説明

配置固定デバイス

【課題】 固定デバイスを提供すること
【解決手段】 固定デバイスは、その固定デバイスの頭部において固定デバイスを送達器具に連結することによって、患者の身体に送達可能である。固定デバイスの頭部において固定デバイスを送達器具に係合することによって、患者の組織および/または靭帯に固定デバイスを固定することが可能になる。固定デバイスは、女性患者の膀胱頸部付近に配置するためのスリングであることが可能である。別の側面において、本発明は、シャフトに係合される頭部を備える固定デバイスを伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、患者の身体内に固定デバイスを配置することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
直腸瘤、膀胱脱、腸瘤、膣脱、および直腸脱などの症状は、損傷、脱出、衰弱、またはヘルニア状態の組織または器官を伴う。脱出症は、器官または器官の一部がその正常位置から滑脱することをいう。例えば、直腸の脱出症は、肛門から直腸が突出している状態をいう。直腸瘤は、会陰に直腸が脱出している状態である。子宮の脱出症は、その支持構造の伸張および弛緩により、子宮が膣に下降することにいう。膣円蓋脱出は、膣壁の頭側端部が膣入口に向かって、膣入口を通っておよび膣入口を越えて脱出することをいう。膀胱脱(つまり、膀胱瘤)は、膀胱が膣口に向かって下方および後方に移動することによって形成されるヘルニアであり、通常、その原因は、分娩中の筋肉組織の衰弱にある。しかしながら、安静時または緊張時における前膣壁および膀胱底のいかなる異常な下降も、膀胱脱と考えられる。腸瘤は、腸のヘルニアであるが、この用語は、直腸子宮窩を介する骨盤腹膜のヘルニア(つまり、後膣、直腸膣、円蓋、またはダグラス窩ヘルニア)について具体的に言及するときに使用される。直腸脱は、直腸の粘膜層が脱出している状態であり、その原因の多くは括約筋の弛緩にある。これらの症状の治療においては、多くの場合、修復を必要とする解剖学的部位にメッシュスリングなどのスリングを埋め込むことが必要になる。
【0003】
腹圧性尿失禁(SUI)は、主に女性が罹患し、一般的に、単独または組み合せて発生し得る2つの状態、つまり固有括約筋不全(ISD)および過可動性によってもたらされる。ISDでは、尿道内に位置する尿道括約筋弁が適切に閉鎖しないため、圧力のかかる行動中に尿道から尿が漏れる。過可動性は、骨盤底の膨張、衰弱、または損傷状態であり、膀胱頸部および近位尿道が腹圧の増加(例えば、くしゃみ、せき、いきみなど)に応じて回転および下降することにより、尿道閉鎖を促進する応答時間が不十分になり、結果として尿漏出および/または尿排出をもたらす。
【0004】
過可動性に影響を及ぼし得る生物学的要因には、内骨盤筋膜の筋緊張の低下(例えば、老化または限られた活動による)、外傷による内骨盤筋膜の筋肉伸張/断裂(例えば、分娩による)、内骨盤筋膜/腱弓(筋肉/靭帯)離界(側方損傷)、ホルモン(例えば、エストロゲン)欠損症、随伴性欠陥(例えば、膀胱脱、腸瘤、および尿管脱出尿管脱出)、ならびに膣脱が含まれる。従来の治療法には、尿道または膀胱頸部安定化スリングが含まれ、この場合、中部尿道または膀胱頸部の下にスリングを配置し、膨張を防止する基盤が提供される。
【0005】
従来、スリングは、尿道または膀胱頸部の下に配置され、内骨盤筋膜の下降を制限する尿道基盤を提供しながらも、接合を改善するために尿道括約筋を圧迫するようにしている。尿道の配置位置によって、低可動性の解剖学的構造に機械的安定性がもたらされる。膀胱頸部スリングは、従来、骨固着方法によって所望の位置に添着されている。低可動度部位に配置される中部尿道スリングは、固着具無しのアプローチを使用して配置する場合がある。張力を最小限に抑える必要があると認識する場合、医師は、内骨盤筋膜を介して中部尿道スリングを固定する場合がある。この配置のスリングにより、骨盤底が下降する支点(患者の過可動性状態を利用する)、ならびに尿道の「よじれ」または高抵抗性がもたらされ、高ストレス状態において尿の流れが妨げられる。
【0006】
器官および組織を骨盤領域内で安定化させる公知の方法は、骨固着の使用を伴う。骨固着具の配置には、別のドリル器具を使用して、または固着具自体をドリル器具として使用することによって、ドリルで骨に穴を開ける必要がある。一般的に、骨固着具は、外側に突出する1つ以上の返し部(barb)を有し、穴から固着具が抜け出ないようにしている。一般的に、このような固着具は、その返し部が軟組織を断裂することによって、炎症をもたらし、および/または固定デバイスが組織を貫通して戻るため、軟組織への埋め込みには適さない。
