説明

配線構造体製造方法及び配線構造体製造装置並びに配線構造体

【課題】インクジェット方式を用いた微細配線の形成において、複数の材料にまたがるよう形成された微細配線の断線が防止され、好ましい微細配線形成が実現される配線構造体製造方法及び配線構造体製造装置並びに配線構造体を提供する。
【解決手段】シリコンデバイス(12)を含む基板(10)の表面に、基板とシリコンデバイスをまたがって形成される電気配線(20)のパターンに対応して、基板の基材に対応する第1の密着補助層(14)をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、シリコンデバイスに対応する第2の密着補助層(16)をインクジェット方式によりパターンニングして形成し、第1の密着補助層及び第2の密着補助層の上に、めっき受容性層(18)をインクジェット方式によりパターンニングして形成し、めっき受容性層に対してめっき処理を行い電気配線が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線構造体製造方法及び配線構造体製造装置並びに配線構造体に係り、特に、インクジェット方式を用いた微細パターンの形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化に伴い、実装される各種電子デバイス(ICチップなどの能動素子や、キャパシタ、レジスタなどの受動素子)もますます小型化しており、多種多様な実装基板の小型化、薄型化の手法が提案されている。大きな配線スペースを必要とするワイヤボンディングなどに代わるフリップチップ法、複数の半導体素子をパッケージ内で集積するSiP、素子を基板内に内蔵する内蔵基板、チップサイズパッケージ(CSP)などが提案実用化されている。
【0003】
現在の液晶ディスプレイは、画面大型化や生産効率向上のためにマザーガラス基板が大型化しており、必然的に製造装置も巨大化する結果、設備投資額がはねあがり製造コスト低減が困難になっている。また、画面大型化に伴うガラス基板の重量増加によりディスプレイ筐体のコストダウンも限界にきている。これらの課題を解決する方法として、ガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT,Thin Film Transistor)を直接形成する手法に代わり、TFTを予めシリコン基板を使って大量に作製しておき、それをガラス基板上に実装する手法が提案されている。また、かかる技術を適用して、予め作製されたTFTを樹脂フィルムに埋め込むことでフレキシブルディスプレイや電子ペーパーを実現しようという提案もなされている。
【0004】
一般に、配線基板の製造方法としてフォトリソ法が知られている。フォトリソ法は、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板の上にドライフィルムレジスト又は液レジストによるレジスト層を形成し、フォトマスクを介してレジスト層に紫外線を照射してパターン露光(現像)することによりレジスト層のパターニングを行い、レジストパターンにより被覆されていない銅箔部分をエッチングにより除去して導体パターンが得られる。上記したサブトラクティブ法以外にも、セミアディティブ法、アディティブ法がフォトリソ法として知られている。
【0005】
一方、フォトリソ法は、レジスト層の露光に用いるフォトマスクを作製する必要がある。また、エッチング工程やめっき工程とは別に中間材料としてのレジストの現像工程が必要となる。これに対して、印刷技術を用いたプリンタブルエレクトロニクスによる配線描画が提案されている。特に、インクジェット方式を用いて導電性微粒子材料を直接パターニングする方法は、マスクレス、かつ、オンデマンドで配線基板の製造が可能であり、レジスト現像や配線エッチング工程も削減できるなどフォトリソ法に代わる技術として期待されている。
【0006】
他方、インクジェット方式による配線基板(配線パターン)の形成では、以下の課題が存在している。まず、配線基板の導体(配線)として一般に用いられる銅に対して、現在実用化されている金や銀などの導電インクは材料の原価が銅インクと比較して10倍以上と高価である。一方、銅インクは金や銀などの導電インクと比較して材料の原価が安価であるものの、酸化されやすい性質を有するためにパターニング後の還元工程が必須である。すなわち、金インク又は銀インクであるにせよ銅インクであるにせよ、いずれにしてもコストメリットを出すことが課題となっている。
【0007】
また、インクジェット方式で描画された配線パターンに導電性を発現させるには、高温で長時間にわたる焼成処理(例えば、200℃で一時間)が必要である。そうすると、耐熱性の低い汎用の樹脂基板を用いることが困難である。他方で、焼成処理のための設備が必要となり、製造装置全体としての小型化が困難である。また、ランニングコストの低減化も課題として挙げられる。
【0008】
さらに、良好な吐出特性を確保する観点から、インクジェット方式に適用される導電インクの粘度はおおよそ20mPa・s以下となっているので、1回の描画によって得られる塗布厚は1μm程度が限界である。好ましい電気的特性を確保する観点から、配線の厚みは10μm以上としたいところ、10μm以上の塗布厚を得るためには、描画工程及び硬化工程を複数回にわたって繰り返さなければならない。さらにまた、インクジェット方式により得られた配線は、基板との密着性(基板との間の接合力)が低いといった課題も存在している。
【0009】
特許文献1は、インクジェットヘッド方式を用いて、導電性微粒子を含有する液体材料によってチップ部品と回路基板とを導電接続する接続配線を形成する技術を開示している。また、特許文献2は、いわゆる「MAT技術(micro assembling technology)」を用いてドライバーIC(平板状素子)を作製し、樹脂基板にドライバーICが埋め込まれた平板状素子付き基板の製造方法を開示している。かかる平板状素子付き基板に形成される金属配線の形成方法として、インクジェット方式が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−140270号公報
【特許文献2】特開2010−2733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、インクジェット方式により描画された配線は、異なる材料にまたがって形成される場合に、使用される導電インクとの親和性が高い方の材料側に導電インクが引き寄せられ、一方、導電インクとの親和性が低い材料によって導電インクがはじかれる、いわゆる、液食われが発生する。結果として、異なる材料の境界において導電インクが分断され、配線切れが生じてしまう。
【0012】
特許文献1及び特許文献2に係る発明は、異なる材料にまたがって配線が形成されるので、上記のように液食われによる断線が発生しうるものの、かかる課題について記載又は示唆をしていない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式を用いた微細配線の形成において、複数の材料にまたがるよう形成された微細配線の断線が防止され、好ましい微細配線形成が実現される配線構造体製造方法及び配線構造体製造装置並びに配線構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る配線構造体製造方法は、材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応する第1の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、前記第2の基材に対応する第2の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成する密着補助層形成工程と、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、若しくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するめっき受容性層形成工程と、前記形成されためっき受容性層に対してめっき処理を行うめっき処理工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材質が異なる複数の基材を含む基板の表面に、該複数の基材をまたがるように電気配線を形成する際に、インクジェット方式によりパターンニングされる密着補助層が基材の材質に対応して基材ごとに形成されるので、基材の材質の違いによりドットが不均一に形成される液食われが防止され、異なる基材の境界においても連続した好ましい密着補助層のパターンが形成される。当該密着補助層上にめっき受容性層が形成され、さらに、めっき受容性層に対して施されためっき処理により析出させた金属導体によって好ましい電気配線パターンが形成された配線構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線構造体製造方法の概略構成を示す説明図
【図2】図1に示す配線構造体製造方法により製造された配線構造体の概略構造を示す平面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る配線構造体製造方法により作製された配線構造体の概略構造を示す断面図
【図4】図3に示す中間密着補助層の他の態様を示す説明図
【図5】本発明の第3実施形態に係る配線構造体製造方法の概略構成を示す説明図
【図6】本発明の実施形態に係る配線構造体製造装置の概略構成図
【図7】図6に示す密着補助層形成部の概略構成図
【図8】図7に示す密着補助層形成部に具備されるインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図9】図7に示す密着補助層形成部に具備されるインクジェットヘッドのノズル配置を示す平面図
【図10】図7に示す密着補助層形成部の液体供給系の概略構成を示すブロック図
【図11】図6に示す配線構造体製造装置の制御系の構成を示すブロック図
【図12】本発明の第1応用例に係る配線構造体の立体構造を示す断面図
【図13】本発明の第2応用例に係る配線構造体の立体構造を示す断面図
【図14】図13に示す配線構造体の他の態様を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0018】
〔配線構造体製造方法の説明〕
(第1実施形態)
図1(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係る配線構造体製造方法の概略構成を示す説明図である。図1(a)は、ポリカーボネートを基材とする基板10に電子デバイス(シリコンチップ)12が埋め込まれた構造体が図示されている。シリコンチップ12の上面(パッド形成面)には、電気配線(図1(d)に符号20を付して図示)が接合されるパッド(電極)13が形成されている。以下に説明する各工程を経て、図1(a)に図示の構造を有する構造体に電気配線が形成されて配線構造体1が作製される。なお、以下の説明において、図1(a)に図示した構造体を「基板10」と記載することがある。
【0019】
図1(b)は、図1(a)に図示された基板10の基材部分に第1の密着補助層14が形成され、シリコンチップ12に第2の密着補助層16が形成された状態が図示されている(密着補助層形成工程)。第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16は、インクジェット方式により形成され、基板10に形成される電気配線に対応してパターンニングされる。第2の密着補助層16は、パッド13及び第1の密着補助層14との間を埋め、かつ、パッド13及び第1の密着補助層14と接触するよう形成される。
【0020】
例えば、第1の密着補助層14を形成する第1の密着補助層液は、少なくともアニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された1種類以上の分散剤と、樹脂粒子と、水系分散剤と、を含有するNBR(ニトリルゴム)ラテックス系の材料が適用され、インクジェット方式による打滴が可能な粘度(10cP程度)に、所定の溶媒を用いて希釈されている。また、第2の密着補助層16を形成する第2の密着補助層液は、シランカップリング系の材料が適用され、第1の密着補助層液と同様に、10cP程度の粘度に希釈されている。
【0021】
電気配線20のパターンに対応して、インクジェット方式により第1の密着補助層液及び第2の密着補助層液が打滴されると、加熱(例えば、100℃以上の温度で2時間以下、好ましくは1時間以下)による硬化処理、酸性化合物又は多価金属塩を溶解した処理液を付与する疎水化処理、及び所定の洗浄液を用いた洗浄工程が施され、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16が連続した構造を有する密着補助層が形成される。
【0022】
第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16は、後述するめっき受容性層(図1(c)に符号18を付して図示)及び電気配線と、基板10との密着性を高めるための接着層として設けられる。また、第1の密着補助層14は基板10の基材(ポリカーボネート)との親和性が高いので、基板10の表面に留まろうとし、第2の密着補助層16はシリコンチップ12の基材であるシリコンとの親和性が高いので、シリコンチップ12の表面に留まろうとする。そうすると、基板10とシリコンチップ12との境界における第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の移動が抑制され、該境界における液食われの発生が抑制され、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16の連続性が保たれる。
【0023】
図1(b)に示すように、基板10及びシリコンチップ12上に、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16を含む密着補助層が形成されると、図1(c)に示すように、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の上に、インクジェット方式により電気配線のパターンに対応してパターンニングされためっき受容性層18が形成される。めっき受容性層18を形成するめっき受容性層液は、所定の官能基を有するポリマーと、所定の沸点を示す溶媒が含有される。
【0024】
めっき受容性層18を形成するめっき受容性層液は、特に、該溶媒が180℃未満の沸点を有する溶媒と180℃以上の沸点を有する溶媒とを含む混合溶媒である場合に、優れた連続吐出安定性やパターン形成性が得られるという効果が顕著となる。その理由としては、まず、沸点の高い溶媒を含有することによって、溶媒成分の揮発に起因するノズルの目詰まりが抑制される。さらに、沸点の低い溶媒を含有することによって、液が基板上に着弾する際に、該溶媒の大部分が揮発して粘度が上昇するため、結果として液の広がりなどが抑制され、優れたパターン性能が得られる。なお、第1の密着補助層14を形成する第1の密着補助層液、及び第2の密着補助層16を形成する第2の密着補助層液についても同様である。
【0025】
めっき受容性層液18Aに適用されるポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)と重合性官能基とを含有するポリマーである。ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。
