説明

配線板およびその製造方法

【課題】 レジスト膜によるマスクなしに、形状の制御された高密度の配線を有する配線板を製造する。
【解決手段】 絶縁基板上に銅配線を有する配線板の製造方法において、絶縁基板上の配線やバンプを形成する部分に凹凸形状を有する下地金属膜を形成する工程と、電気めっきによって下地金属膜の凹凸を有する部分に銅または銅合金のめっき膜を形成する工程とを含み、めっき液中にめっき反応を抑制する物質を加えることで、前記絶縁基板の表面とめっき膜側面との角度を90度以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅または銅合金の配線膜を有する配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に対する小型化、軽量化、低価格化の要求は年々高まっている。このことから、電子機器に使用される配線基板に対しても小型化、軽量化のために高密度の配線を低コストで形成することが要求されている。配線板の製造方法は、大きく二つに分けられる。一つはサブトラクティブ法であり、もう一つはアディティブ法である。サブトラクティブ法は、樹脂基板に貼り付けた銅箔にエッチングレジスト膜を形成し、配線となる部分以外の銅をエッチングすることにより配線を形成する方法である。アディティブ法は、樹脂基板上の配線となる部分以外をめっきレジスト膜によって覆うことで、配線となる部分のみにめっき膜を形成する方法である。
【0003】
従来の配線板の製造方法ではサブトラクティブ法、アディティブ法のいずれの方法においても、レジスト膜によって基板表面をマスクすることが必要である。レジスト膜によるマスクのためには、膜形成、露光、現像工程が必要である。これらの工程では薬品の使用及びその廃液処理によりコストが高くなる。また、工程数が多いために処理時間が長くかかってしまう。したがって、レジスト膜によるマスクの工程はプリント配線板を低コストで短時間に製造する上での障害となっていた。
【0004】
この改善策として、レジスト膜によるマスクを使用しないプリント配線板の製造方法が検討されている。その1つとして、基板表面上に金属シード形成溶液層を形成し、適当な波長の光に露光させることで金属シード層を形成し、めっきなどによって金属膜を形成する方法(たとえば、特許文献1参照)が知られている。また、版を用いて基板表面に化学的に変性されたパターンを形成し、無電解めっきによって配線を形成する方法(たとえば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−336018号公報
【特許文献2】特開2002−184752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジスト膜によるマスクなしに配線板を形成する従来方法は、次の問題点を有する。たとえば、基板表面上に金属シード形成溶液層を形成し、露光させることで金属シード層を形成し、めっきなどによって金属膜を形成する方法では、配線となるめっき膜の形状について十分考慮されていないため、配線の高密度化が困難であった。これは以下の理由による。レジスト膜を用いないでめっきを行うと、めっき膜は下地膜から等方的に成長してしまう。めっき膜が等方的に成長すると、めっきによる配線断面が半円形状になり、同じ断面積を持つ矩形の配線に比べて配線基板上に占める割合が増加する。したがって、断面形状が半円形となる配線は矩形の配線に比べて高密度化には不利となる。
【0007】
版を用いて基板表面に化学的に変性されたパターンを形成し、無電解めっきによって配線を形成する方法においても、配線となるめっき膜の形状について十分考慮されていない。レジストを用いずにめっきを行うと、下地膜の幅に比べてめっき膜の幅が広くなってしまうために配線の高密度化には不利となる。また、下地膜の設計通りの幅で配線を形成することが出来ない。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、レジスト膜によるマスクなしに形状を制御された高密度の配線を有する配線板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、絶縁基板上の配線やバンプを形成する部分に凹凸形状を有する下地金属膜を形成する工程と、電気めっきによって下地金属膜の凹凸を有する部分に銅または銅合金のめっき膜を形成する工程とを含み、めっき液中にめっき反応を抑制する物質を加えることで、前記絶縁基板の表面とめっき膜の側面との角度を90度以下とすることを特徴とする配線板の製造方法にある。
【0010】
また、本発明は、絶縁基板上に下地金属膜を有し、下地金属膜上に凹凸形状を有し、下地金属膜上の凹凸形状を有する部分に電気めっきによって銅または銅合金よりなる配線又はバンプが形成されており、前記絶縁基板の表面と配線又はバンプの側面との角度が90度以下であることを特徴とする配線板にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、レジスト膜を用いずに、形状の制御された高密度な配線を形成することができる。配線と基板表面との角度を90°以下とすることで、配線の寸法精度を低下させずに、めっきによる配線形成ができる。配線と基板表面との角度を90°以下とすることで、配線の寸法精度を低下させずに、めっきによる配線形成ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、電気めっきのための下地金属膜に適切な凹凸形状を形成し、めっき条件を最適化することで、凹凸形状を有する部分のめっき膜の析出形状を制御できることを見出した。