説明

配線層の形成方法、配線層および薄膜トランジスタ

【課題】 配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ること配線層の形成方法および配線層を提供すること。
【解決手段】 ガラス基板1上に下地絶縁膜2の窒化シリコン膜を形成し、この上に下地金属層3を形成し、この上に金属シード層4を形成し、この金属シード層4上に金属配線層7を形成した配線層であって、上記金属シード層4は主として結晶面が(111)に配向し、平均結晶粒径が0.25μm以上であり、上記金属配線層は膜厚が200乃至1000nmであり、無電解めっき法で形成された層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低抵抗に形成される配線層の形成方法、配線層および薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、LSIやULSIに代表される半導体装置における配線や電極の材料としては、主としてアルミニウム(Al)やその合金などが用いられている。しかし、近年の集積度の向上による微細化の進展や、動作スピードの向上等により、Alよりも抵抗が低く、且つエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーション等の耐性が高い特性を有する銅(Cu)を次世代の配線及び電極の材料として採用することを目的として開発が進められている。
【0003】
さらに、例えば液晶表示装置等に代表される表示装置の分野においても、表示面積の拡大による配線長の増加や、駆動用ドライバ回路や画素内メモリといった様々な付加機能を搭載するモノリシック化等の要求や、デジタル時代に適合した大容量・大画面・高精細の液晶表示装置等によって、半導体分野と同様に低抵抗な配線が要求されている。
【0004】
銅の微細な配線加工は、Al配線の形成技術と同様に、PEP(Photo Engraving Process:写真食刻工程、所謂フォトリソグラフィー)によるマスキング技術と、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法等のエッチング技術とを単に組み合わせても、実現が困難であった。つまり、銅のハロゲン化物の蒸気圧は、Alに対して非常に低く(即ち、蒸発しにくい)、RIE等のエッチング技術を用いる場合には、プロセス温度として200〜300℃に温調された雰囲気下でのエッチング処理が必要である等、種々の課題が多い。また、通常のフォトレジストマスクではなく、SiOやSiNxによるマスクを使用する必要もある。銅の微細な配線加工は、例えば、ダマシン法と呼ばれている方法で、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0005】
このダマシン法による銅の微細な配線加工は、次のような工程を経て加工されている。即ち、まず、基板上の絶縁層に対して、あらかじめ所望の配線パターンの配線溝を形成する。次に、銅の酸化シリコン層中への拡散を防止するために銅薄層の下地層としてTaN、Ta、TiN、等の銅拡散防止層を形成する。この銅拡散防止層上に銅薄層を形成する方法である。この銅薄層は、配線溝を埋め込むようにスパッタリング法等のPVD(PHYSICAL VAPOR DEPOSITION)法、めっき法又は、有機金属材料を用いたCVD(CHEMICAL VAPOR DEPOSITION:化学気相成長)法等の種々の手法を用いて、溝内部に埋め込み且つ絶縁層上の全面に亘って形成する。その後、銅薄層を基板表面側から下層の絶縁層が露出する(溝部分の開口端面)までCMP(CHEMICAL MECHANICAL POLISING:化学的機械研磨法)等の研磨法やエッチバック等を用いて除去し、溝に埋め込まれた銅のみによる配線パターンを形成する。更に、銅配線上に銅拡散防止能を有する絶縁層もしくは金属層を形成して銅配線層を覆う方法である。
【特許文献1】特開2001−189295公報
【特許文献2】特開平11−135504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した公報に開示された技術を含む従来技術には以下に挙げるような課題がある。上記ダマシン法においては、少なくとも配線を埋め込むための溝を形成する溝加工工程、金属拡散防止層、金属シード層、金属配線層及び研磨停止膜を形成するための成膜工程、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程、研磨工程などが必要であり、製造工程が煩雑となり、製造コストが高くなる。
【0007】
また、配線抵抗を低減するためには、配線の断面積を大きくする必要があるが、集積化の制約から、アスペクト比の高い(つまり、幅や径が狭く深い)溝やビアホールを採用すると、銅の埋め込み性が低下する。配線抵抗を低減するためにLSIでは、膜厚をμmオーダの厚い膜を形成している。しかし、薄膜トランジスタ(TFT)回路では、サブμmオーダの膜厚が要求され、このオーダの膜厚では比抵抗が2.5μΩcm以下の銅配線を得ることが難しい。また、銅薄層を基板全面に成膜した後に、不要部分を除去するというCMP工程等は、処理時間が掛かり、スループットが悪い課題がある。
【0008】
さらに、直径12インチ等の大口径半導体ウエハサイズに対応する大型のCMP装置が開発されているが、上記半導体ウエハよりも大面積で且つ平坦性等の精度の悪いガラス基板を用いる表示装置のための製造装置は実用化されていない。また、長辺が1m以上の大型ガラス基板を用いた表示装置の製造の場合、上記CMPによる全面研磨やエッチング法による除去が可能であったとしても、配線として利用される銅薄層部分の面積は、ガラス基板の面積に比較して非常に小さいために、成膜された銅薄層の大部分は除去され、廃棄される。この結果、高価な銅の利用効率は非常に悪くなり、高コストになる影響で製品価格も高くなる。