【0026】
電気配線20のパターンに対応して打滴されためっき受容性層液に対して、加熱処理(乾燥処理)又は露光等のエネルギー付与処理を施して硬化させ、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16の境界においても連続する構造のめっき受容性層18が形成される。加熱処理(乾燥処理)の一例として、ヒータによる加熱、乾燥風の噴射が挙げられる。また処理条件の一例として、100℃〜300℃の温度で、5分から120分といった条件が挙げられる。
【0027】
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等を適用することができる。光源の例として、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
【0028】
例えば、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光を適用した場合、露光時間は、ポリマーの反応性及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。露光エネルギーは、使用される材料によって適宜選択されるが、30〜1500mW/cmが好ましい。
【0029】
図1(c)に示すように、めっき受容性層18が形成されると、図1(d)に示すように、めっき膜(電気配線)20が形成される。なお、第1の密着補助層14を形成する第1の密着補助層液、第2の密着補助層16を形成する第2の密着補助層液、及びめっき受容性層液の詳細は後述する。
【0030】
図1(d)に示すめっき処理工程は、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層(めっき受容性層18)に対し、めっき処理を施すことで、めっき膜を形成する工程である。形成されためっき膜は、10×10(ジーメンス/m)〜100×10(ジーメンス/m)程度の高い電気伝導率を有する優れた導電性を有するとともに、めっき受容性層18との間で優れた密着性を有する。
【0031】
本工程において行われるめっきの種類は、めっき受容性層18中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、さらに、電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
【0032】
なお、めっき触媒又はその前駆体が付与されためっき受容性層18がシード層として機能する場合は、めっき受容性層18に対して電気めっきを行うことも可能である。めっき受容性層18との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、めっきの種類を適宜選択することができる。
【0033】
図1(d)に示すように、基板10とシリコンチップ12との境界22の基板10側に第1の密着補助層14が形成され、シリコンチップ12側に第2の密着補助層16が形成される。かかる構造を有する配線構造体1は、基板10の表面及びシリコンチップ12表面のいずれにおいても好ましい密着性を有する電気配線(めっき膜)20を得ることができる。また、めっき膜を用いた電気配線は、数十ミクロンから100μm程度の厚みを得ることができるので、上述した電気伝導率を有する好ましい電気的特性を確保しうる。
【0034】
基板10の材質がポリイミドの場合の第1の密着補助層液は、エポキシ系材料又はポリイミド系の材料が適用される。また、基板10の材質がシクロオレフィンポリマー(CPO)の場合にも、密着性を補助し得る材料が適宜選択される。
【0035】
図2は、図1(a)〜(d)を用いて説明した配線構造体製造方法により製造された配線構造体の概略構造を示す平面図である。同図に示すシリコンチップ12は、TFT(薄膜トランジスタ)やダイオードなどの能動素子及び抵抗器などの受動素子から構成される集積回路24が形成されている。集積回路24は入出力端子としてパッド13が形成され、電気配線20はパッド13と電気的に接続される。
【0036】
すなわち、本例に示す製造方法により作製される配線構造体は、基板10に搭載される集積回路などを含む電子デバイス間を電気的に接続する電気配線や、電子デバイスと他の構成要素(不図示)とを電気的に接続する電気配線が形成される。例えば、本例に示す配線構造体を液晶ディスプレイに適用すると、シリコンチップ12はドライバーICであり、他の構成要素はカラーフィルタの電極となる。他にも、フレキシブルディスプレイや電子ペーパーにも適用可能である。
【0037】
本例に示す配線構造体製造方法では、基板10とシリコンチップ12との境界22を検出し、検出結果に基づいて第1の密着補助層14と第2の密着補助層16との形成位置(第1の密着補助層液と第2の密着補助層液との打滴位置の境界)が調整される。検出工程に適用されるセンサの構成例として、光源とCCDなどの撮像装置を具備した光学式センサが挙げられる。このように、基板10とシリコンチップ12との境界22と、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16と境界が一致するように、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の形成位置の調整をすることで、基板10とシリコンチップ12との境界22において断線が発生することなく、かつ、良好な基板10及びシリコンチップ12との密着性を有する電気配線が形成される。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る配線構造体の製造方法について説明する。図3(a)は、本例に示す配線構造体の製造方法により作製された配線構造体の構造を示す断面図である。図3(a)に示す配線構造体は、基板10とシリコンチップ12との境界22を含み、該境界22から基板10側及びシリコンチップ12側の両側に第3の密着補助層28が形成されている。すなわち、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16が第3の密着補助層28によりつながれた構造を有する、連続した密着補助層が形成される。図3(a)に示す第3の密着補助層28は、第3の密着補助層28の形成領域に対して、第1の密着補助層液及び第2の密着補助層液が所定の比率で打滴されて形成されている。
【0039】
図3(a)に示す第3の密着補助層28は、図3(b)に示すように、第1の密着補助層液14Aと第2の密着補助層液16Aが交互に打滴され、両者の打滴比率が50%となる構造を有し、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16との境界(基板10とシリコンチップ12との境界22)を境にして、基板10側とシリコンチップ12側に同数のドットが形成されている。もちろん、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16との境界を境にして、基板10側は第1の密着補助層液14Aの打滴比率を第2の密着補助層液16Aよりも多くするとともに、シリコンチップ12は第2の密着補助層液16Aの打滴比率を第1の密着補助層液14Aの打滴比率よりも多くするように、基板10側とシリコンチップ12側で打滴比率を異ならせる態様も可能である。
【0040】
さらに、基板10側の打滴数とシリコンチップ12側の打滴数を異ならせてもよい。例えば、第3の密着補助層28の形成領域の基板10側の端からシリコンチップ12側の端に向かって、第1の密着補助層液14Aに対する第2の密着補助層液16Aの打滴比率を徐々に多くするように、第1の密着補助層液14Aの打滴比率と、第2の密着補助層液16Aの打滴比率に勾配を持たせる態様も可能である。
【0041】
なお、図3(b)に示す第3の密着補助層28を形成する際は、第1の密着補助層液14Aと第2の密着補助層液16Aのうち、先に打滴された液が揮発固形化する前に次の液が打滴されることが好ましい。
【0042】
図3(c)に示す第3の密着補助層28’は、第3の密着補助層28’の形成領域の同一打滴位置に、第1の密着補助層液14A及び第2の密着補助層液16Aの両方を打滴して構成されている。すなわち、同図に示す第3の密着補助層28’は、基板10(シリコンチップ12)上で第1の密着補助層液14Aと第2の密着補助層液16Aが混合されている。なお、図3(c)では、第1の密着補助層液14Aと第2の密着補助層液16Aとの位置をずらして図示しているが、実際は、第3の密着補助層28’の形成領域では、第1の密着補助層液14Aと第2の密着補助層液16Aが重ねて打滴され、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16と第3の密着補助層28’が一列に並べられている。
【0043】
また、図4に示す第3の密着補助層28”は、第1の密着補助層液と第2の密着補助層液とを予め所定の混合比率で混合された混合液により形成されている。すなわち、第1の密着補助層液と第2の密着補助層液との混合液がインクジェットヘッドに充填され、該混合液によるドットが形成される。
【0044】
本例に示す配線構造体製造方法によれば、第1の密着補助層14と第2の密着補助層16との形成位置の調整がずれた場合や、基板10の搬送位置ずれ、打滴の着弾位置ずれが発生した場合にも、所定の密着信頼性が確保された好ましい電気配線が形成される。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5(a),(b)は、本例に示す配線構造体製造方法の概略図である。図5(a)に示すように、樹脂(ポリカーボネート)製の基板10にシリコンチップ12を埋め込む際に、基板10の弾性変形により基板10とシリコンチップ12との間に(シリコンチップ12の周囲に)隙間10Aが発生することがある。本例に示す配線構造体製造方法では、図5(b)に示すように、第1の密着補助層14を形成する第1の密着補助層液14Aが隙間10Aに充填される。
【0046】
すなわち、第1実施形態において説明した検出工程により、基板10とシリコンチップ12との境界22が検出され、隙間10Aを埋めるように第1の密着補助層液14Aの打滴位置及び打滴量が調整される。なお、基板10の材質や基板10にシリコンチップ12を埋め込む際の条件(温度、加圧力、処理時間等)などに基づいて、シミュレーションや実験等により予め隙間10Aの体積を求めて記憶しておき、該隙間10Aの体積情報に基づいて第1の密着補助層液14Aの打滴量が変更される。
【0047】
もちろん、第2実施形態で説明した第3の密着補助層28(28’,28”)を形成する第3の密着補助層液を用いて、隙間10Aを埋める態様も好ましい。
【0048】
本例に示す配線構造体製造方法によれば、基板10とシリコンチップ12との間に隙間10Aが生じた場合でも、第1の密着補助層液14A(又は、第3の密着補助層液)を用いて隙間10Aが埋められるので、隙間10Aに起因する電気配線の断線が抑制されるとともに、隙間10Aに起因する電気配線の接合性能の低下が抑制され、好ましい電気配線が形成される。
【0049】
〔配線構造体製造装置の説明〕
(全体構成)
次に、上述した配線構造体製造方法を具現化するための装置について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る配線構造体製造装置100の概略構成を示す全体構成図である。同図に示す配線構造体製造装置100は、基板10に第1の密着補助層14(図1(b)〜(d)参照)を形成する第1の密着補助層形成部120と、基板10に第2の密着補助層16を形成する第2の密着補助層形成部160と、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の上にめっき受容性層18を形成するめっき受容性層形成部170と、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の上にめっき受容性層18が形成された基板10にめっき処理を施すめっき処理部180と、を備えて構成されている。
【0050】
図6に示す第1の密着補助層形成部120は、インクジェットヘッド122を備え、インクジェット方式により液滴化された第1の密着補助層液14Aが打滴される。また、第2の密着補助層形成部160はインクジェットヘッド162を備え、インクジェット方式により液滴化された第2の密着補助層液16Aが打滴される。さらに、めっき受容性層形成部170もまた、インクジェットヘッド172を備え、インクジェット方式により液滴化されためっき受容性層液18Aが打滴される。なお、図6では、第1の密着補助層14、第2の密着補助層16及びめっき受容性層18の図示が省略されている。
【0051】
図6では図示を省略したが、本例に示す配線構造体製造装置100は、処理前の基板10が収納される基板保管部と、めっき処理部180による処理後の基板10を格納する基板格納部と、を具備するとともに、基板保管部、基板格納部、及び図6に図示した各部間における基板の受け渡しを行う基板受渡装置(各部へ基板を搬入するローダ装置、各部から基板を搬出するアンローダ装置)を具備している。なお、基板保管部から取り出した基板を、処理後に基板保管部に戻すように構成してもよい。
【0052】
(第1の密着補助層形成部の詳細な説明)
次に、図6に示す第1の密着補助層形成部120の構成について詳細に説明する。図7は、インクジェット方式を用いて第1の密着補助層14(図1(b)〜(d)参照)を形成する第1の密着補助層形成部120の概略構成を示す全体構成図である。同図に示す第1の密着補助層形成部120は、支持台126上に垂直に立てられた2本の支柱128の間に渡したスライドガイド130に沿って移動可能に構成されたヘッド保持部132の下部先端に、回転可能なステージ134を介して取り付けられたインクジェットヘッド122と、ヘッド保持部132に取り付けられたアライメント検出部136と、支持台126上に設けられ、その上に基板10を保持する基板保持部138と、インクジェットヘッド122のノズル面を観察するノズル面観察部140と、インクジェットヘッド122の吐出状態を観察する吐出状態観察部142(142a、142b)と、インクジェットヘッド122のノズル面に対してメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部144と、を含んで構成されている。
【0053】
ヘッド保持部132は、下方の先端にインクジェットヘッド122を保持し、スライドガイド130に沿ってインクジェットヘッド122とともに走査するように構成されている。インクジェットヘッド122をノズル面と平行な面内において回転させる回転機構を備えるとともに、基板10とインクジェットヘッド122とのクリアランスを調整する上下機構を備えている。
【0054】
インクジェットヘッド122を走査させる機構及びインクジェットヘッド122を上下させる機構の駆動源として、リニアモータ等の直線運動型のアクチュエータが適用される。インクジェットヘッド122のより正確な位置決めを行うために、リニアエンコーダやリニアスケールなどを備える態様が好ましい。また、インクジェットヘッド122を回転させる機構の駆動源としては、ステッピングモータやサーボモータ等の回転型アクチュエータが適用される。回転方向の位置を検出する手段としてロータリーエンコーダを備える態様が好ましい。
【0055】