めっき膜の析出条件制御のためには、添加剤としてめっき反応を抑制し、めっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う化合物を加えることが有効である。めっき反応を抑制する特性は、添加剤を加えることで金属の析出過電圧が大きくなることから確認できる。めっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う特性は、めっき液の流速が速い程、つまり添加剤の金属表面への供給速度が速い程、金属の析出過電圧が大きくなることで確認できる。添加剤がめっき反応抑制効果を失うときには、添加剤は分解されて別の物質に変化、或いは、還元されて酸化数の異なる物質に変化する場合がある。
【0013】
このような添加剤を含むめっき液でめっきを行うと、めっき反応の進行と共に下地金属膜表面では添加剤がその効果を失うために、めっき反応に関与する実効的な添加剤濃度が減少する。下地金属膜の凹凸形状のある部分では、凹凸形状のない部分に比べて相対的に表面積が大きく添加剤の減少速度が速いため、下地金属膜表面近傍での添加剤濃度がより低くなる。したがって、下地金属膜上の凹凸形状のある部分では、めっき反応を抑制する添加剤の効果が少なくなり、めっき速度が速くなる。下地金属膜表面での添加剤の濃度によってめっき反応速度は変化するため、添加剤の濃度分布に応じてめっき膜の形状は変化する。
【0014】
めっき条件の制御により添加剤の濃度分布を変えることが出来るので、めっき条件の制御によりめっき膜の形状も変えることが出来る。添加剤の濃度分布は添加剤の下地金属膜上への拡散と下地金属膜表面での反応とのバランスによって実現される。よって、添加剤の下地金属膜上への拡散又は下地金属膜表面での反応速度のいずれかを制御することで、凹凸形状のある部分でのめっき膜の析出形状を制御することが可能である。
【0015】
添加剤の下地金属膜上への拡散速度はめっき液中の添加剤濃度に大きく影響を受け、添加剤の下地金属膜上での反応速度はめっき時の電流密度に大きく影響を受ける。したがって、めっき液中の添加剤濃度やめっき時の電流密度を変えることで、添加剤の濃度分布を制御することが可能となり、凹凸形状のある部分でのめっき膜の優先的な析出とめっき膜形状の制御が可能となる。
【0016】
本発明の配線板製造方法に関する実施態様について記載する。
【0017】
1つは、絶縁基板上に下地金属膜を形成し、下地金属膜上の配線やバンプとする部分に凹凸形状を形成し、電気めっきによって凹凸形状を有する部分に銅または銅合金のめっき膜を形成し、下地金属膜の凹凸形状を有する部分以外における下地金属膜及びめっき膜を除去する工程を含み、めっき液中にめっき反応を抑制する物質を加えることで、絶縁基板の表面とめっき膜の側面との角度を90度以下とする。
【0018】
1つは、絶縁基板上に凹凸形状を有する下地金属膜を形成し、下地金属膜上の配線やバンプとする部分以外の凹凸形状を平坦化し、電気めっきによって下地金属膜上に銅または銅合金のめっき膜を形成し、下地金属膜の凹凸形状を有する部分以外における下地金属膜及びめっき膜を除去する工程を含み、めっき液中にめっき反応を抑制する物質を加えることで、絶縁基板の表面とめっき膜側面との角度を90度以下とする。
【0019】
1つは、電気めっきの給電層となる下地金属膜を形成し、下地金属膜上に基板となる絶縁膜をキャスティングによって形成し、下地金属膜の配線やバンプとする部分に凹凸形状を形成し、電気めっきによって下地金属膜の凹凸形状を有する部分に銅または銅合金のめっき膜を形成し、下地金属膜の凹凸形状を有する部分以外における下地金属膜及びめっき膜を除去する工程を含み、めっき液中にめっき反応を抑制する物質を加えることで、前記絶縁基板の表面とめっき膜側面との角度を90度以下とする。
【0020】
本発明では、凹凸形状を有する部分における基板又は下地金属膜のJIS B0601で規定される算術平均粗さRaを、凹凸形状を有する部分以外におけるRaに比べて大きくするか、或いは、凹凸形状を有する部分における基板又は下地金属膜のJIS B0601で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmを、凹凸形状を有する部分以外におけるRSmに比べて小さくする。
【0021】
優先的にめっき膜が形成される凹凸形状を有する部分における下地金属膜の表面粗さは、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで0.01〜4μmであることが望ましく、また、粗さ曲線要素の平均長さRSmで0.005〜8μmであることが望ましい。特に、凹凸形状を有する部分における下地金属膜の表面粗さはJIS B0601で規定される算術平均粗さRaで0.1〜1μmであり、粗さ曲線要素の平均長さRSmで0.05〜2μmであることが望ましい。
【0022】
めっき液中に添加する物質は、その物質を添加しためっき液の流速を増加させることによって、めっき析出金属の析出過電圧が大きくなる物質が望ましい。このような物質の一例として、シアニン色素の少なくとも1種を添加することが望ましい。シアニン色素は、特に次の化学構造式(Xは陰イオンであり、nは0,1,2,3のいずれか)で表される化合物が望ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
