説明

配設体支持具及び配設体支持具の設置構造

【課題】構成部品点数が少なく低コストで、かつ、設置作業が容易で設置後の姿勢が安定し、しかも配設体の設置作業及び配線工事の自由度が高い、低コストの配設体支持具及び配設体支持具の設置構造を提供する。
【解決手段】配設体支持具10は、型鋼材Mのフランジ部Fの下方に感知器Yや配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持する支持具であって、フランジ部Fを弾性的に挟持するための一対の挟持片1a、1bを備えた固定部1と、配設体を支持する支持部2とが、金属板のプレス成形により一体に形成される。支持部は、固定部によりフランジ部に固定した状態で、フランジ部の下方との間に配線空間Sを形成する位置でフランジ部の表面に沿って延設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天井裏を補強している型鋼材に、感知器、配線用ボックス等の電気配設体(以下、「配設体」と略称する。)を固定するために使用する配設体支持具及びその配設体支持具の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井などの構造物は、上階や屋根等の重量に耐えるだけの強度が要求される。
【0003】
そのために天井裏にデッキプレート等の補強鋼板を張り、その上にコンクリートを打設するのであるが、通常、デッキプレートの裏面は例えば横断面がH形、L形、I形等の型鋼材で補強される。これら型鋼材に感知器、配線用ボックス等を取り付け、電気配線をするには、電気ケーブルを型鋼材の下面や側面に沿って配線し、感知器等を種々の配設体支持具(ブラケット)で固定した後、配設体支持具を経由して配線する。
【0004】
従来より、このような型鋼材に取り付ける配設体支持具の一例として、例えば、図6に示す特許文献1に記載されている配設体支持具50が知られている。
【0005】
この配設体支持具50は、締付ボルト51aを有するコ字形に屈曲されたクランプ51と、このクランプ51の下部に位置し、クランプ51に挿通された支点ボルト52で枢支され、取付角度の調整が可能な自在取付板53とから成り、従来は、図示しない感知器等を自在取付板53の裏面に当て、これを図示しない取付ボルトを長孔53aから挿通して固定した後、支点ボルト52で適当な傾斜角度に設定していた。
【0006】
しかしながら、この配設体支持具50は、構成部品がクランプ51、締付ボルト51a、支点ボルト52、自在取付板53及びその図示しない取付ボルトというように多くの部品を必要とするため、製造コストが高くつくうえ、全体を型鋼材に取り付けるには、例えば型鋼材のフランジ部にクランプ51のコ字形部分51bを差し込み、締付ボルト51aを一々ねじ込んでクランプ51をフランジ部に固定しなければならないので手間がかかる問題があった。
【0007】
また、上記したように通常、電気ケーブル等の電気配線類は、型鋼材の下面や側面に沿って配線されるが、このような特定位置に配設体支持具50を固定しようとすると、既設の電気配線類に干渉するため取り付けが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭48−74683号公報(第3図(イ))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解消すべくなされたもので、構成部品点数が少なく低コストで、かつ、設置作業が容易で設置後の姿勢が安定し、しかも配設体の設置作業及び配線工事の自由度が高い配設体支持具及び配設体支持具の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の配設体支持具は、型鋼材のフランジ部の下方に、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための支持具であって、前記フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とが、金属板のプレス成形により一体に形成され、前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に沿って延設されて成ることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明でいう「型鋼材」とは、横断面が例えばH形、L形、I形等のおよそフランジ部を有する鋼材一般を指す。