【0009】
配線材料の銅の利用効率を向上するために、本発明者らはレジストを用いた選択無電解銅めっきプロセスの開発を行っている。この無電解銅めっき配線形成プロセスは、無電解銅めっき膜の形成前にスパッタリング法により銅シード層(以下スパッタ銅シード層と略す。)を形成し、この上に配線パターンのレジスト溝を形成し、その溝に無電解めっきにより銅配線層を形成し、その後、配線パターンのレジスト膜を除去した後、銅シード層をエッチングする方法である。この無電解銅めっき膜形成プロセスは、液晶等の表示装置で用いられる300〜600nm程度の低配線厚でも低比抵抗値の銅配線薄膜を形成できる。しかし、300〜600nm程度の低配線厚の配線を無電解めっき法で形成する場合、銅配線層の比抵抗値は銅シード層の結晶性に大きく依存するという問題がある。銅配線は、比抵抗値が高ければ、銅配線を用いる意味がないため、膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの配線でも2.5μΩcm以下の比抵抗値を実現することが必要条件である。
【0010】
無電解めっき法で通常用いられるPd触媒核を用いずにスパッタ銅シード層を用いる理由は、Pd触媒核から成長させる無電解めっきでは、銅はPd核の周囲に成長してPd核を中心としたCu核がぶつかり合うことで配線が形成されるために配線膜厚の薄いものへの適用が難しく、Pd核密度を高める必要がある。しかしながら、Pd核密度及び均一性を制御することが難しく、更にPdが後工程の熱処理で銅中に拡散して比抵抗を高くするという問題などもありPd触媒核を用いることは問題がある。このため、当然ながら、Pd触媒を用いた無電解めっき法で銅シード層を形成する方法も同様な問題を有していて、加えてバリア性を有する下地金属層との密着性が低いという問題も有している。
【0011】
本発明は、上記問題点に対処してなされたもので、配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる配線層の形成方法、配線層および薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の配線層の形成方法、配線層および薄膜トランジスタは、主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の金属シード層を設け、この金属シード層上に、膜厚が200乃至1000nmの金属配線層を無電解めっきして設けられた膜を有するものである。
【0013】
本発明の配線層の形成方法は、主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の金属シード層を形成する工程と、前記金属シード層上に膜厚が200乃至1000nmの金属配線層を無電解めっきする工程とを具備してなることを特徴とする。この配線層の形成方法によれば配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる。
【0014】
本発明の配線層の形成方法は、主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅シード層を形成する工程と、前記銅シード層上に膜厚が200乃至1000nmの銅配線層を無電解めっきする工程とを具備してなることを特徴とする。この配線層の形成方法によれば銅配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる。
【0015】
本発明の配線層の形成方法は、基板上に下地金属層を形成する工程と、前記下地金属層上に主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅シード層を形成する工程と、前記銅シード層上に膜厚が200乃至1000nmで予め定められたパターンの銅配線層を無電解めっきする工程と、少なくとも前記銅配線層と接合される領域以外の前記銅シード層および前記下地金属層を除去する工程とを具備してなることを特徴とする。この配線層の形成方法によれば銅配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる。さらに、下地金属層の金属を選択することにより銅配線層の平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0016】
本発明の配線層は、金属シード層上に金属配線層が設けられた配線層であって、前記金属シード層は主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上であり、前記金属配線層は膜厚が200乃至1000nmであり、無電解めっきされた層であることを特徴とする。この配線層によれば配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる。さらに、1m以上の大きな基板でも低比抵抗の銅配線層を形成することができる。
【0017】
本発明の薄膜トランジスタは、結晶化領域を有する半導体薄膜と、前記結晶化領域内にソース領域およびドレイン領域が設けられ、前記結晶化領域にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極を有する薄膜トランジスタとを具備し、前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の少なくとも1つの電極は主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の金属シード層と、この金属シード層上に設けられた膜厚が200乃至1000nmの無電解めっき層とで構成したものであることを特徴とする。この薄膜トランジスタによれば配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗の電極や配線の少なくとも一方を得ることができる。さらに、1m以上の大きな基板でも低比抵抗の電極や配線層の少なくとも一方を形成することができる。
