説明

配線構造体の製造方法

【発明の詳細な説明】
〔発明の利用分野〕
本発明は高分子樹脂を層間絶縁膜もしくは保護膜として用いる配線構造体及びその製造方法に係り、特に基板と配線もしくは配線相互の電気的接続が良好な配線構造体およびその製造方法を提供することにある。
〔発明の背景〕
第2図を用いて従来技術の問題点について述べる。なおこの従来技術は斉木他;電子通信学会誌論文誌;Vol63−C(9)(1980/9)p586に記載されている。まず第2図(a)に示すように表面に絶縁層もしくは配線層(図示せず)が形成されているSiウエハなどの基板10上にポリイミド樹脂からなる高分子樹脂層11を形成する。次いで接続口13を形成するための、フオトレジスト等からなるマスク12を形成し、抱水ヒドラジン系エツチング液によつて接続口13を形成する。この接続口13の形成によつて露出した基板10表面には一般にはエツチング液ともしくはその後の洗浄に用いられる水などと表面に露出した物質との反応層14が生成される。例えば基板10表面にSiが露出した場合はSiO2などが、Alなどが露出した場合にはAl2O3,Al(OH)などが生成される。この反応層14は多くの場合高抵抗もしくは絶縁性を有し、この上に直ちに配線層を形成しても、該配線層と下地の基板10や配線層(図示せず)と良好な電気的接続を得ることは困難である。そこでこの反応層14を除去することが必要である。この反応層14は除去するには、スパツタクリーニングによつて行なうことができる。これは第2図(b)に示すように、マスク12を除去した後に基板10全面をArなどの不活性ガスイオンによつてエツチングして、高分子樹脂層11表面を僅かに除去(厚さ2〜50nmが多い)して同時に反応層14をも除去し、次いで第2図(c)に示すように基板10を大気に晒すことなく配線層15を形成して、これを所定の形状に加工する。この様にスパツタクリーニングを用いることによつて、例えば基板10表面の配線層(図示ぜず)と配線層15との間の、接続口13を介しての接触抵抗は熱処理を行なわなくてもほぼ1×10-8Ω・cm2と、十分に低い抵抗値が得られていた。しかし以上の技術は以下の様な欠点を有することが本発明者の検討の結果判明した。すなわち上記方法においては、接続口13の深さTの、狭い方の幅Wに対する比、即ちアスペクト比が1/2よりも小さな場合には、上に説明した如く良好な接続が得られる。しかしアスペクト比が1/2を越えると第2図(d)に示すように、接続口13底部の反応層14はスパツタクリーニングによつても十分には除去されず、逆に高分子樹脂層11表面からエツチングされた物質などが堆積したり、接続口13底部に露出した物質と反応したりして出来る再付着物層16が却つて形成されてしまい、低い接触抵抗が実現されなくなる場合のあることがわかつた。これは接続口13のアスペクト比が大きくなるにつれて不活性ガスイオンの入射が少なくなり、反応層14の除去速度の低下する反面、高分子樹脂層11表面からエツチングされた物質が、接続口13底部に堆積したり、被エツチング物質が分解して酸素などが生成されこの酸素などが接続孔13底部に露出した物質と反応したりして、再付着物層が形成されるためであることがわかつた。従つて従来技術においてはアスペクト比1/2以上の接続口13を用いることは困難であつた。例えば、高分子樹脂層11の厚さが1μmである場合、幅Wが2μm以下の微細な接続口23を用いることは困難であつた。
〔発明の目的〕
本発明は上記従来技術の欠点を克服し、1/2以上のより望ましくは1以上の高アスペスト比の接続口を用いることが可能な配線構造体とその製造方法とを提供することを目的とする。
〔発明の概要〕
上記従来技術の欠点の生ずる原因は、スパツタクリーニングの際に第2図(d)に示した如く再付着物層16が形成されるためである。詳細な検討の結果、この様な再付着物層16は、接続口13が高分子樹脂層中に形成される場合に特に形成され易いことがわかつた。他方接続口がSiO2や金属などからなる層に形成される場合、接続口のアスペクトル比が1以上であつても再付着物の層は殆ど形成されないことがわかつた。
本発明は以上の検討結果に基づき、スパツタクリーニングを行なう際に高分子樹脂層表面を再付着物層が生成されにくく、また基板を汚染することのない物質からなる第1の層でおおつた構造とし、しかる後にスパツタクリーニングと第2の層の形成を行なうことによつて、アスペクト比が1/2以上の接続口部分においても十分に低い接触抵抗の実現を可能としたものである。第1の層としてCrもしくはCrを主成分とした合金もしくは化合物を用いないのは以下の理由による。第1図(a)において、ポリイミド等の高分子樹脂層21にアスペクト比1/2以上の接続口23を形成するためには湿式の化学エツチング液を用いることは一般に困難であることが知られている。これに代る方法としては本間、他,アイ・イー・デー・エム・テクニカル・ダイジエスト(Homma,et al;IEDM Tehnical Digest)1979,p54に示されているように、O2もしくはO2とAr、O2のフレオン系ガスとの混合ガスを用いたドライエツチング法が用いられる。