アライメント検出部136は、基板10の被打滴面を照射する光源と、基板10の被撮像面を撮像する撮像装置を含んで構成されている。すなわち、インクジェットヘッド122による打滴に先立ち、アライメント検出部136により基板10が撮像され、その撮像信号に基づいて、基板10の固定位置、姿勢、厚み、シリコンチップ12との境界22(基板10上の座標)などが把握されるとともに、インクジェットヘッド122の位置(姿勢)、基板10の固定位置、及び第1の密着補助層14と第2の密着補助層16との打滴位置などが調整される。
【0056】
基板保持部138は、基板10を被打滴面の裏側から固定保持するとともに、基板10を幅方向、幅方向と直交する方向、上下方向、インクジェットヘッド122のノズル面と平行な面内における回転方向に移動させる機能を有している。基板10を固定保持する方法の一例として、真空吸着(チャッキング)、静電吸着が挙げられる。また、基板保持部138の構成例として、XYテーブルとθテーブルとを組み合わせた構成が挙げられる。
【0057】
ノズル面観察部140は、インクジェットヘッド122のノズル面202A(図8参照)を観察するブロックである。ノズル面観察部140から得られた観察結果に基づいて、インクジェットヘッド122に対してメンテナンス処理が必要であるか否かが判断され、また、インクジェットヘッド122を交換する必要があるか否かが判断される。ノズル面観察部140は、ノズル200(図8参照)を撮像するための撮像装置及びノズル面202Aに光を照射する光源を具備し、ノズル面観察部140の真上に移動させたインクジェットヘッド122のノズル面202Aを下側から撮像する。なお、撮像装置の撮像範囲に対応してノズル面202Aを複数の領域に分割し、インクジェットヘッド122を移動させながら領域ごとに撮像するように構成してもよい。
【0058】
吐出状態観察部142は、インクジェットヘッド122のノズル200から打滴された液滴の飛翔状態を観察するためのブロックであり、飛翔中の液滴に光を照射するための光源142aと、該液滴を撮像する高速撮像素子142bと、を具備している。吐出状態観察部142から得られた情報から液滴の飛翔状態(飛翔方向及び飛翔速度)が把握されるとともに、インクジェットヘッド122の打滴補正がされる。
【0059】
メンテナンス処理部144は、インクジェットヘッド122の良好な打滴状態を保つために、インクジェットヘッド122に対してメンテナンス処理を施すブロックである。メンテナンス処理部144は、ノズル面202Aをクリーニングするためのワイパーや、ノズル200(図8参照)内部の乾燥を防止するためにノズルを封止するキャップ(図10に符号284を付して図示)等を備えている。なお、該キャップは予備吐出(パージ)や吸引の際の液体の受け皿としても利用される。
【0060】
(インクジェットヘッドの構造)
図8は、インクジェットヘッド122を構成する記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル200に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のインクジェットヘッド122は、ノズル200が形成されたノズルプレート202と、圧力室204や共通流路206等の流路が形成された流路板208等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート202は、インクジェットヘッド122のノズル面202Aを構成し、各圧力室204にそれぞれ連通する複数のノズル200が副走査方向に沿って一列に形成されている。
【0061】
流路板208は、圧力室204の側壁部を構成するとともに、共通流路206から圧力室204にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口210を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図8では簡略的に図示しているが、流路板208は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート202及び流路板208は、シリコンを材料とする半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0062】
共通流路206はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路206を介して各圧力室204に供給される。圧力室204の一部の面(図8における天面)を構成する振動板212には、上部電極(個別電極)214及び下部電極216を備え、上部電極214と下部電極216との間に圧電体218がはさまれた構造を有するピエゾアクチュエータ(圧電素子)220が接合されている。振動板212を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ220の下部電極216に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0063】
上部電極214に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ220が変形して圧力室204の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル200からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ220が元の状態に戻る際、共通流路206から供給口210を通って新しいインクが圧力室204に再充填される。
【0064】
なお、本例に示すインクジェットヘッド122の吐出方式として、サーマル方式を適用してもよい。サーマル方式についての詳細な説明は省略するが、サーマル方式では、液室内に設けられたヒータに駆動信号が印加されると液室内の液体が加熱され、液室内の液体の膜沸騰現象を利用してノズルから所定量の液滴が吐出される。
【0065】
図9(a)は、インクジェットヘッド122のノズル配置を示すインクジェットヘッド122のノズル面の平面図である。同図に示すように、インクジェットヘッド122は、副走査方向(図中上下方向)について、複数のノズル200が配置ピッチPで一列に並べられた構造を有している。ノズル200の配置ピッチを高密度化するために、図9(b)に示すように複数のノズル200を千鳥状に配置してもよいし、マトリクス状に配列してもよい。図9(b)に示す千鳥配置におけるノズル200の実質的な配置ピッチP’は、図9(a)に示すノズル200の配置ピッチPの1/2となっている。
【0066】
(液体供給系の説明)
図10は、インクジェットヘッド122に対して、第1の密着補助層液14A(以下、単に「液体」と記載することがある。)を供給する液体供給系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す液体供給系は、インクジェットヘッド122に供給される液体が貯留されるメインタンク240と、メインタンク240から液体を汲み上げる供給ポンプ242と、液体に含まれる異物や気泡を除去するフィルタ244と、液体に脱気処理を施す脱気装置246と、脱気装置246とインクジェットヘッド122との間に配設されるサブタンク248と、を含み、これらの各部が所定の管路(チューブ)によって接続されている。
【0067】
図10に示すように、メインタンク240は、供給ポンプ242及びフィルタ244を介して脱気装置246の液入口と連通し、さらに、脱気装置246の液出口246Bは、サブタンク248の液入口248Aと連通するとともに、サブタンク248の液出口248Bはインクジェットヘッド122の液体供給口122Aと連通している。すなわち、メインタンク240に貯留される第1の密着補助層液14Aは、供給ポンプ242により圧力が付与されてメインタンク240から送り出され、脱気装置246によって脱気処理を施された後にサブタンク248を介してインクジェットヘッド122へ送られる。
【0068】
メインタンク240は、インクジェットヘッド122に供給される第1の密着補助層液14Aが貯留される基タンクである。メインタンク240は、内部の液体の温度を検出する温度センサ252が設けられるとともに、内部の液体の温度が一定範囲内に保たれるように、液温の調節を行う温調器(熱交換器)254が設けられている。また、図示は省略するが、内部の液の残量を検出する手段を備える態様が好ましい。
【0069】
フィルタ244は、供給ポンプ242によってメインタンク240から送り出された液体の異物、気泡等を除去する。フィルタ244には、超高分子量ポリエチレン(UPE)メンブレン、ナイロンメンブレンなどが適用される。フィルタ244のメッシュサイズはインクジェットヘッド122のノズル径と同等若しくはノズル径以下とすることが好ましい。
【0070】
脱気装置246は、気体透過性膜により周囲を囲まれた脱気処理領域(不図示)を具備している。減圧ポンプ256によって脱気領域内の圧力が減圧され、脱気領域内の液体から溶存気体が除去される。脱気装置246と減圧ポンプ256との間には、気体とともに脱気領域から吸い出された液を一次貯留するトラップ部258が設けられている。なお、図示は省略するが、脱気装置246の液出口246Bの近傍には、脱気処理済みの液体の溶存酸素量を検出する溶存酸素計が備えられている。また、脱気装置246の液出口246Bとサブタンク248の液入口248Aとの間には、バルブ260が設けられている。
【0071】
サブタンク248は、インクジェットヘッド122の背圧調整を行う手段として機能するとともに、背圧の変動を抑制するダンパーとして機能する。サブタンク248は、弾性膜262によって液室248Cと気室248Dに区画されル構造を有し、液室248Cは液入口248Aと液出口248Bが設けられている。一方、気室248Dは気体流路264及びバルブ266を介してポンプ268と連通している。
【0072】
バルブ266を開き、ポンプ268を減圧方向に動作させると、気室248D内の圧力が下降して、弾性膜262は気室248D側に凸となるように弾性変形する。そうすると、液室248Cの液体が減圧されるとともに、インクジェットヘッド122の内部圧力(背圧)が減圧され、ノズルの内部にメニスカスが形成されるとともに、このメニスカスの形状はノズルの内部側に凸形状となって安定する。
【0073】
さらに、サブタンク248は、液室248C内の温度を検出する温度センサ270と、液室248C内の圧力を検出する圧力センサ272と、液室248Cの内の液体を加熱又は冷却するための温調器(熱交換機)274と、を具備している。すなわち、サブタンク248はメインタンク240とは別個に独立して温度調整ができるように調整されている。
【0074】
また、図10に示す液体供給系は、バルブ276、パージポンプ278を介して脱気装置246の液出口248Bとインクジェットヘッド122の液体供給口122Aとを連通させるバイパス流路280を有している。インクジェットヘッド122への第1の密着補助層液14Aの初期充填時や、インクジェットヘッド122のパージを実行するときは、バルブ260を閉じるとともに、脱気装置246とパージポンプ278との間に設けられたバルブ276を開いた後にパージポンプ278を動作させて、サブタンク248を介さずに第1の密着補助層液14Aを直接インクジェットヘッド122へ供給して、インクジェットヘッド122内部にある第1の密着補助層液14Aを強制的に排出される。
【0075】
他方、通常のインクジェットヘッド122の動作時には、バルブ276が閉じられるとともにバルブ260が開かれ、サブタンク248を介してインクジェットヘッド122へ第1の密着補助層液14Aが供給される。
【0076】
インクジェットヘッド122は、内部の液体の温度を検出するための温度センサ280と、インクジェットヘッド122の内部の液体を加熱又は冷却するための温調器(熱交換機)282と、を備えている。温度センサ280の検出結果に基づいて、インクジェットヘッド122内部の液体の温度が一定範囲内に保たれるように、構成されている。
【0077】
(メンテンナンス処理部の説明)
図10に示すように、第1の密着補助層形成部120は、インクジェットヘッド122のメンテナンス手段として、キャップ284と、吸引ポンプ286と、回収タンク288と、を含むメンテナンス処理部144を具備している。メンテナンス処理部144は、インクジェットヘッド122の退避位置に対応して設けられ、インクジェットヘッド122を通常の動作位置から該退避位置へ移動させて、インクジェットヘッド122のメンテナンスが実行される。
【0078】
キャップ284は、インクジェットヘッド122の休止時にノズル面に密着させてノズルの乾燥を防止するための手段として機能するとともに、パージ実行時においてインクジェットヘッド122から排出させた第1の密着補助層液14Aの液受けとして機能する。また、ノズルから第1の密着補助層液14Aを吸引して強制的に排出させるときは、ノズル面にキャップ284を密着させて、キャップ284と接続される吸引ポンプ286を動作させる。そうすると、ノズルの内部にある劣化した(粘度上昇により硬化した)第1の密着補助層液14Aはノズルから吸い出され、吸引ポンプ286と連通する回収タンク288へ送られる。
【0079】
なお、キャップ284は、インクジェットヘッド122のノズル配置や構造に対応して、複数の領域に区画されていてもよい。また、図示を省略するがメンテナンス処理部144は、ノズル面を拭き取り清掃するクリーニングブレードが具備されている。
【0080】
さらに、メンテナンス処理部144は、インクジェットヘッド122内の第1の密着補助層液14Aを循環させる循環系292が具備されている。インクジェットヘッド122の排出口122Bと連通する循環流路のバルブ294を開いて、インクジェットヘッド122から第1の密着補助層液14Aを排出させ、所定の処理(脱気処理、異物除去処理等)が施された後に、処理後の第1の密着補助層液14Aをインクジェットヘッド122の内部へ戻すように構成されている。
【0081】
以上説明した、第1の密着補助層形成部120における液体供給系及びメンテナンス処理部の構造は、図6に図示した第2の密着補助層形成部160及びめっき受容性層形成部170にも適用することができる。また、図7に図示した第1の密着補助層形成部120に第2の密着補助層液16Aを打滴するインクジェットヘッド162を備え、第1の密着補助層形成部120と第2の密着補助層形成部160とを一体構成としてもよい。
【0082】
(めっき処理部の詳細な説明)
次に、図6に戻り、めっき処理部180について詳説する。同図に示すめっき処理部180は、無電解めっき法によりめっき受容性層18の表面にめっき金属(めっき膜)を析出させる処理部である。このめっき膜は、シリコンチップ12と電気的に接続される電気配線20(図1(d)参照)となる。図6に示すめっき処理部180は、浴槽182内に所定のめっき液184が貯留されるとともに、電源装置186から正電極188と負電極189との間に所定の電圧が印加されると、浴槽182内に浸漬した基板10にめっき液184に溶解している金属イオンが還元され、めっき受容性層18の表面にめっき金属が析出する。なお、先に述べたように、めっき受容性層18がシード層としての機能を有する場合は、電解めっき法を適用してもよいし、無電解めっき法により析出させためっき膜をシード層として電解めっき法によりめっき金属をさらに積層させてもよい。
【0083】
また、めっき受容性層液18Aに無電解めっき触媒前駆体(金属塩など)が含有される場合は、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0084】
