説明

配車処理システム

【課題】各移動局から送信される配車了解信号と位置情報の衝突を回避し、衝突による信号の欠落を防止してタクシーの配車処理を円滑に行うことができる配車処理システムを提供する。
【解決手段】基地局21により移動局11〜14の位置情報を収集すると共に配車情報を移動局11〜14に送信して配車処理する配車処理システムにおいて、基地局21から配車シーケンスの実施中か否かを示す配車シーケンス状態を移動局11〜14に通知し、該移動局11〜14は基地局21から通知された配車シーケンス状態が配車シーケンス中である場合には基地局21への送信スロットのスロット割り当てを配車了解信号送信用と位置情報送信用とに分割して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば業務用無線によるタクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システム等のデジタル無線による配車処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル無線による配車処理システムでは、基地局と移動局(タクシー車両)との間の無線通信にデジタルSCPC(Single Channel Per Carrier)無線システム(狭帯域デジタル通信方式標準規格ARIB STD−T61に準拠し、周波数分割により構成されたチャンネルにより通信を行うシステム)が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記デジタル無線による配車処理システムでは、図8に示すように基地局1から移動局(タクシー車両)2a、2bに対して配車情報3a、3bを送信し、配車情報を受信した移動局2a、2bが基地局1に対して配車了解信号4a、4bを返信することにより、一連の配車処理を完結させている。なお、図8及び後述する図9では、移動局2つである場合を例にしているが、実際は、より多くの移動局が存在する。
【0004】
また、上記デジタル無線による配車処理システムでは、配車対象となる移動局2a、2bを適切に選択するために、図9に示すように基地局1により各移動局2a、2bの位置情報を5a、5bを定期的に収集している。この場合、各移動局2a、2bは、現在位置をGPS(Global Positioning System:人工衛星を利用した測位システム)により常に検出して記憶し、定期的に基地局1に送信する。
【0005】
また、本発明に関連する公知技術として、自車両の車両番号を伝送する複数の移動局と、各移動局から送られてくる情報を受信して処理する管理センタからなる配車処理システムにおいて、同一配車内容の文字データを複数の移動局へ送信する場合に、一括して送信処理できるようにし、かつ移動局からの了解返送信号の同期を取り、衝突による欠落が無く受信できるようにし、同一配車内容の複数注文に対する配車処理を短時間で出来るようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−228165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように従来の配車処理システムでは、各移動局2a、2bは基地局1から送られてくる配車情報3a、3bに対して配車了解信号4a、4bを返信すると共に、自身で検出した位置情報5a、5bを定期的に基地局1に送信している。このため各移動局2a、2bから基地局1に対して送信される配車了解信号4a、4bと位置情報5a、5bの送信タイミングが一致し、送信データが衝突して基地局1へ送られない場合がある。基地局1は、各移動局2a、2bから送信される配車了解信号4a、4bと位置情報5a、5bが衝突すると受信することができず、タクシーの配車処理を正確に行うことが不可能になる。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、各移動局から送信される配車了解信号と位置情報の衝突を回避でき、衝突による信号の欠落を防止してタクシーの配車処理を円滑に行うことができる配車処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両番号と位置情報を無線装置にて伝送する移動局と、前記移動局からの位置情報を収集すると共に配車情報を前記移動局に送信して配車処理する基地局とにより構成される配車処理システムであって、前記基地局から配車シーケンスの実施中か否かを示す配車シーケンス状態を前記移動局に通知し、該移動局は前記基地局から通知された配車シーケンス状態が配車シーケンス中である場合には前記基地局への送信スロットのスロット割り当てを配車了解信号送信用と位置情報送信用とに分割して設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基地局から移動局へ通知された配車シーケンス状態が配車シーケンス中である場合、移動局における送信スロットのスロット割り当てを配車了解信号送信用と位置情報送信用とに分割して設定することにより、位置情報の送信を抑制して配車了解信号と位置情報の衝突を回避でき、衝突による信号の欠落を防止してタクシーの配車処理を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る配車処理システムの構成例を示す図である。
