位を制御する。例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節してインク1の吐出条件を制御したり、テーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180を制御することにより基材Sへのインク1の吐出位置を制御する。
以上のようなインクジェット装置100を用いることにより、インク1を、セラミックス成形体15(基材S)上の所望する場所に所望の量、精度良く吐出し、配することができる。
【0051】
《導体パターン形成用インク》
次に、上述したような導体パターン20Aを形成するのに好適に用いることができる導体パターン形成用インクについて説明する。
なお、本実施形態では、金属粒子を水系分散媒に分散してなる分散液として、銀粒子が分散した分散液を用いた場合について代表的に説明する。
【0052】
以下、導体パターン形成用インクの各構成成分について詳細に説明する。
[水系分散媒]
まず、水系分散媒について説明する。
本発明において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。
【0053】
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、導体パターン形成用インク中における水系分散媒の含有量は、25wt%以上60wt%以下であることが好ましく、30wt%以上50wt%以下であることがより好ましい。これにより、インクの粘度を好適なものとしつつ、分散媒の揮発による粘度の変化を少ないものとすることができる。
【0054】
[銀粒子]
次に、銀粒子(金属粒子)について説明する。
銀粒子は、形成される導体パターンの主成分であり、導体パターンに導電性を付与する成分である。
また、銀粒子は、インク中において分散している。
【0055】
銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上30nm以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより高いものとすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0056】
なお、一般に、液滴吐出法により導体パターン前駆体を形成する場合、そのインクの吐出安定性を確保するために、上述したような粒径とすることが必要となり、他の印刷法等と比較して比較的小さな粒径の銀粒子を用いる。このような場合、導体パターン前駆体における銀粒子の融点が低下してしまう。このため、従来の導体パターン前駆体では、セラミックス成形体の焼成時において同時に導体パターンを製造すると、導体パターン前駆体の銀粒子が比較的早期に溶融して、銀が長時間液体の状態で維持される結果、導体パターン前駆体が接触する他の電気部品等に流出し、導体パターンと電気部品とが十分に接続されない問題があった。しかしながら、本発明では、導体パターン前駆体が後述するようなパッド膜を備える結果、このような問題が防止されている。
【0057】
また、インク中において、銀粒子の平均粒子間距離は、1.7nm以上380nm以下であるのが好ましく、1.75nm以上300nm以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの粘度をより適度なものとすることができ、吐出安定性に特に優れたものとなる。
また、インク中に含まれる銀粒子(分散剤が表面に吸着していない銀粒子(金属粒子))の含有量は、0.5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上45wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターンの断線をより効果的に防止することができ、より信頼性の高い導体パターンを提供することができる。
また、銀粒子(金属粒子)は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子(金属コロイド粒子)として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、インクの吐出安定性が特に優れたものとなる。
【0058】
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、インクによって形成されたパターン(導体パターン前駆体)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とOH基の数が3個未満であったり、COOH基の数がOH基の数よりも少ないと、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
また、分散剤は、COOH基とSH基とを合わせて2個以上有するメルカプト酸またはその塩を含んでいてもよい。これらの分散剤は、メルカプト基が銀微粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク中に存在することにより、より容易に微細な導体パターンを形成することができる。また、インクによって形成されたパターン(導体パターン前駆体)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とSH基の数が2個未満すなわち片方のみであると、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
【0060】