【0012】
また、「配設体」とは、上記型鋼材の表面に沿って配線された電気ケーブル、配線、コード類に接続される例えば感知器、配線ボックス等の電気機器又は器具をいう。
【0013】
また、「配線空間」とは、上記配線された電気ケーブル等が、型鋼材のフランジ部の下方において占める、正面視で見た場合の電気配線スペース(図2(c)の符号S参照)をいい、それらの配線は、型鋼材に沿う電気ケーブルから分岐された配線が緩やかに曲がって感知器に至るとともに、フランジ部下面に比較的接近しているものである。
【0014】
上記特徴を有する配設体支持具によれば、固定部と支持部とがプレス成形により一体に形成されているので、フランジ部への取り付け作業が短時間で完了する配設体支持具を低コストで製造することができる。
【0015】
また、型鋼材のフランジ部への取り付け作業は、フランジ部に一対の挟持片を差し込み、その弾性力により固定するので、短時間で済む。
【0016】
さらに、配設体支持具の固定部が型鋼材のフランジ部に固定された状態で、フランジ部の下方に電気ケーブル等の配線空間が存在するので、配線工事後の配設体の取り付けの他、配設体を取り付け後に配線空間内に配線工事をすることもでき、配線作業の自由度が高くなる。
【0017】
また、フランジ部下方における配線工事後の電気ケーブル等の工事部材の投影平面積に、配設体及び配設体支持具の投影平面積を重複させることができるので、下から見上げた場合にすっきりとした感じの配線工事が実現できる。
【0018】
更に、本発明の配設体支持具は、前記支持部を、前記固定部の一対の挟持片のうち、一方の挟持片の先端から前記配線空間を形成すべく、前記フランジ部から離れるように折り下げられた後、前記一方の挟持片の先端方向へさらに略直角に折り曲げられ、延設させることができる。
【0019】
したがって、上記特徴を有する配設体支持具によれば、配設体支持具の上下方向の寸法を配線空間の高さに応じたものにすることができる。
【0020】
次に、本発明の配設体支持具の別の実施形態として、型鋼材のフランジ部の下方に、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための支持具であって、前記フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とを備え、前記固定部と前記支持部とは、互いに係合する係合部と被係合部とにより組みつけられて成り、前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に対して回動可能に形成することもできる。
【0021】
この実施形態の配設体支持具の場合、上記係合部と被係合部は、両者が回動可能な関係にあれば公知のものを用いることができる。なお、係合部は、固定部側に設けても良いし、支持部側に設けてもよく、被係合部についても同様である。
【0022】
上記特徴を有する配設体支持具によれば、支持部が、固定部により型鋼材のフランジ部に固定された状態で、フランジ部の下方に配線空間を形成する位置でフランジ部の表面に対して回動可能であるので、配設体の位置を微調整することにより、正確に所望位置に配置することができる。したがって、配設体を複数個配置した場合に、それらの中心を正確に一直線上に並べることができ、下から見上げた場合には見る者にすっきりした印象を与えることができる。
【0023】
また、本発明の配設体支持具は、前記被係合部は、多角形状の貫通孔で形成され、前記係合部は、前記貫通孔に係止する係止爪で形成されて成り、前記支持部は、前記固定部に対して、前記貫通孔の多角形状に対応して段階的に変位するように形成されて成ることを特徴とする。
【0024】
上記特徴を有する配設体支持具によれば、支持部は、固定部に対して、段階的に変位できるので、支持部を所望位置に変位後、その位置を維持することができる。
【0025】
また、本発明の配設体支持具は、前記支持部には、中間部にケーブルが挿通される挿通孔が形成され、該挿通孔を挟むように前記配設体を固定するための一対の固定孔が形成されていることを特徴とする。
【0026】
上記特徴を有する配設体支持具によれば、配設体の取り付けが容易になり、配線工事のスピードアップが図れる。
【0027】
また、本発明の配設体支持具は、前記一対の固定孔は、2種類以上のピッチに対応すべく複数叉は長孔に形成されていることを特徴とする。
