説明

配線構造

【目的】 箱体2の内部に配置された要素と、箱体2の外部に配置された要素とを、高電圧系配線4Aと低電圧系配線3との2系統の配線で接続する場合に、両系統の配線3,4Aが互いに接近することがなく、したがって両系統の配線がノイズを与え合うのを防止できる配線構造を提供する。
【構成】 一方の系統の配線3は、箱体27の内部に配置された要素から箱体2の内面に沿って延びる第1の経路81に配置され、箱体2の第1の経路81が通る箇所に設けられた第1の貫通部6B,6C,6D,13A,13Bを通して外部に取り出されている。他方の系統の配線4Aは、箱体27の内部に配置された要素から箱体2のこの要素の近傍に設けられた第2の貫通部9を通して外部に取り出され、さらに箱体2の外面に沿って延びる第2の経路91に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は配線構造に関する。より詳しくは、空気調和機の室外機等において、電装品箱の内部に配置された要素と、上記電装品箱の外部に配置された要素とを、高電圧系配線と低電圧系配線との2系統の配線で接続する配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】空気調和機の室外機では、一般に、室外機のケーシングを通して侵入した雨水から電子部品を保護するために、電子部品を搭載したプリント配線基板を所定の電装品箱に収容している。このため、この電装品箱の内部に配置されたプリント配線基板と、上記電装品箱の外部に配置されたファンモータ,圧縮機等の要素とを、電装品箱を構成する箱体を通して接続する必要がある。接続のための配線としては、電力を伝達する高電圧系配線(電源ライン,100V又は200Vライン等)と制御信号等を伝達する低電圧系配線(信号ライン,5V又は12Vライン等)との2系統の配線がある。
【0003】従来は、電装品箱を構成する箱体の内部で、プリント配線基板に接続された高電圧系配線と低電圧系配線とを互いに区分し、この配線系統毎にクランプ部材(細いベルト状の部材)で縛ってハーネス(配線の束)としている。そして、これらのハーネスを上記箱体に設けられた貫通穴を通して外部に取り出し、取り出した各ハーネスの先端を室外機内のファンモータ,圧縮機等に接続している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の方式では、組立作業のバラツキ等に起因して、電装品箱の内部で高電圧系のハーネスと低電圧系のハーネスとが接近することがある。このような場合、両系統の配線がノイズを与え合い、例えば高電圧系配線から低電圧系配線にノイズが乗るという問題が生ずる。この問題は、電装品箱を小型化するときに特に深刻になる。
【0005】そこで、この発明の目的は、箱体の内部に配置された要素と、上記箱体の外部に配置された要素とを、高電圧系配線と低電圧系配線との2系統の配線で接続する場合に、両系統の配線が互いに接近することがなく、したがって両系統の配線がノイズを与え合うのを防止できる配線構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の配線構造は、箱体の内部に配置された要素と、上記箱体の外部に配置された要素とを、高電圧系配線と低電圧系配線との2系統の配線で接続する配線構造であって、上記2系統の配線のうち一方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体の内面に沿って延びる第1の経路に配置され、上記箱体の上記第1の経路が通る箇所に設けられた第1の貫通部を通して外部に取り出されており、上記2系統の配線のうち他方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体のこの要素の近傍に設けられた第2の貫通部を通して外部に取り出され、さらに上記箱体の外面に沿って延びる第2の経路に配置されていることを特徴としている。
【0007】また、請求項2に記載の配線構造は、請求項1に記載の配線構造において、上記第2の経路は上記箱体の外面に設けられた断面凹状の溝であることを特徴としている。
【0008】
【作用】請求項1の配線構造では、高電圧系配線と低電圧系配線との2系統の配線のうち一方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体の内面に沿って延びる第1の経路に配置されている。これに対して、上記2系統の配線のうち他方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体のこの要素の近傍に設けられた第2の貫通部を通して外部に取り出され、さらに上記箱体の外面に沿った第2の経路に配置されている。ここで、上記箱体の内面に沿って延びる第1の経路と、上記箱体の外面に沿って延びる第2の経路とは、互いに離間させて設定され得る。そのようにした場合、両系統の配線が互いに接近することが無い。この結果、両系統の配線がノイズを与え合うことが無くなる。