このような分散剤としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸二ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸二カリウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
インク中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。銀コロイド粒子の含有量が前記下限値未満であると、銀の含有量が少なく、導体パターンを形成した際、比較的厚い膜を形成する場合に、複数回重ね塗りする必要が生じる。一方、銀コロイド粒子の含有量が前記上限値を超えると、銀の含有量が多くなり、分散性が低下し、これを防ぐためには攪拌の頻度が高くなる。
【0062】
また、銀コロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。コロイド粒子(固形分)を500℃まで加熱すると、表面に付着した分散剤等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。500℃までの加熱による減量は、銀コロイド粒子中の分散剤の量にほぼ相当すると考えられる。加熱減量が1wt%未満であると、銀粒子に対する分散剤の量が少なく、銀粒子の充分な分散性が低下する。一方、25wt%を超えると、銀粒子に対する残留分散剤の量が多なり、導体パターンの比抵抗が高くなる。但し、比抵抗は、導体パターンの形成後に加熱焼結して有機分を分解消失させることである程度改善することができる。そのため、基板として、より高温で焼結されるセラミックス成形体等を用いた場合このような効果を容易に得ることができる。
【0063】
[有機バインダー]
また、導体パターン形成用インクは、有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーは、導体パターン形成用インクによって形成された導体パターン前駆体において、銀粒子の凝集を防止するものである。すなわち、形成された導体パターン前駆体において、有機バインダーは、銀粒子同士の間に存在することで銀粒子同士が凝集して、パターンの一部に亀裂(クラック)が生じることを防止できる。また、焼結時においては、有機バインダーは、分解されて除去されることができ、導体パターン前駆体中の銀粒子同士は、結合して導体パターンを形成する。
【0064】
有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
【0065】
この中でも、有機バインダーとして、ポリグリセリン化合物を用いた場合、以下のような効果が得られる。
ポリグリセリン化合物は、導体パターン形成用インクによって形成された導体パターン前駆体を乾燥(脱分散媒)した際に、導体パターン前駆体にクラックが発生するのを特に好適に防止することができる。これは、以下のように考えられる。導体パターン形成用インク中にポリグリセリン化合物が含まれることにより、銀粒子(金属粒子)の間に高分子鎖が存在することとなり、ポリグリセリン化合物が銀粒子同士の距離を適度なものとすることができる。さらに、ポリグリセリン化合物は比較的沸点が高いため、水系分散媒の除去時においては除去されず、銀粒子の周囲に付着する。以上により、水系分散媒除去時において、ポリグリセリン化合物が銀粒子を包み込んだ状態が長く続き、水系分散媒の揮発による急激な体積収縮が避けられるとともに銀の粒成長(凝集)が妨げられる結果、導体パターン前駆体中のクラックの発生が抑制されると考えられる。
【0066】
また、ポリグリセリン化合物は、導体パターンを形成する際の焼結時において、断線が発生するのをより確実に防止することができる。これは、以下のように考えられる。ポリグリセリン化合物は、比較的沸点あるいは分解温度が高い。このため、導体パターン形成用インクから導体パターンを形成する過程において、水系分散媒が蒸発した後、比較的高い温度まで、ポリグリセリン化合物を、蒸発或いは熱(酸化)分解せずに、導体パターン前駆体中に存在させることができる。したがって、ポリグリセリン化合物が蒸発或いは熱(酸化)分解するまでは、銀粒子の周囲にポリグリセリン化合物が存在し、銀粒子同士の接近と凝集とを抑制することができ、ポリグリセリン化合物が分解した後には、より均一に銀粒子同士を接合させることができる。さらに、焼結時においてパターン中の銀粒子(金属粒子)の間に高分子鎖(ポリグリセリン化合物)が存在することとなり、ポリグリセリン化合物が銀粒子同士の距離を保つことができる。また、このポリグリセリン化合物は、適度な流動性を有している。このため、ポリグリセリン化合物を含むことにより、導体パターン前駆体は、セラミックス成形体の温度変化による膨張・収縮への追従性が優れたものとなる。
【0067】
以上より、形成された導体パターンに断線が生じることをより確実に防止することができると考えられる。
また、このようなポリグリセリン化合物を含むことにより、インクの粘度をより適度なものとすることができ、インクジェットヘッドからの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。また、成膜性も向上させることができる。
【0068】
ポリグリセリン化合物としては、上述した中でも、ポリグリセリンを用いるのが好ましい。ポリグリセリンは、セラミックス成形体の温度変化による膨張・収縮への追従性が特に優れるとともに、セラミックス成形体の焼結後には、導体パターン中からより確実に除去することができる成分である。その結果、導体パターンの電気的特性をより高いものとすることができる。さらに、ポリグリセリンは、水系分散媒への溶解度も高いので、好適に用いることができる。
