説明

配線板の接合方法

【課題】リジットプリント配線板(RPC)とフレキシブルプリント配線板(FPC)との接合状態の良否を容易に検査可能な配線板の接合方法、この接合方法により得られる配線板の接合構造、及びこの接合方法の実施に適したヒータチップを提供する。
【解決手段】FPC20の表裏に設けられた一対の端子部23を貫通するスルーホール24を有するFPC20と、半田12が塗布された電極部11を有するRPC10とを用意する。裏側端子部23dと電極部11上の半田12とを重ね合わせ、表側端子部23uの表面23fのスルーホール24の開口部を部分的に覆うようにヒータチップ40を押し付け、RPC10とFPC20とを接合する。スルーホール24の開口部の一部が開放され、その周縁の一部を覆うように溶融半田が漏れ出て、被覆半田部30が形成される。被覆半田部30は、目視で確認でき、接合状態の良否の検査を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リジットプリント配線板とフレキシブルプリント配線板とを接合する配線板の接合方法、この接合方法の実施に適したヒータチップ、及びこの接合方法により得られる配線板の接合構造に関するものである。特に、上記両配線板の接合状態の良否を容易に確認可能な配線板の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやノート型パソコン、携帯電話などの携帯用電子機器、その他各種の電子機器などでは、多数の電子部品を搭載している。これらの電子部品の電気的な接続にリジットプリント配線板(以下、RPCと呼ぶ)やフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと呼ぶ)が利用されており、両者の接合体を利用することもある。
【0003】
RPCとFPCとの接合方法として、特許文献1では、FPCの表裏の対向位置に設けたコンタクト部を貫通するスルーホールを形成し、RPCのコンタクト部(銅箔パッド)に塗布した半田の上に上記FPCの裏側のコンタクト部を重ね合わせ、上記FPCの表側のコンタクト部にヒータチップを接触させて加熱し、溶融した半田により接合する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-129061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のヒータチップを利用した接合方法では、接合状態の良否の確認を行い難い。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、FPCの表側のスルーホールの開口部を全て覆うようにヒータチップを押し付けて加熱するため、溶融した半田は、RPCのパッドからスルーホールの途中までしか上がらない(特許文献1の図15参照)。即ち、FPCの表側のスルーホールは、その開口部の周縁が全く半田で覆われない。このようなスルーホールの途中までしか半田が付着してない従来の接合構造では、一般にスルーホールが微小であるため、半田の付着状態を目視により確認することが難しい。接合状態の良否を容易に確認するには、付着した半田が目視により確認可能な形状であることが望まれる。例えば、半田が、RPCのパッドからFPCのスルーホールを介してFPCの表側のコンタクト部に達し、更に、この表側のコンタクト部におけるスルーホールの開口部の周縁の少なくとも一部を覆うように付着していれば、簡単にかつ確実に接合状態の良否を目視確認できる。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、複数のスルーホールを形成しているものの、これらのスルーホールはいずれもFPCの縁部からの位置が等しく、一直線上に並んでいる。そのため、半田の付着箇所も一直線状に設けられることで剥離し易く、接合強度を高めることが望まれる。特許文献1に記載されるように、FPCの表側のスルーホールから、半田を追加して上記スルーホールに流し込むことで接合強度を高められるものの、半田を追加する工程が増えることで生産性の低下を招く。
【0008】
従って、接合状態の良否を容易に確認可能な接合構造の開発、及びこのような接合構造を生産性よく製造することができる接合方法の開発が望まれる。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、RPCとFPCとの接合状態の良否を容易に確認可能な配線板の接合方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記本発明接合方法の実施に適したヒータチップを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記接合方法により得られた配線板の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、FPCのスルーホールの開口部を全て覆うようにヒータチップを配置するのではなく、スルーホールの開口部を部分的に覆うようにヒータチップを配置することで上記目的を達成する。
