配線構造体およびその製造方法、ならびに原盤
【課題】優れたスループットを実現できる配線構造体を提供する。
【解決手段】配線構造体は、微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域R1と、平面状に形成された第2の領域R2とを有する基体1と、第1の領域R1、および第2の領域R2のうち第2の領域R2に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層4とを備える。
【解決手段】配線構造体は、微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域R1と、平面状に形成された第2の領域R2とを有する基体1と、第1の領域R1、および第2の領域R2のうち第2の領域R2に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造体およびその製造方法、ならびに原盤に関する。詳しくは、基体上に微細な配線が形成された配線構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやプラスチック等からなる絶縁性基材上に所定の回路パターンの導電層を形成する方法としては、フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法、スクリーン印刷による回路パターン形成方法、および熱転写による回路パターン形成方法などが知られている。
【0003】
フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に導電層を設け、この導電層上に感光性レジストフィルムを貼着して回路パターン状に露光した後、感光性レジストフィルムの未露光部をアルカリ液にて溶解除去し、次いで溶解除去によって露出した導電層をエッチング液にて除去し、その後感光性レジストフィルムの露光硬化部を第二エッチング液で除去して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。しかしながら、この方法は工程数が多く、また廃液が有害であるため、製造コストおよび廃液の処理コストがかさむといった問題がある。
【0004】
スクリーン印刷による回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に金属ペースト等をマスクを介してスキージで塗布し、その後、焼成して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。しかしながら、この方法はマスクが高価であること、マスクを精度良く位置合わせするのが煩雑であること、マスクの穴が目詰まりし易いこと等の問題がある。
【0005】
熱転写による回路パターン形成方法は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、熱転写シートに設けられたインク層中に導電性材料を含有させ、サーマルヘッド等の加熱デバイスにより絶縁性基材上にインク層を転写し、所定の回路パターンの導電層として転写形成する方法である。しかしながら、導電性材料を含有するインクを熱転写シートの基材上に塗布するために、または、該熱転写シート基材から絶縁性基材上にインク層を移行させるために、インク層に導電性材料と共にバインダーを配合する必要がある。ところが、ワックスや合成樹脂などの絶縁材料を多く含有しているバインダー成分は、抵抗値が高い。このため、転写形成された導電層の抵抗値が高くなり、所定の抵抗値となりにくい。また、抵抗値を調整するため、インク層を厚くしたり、インク層中の導電性材料の含有量を増やしたりしているが、回路パターンの解像性や印字感度を最適化するのが困難になる。さらに、量産性を考慮した場合、絶縁性基材上に連続して熱転写することができるパターンの大きさが、サーマルヘッド等の加熱デバイスの幅によって制約されるという不都合もある。
【0006】
そこで、フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法、スクリーン印刷による回路パターン形成方法、および熱転写による回路パターン形成方法などに代えて、優れたスループットを実現できる回路パターンの形成方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−1639号公報
【0008】
【特許文献2】特開平1−129492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、優れたスループットを実現できる配線構造体およびその製造方法、ならびに原盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有する基体と、
第1の領域、および第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備える配線構造体である。
【0011】
第2の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有する基体と、
第1の領域、および第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備え、
第1の構造体のアスペクト比は、第2の構造体のアスペクト比に比して大きい配線構造体である。
【0012】
第3の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
基体表面に金属層を成膜する工程と
金属層が形成された基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
金属層の形成工程では、
第1の領域および第2の領域の構造体の有無を利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成することにより、金属層からなる配線パターンを第2の領域に形成し、
メッキ処理の工程では、
第1の領域および第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法である。
【0013】
第4の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
基体表面に金属層を成膜する工程と
金属層が形成された基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
金属層の形成工程では、
第1の領域および第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成することにより、金属層からなる配線パターンを第2の領域に形成し、
メッキ処理の工程では、
第1の領域および第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法である。
【0014】
第5の発明は、
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有し、
第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤である。
【0015】
第6の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有し、
第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤である。
【0016】
第1および第3の発明では、第1の領域および第2の領域の構造体の有無を利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成する。この両領域の金属層の導電性の有無を利用して、第2の領域にメッキ処理を選択的に施し、第2の領域の金属層の導電率を高めることで、第2の領域上に導電性に優れた配線を選択的に形成することができる。
【0017】
第2および第4の発明では、第1の領域および第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成する。この両領域の金属層の導電性の有無を利用して、第2の領域にメッキ処理を選択的に施し、第2の領域の金属層の導電率を高めることで、第2の領域上に導電性に優れた配線を選択的に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を基体表面に形成するので、優れたスループットを実現できる。また、配線が形成された基体表面に対してメッキ処理を施すので、優れた導電性を有する配線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2Aは、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図2Bは、図2AのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図2Cは、図1AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図2Dは、図2AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図2Eは、図2AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図3】図3は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図4】図4Aは、図2Aに示した第1の領域のトラック延在方向の断面図である。図4Bは、図2Aに示した第1の領域のθ方向の断面図である。
【図5】図5は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図6】図6は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図7】図7は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図8】図8は、構造体の境界が不明瞭な場合の構造体底面の設定方法について説明するための図である。
【図9】図9A〜図9Dは、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図10】図10Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。図10Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。
【図11】図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。
【図12】図12Aは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図12Bは、図11Aに示した第1の領域の一部を拡大して示す平面図である。
【図13】図13は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図14】図14A〜図14Cは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図15】図15A〜図15Cは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図16】図16A〜図16Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図17】図17Aは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図17Bは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域のトラックT1、T3、・・・における断面図である。図17Cは、図17AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図17Dは、図17AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図17Eは、図17AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図18】図18は、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図19】図19Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図19Bは、図19Aに示した第1の領域を拡大して表す平面図である。
【図20】図20Aは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図20Bは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。
【図21】図21Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図21Bは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。
【図22】図22Aは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。図22Bは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の変形例を示す断面図である。
【図23】図23Aは、本発明の第5の実施形態に係るディスク状原盤の一構成例を示す平面図である。図23Bは、図23Aに示したディスク状原盤の一部を拡大して表す平面図である。
【図24】図24は、ディスク状原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図25】図25Aは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図25Bは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図26】図26Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図26Bは、図26Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、従来技術が有する上述の課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、構造体を基体表面の面内で変調させ、その上に金属層を形成すると、構造体変調に応じて金属層が導通部分と非導通部分とに分かれる現象を見出し、この現象を利用することで基体表面に配線を形成できることを見出すに至った。
【0021】
以下の本発の概要について具体的に説明する。
高アスペクトな構造体上に金属層を形成した場合と、平面上または低アスペクト構造体上に金属層を形成した場合とでは、金属層の表面積が異なる。このため、高アスペクトな構造体上に金属層を形成した場合には、金属層の厚さよっては構造体上の金属層は導通をとることが困難となる。これは金属層の成長が表面積に依存して島状に成長する、または実質的に導電性を示さない程の厚さに金属層が成長するためである。これに対して、平面上または低アスペクト構造体上に金属層を形成した場合、比較的容易に連続した金属層が成長する、または導電性を示す程の厚さでかつ連続的に金属層が成長するため、電気的な導通をとりやすい。
【0022】
本発明では、上記現象を利用し、面内で構造体形状を変調させ、その上に金属層を形成することで配線を形成する。具体的には、非導通部分となる第1の領域には高アスペクト構造体の連続体を形成するのに対して、導通部分となる第2の領域には平面または低アスペクト構造体の集合体を形成する。そして、それらの両領域上に金属層を形成すると、表面積の違いにより、膜の成長が面内で選択的に変化する。これにより、第1の領域および第2の領域のうち、第2の領域に選択的に配線を形成できる。
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(構造体の有無を利用して基体表面に配線を形成した例:図1A参照)
2.第2の実施形態(四方格子状に構造体を配置した例:図17A参照)
3.第3の実施形態(アスペクト比の違いを利用して基体表面に配線を形成した例:図20A参照)
4.第4の実施形態(配線を基体の両面に形成した例:図22A、図22B参照)
5.第5の実施形態(ディスク状原盤の作製例:図23A、図23B参照)
6.第6の実施形態(構造体を凹状とした例:図25A、図25B参照)
7.第7の実施形態(ICカードに対する適用例:図26参照)
【0024】
<1.第1の実施形態>
[回路構造体の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。以下では、配線構造体1の回路形成面の面内で互いに直交する2方向をX軸方向、およびY軸方向とし、その回路形成面に垂直な方向をZ軸方向と称する。
【0025】
第1の実施形態に係る配線構造体1は、いわゆる導電性素子であり、第1の領域R1と第2の領域R2とを有する基体2と、第1の領域R1および第2の領域R2のうち、第2の領域R2に配線パターンをなすように連続的に形成された金属層4とを備える。この配線構造体1は、例えば、プリント基板などである。プリント基板としては、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板などが挙げられる。
【0026】
第1の領域R1には、微細ピッチで構造体3が多数形成され、金属層4が不連続的に島状などに形成されている。また、第1の領域R1に形成される導電層4の厚さが、導通を示さない程に第2の領域R2に形成される導電層4の厚さよりも薄く形成されるようにしてもよい。これに対して、第2の領域R2には、構造体3が形成されず平坦面とされ、金属層4が連続的に形成されている。したがって、第1の領域R1は、隣接する第2の領域R2に形成された金属層4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4は、第2の領域R2の延在方向に向かって導電性を有し、配線として機能する。なお、図1Aでは、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4、すなわち配線が、直線状の形状を有している例が示されているが、配線の形状はこれに限定されるものではなく、回路設計などに応じて所望の形状とすることが可能である。また、第1の領域R1に不連続的にまたは薄く形成された金属層4は、配線としては機能しないため、図示を省略している。
【0027】
以下、配線構造体1を構成する基体2、構造体3、および金属層4について順次説明する。
【0028】
(基体)
基体2は、例えば、透明性または不透明性を有する基体である。基体2の材料としては、例えば、プラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0029】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0030】
基体2としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体2の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0031】
基体2がプラスチックフィルムである場合には、基体2は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体2の厚さは、例えば25μm〜500μm程度である。
【0032】
基体2の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、フィルムにはシートが含まれるものと定義する。
【0033】
(構造体)
図2Aは、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図2Bは、図2AのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図2Cは、図1AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図2Dは、図2AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図2Eは、図2AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図3、図5〜図7は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。図4Aは、図2Aに示した第1の領域のトラック延在方向の断面図である。図4Bは、図2Aに示した第1の領域のθ方向の断面図である。
【0034】
基体2の表面には、凸部である構造体3が多数配列されている。この構造体3は、例えば所定の配置ピッチで周期的に、または所定値以下の配置ピッチで非周期的(ランダム)に2次元配置されている。ここで、配置ピッチとは、平均配置ピッチPを意味する。
【0035】
配線構造体1の各構造体3は、基体2の表面において複数列のトラックT1、T2、T3、・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすような配置形態を有する。本発明において、トラックとは、構造体3が列をなして直線状または曲線状に連なった部分のことをいう。また、列方向とは、基体2の成形面において、トラックの延在方向(例えばX軸方向)に直交する方向のことをいう。
【0036】
構造体3は、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体3の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体3が配置されている。その結果、図2Aに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている。本実施形態において、六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンのことをいう。また、準六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンとは異なり、トラックの延在方向(例えばX軸方向)などに引き伸ばされ、または収縮されて歪んだ六方格子パターンのことをいう。
【0037】
構造体3が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図2Aに示すように、同一トラック(例えばT1)内における構造体3の配置ピッチP1(a1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体3の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体3を配置することで、構造体3の充填密度の更なる向上を図れるようになる。なお、構造体3の配列は規則的な配列に限定されるものではなく、ランダムな配列としてもよい。
【0038】
構造体3が、成形の容易さの観点から、軸対象な錐体形状、またはトラック方向などに延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。隣接する構造体同士が接合されている場合には、構造体3が、隣接する構造体3に接合されている下部を除いて軸対称な錐体形状、またはトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。錐体形状としては、例えば、円錐形状、円錐台形状、楕円錐形状、楕円錐台形状などを挙げることができる。ここで、錐体形状とは、上述のように、円錐形状および円錐台形状以外にも、楕円錐形状、楕円錐台形状を含む概念である。また、円錐台形状とは、円錐形状の頂部を切り落とした形状をいい、楕円錐台形状とは、楕円錐の頂部を切り落とした形状のことをいう。