しかるにこのドライエツチング法によつて第1の層27も僅かにエツチングされる。エツチングされた第1の層はエツチング装置内部や基板20表面に付着する。基板20が主にSiから成り、第1の層が主にCrから成る場合、付着したCrは比較的低温(350℃以上)で速やかに基板20のSi中に拡散するために、そこに形成されている素子(図示せず)の特性を損う結果となるためである。接続口23の形成の際に露出した基板20表面には、主に基板20表面を構成する物質の酸化物からなる反応層24が形成される。なお第1の層27に接続口23のパターンを形成するためには、多くの場合フオトレジストによるエツチングマスク(図示せず)が用いられるが、このエツチングマスクは、殆どの場合、高分子樹脂層21のエツチングの際に同時にエツチングされてしまう。次に第1図(b)に示すように、基板20の表面にスパツタクリーニングを施し、第1の層27の一部と反応層24とをエツチング除去する。さらに基板20を大気に晒すことなく第2の層25を被着する。第1図(c)に示すように必要に応じて第2の層25をマスクとして第1の層27の露出部分を除去することによつて本発明の配線構造体が形成される。なお第1の層27が導電性でない場合にはその露出部分を必ずしも除去する必要はない。
第1の層としてはNi,Ti,Mo,Ta,W,Pt,Pdなどの金属やこれらとAlやCuとの合金、さらにはAl,Ti,Ta,Siなどの窒化物や窒化物と酸化物の混合物が適している。第2の層は導電路の主体となるものでAlやCu、もしくはこれらとSi,Be,Ni,Pd,Ti,W,Ta,Mo等との合金が望ましいが、必ずしも単一の層である必要はなく上記物質の積層膜であつても良い。本発明の配線構造体においては、第2の層25の下の第1の層27として耐湿性や耐熱性に優れた上記の金属や合金もしくは化合物などを用いると、高分子樹脂層21中の水分等による第2の層25の腐食が起こりにくくなり、配線構造体の信頼性が著しく向上する。なお、高分子樹脂層21中の水分とは、本来樹脂層中に含まれるものでなく、外部より高分子樹脂層21中に侵入・透過して、配線層にまで達するものとされている。また第2の層25と接続口23底部に露出した層(図示せず)との接触抵抗は、従来技術においては、1×10-8Ω・cm2以下に低減化することは困難であるが、本発明を用いるとスパツタクリーニングの際に高分子樹脂層21がエツチングされることが殆どないために、第3図に示す様に、接続口23のアスペクト比が1を超える場合においても抵抗低減のための熱処理を行なう前において1〜3×10-9Ω・cm2(いずれも熱処理前)という低い接触抵抗を実現できるなど、従来技術に比して著しい利点を有するものである。
〔発明の実施例〕
以下に第1図を用いて実施例を説明する。
実施例1 第1図(a)において、基板20は半導体素子(図示せず)などが形成された集積回路基板であり、その表面の絶縁層(図示せず)の所定の部分が除去されて素子と配線層との接続部が露出されたものを表す。その上に厚さ1μmのポリイミド樹脂からなる高分子樹脂層21が塗布法によつて形成されている。その上に厚さ約50nmのTiの窒素化合物(TiN)からなる第1の層27を被着し、素子と配線層との接続部に相当する1μm角の部分がエツチングによつて除去され、これをマスクとして高分子樹脂層21がO2を用いた反応性スパツタエツチングによつて除去され、素子の接続部表面にはSi酸化物からなる反応層24が生成されている状態を示す。この反応層24は物質やエツチング条件等によつて異なるが一般には5〜20nmといわれている。次に第1図(b)に示すようにArを用いたスパツタクリーニングによつて、第1の層27を30nmエツチングした。このエツチングの際に、反応物層24も同時に除去された。次いで第2の層25として厚さ約0.9μmのAl−2%Si合金を被着し、フオトレジストをマスクとして所定の形状に加工した。更に第2の層をマスクとして第1の層をも加工して、配線構造体を形成した。本実施例においては、第2の層25の下にTiNからなる第1の層27が存在し、このTiNが水分等を透過させないために第2の層25の腐食が防止されるという効果を有する。いわゆる耐湿信頼性試験では従来構造に比して約1桁寿命が向上した。なお接続孔23内部において第2の層は高分子樹脂層21と直接に接しており、他の部分よりも腐食が起こり易いといえる。しかし腐食の進行は局所的もしくは確率的なものであり、接続口23部の接続面積は僅かであるため、実用上は殆ど問題とならない。本実施例において、接続抵抗は1.5×10-9Ω・cm2という低い値が得られた。
実施例2 基板20および高分子樹脂層21は実施例と同一のものを用いた。第1の層27として、厚さ60nmのスパツタリングによりTaを形成した。接続口23に対応する部分をフオトレジストをマスクとして、CF4ガスを用いた反応性スパツタエツチングによつて除去し、実施例1と同じ方法によつて接続口23を形成した。その後実施例1と同じ条件によつて第2の層25を被着し、配線パターンに形成した。本構造により効果は大略実施例1と同等であるが、TiN膜は反応性スパツタリングやCVD法によつて形成しなければならないのに対し、本実施例におけるTaは通常のスパツタ法で被着でき、より簡便な方法であるといえる。