【0011】
本発明の配線板の接合方法は、リジットプリント配線板の一部とフレキシブルプリント配線板の一部との間に半田を挟んで重ね合わせた部分をヒータチップで加熱して、溶融した上記半田により上記両配線板を接合する方法に係るものであり、以下の準備工程と、接合工程とを具える。
準備工程:フレキシブルプリント配線板の表裏に設けられた一対の端子部を貫通するスルーホールが形成されたフレキシブルプリント配線板と、半田が塗布された電極部を有するリジットプリント配線板とを用意する工程。
接合工程:上記一方の端子部と上記電極部上の半田とを重ね合わせる。そして、上記他方の端子部の表面における上記スルーホールの開口部を部分的に覆うように上記ヒータチップを押し付けて、上記両配線板を接合する工程。
【0012】
上記本発明接合方法により、以下の本発明配線板の接合構造が得られる。本発明の配線板の接合構造は、リジットプリント配線板と、このリジットプリント配線板に部分的に重ね合わされて接合されたフレキシブルプリント配線板とを具える。特に、本発明接合構造は、上記リジットプリント配線板に形成された電極部と、上記フレキシブルプリント配線板の表裏に設けられ、スルーホールにより接続された少なくとも一対の端子部と、上記電極部と上記端子部とに付着される以下の被覆半田部とを具える。この被覆半田部は、上記電極部と上記一方の端子部との間から上記スルーホールを介して上記他方の端子部の表面に達し、かつこの他方の端子部の表面における当該スルーホールの開口部の周縁を部分的に覆う。
【0013】
上記本発明接合構造では、リジットプリント配線板の電極部とフレキシブルプリント配線板の一対の端子部とが上記被覆半田部、即ち、当該電極部と裏側の端子部との間、当該一対の端子部間を貫通するスルーホール、及び表側の端子部におけるスルーホールの開口部の周縁の一部に付着する半田、により接合された構成である。そして、上記表側の端子部におけるスルーホールの開口部の周縁に半田が付着していることは、上記両配線板における接合箇所に当該半田が十分に存在していることを意味する。また、上記周縁に付着している半田は、目視による確認が可能である。そのため、せいぜいスルーホールの途中までしか半田が付着していない従来の接合構造に比較して、本発明接合構造は、半田の付着状態の良否を目視により簡単にかつ確実に確認することができ、検査の作業性に優れる。また、本発明接合構造は、表側の端子部におけるスルーホールの開口部の周縁の一部にも半田が付着していることから、接合強度が高いと期待される。
【0014】
更に、上記本発明接合方法によれば、スルーホールの開口部の一部をヒータチップで覆わず、スルーホールを開放した状態で加熱することで、リジットプリント配線板の電極部からスルーホールを介して上がってきた溶融した半田が、スルーホールの開口部における開放箇所から漏れ出ることができる。即ち、上記スルーホールの開口部においてヒータチップに覆われなかった箇所の周縁に溶融した半田が付着することができ、上述した被覆半田部を有する接合構造を形成することができる。従って、本発明接合方法によれば、上述のように接合状態の良否の確認が容易に行え、かつ接合強度が高い本発明接合構造を形成することができる。特に、本発明接合方法では、RPCとFPCとを重ね合わせた部分において特定の範囲にヒータチップを押し付けるという簡単な構成であり、上記ヒータチップを繰り返し利用することができるため、接合状態の良否検査が容易に行える上記接合構造を生産性よく形成することができる。また、本発明接合方法では、追加の半田を利用しなくても、接合強度に優れる上記接合構造の形成が可能であり、この点からも上記接合構造の生産性に優れる。
【0015】
本発明接合方法の一形態として、以下の複数のスルーホールを具える形態が挙げられる。具体的には、上記準備工程では、上記一対の端子部に複数のスルーホールが形成されたフレキシブルプリント配線板を用意する。そして、上記接合工程では、上記複数のスルーホールのうち、上記フレキシブルプリント配線板の縁部から最も離れた位置に形成された奥側のスルーホールの開口部を部分的に覆うように上記ヒータチップを押し付ける。
【0016】
上記複数のスルーホールを具える形態の本発明接合方法によれば、以下の複数のスルーホールを具える形態の本発明接合構造を形成することができる。この接合構造は、上記一対の端子部が複数のスルーホールを具えており、これら複数のスルーホールのうち、上記フレキシブルプリント配線板の縁部から最も離れた位置に形成された奥側のスルーホールに上記被覆半田部が設けられている。
【0017】