シアニン色素の濃度は3〜15mg/dmが望ましい。また、本発明では、電気銅めっき液にポリエーテル類、有機硫黄化合物、ハロゲン化物イオンから選ばれた少なくとも1種を添加することができる。
【0025】
金属膜を形成する際の電気銅めっきは、電流密度0.1〜2.0A/dmの定電流で行うことが望ましい。
【0026】
次に、本発明の配線板に関する実施態様について記載する。
【0027】
1つは、絶縁基板上に下地金属膜を有し、下地金属膜上に凹凸形状を有し、下地金属膜上の凹凸形状を有する部分に電気めっきによって配線又はバンプが形成されており、前記絶縁基板の表面と配線又はバンプ側面との角度が90度以下であり、前記凹凸形状を有する部分における基板又は下地金属膜のJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが凹凸形状を有する部分以外におけるRaに比べて大きいことを特徴とする。
【0028】
1つは、絶縁基板上に下地金属膜を有し、下地金属膜上に凹凸形状を有し、下地金属膜上の凹凸形状を有する部分に電気めっきによって銅または銅合金の配線又はバンプが形成されており、前記絶縁基板の表面と配線又はバンプ側面との角度が90度以下であり、前記凹凸形状を有する部分における基板又は下地金属膜のJIS B0601で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmが凹凸形状を有する部分以外におけるRSmに比べて小さいことを特徴とする。
【0029】
凹凸形状を有する部分における下地金属膜の表面粗さは、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで0.01〜4μmであること、或いは、粗さ曲線要素の平均長さRSmで0.005〜8μmであることが望ましい。特に、Raが0.1〜1μm、RSmが0.05〜2μmであることが望ましい。両方を満足するのが最も望ましい。
【0030】
絶縁基板の表面と配線又はバンプ側面との角度は、1度以上であることが望ましい。
【0031】
また、配線板は、銅または銅合金めっき膜が絶縁基板表面と平行な面を有することが望ましい。
【0032】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、実施例1〜22及び比較例1の結果をまとめたものを表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[実施例1]
図1(a)に示す厚さ25μmのポリイミドフィルムよりなる絶縁基板1(東レ・デュポン株式会社製カプトンEN)の表面に、平均粒径20nmの銀微粒子を分散させた溶液をインクジェット法により吹き付けて、図2に示すように配線幅20μm、厚さ0.2μmの下地金属膜2を形成した。その後、絶縁基板を200℃の温度に加熱して銀微粒子を融着させた。絶縁基板としては、ポリイミドに限定されず、ポリエステル、ガラスエポキシ、フェノール、アラミドなどの樹脂やセラミックス、ガラスなどを用いることができる。また、微粒子としては、銀以外に、白金、金、銅、ニッケル、錫などの金属微粒子を用いることができる。銀微粒子によって形成された下地金属膜表面の凹凸を表面粗さ測定装置によって測定した結果、下地金属膜の表面粗さは、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.01μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02μmとなっていた。
【0035】
下地金属膜形成直後に電気めっきを行い、図1(c)に示すように銅めっき膜3形成した。電気めっきは、表2に示す組成のめっき液に添加剤として表1に示す物質を添加して行った。めっき時間は40分、電流密度は1.25A/dm、めっき液の温度は25℃とし、アノードは含リン銅板を用いた。
【0036】
【表2】

【0037】
めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、83度であった。
【0038】
以上の結果、銀微粒子による下地金属膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線が形成された配線板を製造することができた。なお、銅めっき膜3側から見た配線板の平面図は図11に示すとおりであり、これは以下の実施例でも同様である。
[実施例2]
図2(a)に示す厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスS)よりなる絶縁基板1の表面に、スパッタ法によりマスクを通して、図2に示すように配線幅10μmの下地金属膜2を形成した。下地金属膜は、基板上に形成した厚さ0.01μmのニッケル膜とニッケル膜上に形成した厚さ0.5μmの銅膜との二層からなる。下地金属膜としては、ニッケルと銅の積層膜に限定されず、クロムと銅の積層膜などを用いることができる。その後、銅粗化処理を行って、図2(b)に示すように銅膜表面に凹凸形状を形成した。なお、図2(b)の下地金属膜は、図示していないが二層になっている。銅粗化処理は日本マクダーミッド株式会社製マルチボンドを用い、表3に示す工程を用いた。銅粗化液としては、上記の他にメック株式会社のメックエッチボンド、シプレイ・ファーイースト株式会社のサーキュボンド、日本アルファメタルズ株式会社のアルファプレップなどを用いることができる。
【0039】
【表3】

【0040】