【0007】
その他の公知の方法は、患者の腹部に1つ以上の切開を形成することを含む。例えば、女性の腹圧性尿失禁を治療するための1つの方法は、患者の腹部の皮膚にインプラントを貫通させた後に、患者の皮膚に固着されたインプラントで尿道を支持することを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明に従う例示的な実施形態は、人間またはその他の哺乳類などの患者の身体内の治療部位に、固定デバイスを固定することを目的とする。いくつかの実施形態は、身体内の治療部位に固定デバイスを送達するための送達器具に連結される大きさの固定デバイスを目的としており、固定デバイスはその頭部において送達器具に連結される。送達器具の頭部に固定デバイスを連結することによって、身体内の組織および/または靭帯に固定デバイスを送達することが可能となり、それに続いて、その組織および/または靭帯に固定デバイスを固定することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面において、本発明は、固定デバイスを組織に送達するための器具に関し、本器具は、ユーザによる作動に基づいて、引き込み位置から延出位置に延出することが可能であるキャリアを含む遠位部を備える。前記キャリアは、前記キャリアが固定デバイスを収容することを可能にする側面のスロットを備える。前記固定デバイスのシャフトは、前記キャリアのスロットを貫通し、固定デバイス頭部は、前記キャリアの遠位端に配置される。また、前記器具は、前記キャリアが前記引き込み位置から前記延出位置まで移動するときに、いったん前記固定デバイス頭部が前記組織を貫通して進められてしまうと、前記固定デバイス頭部を固定する留め部をさらに備える。
【0010】
別の側面において、本発明は、シャフトに係合される頭部を備える固定デバイスを伴う。前記頭部および前記シャフトは、送達器具の延長可能なキャリアによって収容される大きさであり、前記頭部は、前記送達器具の留め部の中に固定される大きさである。スリングは、前記固定デバイスの前記シャフトに係合可能である。
【0011】
さらに別の側面において、本発明は、スリングの第1の端部に係合される第1の固定デバイスを備えるスリングを特徴とする。前記第1の固定デバイスは、シャフトに係合される前記第1の固定デバイスの頭部を備えることが可能である。前記頭部および前記シャフトは、送達器具の延長可能なキャリアによって収容される大きさであり、前記頭部は、前記送達器具の留め部内に固定される大きさである。複数の固定デバイスを、前記スリングに係合可能である。
【0012】
開示された実施形態について、添付の図面を参照してさらに説明する。本図面のいくつかの図において、同一構造は、同一数字で言及される。図面は、必ずしも縮尺比に従って縮小されておらず、ほとんどの場合において、本発明の原理および開示された実施形態の例証に重きを置いている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、本開示固定デバイスの実施形態に係合される送達器具に関する実施形態の平面図である。
【図1B】図1Bおよび1C(固定デバイスは取り付けられていない)は、図1Aの送達器具の近位部および遠位部の一部断面図である。
【図1C】図1Bおよび1C(固定デバイスは取り付けられていない)は、図1Aの送達器具の近位部および遠位部の一部断面図である。
【図2】図2は、送達器具に係合される固定デバイスの実施形態を示す。
【図3】図3は、固定デバイスが組織を貫通し、固定デバイス頭部が送達器具の留め部に係合し、送達器具を引き出すことによって、固定デバイスが組織および/または靭帯を介して引張されている実施形態を示す。
【図4】図4は、固定デバイスが複数の返し部を備える固定デバイスに関する実施形態を示す。
【図5】図5は、複数の固定デバイスが移植片に係合される実施形態を示す。
【図6】図6は、複数の固定デバイスが移植片に係合される別の実施形態を示す。
【図7】図7は、T字形の突出部を備える固定デバイスに関する実施形態を示し、この場合、固定デバイスはスリング材料に係合されていない。
【図8】図8は、固定デバイスおよびロックボタンに関する実施形態を示し、この場合、ロックボタンは、固定デバイスの突出部を係合する。
【図9A】図9Aは、本発明に従う送達器具で使用するための、シャフトに連結する固定デバイス頭部の平面図である。
