説明

配車システム

【課題】市街地などにおいても精度のよい予想到達時刻の通知が可能な配車システムを提供すること。
【解決手段】無線基地局120による基地ゾーンの中で移動する車両(移動局)110〜112の位置を当該車両に装備したカーナビ装置により計測し、計測した車両の位置を無線基地局120に接続されている管理センター140がポーリングにより取り込み、車両110〜112の位置を管理センター140が把握し、車両110〜112に配車を指示する配車システムにおいて、車両110〜112がカーナビ装置により計測した自車両の位置から管理センター140により指示された目的地までの走行に要する時間を算出する走行時間を算出し、現在時刻から目的地に自車両が到達する時刻を計算して予想到達時刻を管理センター140に無線伝送し、管理センター140は、乗客から配車要請されたとき、当該配車要請に対する応答に際して車両110〜112から無線伝送された予想到達時刻が乗客に通知できるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運行を管理する配車システムに係り、特に、乗客からの依頼に応じて当該乗客が待機している場所に空き車両を誘導する配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タクシーの運用形態には、周知のように、車両を走行させながら路上で乗客の合図を待ち、その場で乗車させるという、いわゆる“流し”の場合と、例えば電話などによる乗客からのタクシー配車要請に応じて管理センターから指示された場所に赴き、乗客を乗車させるという、いわゆる“タクシー呼び”の場合があるが、ここで、後者のタクシー呼びの場合、管理センターでは、管理下にある複数台のタクシー車両の中で、そのとき空き状態にあり、しかも乗客の待機場所に一番近い位置にいる車両を選択し、当該車両に指示を与え、配車するのが、タクシー運用効率の見地から望ましい。
【0003】
そこで、従来から、タクシーの各車両に測位システム(GPS)、いわゆるカーナビ装置を装備し、管理センターでは、管理下にある車両に適宜、ポーリング(定期的な呼び掛け)を行ない、管理下にある車両の位置が常時把握できるようにしておき、乗客の待機場所に一番近い位置にいる車両が何れであるか直ちに判別できるようにしたAVM配車システムが開示されている(例えば特許文献1参照)。ここで、AVMとは「Automatic Vehicle Monitoring」の略称である。
【0004】
図3は、このような配車システムの一例で、図において、110、111、112は移動局を表わし、この場合、カーナビ装置を装備したタクシーの車両を表わす。そして、これらの移動局110〜112が、管理センターによる管理のもとで、無線基地局120によるサービスエリアである基地ゾーン130内でタクシー運用されるようになっている。
このとき、無線基地局120は、図示のように、専用回線などにより管理センター140に接続されている。
【0005】
従って、管理センター140は、上記したように、管理下にある車両、つまり移動局110〜112に適宜、ポーリングを行なうことにより移動局110〜112の位置が常時把握でき、この結果、乗客の待機場所に一番近い位置にいる移動局110〜112が何れであるかが直ちに判別できることになる(例えば特許文献2参照)。
そして、この結果、乗客からタクシーの配車要請があったとき、当該乗客の待機場所に一番近い位置にいる車両を選択し、当該車両に指示を与え、配車することができる。
【0006】
しかも、この場合、管理センター140では、乗客の待機場所である目的地の位置と車両の位置から地図上でルート検索を行なうことにより、予想到着時刻、つまり車両が目的地に到着する時刻の算出が可能になる。
そこで、この場合、車両が到着する時刻を予め乗客に通知することができ、この結果、乗客は、待ち時間がどの程度になるのか知ることができ、サービスの向上に寄与できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−80215号公報
【特許文献2】特開2005−318044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両が到着する時刻を予め乗客に通知した場合、このときに乗客に知らされた到着時刻が不正確であり、しかも遅れた場合、乗客が予期していた時刻になっても車両が到着しないので乗客の期待感を大きく損なうことになり、サービス向上どころか、かえってサービスの低下を招いてしまう。
一方、到着時刻が早かった場合、乗客の不満は少ないにしろ、乗客が信頼感を抱くとは必ずしも言えず、従って、乗客に通知する到着時刻は正確であることにこしたことはない。
しかし、従来技術においては、予想到達時刻の精度向上に配慮がされているとはいい難く、このためサービスの向上に問題があった。
従来技術においては、車両の位置情報から管理センターが地図上でルート検索し、検索されたルートから予想到達時刻を算出するが、この場合、検索されるルートは必ずしも1経路に限らない。特に市街地の場合、2以上の経路になる場合が多く、この場合、経路の長さがルート選択の基準になり、最短距離の経路を選ぶしかない。
【0009】
しかし、予想到達時刻は単に走行距離で決まる訳ではなく、例えば天候や道路状況、車両通行状況などによって異なってしまう。特に市街地では、車両通行状況が大きく影響し、混雑時では予想が困難になる。
しかるに、従来技術では、これらの要因による影響に配慮がされていないので、予想到達時刻の精度向上が困難になり、サービスの向上に問題が生じてしまうのである。