【0028】
上記特徴を有する配設体支持具によれば、配設体支持具に対する配設体位置の微調整が可能になる。
【0029】
次に、本発明に係る配設体支持具の設置構造は、デッキプレートを補強する型鋼材のフランジ部の下方において、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための配設体支持具の設置構造であって、前記配設体支持具は、フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とが、金属板のプレス成形により一体に形成されて成り、前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に沿って延設されているとともに、先端部が前記フランジ部の外縁から突出しない長さに形成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明は、型鋼材に対する配設体支持具の設置構造を上記のようにしているので、前述した自由度の高い配線作業と、すっきりとした感じの配線工事が実現できることに加え、支持部の先端部がフランジ部の外縁から突出しない長さに形成されているので、ケーブル等の配線又は配設体の取り付け工事中に作業者が誤って当該支持部の先端部に接触することが少なくなる。
【0031】
したがって、配設体及びその支持具は正確な位置を維持することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上より本発明の配設体支持具及び配設体支持具の設置構造によれば、従来の支持具に比べて、構成部品点数が少なく低コストで、かつ、設置作業が容易で設置後の姿勢が安定し、しかも配設体の設置作業及び配線工事の自由度が高い、低コストの配設体支持具及び配設体支持具の設置構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る配設体支持具の第1実施例の図面で、図1(a)はその左側面図、図1(b)は平面図、図1(c)は正面図、図1(d)は下面図である。
【図2】図1の第1実施例に係る本発明の配設体支持具の使用図で、このうち図2(a)はH型鋼のフランジ部下面に図1の配設体支持具を取り付けた状態を示す斜視図、図2(b)は図1の配設体支持具の下面に感知器を取り付けた状態を示す斜視図、図2(c)はその正面図である。
【図3】本発明に係る配設体支持具の第2実施例の図面で、このうち図3(a)はその左側面図、図3(b)は平面図、図3(c)は正面図、図3(d)は下面図である。
【図4】図3の配設体支持具の固定部の図面で、このうち図4(a)はその全体斜視図、図4(b)は平面図、図4(c)は左側面図、図4(d)は正面図である。
【図5】図3の配設体の支持部の図面で、図5(a)は正面図、図5(b)は下面図である。
【図6】従来の配設体支持具の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に係る配設体支持具10の第1実施例の図面で、図1(a)は左側面図、図1(b)は平面図、図1(c)は正面図、図1(d)は下面図である。なお、以下の説明において、配設体支持具10の位置、方向に関し、図1(c)の正面図から見て、図の左方向を前方とし、図の右方向を後方とし、図の上方向を上方とし、図の下方向を下方とする。
【0036】
図1(c)に示すように、本発明の配設体支持具10は、溝型鋼などの型鋼材Mのフランジ部F(図2参照)に固定するための固定部1と、感知器や配線ボックス等の配設体Y(図2(b)参照)を支持するための支持部2と、これら固定部1と支持部2とを一体に接続する脚部3とからなる。
【0037】
図1(a)に示すように、固定部1は、両側がリブ状に曲げられることで横断面が略コ字状に曲げ形成された下部挟持部1aと、図1(c)に示すように、下部挟持部1aの右端部から上方に曲げ形成された後、前方に反転して曲げ形成された上部挟持部1bとからなる。
【0038】
下部挟持部1aは、その両側に位置するリブ状部1aa、1aa間を繋ぐ面が平面になっており、また、この平面と支持部2の上面とは、互いに平行になるように構成されている。したがって、固定部1の全体を型鋼材Mのフランジ部Fに装着した場合、この平面部分が型鋼材Mのフランジ部Fの裏面に密着すると同時に、支持部2がフランジ部Fの裏面に対して平行になる。
【0039】