【図2】同実施例1における移動局の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施例1において、各移動局から送信される配車了解信号と位置情報との衝突回避動作を説明するための図である。
【図4】同実施例1に係る配車処理システムにおいて、各移動局から送信される配車了解信号と位置情報のスロット割り当てを示す図である。
【図5】同実施例1に係る配車処理システムの動作を説明するための図である。
【図6】同実施例1に係る配車処理システムにおいて、配車シーケンス中における移動局の送信スロットのスロット割り当て及び配車シーケンスを実施していない場合における移動局の送信スロットのスロット割り当てを説明するための図である。
【図7】同実施例1に係る配車処理システムにおいて、基地局から各移動局に送信するデジタルデータ中に配車シーケンス状態を特定する情報を格納する場合の例を示す図である。
【図8】従来のデジタル無線による配車処理システムにおいて、基地局が複数の移動局に対して配車を行う場合の配車シーケンスの概略を示す図である。
【図9】従来のデジタル無線による配車処理システムにおいて、基地局が各移動局の位置情報を収集する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係る配車処理システムの全体の構成例を示したもので、GPSを利用したタクシー配車用AVMシステムに実施した場合の例を示している。
図1において、11、12、13、14は車両(タクシー)に搭載される移動局で、通常運用(業務)中であり、管理センタ20から基地局21を経由して送られてくる指示を受けて業務を遂行している状態を示している。
【0014】
上記移動局11、12、13、14は、GPS衛星26からの電波を受信し、現在位置情報を取得する。
また、21、22、23は配車処理システムの基地局である。一般的に基地局21、22、23は、電波を利用して移動局11、12、13、14と双方向の通信を行ったり、有限資源である電波の管理などを行う機能を備えている。この場合、電波の届く範囲は限定されるため、例えば基地局21においては電波が届く基地局カバーエリア25内で移動局11、12、13、14との通信が可能である。
【0015】
基地局21は、各移動局11、12、13、14に対してポーリング方式によりデータを収集する。すなわち、基地局21は、各移動局11、12、13、14にポーリング信号P1の送信を行い、基地局カバーエリア25内の各移動局11、12、13、14からのポーリング信号P11、P12、P13、P14の返信により、各移動局11、12、13、14の位置情報、車両の現在の状況を示す例えば「実車」、「空車」、「迎車」、「降車」等の動態情報を管理センタ20から指定された移動局車両番号によりデータを収集する。この場合、各移動局11、12、13、14は、位置情報及び動態情報を基地局21からの定期的なポーリング信号を基点とし、車両番号毎に割り当てられた専用の送信スロットで返送する。
【0016】
そして、基地局21は、上記移動局11、12、13、14との間のポーリングにより収集した各移動局の位置情報、動態情報を移動局車両番号と共に管理センタ20へ送信する。
上記ポーリング方式によるデータ収集のための基地局21と移動局11、12、13、14間の業務用無線通信方式としては、例えばデジタルSCPC(Single Channel Per Carrier)無線システム(狭帯域デジタル通信方式標準規格ARIB STD−T61に準拠し、周波数分割により構成されたチャンネルにより通信を行うシステム)が使用される。
【0017】
管理センタ20は、基地局21、22、23に対して専用回線27などで接続されており、タクシー顧客からの要求に従い、AVMシステムにより例えば基地局21を介して収集する移動局11、12、13、14の位置情報及び動態情報から最適車両検索を行ってタクシー車両の配車を行う。
【0018】
図2は、タクシー配車用AVMシステムにおける上記移動局11、12、13、14の構成例を示したものである。なお、各移動局11、12、13、14の構成は同じであるので、移動局11について説明する。
図2において、31はAVMシステムによる操作表示器で、この操作表示器31には、デジタル無線機32、カーナビ(カーナビゲーション)装置34、料金メータ36等が接続される。
【0019】
上記操作表示器31は、表示部311及び操作部312を備えると共に、CPU等の情報処理部313を備えている。上記表示部311は、待機場所や行先、顧客情報、乗務員への操作指示等を表示する。操作部312は、10キー等の入力キーの他、例えば「応答」、「了解」等のファンクションキーを備えている。情報処理部313は、移動局全体の制御処理を行うと共に、受信したメッセージの表示制御等を行う。