【0018】
金属シード層は主結晶面が(111)とは、X線回折により検出される(111)ピークが(200)ピークよりも大きいことを意味し、望ましくはその強度比I(111)/I(200)が10以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の配線層の形成方法および配線層の実施形態を図を参照して説明する。この実施形態は、結晶面が主として(111)に配向し、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅を主成分とする金属シード層を設け、この金属シード層上に、膜厚が200乃至1000nmのサブμmオーダの金属配線層を無電解めっきして設けた例である。銅を主成分とする金属配線例えば、薄膜トランジスタ回路での銅を主成分とする金属配線層の膜厚は、200乃至1000nmの極薄である。このような極薄な銅を主成分とする金属配線でも2.5μΩcm以下の低抵抗な配線を可能にする。
【0021】
このメカニズムは、次のように説明することができる。即ち、通常の電解銅めっきや無電解銅めっき層形成では、配線厚が1〜30μm程度と厚いためにめっき膜厚が増大すると共に結晶粒径は増大する。他方、液晶表示装置のような配線は、サブμmオーダの薄膜が要求されるために配線膜厚を厚くすることが出来ない。銅めっき配線層の比抵抗低減のためには、銅めっき配線層の結晶粒径を大きくすることにより可能となる。液晶表示装置のように銅めっき配線層の膜厚が薄い配線の形成は、特に金属シード層の結晶性が大きく影響することを見出した。即ち、サブμmオーダの薄膜で2.5μΩcm以下の低比抵抗を得るためには、金属シード層の結晶粒径を平均結晶粒径が0.25μm以上にすることにより銅めっき配線層の結晶粒径を大きくできることを見出した。銅めっき配線層の結晶粒径を大きくできることは、低抵抗の銅めっき配線層を得ることを可能にする。主として(111)に配向とは、X線回折により検出される(111)ピークが(200)ピークよりも大きいことを意味し、望ましくはその強度比I(111)/I(200)が10以上であることが望ましい。
【0022】
次に、配線層の形成方法を銅(Cu)配線層の形成方法に適用した実施形態を、図1および図2を参照して工程順に説明する。図1は、Cu配線層をパターンニングされた領域に成膜する準備工程を工程順に説明するための断面図である。図2は、パターンニングされた領域にCu配線層を形成する方法を工程順に説明するための断面図である。
【0023】
基板例えばガラス基板1上に、図1(a)に示すように下地絶縁層2例えば窒化シリコン(SiN)膜を膜厚例えば300nm形成する。このSiN膜上に、図1(b)に示すように銅のバリア膜としても有効な下地金属層3例えばタンタル(Ta)層を例えばスパッタ法により形成する。膜厚は、例えばTa層を50nmに形成するとよい。下地金属層3としては、Ta層のほかβ−Ta,α−Ta,TaSiN,TaN,TaNとα−Taの積層膜のうち少なくも一つの材料層により構成されていることが望ましい。さらに、この下地金属層3上に、図1(c)に示すように金属シード層4例えば銅を主成分とする金属シード層を形成する。銅を主成分とする金属シード層は、厚さ例えば50nmを例えばスパッタ法により形成する。この銅を主成分とする金属シード層は、結晶方位が主として(111)に配向し、平均結晶粒径が0.25μm以上である。
【0024】
銅のバリア膜としても有効な下地金属層3としてTa層は、この積層膜上に平均結晶粒径の大きな金属シード層4を形成するのに有効である。平均結晶粒径が0.25μm以上の上記金属シード層4は、この金属シード層4上に低比抵抗の金属配線層7の成膜を可能にする。
【0025】
上記金属シード層4上に、図1(d)に示すように配線のための材料を予め定められた配線パターン領域のみに形成するためにフォトレジスト層5を成膜する。このフォトレジスト層5の成膜は、例えばスピンコート法により膜厚例えば1.2μm形成する。フォトレジスト層5の膜厚は、金属配線層7の膜厚以上の厚さを選択する。このようにして配線層を配線パターン領域のみに形成するための準備工程を終了する。
【0026】
次に、図2を参照して、パターンニングされた領域に銅を主成分とする金属配線層を形成する方法を工程順に説明する。予め定められた電極パターンや所望の配線形成パターンのマスク像を上記フォトレジスト層5に投影し露光する。露光後、次に、現像工程を実施することにより図2(a)に示すようにフォトレジスト層5には、配線パターン領域の溝パターン6が形成される。この状態で溝パターン6の底面には、金属シード層4の表面が露出する。
【0027】
次に、この溝パターン6に金属配線層7を図2(b)に示すように成膜する。この成膜法は、例えば無電解めっき法により銅を主成分とする金属配線層7を厚さ200〜1000nmの極めて薄い膜厚例えば300nm形成する。即ち、主として結晶方位(111)に配向した銅シード層上に銅めっき層がエピタキシャル成長する。このとき銅シード層の平均結晶粒径と銅めっき層の平均結晶粒径は、ほぼ等しい。平均結晶粒径の大きな銅シード層上の方が、めっき条件に係わらず銅めっき層の結晶粒径は大きくなる。もちろん、無電解めっき法による金属配線層7の形成の前処理として、金属シード層4の表面の酸化物を除去する洗浄工程を付加することが望ましい。
【0028】