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、還元剤の濃度は液全量に対して0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%が好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0085】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、めっき用の金属イオン、還元剤、金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、公知の添加物が含まれていてもよい。めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0086】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0087】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0088】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜(金属膜)の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、又は、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性、密着性の観点からは、0.2〜2.0μmであることが好ましい。また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0089】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、さらにポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0090】
なお、本例に示すめっき処理部180に適用される電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0091】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、又は電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、1.0〜30μmであることが好ましい。
【0092】
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、及び/又は、無電解めっきにより、ポリマー層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性をさらに向上させることができる。
【0093】
(制御系の説明)
次に、本例に示す配線構造体製造装置100の制御系の構成について説明する。図11は、配線構造体製造装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御系は、通信インターフェース(通信I/F)302、システムコントローラ304、画像メモリ306、プリント制御部308、ヘッドドライバ310、画像バッファメモリ312、めっき処理制御部316、メンテナンス制御部318、観察制御部322、ロードアンロード制御部324、アライメント制御部326、モータ制御部330等を備えている。
【0094】
通信インターフェース302は、ホストコンピュータ300から送られてくる、第1の密着補助層液14A、第2の密着補助層液16A、めっき受容性層液18Aの情報(これらをまとめて、「インク情報」という。)、基板10、シリコンチップ12の情報(下地基材情報)や、電気配線20(図1(d)等参照)のパターン情報などを受信するインターフェース部である。通信インターフェース302には、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。なお、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
【0095】
ホストコンピュータ300から送り出された前記した各情報は、通信インターフェース302を介してシステムコントローラ304に取り込まれ、一旦画像メモリ306に記憶される。画像メモリ306は、通信インターフェース302を介して入力された情報を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ304を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ306は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0096】
システムコントローラ304は、通信インターフェース302、画像メモリ306、プリント制御部308、ヘッドドライバ310等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ304は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ300との間の通信制御、画像メモリ306の読み書き制御等を行うとともに、めっき処理制御部316、メンテナンス制御部318、観察制御部322、ロードアンロード制御部324、アライメント制御部326、モータ制御部330等の各制御部を制御する制御信号を生成する。
【0097】
プリント制御部308は、システムコントローラ304の制御に従い、画像メモリ306内の電気配線20のパターン情報や、基板10とシリコンチップ12との境界22の位置情報(下地基材情報)から、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16、及びめっき受容性層18の描画制御用の信号(駆動波形)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(駆動波形)をヘッドドライバ310に供給する制御部である。
【0098】
プリント制御部308において所要の信号処理が施され、電気配線20のパターン情報及び基板10とシリコンチップ12との境界22の位置情報に基づいてヘッドドライバ110を介してインクジェットヘッド122,162,172の打滴量や打滴タイミングの制御が行われる。これにより、基板10上に着弾する第1の密着補助層液14A、第2の密着補助層液16A、及びめっき受容性層液18Aにおける所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0099】
プリント制御部308には、画像バッファメモリ312が備えられており、プリント制御部308による処理に用いられる電気配線20のパターン情報及び基板10とシリコンチップ12との境界22の位置情報や、各種パラメータなどのデータが画像バッファメモリ312に一時的に格納される。
【0100】
なお、図11では画像バッファメモリ312がプリント制御部308に付随する態様で示されているが、画像メモリ306と兼用されてシステムコントローラ304に付随する態様でもよい。さらに、プリント制御部308とシステムコントローラ304とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0101】
ヘッドドライバ310は、プリント制御部308から与えられる駆動波形に基づいてインクジェットヘッド122,162,172を駆動し、インクジェットヘッド122,162,172から第1の密着補助層液14A、第2の密着補助層液16A及びめっき受容性層液18Aを打滴させる。ヘッドドライバ310は、インクジェットヘッド122,162,172の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでもよい。
【0102】
めっき処理制御部316は、システムコントローラ304から送り出される指令信号に基づいて、めっき処理部180における電源装置186の制御や、めっき処理時間等、めっき処理における各種制御を実行する。すなわち、めっき処理制御部316は、各種設定やパラメータを参照して、所定のパターンを有し、かつ、所定の厚みを有する電気配線20(めっき膜)が形成されるように、めっき処理部180の制御を行う。
【0103】
メンテナンス制御部318は、第1の密着補助層形成部120、第2の密着補助層形成部160、及びめっき受容性層形成部170におけるインクジェットヘッド122,162,172のメンテナンス処理実行時の制御を行う。ここでいう「メンテナンス」とは、ノズル面のワイピング、ノズルのパージ、吸引などの処理が含まれる。例えば、液滴の着弾位置のずれや飛翔方向の異常が発見された場合や、定期的メンテナンスの実行タイミングとなった場合、装置の稼動開始時等のイニシャライズ処理が実行される場合は、インクジェットヘッド122,162,172を所定のメンテナンス位置に移動させて、インクジェットヘッド122,162,172のメンテナンス処理が実行される。
【0104】
図11に図示するメンテナンス制御部318は、図10のバルブ260,276の開閉を制御するバルブ制御部や、パージポンプ278や吸引ポンプ286の動作を制御するポンプ制御部が含まれる。
【0105】
観察制御部322は、ノズル面観察部140や吐出状態観察部142(光源142a、高速撮像素子142b)を含む観察部320を制御する。観察制御部322は、ノズル面観察部140や吐出状態観察部142から得られた検出信号に対して、ノイズ除去や波形整形等の所定の処理を施すとともに、該処理後の信号をシステムコントローラ304へ送出する。
【0106】
基板受渡制御部(ロードアンロード制御部)324は、基板保管部、第1の密着補助層形成部120、第2の密着補助層形成部160、めっき受容性層形成部170、基板格納部のそれぞれの間の基板の受け渡しを行う基板受渡装置(ロード装置及びアンロード装置)332の動作を制御する。例えば、上記各部の処理開始タイミングにおいて、各部へ処理対象の基板が搬入され、各部における処理が終了すると、処理済みの基板10が搬出されるように基板受渡装置を制御する。
【0107】
アライメント制御部326は、図6に図示したアライメント検出部136の検出結果に基づいて、基板保持部138に保持される基板10の姿勢を調整するように、調整機構を動作させるとともに、インクジェットヘッド122,162,172の位置調整を行うアライメント部334の動作を制御する。すなわち、アライメント検出部136により検出された基板10の姿勢、位置、厚みに基づいて、基板10の姿勢を微調整させるように調整機構を動作させるとともに、インクジェットヘッド122,162,172のそれぞれを最適位置に調整させるように、各インクジェットヘッド122,162,172の調整機構であるアライメント部334を動作させる。
【0108】
モータ制御部330は、インクジェットヘッド122,162,172の走査機構の駆動源となるモータや、基板10を移動させる移動機構の駆動源となるモータの動作を制御するドライバー部である。図11では、前記したモータが符号336付してまとめて図示されている。
【0109】
なお、図11では図示を省略したが、装置の制御に用いられる各種プログラムや、各種制御パラメータが格納されるプログラム格納部や、各種情報を表示する表示部、オペレータにより操作されるキーボード、マウス等のユーザインターフェースが具備されている。
【0110】
なお、上述した配線構造体製造装置100は、先に説明した配線構造体製造方法における第1実施形態〜第3実施形態に対応して、適宜変更をすることが可能である。
【0111】
〔応用例〕
次に、本発明に係る配線基板製造方法(装置)の応用例について説明する。なお、以下の説明では、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0112】
(第1応用例)
図12は、第1応用例に係る配線構造体(基板)の立体構造を示す断面図である。同図に示す配線構造体400は、ポリカーボネート基板10に複数のシリコンチップ12(12‐1,12‐2)が搭載され、シリコンチップ12‐1とシリコンチップ12‐2との間をまたがるように電気配線20が形成されている。すなわち、図12に示すように、基板10の表面におけるシリコンチップ12‐1,12‐2間の領域には、電気配線20に対応してパターンニングされた第1の密着補助層14が形成され、シリコンチップ12‐1及びシリコンチップ12‐2の側面には、電気配線20に対応してパターンニングされた第2の密着補助層16が形成される。さらに、第1の密着補助層14及び第2の密着補助層16の上にめっき受容性層18が形成され、さらにまた、めっき受容性層18の上には、めっき膜から成る電気配線20が形成される。
【0113】
図12に示す配線構造体400は、基板10上に搭載された個別のシリコンチップ(12‐1とシリコンチップ12‐2)とを電気的に接続させる電気配線が形成されているが、シリコンチップ12‐1(又は、シリコンチップ12‐2)と他の構成要素(例えば、コネクタ)とを電気的に接続させる電気配線を形成してもよい。なお、図12では図示を省略したが、シリコンチップ12‐1,12‐2の上面には、数μm程度の厚みを有するパッド(電極)が設けられており(図2参照)、電気配線20はシリコンチップ12‐1のパッドとシリコンチップ12‐2のパッドを電気的に接続している。
【0114】
第1応用例に係る配線構造体400の製造方法(装置)によれば、基板10とシリコンチップ12‐1及びシリコンチップ12‐2との境界における電気配線20の断線が防止され、好ましい密着性、耐久性を備えた電気配線20が形成される。
【0115】
(第2応用例)
図13は、第2応用例に係る配線構造体500の立体構造を示す断面図である。同図に示す配線構造体500は、シリコンチップ12の側面を取り囲むように、基板10とシリコンチップ12との間の段差を埋めるスペーサー502が形成されており、スペーサー502の傾斜面504に電気配線20が形成される。スペーサー502は、第1の密着補助層14を構成する第1の密着補助層液を所定の形状にパターンニングして塗布し、かつ、硬化させることにより形成される。その後、シリコンチップ12の上面(パッド13の形成面)には、第2の密着補助層16が形成される。なお、インクジェット方式による打滴と硬化を複数回にわたり繰り返すことで、スペーサー502を形成することも可能である。
【0116】
図13に示すシリコンチップ12は、上面に数十μm〜100μm程度の厚み(高さ)を有する接続端子506が、上述したパッド上に形成されている。接続端子506の厚みは、電気配線20と直接接触できる程度であればよい。接続端子506は、10×10(ジーメンス/m)〜100×10(ジーメンス/m)程度の高い電気伝導度を有する金、銀、銅、パラジウムなどの金属が用いられ、シリコンチップ12の製造プロセスの中で形成される。もちろん、シリコンチップ12を基板10に搭載した後に、接続端子506形成することも可能である。
【0117】
第2応用例に係る配線構造体500の製造方法(装置)によれば、基板10とシリコンチップ12との段差に対応する傾斜面504を有するスペーサー502を備えることで、基板10とシリコンチップ12との段差に起因する電気配線20の断線や、密着性の低下を回避することができる。また、シリコンチップ12のパッド上に、電気配線の形成位置に対応する厚みを有する接続端子506を備えることで、電気配線20とパッドとの電気接続が確実にされる。
【0118】