【0039】
構造体3は、トラックの延在方向の幅がこの延在方向とは直交する列方向の幅よりも大きい底面を有する錐体形状であることが好ましい。具体的には、構造体3は、図3および図5に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が曲面である楕円錐形状であることが好ましい。また、図6に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が平坦である楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすると、列方向の充填率を向上させることができるからである。
【0040】
構造体3の形状としては、例えば、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状(図5参照)、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状(図3参照)、頂部が平坦な錐体形状(図6参照)が挙げられる。構造体3が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。図3などでは、各構造体3は、それぞれ同一の形状を有しているが、構造体3の形状はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の形状の構造体3が形成されていてもよい。また、構造体3は、基体2と一体成形されていてもよい。
【0041】
また、図3、図5〜図7に示すように、構造体3の周囲の一部または全部に突出部6を設けるようにしてもよい。具体的には例えば、突出部6は、図3、図5、および図6に示すように、隣り合う構造体3の間に設けられる。また、細長い突出部6が、図7に示すように、構造体3の周囲の全体またはその一部に設けられるようにしてもよい。この細長い突出部6は、例えば、構造体3の頂部から下部の方向に向かって延びている。突出部6の形状としては、断面三角形状および断面四角形状などを挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、成形の容易さなどを考慮して選択することができる。
【0042】
トラックの延在方向における構造体3の高さH1は、列方向における構造体3の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体3を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体3の充填率が低下するためである。
【0043】
構造体3のアスペクト比(H/P)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらに好ましくは0.4以上1.8以下である。ここで、高さHは、上述の高さH1および高さH2のうちの大きい方の高さである。例えば、上述のようにH1<H2の関係を満たす場合には、高さHはH2となる。0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的に絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり電気的に絶縁がとれなくなる傾向がある。0.3を超えると、導電層4が不連続膜となり電気的に絶縁がとれる、または導電層4が薄くなり電気的に絶縁がとれる傾向がある。1.8を超えると、後述する転写工程において構造体3の転写性が低下する傾向がある。更に、各構造体3のアスペクト比(H/P)は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。
【0044】
なお、アスペクト比は、以下の式(1)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(1)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(2)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(2)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=60°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0045】
なお、構造体3のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。ここで、高さ分布とは、2種以上の高さ(深さ)を有する構造体3が基体2の表面に設けられていることを意味する。すなわち、基準となる高さを有する構造体3と、この構造体3とは異なる高さを有する構造体3とが基体2の表面に設けられていることを意味する。基準とは異なる高さを有する構造体3は、例えば基体2の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられている。その周期性の方向としては、例えばトラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
【0046】
構造体3の周縁部に裾部3aを設けることが好ましい。配線構造体1の製造工程において構造体3を金型などから容易に剥離することが可能になるからである。ここで、裾部3aとは、構造体3の底部の周縁部に設けられた突出部を意味する。この裾部3aは、上記剥離特性の観点からすると、構造体3の頂部から下部の方向に向かって、なだらかに高さが低下する曲面を有することが好ましい。なお、裾部3aは、構造体3の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体3の周縁部の全体に設けることが好ましい。また、構造体3が凹部である場合には、裾部は、構造体3である凹部の開口周縁に設けられた曲面となる。
【0047】
六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている場合には、構造体3の高さHは、構造体3の列方向の高さとする。構造体3のトラック延在方向(X方向)の高さは、列方向(Y方向)の高さよりも小さく、また、構造体3のトラック延在方向以外の部分における高さは列方向の高さとほぼ同一であるため、サブ波長構造体の高さを列方向の高さで代表する。但し、構造体3が凹部である場合、上記式(1)における構造体の高さHは、構造体の深さHとする。
【0048】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、好ましくは1.00≦P1/P2≦1.2、または1.00<P1/P2≦1.2、より好ましくは1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たしている。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、電気的絶縁特性を向上することができる。
【0049】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、例えば、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、優れた電気的絶縁特性を向上することができる。充填率を向上させるためには、隣接する構造体3の下部同士を接合する、または、構造体底面の楕円率を調整などして構造体3に歪みを付与することが好ましい。
【0050】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図1B参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体3の底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(3)より充填率を求める。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(hex.)=2S
【0051】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0052】
構造体3が重なっているときや、構造体3の間に突出部6などの副構造体があるときの充填率は、構造体3の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法で充填率を求めることができる。
【0053】
図8は、構造体3の境界が不明瞭な場合の充填率の算出方法について説明するための図である。構造体3の境界が不明瞭な場合には、断面SEM観察により、図8に示すように、構造体3の高さhの5%(=(d/h)×100)に相当する部分を閾値とし、その高さdで構造体3の径を換算し充填率を求めるようにする。構造体3の底面が楕円である場合には、長軸および短軸で同様の処理を行う。
【0054】
図9は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。図9A〜図9Dに示す楕円の楕円率はそれぞれ、100%、110%、120%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が準六方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、100%<e<150%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0055】
ここで、楕円率eは、構造体底面のトラック方向(X方向)の径をa、それとは直交する列方向(Y方向)の径をbとしたときに、(a/b)×100で定義される。なお、構造体3の径a、bは以下のようにして求めた値である。配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影し、撮影したSEM写真から無作為に構造体3を10個抽出する。次に、抽出した構造体3それぞれの底面の径a、bを測定する。そして、測定値a、bそれぞれを単純に平均(算術平均)して径a、bの平均値を求め、これを構造体3の径a、bとする。
【0056】
図9Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Aおよび図9Bに示すように、構造体3が、その下部同士を重ね合うようにして接合されていていることが好ましい。具体的には、構造体3の下部が、隣接関係にある構造体3の一部または全部の下部と接合されていることが好ましい。より具体的には、トラック方向において、θ方向において、またはそれら両方向において、構造体3の下部同士を接合することが好ましい。図9A、図9Bでは、隣接関係にある構造体3の全部の下部を接合する例が示されている。このように構造体3を接合することで、構造体3の充填率を向上することができる。これにより、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0057】
図9Bに示すように、同一トラック内において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第1の接合部aが形成されるとともに、隣接するトラック間において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第2の接合部2が形成される。第1の接合部aと第2の接合部bとの交点に交点部cが形成される。交点部cの位置は、例えば、第1の接合部a、および第2の接合部bの位置よりも低くなっている。楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の下部同士を接合した場合には、例えば、接合部a、接合部b、交点部cの順序でそれらの高さが低くなる。
【0058】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上できるからである。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0059】
(金属層)
金属層4を構成する材料としては、例えば、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、およびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。金属層4は、例えば、単層構造、または2層以上の積層構造を有している。積層構造を有する金属層4としては、例えば、スパッタリングなどにより形成された第1の金属層と、メッキにより形成された第2の金属層とを備えるものが挙げられる。
【0060】
金属層4の膜厚は、25nm以下の範囲内であることが好ましい。25nmを超えると、絶縁部分を狙う構造体アスペクトを高くしても電気絶縁性を確保できなくなる傾向がある。
【0061】
本明細書において、第2の領域R2にける金属層4の膜厚は、具体的には、以下のようにして求められたものである。まず、配線構造体1を切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、第2の領域R2にける金属層4の膜厚を測定する。
【0062】
[ロール原盤の構成]
図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。ロール原盤11は、上述した基体表面に構造体3を成形するための原盤である。ロール原盤11は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面には多数の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に設定されている。図11Aおよび図11Bでは、第1の領域R1および第2の領域R2が周方向に向かって、リング状に形成されている場合が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこの例に限定されるものではなく、所望とする配線の形状、すなわち第2の領域に形成する金属層4の形状に応じて適宜選択される。ロール原盤11の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0063】
図12Aは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図12Bは、図11Aに示した第1の領域の一部を拡大して示す平面図である。ロール原盤11の第1の領域R1には、例えば、凹部である構造体12が微細ピッチで多数配置され、第2の領域R2には、例えば、凹部である構造体12が形成されず平面状とされている。第1の領域R1の多数の構造体3は、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように配置されている。このような六方格子パターンまたは準六方格子パターンは、後述するロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、角速度一定(CAV:Constant Angular Velocity)で適切な送りピッチでパターニングすることにより記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンを形成することが可能である。
【0064】
[露光装置の構成]
図13は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。以下、図13を参照して、ロール原盤露光装置の構成について説明する。なお、このロール原盤露光装置は、例えば、光学ディスク記録装置をベースとして構成することが可能である。
【0065】
レーザー光源21は、記録媒体としての原盤11の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光14を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光14は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光14は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0066】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光14の位相変調を行う。
【0067】
変調光学系25において、レーザー光14は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光14は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光14は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0068】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤11上のレジスト層へ照射される。原盤11は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、原盤11を回転させるとともに、レーザー光14を原盤11の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光14を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0069】
露光装置は、図2Aに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0070】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。例えば、円周方向の周期を315nm、円周方向に対して約60度方向(約−60度方向)の周期を300nmにするには、送りピッチを251nmにすればよい(ピタゴラスの法則)。極性反転フォマッター信号の周波数はロールの回転数(例えば1800rpm、900rpm、450rpm、225rpm)により変化させる。例えば、ロールの回転数1800rpm、900rpm、450rpm、225rpmそれぞれに対向する極性反転フォマッター信号の周波数は、37.70MHz、18.85MHz、9.34MHz、4、71MHzとなる。所望の記録領域に空間周波数(円周315nm周期、円周方向約60度方向(約−60度方向)300nm周期)が一様な準六方格子パターンは、遠紫外線レーザー光を移動光学テーブル32上のビームエキスパンダ(BEX)33により5倍のビーム径に拡大し、開口数(NA)0.9の対物レンズ34を介して原盤11上のレジスト層に照射し、微細な潜像を形成することにより得られる。
【0071】
[配線構造体の製造方法]
以下、図13〜図16を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体1の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法において転写工程以降の一部または全部のプロセスは、生産性を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行うことが好ましい。
【0072】
(レジスト成膜工程)
まず、図14Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤11を準備する。このロール原盤11は、例えばガラス原盤である。次に、図14Bに示すように、ロール原盤11の表面にレジスト層13を形成する。レジスト層13の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、遷移金属を1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0073】
(露光工程)
次に、図14Cに示すように、上述したロール原盤露光装置を用いて、ロール原盤11を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)15をレジスト層13に照射する。このとき、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤11の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光14を照射する。この際、配線パターン間の絶縁領域に対応する第1の領域R1のみに潜像を形成し露光部とするのに対して、配線パターンに対応する第2の領域R2は露光せず、非露光部とする。レーザー光14の軌跡に応じた潜像15は、例えば、可視光の波長以下のピッチで形成される。
【0074】
潜像15は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像15は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0075】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤11を回転させながら、レジスト層13上に現像液を滴下して、図15Aに示すように、レジスト層13を現像処理する。図示するように、レジスト層13をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光14で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層13に形成される。これにより、第1の領域R1のレジスト層13には、六方格子パターン、または準六方格子パターンなどの開口部が形成されるのに対して、第2の領域R2のレジスト層13には、開口部が形成されず、第2の領域R2全体はレジスト層13に覆われた状態が維持される。すなわち、第1の領域R1のみに開口パターンを有するマスクがロール原盤表面に形成される。
【0076】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤11の上に形成されたレジスト層13のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤11の表面をエッチング処理する。これにより、ロール原盤表面のうち第1の領域R1では、開口部を介してエッチングが進行し、図15Bに示すように、第1の領域の領域R1には、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状などの構造体(凹部)12が形成される。一方、ロール原盤表面のうち第2の領域R2では、この領域全体がレジスト層13に覆われているため、エッチングは施されず、平面状のロール原盤表面が維持される。エッチング方法としては、例えばドライエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理を交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体12のパターンを形成することができる。また、レジスト層13の3倍以上の深さ(選択比3以上)のガラスマスターを作製でき、構造体3の高アスペクト比化を図ることができる。
以上により、目的とするロール原盤11が得られる。
【0077】
(転写工程)
次に、例えば、図15Cに示すように、ロール原盤11と転写材料15を塗布したフィルムなどの基体2を密着させ、紫外線などを照射して転写材料15を硬化させた後、硬化した転写材料15と一体となった基体2を剥離する。これにより、図16Aに示すように、基体表面の第1の領域R1には、凸部である構造体3が多数形成されるのに対して、基体表面の第2の領域R2には、構造体3は転写されず、平面状とされる。
【0078】