上部挟持部1bの先端部には、図1(b)及び図1(c)に示すように、その両側から切り込み1cが入れられ、その切り込み1cの先端部間を折り目線1nとして、水平面Hに対して角度θだけ時計方向に曲げることで、鋭利な尖端部1dが斜め後方に食み出すように形成されている。
【0040】
これら部材は、例えばステンレス鋼板、冷却圧延鋼板等の弾性変形が可能な材質の金属板をプレス成形することにより一体に構成されている。
【0041】
一方、図1(c)に示すように、固定部1の左端部は、支持部2の上方に配線空間S(図2(c)参照)を形成すべく、固定部1から離れるように所定の腕長さH分だけ下方に折り下げられた後、さらに略直角に前方に折り曲げられ、支持長さLだけ延設されて終端部2aとなっている。なお、この場合の脚部3から終端部2aまでの腕長さLは、前記フランジ部Fの外縁から突出しない長さになっている(図2(c)参照)。したがって、腕長さL部分の上方と型鋼材Mの下方位置における型鋼材Mの長手方向と、終端部2aの上方位置における前方から後方間には、空間が存在しており、この部分を利用して種々の配線が可能となる。
【0042】
また、図1(d)に示すように、支持部2には、中間部に感知器へのケーブルが挿通される挿通孔2bが形成され、また、この挿通孔2bを挟むように配設体を固定するための一対の固定孔2cが形成されている。この一対の固定孔2cは、2種類以上のピッチに対応すべく複数叉は長孔に形成されていてもよい。
【0043】
また、支持部2の表面には、リブ4がこれら一対の固定孔2cを跨いで平行に設けられており、更に、配設体Yの自重により固定部1が脚部3から下方に変形するのを防止するために、脚部3と支持部2との境界部にリブ4が形成されている。
【0044】
次に、図2に基づいて、配設体支持具10を一例としてH型鋼材Mに取り付ける手順について説明する。
【0045】
図2(a)に示すように、まず、H型鋼材Mのフランジ部Fの下方に位置するケーブル等の配線空間S(図2(c)参照)が確保できるだけの脚部長さを有する配設体支持具10を選択し、その固定部1をH型鋼材Mのフランジ部Fの先端部に差し込む。
【0046】
それには、下部挟持部1a材をH型鋼材Mのフランジ部Fの裏面に沿わすようにしてウエブW方向に移動させる。このとき上部挟持部1bは、図1(c)で前述したとおりその先端部が水平面Hに対して時計方向に角度θだけ上方に傾斜しているので、上部挟持部1bがフランジ部Fの表面に沿ってウエブW方向に下部挟持部1a材と一体となって容易に移動することができる。
【0047】
そして、適当な位置で停止すれば、下部挟持部1a材と上部挟持部1bとがフランジ部Fの表裏からその弾性力で挟持した状態で上部挟持部1bの尖端部1dがフランジ部Fの表面に食い込み、強固な位置決めができる。
【0048】
一方、支持部2は、上記固定部1によりフランジ部Fに固定された状態で、フランジ部Fの下方に配線空間Sを介した位置で、フランジ部Fの表面に沿って延設されている。したがって、ケーブルが予め配線空間S内に配線されている場合は、支持部2が何らケーブル等と干渉することなく固定できる。また、仮に、先に配設体支持具10をH型鋼材Mのフランジ部Fの下方に固定した場合においても、支持部2の上に十分な配線空間Sが確保された状態で、支持部2の前方には、H型鋼材Mのフランジ部Fの裏面との間が開口しているので、この開口からの配線工事が容易に可能である。
【0049】
次に、図2(b)に示すように、感知器Yを支持部2の下面に当てがい、感知器Yの図示しないケーブルを挿通孔2bから上方に引き出した状態で、支持部2の上方から図示しないビスを固定孔2cに挿通して感知器Yを支持部2の下面に固定し、しかる後に引き出したケーブルを配線空間S内のケーブルに接続する。
【0050】
この状態の正面図が図2(c)であり、本発明の配設体支持具10によれば、以下に述べる多くの作用効果を有する。
【0051】
本発明の配設体支持具10は、固定部1と支持部2とがプレス成形により一体に形成されているので、低コストで製造することができる。そして、前述した従来品のように複数の構成部品を組み立てる必要がないので、フランジ部Fへの取り付け作業が短時間で完了する。
【0052】
また、フランジ部Fへの取り付け作業は、図6で前述した従来の支持具50のように固定ボルト52で締め付けて一々フランジ部Fに固定するものと異なり、フランジ部Fに一対の挟持片1a、1bを差し込み、その弾性力により固定するので、配設体全体の取り付け作業がより一層短時間で済む。