上記一対の端子部に具える複数のスルーホールのうち、奥側のスルーホールに付着した半田には、接合した両配線板同士を剥離する方向の応力が加わり易い。そのため、奥側のスルーホール部分には、他のスルーホール部分よりも半田が十分に存在することが求められる。上記複数のスルーホールを具える形態の接合構造によれば、特に、奥側のスルーホールに被覆半田部が設けられ、半田が十分に存在する。また、この形態では、複数のスルーホールを具えることから、奥側のスルーホールだけでなく、他のスルーホールにも半田が付着した構成、例えば、他のスルーホール内の途中にまで半田が付着した構成とすることができる。このように被覆半田部に加えて、複数のスルーホールに半田が付着した構成である接合構造は、接合強度が更に高いと期待される。そして、上記本発明接合方法によれば、上述のように特定の範囲にヒータチップを押し付けることで、上記接合強度に優れる接合構造を簡単に形成することができる。
【0018】
その他、本発明接合方法の一形態として、以下の複数対の端子部を具える形態が挙げられる。具体的には、上記準備工程では、フレキシブルプリント配線板の縁部からの位置が異なるスルーホールが形成された複数対の端子部を具えるフレキシブルプリント配線板を用意する。そして、上記接合工程では、上記位置が異なる各スルーホールの開口部の一部を同時に覆うことが可能な凹凸形状の押圧面を有するヒータチップを用いる。
【0019】
上記複数対の端子部を具える形態の本発明接合方法の実施にあたり、特に、以下の本発明ヒータチップを好適に利用することができる。本発明のヒータチップは、プリント配線板に設けられた複数のスルーホールを、別のプリント配線板に塗布された半田に重ね合わせ、この重複部分を接合するときに、上記半田を加熱するために上記重複部分に押し付ける押圧面を有する。特に、このヒータチップの押圧面は、上記スルーホールを部分的に覆うことが可能な凹凸形状である。
【0020】
上記複数対の端子部を具える形態の接合方法によれば、以下の少なくとも二対の端子部を具える形態の本発明接合構造を形成することができる。この接合構造は、上記一対の端子部に形成されたスルーホールと、別の一対の端子部に形成されたスルーホールとが上記フレキシブルプリント配線板の縁部からの位置が異なっており、上記位置が異なる各スルーホールに上記被覆半田部が設けられている。
【0021】
上記接合構造によれば、複数のスルーホールを有すると共に、各スルーホールに被覆半田部が設けられているため、接合状態の良否を目視により容易に、かつ確実に確認可能である。特に、上記接合構造では、被覆半田部が設けられている各スルーホールの位置が異なることで、半田の付着箇所が一直線状ではなく、例えば、千鳥形状といった異形形状に設けらる。そのため、上記複数対の端子部を具える形態の接合構造は、半田の付着箇所が一直線状に設けられた従来の接合構造と比較して剥離し難く、接合強度が高いと期待される。そして、上記本発明ヒータチップを利用した上記本発明接合方法によれば、複数のスルーホールの配置形状が上記異形形状であっても、複数対の端子部を具える形態の接合構造を簡単に、かつ生産性よく形成することができる。
【0022】
特に、本発明接合方法として、上述した複数のスルーホールを具える形態と、複数対の端子部を具える形態とを組み合わせた形態、即ち、複数のスルーホールを具える少なくとも一対の端子部と、上記複数のスルーホールの少なくとも一つとフレキシブルプリント配線板の縁部からの位置が異なるスルーホールを具える少なくとも一対の端子部とを具えるフレキシブルプリント配線板を利用し、これらのスルーホールの配置形状に対応した凹凸形状の端面を有するヒータチップを利用する形態とすることが好ましい。この場合、複数の対の端子部を具え、各端子部における奥側のスルーホールに被覆半田部が存在する接合構造が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明配線板の接合構造は、半田の付着状態を目視により容易に確認することができる。本発明配線板の接合方法は、上記接合構造を生産性よく形成することができる。本発明ヒータチップは、半田の付着箇所が凹凸形状となるような接合構造を容易に、かつ繰り返し形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、リジットプリント配線板及びフレキシブルプリント配線板の一例を示す概略模式図である。
【図2】図2(I)は、リジットプリント配線板とフレキシブルプリント配線板との重複部分にヒータチップを配置した状態を部分的に示す上面説明図、図2(II)は、リジットプリント配線板にフレキシブルプリント配線板、ヒータチップを配置する状態を部分的に示す側面説明図、図2(III)は、実施形態1の接合方法により形成された接合構造の部分断面模式図である。
【図3】図3は、実施形態1の接合方法に利用したヒータチップの端面部分を拡大して示す概略斜視図である。