銅粗化処理後の銅膜表面の凹凸形状を表面粗さ測定装置によって測定した結果、下地金属膜の表面粗さはJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.05μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.04μmとなっていた。下地金属膜2における銅膜表面に凹凸形状をつけた直後に電気めっきを行い、図2(c)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきは実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、83度であった。
【0041】
以上の結果、スパッタ法で形成した銅膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線を有する配線板を形成することができた。
[実施例3]
図3(a)に示すように、ガラスエポキシ樹脂よりなる絶縁基板1の表面に、スパッタ法により下地金属膜2として厚さ1.0μmの銅下地膜を形成した。次に、銅粗化処理を行って銅表面の配線を形成する部分に凹凸形状を形成し、図2(b)に示した形にした。凹凸形状の形成には、サンドブラストを用いた。サンドブラストは、配線幅8μmのマスクパターンを通して、アルミナ微粒子を銅表面に吹き付けることで行った。サンドブラスト処理した銅表面の凹凸形状を表面粗さ測定装置によって測定した結果、下地金属膜の表面粗さはJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.4μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1.1μmとなっていた。銅表面に凹凸形状をつけた直後に電気めっきを行い、図3(c)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきは実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。次に、銅エッチング液(メック株式会社製メックブライト)を用いて凹凸形状を形成していない部分の銅めっき膜と銅下地膜を除去し、更にメック株式会社製メックリムーバーを用いて、ニッケル下地膜を除去し、図3(d)に示した形にした。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、85度であった。
【0042】
以上の結果、サンドブラストにより凹凸形状を形成した銅下地膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線を有する配線板を形成することができた。
[実施例4]
図4(a)に示すように、厚さ25μmのポリイミドフィルムよりなる絶縁基板1の表面を、表4に示す液温25℃の表面改質処理水溶液で2分間処理した後、無電解銅めっき液(日立化成社製CUST−2000)を用いてめっきを行い、下地金属膜2を形成した。めっき後は流水を用いて水洗し、25℃で2時間真空乾燥を行った。この時の銅膜厚は約300nmであった。めっき後の下地銅膜表面の凹凸を表面粗さ測定装置によって測定した結果、下地金属膜の表面粗さはJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが1.5μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1.4μmとなっていた。
【0043】
【表4】

【0044】
次に、幅10μmの配線とする部分を除いたところ、つまり配線を形成しない部分に、銅微粒子を分散させた溶液を吹き付けた。その後、真空中で350℃、30分間アニールを行った。銅微粒子を吹き付けた部分の凹凸を表面粗さ測定装置によって測定した結果、表面粗さはJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.005μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが11μmとなり、銅膜表面が平坦化されたことがわかった。この状態を図4(b)に示す。
【0045】
次に、電気めっきを行い、図4(c)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきはめっき時間を20分とした以外は実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。その後、銅エッチング液(メック株式会社製メックブライト)を用いて凹凸形状を平坦化した部分の銅めっき膜と銅下地膜を除去し、図4(d)に示した形にした。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、80度であった。
【0046】
以上の結果、凹凸形状を形成した銅下地膜上に、配線断面が矩形の銅配線を有する配線板を形成することができた。
[実施例5]
図5(a)に示す厚さ25μmのポリイミドフィルムよりなる絶縁基板1の表面に粗化処理を行い、図5(b)に示すように凹凸形状を形成した。粗化処理は、表5に示す工程を用いた。粗化処理液としては過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液に限定されず、クロム酸と硫酸との混合溶液、クロム酸とホウフッ化水素酸との混合溶液などを用いることができる。
【0047】
【表5】

【0048】