【0009】請求項2の配線構造では、上記第2の経路は上記箱体の外面に設けられた断面凹状の溝であるから、上記他方の系統の配線はこの溝に埋め込むことによって簡単に固定される。したがって、組立作業によるバラツキが減少して、製品の品質が安定化される。
【0010】
【実施例】以下、この発明の配線構造を実施例により詳細に説明する。
【0011】図1は一実施例の配線構造を持つ電装品箱1を蓋2Fに垂直な方向から見たところを示し、図2は上記電装品箱1の蓋2Fを外した状態を示している。この例では、この電装品箱1は空気調和機の室外機内に設けられているものとする。電装品箱1(蓋2Fを含む)を構成する箱体2の材質は、この例ではHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)またはABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂とする。
【0012】図2に示すように、電装品箱1を構成する箱体2には、内部に配置された要素として、電子部品を搭載した制御用プリント配線基板10と、電源トランス20が収容されている。図2において一点鎖線99の上側が低電圧系領域80、下側が高電圧系領域90に相当する。
【0013】制御用プリント配線基板10の略上半分の領域80には、低電圧系の電子部品として発光ダイオード12、放熱フィン13が取り付けられたトランジスタ(図示せず)等が搭載されている。この低電圧系領域80の周辺には、これら低電圧系の電子部品につながるコネクタ11A,11B,11C,11D,11E,11Fが設けられている。また、箱体2の内面のうちこの制御用プリント配線基板10の低電圧系領域80の周囲を取り囲む部分に、箱体2を構成する板材を切り起こして形成された矩形状の5つの爪5A,5B,5C,5D,5Eが設けられている。これらの爪5A,5B,5C,5D,5Eは、低電圧系配線3を係止できるように、上記低電圧系配線3のための第1の経路81の両側に交互に配置されている。この第1の経路81の片側に配置された爪5A,5C,5Eは背板2Aから垂直に突起し、この第1の経路81の残りの側に配置された爪5B,5Dは側板2D,2Cから垂直に突起している。
【0014】また、箱体2を構成する左側板2Cの外面に、図示しない低電圧系の電子部品と、これら低電圧系の電子部品につながるコネクタ41A,41B,41Cとを搭載したサービス用プリント配線基板40が取り付けられている。このサービス用プリント配線基板40は、箱体2の外側に突起した3つのフック状の爪45A,45B,45Cによって上記左側板2Cに係止されている。
【0015】一方、制御用プリント配線基板10の略下半分の領域90には、高電圧系の電子部品として整流用ダイオード15、コンデンサ14等が搭載されている。この高電圧系領域90の周辺には、これら高電圧系の電子部品につながるコネクタ18A,18B,18Cが設けられている。電源トランス20は、制御用プリント配線基板10の下方のスペースに取り付けられている。電源トランス20の右足20Aは、箱体2を構成する背板2Aに設けられたスリットに差し込まれ、背板2Aの外面に係止されている。電源トランス20の左足20Bは、背板2Aの内面とトランス取付板23の右端との隙間に差し込まれ、ネジ24によって固定されている。なお、トランス取付板23自体はネジ25A,25Bによって背板2Aの外面に取り付けられ、その右端が背板2Aに設けられたスリットを通して箱体2の内部に差し込まれた状態にある。
【0016】さて、箱体2の内部に配置された制御用プリント配線基板10等の要素と、箱体2の外部に配置されたファンモータ等の要素とは、箱体2を通して接続される。接続のための配線としては、電力を伝達する高電圧系配線(電源ライン,100V又は200Vライン等)4Aと制御信号等を伝達する低電圧系配線(信号ライン,5V又は12Vライン等)3との2系統の配線が用いられる。
【0017】低電圧系配線3は次のように設けられている。
【0018】低電圧系配線3のために、既に述べたように、箱体2の内面に沿って、制御用プリント配線基板10の低電圧系領域80の周囲を取り囲んで延びる第1の経路81が設定されている。低電圧系配線3は、それぞれ一端が低電圧系のコネクタ11A,11B,11C,11D,11E,11Fに挿入され、第1の経路81を通して、すなわち箱体2の内面に沿って低電圧系領域80の周囲を取り囲むように配置されている。詳しくは、低電圧系配線3は、第1の経路81の両側に交互に突設された爪5A,5B,5C,5D,5Eによって、箱体2の内面に固定されている。