【図4】図4は、リジットプリント配線板とフレキシブルプリント配線板との重複部分に端面長方形状のヒータチップを配置した状態を部分的に示す上面説明図であり、図4(I)は、実施形態3の接合方法の場合、図4(II)は、フレキシブルプリント配線板の縁部から離れた箇所にヒータチップを配置した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。以下の図において同一符号は同一物を示す。
【0026】
[実施形態1]
以下、図1〜3を参照して、実施形態1の配線板の接合方法及び接合構造、並びにヒータチップを説明する。なお、図1では、リジットプリント配線板の一部のみを示し、図2(I)では配線パタン22を省略している。
【0027】
《接合方法の概要》
実施形態1の接合方法は、図1に示すリジットプリント配線板(以下、RPCと呼ぶ)10とフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと呼ぶ)20とを部分的に重ね合わせ、この重複部分をヒータチップ40(図2(I)など)で加熱して、RPC10とFPC20との間に介在させていた半田12を溶融し、この半田によりRPC10とFPC20とを接合する。上記接合方法により、図2(III)に示す接合構造1が得られる。
【0028】
《準備工程》
接合にあたり、RPC10とFPC20とを準備する。RPC10は、硬質な絶縁材料(例えば、ガラスエポキシ樹脂など)からなる絶縁基板(図示せず)の一面又は両面に、銅などの導電性材料からなる複数の配線パタン(図示せず)がフォトリソグラフィなどにより形成されている。このRPC10の縁部近傍の一部(ここでは角部)にFPC20の一部(端部)が接合される。上記縁部近傍に形成された各配線パタンの端部に、長方形状の電極部11が設けられている。各電極部11の上に半田(予備半田)12が塗布されている。
【0029】
各電極部11は、RPC10とFPC20とを重ね合わせたときに、後述するFPC20の各端子部23の配置位置に対応した位置に設けられている。各電極部11の長さl11(図1において上下方向の大きさ)及び幅w11(図1において左右方向の大きさ)は、各端子部23の長さl23l,l23s及び幅w23に応じて適宜選択するとよい。ここでは、各電極部11は、図2(I)に示すように各端子部23よりも十分に大きく(長くかつ幅が広く)、その表面の全体に半田12を具える。
【0030】
FPC20は図1,2に示すようにポリイミドなどの可撓性を有し、かつ絶縁材料からなるベースフィルム21の両面に、接着剤層(図示せず)を介して銅などの導電性材料からなる複数の配線パタン22がフォトリソグラフィなどにより形成されている。ベースフィルム21の表裏に設けられた各配線パタン22において、FPC20の縁部20eに近い箇所を除く大部分の箇所は、ベースフィルム21と同様の材料からなるカバーレイ25に覆われている。
【0031】
また、FPC20は、その縁部20eに近い箇所の表裏の対向位置に配置された複数対の端子部23を具える。図2(II)に示すように、各対の端子部23のうち、一方の端子部(表側端子部23u)が表側(ここでは、ヒータチップ40に接触する側)に配置され、他方の端子部(裏側端子部23d)が裏側(ここでは、RPC10の半田12に接触する側)に配置される。各対の端子部23(表側端子部23u、裏側端子部23d)はいずれも、銅などの導電性材料からなる長方形状であり、同じ形状及び大きさである。また、上述のように各端子部23はいずれも、RPC10とFPC20とを重ね合わせたときに対応する位置に配置されるRPC10の各電極部11よりも小さい(短くかつ幅が細い)。また、長方形状の各端子部23の一方の短辺がFPC20の縁部20eに接して配置されている。いずれの端子部23もカバーレイ25に覆われておらず、露出されている。
【0032】
複数対の端子部23のうち、一部の対の端子部23sは、上記ベースフィルム21の表裏に設けられた各配線パタン22に接続されており、残りの対の端子部23lは、裏面に設けられた配線パタン(図示せず)に接続されている。ここでは、端子部23lの長さl23lを配線パタン22に接続された上記端子部23sの長さl23sよりも長くしている。各端子部23l,23sの幅w23は、いずれも等しくしている。なお、配線パタンに接続されず、主として接合に用いる専用の端子部を設けてもよい。
【0033】
そして、各対の端子部23には、一方の表側端子部23uから他方の裏側端子部23dに貫通するスルーホール24が少なくとも一つ設けられている。各スルーホール24は、その内周面が銅などの導電性材料からなるめっき26が施されている。従って、各対の端子部23(表側端子部23u,裏側端子部23d)は、スルーホール24により電気的に接続される。
【0034】