実施例3 第1図(a)において基板20として、MOS素子とそれに接続するAl−1%Cu合金からなる下部配線層(図示せず)を含むSiウエハを用いた。この上に厚さ約2μmのポリイミド樹脂21を被着し、第1の層27として100nmのシリカフイルム(塗布法のSiO2膜)を形成した。下部配線層との接続予定部の1.5×1.5μm2に相当するシリカフイルムを除去し、実施例1と同様に高分子樹脂層21をエツチングして接続口23を形成した。以下実施例1と同様な手順によつて配線構造体を形成した。本実施例においては、第1の層27は絶縁性であつて、第2の層25の加工後に必ずしも第2の層25に沿つて露出部を除去する必要はない。しかし、第1の層27下部の高分子樹脂層21は機械的に柔かく、一方第1の層27は機械的に硬く、もろいために外部から機械的な力が加わつた際に破損し、その破片などによつて高分子樹脂層21や第2の層27等に損傷を及ぼす可能性もあるために、露出部を除去したものである。本実施例の効果は前2例と同様であるが、第1の層27が塗布法によつて形成可能であるという点でより簡便である。
実施例4 第1図(a)枚における基板20および高分子樹脂層21は実施例3と同等のものを用いた。次にこの上に減圧CVD法によつて100nmのW膜を形成した。W膜はWF5をガス源とし、0.5〜1Torrの圧力下、基板温度約350℃で形成した。次にこのW膜を過酸化水素水によつてエツチングした。高分子樹脂層21表面にはW膜形成時にポリイミド樹脂との反応によつて生成された約30nmのWC(タングステンカーバイドの層)が残り、これを第1の層27として用いた。次いでレジストをマスクとし、Arイオンビームによつて接続口23形成予定部の2μm角のWCを除去し、以下、実施例1と同様な配線構造体を形成した。なお本実施例においては第2の層としてAl/Ta/Alが各々400nm/10nm/400nmの積層膜を用いた。本実施例においては、第1の層27の形成にやつ手数を要するが、形成されたものは高分子樹脂層21との反応生成物であるために、高分子樹脂層21と第2の層25との接着が極めて良好であるとの利点を有している。
〔発明の効果〕
上記説明から明らかように本発明の配線構造体及びその製造方法は従来技術に対して下記の利点を有している。
1)アスペクト比が1/2以上の接続口を用いても十分に低い接触抵抗が得られるため、配線構造の微細化が可能となる。接触抵抗は1〜3×10-9Ω・cm2と従来の約1/10に低減される。
2)高分子樹脂層と導電路の主体となる配線層との間に耐湿性もしくは耐熱性に優れた層が介在するため、高分子樹脂層/配線層界面からの配線層の腐食が抑制され、耐湿信頼性は従来技術に比して1桁以上向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の配線構造体及びその製造方法を示す断面図、第2図は従来技術による配線構造体及びその製造方法を示すための断面図、第3図は本発明の特長の一つを説明するための図である。
10,20……基板、11,21……高分子樹脂層、12……マスク、13,23…接続口、14,24……反応層、15,25……配線層となる第2の層、16……再付着物の層、27……第1の層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体基板の表面上に有機高分子からなる絶縁膜およびNi、Ti、Mo、Ta、W、Pt、およびNi、Ti、Mo、Ta、W若しくはPtとAl若しくはCuの合金およびAl、Ti、Ta若しくはSiの窒化物と酸化物からなる群から選択された材料からなる第1の膜を積層して形成する工程と、当該第1の膜および上記絶縁膜の所定部分を除去してアスペクト比が1/2以上で、かつ、側面の傾斜がほぼ垂直である開口部を形成する工程と、当該開口部を介して露出された上記半導体基板の表面に形成された、上記半導体基板の表面を構成する物質の酸化物からなる反応層を、酸素を含まない不活性ガスによるスパッタクリーニングによって除去する工程と、上記半導体基板の露出された表面上から上記絶縁膜の側部を経て上記第1の膜の上面上に延伸する導電性膜からなる第2の膜を形成する工程と、当該第2の膜を所定の形状に加工する工程を含むことを特徴とする配線構造体の製造方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【特許番号】第2509175号
【登録日】平成8年(1996)4月16日
【発行日】平成8年(1996)6月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭60−54411
【出願日】昭和60年(1985)3月20日
【公開番号】特開昭61−214538
【公開日】昭和61年(1986)9月24日
【出願人】(999999999)株式会社日立製作所
【参考文献】
【文献】特開昭55−71089(JP,A)
【文献】特開昭55−71040(JP,A)
【文献】特開昭55−59741(JP,A)
【文献】特開昭58−176950(JP,A)
【文献】特開昭59−4024(JP,A)