【0019】また、箱体2を構成する左側板2Cに、第1の貫通部としての切り欠き溝6B,6C,6Dおよび貫通コネクタ13A,13Bが設けられている。各切り欠き溝6B,6C,6Dは左側板2Cの蓋側の縁に凹状に形成されており、蓋2Fが取り付けられたとき全周が規定された貫通穴を構成するようになっている。また、貫通コネクタ13A,13Bは、左側板2Cの略中央部に、この左側板2Cを貫通して取り付けられている。
【0020】上記第1の経路81を通して引き回された低電圧系配線3の一部3A,3B,3Dは、切り欠き溝(貫通穴)6B,6C,6Dを通してそれぞれ箱体2の外部に取り出され、サービス用配線基板40上のコネクタ41A,41B,41Cに接続されている。このサービス用配線基板40上のコネクタ42A,42Bからは、別の低電圧系配線43が図示しない要素へ向かって延びている。また、上記第1の経路81を通して引き回された低電圧系配線3の別の一部3Cは、切り欠き溝(貫通穴)6Cを通して箱体2の外部に取り出され、室外機内で電装品箱1と離間して配置された図示しない要素に直接接続されている。また、上記第1の経路81を通して引き回された低電圧系配線3のさらに別の一部3Eは、貫通コネクタ13A,13Bに接続されている。この貫通コネクタ13A,13Bには、電装品箱1の外部から図示しない別の低電圧系配線が接続される。
【0021】なお、低電圧系配線3のうち第1の経路81に存在する部分は、要所要所で細いベルト状のクランプ部材16A,16B,16C,16Dによって縛られ、ハーネス(配線の束)となっている。この例では、各切り欠き溝(貫通穴)6B,6C,6Dに達する直前、すなわち低電圧系配線3の一部を折り曲げる直前でクランプ部材16B,16C,16Dによって束ねているので、折り曲げに伴う配線のバラツキを効果的に防止することができる。
【0022】一方、高電圧系配線4Aは次のように設けられている。
【0023】高電圧系配線4Aのために、箱体2を構成する右側板2Bの高電圧系コネクタ18A近傍の箇所に、第2の貫通部の一部を構成する切り欠き溝が設けられている。この切り欠き溝は、右側板2Bの蓋側の縁に凹状に形成されており、蓋2Fが取り付けられたとき全周が規定された貫通穴を構成するようになっている。また、箱体2を構成する左側板2Cの下部に、この左側板2Cを貫通して電源入力用コネクタ21が設けられている。電源入力用コネクタ21の位置は、制御用プリント配線基板10の下縁の近傍に設定されている。
【0024】高電圧系配線4A(この例ではファンモータへの電力供給ライン)は、図2のように蓋2Fが取り付けられていない状態では、一端が高電圧系領域90のコネクタ18Aに接続され、直近の切り欠き溝(貫通穴)6Aを通して箱体2の外部に取り出される。この例では、この切り欠き溝(貫通穴)6Aを通して低電圧系配線3の一部3Fが併せて取り出されている。
【0025】なお、電装品箱1内では、制御用プリント配線基板10の下縁の近傍または左辺の近傍から電源入力用コネクタ21に別の高電圧系配線4B,4Cが接続されている。この電源入力用コネクタ21には、電装品箱1の外部から図示しない電源ラインが接続される。また、電源トランス20の1次側配線22A,2次側配線22Bはそれぞれ高電圧系領域90のコネクタ18B,18Cに接続されている。これらの配線4B,4C,22A,22Bは、電源トランス20を取り付けるためのネジ24に接触しないように、クランプ部材26Aによって結束されている。
【0026】図1に示すように、蓋2Fの外面には、高電圧系配線4Aのための第2の経路91として断面凹状の溝(以下「L溝」という。)7が設けられている。このL溝7は、上記高電圧系コネクタ18A(図2)近傍の切り欠き溝6Aに対応する箇所(右端)から左側へ延び、蓋2Fの略中央で1/4円弧状に湾曲して上方へ向かい、蓋2Fの上辺(上端)に達している。高電圧系配線4Aを係止できるように、L溝7の両側に、蓋2Fの外面に沿って突出する矩形状の爪8A,8B,…,8Hが交互に設けられている。なお、L溝7の右端,上端に設けられた爪8A,8Hは蓋2Fの右辺,上辺にそれぞれ接する位置にある。L溝7とこれらの爪8A,8B,…,8Hは、蓋2Fを作製するときに一体成形によって同時に形成されており、各爪8A,8B,…,8Hの直下に爪と同じ形を持つ穴が存在する。この結果、L溝7の右端の爪8A直下の穴9は上記切り欠き溝6Aとつながって、第2の貫通部を構成している。この蓋2Fの下辺に沿って2つのスリット52A,52Bが設けられている。この蓋2Fのスリット52A,52Bを下側板2Eの縁に設けられたフック状の爪51A,51Bに引っ掛け、蓋2Fの上辺中央近傍を上側板2Dにネジ53で留めることによって、電装品箱1が箱状に構成される。