なお、スペーサー502は、樹脂材料により形成することも可能である。例えば、ディスペンサー等により樹脂材料をパターンニングしながら塗布し、硬化させて、スペーサー502を形成してもよい。スペーサー502に適用可能な樹脂材料は、ポリイミド樹脂、シリコン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)などが挙げられる。また、ドライフィルムを固着させてもよい。かかる態様では、スペーサー502の材料に合わせて第1の密着補助層14を構成する材料が選択される。
【0119】
また、図14に符号506’を付して図示するように、接続端子506を柱状のポスト形状としてもよい。かかる態様によれば、接続ポスト506’と電気配線20との接続が端面接続ではなくなることで、接続ポスト506’と電気配線20との接合の信頼性が向上する。
【0120】
〔その他〕
(基板の材料)
本発明に適用される基板10の基材は、寸度的に安定なものであることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、ガラス基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂(SiO2、SiON、若しくはITOを有していてもよい)、ビスマレインイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シアネート樹脂等、フェノール樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート)、金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0121】
基材は、一般的には、平板状の基材(各種の基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いてもよい。
【0122】
(密着補助層液)
密着補助層液(第1の密着補助層液14A、第2の密着補助層液16Aの総称)に用いるラテックスは、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むものである。具体的には、本発明におけるラテックスは、水に不溶な樹脂粒子が水又は水溶性の分散媒中に分散したものであり、アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤を含むものである。
【0123】
ここで、水系分散媒とは、水、又は水に90質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合した混合溶媒である。水混和性の有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性可燃性液体が挙げられる。
【0124】
<水溶性可燃性液体>
水系分散媒に用いうる水溶性可燃性液体について説明する。
【0125】
ケトン系溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
【0126】
エステル系溶剤としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0127】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。他に、アルコール系溶剤には、3−アミノ−1−プロパノール、メタクリル酸トリフルオロエチル、ペンタデカフルオロオクタノールなどのアルコール誘導体も含まれる。
【0128】
エーテル系溶剤としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2− 2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0129】
グリコール系溶剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0130】
アミン系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0131】
チオール系溶剤としては、メルカプト酢酸、2−メルトカプトエタノールなどが挙げられる。
【0132】
ハロゲン系溶剤としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0133】
上記溶剤以外の水溶性可燃性液体に包含される溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、モルホリン、N−エチルモルホリン、ぎ酸、酢酸などが挙げられる。
【0134】
混合溶媒中に含まれる水溶性可燃性液体は、総含有量が上記範囲であれば、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0135】
ラテックスが含む樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)及びこれらの共重合体などが挙げられる。ラテックスとしては、特に、シアノ基を含む樹脂粒子を含むものが好ましい。
【0136】
そのようなラテックスとしては、市販品を用いてもよく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、Nipol LX110(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、LX 513(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))、NK−301(日本エイアンドエル(株))として市販されるものを用いてもよい。これら市販品のラテックスには、後述するようなアニオン系分散剤及び/又はノニオン系分散剤が含まれる。
【0137】
また、樹脂粒子としては、種類の異なるものが併用されていてもよい。併用できる樹脂粒子としては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
【0138】
ラテックスに含まれるアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤について説明する。
【0139】
<アニオン系分散剤>
アニオン系分散剤としては、例えば、牛脂脂肪酸、部分水添牛脂脂肪酸、オレイン酸、パルミチン酸、ドデシル硫酸等の脂肪酸及びそのカリウム塩、ナトリウム塩等の脂肪酸塩;ロジン酸、水添ロジン酸等の樹脂酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。これらのアニオン系分散剤の中でも、使いやすさの点からは、オレイン酸やパルミチン酸などの長鎖脂肪酸及びその塩が好ましい。
【0140】
<ノニオン系分散剤>
ノニオン系分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の各分散剤が挙げられ、エチレングリコール型の分散剤が好ましい。
【0141】
アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの分散剤の併用態様としては、アニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、ノニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、1種又は2種以上のアニオン系分散剤と1種又は2種以上のノニオン系分散剤を用いる態様のいずれであってもよい。併用する際には、アニオン系分散剤としては長鎖脂肪酸及びその塩とノニオン系分散剤としてはエチレングリコール型の分散剤を組み合わせて使うことが特に好ましい。
【0142】
基材とラテックスとの接触により形成された樹脂層Aの膜厚は、適宜設定することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.06μm〜3μmがより好ましく、1μm〜2μmが最も好ましい。
【0143】
(めっき受容性層液)
本発明に係る配線構造体製造方法(装置)に適用されるめっき受容性層液は、所定の官能基を有するポリマーと、所定の沸点を示す溶媒が含有される。該溶媒が所定の沸点を有することによって、優れた連続吐出安定性やパターン形成性を示すインクが得られる。特に、該溶媒が、180℃未満の沸点を有する溶媒と180℃以上の沸点を有する溶媒とを含む混合溶媒である場合にその効果が顕著となる。その理由としては、まず、沸点の高い溶媒を含有することによって、ノズルの目詰まりが抑制される。さらに、沸点の低い溶媒を含有することによって、インクが基板上に着弾する際に、該溶媒の大部分が揮発してインク粘度が上昇するため、結果としてインクの広がりなどが抑制され、優れたパターン性能が得られる。
【0144】
<ポリマー>
本発明のめっき受容性層液に使用されるポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(以後、適宜「相互作用性基」とも称する)と重合性官能基とを含有するポリマーである。ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、後述する基板との優れた密着性が発現されるとともに、膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。
【0145】
[相互作用性基]
相互作用性基としては、後述するめっき触媒などと相互作用を形成すれば、その種類は特に限定されない。例えば、極性基(親水性基)や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。特に、上記インクを用いて得られるポリマー層の吸水性、吸湿性を低減するためには、金属イオン吸着能を示す部位としての非解離性官能基を用いることが好ましい。
【0146】
極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、又は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、水酸基などの負の荷電を有するか、負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは、解離基の対イオンの形で、又は非解離状態の形でも金属イオンと吸着する。
【0147】
非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基、含リン官能基などが好ましい。より具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、チオフェン基、チオール基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィット基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基、ホスフェート基、ホスホルアミド基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基などが挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。さらに、シクロデキストリンやクラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
【0148】
中でも、極性が高く、めっき触媒などへの吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH2)n−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又は、シアノ基が特に好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0149】
[重合性基]
重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられるが、後述する基板との反応性の観点からは、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。中でも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、アリル基、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
【0150】
<ポリマーの好適態様>
[式(1)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、基板との反応性により優れる点から、次式(1)で表されるユニット(繰り返し単位)が含有されるポリマーが挙げられる。該ユニットは、重合性基を有するユニット(重合性基含有ユニット)である。
【0151】
【化1】

【0152】
当該式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R〜Rが、置換又は無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0153】
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。Rとしては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。Rとしては、水素原子が好ましい。Rとしては、水素原子が好ましい。
【0154】
Y及びZは、それぞれ独立して、単結合、又は、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜11)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0155】
置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基、ヘキシル基、又は、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、又は、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニル基が好ましい。
【0156】
Y及びZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、置換又は無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0157】
は、置換又は無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記Y及びZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0158】
としては、無置換のアルキル基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキル基及びウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0159】
の構造として、より具体的には、次式(1−1)、次式(1−2)、又は、次式(1−3)で表される構造であることが好ましい。
【0160】
【化2】

【0161】
当該式(1−1)及び当該式(1−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基や、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0162】
[式(4)で表されるユニット]