長さl23lが長い端子部23lは、二つの断面円形状のスルーホール24f,24dが、端子部23の長さ方向(長辺方向)に離間して並んで設けられている。即ち、上記端子部23lに具える二つのスルーホール24f,24dは、FPC20の縁部20eからの位置(長方形状の端子部23の長辺方向の距離)が異なる。ここでは、縁部20eに近い側のスルーホールを手前側のスルーホール24f、縁部20eから遠い側のスルーホールを奥側のスルーホール24dと呼ぶ。
【0035】
一方、長さl23sが短い端子部23sは、一つの断面円形状のスルーホール24sを具える。このスルーホール24sにおけるFPC20の縁部20eからの位置を、上記端子部23lに具える手前側のスルーホール24fの位置に等しくしている。つまり、FPC20は、その縁部20eからの位置が等しいスルーホール24s,24fが形成された端子部23s,23lを具えると共に、その縁部20eからの位置が異なるスルーホール24s,24dが形成された端子部23s,23lを具える。そのため、各対の端子部23に具えるスルーホール24のうち、FPC20の縁部20eから最も離れた位置に形成されたスルーホール24s,24fがつくる外形は凹凸形状になっている。
【0036】
なお、上記構成を具えるRPC10及びFPC20の基本的な構成はいずれも、公知の構成を利用することができる。
【0037】
《接合工程》
図2(I)に示すように用意したRPC10の各電極部11上の半田12にそれぞれ、FPC20の各対の端子部23のうち、一方の裏側端子部23dが接するように、RPC10とFPC20とを重ね合わせる。
【0038】
次に、FPC20の各対の端子部23のうち、他方の表側端子部23uにヒータチップ40を配置して、ヒータチップ40にパルス電流などを通電することによりヒータチップ40を加熱すると共に所定の圧力でヒータチップ40を押し付ける。このヒータチップ40の加熱により、RPC10の半田12を溶融して、RPC10とFPC20とを接合する。
【0039】
ヒータチップ40は、図3に示すように押圧面となる端面40eが、FPC20の縁部20eから最も離れた位置に形成されたスルーホール24s,24dの配置形態(凹凸形状)に対応した凹凸形状である。ここでは、端面40eは、横長の長方形において一方の長辺から複数の小さい長方形が突出するように接続された多角形状である。より具体的には、端面40eは、ヒータチップ40の端面40eの他方の長辺をFPC20の縁部20eに接するように、当該端面40eをFPC20に配置させたとき、図2(I)に示すように長さが長い各端子部23lの手前側のスルーホール24fの開口部を全て覆い、かつ奥側のスルーホール24dの開口部及び長さが短い各端子部23sのスルーホール24sの開口部を部分的に覆うことが可能な凹凸形状である。この形状により、ヒータチップ40は、複数のスルーホール24d,24sの開口部の一部、及び複数のスルーホール24fの全部を同時に覆うことができる。
【0040】
上記ヒータチップ40は、その端面が上記特定の形状である以外の点は従来のヒータチップの基本的構成と同様であり、正面が門型形状であり、Moなどの耐熱性に優れる材料から構成されている。
【0041】
図2(I),(II)に示すようにRPC10の上に重ね合わせたFPC20の表側に、上記ヒータチップ40の凹凸形状の端面40eを接触させ、上述のように加熱及び押圧する。このとき、長さが短い端子部23sのスルーホール24sの開口部の一部、及び長さが長い端子部23lの奥側のスルーホール24dの開口部の一部は、ヒータチップ40の端面40eにより同時に覆われ(図2(II)では開口部の半分程度が覆われ)、残部は開放された状態である。このようにスルーホール24s,24dの開口部の一部が開放されることで、溶融した半田12は、RPC10の電極部11と一方の裏側端子部23dとの間から各スルーホール24s,24dを介して、他方の表側端子部23uの表面23fに達する。かつ、溶融した半田12は、表側端子部23uの表面23fにおける各スルーホール24s,24dの開口部の周縁の一部を覆うように漏れ出る。この漏出を確認してから冷却して半田を凝固することで、接合構造1が得られる。
【0042】
なお、端子部23lの手間側のスルーホール24fの開口部も、スルーホール24d,24sと同時にヒータチップ40の端面40eに覆われる。特に、手前側のスルーホール24fの開口部では、上述のようにヒータチップ40の端面40eにより全てが覆われる。従って、溶融した半田12は、RPC10の電極部11と裏側端子部23dとの間からスルーホール24fの途中まで達するものの、表側端子部23uのスルーホール24fの開口部から漏れ出ない。しかし、スルーホール24fの内面に半田が付着した状態とすることができる。
【0043】
《接合構造》