【0020】
上記デジタル無線機32は、無線通信用のアンテナ33を備え、業務用無線例えばデジタルSCPC方式の無線システムを使用して基地局21と無線通信を行う。
上記カーナビ装置34は、図示しないがGPS受信部及びGPS地図表示部を備え、GPS衛星26(図1参照)からの電波をGPSアンテナ35により受信し、現在位置情報を取得する。この現在位置情報は、操作表示器31の情報処理部313へ送られる。上記料金メータ36は、利用料金を表示する料金表示部361を備えている。
【0021】
上記操作表示器31の情報処理部313は、移動局の位置情報や動態情報を収集し、図1に示した基地局21からの定期的なポーリング信号に従ってそれぞれの車両番号と共に位置情報、動態情報をデジタル無線機32から基地局21へ送信する。
上記の構成において、移動局11〜14は、基地局21から送られてくる配車情報に対して配車了解信号を専用のスロットで返送すると共に、基地局21からのポーリング信号に従ってそれぞれの車両番号と共に位置情報や動態情報を送信する。
【0022】
図3は、移動局12が基地局21に対して位置情報Cの送信を準備している際に基地局21から配車情報Aが送信された場合において、移動局11から上記配車情報Aに対する配車了解信号Bが返送され、移動局12から位置情報Cが送信された状態を示している。なお、図3では図の簡略化のため、移動局11、12のみが基地局21と通信する場合を示している。この場合、移動局11は位置情報Cの送信を抑制し、移動局12から送信される配車了解信号Bと衝突しないようにする。
【0023】
上記のように配車了解信号Bの送信を優先し、位置情報Cの送信を抑制する手段としては、配車了解信号送信タイミングと位置情報送信タイミングに対する専用スロットの割り当てを例えば図4に示すように設定する。すなわち、各専用スロットにおいて、例えば7つの配車了解信号送信タイミングを優先して設定し、この配車了解信号送信タイミングの後に例えば3つの位置情報送信タイミングを設定する。これにより移動局11〜14から送信される配車了解信号Bと位置情報Cの衝突を回避することができる。
【0024】
上記のように移動局11〜14のデータを送信する専用スロットにおいて、配車了解信号送信タイミングを位置情報送信タイミングより優先して設定することにより、配車了解信号Bと位置情報Cの衝突を回避することができるが、図5に示すように配車シーケンスを実施していない場合においても、位置情報の送信タイミングは配車シーケンス中と同じであり、配車了解信号の送信タイミングでは位置情報を送信することができず、位置情報の送信が遅れることになる。
【0025】
このため他の実施例として、図6に示すように配車シーケンス中であれば配車了解信号送信タイミングを位置情報送信タイミングより優先して設定し、配車シーケンスを実施していない場合には、各移動局11〜14にて専用スロットの割り当てを変更し、専用スロットの全てを位置情報送信タイミングに設定して、位置情報を専用スロット内の任意のタイミングで送信できるようにする。
【0026】
上記のように専用スロットの割り当てを可変にするために、基地局21から各移動局11〜14に対して「配車シーケンス状態」を通知する。各移動局11〜14は、基地局21から通知される「配車シーケンス状態」によって、現在の状態が配車シーケンス中であるかどうかを判断し、専用スロットの割り当てを変更する。すなわち、配車シーケンス中であれば、配車了解信号送信タイミングを位置情報送信タイミングより優先して専用スロットの割り当てを行い、配車シーケンス中でなければ専用スロットの全てを位置情報送信タイミングに設定して位置情報の送信効率を向上する。
【0027】
上記基地局21から移動局11〜14への「配車シーケンス状態」の通知は、例えば基地局21から送信するデータ中に「配車シーケンス状態」を特定できる情報を格納することによって行う。すなわち、SCPC方式デジタル無線システムは、音声信号/非音声信号ともデジタルデータで送受信が行われるので、デジタルデータの内部に「配車シーケンス状態」を特定できる情報を格納し、移動局11〜14が受信した信号から「配車シーケンス状態」を特定できるようにする。
【0028】
上記「配車シーケンス状態」を特定できる情報の格納は、例えば情報チャンネルにおける信号フォーマットのRICHを使用する。このRICHは、無線回線を維持するための情報を伝送する無線情報チャンネルである。
図7は、本実施例で使用するRICHの内容を詳細に説明する図である。図7において、Fは無線チャンネル構造識別領域、Mは通信モード識別領域、Dは動作モード識別領域である。また、41、42は利用者が自由に利用できる未定義領域である。なお、これらの領域については、ARIB STD−T61で定められているように、17ビットで構成され、これがCRC(Cyclic Redundancy Cheek)符号化、固定ビット挿入、畳込み符号化、インターリーブされ、56ビットの無線情報チャンネルRICHとなる。
【0029】