このように極めて薄い銅を主成分とする金属配線層7を形成するための無電解めっき浴としては、例えばコバルト塩を還元剤とする中性無電解めっき浴を用いることが望ましい。中性無電解めっき浴組成としては、還元剤としては例えば硫酸コバルトもしくは硝酸コバルト、銅塩として例えば硫酸銅もしくは硝酸銅、錯化剤としてエチレンジアミン、還元剤助剤として例えばアスコルビン酸、錯化剤助剤として例えば2,2’−ビピリジル、反応開始剤として例えば塩酸を用いるとよい。コバルト塩を還元剤とする中性無電解めっき浴は、pH領域が6〜7程度であるため通常のフォトレジストを用いることができることに加え、有害物質やアルカリ金属も含まないために液晶表示装置のような薄膜トランジスタの製造工程にも適用が可能であるという利点がある。
【0029】
無電解めっきによる銅を主成分とする金属配線層7の成膜は、大きさ1m以上の液晶表示装置用ガラス基板への薄膜の成膜を可能にする。サブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の比抵抗を得るための銅を主成分とする金属配線層7の結晶粒径は、平均結晶粒径が0.25μm以上であることが重要である。さらに、溝パターン6のみに銅めっき層を無電解めっきすることは、銅を不要な部分に成膜しないため、省資源効果のある製造方法である。
【0030】
次に、図2(c)に示すようにフォトレジスト層5を除去する。この結果、表面には、銅を主成分とする金属配線層7と金属シード層4とが露出する。次に、金属配線層7をマスクとして金属シード層4をエッチングして除去する。さらに、金属配線層7をマスクとして図2(d)に示すように下地金属層3をエッチングして除去する。この結果、SiN膜の表面に銅を主成分とする金属配線層7のパターンが形成された基板8を得ることができる。
【0031】
上記銅を主成分とする金属配線層7は、配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の低比抵抗を得ることができる。上記のコバルト塩を還元剤する中性無電解めっき浴を用いた銅配線層の形成において、銅めっき層の結晶方位は金属シード層4の結晶方位に依存し、かつ、金属配線層7の膜厚が300nm程度と薄い場合は銅めっき層の平均結晶粒径は金属シード層4とほぼ同等であることを本発明者らは見出した。即ち、金属シード層4の結晶粒径を2.5μΩcm以下の低比抵抗を得るための結晶粒径に選択することにより、極薄の金属配線層7でも低比抵抗の金属配線層7を可能にしたものである。
【0032】
2.5μΩcm以下の低比抵抗な無電解銅めっき配線層の形成は、大きな結晶粒径の配線層を形成することである。液晶表示装置のような表示装置の製造方法では、金属配線前後の凹凸や配線形成後の絶縁層のカバレッジ性、基板表面凹凸の低減要求等から配線厚を厚くすることで結晶粒径を大きくすることはできない。この課題を解決するために鋭意開発した結果、特に金属シード層4の結晶粒径を大きくすることにより低抵抗の銅めっき配線層が得られることを見出したものである。即ち、サブμmオーダの薄膜で2.5μΩcm以下の低比抵抗を得るためには、金属シード層4の結晶粒径を平均結晶粒径が0.25μm以上にすることにより銅めっき配線層の結晶粒径を大きくできることが判った。銅めっき配線層の結晶粒径を大きくできることは、低抵抗の銅めっき配線層を得ることができることである。このようにサブμmオーダの薄膜で、2.5μΩcm以下の低比抵抗の銅めっき層を得るためには、銅シード層の結晶性が重要であることが判った。
【0033】
次に、金属シード層4として銅シード層と、この銅シード層上に形成される金属配線層7として銅めっき層を形成したときの、銅めっき層の平均結晶粒径とその比抵抗の具体的実施例を表1に示す。表1において、銅シード層A、B、C、Dは、共に結晶方位が主として(111)である。表1には、銅シード層の平均結晶粒径と銅シード層上に銅めっき層を無電解めっきして形成したときの、この銅めっき層の平均結晶粒径と比抵抗の関係が示めされている。
【0034】
ここで、表1の比抵抗値は、下地金属層3及び金属シード層4を除いた金属配線層7としての銅めっき層のみの比抵抗値である。銅シード層Aは、TiNからなる下地金属層の上に形成したものであり、この銅シード層Aの平均結晶粒径は0.166μmである。この銅シード層A上に無電解めっきで形成した銅めっき層の平均結晶粒径は0.160μmである。
【0035】
銅シード層BとCは、Taからなる下地金属層の上に形成した銅シード層であり、この銅シード層BとCの平均結晶粒径は0.284μmと0.462μmである。この銅シード層BとC上に無電解めっきで形成した銅めっき層の平均結晶粒径は、それぞれ0.298μmと0.456μmである。
【0036】
銅シード層Dは、TaSiNからなる下地金属層の上に形成したものであり、この銅シード層Dの平均結晶粒径は0.425μmである。この銅シード層D上に無電解めっきで形成した銅めっき層の平均結晶粒径は0.394μmである。
【0037】
表1から判るように、下地の銅シード層の平均結晶粒径と銅めっき層の平均粒径とは、略同等であり、銅シード層の平均結晶粒径が大きい方が銅めっき層の比抵抗は、低いことが判る。即ち、比抵抗の低い銅めっき層を成膜するためには、銅シード層の平均結晶粒径を大きくすればよいことが判る。換言すれば、所望する比抵抗の銅配線層を得るためには、平均結晶粒径が相当する大きさの銅シード層を形成することにより得ることができる。主として(111)とは、X線回折により検出される(111)ピークが(200)ピークよりも大きいことを意味し、望ましくはその強度比I(111)/I(200)が10以上であることが望ましい。
【0038】
比抵抗が2.2μΩcm以下の銅めっき層を得るためには、銅シード層の平均結晶粒径を略0.25μm以上にする必要がある。ここで、平均結晶粒径は、電子後方散乱(EBSP)法を用いて結晶方位が(111)の銅シード層に対して60°の双晶境界を除外して求めた値である。そして、平均結晶粒径は、結晶粒の面積から球形近似により求めた直径の平均値である。