上記接合構造1は、RPC10と、このRPC10に部分的に重ね合わされて接合されたFPC20と、RPC10に形成された電極部11と、FPC20の表裏に設けられてスルーホール24により接続された複数対の端子部23と、スルーホール24s,24dに設けられた被覆半田部30とを具える。
【0044】
上記被覆半田部30は、上述のように溶融した半田12がスルーホール24s,24dの開口部の周縁の一部を覆うように漏れ出ることで形成される。より具体的には、被覆半田部30は、図2(III)に示すように上記電極部11の表面と、裏側端子部23dの表面と、各スルーホール24s,24dの内面とに付着していると共に、上記電極部11と裏側端子部23dとの間から各スルーホール24s,24dを介して、表側端子部23uの表面23fに達し、かつこの表面23fにおける各スルーホール24s,24dの開口部の周縁を部分的に覆っている。即ち、接合構造1では、FPC20の縁部20eからの位置が異なる各スルーホール24s,24dに被覆半田部30が設けられている。また、接合構造1では、複数のスルーホール24f,24dを有する端子部23lにおいて奥側のスルーホール24dに被覆半田部30が形成されている。更に、接合構造1では、端子部23lにおいて手前側のスルーホール24fの内面に付着している半田部31を具える。即ち、接合構造1では、被覆半田部30に加えて、スルーホール24f内の半田部31によって、RPC10とFPC20とが接合された構成である。また、接合構造1では、図2(III)に示すようにRPC10の電極部11とFPC20の裏側端子部23dとの間にも半田が介在されている。
【0045】
《効果》
上記接合方法では、スルーホール24の開口部を部分的に覆うように端面40eが凹凸形状のヒータチップ40を押し付けることで、FPC20の表側のスルーホール24の開口部から溶融した半田12が漏れ出ることができる。そのため、この接合方法では、上記スルーホール24の開口部の周縁の一部を覆う被覆半田部30を具える上記接合構造1を形成することができる。特に、この接合方法は、特定の端面形状のヒータチップ40を用意することで、上記被覆半田部30を具える接合構造1を簡単に、かつ繰り返し形成することができる。
【0046】
そして、接合構造1は、被覆半田部30を具えることで、半田の付着状態を目視により簡単にかつ確実に確認することができる。そのため、接合後に行う接合状態の良否の検査を容易に行える。また、接合構造1は、被覆半田部30が設けられた複数のスルーホール24が直線状ではなく、千鳥状に配置されている。即ち、半田の付着箇所が千鳥状に設けられている。そのため、上記接合構造1は、被覆半田部を有さず、かつ半田の付着箇所が直線状に設けられた従来の接合構造と比較して、接合強度が高く、剥離し難いと期待される。更に、接合構造1は、被覆半田部30に加えて半田部31を具えることでも、接合強度を高められると期待される。
【0047】
また、ヒータチップ40の端面40eを、FPC20の縁部20eから離れた位置に設けられた複数のスルーホール24d,24sがつくる外形に応じた形状とし、かつ、カバーレイ25から露出した箇所のみに接触する大きさとしている。従って、ヒータチップ40をFPC20に押し付けて加熱した場合でも、カバーレイ25で覆われた箇所を直接加熱することがなく、当該箇所を過度に加熱したり、当該箇所からフラックスなどに起因するIPAガスなどが生じてカバーレイ25が剥離するなどの不具合が生じ難い。
【0048】
なお、長さが長い端子部23lに設けられた手前側のスルーホール24fにも被覆半田部を形成するために、ヒータチップの端面の凹凸状態を変化させてもよい。実施形態1では、ヒータチップ40の端面40eの一部をFPC20の縁部20eに沿った形状(直線状の縁部を有する形状)としたことで、ヒータチップ40をFPC20に位置合わせし易く、配置し易い。また、複数のスルーホールに対して、ヒータチップにより覆われる面積が異なるようにヒータチップの端面の凹凸状態を変化させてもよい。
【0049】
[実施形態2]
上記実施形態1では、スルーホールの個数が異なる端子部23lを具える構成を説明した。例えば、各対の端子部に具えるスルーホールを一つとし、各スルーホールが直線状に並ぶように複数のスルーホールを設けてもよい。この場合、ヒータチップは、端面が長方形状のものを利用することができる。この場合でも、上述したように、各スルーホールの開口部を部分的に覆うようにヒータチップを押圧することで、被覆半田部を具える接合構造が得られる。また、この接合構造は、被覆半田部を有さない従来の接合構造に比較して、接合状態の良否の確認を容易に行える上に、接合強度が高いと期待される。但し、被覆半田部30が千鳥状に並ぶと共に、半田部31を有する実施形態1の接合構造1の方が、被覆半田部が直線状に並んだ当該形態の接合構造よりも接合強度が高いと考えられる。
【0050】