【0010】
本発明の目的は、市街地などにおいても精度のよい予想到達時刻の通知が可能な配車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、無線基地局による基地ゾーンの中で移動する車両の位置を当該車両に装備したカーナビ装置により計測し、計測した車両の位置を前記無線基地局に接続されている管理センターがポーリングにより取り込み、前記車両の位置を前記管理センターにより把握し、前記管理センターから前記車両に配車が指示される方式の配車システムにおいて、前記車両が、前記カーナビ装置により計測した自車両の位置から前記管理センターにより指示された目的地までの走行に要する時間を算出する走行時間算出手段と、前記走行時間算出手段により算出された走行時間と現在時刻から前記目的地に自車両が到達する時刻を計算して予想到達時刻とし、該予想到達時刻を前記管理センターに無線伝送する無線通信手段を備え、前記管理センターは、乗客から配車要請されたとき、当該配車要請に対する応答に際して前記車両から無線伝送された予想到達時刻が乗客に通知されるようにして達成される。
【0012】
上記手段によれば、予想到達時刻の算出が移動局である車両側で行なわれることになり、このとき、車両側では、道路の特定の地点において光ビーコンや電波ビーコン更にはFM放送などにより提供されている走行中の道路に関する各種の情報、例えば渋滞情報や自車両位置近傍の道路について直近の時点での詳細な情報など、車両側でなければ得ることができない各種の情報を得ることができるので、予想到達時刻の算出を精度よく行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、精度が高い予想到達時刻を乗客に通知できるので、乗客の期待感に充分に応えることができ、サービス向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る配車システムの実施の形態における移動局の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る配車システムの一実施の形態における管理センターの一例を示すブロック図である。
【図3】本発明が適用された配車システムの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による配車システムについて、図示の実施形態により詳細に説明する。
まず、図1は、この実施形態における移動局110の詳細で、この場合、この移動局110は、他の移動局111、112を代表したものであり、図示の通り、車載無線機150と操作表示器151及びカーナビ装置152を備えている。
次に、図2は、この実施形態における管理センター140の詳細で、図示の通り、AVMサーバ153とAVM配車端末154を備えている。
【0016】
ここで、この実施形態においても、配車システム全体は図3に示した従来技術の場合と同じであり、従って、ここでも、管理センター140は、上記したように、管理下にある車両、つまり移動局110〜112の位置を常時把握した上で、乗客から依頼があったとき、乗客の待機場所に一番近い位置にいる移動局110〜112を判別して配車を行ない、予想到着時刻を算出して乗客に知らせるようになっており、その他、タクシー配車用AVMシステムとしての動作は、上記した特許文献1に記載の従来技術の場合と同じである。
【0017】
従って、図1の移動局110の車載無線機150と操作表示器151及びカーナビ装置152と、図2の管理センターのAVMサーバ153とAVM配車端末154も、タクシー配車用AVMシステムとして必要な基本的動作は、この実施形態においても、上記の特許文献1に記載の従来技術の場合と同じで、まず、カーナビ装置152は、内蔵のGPSにより逐次、自車位置を検出し、検出したデータにより自車両位置データを更新しており、従って、ここでは常に最新の自車両位置データが用意されていることになる。
【0018】
そして、これが管理センター140からのポーリングに応じて順次、管理センター側に通知されることになり、この結果、管理センター140では、管理下にある車両について常に最新の位置情報が把握されていることになり、従って、乗客からタクシーの配車要請があったとき、当該乗客の待機場所に一番近い位置にいる空き状態の車両を選択することができ、当該車両に指示を与えることにより適切な配車が可能になる。
このとき、管理センター140からのポーリングに応じて車両側から通知される情報は、動態情報と呼ばれるもので、車両の空車/実車情報、車速情報、車両の異常情報などからなり、これに上記した自車両位置データが含まれることになる。
【0019】
しかし、この実施形態の場合、これだけではなく、カーナビ装置152は、内蔵されているCPUに格納したソフトにより、管理センター140から自車に配車が指示され、目的地が通知されたとき、最新の自車位置から目的地までのルートを独自に検索するようになっている。
そして、複数のルートが検索された場合、カーナビ装置152は、それらの中で、走行時間が最も短くて済むルートを選択し、このときの走行時間から目的地に到達する時刻を予想到着時刻として算出する。
【0020】
このとき、図示されていないが、移動局110には、光ビーコン受信装置と電波ビーコン受信装置、更にはFM放送受信装置などの核種情報取得手段が備えられており、これらにより提供されている走行中の道路に関する各種の情報、例えば渋滞情報や自車両位置近傍の道路について直近の時点での詳細な情報などを取り込むことができるようにしてある。