【図9B】図9Bは、図1Aの送達器具と共に使用するための留め部に関する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従う例示的な実施形態は、固定デバイスを治療部位に固定するための固定デバイスおよび器具、ならびに方法を目的とする。より具体的には、本明細書に記載の具体的な例示的な実施形態は、送達器具に連結される大きさの固定デバイスと、固定デバイス頭部において固定デバイスを送達器具に連結することによって、固定デバイスを治療部位に送達する方法とを目的とする。固定デバイス頭部において固定デバイスを送達器具に連結することによって、組織および/または靭帯に固定デバイスを送達および固定することが可能になる。
【0015】
一実施形態において、スリング材料を配置するための方法は、第1の固定デバイスをスリング材料の第1の端部に係合するステップと、第2の固定デバイスをスリング材料の第2の端部に係合するステップと、を伴う。第1の固定デバイスの固定デバイス頭部は、送達器具の延長可能なキャリアに係合される。次に、第1の固定デバイスの固定デバイス頭部は、組織および/または靭帯を突通し、固定デバイス頭部は、送達器具の留め部に固定される。固定デバイスの頭部が留め部に固定されると、組織から所望の距離だけ送達器具を引き出し、所望の張力で固定デバイスを組織にさらに固定するようにする。次に、第1の固定デバイス頭部の頭部は、送達器具から係脱される。
【0016】
第1の固定デバイスが組織に固定されると、第2の固定デバイスの頭部は、送達器具の延長可能なキャリアに係合される。従って、第2の固定デバイスは、上述と同じ要領で、第2の所望の位置に送達されてもよい。複数の固定デバイスをスリング材料に係合することによって、各固定デバイスを治療部位に送達することができる。スリング材料(またはいかなるその他の材料)に係合されるいかなる数の固定デバイスも、本発明の範囲内である。
【0017】
送達器具100の実施形態は、図1A〜1Cに示される。図1Aは、ハンドル102、細長い本体部材104、および固定頭部配置機構110を備える送達器具100を示す。また、送達器具100は、遠位部106および近位部108を含む。細長い本体部材104は、近位部108においてハンドル102に機械的に連結され、送達部品は、送達器具100の遠位部106内に少なくとも部分的に配置される。
【0018】
図1Aに示されるように、固定デバイス306は、固定デバイス頭部328を延長可能なキャリア(図1Cに示される)に配置することによって、送達器具100の遠位部106に係合される。キャリア124は、側面のスロットを備える。固定デバイス306をキャリア124に連結する場合、固定デバイス306のシャフト300は、側面のスロットを貫通する大きさであり、固定デバイス頭部328は、キャリアの遠位端における開口部の先端部に配置される。固定デバイス頭部328の直径は、キャリアの内腔の直径よりも大きい。従って、固定デバイス頭部328は、キャリアの遠位開口部を越えて存在し、固定デバイスのシャフト300の一部がキャリアの内腔内に存在する。従って、固定頭部配置機構110が押圧されると、キャリア124は、固定デバイス頭部328が留め部に固定されるまで、組織を通って固定デバイス頭部328を進める。留め部に固定されると、キャリアは、その元の位置まで引っ込むことによって、固定デバイス頭部328から係脱する。固定デバイス頭部328が留め部に固定されると、送達器具100をある距離だけ引き込むことによって、組織を通って所望の距離だけ固定デバイス306を引っ張り得る。最後に、固定デバイスの組織への配置が成功すると、固定デバイス頭部328は、キャリアから係脱される。これらの部品に関する実施形態について、図1Bおよび1Cに詳細に示す。
【0019】
送達器具100のハンドル102は、種々の形状をとることが可能であり、例えば、ハンドル102は、Boston Scientific Corporationの縫合システム(具体的には、Capio(登録商標)Push&Catch縫合システム)と共に使用される型のうちの1つであってもよい。一般的に、固定デバイス配置機構110は、細長い本体部材104を通って送達器具100の遠位部106まで長手方向に延在し、ここにおいて、固定デバイス頭部配置機構110はキャリア124(図1C)に連結される。固定デバイス頭部配置機構110によって、引き込み位置から延出位置までキャリア124を移動させる。固定デバイス配置機構110は、図1Bおよび1Cにより詳細に示される。
【0020】