【0039】
【表1】

【0040】
上記実施形態によれば、金属シード層の平均結晶粒径の大きな層上に金属配線層を成膜することにより平均結晶粒径の大きな金属配線層を成膜することができ、電極や配線の所望する比抵抗を得ることができる。さらに、金属配線層7は、フォトレジスト膜7に形成された溝パターン6に形成される。従って、この実施形態によれば、必要最小量の金属配線材料ですみ、省資源対応となっている。
【0041】
次に、結晶粒径が大きな金属シード層を成膜する実施形態を説明する。金属シード層として銅シード層の例について説明する。表1の銅シード層Aは、窒化チタン(TiN)層の上に銅シード層形成し、銅シード層B及び銅シード層CはTa層の上に銅シード層を形成したが、銅シード層Cの方のTa層はα-Taを主とするものである。銅シード層DはTaSiN層の上に銅シード層を形成した。銅シード層の結晶方位が主として(111)への結晶配向性や平均結晶粒径拡大のための下地金属層3としては、TiN層よりもTa系層を用いることが望ましい、Ta層及びTaSiN層の上に形成した銅シード層の方が平均結晶粒径大きくなる。Ta層においても(200)正方β−Ta層より(110)体心立方α−Ta層であることが望ましく、TaNもしくはTaN層とα−Ta層の積層膜を用いてもよい。TaN層とα−Ta層の積層膜は、Ta層のみを成膜するとβ−Ta層が形成されやすいが、Ta層の下にTaN層を薄く形成するとα−Ta層が形成されやすく、このα−Ta層上に形成される銅シード層の結晶配向性が良くなることに加え、α−Ta層の比抵抗値がβ−Ta層の比抵抗値の約1/10という利点があるためである。
【0042】
次に、結晶粒径が大きな金属シード層を成膜する他の実施形態を説明する。金属シード層として銅シード層の例について説明する。銅シード層の結晶粒径の拡大は、上記した下地金属層3の材質だけでなく、銅シード層を形成後、加熱処理することにより結晶粒径を拡大することができる。この加熱処理は、銅シード層を形成後、気密容器例えば真空中にて温度例えば400℃で時間例えば10分間加熱(アニール)処理することにより銅シード層の平均結晶粒径を拡大することができる。この平均結晶粒径が拡大された銅シード層上にめっきされた銅めっき層の平均結晶粒径は大きく、比抵抗は小さかった。
【0043】
この加熱処理においても、下地金属層3としては、TaもしくはTa系合金を用いた方がTiNよりも銅シード層の凝集が生じにくいこともあり望ましい。
【0044】
次に、結晶粒径が大きな金属配線層5を成膜する他の実施形態を説明する。金属配線層5として銅めっき層の例について説明する。銅めっき層の結晶粒径の拡大は、銅シード層上に銅めっき層を形成した後に、加熱処理することで平均結晶粒径を拡大させ、比抵抗を低減することも可能である。平均結晶粒径の異なる銅シードAとBを用いて、この銅シードAとB上に形成した銅めっき層を、加熱(アニール)温度例えば450℃、加熱時間例えば10分気密雰囲気例えば真空中で加熱処理した。
【0045】
この加熱処理後の結果は、表1に示すように結晶粒径は、拡大し、比抵抗値は低下した。例えば、銅シード層Aの上に形成した銅めっき層の平均結晶粒径は、0.160μmからアニール後0.343μmに拡大し、比抵抗値はアニール後2.53μΩcmから2.1μΩcmに低減した。銅シード層Bの上に形成した銅めっき層の平均結晶粒径は、0.298μmからアニール後0.506μmに拡大し、比抵抗値は2.18μΩcmから1.96μΩcmに低減した。銅シード層Cの上に形成した銅めっき層の平均結晶粒径は、0.456μmからアニール後0.616μmに拡大し、比抵抗値は1.97μΩcmからアニール後1.88μΩcmに低減した。銅シード層Dの上に形成した銅めっき層の平均結晶粒径は、0.394μmからアニール後0.555μmに拡大し、比抵抗値は1.99μΩcmからアニール後1.92μΩcmに低減した。
【0046】
このように銅シード層の上に形成した各銅めっき層の平均結晶粒径は、加熱処理により拡大し、比抵抗値は低減した。ここで、加熱処理しても平均結晶粒径の大きな銅シード層の上に形成した銅めっき層の方が、平均結晶粒径は大きく、比抵抗値は小さくなった。このような結果から、平均結晶粒径が大きいめっき層の比抵抗値は小さいことが判った。
【0047】
このようにして形成された銅めっき層の平均結晶粒径と比抵抗の関係は、比抵抗増大の主要因が結晶粒界での散乱によるとする以下のモデル式を用い、反射係数R=0.58とするとよく一致することが判った。
比抵抗 ρ=ρo(バルク比抵抗)+ρGrain boundary = ρo (1+3α/2)
α=(λ/G)・R/(1−R) λ:Mean Free Path (39.3nm)
R:Reflection Coefficient (0.58) G : 結晶粒径 d:膜厚
ρo = 1.67μΩcm
【0048】
図3は、銅めっき層の粒界散乱モデルの上記式から求めた比抵抗と平均結晶粒径との関係を示す特性曲線と銅めっき層の実測値をプロットしたものである。この実測値は、無電解により銅めっき層を形成した後の特性(黒色)と、アニール処理後の特性(白色)とがプロットされている。図3には、上記式から求めた特性曲線がプロットされている。即ち、上記式から求めた特性曲線は、実測値の傾向とよく一致していることが示されている。図3には、無電解により銅めっき層を形成した後の特性(黒色)の4つの実施形態が、黒四角、黒丸、黒三角、黒菱形でプロットされている。これら4つの実施形態のサンプルについてアニール処理後の特性(白色)が、夫々白四角、白丸、白三角、白菱形でプロットされている。即ち、図3には、アニールすることにより平均結晶粒径が大きくなり、低比抵抗特性が得られることが示されている。
【0049】