転写材料は、例えば、紫外線硬化材料と、開始剤とからなり、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいる。
【0079】
紫外線硬化材料は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0080】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0081】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0082】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0083】
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0084】
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。基体2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0085】
なお、基体2の成形方法は特に限定されず、例えば射出成形法、押し出し成形法、キャスト成形法などを用いることができる。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0086】
(金属層の成膜工程)
次に、図16Bに示すように、構造体3が形成された基体2の凹凸面上に、金属層4を成膜する。この際、第1の領域R1では、金属層4は島状などに不連続的に形成されるのに対して、第2の領域R2では、金属層4は連続的に形成される。したがって、第2の領域R2に形成された金属層4は配線として機能するのに対して、第1の領域R1は上記配線間の絶縁領域として機能する。金属層5の成膜方法としては、例えば化学気相成長法、または物理気相成長法を用いることができる。より具体的には、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。次に、必要に応じて、金属層4に対してアニール処理を施す。
【0087】
次に、必要に応じて、金属層5が形成された基体3をめっき液に浸し、この基体3の第2の領域2に形成された配線を陰極として、メッキ処理を施す。これにより、この基体3の第2の領域2に形成された配線上にメッキ層が形成される。
以上により、目的とする配線構造体1が得られる。
以下に、メッキ処理の条件例を示す。
【0088】
表1は、シアン化銅めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表1】
【0089】
表2は、銀めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表2】
【0090】
表3は、シアン化金めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表3】
【0091】
表4は、酸性金めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表4】
【0092】
上述したように、第1の実施形態によれば、ナノインプリント法と薄膜作製法との組み合わせだけで、配線を基体表面に形成できるため、スループットを容易に向上することができる。また、配線の形成にナノインプリント法を採用しているため、回路などの配線の高密度化、および高精細化が可能となる。また、転写工程(インプリント工程)では、レジスト材料、およびエッチング材料を使用しないため、原材料費を低く抑え、デバイスの低廉化を実現できる。また、第2の領域R2に形成された配線に対して、メッキ処理を施した場合には、配線の抵抗値を低減することができる。
【0093】
従来の配線形成方法(例えばフレキシブル基板(FPC)、パッシブマトリックスタイプのディスプレイの配線などの形成方法)では、ウエットエッチングを採用しているため、材料の選択性、およびプロセスの選択性が限られてくる。これに対して、第1の実施形態に係る配線の形成方法では、基本的にエッチングを使わないで配線が形成できるため、種々の材料を幅広く使える。
【0094】
また、面内で構造体を変調させたロール原盤(面内構造体変調原盤)を作製し、このロール原盤を用いてナノインプリント法で原盤の表面形状を基体表面に転写する。この形状転写の工程はロール・ツー・ロールで行うことが好ましい。その後、スパッタリングや蒸着法など薄膜作製法で金属層4を基体2の形状転写面に形成する。これにより、基体表面に回路などの配線を形成することができる。すなわち、高スループット、低廉な回路デバイスなどを提供できる。また、構造体3はナノレベルで変調できるため高密度回路なども実現が可能となる。
【0095】
<2.第2の実施形態>
[回路構造体の構成]
図17Aは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図17Bは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域のトラックT1、T3、・・・における断面図である。図17Cは、図17AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図17Dは、図17AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図17Eは、図17AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【0096】
第2の実施形態に係る配線構造体1は、第1の領域R1に形成された多数の構造体3が、隣接する3列のトラック間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。本実施形態において、準四方格子パターンとは、正四方格子パターンと異なり、トラックの延在方向(例えばX方向)などに引き伸ばされ、または収縮されて歪んだ四方格子パターンを意味する。
【0097】
構造体3のアスペクト比(H/P)は、電気的絶縁を優先するエリアの場合、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらにより好ましくは0.4以上1.8以下である。ここで、高さHは、後述する高さH1および高さH2のうちの大きい方の高さである。例えば、後述するようにH1>H2の関係を満たす場合には、高さHはH1となる。0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり、電気的絶縁がとれなくなる傾向がある。1.8を超えると、構造体3の転写性が低下する傾向がある。更に、各構造体3のアスペクト比(H/P)は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。
【0098】
なお、構造体のアスペクト比は、以下の式(4)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(4)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(5)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(5)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=45°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0099】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。。
【0100】
トラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の高さH2は、トラックの延在方向における構造体3の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。四方格子パターン、または準四方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている場合には、構造体3の高さHは、構造体3の延在方向(トラック方向)の高さとする。
【0101】
図18は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。楕円31、32、33の楕円率はそれぞれ、100%、163.3%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が四方格子または準四方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、150%≦e≦180%であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた電気的絶縁特性を得ることができるからである。
【0102】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、例えば65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0103】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図17A参照)。また、その単位格子Ucに含まれる4つの構造体3のいずれかの底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(6)より充填率を求める。
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100 ・・・(6)
単位格子面積:S(unit)=2×((P1×Tp)×(1/2))=P1×Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(tetra)=S
【0104】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0105】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、例えば、64%以上、好ましくは69%以上、より好ましくは73%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上できる。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0106】
[ロール原盤の構成]
図19Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図19Bは、図19Aに示した第1の領域を拡大して表す平面図である。このロール原盤は、第1の領域R1の多数の構造体3が、隣接する3列のトラック(例えばT1〜T3)間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成するように配置されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0107】
このような四方格子パターン、または準四方格子パターンは、ロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、角速度一定(CAV)で適切な送りピッチでパターニングすることにより記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンをレーザー光の照射によりロール原盤11上のレジスト層に形成することが可能である。
【0108】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
<3.第3の実施形態>
[配線構造体の構成]
図20Aは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図20Bは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。第3の実施形態に係る配線構造体1は、第1の領域R1に形成された第1の構造体31と、第2の領域R2に形成された第2の構造体32とのアスペクト比の違いを利用して、基体表面に配線を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0110】
第1の領域R1には、例えば微細ピッチで第1の構造体31が多数形成され、金属層4が不連続的に島状などに形成されている。また、第1の領域R1に形成される導電層4の厚さが、導通を示さない程に第2の領域R2に形成される導電層4の厚さよりも薄く形成されるようにしてもよい。これに対して、第2の領域R2には、例えば微細ピッチで第2の構造体32が多数形成され、金属層4が連続的に形成されている。したがって、第1の領域R1は、隣接する第2の領域R2に形成された金属層4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。一方、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4は、第2の領域R2の延在方向に向かって導電性を有する配線として機能する。
【0111】
第1の構造体31のアスペクト比(H/P)は、第2の構造体32のアスペクト比に比して大きい。第1の構造体31のアスペクト比(H/P)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらに好ましくは0.4以上1.8以下である。第1の構造体31のアスペクト比が0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり、電気的絶縁がとれなくなる傾向がある。第2の構造体32のアスペクト比(H/P)は、0.3未満であることが好ましい。第2の構造体32のアスペクト比が0.3以上であると、導電層4が不連続膜となり電気的導通がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり電気的導通がとれなくなる傾向がある。
【0112】
本明細書において、第2の領域R2における金属層4の膜厚は、構造体3の頂部における金属層4の膜厚である。具体的には、金属層4の膜厚は以下のようにして求められたものである。まず、配線構造体1を構造体3の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体3における頂部における金属層4の膜厚を測定する。
【0113】
第2の領域R2の第2の構造体32は、例えば、第1の領域R1の第1の構造体121と同様に、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように配置されている。なお、第1の領域R1の第1の構造体31と第2の領域R2の第2の構造体32の配置パターンは同一である必要はなく、両領域の第1の構造体31および第2の構造体32が異なる配置パターンをとるようにしてもよい。
【0114】
[ロール原盤の構成]
図21Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図21Bは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。第3の実施形態に係るロール原盤11は、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ、凹状の構造体121および構造体122を備える点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0115】
ロール原盤11の第1の領域R1および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された凹状の構造体121は、基体2の第1の領域R1に形成された凸状の構造体31を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された凹状の構造体122は、基体2の第2の領域R2に形成された凸状の構造体32を形成するためのものである。第1の構造体121のアスペクト比は、第2の構造体122のアスペクト比に比して大きい。
【0116】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
<4.第4の実施形態>
図22Aは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。第4の実施形態に係る配線構造体1は、基体2の両主面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、両領域のうち第2の領域R2にのみ連続的に金属層4を形成することで、基体両面に配線を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。また、図22Bに示すように、基体2に第2の領域R2にスルーホール(貫通孔)を形成し、このスルーホールに導体インクなどの導電材料を埋め込み、基体2の両面に形成された回路などの配線を電気的に接続するようにしてもよい。
【0118】
第4の実施形態では、基体2の両面に配線を形成しているので、第1の実施形態よりも多くの回路などを配線構造体1に搭載することが可能となる。
【0119】
<5.第5の実施形態>
[ディスク状原盤の構成]
図23Aは、本発明の第5の実施形態に係るディスク状原盤の一構成例を示す平面図である。図23Bは、図23Aに示したディスク状原盤の一部を拡大して表す平面図である。
第5の実施形態は、ディスク状原盤41の表面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、第1の領域R1に凹状の構造体12を多数形成している点において第1の実施形態とは異なっている。なお、図23Aおよび図23Bでは、円環状を有する第1の領域R1および第2の領域R2を交互に形成する例が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこれに限定されるものではなく、所望とする配線の形状に応じて種々の形状に設定可能である。
【0120】
[露光装置の構成]
まず、図24を参照して、上述した構成を有するディスク状原盤41を作製するための露光装置について説明する。
【0121】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、ミラー38および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、ミラー38および対物レンズ34を介して、ディスク状原盤41上のレジスト層へ照射される。原盤41は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル(図示を省略する。)の上に載置されている。そして、原盤41を回転させるとともに、レーザー光14を原盤41の回転半径方向に移動させながら、原盤41上のレジスト層へレーザー光を照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0122】
図24に示した露光装置においては、レジスト層に対して六方格子または準六方格子の2次元パターンからなる潜像を形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0123】
制御機構37は、潜像の2次元パターンが空間的にリンクするように、1トラック毎に、AOM27によるレーザー光14の強度変調と、スピンドルモータ35の駆動回転速度と、移動光学テーブル32の移動速度とをそれぞれ同期させる。原盤41は、角速度一定(CAV)で回転制御される。そして、スピンドルモータ35による原盤41の適切な回転数と、AOM27によるレーザー強度の適切な周波数変調と、移動光学テーブル32によるレーザー光14の適切な送りピッチとでパターニングを行う。これにより、レジスト層に対して六方格子パターン、または準六方格子パターンの潜像が形成される。
【0124】
更に、極性反転部の制御信号を、空間周波数(潜像のパターン密度)が一様になるように徐々に変化させる。より具体的には、レジスト層に対するレーザー光14の照射周期を1トラック毎に変化させながら露光を行い、各トラックTにおいて配置ピッチP1が所定値(例えば330nm、315nm、または300nm)となるように制御機構37においてレーザー光14の周波数変調を行う。即ち、トラック位置がディスク状原盤41の中心から遠ざかるに従い、レーザー光の照射周期が短くなるように変調制御する。これにより、基板全面において空間周波数が一様なナノパターンを形成することが可能となる。
【0125】
[配線構造体の製造方法]
上述した構成を有する露光装置を用いて、ディスク状原盤41上に形成されたレジスト層を露光する以外は、第1の実施形態と同様にして配線構造体1を作製することができる。
【0126】
この第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
<6.第6の実施形態>
図25Aは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図25Bは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。第6の実施形態に係る回路構造体1は、凹部である構造体3が基体表面の第1の領域R1に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。この構造体3の形状は、第1の実施形態における構造体3の凸形状を反転して凹形状としたものである。なお、上述のように構造体3を凹部とした場合、凹部である構造体3の開口部(凹部の入り口部分)を下部、基体2の深さ方向の最下部(凹部の最も深い部分)を頂部と定義する。すなわち、非実体的な空間である構造体3により頂部、および下部を定義する。また、第6の実施形態では、構造体3が凹部であるため、式(1)などにおける構造体3の高さHは、構造体3の深さHとなる。
この第6の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0128】
この第6の実施形態では、第1の実施形態における凸形状の構造体3の形状を反転して凹形状としているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<7.第7の実施形態>
図26Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図26Bは、図26Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。このICカードは、いわゆる非接触型ICカードであり、基材101と、アンテナコイル102と、ICチップ103とを備える。アンテナコイル102の両端がICチップ103に対して接続されている。また、基材101の両面には外装材(図示省略)が設けられている。
【0130】
基材101の形状としては、フィルム状、シート状、基板状を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、ICカード1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。基材102の材料としては、耐久性や利便性などの観点から、フレキシブル性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド(PI)、ポリエステルを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0131】