図1Bを参照すると、送達器具100の近位部108は、ハンドル102、細長い本体部材104、および固定デバイス配置機構110を含む。固定デバイス配置機構110は、作動部112(ボタン117、シャフト116)、軸受部118、ボタン端部119、および穴部121を含む。軸受部118は、細長い本体部材104の内径によって形成される円筒状表面105に沿って存在する。ワイヤフォーム103は、穴部121に挿入されて、作動部ボタン117に連結する。バネ115は、ワイヤフォーム103を取り囲み、ボタン端部119に当接し、ボタン端部119とバネ座金113との間で圧縮される。バネ座金113は、中心管107に据え付けられる。中心管107は、円筒状表面105に収容され、また、遠位部106に拘束される。押し込みワイヤ111は、溶接、連結、接着、またはその他の手段によりワイヤフォーム103に取り付けられ、誘導スリーブ109内に摺動可能に配置され、このスリーブ109は、中心管107の内径によって形成される円筒状表面123内に配置される。ある実施形態において、押し込みワイヤ111は、ニチノールによって形成され、拘束時の屈曲性と高いコラム強度とを可能にする特性を組み合せるように選択される。ニチノールは、ニッケルとチタンの合金である。当業者は、種々の材料によるワイヤが、本発明の精神および範囲内であることを認識するであろう。
【0021】
図1Cを参照すると、図1Aの送達器具100の遠位部106は、細長い本体部材104、固定デバイス配置機構110、関節機構114、湾曲部126、および留め部122を含む。固定デバイス配置機構110を再び参照すると、押し込みワイヤ111は、溶接またはその他の手段により、連結部150に取り付けられ、軌道152内に摺動可能に配置される。連結部150は、キャリアワイヤ154に取り付けられ、このキャリアワイヤ154は、連結部150へ取り付けられることによって、軌道152内に摺動可能に配置される。キャリアワイヤ154は、溶接、連結、またはその他の手段によって延長可能なキャリア124に機械的に連結される。連結部150は、押し込みワイヤ111の周囲に摺動可能に配置され、かつ後壁162を有するポケット160内に含まれる後退防止座金156と当接し、この後壁162によって、後退防止座金156が支えられている。軌道152は、壁166を有するポケット164において遠位で終端となる。下降防止座金158は、キャリアワイヤ154周辺に摺動可能に配置され、ポケット164内に拘束される。
【0022】
いくつかの実施形態において、送達器具100は、関節機構114を含んでもよい。関節機構114は、遠位部106に近接して細長い本体部材104に配置される(図1C)。関節機構114によって、回転が容易になり(矢印182に示される方向)、また、送達器具100の遠位端106の位置決めが容易になる。さらに、細長い本体104は、実質的に直線状であることが可能であり、あるいは1つ以上の屈曲部を含んでもよい。関節機構114および/または屈曲部により、患者の体内の深い部位および/または到達することが困難な部位へのアクセスが容易になる。
【0023】
図1Cは、キャリア124の遠位開口部125を示す。上述のとおり、キャリアは、遠位開口部125から始まる側面のスロットを備える。さらに、遠位端の湾曲部126は、スロット127(図3に示される)を備え、このスロット127は、キャリア124の側面のスロットと整列する。キャリアのスロットと湾曲部126のスロットとを整列させることによって、固定デバイスのシャフト300が、キャリアの一部の中に存在することが可能になる一方で、固定デバイス頭部328は、キャリアの遠位開口部125の先端部に存在する(図1Aおよび図2に示される)。
【0024】
図2は、固定デバイス306に係合される送達器具100の本開示の実施形態を示す。固定デバイス306は、固定デバイス頭部328を延長可能なキャリア124に挿入することによって、送達器具100に係合される。図1A〜1Cに関連して上述のとおり、延長可能なキャリア124は、引き込み位置または延出位置にあってもよい。図2に示されるように、延長可能なキャリア124は、引き込み位置にある。
【0025】
図2に示されるように、固定デバイス306の実施形態は、シャフト300を備え、このシャフト300は、固定デバイス頭部328からスリング材料324が開始するまでの範囲に及ぶ。ある実施形態において、スリング材料324はメッシュである。ある実施形態において、スリング材料324は移植片である。ある実施形態において、スリング材料は、薬剤を含んでもよい。当業者は、その他の種々の材料が本発明の精神および範囲内であることを認識するであろう。
【0026】
固定デバイス頭部328が送達器具100に連結される際、固定デバイス頭部328の肩部は、延長可能なキャリア124の先端にあるが、一方、固定デバイス306の可撓性シャフト300は、スロットを通って延長可能なキャリア124の中に滑り込み、側面入口付近に存在する。可撓性シャフト306の長さは、追加の固定デバイス306を固定する再装着のために、身体から取り出す必要に対応して変化することが可能である。
【0027】