或いは、各対の端子部に具えるスルーホールを一つとすると共に、各スルーホールにおけるFPCの縁部からの位置を異ならせて、例えば、千鳥状に並ぶように複数のスルーホールを設けてもよい。この場合、ヒータチップは、実施形態1で用いたような端面が凹凸形状のものを利用すると、被覆半田部を具える接合構造を容易に形成することができる。この接合構造では、被覆半田部が実施形態1と同様に千鳥状に設けられるため、上述した被覆半田部が直線状に設けられる形態と比較して、接合強度が高いと期待される。
【0051】
[実施形態3]
上記実施形態1では、FPC20に形成された複数のスルーホール24がつくる外形が凹凸形状である場合に、これらスルーホール24の配置形態に対応した凹凸形状の端面40eを有するヒータチップ40を利用する構成を説明した。その他、図4に示すように端面が長方形状のヒータチップ41を利用することができる。なお、図4では配線パタンを省略している。
【0052】
ヒータチップ41の端面41eは、例えば、図4(I)に示すように、FPC20の縁部20eからの距離が等しいスルーホール24、具体的には、長さが長い端子部23lの手前側のスルーホール24f及び長さが短い端子部23sのスルーホール24sについて、それぞれの開口部を部分的に覆うことができる横長の長方形状とするとよい。ここでは、横長の長方形状の端面41eにおいて一対の長辺のうち、一方の長辺が上述のように複数のスルーホール24f,24sを横断するように配置され、他方の長辺がFPC20の縁部20eに沿って配置されるように、端面41eの大きさを設定している。
【0053】
このような端面が長方形状のヒータチップ41を利用することで、スルーホール24f,24sに被覆半田部(図示せず)を設けることができる。また、この形態では、長さが長い端子部23lの奥側のスルーホール24dについては、熱伝導により、半田12が溶融されて、その一部がスルーホール24d内に入り込んでスルーホール24dの内面に付着する。この付着した半田もRPC(図示せず)とFPC20との接合に寄与することができる。上述のようにこの形態は、被覆半田部を有することで、被覆半田部を有さない従来の接合構造と比較して、接合状態の良否を容易に確認できる上に、接合強度が高いと期待される。また、上述のように複数のスルーホール24f,24dが形成された端子部23lを具え、各スルーホール24dにも半田が付着していることからも、単一のスルーホールが形成された端子部のみを具える従来の接合構造と比較して、接合強度が高いと期待される。但し、この形態では、被覆半田部が直線状に配置されることから、被覆半田部30が千鳥状に並ぶと共に、半田部31を有する実施形態1の接合構造1の方が接合強度が高いと考えられる。
【0054】
端面が長方形状である上記ヒータチップ41を例えば、図4(II)に示すようにFPC20の縁部20eから離して配置することが考えられる。より具体的には、長さが長い端子部23lの手前側のスルーホール24f及び長さが短い端子部23sのスルーホール24sについて、それぞれの開口部を部分的に覆うと共に、長さが長い端子部23lの奥側のスルーホール24dの開口部を完全に覆うように、ヒータチップ41の端面41eを配置する。この場合、スルーホール24f,24sに被覆半田部を設けることができると共に、奥側のスルーホール24dの近傍を十分に加熱できることで、スルーホール24dに半田部31(実施形態1参照)を形成することができる。しかし、図4(II)に示すようにヒータチップ41の端面41eの一部がカバーレイ25の一部に接触するため、カバーレイ25の一部を加熱してしまい、上述のようにIPAガスの発生などの不具合が生じる。或いは、ヒータチップの端面を、端子部23lの手前側のスルーホール24f及び奥側のスルーホール24d、並びに端子部23sのスルーホール24sを一度に覆うことが可能な程度の面積を有する長方形状とすると、各スルーホール24f,24d,24sに半田部31(実施形態1参照)を設けられるものの、被覆半田部を設けることができない。その上、上述のようにカバーレイ25の一部にヒータチップの端面が接触することでカバーレイ25の一部が加熱されて、上述のような不具合が生じる。従って、接合強度、及びFPCなどの損傷の防止を考慮すると、実施形態1のように、端面40eがカバーレイ25に重ならない凹凸形状、特に端面40eがスルーホールの配置形状に対応した凹凸形状であるヒータチップ40を利用することが好ましい。
【0055】
なお、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、端子部の形状及び対の数、一対の端子部におけるスルーホールの数などを適宜変更することができる。また、本発明配線板の接合方法は、FPCとFPCとの接合にも利用することができると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明配線板の接合方法は、プリント配線板同士の接合、特にRPCとFPCとを接合する際に好適に利用することができる。本発明ヒータチップは、上記本発明接合方法の実施に好適に利用することができる。本発明配線板の接合構造は、RPCとFPCとを接合した部材の構成要素に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 接合構造