基体101の一主面の周縁部には、例えば、第1の領域R1と第1の領域R2とが交互に螺旋状に形成されている。第1の領域R1には、例えば微細ピッチで構造体が多数形成され、金属層が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面状とされ、金属層が連続的に形成されている。したがって、基体101の一主面の周縁部には、連続的に形成された金属層からなるアンテナコイル102が第2の領域R2の形状に倣って形成されている。なお、上述の第3の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比の異なる構造体を形成するようにしてもよい。
【0132】
外装材は、ICカードの表面および裏面を構成するものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、PEG(ポリエチレングリコール、配向PETなどの高分子材料を主成分とするが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0133】
アンテナコイル102は、基材101上に複数回巻回されて形成されたループコイル形状の電磁誘導コイルであり、その両端はICチップ103に接続されている。アンテナコイル103は、リーダ/ライタから発せられる交流磁界を受信して交流電圧を誘起し、その交流電圧をICチップ103に供給する。
【0134】
ICチップ103は、アンテナコイル102から供給される電力により駆動し、ICカード1内の各部を制御する。例えば、ICチップ103は、アンテナコイル102を介してリーダ/ライタと通信を行う。具体的には、リーダ/ライタとの相互認証やデータのやり取りなどを行う。
【0135】
第7の実施形態では、構造体の有無を利用してICカードのアンテナコイル102を作製することができる。したがって、エッチングなどを用いずにアンテナコイル102を作製することができるので、ICカードの生産性を向上することができる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0137】
(構造体の高さ、配置ピッチおよびアスペクト比)
以下の試験例および実施例において、構造体の高さH、配置ピッチP、およびアスペクト比(H/P)は以下のようにして求めた。
まず、フィルムの表面形状を、金属層を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により撮影した。そして、撮影したAFM像、およびその断面プロファイルから、構造体の配置ピッチP1、配置ピッチP2、高さHを求めた。次に、これらの配置ピッチP1、配置ピッチP2、および高さHを用いて、アスペクト比(=高さH/平均配置ピッチP)を求めた。ここで、平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3である。
【0138】
(金属層の膜厚)
以下の試験例および実施例において、平滑面上の金属層の膜厚、および凹凸面上の金属層の膜厚は以下のようにして求めた。
【0139】
(平滑面上の金属層の膜厚)
まず、金属層を成膜したフィルムを切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、金属層の膜厚を測定した。
【0140】
(凹凸面上の金属層の膜厚)
まず、金属層を成膜したフィルムを構造体の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体における頂部における金属層の膜厚を測定した。
【0141】
(試験例1−1)
平滑な表面を有するPMMA(ポリメチルメタアクリレート)フィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。Ag層の膜厚は10nmとした。
【0142】
(試験例1−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例1−1と同様にして、サンプルを得た。
【0143】
(試験例1−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例1−1と同様にして、サンプルを得た。
【0144】
(試験例2−1)
まず、ディスク状原盤を準備し、この原盤の表面に無機レジスト層を形成した。次に、記録媒体としての原盤を、図24に示した原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光し、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像をレジスト層全体に形成した。レーザ光の波長は266nm、レーザパワーは0.50mW/mとした。
【0145】
次に、原盤を現像機に搬送し、原盤上のレジスト層に対して現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、現像機のターンテーブル上に未現像の原盤を載置し、原盤を回転させつつ原盤の表面に現像液を滴下して、その表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層の全体に、六方格子パターンの開口部が形成された。
【0146】
次に、原盤をエッチング装置に搬送し、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、原盤表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の部分ではレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が原盤表面に形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するディスク状原盤が得られた。なお、この原盤では、列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0147】
次に、作製したディスク状原盤上に紫外線硬化樹脂を塗布した後、PMMAフィルムを紫外線硬化樹脂上に密着させた。次に、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射し硬化させた後、PMMAフィルムと一体となった紫外線硬化樹脂を原盤から剥離した。これにより、六方格子状に構造体が多数配列されたPMMAフィルムが得られた。このPMMAフィルムの構造体の配置ピッチPは270nm、高さHは160nm、アスペクト比は0.59であった。また、構造体の形状は、頂部に曲率を有する楕円錐形状であった。
【0148】
次に、PMMAフィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。Ag層の膜厚は10nmとした。
以上により、目的とするサンプルを得た。
【0149】
(試験例2−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例2−1と同様にして、サンプルを得た。
【0150】
(試験例2−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例2−1と同様にして、サンプルを得た。
【0151】
(試験例3−1)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の配置ピッチPを240nm、高さHを180nm、アスペクト比を0.75とする以外は、試験例1−1と同様にして
サンプルを得た。
【0152】
(試験例3−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例3−1と同様にして、サンプルを得た。
【0153】
(試験例3−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例3−1と同様にして、サンプルを得た。
【0154】
(試験例4−1)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の配置ピッチPを230nm、高さHを280nm、アスペクト比を1.22とする以外は、試験例1−1と同様にして
サンプルを得た。
【0155】
(試験例4−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例4−1と同様にして、サンプルを得た。
【0156】
(試験例4−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例4−1と同様にして、サンプルを得た。
【0157】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして得られた試験例1−1〜4−3のサンプルを表面抵抗を以下のようにして評価した。サンプルを5cm角に切り出し4端子法にて表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
表5から以下のことがわかる。
アスペクト比を大きくするに従って、表面抵抗が増加する傾向がある。Ag層の膜厚を厚くするに従って、表面抵抗が低下する傾向がある。
平滑面にAg層を成膜した場合には、膜厚10nmからAg層がフィルム面内方向で導通する。これに対して、構造体からなる凹凸面にAg層を成膜した場合には、Ag層の膜厚が10nm以上20nm以下であり、かつ、アスペクト比が0.75以上1.22以下であると、Ag層はフィルム面内方向で導通しない。すなわち、フィルム表面の構造体の有無を利用して、フィルム表面に配線を形成することができる。
Ag層の膜厚が20nmである場合には、アスペクト比が0.59であると、Ag層はフィルム面内方向で導通するのに対して、アスペクト比が0.75、1.22であると、Ag層はフィルム面内方向で導通しない。すなわち、フィルム表面の構造体のアスペクト比の違いを利用して、フィルム表面に配線を形成することができる。
なお、上記試験例では、Agを金属層の材料とする場合を示したが、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、Cuなどを金属層の材料とした場合にも、上記と同様の傾向が得られると推測される。
【0160】
(実施例1)
まず、ディスク状原盤を準備し、この原盤の表面に無機レジスト層を形成した。次に、記録媒体としての原盤を、図24に示した原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光し、円環状の第1の領域R1および第2の領域R2を交互に形成した(図23A、図23B参照)。この際、第1の領域R1には、隣接する3列のトラック間において六方格子状をなる露光パターンを形成した。これに対して、第2の領域R2には、露光パターンを形成せず、第2の領域R2を非露光部とした。レーザ光の波長は266nm、レーザパワーは0.50mW/mとした。
【0161】
次に、原盤を現像機に搬送し、原盤上のレジスト層に対して現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、現像機のターンテーブル上に未現像の原盤を載置し、原盤を回転させつつ原盤の表面に現像液を滴下して、その表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層の第1の領域R1に、六方格子パターンの開口部が形成された。現像液としては、無機アルカリ性現像液(東京応化社製)を用いた。
【0162】
次に、原盤をエッチング装置に搬送し、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、原盤表面において、レジスト層から露出している第1の領域R1の六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の部分ではレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が原盤表面の第1の領域R1にのみ形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するディスク状原盤が得られた。なお、この原盤では、列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0163】
次に、上記ディスク状原盤と、紫外線硬化樹脂を塗布したPMMAフィルムを密着させ、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射し硬化させた後、PMMAフィルムと一体となった紫外線硬化樹脂を剥離した。これにより、六方格子状に構造体が多数配列された第1の領域と、平坦な第2の領域とが表面に交互に形成されたPMMAフィルムが得られた。このフィルムの第1の領域R1における構造体の配置ピッチPは250nm、高さHは200nm、アスペクト比は0.8であった。また、構造体の形状は、頂部に曲率を有する楕円錐形状であった。
【0164】
次に、PMMAフィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。なお、Ag層の膜厚は、上記の試験例の評価結果を考量して、20nmとした。
以上により、目的とするフレキシブル基板が得られた。
【0165】
(配線評価)
上述のようにして得られたフレキシブル基板の配線を以下のようにして評価した。
まず、円環状の配線の2点にテスターのプローブをあてて、周方向の抵抗を測定した。次に、径方向(円環状の配線と直交する方向)の2点にテスターのプローブをあてて、径方向の抵抗を測定した。その結果、円環状の配線上では100Ω程度の導通が確認されたのに対して、径方向では絶縁されていることが確認された。この結果より、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を形成できることがわかった。
【0166】
上述の試験例、および実施例では、構造体のアスペクト比が1程度である場合について示したが、アスペクト比を大きくし、かつ、構造体の斜面を急峻にすれば、さらに面内の電気的変調の選択幅が広がり、それに伴い金属層の厚さも厚くできると考えられる。
【0167】
(実施例2)
まず、銅を30nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を硫酸銅めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、陽極に含りん銅陽極を用いて、陰極電流密度2〜3A/dm2(表1参照)で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0168】
5分の銅めっき厚さは2.4μmで、抵抗値が8μΩ/cmであった。また、10分の銅めっき厚さは4.9μmで、抵抗値が6μΩ/cmであった。
【0169】
(実施例3)
まず、銀を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を銀めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表2に示す陰極電流密度で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0170】
(実施例4)
まず、金を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板をシアン化金めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表3に示す陰極電流密度で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0171】
(実施例5)
まず、金を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を酸性金めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表4に示す陰極電流密度で攪拌しながら。5分、または10分めっきした。
【0172】
(実施例6)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0173】
(実施例7)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0174】
(実施例8)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0175】
(実施例9)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0176】
(実施例10)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0177】
(実施例11)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0178】
(実施例12)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0179】
(実施例13)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0180】
(実施例14)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。なお、この実施例14では、露光工程を調整することにより、円周周期800nm〜3733nmの範囲でランダムに変化させて、ランダムに配列された多数の構造体をフレキシブル基板表面に形成した。
【0181】
表6は、
【表6】
【0182】
【表7】
【0183】
(配線評価)
上述のようにして得られたフレキシブル基板の配線を以下のようにして評価した。
まず、円環状の配線の2点にテスターのプローブをあてて、周方向の抵抗を測定した。次に、径方向(円環状の配線と直交する方向)の2点にテスターのプローブをあてて、径方向の抵抗を測定した。その結果、円環状の配線上では導通が確認されたのに対して、径方向では絶縁されていることが確認された。この結果より、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を形成できることがわかった。また、構造体をランダムに配列した場合にも、構造体を規則的に配列した場合と同様に配線を形成できることがわかった。
【0184】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0185】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0186】
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0187】
また、上述の実施形態では、片面または両面に配線が形成された単層の配線構造体に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、多層の配線構造体に対しても適用可能である。
【0188】
また、上述の実施形態では、平面状の基体表面に配線を形成する場合を例として説明したが、配線を形成する面は平面に限定されるものではなく、曲面状の基体表面に配線を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0189】
1 配線構造体
2 基体
3 構造体
4 金属層
11 ロール原盤
12 構造体
13 レジスト層
41 ディスク状原盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造体およびその製造方法、ならびに原盤に関する。詳しくは、基体上に微細な配線が形成された配線構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやプラスチック等からなる絶縁性基材上に所定の回路パターンの導電層を形成する方法としては、フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法、スクリーン印刷による回路パターン形成方法、および熱転写による回路パターン形成方法などが知られている。
【0003】
フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に導電層を設け、この導電層上に感光性レジストフィルムを貼着して回路パターン状に露光した後、感光性レジストフィルムの未露光部をアルカリ液にて溶解除去し、次いで溶解除去によって露出した導電層をエッチング液にて除去し、その後感光性レジストフィルムの露光硬化部を第二エッチング液で除去して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。しかしながら、この方法は工程数が多く、また廃液が有害であるため、製造コストおよび廃液の処理コストがかさむといった問題がある。
【0004】
スクリーン印刷による回路パターン形成方法は、絶縁性基材上に金属ペースト等をマスクを介してスキージで塗布し、その後、焼成して所定の回路パターンの導電層を形成する方法である。しかしながら、この方法はマスクが高価であること、マスクを精度良く位置合わせするのが煩雑であること、マスクの穴が目詰まりし易いこと等の問題がある。
【0005】
熱転写による回路パターン形成方法は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、熱転写シートに設けられたインク層中に導電性材料を含有させ、サーマルヘッド等の加熱デバイスにより絶縁性基材上にインク層を転写し、所定の回路パターンの導電層として転写形成する方法である。しかしながら、導電性材料を含有するインクを熱転写シートの基材上に塗布するために、または、該熱転写シート基材から絶縁性基材上にインク層を移行させるために、インク層に導電性材料と共にバインダーを配合する必要がある。ところが、ワックスや合成樹脂などの絶縁材料を多く含有しているバインダー成分は、抵抗値が高い。このため、転写形成された導電層の抵抗値が高くなり、所定の抵抗値となりにくい。また、抵抗値を調整するため、インク層を厚くしたり、インク層中の導電性材料の含有量を増やしたりしているが、回路パターンの解像性や印字感度を最適化するのが困難になる。さらに、量産性を考慮した場合、絶縁性基材上に連続して熱転写することができるパターンの大きさが、サーマルヘッド等の加熱デバイスの幅によって制約されるという不都合もある。
【0006】
そこで、フォトリソグラフィーによる回路パターン形成方法、スクリーン印刷による回路パターン形成方法、および熱転写による回路パターン形成方法などに代えて、優れたスループットを実現できる回路パターンの形成方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−1639号公報
【0008】
【特許文献2】特開平1−129492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、優れたスループットを実現できる配線構造体およびその製造方法、ならびに原盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有する基体と、
第1の領域、および第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備える配線構造体である。
【0011】
第2の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有する基体と、
第1の領域、および第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備え、
第1の構造体のアスペクト比は、第2の構造体のアスペクト比に比して大きい配線構造体である。
【0012】
第3の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
基体表面に金属層を成膜する工程と
金属層が形成された基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
金属層の形成工程では、