図2に示される実施形態において、第1および第2の突出部302は、可撓性シャフト300から延出し、スリング材料(つまり、メッシュまたは移植片)をカプセル化し、誘導端としての役割を果たす。ある実施形態において、誘導端は、靭帯および/または組織310を通って可撓性シャフト300に追従するために、スリング材料よりも固く、また、スリング材料の幅を延長状態に維持するだけでなく、さらには折り畳み可能に維持するための支持を提供するような角度を有する。また、誘導端302の端部は、固定デバイス306を適所に固着するための返し部としての役割も果たすことが可能である。
【0028】
ある実施形態において、可撓性シャフト300は、スリング材料を貫通し、背骨または支持部分304としての役割を果たす。背骨部分304によって、スリング材料324に強度がもたらされ、組織および/または靭帯310から固定デバイス306を引っ張るときに、スリング材料324がほどけないようにする。
【0029】
ある実施形態において、スリング材料324は、複数の突起部(tang)308を備える。突起部308は、固定デバイス306の組織および/または靭帯310への固定に役立つように、組織および/または靭帯310を係合する。
【0030】
ある実施形態において、固定デバイス306は、医療用の埋め込み可能なポリプロピレンを含む。ある実施形態において、固定デバイス306は、生体吸収性材料を含む。当業者は、種々の材料が、本発明の精神および範囲内であることを認識するであろう。
【0031】
図2は、送達器具100が、引き込まれた配向にある延長可能なキャリア124を備える実施形態を示す。固定デバイス配置機構110(図1A〜1Cに関連して上述のように)を係合することによって、延長可能なキャリア124は、完全に延出し、固定デバイス頭部328が靭帯または組織を貫通し、また、留め部122で収容可能になるようにする。以下に示されるように、尖状の固定デバイス頭部328は、留め部122を通るときに、留め部122のスロットを広げる。次に、延長可能なキャリア124が引き込まれるときにスロットは狭まり、頭部がその幅広い肩部によって留め部122内にトラップされる(図9Aおよび9B参照)。
【0032】
図3は、本開示の送達器具100の実施形態を示し、ここで、固定デバイス頭部328は、組織310を貫通し、かつ留め部122に固定されている状態である。固定デバイス頭部328が送達器具100の留め部内に保持されると、送達器具100は、ほぼ矢印「A」の方向に治療部位から引き離される。送達器具100が、組織および/または靭帯310から引き出されると、固定デバイス306は、靭帯および/または組織310を介して引っ張られる。固定デバイス306は、固定デバイスの所望の長さが適切な懸垂および/または引張に対して達成されるまで、靭帯/組織を介して引っ張られる。
【0033】
ある実施形態において、固定デバイス306は、何らかの不要材料を除去するために、切断器具によって切断されてもよい。固定デバイス306および固定デバイスの切断部分は、留め部122の出口を通って身体の外部へ取り出される。ある実施形態において、送達器具100を使用して、追加の固定デバイスまたは縫製構造を同一の患者に配置することができる。
【0034】
図4は、第1の固定デバイス306aが、スリング324の第1の端部に係合され、第2の固定デバイス306bが、スリング324の第2の端部に係合されている本開示の実施形態を示す。ある実施形態において、固定デバイス306は、スリング材料324上に形成される挿入部分である。
【0035】
ある実施形態において、スリングは、失禁用スリングである。当事者は、いかなる種類のスリングも本発明の精神および範囲内であることを認識するであろう。
【0036】
ある実施形態において、本開示の送達器具100を使用して、上述と同じ要領で、クーパー靭帯を通ってスリングの端部を配置し、反対側の横側面についても繰り返し行なう。ある実施形態において、スリングは、図4に示されるようなより長い可撓性シャフトを有する固定デバイスを使用する単一切開による膣アプローチを介して、送達器具100を使用して、経閉鎖孔を出入りして通り抜けることが可能であり、正中切開を介して後に引張力を加えることが可能である。
【0037】
ある実施形態において、図4に示されるように、複数の返し部312は、固定デバイス306a、306bの各々シャフト300に沿って配置される。組織および/または靭帯は、可撓性シャフト300に沿って配置される返し部312によって固着されてもよい。
【0038】