次に、絶縁基板1の表面に平均粒径10nmの銅微粒子を分散させた溶液を吹き付けて、図5(c)に示すように配線幅30μm、厚さ0.03μmの下地金属膜2を形成した。銅微粒子によって形成された下地金属膜表面の凹凸を表面粗さ測定装置によって測定した結果、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが2.0μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが4.0μmとなっていた。
【0049】
下地金属膜2の形成直後に電気めっきを行い、図5(d)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきは実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、86度であった。
【0050】
以上の結果、銅微粒子による下地金属膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線が形成された配線板を製造することができた。
[実施例6]
図6(a)に示すように、エポキシ樹脂よりなる絶縁基板1の表面に、幅10μmにわたって、250nm間隔で、幅250nm、高さ400nmの凸部を有するシリコン製の金型4を押し付け、凹凸形状を形成した。絶縁基板1をガラス転移温度付近まで加熱しながら金型を押し付けることで、エポキシ樹脂基板1を軟化させて金型と同じ形状に変形させた。絶縁基板1と金型4を25℃まで冷却した後、絶縁基板1と金型4を引き剥がした。これにより、図6(b)に示すように、絶縁基板1の表面の一部に凹凸形状が形成することができた。次に、絶縁基板1の表面にスパッタ法によりニッケルとクロムの比が1:1のニッケル・クロム膜を10nm厚さに形成し、その上に化学気相成長法により100nmの銅膜を形成した。ニッケル・クロム膜と銅膜により下地金属膜2が構成される。この状態を図6(c)に示す。下地金属膜2の表面の凹凸形状を観察した結果、下地金属膜2が絶縁基板の凹凸形状を維持していることがわかった。
【0051】
下地金属膜2の形成直後に電気めっきを行い、図6(d)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきはめっき時間を90分とした以外は実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。次に、硫酸と過酸化水素を含む水溶液を用いて凹凸形状を形成していない部分の銅めっき膜と下地金属膜の銅膜を除去し、更に過マンガン酸カリウムを含む水溶液を用いてニッケル・クロム膜を除去した。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、83度であった。
【0052】
以上の結果、凹凸形状を形成した銅下地膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線を形成することができた。
[実施例7]
図7(a)に示すように、ポリイミドフィルムよりなる絶縁基板1の表面に、クロム酸と硫酸との混合溶液を用いて粗化処理を行い、凹凸形状を形成した。凹凸形状が形成された部分の表面粗さを表面粗さ測定装置によって測定した結果、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが1.0μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1.1μmとなっていた。次に、図7(b)に示すように、絶縁基板1の表面に幅10μmの凹部を有するシリコン製の金型4を押し付けて、配線を形成しない部分の凹凸形状を平坦化した。絶縁基板をガラス転移温度付近まで加熱しながら金型を押し付けることで、絶縁基板を軟化させ、金型4と同じ形状に変形させた。なお、この時、金型4の凹部は絶縁基板1に触れないようにした。次に、絶縁基板1と金型を25℃まで冷却した後、絶縁基板1と金型を引き剥がした。これにより、図7(c)に示すように、絶縁基板1の表面の一部を残して凹凸形状が平坦化できた。凹凸形状が平坦化された部分の表面粗さを表面粗さ測定装置によって測定した結果、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.006μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが9μmとなっていた。
【0053】
次に、絶縁基板1の表面にスパッタ法によりニッケルとクロム比が1:1のニッケル・クロム膜を10nm厚さに形成し、その上に蒸着法により100nmの銅膜を形成した。ニッケル・クロム膜と銅膜により下地金属膜2が構成される。この状態を図7(d)に示す。下地金属膜2の凹凸形状を形成した部分の表面粗さを表面粗さ測定装置によって測定した結果、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが1.0μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmが1.1μmとなっており、下地金属膜2が絶縁基板の凹凸形状を維持していることがわかった。
【0054】
下地金属膜2の形成直後に電気めっきを行い、図7(e)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきは実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。次に、硫酸と過酸化水素を含む水溶液を用いて凹凸形状を形成していない部分の銅めっき膜3と下地金属膜の銅を除去し、続いて過マンガン酸カリウムを含む水溶液を用いてニッケル・クロム膜を除去した。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、89度であった。