第1の領域および第2の領域の構造体の有無を利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成することにより、金属層からなる配線パターンを第2の領域に形成し、
メッキ処理の工程では、
第1の領域および第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法である。
【0013】
第4の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
基体表面に金属層を成膜する工程と
金属層が形成された基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
金属層の形成工程では、
第1の領域および第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成することにより、金属層からなる配線パターンを第2の領域に形成し、
メッキ処理の工程では、
第1の領域および第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法である。
【0014】
第5の発明は、
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有し、
第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤である。
【0015】
第6の発明は、
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有し、
第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤である。
【0016】
第1および第3の発明では、第1の領域および第2の領域の構造体の有無を利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成する。この両領域の金属層の導電性の有無を利用して、第2の領域にメッキ処理を選択的に施し、第2の領域の金属層の導電率を高めることで、第2の領域上に導電性に優れた配線を選択的に形成することができる。
【0017】
第2および第4の発明では、第1の領域および第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、第1の領域に金属層を不連続的に形成するのに対して、第2の領域に金属層を連続的に形成する。この両領域の金属層の導電性の有無を利用して、第2の領域にメッキ処理を選択的に施し、第2の領域の金属層の導電率を高めることで、第2の領域上に導電性に優れた配線を選択的に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を基体表面に形成するので、優れたスループットを実現できる。また、配線が形成された基体表面に対してメッキ処理を施すので、優れた導電性を有する配線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2Aは、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図2Bは、図2AのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図2Cは、図1AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図2Dは、図2AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図2Eは、図2AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図3】図3は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図4】図4Aは、図2Aに示した第1の領域のトラック延在方向の断面図である。図4Bは、図2Aに示した第1の領域のθ方向の断面図である。
【図5】図5は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図6】図6は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図7】図7は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図8】図8は、構造体の境界が不明瞭な場合の構造体底面の設定方法について説明するための図である。
【図9】図9A〜図9Dは、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図10】図10Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。図10Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体の配置の一例を示す図である。
【図11】図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。
【図12】図12Aは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図12Bは、図11Aに示した第1の領域の一部を拡大して示す平面図である。
【図13】図13は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図14】図14A〜図14Cは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図15】図15A〜図15Cは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図16】図16A〜図16Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図17】図17Aは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図17Bは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域のトラックT1、T3、・・・における断面図である。図17Cは、図17AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図17Dは、図17AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図17Eは、図17AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【図18】図18は、構造体の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。
【図19】図19Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図19Bは、図19Aに示した第1の領域を拡大して表す平面図である。
【図20】図20Aは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図20Bは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。
【図21】図21Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図21Bは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。
【図22】図22Aは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。図22Bは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の変形例を示す断面図である。
【図23】図23Aは、本発明の第5の実施形態に係るディスク状原盤の一構成例を示す平面図である。図23Bは、図23Aに示したディスク状原盤の一部を拡大して表す平面図である。
【図24】図24は、ディスク状原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。
【図25】図25Aは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図25Bは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。
【図26】図26Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図26Bは、図26Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、従来技術が有する上述の課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、構造体を基体表面の面内で変調させ、その上に金属層を形成すると、構造体変調に応じて金属層が導通部分と非導通部分とに分かれる現象を見出し、この現象を利用することで基体表面に配線を形成できることを見出すに至った。
【0021】
以下の本発の概要について具体的に説明する。
高アスペクトな構造体上に金属層を形成した場合と、平面上または低アスペクト構造体上に金属層を形成した場合とでは、金属層の表面積が異なる。このため、高アスペクトな構造体上に金属層を形成した場合には、金属層の厚さよっては構造体上の金属層は導通をとることが困難となる。これは金属層の成長が表面積に依存して島状に成長する、または実質的に導電性を示さない程の厚さに金属層が成長するためである。これに対して、平面上または低アスペクト構造体上に金属層を形成した場合、比較的容易に連続した金属層が成長する、または導電性を示す程の厚さでかつ連続的に金属層が成長するため、電気的な導通をとりやすい。
【0022】
本発明では、上記現象を利用し、面内で構造体形状を変調させ、その上に金属層を形成することで配線を形成する。具体的には、非導通部分となる第1の領域には高アスペクト構造体の連続体を形成するのに対して、導通部分となる第2の領域には平面または低アスペクト構造体の集合体を形成する。そして、それらの両領域上に金属層を形成すると、表面積の違いにより、膜の成長が面内で選択的に変化する。これにより、第1の領域および第2の領域のうち、第2の領域に選択的に配線を形成できる。
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(構造体の有無を利用して基体表面に配線を形成した例:図1A参照)
2.第2の実施形態(四方格子状に構造体を配置した例:図17A参照)
3.第3の実施形態(アスペクト比の違いを利用して基体表面に配線を形成した例:図20A参照)
4.第4の実施形態(配線を基体の両面に形成した例:図22A、図22B参照)
5.第5の実施形態(ディスク状原盤の作製例:図23A、図23B参照)
6.第6の実施形態(構造体を凹状とした例:図25A、図25B参照)
7.第7の実施形態(ICカードに対する適用例:図26参照)
【0024】
<1.第1の実施形態>
[回路構造体の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。以下では、配線構造体1の回路形成面の面内で互いに直交する2方向をX軸方向、およびY軸方向とし、その回路形成面に垂直な方向をZ軸方向と称する。
【0025】
第1の実施形態に係る配線構造体1は、いわゆる導電性素子であり、第1の領域R1と第2の領域R2とを有する基体2と、第1の領域R1および第2の領域R2のうち、第2の領域R2に配線パターンをなすように連続的に形成された金属層4とを備える。この配線構造体1は、例えば、プリント基板などである。プリント基板としては、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板などが挙げられる。
【0026】
第1の領域R1には、微細ピッチで構造体3が多数形成され、金属層4が不連続的に島状などに形成されている。また、第1の領域R1に形成される導電層4の厚さが、導通を示さない程に第2の領域R2に形成される導電層4の厚さよりも薄く形成されるようにしてもよい。これに対して、第2の領域R2には、構造体3が形成されず平坦面とされ、金属層4が連続的に形成されている。したがって、第1の領域R1は、隣接する第2の領域R2に形成された金属層4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。これに対して、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4は、第2の領域R2の延在方向に向かって導電性を有し、配線として機能する。なお、図1Aでは、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4、すなわち配線が、直線状の形状を有している例が示されているが、配線の形状はこれに限定されるものではなく、回路設計などに応じて所望の形状とすることが可能である。また、第1の領域R1に不連続的にまたは薄く形成された金属層4は、配線としては機能しないため、図示を省略している。
【0027】
以下、配線構造体1を構成する基体2、構造体3、および金属層4について順次説明する。
【0028】
(基体)
基体2は、例えば、透明性または不透明性を有する基体である。基体2の材料としては、例えば、プラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0029】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0030】
基体2としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体2の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0031】
基体2がプラスチックフィルムである場合には、基体2は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体2の厚さは、例えば25μm〜500μm程度である。
【0032】
基体2の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、フィルムにはシートが含まれるものと定義する。
【0033】
(構造体)
図2Aは、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図2Bは、図2AのトラックT1、T3、・・・における断面図である。図2Cは、図1AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図2Dは、図2AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図2Eは、図2AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図3、図5〜図7は、図1Aに示した第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。図4Aは、図2Aに示した第1の領域のトラック延在方向の断面図である。図4Bは、図2Aに示した第1の領域のθ方向の断面図である。
【0034】
基体2の表面には、凸部である構造体3が多数配列されている。この構造体3は、例えば所定の配置ピッチで周期的に、または所定値以下の配置ピッチで非周期的(ランダム)に2次元配置されている。ここで、配置ピッチとは、平均配置ピッチPを意味する。
【0035】
配線構造体1の各構造体3は、基体2の表面において複数列のトラックT1、T2、T3、・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすような配置形態を有する。本発明において、トラックとは、構造体3が列をなして直線状または曲線状に連なった部分のことをいう。また、列方向とは、基体2の成形面において、トラックの延在方向(例えばX軸方向)に直交する方向のことをいう。
【0036】
構造体3は、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体3の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体3が配置されている。その結果、図2Aに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている。本実施形態において、六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンのことをいう。また、準六方格子パターンとは、正六角形状の格子パターンとは異なり、トラックの延在方向(例えばX軸方向)などに引き伸ばされ、または収縮されて歪んだ六方格子パターンのことをいう。
【0037】
構造体3が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図2Aに示すように、同一トラック(例えばT1)内における構造体3の配置ピッチP1(a1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体3の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体3を配置することで、構造体3の充填密度の更なる向上を図れるようになる。なお、構造体3の配列は規則的な配列に限定されるものではなく、ランダムな配列としてもよい。
【0038】
構造体3が、成形の容易さの観点から、軸対象な錐体形状、またはトラック方向などに延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。隣接する構造体同士が接合されている場合には、構造体3が、隣接する構造体3に接合されている下部を除いて軸対称な錐体形状、またはトラック方向に延伸または収縮させた錐体形状を有することが好ましい。錐体形状としては、例えば、円錐形状、円錐台形状、楕円錐形状、楕円錐台形状などを挙げることができる。ここで、錐体形状とは、上述のように、円錐形状および円錐台形状以外にも、楕円錐形状、楕円錐台形状を含む概念である。また、円錐台形状とは、円錐形状の頂部を切り落とした形状をいい、楕円錐台形状とは、楕円錐の頂部を切り落とした形状のことをいう。
【0039】
構造体3は、トラックの延在方向の幅がこの延在方向とは直交する列方向の幅よりも大きい底面を有する錐体形状であることが好ましい。具体的には、構造体3は、図3および図5に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が曲面である楕円錐形状であることが好ましい。また、図6に示すように、底面が長軸と短軸をもつ楕円形、長円形または卵型の錐体構造で、頂部が平坦である楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすると、列方向の充填率を向上させることができるからである。
【0040】
構造体3の形状としては、例えば、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状(図5参照)、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状(図3参照)、頂部が平坦な錐体形状(図6参照)が挙げられる。構造体3が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。図3などでは、各構造体3は、それぞれ同一の形状を有しているが、構造体3の形状はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の形状の構造体3が形成されていてもよい。また、構造体3は、基体2と一体成形されていてもよい。
【0041】
また、図3、図5〜図7に示すように、構造体3の周囲の一部または全部に突出部6を設けるようにしてもよい。具体的には例えば、突出部6は、図3、図5、および図6に示すように、隣り合う構造体3の間に設けられる。また、細長い突出部6が、図7に示すように、構造体3の周囲の全体またはその一部に設けられるようにしてもよい。この細長い突出部6は、例えば、構造体3の頂部から下部の方向に向かって延びている。突出部6の形状としては、断面三角形状および断面四角形状などを挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、成形の容易さなどを考慮して選択することができる。
【0042】
トラックの延在方向における構造体3の高さH1は、列方向における構造体3の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体3を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体3の充填率が低下するためである。
【0043】
構造体3のアスペクト比(H/P)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらに好ましくは0.4以上1.8以下である。ここで、高さHは、上述の高さH1および高さH2のうちの大きい方の高さである。例えば、上述のようにH1<H2の関係を満たす場合には、高さHはH2となる。0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的に絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり電気的に絶縁がとれなくなる傾向がある。0.3を超えると、導電層4が不連続膜となり電気的に絶縁がとれる、または導電層4が薄くなり電気的に絶縁がとれる傾向がある。1.8を超えると、後述する転写工程において構造体3の転写性が低下する傾向がある。更に、各構造体3のアスペクト比(H/P)は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。
【0044】
なお、アスペクト比は、以下の式(1)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(1)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(2)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(2)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=60°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0045】
なお、構造体3のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。ここで、高さ分布とは、2種以上の高さ(深さ)を有する構造体3が基体2の表面に設けられていることを意味する。すなわち、基準となる高さを有する構造体3と、この構造体3とは異なる高さを有する構造体3とが基体2の表面に設けられていることを意味する。基準とは異なる高さを有する構造体3は、例えば基体2の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられている。その周期性の方向としては、例えばトラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
【0046】