10 RPC(リジットプリント配線板) 11 電極部 12 半田
20 RPF(フレキシブルプリント配線板) 20e 縁部 21 ベースフィルム
22 配線パタン 23,23l,23s 端子部 23u 表側端子部 23d 裏側端子部
23f 表面 24,24s スルーホール 24f 手前側のスルーホール
24d 奥側のスルーホール 25 カバーレイ 26 めっき
30 被覆半田部 31 半田部 40,41 ヒータチップ 40e,41e 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジットプリント配線板の一部とフレキシブルプリント配線板の一部との間に半田を挟んで重ね合わせた部分をヒータチップで加熱して、溶融した前記半田により前記両配線板を接合する配線板の接合方法であって、
フレキシブルプリント配線板の表裏に設けられた一対の端子部を貫通するスルーホールが形成されたフレキシブルプリント配線板と、半田が塗布された電極部を有するリジットプリント配線板とを用意する準備工程と、
前記一方の端子部と前記電極部上の半田とを重ね合わせ、前記他方の端子部の表面における前記スルーホールの開口部を部分的に覆うように前記ヒータチップを押し付けて、前記両配線板を接合する接合工程とを具えることを特徴とする配線板の接合方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記一対の端子部に複数のスルーホールが形成されたフレキシブルプリント配線板を用意し、
前記接合工程では、前記複数のスルーホールのうち、前記フレキシブルプリント配線板の縁部から最も離れた位置に形成された奥側のスルーホールの開口部を部分的に覆うように前記ヒータチップを押し付けることを特徴とする請求項1に記載の配線板の接合方法。
【請求項3】
前記準備工程では、フレキシブルプリント配線板の縁部からの位置が異なるスルーホールが形成された複数対の端子部を具えるフレキシブルプリント配線板を用意し、
前記接合工程では、前記位置が異なる各スルーホールの開口部の一部を同時に覆うことが可能な凹凸形状の押圧面を有するヒータチップを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線板の接合方法。
【請求項4】
リジットプリント配線板と、このリジットプリント配線板に部分的に重ね合わされて接合されたフレキシブルプリント配線板とを具える配線板の接合構造であって、
前記リジットプリント配線板に形成された電極部と、
前記フレキシブルプリント配線板の表裏に設けられ、スルーホールにより接続された少なくとも一対の端子部と、
前記電極部と前記一方の端子部との間から前記スルーホールを介して前記他方の端子部の表面に達し、かつこの他方の端子部の表面における当該スルーホールの開口部の周縁を部分的に覆う被覆半田部とを具えることを特徴とする配線板の接合構造。
【請求項5】
前記一対の端子部は、複数のスルーホールを具え、
前記被覆半田部は、前記複数のスルーホールのうち、前記フレキシブルプリント配線板の縁部から最も離れた位置に形成された奥側のスルーホールに設けられていることを特徴とする請求項4に記載の配線板の接合構造。
【請求項6】
前記一対の端子部に形成されたスルーホールと、別の一対の端子部に形成されたスルーホールとは、前記フレキシブルプリント配線板の縁部からの位置が異なっており、
前記被覆半田部は、前記位置が異なる各スルーホールに設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の配線板の接合構造。
【請求項7】
プリント配線板に設けられた複数のスルーホールを、別のプリント配線板に塗布された半田に重ね合わせ、この重複部分を接合するときに、前記半田を加熱するために前記重複部分に押し付ける押圧面を有するヒータチップであって、
前記押圧面は、前記スルーホールを部分的に覆うことが可能な凹凸形状であることを特徴とするヒータチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−283259(P2010−283259A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137057(P2009−137057)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】