そして、カーナビ装置152は、検索された複数のルートの中から走行時間が最も短くて済むルートを選択する際、上記した走行中の道路に関する各種の情報に基づいてルートの選択を行なうようになっている。
【0021】
市街地の道路など、他の車両が走行中の道路の場合、渋滞状況や道路状況、天候状況などの要因により、最短距離のルートが必ずしも最短の走行時間で済むルートにはならない。
従って、与えられた複数のルート毎に、当該ルートの道路データに渋滞状況や道路状況、天候状況などの要因を考慮した上でなければ、何れのルートが最短の走行時間で済むルートであるかを決定することはできない。
このとき、与えられた複数のルート毎に、当該ルートの道路データに渋滞状況や道路状況、天候状況などの要因を考慮すれば、例えば、距離は短いが渋滞が著しいルートと、距離は長いが渋滞が少ないルートがあった場合、条件によっては後者を選択するという処理が可能になり、結果として最短の走行時間で済むルートが選択され、乗客の待ち時間を少なくすることができる。
【0022】
しかも、このときの渋滞状況や道路状況、天候状況などの要因が車両の走行時間にどのように影響するかは、例えばシミュレーションなどにより予め各ルート毎に推定しておくことができ、従って、この結果をソフト化し、ルート選択用ソフトとして用意しておくことができる。
そこで、カーナビ装置152のCPUに上記したルート選択用ソフトを格納することにより、カーナビ装置152は、検索した複数のルートの中から走行時間が最も短くて済むルートが選択できることになる。
このルート選択のための処理は、上記したように、管理センター140から自車に配車が指示され、目的地が通知されたとき実行され、移動局110において独自に選択されたルートの走行時間を算出し、この走行時間から目的地に到達する時刻を算出し、予想到着時刻とする。
【0023】
そして、移動局110のオペレータ(タクシーの場合、運転手)が操作表示器151の“了解”を表わす押しボタンを押下したとき、予想到着時刻が車載無線機150に入力され、無線基地局120を介して管理センター140のAVMサーバ153に伝送され、ここで、管理センター140のオペレータに予想到着時刻が認知されるようにする。
そこで、管理センター140のオペレータは、このときタクシー配車要請した乗客に、当該配車要請に係る配車が完了し、車両が乗客の待機場所に向かっている旨、連絡したとき、予想到着時刻を乗客に告げることができる。
【0024】
このときの予想到着時刻は、移動局110において独自に算出された情報であり、この場合、予想到達時刻の算出が移動局側で行なわれることになり、このとき、移動局110では、上記したように、道路の特定の地点において光ビーコンや電波ビーコン更にはFM放送などにより提供されている走行中の道路に関する各種の情報、例えば渋滞情報や自車両位置近傍の道路について直近の時点での詳細な情報など、車両側でなければ得ることができない各種の情報に基づいたものであるから、これらの情報無しの場合に比較して高精度の予想到達時刻が算出できることになる。
【0025】
従って、この実施形態によれば、従来技術に比較して充分に精度が高い予想到達時刻を乗客に通知できるので、乗客の期待感に充分に応え、乗客に信頼感を抱いて貰えるようになり、この結果、タクシー配車のサービス向上に大いに寄与することができる。
なお、以上の実施形態は、本発明をタクシーの配車システムとして具現した場合の一例であるが、本発明の適用対象はタクシーの配車に限定されるものではなく、例えば宅配車両を対象とした配車システムとしても実施可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
110、111、112 移動局(車両)
120 無線基地局
130 基地ゾーン
140 管理センター
150 車載無線機
151 操作表示器
152 カーナビ装置
153 AVMサーバ
154 AVM配車端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局による基地ゾーンの中で移動する車両の位置を当該車両に装備したカーナビ装置により計測し、計測した車両の位置を前記無線基地局に接続されている管理センターがポーリングにより取り込み、前記車両の位置を前記管理センターにより把握し、前記管理センターから前記車両に配車が指示される方式の配車システムにおいて、
前記車両が、
前記カーナビ装置により計測した自車両の位置から前記管理センターにより指示された目的地までの走行に要する時間を算出する走行時間算出手段と、前記走行時間算出手段により算出された走行時間と現在時刻から前記目的地に自車両が到達する時刻を計算して予想到達時刻とし、該予想到達時刻を前記管理センターに無線伝送する無線通信手段を備え、
前記管理センターは、乗客から配車要請されたとき、当該配車要請に対する応答に際して前記車両から無線伝送された予想到達時刻が乗客に通知されるように構成されていることを特徴とする配車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−286908(P2010−286908A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138486(P2009−138486)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】