構造体3の周縁部に裾部3aを設けることが好ましい。配線構造体1の製造工程において構造体3を金型などから容易に剥離することが可能になるからである。ここで、裾部3aとは、構造体3の底部の周縁部に設けられた突出部を意味する。この裾部3aは、上記剥離特性の観点からすると、構造体3の頂部から下部の方向に向かって、なだらかに高さが低下する曲面を有することが好ましい。なお、裾部3aは、構造体3の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体3の周縁部の全体に設けることが好ましい。また、構造体3が凹部である場合には、裾部は、構造体3である凹部の開口周縁に設けられた曲面となる。
【0047】
六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている場合には、構造体3の高さHは、構造体3の列方向の高さとする。構造体3のトラック延在方向(X方向)の高さは、列方向(Y方向)の高さよりも小さく、また、構造体3のトラック延在方向以外の部分における高さは列方向の高さとほぼ同一であるため、サブ波長構造体の高さを列方向の高さで代表する。但し、構造体3が凹部である場合、上記式(1)における構造体の高さHは、構造体の深さHとする。
【0048】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、好ましくは1.00≦P1/P2≦1.2、または1.00<P1/P2≦1.2、より好ましくは1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たしている。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、電気的絶縁特性を向上することができる。
【0049】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、例えば、65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、優れた電気的絶縁特性を向上することができる。充填率を向上させるためには、隣接する構造体3の下部同士を接合する、または、構造体底面の楕円率を調整などして構造体3に歪みを付与することが好ましい。
【0050】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図1B参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体3の底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(3)より充填率を求める。
充填率=(S(hex.)/S(unit))×100 ・・・(3)
単位格子面積:S(unit)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(hex.)=2S
【0051】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0052】
構造体3が重なっているときや、構造体3の間に突出部6などの副構造体があるときの充填率は、構造体3の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法で充填率を求めることができる。
【0053】
図8は、構造体3の境界が不明瞭な場合の充填率の算出方法について説明するための図である。構造体3の境界が不明瞭な場合には、断面SEM観察により、図8に示すように、構造体3の高さhの5%(=(d/h)×100)に相当する部分を閾値とし、その高さdで構造体3の径を換算し充填率を求めるようにする。構造体3の底面が楕円である場合には、長軸および短軸で同様の処理を行う。
【0054】
図9は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。図9A〜図9Dに示す楕円の楕円率はそれぞれ、100%、110%、120%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が準六方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、100%<e<150%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0055】
ここで、楕円率eは、構造体底面のトラック方向(X方向)の径をa、それとは直交する列方向(Y方向)の径をbとしたときに、(a/b)×100で定義される。なお、構造体3の径a、bは以下のようにして求めた値である。配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影し、撮影したSEM写真から無作為に構造体3を10個抽出する。次に、抽出した構造体3それぞれの底面の径a、bを測定する。そして、測定値a、bそれぞれを単純に平均(算術平均)して径a、bの平均値を求め、これを構造体3の径a、bとする。
【0056】
図9Aは、円錐形状または円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Bは、楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の配置の一例を示す。図9Aおよび図9Bに示すように、構造体3が、その下部同士を重ね合うようにして接合されていていることが好ましい。具体的には、構造体3の下部が、隣接関係にある構造体3の一部または全部の下部と接合されていることが好ましい。より具体的には、トラック方向において、θ方向において、またはそれら両方向において、構造体3の下部同士を接合することが好ましい。図9A、図9Bでは、隣接関係にある構造体3の全部の下部を接合する例が示されている。このように構造体3を接合することで、構造体3の充填率を向上することができる。これにより、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0057】
図9Bに示すように、同一トラック内において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第1の接合部aが形成されるとともに、隣接するトラック間において隣接する構造体3の下部同士が重ね合わされて第2の接合部2が形成される。第1の接合部aと第2の接合部bとの交点に交点部cが形成される。交点部cの位置は、例えば、第1の接合部a、および第2の接合部bの位置よりも低くなっている。楕円錐形状または楕円錐台形状を有する構造体3の下部同士を接合した場合には、例えば、接合部a、接合部b、交点部cの順序でそれらの高さが低くなる。
【0058】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上できるからである。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0059】
(金属層)
金属層4を構成する材料としては、例えば、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、およびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。金属層4は、例えば、単層構造、または2層以上の積層構造を有している。積層構造を有する金属層4としては、例えば、スパッタリングなどにより形成された第1の金属層と、メッキにより形成された第2の金属層とを備えるものが挙げられる。
【0060】
金属層4の膜厚は、25nm以下の範囲内であることが好ましい。25nmを超えると、絶縁部分を狙う構造体アスペクトを高くしても電気絶縁性を確保できなくなる傾向がある。
【0061】
本明細書において、第2の領域R2にける金属層4の膜厚は、具体的には、以下のようにして求められたものである。まず、配線構造体1を切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、第2の領域R2にける金属層4の膜厚を測定する。
【0062】
[ロール原盤の構成]
図11Aは、基体を作製するためのロール原盤の一構成例を示す斜視図である。図11Bは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。ロール原盤11は、上述した基体表面に構造体3を成形するための原盤である。ロール原盤11は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面には多数の第1の領域R1および第2の領域R2が交互に設定されている。図11Aおよび図11Bでは、第1の領域R1および第2の領域R2が周方向に向かって、リング状に形成されている場合が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこの例に限定されるものではなく、所望とする配線の形状、すなわち第2の領域に形成する金属層4の形状に応じて適宜選択される。ロール原盤11の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0063】
図12Aは、図11Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。図12Bは、図11Aに示した第1の領域の一部を拡大して示す平面図である。ロール原盤11の第1の領域R1には、例えば、凹部である構造体12が微細ピッチで多数配置され、第2の領域R2には、例えば、凹部である構造体12が形成されず平面状とされている。第1の領域R1の多数の構造体3は、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体3の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように配置されている。このような六方格子パターンまたは準六方格子パターンは、後述するロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、角速度一定(CAV:Constant Angular Velocity)で適切な送りピッチでパターニングすることにより記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンを形成することが可能である。
【0064】
[露光装置の構成]
図13は、ロール原盤露光装置の一構成例を示す概略図である。以下、図13を参照して、ロール原盤露光装置の構成について説明する。なお、このロール原盤露光装置は、例えば、光学ディスク記録装置をベースとして構成することが可能である。
【0065】
レーザー光源21は、記録媒体としての原盤11の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光14を発振するものである。レーザー光源21から出射されたレーザー光14は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)22へ入射する。電気光学素子22を透過したレーザー光14は、ミラー23で反射され、変調光学系25に導かれる。
【0066】
ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー23を透過した偏光成分はフォトダイオード24で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子22を制御してレーザー光14の位相変調を行う。
【0067】
変調光学系25において、レーザー光14は、集光レンズ26により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acoust-Optic Modulator)27に集光される。レーザー光14は、音響光学素子27により強度変調され発散した後、レンズ28によって平行ビーム化される。変調光学系25から出射されたレーザー光14は、ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
【0068】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤11上のレジスト層へ照射される。原盤11は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36の上に載置されている。そして、原盤11を回転させるとともに、レーザー光14を原盤11の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光14を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0069】
露光装置は、図2Aに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0070】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、音響光学素子27により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。例えば、円周方向の周期を315nm、円周方向に対して約60度方向(約−60度方向)の周期を300nmにするには、送りピッチを251nmにすればよい(ピタゴラスの法則)。極性反転フォマッター信号の周波数はロールの回転数(例えば1800rpm、900rpm、450rpm、225rpm)により変化させる。例えば、ロールの回転数1800rpm、900rpm、450rpm、225rpmそれぞれに対向する極性反転フォマッター信号の周波数は、37.70MHz、18.85MHz、9.34MHz、4、71MHzとなる。所望の記録領域に空間周波数(円周315nm周期、円周方向約60度方向(約−60度方向)300nm周期)が一様な準六方格子パターンは、遠紫外線レーザー光を移動光学テーブル32上のビームエキスパンダ(BEX)33により5倍のビーム径に拡大し、開口数(NA)0.9の対物レンズ34を介して原盤11上のレジスト層に照射し、微細な潜像を形成することにより得られる。
【0071】
[配線構造体の製造方法]
以下、図13〜図16を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る配線構造体1の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法において転写工程以降の一部または全部のプロセスは、生産性を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行うことが好ましい。
【0072】
(レジスト成膜工程)
まず、図14Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤11を準備する。このロール原盤11は、例えばガラス原盤である。次に、図14Bに示すように、ロール原盤11の表面にレジスト層13を形成する。レジスト層13の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、遷移金属を1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0073】
(露光工程)
次に、図14Cに示すように、上述したロール原盤露光装置を用いて、ロール原盤11を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)15をレジスト層13に照射する。このとき、レーザー光14をロール原盤11の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤11の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光14を照射する。この際、配線パターン間の絶縁領域に対応する第1の領域R1のみに潜像を形成し露光部とするのに対して、配線パターンに対応する第2の領域R2は露光せず、非露光部とする。レーザー光14の軌跡に応じた潜像15は、例えば、可視光の波長以下のピッチで形成される。
【0074】
潜像15は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像15は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0075】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤11を回転させながら、レジスト層13上に現像液を滴下して、図15Aに示すように、レジスト層13を現像処理する。図示するように、レジスト層13をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光14で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層13に形成される。これにより、第1の領域R1のレジスト層13には、六方格子パターン、または準六方格子パターンなどの開口部が形成されるのに対して、第2の領域R2のレジスト層13には、開口部が形成されず、第2の領域R2全体はレジスト層13に覆われた状態が維持される。すなわち、第1の領域R1のみに開口パターンを有するマスクがロール原盤表面に形成される。
【0076】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤11の上に形成されたレジスト層13のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤11の表面をエッチング処理する。これにより、ロール原盤表面のうち第1の領域R1では、開口部を介してエッチングが進行し、図15Bに示すように、第1の領域の領域R1には、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状などの構造体(凹部)12が形成される。一方、ロール原盤表面のうち第2の領域R2では、この領域全体がレジスト層13に覆われているため、エッチングは施されず、平面状のロール原盤表面が維持される。エッチング方法としては、例えばドライエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理を交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体12のパターンを形成することができる。また、レジスト層13の3倍以上の深さ(選択比3以上)のガラスマスターを作製でき、構造体3の高アスペクト比化を図ることができる。
以上により、目的とするロール原盤11が得られる。
【0077】
(転写工程)
次に、例えば、図15Cに示すように、ロール原盤11と転写材料15を塗布したフィルムなどの基体2を密着させ、紫外線などを照射して転写材料15を硬化させた後、硬化した転写材料15と一体となった基体2を剥離する。これにより、図16Aに示すように、基体表面の第1の領域R1には、凸部である構造体3が多数形成されるのに対して、基体表面の第2の領域R2には、構造体3は転写されず、平面状とされる。
【0078】
転写材料は、例えば、紫外線硬化材料と、開始剤とからなり、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいる。
【0079】
紫外線硬化材料は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどからなり、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0080】
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0081】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0082】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0083】
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0084】
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。基体2の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0085】
なお、基体2の成形方法は特に限定されず、例えば射出成形法、押し出し成形法、キャスト成形法などを用いることができる。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0086】
(金属層の成膜工程)
次に、図16Bに示すように、構造体3が形成された基体2の凹凸面上に、金属層4を成膜する。この際、第1の領域R1では、金属層4は島状などに不連続的に形成されるのに対して、第2の領域R2では、金属層4は連続的に形成される。したがって、第2の領域R2に形成された金属層4は配線として機能するのに対して、第1の領域R1は上記配線間の絶縁領域として機能する。金属層5の成膜方法としては、例えば化学気相成長法、または物理気相成長法を用いることができる。より具体的には、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。次に、必要に応じて、金属層4に対してアニール処理を施す。
【0087】
次に、必要に応じて、金属層5が形成された基体3をめっき液に浸し、この基体3の第2の領域2に形成された配線を陰極として、メッキ処理を施す。これにより、この基体3の第2の領域2に形成された配線上にメッキ層が形成される。
以上により、目的とする配線構造体1が得られる。
以下に、メッキ処理の条件例を示す。
【0088】
表1は、シアン化銅めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表1】
【0089】
表2は、銀めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表2】
【0090】
表3は、シアン化金めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表3】
【0091】
表4は、酸性金めっき液を用いたときのめっき条件を示す。
【表4】
【0092】
上述したように、第1の実施形態によれば、ナノインプリント法と薄膜作製法との組み合わせだけで、配線を基体表面に形成できるため、スループットを容易に向上することができる。また、配線の形成にナノインプリント法を採用しているため、回路などの配線の高密度化、および高精細化が可能となる。また、転写工程(インプリント工程)では、レジスト材料、およびエッチング材料を使用しないため、原材料費を低く抑え、デバイスの低廉化を実現できる。また、第2の領域R2に形成された配線に対して、メッキ処理を施した場合には、配線の抵抗値を低減することができる。
【0093】
従来の配線形成方法(例えばフレキシブル基板(FPC)、パッシブマトリックスタイプのディスプレイの配線などの形成方法)では、ウエットエッチングを採用しているため、材料の選択性、およびプロセスの選択性が限られてくる。これに対して、第1の実施形態に係る配線の形成方法では、基本的にエッチングを使わないで配線が形成できるため、種々の材料を幅広く使える。
【0094】
また、面内で構造体を変調させたロール原盤(面内構造体変調原盤)を作製し、このロール原盤を用いてナノインプリント法で原盤の表面形状を基体表面に転写する。この形状転写の工程はロール・ツー・ロールで行うことが好ましい。その後、スパッタリングや蒸着法など薄膜作製法で金属層4を基体2の形状転写面に形成する。これにより、基体表面に回路などの配線を形成することができる。すなわち、高スループット、低廉な回路デバイスなどを提供できる。また、構造体3はナノレベルで変調できるため高密度回路なども実現が可能となる。
【0095】
<2.第2の実施形態>
[回路構造体の構成]