従って、これらの未定義領域41または42に「配車シーケンス状態」を特定できる情報を格納する。本実施例では、配車シーケンス中である場合に例えば未定義領域42に「配車シーケンス番号」を格納し、配車シーケンスを実施していない場合には未定義領域42に“00”の情報を挿入する。
【0030】
移動局11〜14は、基地局21から送られてくる情報を受信すると、情報処理部313にて受信情報中に「配車シーケンス番号」が格納されているか否かを判断し、その判断結果に従って配車了解信号送信タイミング及び位置情報送信タイミングの専用スロットの割り当てを変更する。すなわち、移動局11〜14は、受信情報中に「配車シーケンス番号」が格納されていれば、配車シーケンス中であると判断し、図6に示したように配車了解信号送信タイミングを位置情報送信タイミングより優先して設定し、配車了解信号Bと位置情報Cとの衝突を回避する。なお、配車了解信号Bの各移動局11〜14の送信タイミング(使用する送信スロット)は、車両番号毎に割り当てられていてもよいし、基地局21が指定してもよく、各移動局11〜14間で配車了解信号Bが衝突しないように構成されていることが好ましい。また、移動局11〜14は、受信情報中に「配車シーケンス番号」が格納されていなければ、配車シーケンスが実施されていないものと判断し、専用スロットの全てを位置情報送信タイミングに設定し、専用スロット内の任意のタイミングで位置情報を送信できるようにする。すなわち、配車シーケンスが実施されていない場合には、他の移動局から配車了解信号Bが送信されないので、配車了解信号Bと位置情報Cが衝突するおそれはなく、位置情報Cを任意のタイミングで送信することが可能になる。
【0031】
上記実施例で示したように基地局21から各移動局11〜14に対して配車シーケンスの実施中か否かを示す「配車シーケンス状態」を通知し、各移動局11〜14は、基地局21から通知された「配車シーケンス状態」によって、現在の状態が配車シーケンス中であるかどうかを判断し、配車シーケンス中である場合には前記基地局21への送信スロットのスロット割り当てを配車了解信号送信用と位置情報送信用とに分割して設定し、配車了解信号の送信を優先することにより、配車了解信号と位置情報の衝突を回避し、衝突による信号の欠落を防止してタクシーの配車処理を円滑に行うことができる。
【0032】
また、各移動局11〜14は、上記基地局21から通知された「配車シーケンス状態」が配車シーケンス中でなければ送信スロットの全てを位置情報送信タイミングに設定することにより、位置情報の送信を待たせることなく効率的に基地局21へ送信することができる。従って、基地局21と移動局11〜14との間の無線区間を効率的に利用でき、配車了解信号が基地局21に到達する確率を低下させることなく、基地局21による移動局11〜14の位置情報収集精度を向上することができる。この結果、基地局21は、無線区間の有効利用を図ることができ、移動局11〜14からより多くの位置情報を収集できるようになる。
【0033】
なお、上記実施例1では、基地局21により移動局11〜14の位置情報を収集する場合について説明したが、実際には位置情報だけでなく、車両の現在の状況を示す「実車」、「空車」、「迎車」、「降車」等の動態情報の収集も同時に行われる。従って、上記実施例を適用することにより、配車了解信号と位置情報及び動態情報(位置動態情報)との衝突を回避でき、衝突による信号の欠落を防止してタクシーの配車処理を円滑に行うことができる共に、基地局21による移動局11〜14の位置情報及び動態情報の収集精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0034】
11〜14…移動局、20…管理センタ、21、22…基地局、25…基地局カバーエリア、26…GPS衛星、27…専用回線、31…操作表示器、311…操作表示器の表示部、312…操作表示器の操作部、313…操作表示器の情報処理部、32…デジタル無線機、33…アンテナ、34…カーナビ装置、35…GPSアンテナ、36…料金メータ、41、42…RICHの未定義領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両番号と位置情報を無線装置にて伝送する移動局と、前記移動局からの位置情報を収集すると共に配車情報を前記移動局に送信して配車処理する基地局とにより構成される配車処理システムであって、
前記基地局から配車シーケンスの実施中か否かを示す配車シーケンス状態を前記移動局に通知し、該移動局は前記基地局から通知された配車シーケンス状態が配車シーケンス中である場合には前記基地局への送信スロットのスロット割り当てを配車了解信号送信用と位置情報送信用とに分割して設定することを特徴とする配車処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59945(P2011−59945A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208328(P2009−208328)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】