【0055】
以上の結果、凹凸形状を形成した下地金属膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線が形成された配線板を製造することができた。
[実施例8]
図8(a)に示すように、厚さ8μmの電解銅箔よりなる下地金属膜2の上のマット面にキャスティング法により厚さ25μmのポリイミドよりなる絶縁基板1を形成した。次に、銅粗化処理を行って下地金属膜表面の配線を形成する部分に、図8(b)に示すように凹凸形状を形成した。凹凸形状の形成には、サンドブラストを用いた。サンドブラストは、配線幅10μmのマスクパターンを通して、アルミナ微粒子を下地金属膜表面に吹き付けることで行った。サンドブラスト処理した下地金属膜表面の凹凸形状を表面粗さ測定装置によって測定した結果、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaが0.4μm、粗さ曲線要素の平均長さ RSmが1.1μmであった。銅表面に凹凸形状をつけた直後に電気めっきを行い図8(c)に示すように銅めっき膜3を形成した。電気めっきは実施例1と同様のめっき液組成及びめっき条件を用いた。次に、銅エッチング液(メック株式会社製メックブライト)を用いて凹凸形状を形成していない部分の銅めっき膜と銅箔を除去し、図8(d)に示した形にした。めっき後に配線板断面を観察し、図9に示す銅めっき膜側壁とポリイミドフィルム基板との角度θを測定したところ、85度であった。
【0056】
以上の結果、サンドブラストにより凹凸形状を形成した下地金属膜上に、配線断面がほぼ矩形の銅配線が形成された配線板を製造することができた。
[実施例9〜22]
表1に示すように、添加剤濃度と、めっき電流密度を変えた以外は実施例3と同様の方法で実施例9〜22の配線板を製造した。めっき後に配線板断面を観察した結果、図9に示す銅めっき膜側壁に対する基板との角度θは、添加剤濃度と、めっき電流密度によって異なり、これらの条件を変えることで角度θを制御できることがわかった。その結果、図10(a)(b)(c)に示すように、断面形状が矩形、台形或いは三角形の配線及びバンプを有する配線板を製造することができた。また、本実施例では、配線底部の幅に対する配線側壁の高さの比を1以上とすることができ、マイグレーション耐性の高い配線板を製造することができた。
[比較例1]
粗化処理を行わないこと以外は実施例2と同様の方法でめっきを行い、配線を形成した。めっき後に配線板断面を観察した結果、図9に示す銅めっき膜側壁と基板との角度θは135度であった。めっき前では幅10μmであった配線部分が、めっき後では18μmの配線幅となり、短絡している部分も見られた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
レジストによるマスクなしに、微細パターンにめっきができることによって、配線やバンプだけでなく受動素子などの配線板に搭載される素子の形成にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による配線板製造方法の位置実施例を示す断面図である。
【図2】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示した断面図である。
【図4】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示した断面図である。
【図8】本発明による配線板製造方法の他の実施例を示した断面図である。
【図9】配線の断面形状の評価方法を示した図である。
【図10】本発明の実施例により得られた配線の断面形状を示した断面図である。
【図11】銅めっき膜側から見た配線板の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…絶縁基板、2…下地金属膜、3…銅めっき膜、4…金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に銅配線を有する配線板の製造方法において、前記絶縁基板上の銅配線を形成する部分に凹凸形状を有する下地金属膜を形成する工程と、めっき反応を抑制する物質を含むめっき液を用いて電気めっきにより前記下地金属膜の凹凸を有する部分に銅めっき膜を形成する工程とを含み、前記絶縁基板の表面と前記銅めっき膜の側面との角度が90度以下の前記銅めっき膜を形成することを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記電気めっきを施す際の電流密度を制御して前記絶縁基板の表面と前記銅めっき膜の側面との角度を調整することを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、前記絶縁基板上に前記下地金属膜を形成したのち凹凸形状を形成し、電気めっきによって前記下地金属膜の上に銅めっき膜を形成したのち、凹凸形状を有する部分以外における前記下地金属膜及び前記銅めっき膜を除去するようにしたことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、前記絶縁基板上に凹凸形状を有する下地金属膜を形成し、銅配線およびバンプを形成する部分以外の凹凸形状を平坦化し、