図17Aは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す平面図である。図17Bは、本発明の第2の実施形態に係る配線構造体の第1の領域のトラックT1、T3、・・・における断面図である。図17Cは、図17AのトラックT2、T4、・・・における断面図である。図17Dは、図17AのトラックT1、T3、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。図17Eは、図17AのトラックT2、T4、・・・に対応する潜像形成に用いられるレーザー光の変調波形を示す略線図である。
【0096】
第2の実施形態に係る配線構造体1は、第1の領域R1に形成された多数の構造体3が、隣接する3列のトラック間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。本実施形態において、準四方格子パターンとは、正四方格子パターンと異なり、トラックの延在方向(例えばX方向)などに引き伸ばされ、または収縮されて歪んだ四方格子パターンを意味する。
【0097】
構造体3のアスペクト比(H/P)は、電気的絶縁を優先するエリアの場合、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらにより好ましくは0.4以上1.8以下である。ここで、高さHは、後述する高さH1および高さH2のうちの大きい方の高さである。例えば、後述するようにH1>H2の関係を満たす場合には、高さHはH1となる。0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり、電気的絶縁がとれなくなる傾向がある。1.8を超えると、構造体3の転写性が低下する傾向がある。更に、各構造体3のアスペクト比(H/P)は全て同一である場合に限らず、各構造体3が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。
【0098】
なお、構造体のアスペクト比は、以下の式(4)により定義される。
アスペクト比=H/P・・・(4)
但し、H:構造体の高さ、P:平均配置ピッチ(平均周期)
ここで、平均配置ピッチPは以下の式(5)により定義される。
平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3 ・・・(5)
但し、P1:トラックの延在方向の配置ピッチ(トラック延在方向周期)、P2:トラックの延在方向に対して±θ方向(但し、θ=45°−δ、ここで、δは、好ましくは0°<δ≦11°、より好ましくは3°≦δ≦6°)の配置ピッチ(θ方向周期)
【0099】
同一トラック内における構造体3の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体3の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体3の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体3の充填率を向上することができるので、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。。
【0100】
トラックの延在方向に対して±θ方向における構造体3の高さH2は、トラックの延在方向における構造体3の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体3の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。四方格子パターン、または準四方格子パターンを形成するように構造体3が配置されている場合には、構造体3の高さHは、構造体3の延在方向(トラック方向)の高さとする。
【0101】
図18は、構造体3の底面の楕円率を変化させたときの底面形状を示す図である。楕円31、32、33の楕円率はそれぞれ、100%、163.3%、141%である。このように楕円率を変化させることで、基体表面における構造体3の充填率を変化させることができる。構造体3が四方格子または準四方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、150%≦e≦180%であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体3の充填率を向上し、優れた電気的絶縁特性を得ることができるからである。
【0102】
基体表面における構造体3の充填率は、100%を上限として、例えば65%以上、好ましくは73%以上、より好ましくは86%以上の範囲内である。充填率をこのような範囲にすることで、優れた電気的絶縁特性を得ることができる。
【0103】
ここで、構造体3の充填率(平均充填率)は以下のようにして求めた値である。
まず、配線構造体1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図17A参照)。また、その単位格子Ucに含まれる4つの構造体3のいずれかの底面の面積Sを画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積Sを用いて、以下の式(6)より充填率を求める。
充填率=(S(tetra)/S(unit))×100 ・・・(6)
単位格子面積:S(unit)=2×((P1×Tp)×(1/2))=P1×Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(tetra)=S
【0104】
上述した充填率算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子について行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して充填率の平均率を求め、これを基体表面における構造体3の充填率とする。
【0105】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、例えば、64%以上、好ましくは69%以上、より好ましくは73%以上である。このような範囲にすることで、構造体3の充填率を向上できる。ここで、配置ピッチP1は、構造体3のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0106】
[ロール原盤の構成]
図19Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図19Bは、図19Aに示した第1の領域を拡大して表す平面図である。このロール原盤は、第1の領域R1の多数の構造体3が、隣接する3列のトラック(例えばT1〜T3)間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成するように配置されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0107】
このような四方格子パターン、または準四方格子パターンは、ロール原盤露光装置を用い、2次元パターンが空間的にリンクし、1トラック毎に極性反転フォマッター信号と記録装置の回転コントロラーを同期させ信号を発生し、角速度一定(CAV)で適切な送りピッチでパターニングすることにより記録することができる。極性反転フォマッター信号の周波数とロールの回転数を適切に設定することにより、所望の記録領域に空間周波数が一様な格子パターンをレーザー光の照射によりロール原盤11上のレジスト層に形成することが可能である。
【0108】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
<3.第3の実施形態>
[配線構造体の構成]
図20Aは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図20Bは、本発明の第3の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。第3の実施形態に係る配線構造体1は、第1の領域R1に形成された第1の構造体31と、第2の領域R2に形成された第2の構造体32とのアスペクト比の違いを利用して、基体表面に配線を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0110】
第1の領域R1には、例えば微細ピッチで第1の構造体31が多数形成され、金属層4が不連続的に島状などに形成されている。また、第1の領域R1に形成される導電層4の厚さが、導通を示さない程に第2の領域R2に形成される導電層4の厚さよりも薄く形成されるようにしてもよい。これに対して、第2の領域R2には、例えば微細ピッチで第2の構造体32が多数形成され、金属層4が連続的に形成されている。したがって、第1の領域R1は、隣接する第2の領域R2に形成された金属層4の間を絶縁するための絶縁領域として機能する。一方、第2の領域R2に連続的に形成された金属層4は、第2の領域R2の延在方向に向かって導電性を有する配線として機能する。
【0111】
第1の構造体31のアスペクト比(H/P)は、第2の構造体32のアスペクト比に比して大きい。第1の構造体31のアスペクト比(H/P)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.3以上1.8以下、さらに好ましくは0.4以上1.8以下である。第1の構造体31のアスペクト比が0.3未満であると、導電層4が連続膜となり電気的絶縁がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり、電気的絶縁がとれなくなる傾向がある。第2の構造体32のアスペクト比(H/P)は、0.3未満であることが好ましい。第2の構造体32のアスペクト比が0.3以上であると、導電層4が不連続膜となり電気的導通がとれなくなる、または導電層4の膜厚が厚くなり電気的導通がとれなくなる傾向がある。
【0112】
本明細書において、第2の領域R2における金属層4の膜厚は、構造体3の頂部における金属層4の膜厚である。具体的には、金属層4の膜厚は以下のようにして求められたものである。まず、配線構造体1を構造体3の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体3における頂部における金属層4の膜厚を測定する。
【0113】
第2の領域R2の第2の構造体32は、例えば、第1の領域R1の第1の構造体121と同様に、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように配置されている。なお、第1の領域R1の第1の構造体31と第2の領域R2の第2の構造体32の配置パターンは同一である必要はなく、両領域の第1の構造体31および第2の構造体32が異なる配置パターンをとるようにしてもよい。
【0114】
[ロール原盤の構成]
図21Aは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す斜視図である。図21Bは、基体を作製するためのロール原盤の一部を拡大して表す断面図である。第3の実施形態に係るロール原盤11は、第1の領域R1および第2の領域R2の両領域にそれぞれ、凹状の構造体121および構造体122を備える点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0115】
ロール原盤11の第1の領域R1および第2の領域R2はそれぞれ、基体2の第1の領域R1および第2の領域R2に対応している。すなわち、ロール原盤11の第1の領域R1に形成された凹状の構造体121は、基体2の第1の領域R1に形成された凸状の構造体31を形成するためのものである。ロール原盤11の第2の領域R2に形成された凹状の構造体122は、基体2の第2の領域R2に形成された凸状の構造体32を形成するためのものである。第1の構造体121のアスペクト比は、第2の構造体122のアスペクト比に比して大きい。
【0116】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
<4.第4の実施形態>
図22Aは、本発明の第4の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す断面図である。第4の実施形態に係る配線構造体1は、基体2の両主面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、両領域のうち第2の領域R2にのみ連続的に金属層4を形成することで、基体両面に配線を形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。また、図22Bに示すように、基体2に第2の領域R2にスルーホール(貫通孔)を形成し、このスルーホールに導体インクなどの導電材料を埋め込み、基体2の両面に形成された回路などの配線を電気的に接続するようにしてもよい。
【0118】
第4の実施形態では、基体2の両面に配線を形成しているので、第1の実施形態よりも多くの回路などを配線構造体1に搭載することが可能となる。
【0119】
<5.第5の実施形態>
[ディスク状原盤の構成]
図23Aは、本発明の第5の実施形態に係るディスク状原盤の一構成例を示す平面図である。図23Bは、図23Aに示したディスク状原盤の一部を拡大して表す平面図である。
第5の実施形態は、ディスク状原盤41の表面に第1の領域R1および第2の領域R2を設定し、第1の領域R1に凹状の構造体12を多数形成している点において第1の実施形態とは異なっている。なお、図23Aおよび図23Bでは、円環状を有する第1の領域R1および第2の領域R2を交互に形成する例が示されているが、第1の領域R1および第2の領域R2の形状はこれに限定されるものではなく、所望とする配線の形状に応じて種々の形状に設定可能である。
【0120】
[露光装置の構成]
まず、図24を参照して、上述した構成を有するディスク状原盤41を作製するための露光装置について説明する。
【0121】
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ33、ミラー38および対物レンズ34を備えている。移動光学テーブル32に導かれたレーザー光14は、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、ミラー38および対物レンズ34を介して、ディスク状原盤41上のレジスト層へ照射される。原盤41は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル(図示を省略する。)の上に載置されている。そして、原盤41を回転させるとともに、レーザー光14を原盤41の回転半径方向に移動させながら、原盤41上のレジスト層へレーザー光を照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光14の移動は、移動光学テーブル32の矢印R方向への移動によって行われる。
【0122】
図24に示した露光装置においては、レジスト層に対して六方格子または準六方格子の2次元パターンからなる潜像を形成するための制御機構37を備えている。制御機構37は、フォマッター29とドライバ30とを備える。フォマッター29は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光14の照射タイミングを制御する。ドライバ30は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子27を制御する。
【0123】
制御機構37は、潜像の2次元パターンが空間的にリンクするように、1トラック毎に、AOM27によるレーザー光14の強度変調と、スピンドルモータ35の駆動回転速度と、移動光学テーブル32の移動速度とをそれぞれ同期させる。原盤41は、角速度一定(CAV)で回転制御される。そして、スピンドルモータ35による原盤41の適切な回転数と、AOM27によるレーザー強度の適切な周波数変調と、移動光学テーブル32によるレーザー光14の適切な送りピッチとでパターニングを行う。これにより、レジスト層に対して六方格子パターン、または準六方格子パターンの潜像が形成される。
【0124】
更に、極性反転部の制御信号を、空間周波数(潜像のパターン密度)が一様になるように徐々に変化させる。より具体的には、レジスト層に対するレーザー光14の照射周期を1トラック毎に変化させながら露光を行い、各トラックTにおいて配置ピッチP1が所定値(例えば330nm、315nm、または300nm)となるように制御機構37においてレーザー光14の周波数変調を行う。即ち、トラック位置がディスク状原盤41の中心から遠ざかるに従い、レーザー光の照射周期が短くなるように変調制御する。これにより、基板全面において空間周波数が一様なナノパターンを形成することが可能となる。
【0125】
[配線構造体の製造方法]
上述した構成を有する露光装置を用いて、ディスク状原盤41上に形成されたレジスト層を露光する以外は、第1の実施形態と同様にして配線構造体1を作製することができる。
【0126】
この第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
<6.第6の実施形態>
図25Aは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の一構成例を示す平面図である。図25Bは、本発明の第6の実施形態に係る配線構造体の第1の領域の一部を拡大して表す斜視図である。第6の実施形態に係る回路構造体1は、凹部である構造体3が基体表面の第1の領域R1に多数配列されている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。この構造体3の形状は、第1の実施形態における構造体3の凸形状を反転して凹形状としたものである。なお、上述のように構造体3を凹部とした場合、凹部である構造体3の開口部(凹部の入り口部分)を下部、基体2の深さ方向の最下部(凹部の最も深い部分)を頂部と定義する。すなわち、非実体的な空間である構造体3により頂部、および下部を定義する。また、第6の実施形態では、構造体3が凹部であるため、式(1)などにおける構造体3の高さHは、構造体3の深さHとなる。
この第6の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0128】
この第6の実施形態では、第1の実施形態における凸形状の構造体3の形状を反転して凹形状としているので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<7.第7の実施形態>
図26Aは、本発明の第7の実施形態に係るICカードの一構成例を示す平面図である。図26Bは、図26Aに示したICカードの一部を拡大して表す平面図である。このICカードは、いわゆる非接触型ICカードであり、基材101と、アンテナコイル102と、ICチップ103とを備える。アンテナコイル102の両端がICチップ103に対して接続されている。また、基材101の両面には外装材(図示省略)が設けられている。
【0130】
基材101の形状としては、フィルム状、シート状、基板状を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、ICカード1に求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。基材102の材料としては、耐久性や利便性などの観点から、フレキシブル性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド(PI)、ポリエステルを用いることができるが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0131】
基体101の一主面の周縁部には、例えば、第1の領域R1と第1の領域R2とが交互に螺旋状に形成されている。第1の領域R1には、例えば微細ピッチで構造体が多数形成され、金属層が島状などに不連続的に形成されている。これに対して、第2の領域R2には、構造体が形成されず平面状とされ、金属層が連続的に形成されている。したがって、基体101の一主面の周縁部には、連続的に形成された金属層からなるアンテナコイル102が第2の領域R2の形状に倣って形成されている。なお、上述の第3の実施形態のように、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれにアスペクト比の異なる構造体を形成するようにしてもよい。
【0132】
外装材は、ICカードの表面および裏面を構成するものであり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、PEG(ポリエチレングリコール、配向PETなどの高分子材料を主成分とするが、特にこれらの材料に限定されるものではなく、従来公知の樹脂材料からICカードに求められる特性に応じて任意に選択し使用することが可能である。
【0133】
アンテナコイル102は、基材101上に複数回巻回されて形成されたループコイル形状の電磁誘導コイルであり、その両端はICチップ103に接続されている。アンテナコイル103は、リーダ/ライタから発せられる交流磁界を受信して交流電圧を誘起し、その交流電圧をICチップ103に供給する。
【0134】
ICチップ103は、アンテナコイル102から供給される電力により駆動し、ICカード1内の各部を制御する。例えば、ICチップ103は、アンテナコイル102を介してリーダ/ライタと通信を行う。具体的には、リーダ/ライタとの相互認証やデータのやり取りなどを行う。
【0135】
第7の実施形態では、構造体の有無を利用してICカードのアンテナコイル102を作製することができる。したがって、エッチングなどを用いずにアンテナコイル102を作製することができるので、ICカードの生産性を向上することができる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0137】
(構造体の高さ、配置ピッチおよびアスペクト比)
以下の試験例および実施例において、構造体の高さH、配置ピッチP、およびアスペクト比(H/P)は以下のようにして求めた。
まず、フィルムの表面形状を、金属層を成膜していない状態において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により撮影した。そして、撮影したAFM像、およびその断面プロファイルから、構造体の配置ピッチP1、配置ピッチP2、高さHを求めた。次に、これらの配置ピッチP1、配置ピッチP2、および高さHを用いて、アスペクト比(=高さH/平均配置ピッチP)を求めた。ここで、平均配置ピッチP=(P1+P2+P2)/3である。
【0138】
(金属層の膜厚)
以下の試験例および実施例において、平滑面上の金属層の膜厚、および凹凸面上の金属層の膜厚は以下のようにして求めた。
【0139】
(平滑面上の金属層の膜厚)
まず、金属層を成膜したフィルムを切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、金属層の膜厚を測定した。
【0140】
(凹凸面上の金属層の膜厚)
まず、金属層を成膜したフィルムを構造体の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体における頂部における金属層の膜厚を測定した。
【0141】
(試験例1−1)
平滑な表面を有するPMMA(ポリメチルメタアクリレート)フィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。Ag層の膜厚は10nmとした。
【0142】
(試験例1−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例1−1と同様にして、サンプルを得た。
【0143】
(試験例1−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例1−1と同様にして、サンプルを得た。