【0069】
有機バインダーは、その重量平均分子量が300以上3000以下であるのが好ましく、400以上1000以下であるのがより好ましく、400以上600以下であるのがさらに好ましい。これにより、導体パターン形成用インクによって形成されたパターンを乾燥した際に、クラックの発生をより確実に防止することができる。これに対し、有機バインダーの重量平均分子量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、水系分散媒を除去する際に有機バインダーが分解しやすい傾向があり、クラックの発生を防止する効果が小さくなる。また、有機バインダーの重量平均分子量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、排除体積効果等によりインク中への溶解性、分散性が低下する場合がある。
【0070】
また、インク中に有機バインダーの含有量は、1wt%以上30wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性を特に優れたものとしつつ、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。これに対して、有機バインダーの含有量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、クラックの発生を防止する効果が小さくなる場合がある。また、有機バインダーの含有量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、インクの粘度を十分に低いものとすることが困難な場合がある。
【0071】
[乾燥抑制剤]
また、導体パターン形成用インクは、乾燥抑制剤を含んでいてもよい。乾燥抑制剤は、インク中の水系分散媒の不本意な揮発を防止するものである。その結果、インクジェット装置の吐出部付近において水系分散媒が揮発することを防止でき、インクの粘度の上昇、乾燥が抑えられる。導体パターン形成用インクは、このような乾燥抑制剤を含む結果、インクの液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。すなわち、インクの液滴の重量のばらつきが小さいものとなり、目詰まり、飛行曲がり等が少ないものとなる。また、特に、インクジェット装置に導体パターン形成用インクを充填した後に、長期間(例えば、5日間)運転を行わずにインクジェット装置を待機状態とした場合であっても、導体パターン形成用インクは、均一な量で、目的とする位置に精度よく吐出させることができる。
このような乾燥抑制剤としては、下記式(I)で示される化合物、糖アルコール、アルカノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
【化1】

(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
【0073】
上記式(I)で表される化合物は、水素結合性の高い成分である。このため、水との親和性が高く、適度な水分を保持することができ、導体パターン形成用インクの水系分散媒の不本意な揮発を防止することができる。
また、上記化合物は、比較的燃焼しやすく、導体パターンを形成する際には導体パターン内からより容易に除去(酸化分解)することができる。
【0074】
また、導体パターン形成用インクによって形成されたパターンを乾燥(脱分散媒)する際に、水系分散媒が揮発とともに、上記化合物の濃度が上昇する。これにより、導体パターン前駆体の粘度が上昇するため、導体パターン前駆体を構成するインクの不本意な部位への流れ出しがより確実に防止される。その結果、形成される導体パターンをより高い精度で所望の形状とすることができる。
また、上述したような化合物は、金属粒子(銀粒子)が前述したように表面に分散剤が付着したコロイド粒子である場合、表面の分散剤と水素結合により結合し、金属粒子の分散安定性を向上させる効果を有している。これにより、導体パターン形成用インクの吐出安定性に優れるとともに、保存安定性にも優れたものとなる。
【0075】
上述したように、本発明で用いる上記式(I)で表される化合物中における、R、R’は、それぞれ、水素またはアルキル基であるが、R、R’は、ともに水素であるのが好ましい。すなわち、尿素であるのが好ましい。これにより、上述したような保湿性を特に高いものとすることができ、特に優れた吐出安定性を得ることができる。また、金属粒子が上述したようなコロイド粒子として存在する場合に、特に優れた分散安定性を示すものとなる。
【0076】
このような上記式(I)で表される化合物のインク中における含有量は、5wt%以上25wt%以下であるのが好ましく、8wt%以上20wt%以下であるのがより好ましく、10wt%以上18wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの不本意な乾燥をより効率よく防止することができる。その結果、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0077】
アルカノールアミンは、保湿性の高い成分であるとともに、金属粒子が前述したようなコロイド粒子である場合に、コロイド粒子表面の分散剤の官能基を活性化させることができ、金属粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等各種のものを挙げることができる。
【0078】
また、アルカノールアミンは、第3級アミンであるのが好ましい。第3級アミンは、アルカノールアミンの中でも、特に保湿性が高く、上記効果をより顕著なものとすることができる。