前記下地金属膜の上に電気めっきによって銅めっき膜を形成し、前記凹凸形状を有する部分以外における前記下地金属膜及び前記銅めっき膜を除去するようにしたことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、電気めっきの給電層となる前記下地金属膜を形成したのち、前記下地金属膜の上に前記絶縁基板となる絶縁膜をキャスティングによって形成し、前記下地金属膜の配線やバンプとする部分に凹凸形状を形成し、電気めっきによって前記下地金属膜の上に銅めっき膜を形成し、前記凹凸形状を有する部分以外における前記下地金属膜及び前記めっき膜を除去するようにしたことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、前記凹凸形状を有する部分における前記絶縁基板又は前記下地金属膜のJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが、凹凸形状を有する部分以外における前記算術平均粗さRaに比べて大きいことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、前記凹凸形状を有する部分における前記絶縁基板又は前記下地金属膜のJIS B0601で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmが凹凸形状を有する部分以外における前記RSmに比べて小さいことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1において、前記凹凸形状を有する部分の表面粗さがJIS B0601で規定される算術平均粗さRaで0.01〜4μmであり、粗さ曲線要素の平均長さRSmで0.005〜8μmであることを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項1において、前記めっき液中に添加される物質が、その物質を含むめっき液の流速を増加させることによってめっき析出金属の析出過電圧が大きくなる物質であることを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項1において、前記めっき液に少なくとも1種のシアニン色素が添加されていることを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、前記シアニン色素が次の化学構造式(Xは陰イオンであり、nは0,1,2,3のいずれか)で表される化合物であることを特徴とする配線板の製造方法。
【化1】

【請求項12】
請求項10において、前記シアニン色素の濃度が3〜15mg/dmであることを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項13】
請求項10において、前記電気めっきを電流密度が0.1〜2.0A/dmの定電流で行うことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項14】
請求項1において、前記めっき液にポリエーテル類、有機硫黄化合物、ハロゲン化物イオンから選ばれた少なくとも1種を添加することを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項15】
絶縁基板の上に下地金属膜を有し前記下地金属膜の上に銅めっき膜を有する配線板において、前記下地金属膜の表面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状を有する部分に電気めっきによって形成された配線又はバンプを有し、前記絶縁基板の表面と前記配線又はバンプの側面との角度が90度以下であることを特徴とする配線板。
【請求項16】
請求項15において、前記凹凸形状を有する部分における前記絶縁基板又は前記下地金属膜のJIS B0601で規定される算術平均粗さRaが、凹凸形状を有する部分以外における算術平均粗さRaに比べて大きいことを特徴とする配線板。
【請求項17】
請求項15において、前記凹凸形状を有する部分における前記絶縁基板又は前記下地金属膜のJIS B0601で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmが、凹凸形状を有する部分以外におけるRSmに比べて小さいことを特徴とする配線板。
【請求項18】
請求項16において、前記銅めっき膜が形成された凹凸形状を有する部分における前記下地金属膜の表面粗さがJIS B0601で規定される算術平均粗さRaで0.01〜4μmであることを特徴とする配線板。
【請求項19】
請求項17において、前記銅めっき膜が形成された凹凸形状を有する部分における前記下地金属膜の表面粗さがJIS B0601で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmで0.005〜8μmであることを特徴とする配線板。
【請求項20】
請求項15において、前記銅めっき膜が前記絶縁基板の表面と平行な面を有することを特徴とする配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−210565(P2006−210565A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19437(P2005−19437)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】