図3から明らかなように、平均結晶粒径の大きな銅めっき層は、低比抵抗特性を示すことが判る。さらに、銅めっき層は、アニールすると銅めっき層の平均結晶粒径が大きくなるため、さらに、低比抵抗特性が得られることが判る。図3に示す特性曲線において、比抵抗2.2μΩcmの銅めっき層の平均結晶粒径は、0.25μmである。換え言すれば、比抵抗2.2μΩcm以下の銅めっき層を得るためには、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅シード層を用いればよいことが判る。
【0050】
しかしながら、アニールによる平均結晶粒径の拡大は、大きな結晶粒間に挟まれている小さな結晶粒が減少することが主であること、そして、銅シード層の平均結晶粒径と銅めっき層の平均結晶粒径が略等しいことから無電解めっき法による薄膜成長は、銅シード層の結晶粒上に成長した銅配線層の結晶粒がぶつかり合って膜形成が行われているものと考えられる。このことが、図3に示す特性曲線の反射係数Rは0.58と大きいことにも影響していると推測される。以上のことからも、低比抵抗値の銅配線層を無電解めっき法で形成する場合、銅シード層の結晶性や平均結晶粒径を制御することが重要であることが分かった。
【0051】
上記実施形態によれば、下地金属層3の材料の選択、金属シード層4の平均結晶粒径の
大きな層、金属配線層7の平均結晶粒の大きな層にすることにより膜厚がサブμmオーダでも所望する低比抵抗の電極や配線を得ることができる。上記実施形態の金属配線層7は、配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも2.5μΩcm以下の低比抵抗(低抵抗銅配線)を得ることができる。
【0052】
尚、この実施形態の配線層は、LCDだけではなく、有機EL表示装置(OLED)例えば、アクティブマトリックス型有機OLEDの基板上に形成される信号線、電源線、走査線及びTFT内の電極、及び周辺配線や同一基板上に形成された周辺駆動回路内の配線等に適用することも容易にできる。
【0053】
この実施形態の配線層の形成方法によれば、選択的に銅を主成分とする金属配線を形成でき、更に周辺駆動回路の配線に要求されるような微細配線パターンの形成が可能となる。
この実施形態の配線層は、機能素子間を電気的に接続する配線と、機能素子例えば薄膜トランシスタの電極端子とは、電気的信号の電流路である点で類似しているため、この明細書では、双方を含んで配線層と定義する。
【0054】
次に、上記銅めっき配線層を適用した薄膜トランジスタ回路の実施例を説明する。先ず、任意の基板に薄膜トランジスタを構成できる結晶化半導体膜の製造方法を説明する。この製造方法は、1又は複数個の薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域を形成できる大きなシリコン結晶化領域を形成する結晶化方法について図4を参照して説明する。図4は、結晶化装置を説明するための構成図である。
【0055】
最小光強度が溶融温度以上の結晶化エネルギーを出力するレーザ光源10例えば紫外域の波長で例えば308nmの波長を有するXeC1エキシマレーザ光源を設ける。このレーザ光源10の光路には、入射レーザ光の光強度の均一化を行うためのホモジナイザ11が設けられる。ホモジナイザ11は、入射したレーザ光を水平方向に広げ線状(例えば、線長さ200mm)のレーザビームにし、光強度分布を均一にする装置である。ホモジナイザ11は、たとえば、複数のX方向シリンドリカルレンズをY方向に並べ、Y方向に並んだ複数の光束を形成し、他のX方向シリンドリカルレンズで各光束を再分布させ、同様複数のY方向シリンドリカルレンズをX方向に並べ、X方向に並んだ複数の光束を形成し、他のY方向シリンドリカルレンズで各光束を再分布させる光学系である。
【0056】
このホモジナイザ11の出射光路には、入射レーザ光を位相変調することにより光強度の傾斜を形成するための位相シフタ12が設けられる。光強度の傾斜は、逆ピーク状の光強度最小分布の光ビームであり、連続する略三角形状の光強度分布を有し、最小光強度が溶融温度以上のエネルギー光である。位相シフタ12は、例えば石英基材に段差をつけ、段差の境界でレーザ光の回折と干渉を起こさせ、レーザ光強度に周期的な空間分布を付与するものである。位相シフタ12は、例えば段差部x=0を境界として左右で180度の位相差を付けた場合である。一般にレーザ光の波長をλとすると、屈折率nの透明媒質を透明基材上に形成して180度の位相差を付けるには、透明媒質の膜厚tは、t=λ/2(n−1)で与えられる。石英基材の屈折率を1.46とすると、XeC1エキシマレーザ光の波長が308nmであるから、180度の位相差を付けるためには334.8nmの段差をエッチング等の方法でつければよい。またSiN膜を透明媒質としてPECVD、LPCVD等で成膜する場合は、SiN膜の屈折率を2.0とすると、SiN膜を石英基材上に154nm成膜し、エッチングして段差を付ければ良い。180度の位相をつけた位相シフトマスクを通過したレーザ光の強度は、周期的強弱のパターンを示す。
【0057】
この位相シフタ12の出射光路には、位相シフタ12で形成された光強度分布を結像するための結像光学系13が設けられる。この結像光学系13の結像位置には、被結晶化基板14が設けられる。この被結晶化基板14は、X・Y・Z・θステージ(図示せず)上に、位置合わせして設けられる。このステージは、予め記憶されたプログラムにより被結晶化基板14の予め定められた位置に自動的に結晶化操作が行われるように移動する。このようにして結晶化装置15が構成されている。結晶化操作とは、大きさ例えば1m角の被結晶化基板14のどこの位置に結晶化のためのレーザ光を照射するかの情報が予め記憶されたプログラムによりステージを順次移動させて、レーザ光を照射させる制御をいう。