また、第3級アミンの中でも、取り扱いやすさや、保湿性の高さ等の観点から、特に、トリエタノールアミンを用いるのが好ましい。
導体パターン形成用インク中におけるアルカノールアミンの含有量は、1wt%以上10wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上7wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0079】
糖アルコールは、糖類のアルデヒド基およびケトン基を還元して得られるものである。
また、糖アルコールは、高い保湿性を有する化合物である。また、糖アルコールは、分子量あたりの酸素数が多いため、雰囲気が糖アルコールの分解温度に達すると、容易に分解して除去される。このため、導体パターンを形成する際には、導体パターンの温度を糖アルコールの分解温度よりも高くすることで、導体パターン内から糖アルコールを確実に除去(酸化分解)することができる。
【0080】
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、ドルシトール、イディトール、グリセリン(グリセロール)、イノシトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
上述したような糖アルコールの、導体パターン形成用インク中における含有量は、3wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクの水系分散媒の揮発をより確実に抑制することができ、導体パターン形成用インクは、より長期にわたって液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。
【0082】
[表面張力調整剤]
また、導体パターン形成用インクには、表面張力調整剤を含んでいてもよい。
表面張力調整剤は、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の角度に調整するために用いられる。
表面張力調整剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。
【0083】
アセチレングリコール系化合物は、少ない添加量で、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲に調整することができる。このように、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲に調整することにより、より微細な導体パターンを形成することができる。また、吐出した液滴内に気泡が混入した場合であっても、速やかに気泡を除去することができる。その結果、形成される導体パターンでのクラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。
【0084】
アセチレングリコール系化合物としては、例えば、サーフィノール104シリーズ(104E、104H、104PG−50、104PA等)、サーフィノール400シリーズ(420、465、485等)、オルフィンシリーズ(EXP4036、EXP4001、E1010等)(「サーフィノール」および「オルフィン」は、日信化学工業株式会社の商品名)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
また、インク中には、HLB値が異なる2種以上のアセチレングリコール系化合物を含んでいるのが好ましい。導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
特に、インク中に含まれる2種以上のアセチレングリコール系化合物のうち、最もHLB値が高いアセチレングリコール系化合物のHLB値と、最もHLB値が低いアセチレングリコール系化合物のHLB値との差が、4以上12以下であるのが好ましく、5以上10以下であるのがより好ましい。これにより、より少ないアセチレングリコール系化合物の添加量で、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
【0086】
インク中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の高いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、8以上16以下であるのが好ましく、9以上14以下であるのがより好ましい。
また、インク中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の低いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、2以上7以下であるのが好ましく、3以上5以下であるのがより好ましい。
インク中に含まれる表面張力調整剤の含有量は、0.001wt%以上1wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以上0.5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角をより効果的に所定の範囲に調整することができる。
【0087】
[その他の成分]
なお、導体パターン形成用インクの構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、導体パターン形成用インクには、上記成分の他、1,3−プロパンジオールが含まれていてもよい。これにより、インクジェットヘッドの吐出部付近における水系分散媒の揮発をより効果的に抑制することができるとともに、インクの粘度をより適度なものとすることができ、吐出安定性がさらに向上する。