【0144】
(試験例2−1)
まず、ディスク状原盤を準備し、この原盤の表面に無機レジスト層を形成した。次に、記録媒体としての原盤を、図24に示した原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光し、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像をレジスト層全体に形成した。レーザ光の波長は266nm、レーザパワーは0.50mW/mとした。
【0145】
次に、原盤を現像機に搬送し、原盤上のレジスト層に対して現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、現像機のターンテーブル上に未現像の原盤を載置し、原盤を回転させつつ原盤の表面に現像液を滴下して、その表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層の全体に、六方格子パターンの開口部が形成された。
【0146】
次に、原盤をエッチング装置に搬送し、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、原盤表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の部分ではレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が原盤表面に形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するディスク状原盤が得られた。なお、この原盤では、列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0147】
次に、作製したディスク状原盤上に紫外線硬化樹脂を塗布した後、PMMAフィルムを紫外線硬化樹脂上に密着させた。次に、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射し硬化させた後、PMMAフィルムと一体となった紫外線硬化樹脂を原盤から剥離した。これにより、六方格子状に構造体が多数配列されたPMMAフィルムが得られた。このPMMAフィルムの構造体の配置ピッチPは270nm、高さHは160nm、アスペクト比は0.59であった。また、構造体の形状は、頂部に曲率を有する楕円錐形状であった。
【0148】
次に、PMMAフィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。Ag層の膜厚は10nmとした。
以上により、目的とするサンプルを得た。
【0149】
(試験例2−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例2−1と同様にして、サンプルを得た。
【0150】
(試験例2−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例2−1と同様にして、サンプルを得た。
【0151】
(試験例3−1)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の配置ピッチPを240nm、高さHを180nm、アスペクト比を0.75とする以外は、試験例1−1と同様にして
サンプルを得た。
【0152】
(試験例3−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例3−1と同様にして、サンプルを得た。
【0153】
(試験例3−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例3−1と同様にして、サンプルを得た。
【0154】
(試験例4−1)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の配置ピッチPを230nm、高さHを280nm、アスペクト比を1.22とする以外は、試験例1−1と同様にして
サンプルを得た。
【0155】
(試験例4−2)
Ag層の膜厚を20nmとする以外は試験例4−1と同様にして、サンプルを得た。
【0156】
(試験例4−3)
Ag層の膜厚を30nmとする以外は試験例4−1と同様にして、サンプルを得た。
【0157】
(表面抵抗の評価)
上述のようにして得られた試験例1−1〜4−3のサンプルを表面抵抗を以下のようにして評価した。サンプルを5cm角に切り出し4端子法にて表面抵抗を測定した。その結果を表5に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
表5から以下のことがわかる。
アスペクト比を大きくするに従って、表面抵抗が増加する傾向がある。Ag層の膜厚を厚くするに従って、表面抵抗が低下する傾向がある。
平滑面にAg層を成膜した場合には、膜厚10nmからAg層がフィルム面内方向で導通する。これに対して、構造体からなる凹凸面にAg層を成膜した場合には、Ag層の膜厚が10nm以上20nm以下であり、かつ、アスペクト比が0.75以上1.22以下であると、Ag層はフィルム面内方向で導通しない。すなわち、フィルム表面の構造体の有無を利用して、フィルム表面に配線を形成することができる。
Ag層の膜厚が20nmである場合には、アスペクト比が0.59であると、Ag層はフィルム面内方向で導通するのに対して、アスペクト比が0.75、1.22であると、Ag層はフィルム面内方向で導通しない。すなわち、フィルム表面の構造体のアスペクト比の違いを利用して、フィルム表面に配線を形成することができる。
なお、上記試験例では、Agを金属層の材料とする場合を示したが、Al、Au、Pt、Pd、Ni、Cr、Nb、Cuなどを金属層の材料とした場合にも、上記と同様の傾向が得られると推測される。
【0160】
(実施例1)
まず、ディスク状原盤を準備し、この原盤の表面に無機レジスト層を形成した。次に、記録媒体としての原盤を、図24に示した原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光し、円環状の第1の領域R1および第2の領域R2を交互に形成した(図23A、図23B参照)。この際、第1の領域R1には、隣接する3列のトラック間において六方格子状をなる露光パターンを形成した。これに対して、第2の領域R2には、露光パターンを形成せず、第2の領域R2を非露光部とした。レーザ光の波長は266nm、レーザパワーは0.50mW/mとした。
【0161】
次に、原盤を現像機に搬送し、原盤上のレジスト層に対して現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、現像機のターンテーブル上に未現像の原盤を載置し、原盤を回転させつつ原盤の表面に現像液を滴下して、その表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層の第1の領域R1に、六方格子パターンの開口部が形成された。現像液としては、無機アルカリ性現像液(東京応化社製)を用いた。
【0162】
次に、原盤をエッチング装置に搬送し、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、原盤表面において、レジスト層から露出している第1の領域R1の六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の部分ではレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部が原盤表面の第1の領域R1にのみ形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するディスク状原盤が得られた。なお、この原盤では、列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0163】
次に、上記ディスク状原盤と、紫外線硬化樹脂を塗布したPMMAフィルムを密着させ、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射し硬化させた後、PMMAフィルムと一体となった紫外線硬化樹脂を剥離した。これにより、六方格子状に構造体が多数配列された第1の領域と、平坦な第2の領域とが表面に交互に形成されたPMMAフィルムが得られた。このフィルムの第1の領域R1における構造体の配置ピッチPは250nm、高さHは200nm、アスペクト比は0.8であった。また、構造体の形状は、頂部に曲率を有する楕円錐形状であった。
【0164】
次に、PMMAフィルムをDC(直流)マグネトロンスパッタリング装置に搬送し、Arガスをスパッタリング装置に投入しながら、0.1Pa程度の雰囲気でAg層を成膜した。なお、Ag層の膜厚は、上記の試験例の評価結果を考量して、20nmとした。
以上により、目的とするフレキシブル基板が得られた。
【0165】
(配線評価)
上述のようにして得られたフレキシブル基板の配線を以下のようにして評価した。
まず、円環状の配線の2点にテスターのプローブをあてて、周方向の抵抗を測定した。次に、径方向(円環状の配線と直交する方向)の2点にテスターのプローブをあてて、径方向の抵抗を測定した。その結果、円環状の配線上では100Ω程度の導通が確認されたのに対して、径方向では絶縁されていることが確認された。この結果より、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を形成できることがわかった。
【0166】
上述の試験例、および実施例では、構造体のアスペクト比が1程度である場合について示したが、アスペクト比を大きくし、かつ、構造体の斜面を急峻にすれば、さらに面内の電気的変調の選択幅が広がり、それに伴い金属層の厚さも厚くできると考えられる。
【0167】
(実施例2)
まず、銅を30nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を硫酸銅めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、陽極に含りん銅陽極を用いて、陰極電流密度2〜3A/dm2(表1参照)で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0168】
5分の銅めっき厚さは2.4μmで、抵抗値が8μΩ/cmであった。また、10分の銅めっき厚さは4.9μmで、抵抗値が6μΩ/cmであった。
【0169】
(実施例3)
まず、銀を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を銀めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表2に示す陰極電流密度で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0170】
(実施例4)
まず、金を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板をシアン化金めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表3に示す陰極電流密度で攪拌しながら、5分、または10分めっきした。
【0171】
(実施例5)
まず、金を25nm成膜する以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を得た。次に、このフレキシブル基板を酸性金めっき液中に浸すとともに、フレキシブル基板の配線を陰極にして、表4に示す陰極電流密度で攪拌しながら。5分、または10分めっきした。
【0172】
(実施例6)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0173】
(実施例7)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0174】
(実施例8)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0175】
(実施例9)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表6に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0176】
(実施例10)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0177】
(実施例11)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0178】
(実施例12)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0179】
(実施例13)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。
【0180】
(実施例14)
露光工程、およびエッチング工程の条件を調整し、構造体の構成を表7に示すようにする以外は実施例1と同様にして、フレキシブル基板を作製した。なお、この実施例14では、露光工程を調整することにより、円周周期800nm〜3733nmの範囲でランダムに変化させて、ランダムに配列された多数の構造体をフレキシブル基板表面に形成した。
【0181】
表6は、
【表6】
【0182】
【表7】
【0183】
(配線評価)
上述のようにして得られたフレキシブル基板の配線を以下のようにして評価した。
まず、円環状の配線の2点にテスターのプローブをあてて、周方向の抵抗を測定した。次に、径方向(円環状の配線と直交する方向)の2点にテスターのプローブをあてて、径方向の抵抗を測定した。その結果、円環状の配線上では導通が確認されたのに対して、径方向では絶縁されていることが確認された。この結果より、構造体の有無、または構造体のアスペクト比の違いを利用して、配線を形成できることがわかった。また、構造体をランダムに配列した場合にも、構造体を規則的に配列した場合と同様に配線を形成できることがわかった。
【0184】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0185】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0186】
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0187】
また、上述の実施形態では、片面または両面に配線が形成された単層の配線構造体に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、多層の配線構造体に対しても適用可能である。
【0188】
また、上述の実施形態では、平面状の基体表面に配線を形成する場合を例として説明したが、配線を形成する面は平面に限定されるものではなく、曲面状の基体表面に配線を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0189】
1 配線構造体
2 基体
3 構造体
4 金属層
11 ロール原盤
12 構造体
13 レジスト層
41 ディスク状原盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有する基体と、
上記第1の領域、および上記第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備える配線構造体。
【請求項2】
上記構造体のアスペクト比が、0.3以上である請求項1記載の配線構造体。
【請求項3】
上記第1の領域には、金属層が不連続的に形成されている請求項1記載の配線構造体。
【請求項4】
上記構造体は、上記基体の表面において複数列のトラックをなすように配置されているとともに、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している請求項1記載の配線構造体。
【請求項5】
上記基体は、可撓性を有する請求項1記載の配線構造体。
【請求項6】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有する基体と、
上記第1の領域、および上記第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備え、
上記第1の構造体のアスペクト比は、上記第2の構造体のアスペクト比に比して大きい配線構造体。
【請求項7】
上記第1の構造体のアスペクト比が、0.3以上であり、
上記第2の構造体のアスペクト比が、0.3未満である請求項6記載の配線構造体。
【請求項8】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
上記基体表面に金属層を成膜する工程と
上記金属層が形成された上記基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
上記金属層の形成工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の構造体の有無を利用して、上記第1の領域に上記金属層を不連続的に形成するのに対して、上記第2の領域に上記金属層を連続的に形成することにより、上記金属層からなる配線パターンを上記第2の領域に形成し、
上記メッキ処理の工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、上記第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法。
【請求項9】
上記金属層の形成工程では、物理的気相成長法または化学的気相成長法により上記金属層を形成する請求項8記載の配線構造体の製造方法。
【請求項10】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
上記基体表面に金属層を成膜する工程と
上記金属層が形成された上記基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
上記金属層の形成工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、上記第1の領域に上記金属層を不連続的に形成するのに対して、上記第2の領域に上記金属層を連続的に形成することにより、上記金属層からなる配線パターンを上記第2の領域に形成し、
上記メッキ処理の工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、上記第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法。
【請求項11】
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有し、
上記第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤。
【請求項12】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有し、
上記第1の構造体のアスペクト比は、上記第2の構造体のアスペクト比に比して大きく、
上記第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤。
【請求項1】
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有する基体と、
上記第1の領域、および上記第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備える配線構造体。
【請求項2】
上記構造体のアスペクト比が、0.3以上である請求項1記載の配線構造体。
【請求項3】
上記第1の領域には、金属層が不連続的に形成されている請求項1記載の配線構造体。
【請求項4】
上記構造体は、上記基体の表面において複数列のトラックをなすように配置されているとともに、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している請求項1記載の配線構造体。
【請求項5】
上記基体は、可撓性を有する請求項1記載の配線構造体。
【請求項6】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有する基体と、
上記第1の領域、および上記第2の領域のうち該第2の領域に連続的に形成されて、配線パターンをなす金属層と
を備え、
上記第1の構造体のアスペクト比は、上記第2の構造体のアスペクト比に比して大きい配線構造体。
【請求項7】
上記第1の構造体のアスペクト比が、0.3以上であり、
上記第2の構造体のアスペクト比が、0.3未満である請求項6記載の配線構造体。
【請求項8】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
上記基体表面に金属層を成膜する工程と
上記金属層が形成された上記基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
上記金属層の形成工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の構造体の有無を利用して、上記第1の領域に上記金属層を不連続的に形成するのに対して、上記第2の領域に上記金属層を連続的に形成することにより、上記金属層からなる配線パターンを上記第2の領域に形成し、
上記メッキ処理の工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、上記第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法。
【請求項9】
上記金属層の形成工程では、物理的気相成長法または化学的気相成長法により上記金属層を形成する請求項8記載の配線構造体の製造方法。
【請求項10】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを基体表面に形成する工程と、
上記基体表面に金属層を成膜する工程と
上記金属層が形成された上記基体表面に対して、メッキ処理を施す工程と
を備え、
上記金属層の形成工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の構造体のアスペクト比の違いを利用して、上記第1の領域に上記金属層を不連続的に形成するのに対して、上記第2の領域に上記金属層を連続的に形成することにより、上記金属層からなる配線パターンを上記第2の領域に形成し、
上記メッキ処理の工程では、
上記第1の領域および上記第2の領域の金属層の導通の有無を利用して、上記第2の領域に選択的にメッキ処理を施す配線構造体の製造方法。
【請求項11】
微細ピッチで構造体が多数形成された第1の領域と、平面状に形成された第2の領域とを有し、
上記第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤。
【請求項12】
微細ピッチで第1の構造体が多数形成された第1の領域と、微細ピッチで第2の構造体が多数形成された第2の領域とを有し、
上記第1の構造体のアスペクト比は、上記第2の構造体のアスペクト比に比して大きく、
上記第2の領域が、配線パターンの形状を有している原盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−233830(P2011−233830A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105312(P2010−105312)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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