図5は、複数の固定デバイス306a、306b、306c、および306dが移植片324の複数の位置に係合される本開示の実施形態を示す。ある実施形態において、固定デバイス306a、306b、306c、および306dは、移植片上に形成される挿入部分である。当業者は、固定デバイス306を移植片に係合するために種々の処理を使用してもよいこと、また、これらの処理が、本発明の精神および範囲であることを認識するであろう。
【0039】
前方修復または後方修復に移植片を使用することが可能であり、この場合、固定デバイス306a、306b、306c、および306dは、移植片を懸架するために、仙棘靱帯、基靱帯、子宮仙骨靱帯、またはその他の組織および靭帯に固着することによって、脱出および腸脱の支持および修復が可能になる。
【0040】
所望の長さの「脚部」が達成されるまで、組織の靭帯を介して固定デバイス306a、306b、306c、および306dを引っ張ることによって、ユーザの裁量により各固定デバイス306a、306b、306c、および306dは、個々に配置される。従って、第1の固定デバイス306aの頭部は、送達器具100に係合され、組織を通って進められ、留め部に固定され、送達器具100を引き出すことによって組織に配置され、留め部から係脱される。次に、第2の固定デバイス306bの頭部は、送達器具100に係合され、工程が繰り返される。追加の全固定デバイス306c、306dなどについては、上で特定された手順に従う。
【0041】
ある実施形態において、移植片は、腸瘤の中心に置かれる。ある実施形態において、移植片は、懸垂した緊張のない状態である。
【0042】
図6は、複数の固定デバイス306a、306b、306c、および306dが移植片324に係合されている本開示の実施形態を示す。図5の固定デバイス306a、306b、306c、および306dと比較すると、固定デバイス306a、306b、306c、および306dは、複数の返し部312を備えないが、それぞれのシャフト300は、複数の突出部313を備え、この突出部313によって所望の引張力を達成するために、ユーザは、所望の突出部313を留め部122に係合することが可能になる。従って、移植片324の配置および所望の引張力は、各固定デバイス306a、306b、306c、および306dを組織および/または靭帯を介して引っ張ることによる移動によって達成される。追加の引張により、移植片324において引張力を生成することが可能である。
【0043】
固定デバイス306および/またはスリング材料324のそれぞれの部品の大きさおよび形状は、異なる用途に応じて可変である。シャフト300の長さは、約1cmから約120cmまで可変である。ある実施形態において、シャフト300の長さは、約120cmを越える。シャフト300の長さが長ければ、キャリア124に再装着するために、第1の固定デバイス306aの第1の配置後に、第2の固定デバイス306bが身体から引き出しが可能になる。また、第2の固定デバイス306bを異なる位置に配置し、近接または懸垂のための「縫合ブリッジ」を形成することができる。
【0044】
図7は、固定デバイス306が分離したユニットである本開示の実施形態を示す。固定デバイス頭部328は、送達器具100のキャリア124に適合する大きさおよび形状である。円形突出部313によって、一方向に組織を通過することが可能になり、反対の方向に固着する。後退防止部316は、組織に当接するように提供され、固定デバイス306が組織を貫通しないようにする。ある実施形態において、後退防止部316は円形形状である。ある実施形態において、後退防止部316は、T字形の突出部である。当業者は、固定デバイスが組織を貫通しないようにするいかなる形状の後退防止部も本発明の精神および範囲内であることを認識するであろう。
【0045】
図7は、固定デバイス306が、送達器具100の一回の「発射」によって、第1の組織320および第2の組織320を貫通する本開示の実施形態を示す。ある実施形態において、第1の組織320は、送達器具100の第1の発射で貫通され、第2の組織322は、送達器具100の第2の発射で貫通される。第2の組織322を第1の組織320に接近させるために、頭部は、矢印「B」によって表される方向に引っ張られてもよい。ある実施形態において、ロッドまたは安定具を矢印「C」の方向に使用して、第1の組織320を第2の組織322に接近させてもよい。
【0046】
ある実施形態において、固定デバイス306は、所望の返し部313を係合するために、シャフト300上を摺動するボタン(図示せず)を使用して適所に固定される。
【0047】