【0088】
インク中に1,3−プロパンジオールを含む場合、その含有量は、0.5wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、2wt%以上10wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。
また、例えば、導体パターン形成用インクは、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールを含んでいてもよい。導体パターン形成用インクは、上述した尿素以外にも、チオ尿素を含んでいてもよい。
【0089】
導体パターン形成用インクとセラミックス成形体との接触角は、特に限定されないが、40°以上80°以下であることが好ましく、50°以上80°以下であることがより好ましい。接触角が小さすぎると、微細な線幅の導体パターンを形成するのが困難となる場合がある。一方、接触角が大きすぎると、吐出条件等によっては、均一な線幅の導体パターンを形成するのが困難となる場合がある。また、着弾した液滴とセラミックス成形体との接触面積が小さくなりすぎてしまい、着弾した液滴が着弾位置からずれてしまう場合がある。
【0090】
また、導体パターン形成インクの粘度は、特に限定されないが、1mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性を優れたものとすることができるとともに、セラミックス成形体に着弾したインクの濡れ広がりを防止することができ、微細な線幅の導体パターン前駆体を形成することができる。
上述したような導体パターン形成用インクは、ポリグリセリン等の有機バインダーや糖アルコール等を多く含んでいるので、好適に湾曲凹面を備えた導体パターンを形成することができる。
【0091】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、金属粒子を溶媒に分散してなる分散液として、コロイド液を用いる場合について説明したが、コロイド液でなくてもよい。
また、前述した実施形態では、導体パターン形成用インクは、銀粒子が分散したものとして説明したが、銀以外のものであってもよい。金属粒子に含まれる金属としては、例えば、銀、銅、パラジウム、白金、金、または、これらの合金等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。金属粒子が合金である場合、前記金属が主とするもので、多の金属を含む合金であってもよい。また、上記金属同士が任意の割合で混ざった合金であってもよい。また、混合粒子(例えば、銀粒子と銅粒子とパラジウム粒子とが任意の比率で存在するもの)が液中に分散したものであってもよい。これら金属は、抵抗率が小さく、かつ、加熱処理によって酸化されない安定なものであるから、これらの金属を用いることにより、低抵抗で安定な導体パターンを形成することが可能になる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[1]導体パターン形成用インクの調製
導体パターン形成用インクは、以下のようにして製造した。
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い銀コロイド液を得た。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。
【0093】
この銀コロイド液に、キシリトールと、ポリグリセリンと、アセチレングリコール系化合物としてのサーフィノール104PG−50(日信化学工業社製)およびオルフィンEXP4036(日信化学工業社製)とを添加し、さらに濃度調整用のイオン交換水を添加して調整し、導体パターン形成用インク(以下単にインクとも言う)1とした。インク中における銀コロイド粒子の含有量は40wt%、キシリトールの含有量は6wt%、ポリグリセリンの含有量は9wt%、サーフィノール104PG−50の含有量は0.02wt%、オルフィンEXP4036の含有量は0.006wt%、水の含有量は44.974wt%であった。
【0094】
[2]配線基板の製造
(実施例)
[セラミックスグリーンシート(セラミックス成形体)形成工程]
まず、以下のようにしてセラミックスグリーンシート(セラミックス成形体)を用意した。
平均粒径が1〜2μm程度のアルミナ(Al)と酸化チタン(TiO)等からなるセラミックス粉末と、平均粒径が1〜2μm程度のSiO2−Al23−CaO−BaO−MgOガラス粉末とを1:1の重量比で混合し、バインダー(結合剤)としてポリビニルブチラール、可塑剤としてジブチルフタレートを加え、混合・撹拌することにより得たスラリーを、ドクターブレードでPETフィルム上にシート状に形成したものをセラミックスグリーンシートとし、1辺の長さを40mmとする正方形状に裁断したものを使用した。
【0095】
[導体パターン前駆体形成工程]
上記のようにして得られた導体パターン形成用インクを、それぞれ図5、6に示すようなインクジェット装置に投入した。
まず、上記導体パターン形成用インクを搭載した上記インクジェット装置を用いて描画を行い、インクが安定して吐出されることを確認した。
【0096】
次に、上記セラミックスグリーンシートを60℃に昇温保持した。各吐出ノズルからそれぞれ1滴当り15ngの液滴を順次吐出し、厚さが15μm、直径800μmの円形のパッド(導体パターン前駆体)を中心間距離1.2mmで、40mm角の基板上に碁盤目状に合計1000個描画した。そして、このパッドが形成されたセラミックスグリーンシートを乾燥炉に入れ、60℃で30分間加熱して乾燥した。