【0058】
この結晶化装置15による結晶化は、ローダに設けられた被結晶化基板14をステージの予め定められた位置に、位置合わせして搬送し、微細位置合わせしたのち、レーザ光源10を照射制御することにより、自動的に被結晶化基板14が結晶化される。即ち、レーザ光源10を操作してパルスレーザ光を出射させる。このパルスレーザ光は、ホモジナイザ11に入射して光強度分布の均一化および位相シフタ12への入射角の均一化が行われる。
【0059】
ホモジナイザ11で均一化されたレーザ光は、位相シフタ12に入射して位相変調され、光強度の傾斜した光強度分布に変調される。位相変調されたレーザ光は、結像光学系13により集光されて被結晶化基板14に入射する。このレーザ光は、被結晶化基板14に入射して非単結晶半導体膜の照射領域を溶融する。パルス期間が、終了し、レーザ光の被結晶化基板14への入射が遮断されると、溶融領域は、急速に降温する。この降温過程において、光強度分布の傾斜に沿って固液分岐点の通過に応じて結晶化が横方向に行われる。この横方向の結晶化が長く続くように被結晶化基板14は、次のような構造になっている。
【0060】
基板例えばガラス基板21上には、この基板21からの不純物浸透の防止およびレーザ光に照射されて溶融したときの温度を蓄熱する機能を有する絶縁体層例えば酸化シリコン膜22を設けられている。この酸化シリコン膜22上には、非単結晶半導体膜例えば非晶質半導体膜23が設けられている。この非晶質半導体膜23上には、レーザ光に照射されて溶融したときの温度を蓄熱する機能を有するキャップ膜例えば酸化シリコン膜24を設けられている。このような積層構造により被結晶化基板14が構成されている。
【0061】
この被結晶化基板14に上記パルスレーザ光が入射したときパルスレーザ光は、酸化シリコン膜24を透過して非晶質半導体膜23に吸収される。非晶質半導体膜23のパルスレーザ光の受光領域は、融点以上の高温度に瞬時に上昇し、瞬時に溶融する。この高温度の熱は、非晶質半導体膜23の表裏面に設けられている酸化シリコン膜22および24に蓄熱される。入射パルスレーザの入射が遮断されたとき、非晶質半導体膜23の溶融領域は、高速に降温しようとするが、表裏面の酸化シリコン膜22および24の蓄熱により降温速度が緩やかな降温となり、光強度の傾斜にならって結晶化が進み、横方向に大粒径の結晶化領域が形成される。大粒径の結晶化領域は、1又は複数個の薄膜トランジスタからなる薄膜トランジスタ回路の形成を可能にする。
【0062】
この結晶化プロセスは、ステージを移動させ、レーザ光のショットを繰り返することにより被結晶化基板14の広い範囲に結晶化領域を形成することを可能にする。
【0063】
次に、上記大粒径の結晶化領域に薄膜トランジスタ回路を形成した実施形態を図5を参照して説明する。図4と同一部分には、同一符号を付与し、その詳細な説明を省略する。図5は、非晶質半導体膜23に形成された大粒径の結晶化領域に位置合わせして形成した薄膜トランジスタ回路31を示す断面図である。
【0064】
薄膜トランジスタ回路は、図4の結晶化装置15により結晶化された被結晶化基板14の結晶化領域に形成される。この被結晶化基板14の表面に形成されている酸化シリコン膜24は、除去して用いられ、この状態が図5に示されている。
【0065】
非晶質半導体膜23の結晶化領域30には、ソース領域32、ドレイン領域33およびチャネル領域34が設けられている。このソース領域32およびドレイン領域33間の上記結晶化領域表面上には、ゲート絶縁膜35例えば酸化シリコン膜が成膜されている。この酸化シリコン膜上でソース領域32およびドレイン領域33間上方には、ゲート電極36が設けられている。このゲート電極36およびゲート絶縁膜35上には、層間絶縁膜37として窒化シリコン膜38と酸化シリコン膜39と窒化シリコン膜40とが積層成膜されている(積層構造は図示せず)。
【0066】
ソース領域32とドレイン領域33の電極を形成するために層間絶縁膜37には、コンタクトホールが穿設されている。各コンタクトホールには、ソース電極42およびドレイン電極43が埋設されている。ソース電極42およびドレイン電極43上には窒化シリコンからなるパシベーション層44が設けられている。上記の層間絶縁膜37の中の窒化シリコン膜38、窒化シリコン膜39及び窒化シリコンからなるパシベーション層40は、銅拡散のバリア層としても機能している。また、ゲート絶縁膜35は、酸化シリコン膜の
単層よりも銅拡散のバリア性を有する窒化シリコン膜との積層構造とする方が低抵抗配線層を形成する面から望ましい。
【0067】
上記ゲート電極36、ソース電極42、ドレイン電極43には、本実施形態の配線層が適用されている。この配線については、図1および図2と同一部分には、同一符号を付与し、その詳細な説明は、重複するので省略する。
【0068】
すなわち、ゲート電極36、ソース電極42およびドレイン電極43は、いずれも下地金属層3を形成し、この下地金属層3上に金属シード層4を形成し、この金属シード層4上に金属配線層7を形成した構成である。ゲート電極36は、ゲート絶縁膜35上に下地金属層3を成膜し、続いて金属シード層4、金属配線層7を成膜した後、パターンニングすることにより形成することができる。
【0069】
ソース電極42およびドレイン電極43は、夫々ソース領域32およびドレイン領域33上に位置合わせして形成されたコンタクトホール内に下地金属層3を埋設し、続いて金属シード層4、金属配線層7を成膜して形成することができる。ここで、ゲート電極36、ソース電極42およびドレイン電極43を構成する銅配線層の上にはバリア性を有する窒化シリコン膜が積層されているが、窒化シリコン膜に加えて少なくとも金属シード層4、金属配線層7の露出している表面を例えばCoWB、CoBやCoWP、CoPのようなバリア性を有する合金層で予め無電解めっき法によって覆うようにしてもよいことは言うまでもない。