図8は、本開示の固定デバイス306の実施形態に組み込まれるロックボタン330を示す。ある実施形態において、ロックボタン330は、キャリア124および固定デバイス頭部328を収容するように配置される。ロックボタン330は、固定デバイス頭部328およびキャリア124よりも大きい直径のロックを有し、キャリア124および固定デバイス頭部328がロックボタン330を自由に貫通するようにするが、留め部124に収容される大きさである。ロックするためには、固定デバイス頭部328は、ロック穴部330を介してシャフト300を引くように引っ張り、ロック返し部313を係合する。さらに引っ張ることによって、次の返し部313が、結果として生じる輪を引き締めるように調整される。過剰な輪は取り除かれる。
【0048】
図9Aを参照すると、一実施形態において、固定デバイス頭部328は、先端130と、その先端に連結されたシャフト134とを含むことによって、肩部132を形成する。シャフト134は、シャフト300に連結される。固定デバイス頭部328は、内腔138に挿入され、わずかな摩擦の嵌合によって保持される。
【0049】
図1Bおよび1Cを再び参照すると、操作の際、ユーザ(医師またはその他の医療関係者)は、ボタン117を押すことによって、固定デバイス配置機構110を作動させる。それによって、押し込みワイヤ111に取り付けられたワイヤフォーム103への取り付け部を介して、キャリアワイヤ154を付随して動かしながら結合部150を軌道152に沿って動かす。その結果、出口120を通って延長可能なキャリア124を摺動可能に動かす。ユーザは、固定デバイス頭部328が留め部122に入るまでボタン117を押し続ける。図9Bに示されるような留め部122は、連続的なリブ172によって画定された開口部170を含む。留め部122は、固定デバイス頭部328(固定デバイス306のシャフト300に連結される)を、開口部170を介して収容し、リブ172は若干偏向しており、その結果、固定デバイス頭部328が貫通することを可能にする。形成された肩部132がリブ172を通過した後に、リブ172は、開口部170を画定する元の位置に付勢により戻り、固定デバイス頭部328は、留め部122に留まったままになる。ユーザが、ボタン117を解除すると、バネ115によってボタン117は近位に付勢され、押し込みワイヤ111、連結部150、キャリアワイヤ154、およびキャリア124がボタン117と共に近位に動いて、引き込み位置になる。延長可能なキャリア124が引き込み位置に戻ると、固定デバイス頭部328は、キャリアから摺動する。開口部170は、形成された肩部132よりも直径が小さくなるように選択される。これにより、固定デバイス頭部328が開口部170から戻らないようになることから、肩部132の平面の裏面によって、留め部122は固定デバイス頭部328を保持する。留め部122から固定デバイス頭部328を取り外す必要がある場合、開口部172の拡大部分174側に固定デバイス頭部328を移動してもよい。拡大部分174は、形成された肩部132が抵抗無しに貫通可能にする大きさである。留め部122は、ANSI301硬質などの高硬度の薄いステンレス鋼から形成されてもよい。留め部122は、スタンピング、レーザー加工、または化学エッチングによって作製されてもよい。当業者は、留め部が、幅広い材料を含んでもよく、また本発明の精神および範囲であることを認識するであろう。さらに、当業者は、留め部は、幅広い方法によって作製されてもよく、本発明の精神および範囲内にあることを認識するであろう。
【0050】
送達器具の部品材料は、生体適合性であるべきである。例えば、ハンドル102、細長い本体部材104、および固定デバイス頭部配置機構110の部分は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、またはガラス充填のポリカーボネートなどの、押出、成型、または機械加工の材料により作製されてもよい。その他の部品、例えば、固定デバイス頭部328は、ステンレス鋼から作製されてもよい。その他の適切な材料は、当業者に明白である。さらに、機械的部品および操作は、米国特許第5,364,408号および同第6,048,351号に開示されているものと同質であり、これらの特許の各々は、全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明に従う特定の実施形態について開示された。これらの実施形態は、本発明を例証するものであって、本発明を限定するものではない。その他の実施形態ならびに開示された実施形態の種々の修正および組み合せは可能であり、本開示の範囲内である。
好ましい実施形態によれば、例えば、本発明は以下を提供する。
(項1)
固定デバイスを患者の組織に送達する器具であって、