上記のようにして、ラインが形成されたセラミックスグリーンシートを第1のセラミックスグリーンシートとした。
【0097】
[積層工程]
次に、第1のセラミックスグリーンシートの下に無加工のセラミックスグリーンシートを補強層として4枚積層し、生の積層体を得た。
次に、生の積層体を、95℃の温度において、250kg/cmの圧力で30分間プレスした。
【0098】
[加熱工程]
その後、酸素濃度23.0%の雰囲気中において、平均昇温速度1.0℃/分(変化前の平均昇温速度)で約5時間かけて300℃まで昇温し、その後、平均昇温速度10.0℃/分(変化後の平均昇温速度)で約30分間かけて脱脂完了温度600℃まで昇温した。その後、4時間保持した後、5.0℃/分で最高温度(最大加熱温度)890℃まで昇温した。さらに、最高温度890℃で30分間保持した後、冷却して、セラミックス回路基板(配線基板)を得た。
得られたセラミックス回路基板(配線基板)上のパッド形状をレーザー顕微鏡(VK-9500、キーエンス社製)でパッドの中央部の深さを測長した結果、湾曲凹面の深さは10μmであり、曲率半径は0.8cmであった。
【0099】
(比較例)
導体パターン前駆体形成工程において、銀ペースト(「N−5012」、日本電気真空ガラス社製)を用いてスクリーン印刷で同様の円形パッドを形成した以外は、前記実施例1と同様にしてセラミックス回路基板(配線基板)を製造した。
得られたセラミックス回路基板(配線基板)上のパッド形状をレーザー顕微鏡(VK-9500、キーエンス社製)でパッドの中央部の深さを測長した結果、パッド外のセラミック面とほぼ面一であった。
【0100】
[4] 半田強度評価
得られたセラミックス回路基板上のパッド表面上にニッケルめっき層を形成し、さらに金めっき層を形成させた。金めっき層上に直径800μmの半田ボールを搭載し、リフロー装置(「RF−430」、本パルス技研社製)にて半田ボールを金めっき層に融着固定した。リフロー温度、リフロー時間は使用する半田の組成等を考慮し、200℃から300℃の範囲にて、適宜設定した。半田は、鉛半田としてSn60−Pb40の組成のものを使用した。半田接合強度の評価は、プル強度測定装置(「ボンドテスター4000」、デイジ社製)を用いてハンダボールを剥離させることからなるプルテストを行い、剥離に必要な力の測定をすることによって行なった。
本発明の配線基板は、プル測定を行ったところ、30点の平均破断強度は3410gと高いものであった。一方、比較例のプル測定では、30点の平均破断強度は2923gであった。本発明では、実装した際の半田と導体パターンとの接続強度がより高いものあった。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0101】
1…導体パターン形成用インク(インク) 10…導体パターン前駆体(前駆体) 15…セラミックス成形体(セラミックスグリーンシート) 16…コンタクト前駆体 17…積層体 20、20A…導体パターン(回路) 30…セラミックス回路基板(配線基板) 31…セラミックス基板 32…積層基板 33…コンタクト 100…インクジェット装置(液滴吐出装置) 110…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド、ヘッド) 111…ヘッド本体 112…振動板 113…ピエゾ素子 114…本体 115…ノズルプレート 115P…インク吐出面 116…リザーバ 117…インク室 118…ノズル(突出部) 130…ベース 140…テーブル 170…テーブル位置決め手段 171…第1移動手段 172…モータ 180…ヘッド位置決め手段 181…第2移動手段 182…リニアモータ 183、184、185…モータ 190…制御装置 191…駆動回路 S…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と前記金属粒子が分散する分散媒とを含む導体パターン形成用インクを液滴吐出法により吐出して形成される導体パターンを備えた配線基板であって、
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板に埋設され、露出面が湾曲凹面となっている導体パターンとを有することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記湾曲凹面の曲率半径は、0.025cm以上3cm以下である請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記湾曲凹面の中央部の平均深さは、1μm以上30μm以下である請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記導体パターンの中央部の平均厚さは、2μm以上25μm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の配線基板。
【請求項5】
前記導体パターンの幅は、50μm以上1000μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−192812(P2011−192812A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57899(P2010−57899)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】