【0053】
また、本発明の配設体支持具10は、図2(c)のとおり固定部1がフランジ部Fに固定された状態で、フランジ部Fの下方にケーブルの配線空間Sが介在し、さらにその下方に支持部2が存在する。
【0054】
したがって、前述したように電気ケーブルの配線工事後に配設体Yを取り付ける通常工法の他、配設体Yを取り付け後に配線空間S内に配線工事をすることも可能であり、配線作業の自由度が高くなる。
【0055】
更に、支持部2の上部に配線空間Sが位置するので、配設体Yから電気ケーブルへの接続長さも短くて済み、また、フランジ部F下方の電気ケーブル等の配線工事後の投影平面積に、配設体Y及び配設体支持具10の投影平面積を重複させることができるので、下から見上げてもすっきりとした感じの配線工事が実現できるのである。
【実施例2】
【0056】

図3は、本発明に係る配設体支持具10Aの第2実施例の図面で、このうち図3(a)は配設体支持具10Aの左側面図、図3(b)は平面図、図3(c)は正面図、図3(d)は下面図である。これら第2実施例の図面において、第1実施例と同じ部材は同じ符号を付しており、その構成も基本的には同じであるのでここでの具体的な説明は省略する。
【0057】
第2実施例の配設体支持具10Aが第2実施例の配設体支持具10と構成上異なる点は、脚部3を有する支持部2Aが固定部1Aに対して、水平面H(図3(c)参照)内で回動可能に形成されている点にあり、その他の構成については実施例1の場合と同様である。
【0058】
本実施例2の上記構成上の相違点は、図3では分かり難いので、図4と図5を用いて説明する。
【0059】
図4(a)は、本実施例2の固定部1Aの斜視図、図4(b)は、平面図、図4(c)は左側面図、図4(d)は正面図である。すなわち、本実施例では、固定部1Aは、図4(a)に示すように、下部挟持部1a材の中心部に、平面視が略八角形をした貫通孔1fが形成されている。
【0060】
また、その内部には、互いに平行な二つの内側面1kを境に、6個の爪1mを内部から切り起こして放射状に外方に折り広げることで、6個の凸部が断続的に形成され、これら貫通孔1f、内側面1k及び爪1mが支持部2の被係合部になっている。
【0061】
次に、図5(a)は支持部2Aの正面図、図5(b)はその下面図である。
【0062】
すなわち、脚部3の上端部からは、図4で説明した固定部1Aの下部挟持部1a材の下面に当接する舌状片1jが後方に延設されている。そして、舌状片1jの両側面からは、前述した固定部1Aの被係合部1k、爪1mと係合する係合部である係止爪1gが上方に伸びており、その先端部は互いに遠ざかるように水平方向に折り曲げられている。この場合、係止爪1gの先端部間の距離は、前記固定部1の互いに平行な二つの内側面間の距離よりは若干大きくなる寸法関係に形成されている。
【0063】
そして、固定部1Aに脚部3を有する支持部2を組み付けるには、固定部1Aの下から貫通孔1fの内部に係止爪1gを差し入れる。この際、八角形をした貫通孔1fのうち互いに平行な二つの内側面1kから係止爪1gを差し入れることで、支持部2Aの係止爪1gが固定部1の被係合部である上記内側面1kと係合する。
【0064】
前述したように、係止爪1gの先端部間の距離は、固定部1の内側面間の距離よりは若干大きく形成されているので、この状態で支持部2を回動すると、支持部2の係止爪1gが固定部1の6個の爪1mに断続的に乗り上げることになり、結局、支持部2は、固定部1の貫通孔1fを中心にして、貫通孔1fの多角形状に対応して段階的に回動することができる。
【0065】
したがって、本実施例の配設体支持具10Aによれば、前述した実施例1と全く同様の作用効果が得られることに加え、配設体Yごとにその支持部2の回動角を調整することにより、配設体Yの微細な変位が可能となる。すなわち、配設体Yの中心を正確に一線上に配置することができ、下から見上げた場合、より一層すっきりとした配置が可能になる。
【0066】
以上に述べた本発明の配設体支持具及び配設体支持具の設置構造は、上記の実施例に何ら限定されず、種々の変形例、組み合わせが可能である。
【0067】