上記式(1)で表されるユニットの好適態様として、次式(4)で表されるユニットが挙げられる。
【0163】
【化3】

【0164】
当該式(4)中、R、R、Z及びLは、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0165】
[式(5)で表されるユニット]
上記式(4)で表されるユニットの好適態様として、次式(5)で表されるユニットが挙げられる。
【0166】
【化4】

【0167】
当該式(5)中、R、R、及びLは、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。T及びQは、それぞれ独立して、酸素原子又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0168】
上記式(4)及び上記式(5)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。また、上記式(4)及び上記式(5)において、Lは、無置換のアルキレン基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0169】
ポリマー中における上記式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、後述する基板との密着性、保存安定性、及び合成難易度の観点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下することがあり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0170】
[式(2)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、めっき触媒の優れた吸着性点から、次式(2)で表されるユニット(繰り返し単位)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットは、相互作用性基を含有するユニット(相互作用性基含有ユニット)である。
【0171】
【化5】

【0172】
当該式(2)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR〜Rで表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。Rとしては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0173】
X及びLは、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Xとしては、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、最も好ましくは、単結合、エステル基である。Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、さらに、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を含んでいてもよい。中でも、Lは、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0174】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、さらには、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0175】
Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。Wはポリマー直鎖から直接結合してもよい。つまり、前述のX及びLが単結合となり、Wが直接炭素原子に結合してもよい。非解離性官能基の定義は、上述の通りである。
【0176】
上記式(2)で表されるユニットの好適態様の一つとして、次式(6)で表されるユニットが挙げられる。
【0177】
【化6】

【0178】
当該式(6)中、R、X及びLの定義は、上記式(2)中の各基と同義である。上記式(2)で表されるユニットの他の好適態様として、次式(7)で表されるユニットが挙げられる。
【0179】
【化7】

【0180】
当該式(7)中、R及びLの定義は、上記式(2)中の各基と同義である。Rは、無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表す。ポリマー中における上記式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20〜90モル%が好ましく、さらに好ましくは30〜80モル%である。
【0181】
<任意ユニット>
上記ポリマーは、水溶液に対する親和性が向上し、現像性がより向上する点から、さらに次式(3)で表されるユニットを有していてもよい。該ユニットは、イオン性極性基を有するユニットに該当する。
【0182】
【化8】

【0183】
当該式(3)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR〜Rで表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。Rとしては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。U及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Uの好ましい態様は、上記Xの好ましい態様と同じである。Lの好ましい態様は、上記Lの好ましい態様と同じである。
【0184】
Vは、イオン性極性基を表し、ポリマーの水溶液への現像性を付与しうるものであれば特に限定されない。具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性と、を両立するという観点で、特に、ポリマー主鎖に直接結合しているカルボン酸基、脂環構造と直接結合しているカルボン酸基(脂環式カルボン酸基)、ポリマー主鎖から離れたカルボン酸基(長鎖カルボン酸基)が好ましく、最も好ましくは、ポリマー主鎖に直結しているカルボン酸基である。
【0185】
このようなイオン性極性基は、ポリマーの一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入していてもよいし、また、イオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで、ポリマー中に導入してもよい。
【0186】
上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、LのVとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。即ち、この態様では、上記式(3)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
【0187】
また、上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子であることが好ましい。ここで、Lの鎖長とは、上記式(3)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。Lの鎖長として、より好ましくは、6原子〜14原子であり、さらに好ましくは、6原子〜12原子である。
【0188】
一方、上記式(3)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想され、その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、ポリマー層の水に対する耐性を高めることができる。
【0189】
ポリマー中における上記式(3)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20〜70モル%が好ましく、さらに好ましくは20〜60モル%である。特に好ましくは30〜50モル%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0190】
ポリマー中における上述したユニットの結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0191】
なお、上述したポリマーは、上記ユニット以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のユニットを含んでいてもよい。但し、後述するように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが他のユニットとなる可能性もある。
【0192】
本例のめっき受容性層液18Aに適用されるポリマーの好ましい態様としては、上記式(1)で表されるユニットと、上記式(6)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニットと上記式(7)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニット、上記式(2)で表されるユニット、及び上記式(3)で表されるユニットを有するポリマーなどが挙げられる。
【0193】
本例のめっき受容性層液18Aに適用されるポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000以上20万以下が好ましく、さらに好ましくは2000以上10万以下である。特に、インクジェット吐出安定性、重合感度、密着性の観点から、該ポリマーの重量平均分子量は、8000以上5万以下であることが好ましい。
【0194】
また、本例のめっき受容性層液18Aに適用されるポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは20量体以上のものである。また、2000量体以下が好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0195】
<ポリマーの合成方法>
ポリマーの合成方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
【0196】
i)相互作用性基を有するモノマー、及び重合性基を有するモノマーを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマー、及び二重結合前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するモノマー及び二重結合導入のための反応性基を有するモノマーを共重合させ、得られた反応性基を有するポリマーに、該反応性基と反応しうる重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)する方法が挙げられる。
【0197】
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)及び上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、ラジカル重合で行うこと好ましい。また、上記のイオン性極性基を有するユニットを導入する場合は、イオン性極性基を有するモノマーを合わせて使用する。
【0198】
なお、本発明のポリマーは、特許公開2009−280905号の段落〔0097〕〜〔0125〕に記載の方法などを参照して合成することができる。具体的には、上記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0199】
なお、下記式中、Aは重合性基を有する有機団、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCはそれぞれ独立して脱離反応により除去される脱離基であり、B、Cのいずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。また、塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0200】
【化9】

【0201】
また、上記iii)の合成方法において、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。また、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン化ベンジル基などの反応性基を有することが好ましい。
【0202】
ポリマー中の反応性基と、モノマー中の反応性基との組み合わせとしては、以下のようなパターンがある。
【0203】
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの反応性基)=(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
【0204】
なお、ポリマーの合成方法として、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL中のウレタン結合を形成することが好ましい。
【0205】
また、ポリマーの合成方法として、側鎖にカルボキシル基を有するポリマー、及び、ハロゲン化ベンジル基と重合性基とを有する化合物を用い、該カルボキシル基に該ハロゲン化ベンジル基を付加させることによりL中のメチレン基を形成することも好ましい。
【0206】
<溶媒>
本発明のインクジェットインクには、次式(A)で表される沸点の平均値を満たす溶媒類(液体類)が含有される。
【0207】
【数1】

【0208】
該溶媒は、上述したポリマーを溶解又は分散させることができる。本発明において、用いられる溶媒が所定の沸点を示すことにより、優れた連続吐出安定性や、ポリマー層の優れた形成性を示すインクを得ることができる。インクジェットインク中で使用される溶媒類(液体類)は、当該の式(A)で表される、沸点の平均値が150℃以上を示す。
【0209】
上記式(A)中、Wインクジェットインク中のi番目の溶媒の溶媒全量に対する質量比(i番目の溶媒質量/全溶媒質量)(質量分率)を表す。Tbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒の沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1〜nの整数を表す。
【0210】
nはインクジェットインクに含有される溶媒の数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。例えば、2種の溶媒を使用する場合はn=2となり、3種の溶媒を使用する場合はn=3となる。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記式(A)中、Σは合計を表す。
【0211】
上記式(A)では、各溶媒の沸点値に、該溶媒の全溶媒中における質量分率を乗じて得た値を求め、それらを足した総和である。得られる値によって、インクジェット中の溶媒の揮発の程度を見積もることができる。より具体的には、1種の溶媒のみを使用する場合は、n=1となり、使用される溶媒の沸点値がT(b)に該当する。
【0212】
また、二種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:T、溶媒Yの沸点:T)、T(b)は、次式