【0070】
このようにして図5に示すように薄膜トランジスタ回路31を形成することができる。この薄膜トランジスタ回路31は、液晶表示装置や有機EL表示装置の製造を可能にする。
【0071】
以上説明したように上記実施形態によれば、膜厚がサブμmオーダで比抵抗が2.5μΩcm以下の低抵抗銅配線を可能にすることができる。特に、薄膜トランジスタや薄膜トランジスタ回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明方法の実施形態で配線までの中間工程を工程順に説明するための断面図である。
【図2】図1の工程の次の配線工程を工程順に説明するための断面図である。
【図3】図2の工程で得られた配線の平均結晶粒径に対する比抵抗の関係を示す特性曲線図である。
【図4】図2の低抵抗配線を薄膜トランジスタ回路に適用した実施形態を説明するための結晶化装置説明図である。
【図5】図4の結晶化装置により製造された結晶化領域に形成された薄膜トランジスタ回路の構成を具体的に説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1:ガラス基板、 2:下地絶縁層、 3:下地金属層、 4:金属シード層、
5:フォトレジスト層、 6:溝パターン、 7:金属配線層、 14:被結晶化基板、 15:結晶化装置、 21:ガラス基板、 22,24:酸化シリコン膜、
23:非晶質半導体膜、 30:結晶化領域、 31:薄膜トランジスタ回路、
32:ソース領域、 33ドレイン領域、 35:ゲート絶縁膜、36:ゲート電極、 37:層間絶縁膜、 42:ソース電極、 43:ドレイン電極、 44:パシベーション層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の金属シード層を形成する工程と、
前記金属シード層上に膜厚が200乃至1000nmの金属配線層を無電解めっきする工程と
を具備してなることを特徴とする配線層の形成方法。
【請求項2】
主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅シード層を形成する工程と、
前記銅シード層上に膜厚が200乃至1000nmの銅配線層を無電解めっきする工程と
を具備してなることを特徴とする配線層の形成方法。
【請求項3】
基板上に下地金属層を形成する工程と、
前記下地金属層上に主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の銅シード層を形成する工程と、
前記銅シード層上に膜厚が200乃至1000nmで予め定められたパターンの銅配線層を無電解めっきする工程と、
少なくとも前記銅配線層と接合される領域以外の前記銅シード層および前記下地金属層を除去する工程と
を具備してなることを特徴とする配線層を形成する方法。
【請求項4】
前記無電解めっき液は、コバルト塩を還元剤とするアルカリ金属フリーの中性無電解めっき浴であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の配線層の形成方法。
【請求項5】
前記シード層は、スパッタリングにより形成された膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の配線層の形成方法。
【請求項6】
前記配線層は、エピタキシャル成長した層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の配線層の形成方法。
【請求項7】
前記シード層および前記配線層は、350℃以上の温度でアニール処理された層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の配線層の形成方法。
【請求項8】
金属シード層上に金属配線層が設けられた配線層であって、前記金属シード層は結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上であり、前記金属配線層は膜厚が200乃至1000nmであり、無電解めっきされた層であることを特徴とする配線層。
【請求項9】
銅シード層上に銅配線層が設けられた配線層であって、前記銅シード層と銅配線層の平均結晶粒径は略同じ大きさであることを特徴とする配線層。
【請求項10】
前記銅シード層の下地には、Ta,β−Ta,α−Ta,TaSiN,TaN,TaNとα−Taの積層膜のうち少なくも一つの材料層により構成されていることを特徴とする請求項9記載の配線層。
【請求項11】
前記銅シード層の平均結晶粒径は、0.25μm以上であることを特徴とする請求項9又は10記載の配線層。
【請求項12】
結晶化領域を有する半導体薄膜と、
前記結晶化領域内にソース領域およびドレイン領域が設けられ、前記結晶化領域にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極を有する薄膜トランジスタとを具備し、
前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の少なくとも1つの電極は主結晶面が(111)で、平均結晶粒径が0.25μm以上の金属シード層と、この金属シード層上に設けられた膜厚が200乃至1000nmの無電解めっき層とで構成したものであることを特徴とする薄膜トランジスタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−24754(P2006−24754A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201683(P2004−201683)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】