例えば、図1及び図3で説明した配設体支持具10、10Aの固定部1、1Aについては、フランジ部Fの裏面に対する食い付きをよくするために、リブ状部1aaの先端に鋭利な凹凸加工を施こしても良い。また、図5で説明した実施例2の配設体支持具10Aの固定部1Aに対する支持部2Aの回動手段については他の公知の手段に代えることもでき、これらの変形例、組み合わせも本発明の範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の配設体支持具及び配設体支持具の設置構造は、感知器や配線ボックス等の配設体を建物の天井などの構築物に取り付けることが要請される電気工事分野の他、空気や液体等の流体配管に例えば流量計、圧力計等のセンサー類を取り付ける配管工事分野にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 固定部
1a 下部挟持片
1b 上部挟持片
1f 貫通孔
2 支持部
2b 挿通孔
2c 固定孔
3 脚部
4 リブ
10、10A 配設体支持具
C コンクリート
F フランジ部
M 型鋼材
S 配線空間
Y 感知器(配設体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型鋼材のフランジ部の下方に、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための支持具であって、
前記フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とが、金属板のプレス成形により一体に形成され、
前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に沿って延設されて成ることを特徴とする配設体支持具。
【請求項2】
前記支持部は、前記固定部の一対の挟持片のうち、一方の挟持片の先端から前記配線空間を形成すべく、前記フランジ部から離れるように折り下げられた後、
前記一方の挟持片の先端方向へさらに略直角に折り曲げられ、延設されていることを特徴とする請求項1に記載の配設体支持具。
【請求項3】
型鋼材のフランジ部の下方に、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための支持具であって、
前記フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とを備え、
前記固定部と前記支持部とは、互いに係合する係合部と被係合部とにより組みつけられて成り、
前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に対して回動可能に形成されていることを特徴とする配設体支持具。
【請求項4】
前記被係合部は、多角形状の貫通孔で形成され、
前記係合部は、前記貫通孔に係止する係止爪で形成されて成り、
前記支持部は、前記固定部に対して、前記貫通孔の多角形状に対応して段階的に変位するように形成されて成ることを特徴とする請求項3に記載の配設体支持具。
【請求項5】
前記支持部には、中間部にケーブルが挿通される挿通孔が形成され、
該挿通孔を挟むように前記配設体を固定するための一対の固定孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の配設体支持具。
【請求項6】
前記一対の固定孔は、2種類以上のピッチに対応すべく複数叉は長孔に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の配設体支持具。
【請求項7】
デッキプレートを補強する型鋼材のフランジ部の下方において、感知器や配線ボックス等の、ケーブルが配線される配設体を支持するための配設体支持具の設置構造であって、
前記配設体支持具は、フランジ部を弾性的に挟持するための一対の挟持片を備えた固定部と、前記配設体を支持する支持部とが、金属板のプレス成形により一体に形成されて成り、
前記支持部は、前記固定部により前記フランジ部に固定した状態で、該フランジ部の下方との間に配線空間を形成する位置で該フランジ部の表面に沿って延設されているとともに、先端部が前記フランジ部の外縁から突出しない長さに形成されていることを特徴とする配設体支持具の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−120420(P2011−120420A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277569(P2009−277569)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】