T(b)={T×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{T×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。
【0213】
さらに、三種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:T、溶媒Yの沸点:T、溶媒Zの沸点:T)、T(b)は、次式
T(b)={T×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{T×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}+{T×(溶媒Zの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。
【0214】
上記式(A)で表されるT(b)は、150℃以上を示すが、インクの連続吐出安定性、ポリマー層の形成性がより優れる点で、155℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。上限に関しては特に制限はないが、通常、270℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましい。
【0215】
使用される溶媒は、非重合性溶媒(非重合性液体)であっても、重合性基を含有する重合性溶媒(重合性液体)であってもよい。なお、重合性溶媒は、重合性基を有する液状モノマーを意味する。重合性溶媒は、吐出可能な粘度を有していれば特に限定されないが、溶解性の観点より、分子量300以下、重合性官能基数2以下のものが特に好ましい。
【0216】
より具体的に、使用される溶媒としては、例えば、アルデヒド系溶媒(例えば、2−アルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどの沸点180℃未満である溶媒)、エーテル系溶媒(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどの沸点180℃未満の溶媒、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの沸点180℃以上の溶媒)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの沸点180℃未満の溶媒、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどの沸点180℃以上の溶媒)、アミン系溶媒(例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどの沸点180℃未満の溶媒)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、シクロヘキサン、ヘプタンなどの沸点180℃未満の溶媒)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの沸点180℃未満の溶媒、アニリン、クレソール、テトラリンなどの沸点180℃以上の溶媒)、アルコール系溶媒(例えば、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの沸点180℃未満の溶媒、グリセロール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、デカノールなどの沸点180℃以上の溶媒)、エステル系溶媒(例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ジエチルカルボネート、エチルラクテートなどの沸点180℃未満の溶媒、2−エトキシエチルアセテート、エチルベンゾエート、プロピレンカルボネート、トリアセチンなどの沸点180℃以上の溶媒)、ケトン系溶媒(例えば、2−ブタノン、シクロヘキサノンなどの沸点180℃未満の溶媒、アセトフェノンなどの沸点180℃以上の溶媒)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリルなどの沸点180℃未満の溶媒、シアノエチルアクリレートなどの沸点180℃以上の溶媒)、ハロゲン系溶媒(例えば、トリクロロメタン、テトラクロロメタン)、硫黄系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、有機酸(例えば、酢酸)などが挙げられる。
【0217】
中でも、溶解性、インクジェットヘッド攻撃性、素材の選択性の観点より、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒(特に、(オリゴ)エチレングリコール誘導体、(オリゴ)プロピレングリコール誘導体)、重合性溶媒などが好ましい。
【0218】
本例に示すめっき受容性層液18Aに適用される溶媒は、上記したものを一種のみ使用してもよいし、二種以上の混合溶媒として使用してもよい。
【0219】
<溶媒の好適態様>
使用される溶媒の好適態様の一つとして、沸点が180℃未満である溶媒A、及び、沸点が180℃以上である溶媒Bを少なくとも含有し、質量基準で溶媒Aが溶媒Bよりも多く含まれる混合溶媒が挙げられる。該混合溶媒を使用すると、優れた連続吐出安定性を保持しつつ、描画時のポリマー膜の面状が向上し、細線描画時の精度向上にも繋がる点で好ましい。
【0220】
該好適態様においては、溶媒A及び溶媒Bをそれぞれ2種以上含有していてもよい。
【0221】
溶媒Aは、沸点(1気圧下)が180℃未満の溶媒を表す。溶媒Aの沸点としては、インクジェットヘッドから吐出後にいち早く揮発しインク成分を増粘させる点から、150℃以下がより好ましく、140℃以下が特に好ましい。その沸点の下限としては70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0222】
溶媒Bは、沸点(1気圧下)が180℃以上の溶媒を表す。溶媒Bの沸点としては、インクジェットヘッドの乾燥を抑制し、優れた連続吐出安定性を付与する点から、200℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましい。不揮発性分としての扱いとなる重合性溶媒を除き、その沸点の上限としては330℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。溶媒Aと溶媒Bとの沸点の差は特に限定されないが、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。
【0223】
なお、溶媒A(または溶媒B)が二種以上使用される場合は、全溶媒A量に対する各溶媒Aの質量分率に、各溶媒Aの沸点を乗じて得た値を足した値を、溶媒Aの沸点とする。溶媒Bの場合も同様である。より具体的には、各溶媒の沸点は、それぞれ次式(B)又は次式(C)で表される沸点である。
【0224】
【数2】

【0225】
式(B)中、WAiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの溶媒A全量に対する質量比(i番目の溶媒A質量/全溶媒A質量)(質量分率)を表す。
【0226】
Abiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1〜nの整数を表す。
【0227】
はインクジェットインクに含有される溶媒Aの数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。例えば、二種の溶媒Aを使用する場合はn=2となり、三種の溶媒Aを使用する場合はn=3となる。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。式(B)中、Σは合計を表す。
【0228】
式(C)中、WBiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの溶媒B全量に対する質量比(i番目の溶媒B質量/全溶媒B質量)(質量分率)を表す。
【0229】
Bbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1〜nの整数を表す。
【0230】
はインクジェットインクに含有される溶媒Bの数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0231】
該好適態様において、インクジェット中、質量基準で溶媒Aが溶媒Bよりも多く含有される。言い換えると、インクジェットインク中における溶媒Aと溶媒Bとの質量比(溶媒Aの質量/溶媒Bの質量)は1を超える数値となる。
【0232】
該質量比としては、連続吐出安定性と、描画時のポリマー膜の面状の両立の点から、2以上がより好ましい。上限としては、通常、20以下が好ましく、10以下がより好まし
溶媒Bの好ましい態様としては、描画時のポリマー膜の面状良化の点から、重合性溶媒(重合性液体)が挙げられる。重合性溶媒としては、分子量が比較的小さく、ポリマー成分への溶解性が高い分子量300以下で2官能以下のものが望ましく、さらに、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基(式(1)内のW基)を有することが好ましい。
【0233】
具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、又は水酸基を含む、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0234】
<インクジェット方式への対応>
本発明に適用されるめっき受容性層液は、上記ポリマーと上記溶媒とが含まれる。インクジェットインク中におけるポリマーの含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、1〜20質量%が好ましく、4〜15質量%がより好ましい。
【0235】
インクジェットインク中における上記溶媒の含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、80〜99質量%が好ましく、85〜96質量%がより好ましい。
【0236】
<任意成分>
本発明に適用されるめっき受容性層液は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、ラジカル発生剤などを含有していてもよい。
【0237】
<界面活性剤>
本発明に適用されるめっき受容性層液は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、インクジェット吐出安定性、着弾時のレベリング性の点で好ましい。
【0238】
界面活性剤の例として、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤、有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルのベタイン類が挙げられる。アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリール硫酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アルキルリン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸系高分子のアンモニウム塩などが挙げられる。
【0239】
めっき受容性層液中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク全量に対して、5質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねることなく、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0240】
<ラジカル発生剤>
本発明に適用されるめっき受容性層液は、上記ポリマー中の重合性基の反応を促進する目的で、ラジカル発生剤(重合開始剤)を含有していてもよい。ラジカル発生剤は、ポリマーの種類にあわせて選択することができ、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤などが挙げられる。
【0241】
中でも、オキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類、α―ヒドロキシアルキルケトン類、ロフィンダイマー類、及びトリハロメチルトリアジン類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0242】
ラジカル発生剤の含有量は、インク全量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。
【0243】
〔インクジェットインクの製造方法〕
本発明に適用される密着補助層液及びめっき受容性層液の製造には、公知のインクジェットインクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶媒中に上記ポリマーを溶解させた後、インクジェットインクに必要な各成分(例えば、界面活性剤、ラジカル発生剤)を溶解させてインクジェットインクを調製することができる。
【0244】
<インクジェットインクの物性値>
本発明のインクジェットインクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出の観点から、打滴時のヘッド内の温度において20mPa・s以下であることが好ましく、2〜15mPa・sであることがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましく、該温度範囲で粘度が20mPa・sとなることがより好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となる。しかし、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発したりして、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、50℃以下であることが好ましい。なお、上記粘度は、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0245】
また、インクジェットインクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性の向上、及び吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0246】
以上説明した密着補助層液及びめっき受容性層液は、本発明の適用範囲を限定するものではなく、本発明の作用効果が得られる範囲において、適宜変更することが可能である。
【0247】
本例では、基板上の配線パターン描画を行う方法及び装置を例示したが、本発明は、紙などの記録媒体上に画像を形成するグラフィック印刷や、有機ELパネルなどの薄型パネルの作製にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0248】
以上、本発明に係る配線構造体パターン形成方法及びパターン形成装置並びに複合型ヘッドについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0249】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握される通り、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0250】