ユーザによる作動に基づいて、引き込み位置から延出位置まで延出することが可能であるキャリアを含む遠位部であって、該キャリアは、該キャリアが固定デバイスを収容することを可能にする側面のスロットを備え、該固定デバイスのシャフトは、該キャリアのスロットを貫通し、該固定デバイスの頭部は、該キャリアの遠位端に配置される、遠位部と、
該キャリアが該引き込み位置から該延出位置に移動するときに、いったん該頭部が該組織を貫通して進められてしまうと該固定デバイスの頭部を固定する留め部と
を備える、器具。
(項2)
前記固定デバイスは、メッシュ材料に係合される、上記項1に記載の器具。
(項3)
前記メッシュ材料は、複数の突起部を備える、上記項2に記載の器具。
(項4)
前記シャフトは、前記メッシュ材料を貫通する、上記項2に記載の器具。
(項5)
前記シャフトは、ロックボタンを係合する複数の円形突出部を備える、上記項1に記載の器具。
(項6)
前記固定デバイスは、移植片に係合される、上記項1に記載の器具。
(項7)
前記シャフトは、複数の返し部を備える、上記項1に記載の器具。
(項8)
前記固定デバイスは、T字型突出部において終端となる、上記項1に記載の器具。
(項9)
前記キャリアに係合される固定デバイス配置機構をさらに備え、ユーザが該固定デバイス配置機構を押圧するときに、該キャリアを引き込み位置から延長可能位置まで進める、上記項1に記載の器具。
(項10)
シャフトに係合される固定デバイス頭部であって、該頭部および該シャフトは、送達器具の延長可能なキャリアによって収容される大きさであり、該頭部は、該送達器具の留め部の中に固定される大きさである、固定デバイス頭部と、
該固定デバイスを患者の組織に固定するために、該固定デバイスの該シャフトに係合されるスリング材料と
を備える、固定デバイス。
(項11)
前記スリング材料は、メッシュ材料を含む、上記項10に記載の固定デバイス。
(項12)
前記メッシュ材料は、複数の突起部を備える、上記項11に記載の固定デバイス。
(項13)
前記シャフトは、前記スリング材料を貫通する、上記項10に記載の固定デバイス。
(項14)
前記シャフトは、複数の返し部を備える、上記項10に記載の固定デバイス。
(項15)
前記シャフトは、ロックボタンによって係合される複数の円形突出部を備える、
上記項10に記載の固定デバイス。
(項16)
スリングの第1の端部に係合される第1の固定デバイスであって、該第1の固定デバイスは、シャフトに係合される第1の固定デバイス頭部を備え、該第1の固定デバイス頭部および該シャフトは、送達器具の延長可能なキャリアによって収容される大きさであり、該第1の固定デバイス頭部は、該送達器具の留め部の中に固定される大きさである、第1の固定デバイスを備えるスリング。
(項17)
前記スリングの第2の端部に係合される第2の固定デバイスであって、該第2の固定デバイスは、シャフトに係合される第2の固定デバイス頭部を備え、該第2の固定デバイス頭部および該シャフトは、送達器具の延長可能なキャリアによって収容される大きさであり、該第2の固定デバイス頭部は該送達器具の留め部の中に固定される大きさである、第2の固定デバイスをさらに備える、上記項16に記載のスリング。
(項18)
前記第1の固定デバイスは、該固定デバイスの該シャフトに沿って複数の返し部を備える、上記項16に記載のスリング。
(項19)
前記第1の固定デバイス頭部は、尖状の先端を備える、上記項16に記載のスリング。
(項20)
前記スリングに係合される複数の固定デバイスをさらに備える、上記項16に記載のスリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明


【図1B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9A】
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【図9B】
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【図1A】
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【図1C】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10013(P2013−10013A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−226178(P2012−226178)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−550341(P2008−550341)の分割
【原出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】