【0027】図2の状態で切り欠き溝6Aを通して箱体2の外部に取り出された高電圧系配線4Aは、図1に示すように、切り欠き溝6Aを通る位置からL溝7の右端にあるスリット91を通るように曲げられた上、爪8A,8B,…,8Hを避けながらL溝7に埋め込まれる。このように、L溝7に埋め込むことによって、高電圧系配線4Aを爪8A,8B,…,8Hで係止して簡単に固定することができる。したがって、組立作業によるバラツキを減少し、製品の品質を安定化できる。この高電圧系配線4Aのうち蓋2Fから突出した部分は、適宜クランプ部材26Bによって縛られてハーネスとされ、先端に接続端子27が取り付けられる。そして、室外機内で電装品箱1と離間して配置された図示しない要素(この例ではファンモータ)に接続される。
【0028】このように低電圧系配線3と高電圧系配線4Aとを配置した場合、両系統の配線3,4Aは互いに接近することが無い。この結果、両系統の配線3,4Aがノイズを与え合うのを防止することができる。なお、蓋2Fの上端に相当する部分で低電圧系配線3と高電圧系配線4Aとが交差するが、低電圧系配線3は箱体2の背板2A側、高電圧系配線4Aは蓋2Fの外面にそれぞれ配置されているので、両系統の配線3,4Aは必ず一定距離だけ離間する。しかも、この最も接近する部分で両系統の配線3,4Aは互いに直交しており、平行にはなっていない。したがって、さらにノイズを抑えることができる。
【0029】なお、この実施例では、第1の経路81に低電圧系配線3、第2の経路91に高電圧系配線4Aをそれぞれ配置したが、配置を逆にしても良い。その場合も、両系統の配線がノイズを与え合うのを防止するという効果を奏することができる。
【0030】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の配線構造は、高電圧系配線と低電圧系配線との2系統の配線のうち一方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体の内面に沿って延びる第1の経路に配置され、上記2系統の配線のうち他方の系統の配線は、上記箱体の内部に配置された要素から上記箱体のこの要素の近傍に設けられた第2の貫通部を通して外部に取り出され、さらに上記箱体の外面に沿った第2の経路に配置されている。したがって、上記第1の経路と第2の経路とを互いに離間させて設定することによって、両系統の配線が互いに接近することが無くなる。この結果、両系統の配線がノイズを与え合うのを防止することができる。
【0031】請求項2の配線構造では、上記第2の経路は上記箱体の外面に設けられた断面凹状の溝であるから、上記他方の系統の配線はこの溝に埋め込むことによって簡単に固定される。したがって、組立作業によるバラツキを減少させて、製品の品質を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例の配線構造を持つ電装品箱を蓋に垂直な方向から見たところを示す図である。
【図2】 上記電装品箱の蓋を取り外した状態を示す図である。
【符号の説明】
1 電装品箱
2 箱体
2F 蓋
3 低電圧系配線
4A 高電圧系配線
5A,5B,…,5E,8A,8B,…,8H 爪
6A,6B,6C,6D 切り欠き溝
7 L溝
81 第1の経路
82 第2の経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 箱体(2)の内部に配置された要素(11A,11B,…,11F)と、上記箱体(2)の外部に配置された要素とを、高電圧系配線(4A)と低電圧系配線(3)との2系統の配線で接続する配線構造であって、上記2系統の配線のうち一方の系統の配線(3)は、上記箱体(2)の内部に配置された要素(11A,11B,…,11F)から上記箱体(2)の内面に沿って延びる第1の経路(81)に配置され、上記箱体(2)の上記第1の経路(81)が通る箇所に設けられた第1の貫通部(6B,6C,6D,13A,13B)を通して外部に取り出されており、上記2系統の配線のうち他方の系統の配線(4A)は、上記箱体(2)の内部に配置された要素(18A)から上記箱体(2)のこの要素(18A)の近傍に設けられた第2の貫通部(9)を通して外部に取り出され、さらに上記箱体(2)の外面に沿って延びる第2の経路(91)に配置されていることを特徴とする配線構造。
【請求項2】 請求項1に記載の配線構造において、上記第2の経路(91)は上記箱体(2)の外面に設けられた断面凹状の溝(7)であることを特徴とする配線構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平8−285331
【公開日】平成8年(1996)11月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−85269
【出願日】平成7年(1995)4月11日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)