(発明1):材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応する第1の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、前記第2の基材に対応する第2の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成する密着補助層形成工程と、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、若しくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するめっき受容性層形成工程と、前記形成されためっき受容性層に対してめっき処理を行うめっき処理工程と、を含むことを特徴とする配線構造体製造方法。
【0251】
本発明によれば、材質が異なる複数の基材を含む基板の表面に、該複数の基材をまたがるように電気配線を形成する際に、インクジェット方式によりパターンニングされる密着補助層が基材の材質に対応して基材ごとに形成されるので、基材の材質の違いによりドットが不均一に形成される液食われが防止され、異なる基材の境界においても連続した好ましい密着補助層のパターンが形成される。当該密着補助層上にめっき受容性層が形成され、さらに、めっき受容性層に対して施されためっき処理により析出させた金属導体によって好ましい電気配線パターンが形成された配線構造体を得ることができる。
【0252】
本発明において、第1の基材を基板とし、第2の基材を該基板に搭載される素子とする態様が可能である。基板の一例として、プリント配線基板、フレキシブル基板、ガラス基板などが挙げられる。また、素子の一例として、集積回路が形成されたシリコン基板が挙げられる。
【0253】
第2の密着補助層は、第1の密着補助層と第2の基材(素子)に形成される電極との間を埋めるように、第1の密着補助層及び電極と接触するように形成される態様が好ましい。
【0254】
本発明において、めっき受容性層に対してめっき触媒又はめっき触媒の前駆体を付与する工程を含み、前記めっき処理工程は、前記付与されためっき触媒又はめっき触媒の前駆体に対してめっき処理を施すように構成してもよい。
【0255】
(発明2):発明1に記載の配線構造体製造方法において、前記基板の表面における、前記第1の基材と前記第2の基材との境界を検出する検出工程と、前記検出工程により得られた情報に基づいて、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層が形成される位置を調整する調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0256】
かかる態様によれば、第1の基材と第2の基材との境界を検出し、当該境界に合わせて第1の密着補助層と第2の密着補助層との境界が決められるので、第1の密着補助層を形成する液体及び第2の密着補助層を形成する液体の濡れ広がりが抑止でき、第1の密着補助層と第2の密着補助層との境界が正確に描画され、密着信頼性が向上する。
【0257】
検出工程は、基板のパターン形成面を撮像する撮像工程と、読取結果(読取信号)に基づいて第1の基材と第2の基材との境界位置を把握する工程と、該境界位置を記憶する記憶工程と、を含む態様が好ましい。
【0258】
また、第1の基材と第2の基材との境界位置は、パターン形成面の座標として把握し、記憶する態様が好ましい。
【0259】
(発明3):発明1又は2に記載の配線構造体製造方法において、前記密着補助層形成工程は、前記境界を含む前記境界の近傍領域に対して、前記第1の密着補助層を形成する第1の密着補助層液及び前記第2の密着補助層を形成する第2の密着補助層液を所定の比率で打滴して第3の密着補助層を形成することを特徴とする。
【0260】
かかる態様によれば、第1の密着補助層と第2の密着補助層との境界と、第1の基材と第2の基材との境界と、のアライメントにずれが生じたとしても、所定の密着性を確保しうる。
【0261】
(発明4):発明1又は2に記載の配線構造体製造方法において、前記密着補助層形成工程は、前記第1の密着補助層を形成する第1の密着補助層液と前記第2の密着補助層を形成する第2の密着補助層液が所定の比率で混合された第3の密着補助層液を用いて、前記境界を含む前記境界の近傍領域に対して第3の密着補助層を形成することを特徴とする。
【0262】
かかる態様において、打滴前に第1の密着補助層液と第2の密着補助層液とを混合してもよいし、打滴後に基板上で第1の密着補助層液と第2の密着補助層液とを混合してもよい。
【0263】
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載の配線構造体製造方法において、前記第1の基材と前記第2の基材との境界における隙間に対して、前記第1の密着補助層液を打滴する充填工程を含むことを特徴とする。
【0264】
かかる態様によれば、第1の基材と第2の基材との間に隙間が生じたとしても、当該隙間を第1の密着補助層液により埋めることで、第1の基材と第2の基材との境界における断線が防止されるとともに、所定の密着性を確保しうる。
【0265】
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載の配線構造体製造方法において、前記第1の基材と前記第2の基材との段差に傾斜部を形成する傾斜部形成工程を含むことを特徴とする。
【0266】
かかる態様において、第1の基材と第2の基材との間に段差が生じたとしても、傾斜部に電気配線を形成することで、第1の基材と第2の基材との間の段差に起因する断線が防止されるとともに、所定の密着性能を確保しうる。
【0267】
「傾斜部」の一例として、第1の基材の上面と第2の基材の上面との段差をつなぐ傾斜面を有する構造体が挙げられる。第1の基材上に第2の基材が搭載される場合には、第1の基材に対応する第1に密着補助層液を用いて傾斜部が形成される。
【0268】
傾斜部形成工程は、傾斜部を構成する液体を打滴する工程と、該液体を硬化させる工程と、を含む態様がありうる。
【0269】
(発明7):材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応する第1の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、前記第2の基材に対応する第2の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成する密着補助層形成手段と、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、若しくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するめっき受容性層形成手段と、前記めっき受容性層に対してめっき処理を行うめっき処理手段と、を含むことを特徴とする配線構造体製造装置。
【0270】
本発明において、密着補助層形成手段は、インクジェット方式により第1の密着補助層液を打滴する第1のインクジェットヘッドを備えた第1の密着補助層形成手段と、インクジェット方式により第2の密着補助層液を打滴する第2のインクジェットヘッドを備えた第2の密着補助層形成手段と、を備える態様が可能である。
【0271】
また、めっき受容性層形成手段は、インクジェット方式によりめっき受容性層液を打滴するインクジェットヘッドを備える態様が可能である。
【0272】
さらに、めっき受容性層に対してめっき触媒又はめっき触媒の前駆体を付与するめっき触媒付与手段を備え、前記めっき処理手段は、前記付与されためっき触媒又はめっき触媒の前駆体に対してめっき処理を施すように構成してもよい。
【0273】
さらにまた、前記基板の表面における、前記第1の基材と前記第2の基材との境界を検出する検出する検出手段と、前記検出工程により得られた情報に基づいて、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層が形成される位置を調整する調整手段と、を備える態様が好ましい。
【0274】
(発明8):材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応して形成される第1の密着補助層と、材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第2の基材に対応して形成される第2の密着補助層と、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に形成され、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、若しくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層と、前記めっき受容性層に対するめっき処理により析出させた金属導体による電気配線と、を備えたことを特徴とする配線構造体。
【0275】
本発明によれば、第1の基材と第2の基材との境界における電気配線の断線が防止され、かつ、当該電気配線は第1の基材及び第2の基材との好ましい密着性が確保される。
【0276】
(発明9):発明8に記載の配線構造体において、前記電気配線は、前記基板上に搭載された素子間、又は前記素子と前記基板に搭載された構成要素とを電気的に接続する構造を有することを特徴とする。
【0277】
かかる態様において、基板と素子との間に段差が生じている場合には、素子の周囲に傾斜部を備える態様が好ましい。
【符号の説明】
【0278】
1…配線構造体、10…基板、10A…隙間、12…シリコンチップ、14…第1の密着補助層、14A…第1の密着補助層液、16…第2の密着補助層、16A…第2の密着補助層液、18…めっき受容性層、18A…めっき受容性層液、20…電気配線、22…境界、26…パッド、28,28’,28”…第3の密着補助層、100…配線構造体製造装置、120…第1の密着補助層形成部、122,162,172…インクジェットヘッド、136…アライメント検出部、160…第2の密着補助層形成部、180…めっき処理部、304…システムコントローラ、308…プリント制御部、310…ヘッドドライバ、326…アライメント制御部、334…アライメント部、320…観察部、322…観察制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応する第1の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、前記第2の基材に対応する第2の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成する密着補助層形成工程と、
前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、もしくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するめっき受容性層形成工程と、
前記形成されためっき受容性層に対してめっき処理を行うめっき処理工程と、
を含むことを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線構造体製造方法において、
前記基板の表面における、前記第1の基材と前記第2の基材との境界を検出する検出工程と、
前記検出工程により得られた情報に基づいて、前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層が形成される位置を調整する調整工程と、
を含むことを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線構造体製造方法において、
前記密着補助層形成工程は、前記境界を含む前記境界の近傍領域に対して、前記第1の密着補助層を形成する第1の密着補助層液及び前記第2の密着補助層を形成する第2の密着補助層液を所定の比率で打滴して第3の密着補助層を形成することを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の配線構造体製造方法において、
前記密着補助層形成工程は、前記第1の密着補助層を形成する第1の密着補助層液と前記第2の密着補助層を形成する第2の密着補助層液が所定の比率で混合された第3の密着補助層液を用いて、前記境界を含む前記境界の近傍領域に対して第3の密着補助層を形成することを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の配線構造体製造方法において、
前記第1の基材と前記第2の基材との境界における隙間に対して、前記第1の密着補助層液を打滴する充填工程を含むことを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の配線構造体製造方法において、
前記第1の基材と前記第2の基材との段差に傾斜部を形成する傾斜部形成工程を含むことを特徴とする配線構造体製造方法。
【請求項7】
材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応する第1の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するとともに、前記第2の基材に対応する第2の密着補助層をインクジェット方式によりパターンニングして形成する密着補助層形成手段と、
前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、もしくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層をインクジェット方式によりパターンニングして形成するめっき受容性層形成手段と、
前記めっき受容性層に対してめっき処理を行うめっき処理手段と、
を含むことを特徴とする配線構造体製造装置。
【請求項8】
材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第1の基材に対応して形成される第1の密着補助層と、
材質が異なる第1の基材及び第2の基材を含む基板の表面に、前記第1の基材及び第2の基材をまたがって形成される電気配線のパターンに対応して、前記第2の基材に対応して形成される第2の密着補助層と、
前記第1の密着補助層及び前記第2の密着補助層の上に形成され、めっき触媒又はめっき触媒の前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー、もしくは、前記ポリマーを形成しうるポリマー前駆体を含有するめっき受容性層と、
前記めっき受容性層に対するめっき処理により析出させた金属導体による電気配線と、
を備えたことを特徴とする配線構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の配線構造体において、
前記電気配線は、前記基板上に搭載された素子間、又は前記素子と前記基板に搭載された構成要素とを電気的に接続する構造を有することを特徴とする配線構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−82478(P2012−82478A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229935(P2010−229935)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】