説明

酒さまたは赤面に関連する皮膚疾患を治療するための、ベルベリンまたはその類似体を含有する組成物

本発明は、ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体(パルマチンおよびコプチシンのようなもの)を含む、酒さおよび他の赤面に関連する皮膚疾患を治療するための局所用薬剤配合物を開示する。本発明の局所用薬剤配合物は、主要な活性薬剤成分としての精製されたベルベリンを0.1%より高い濃度で含む。本発明は、酒さおよび他の赤面に関連する皮膚疾患(ステロイドに誘起される酒さ様の皮膚炎のようなもの)を治療する方法を開示し、その方法は、ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体(パルマチンのようなもの)を含有する局所用薬剤配合物の投与を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.酒さおよびその主要症状
酒さは、主として顔面、特に顔の中心区域における赤みおよび腫脹が現れる慢性皮膚疾患である。冒される他の区域は、頭皮、首、耳、胸、背中および眼を含む。酒さは、顔の紅潮、紅斑、毛細血管拡張症、ならびに、丘疹および膿疱を伴う炎症の出現によって特徴づけられ、さらに深刻な場合には鼻瘤によって特徴づけられる。面ぽうは、明白には存在しない(非特許文献1参照)。
【0002】
酒さの患者は、多くの場合、顔の皮膚の鋭敏度の増大、乾燥した鱗状の顔面皮膚炎、顔の浮腫、および持続性肉芽腫性丘疹結節(persistent granulomatous papulonodules)を有する(非特許文献2参照)。臨床的特徴および組織病理学的特徴により、この疾患は、4種のサブタイプに分類される。4種のサブタイプは、(a)紅斑性毛細血管拡張(erythematotelangiectactic)、(b)丘疹膿疱性、(c)腫瘤性(phymatous)、および(d)眼球性であり、それぞれのサブタイプは3グレードの重症度(軽度、中間および重症)を有する(非特許文献3参照)。この疾患の推移は、典型的には慢性であり、寛解および再発の繰り返しを伴う。
【0003】
2.他の赤面に関連する皮膚疾患
酒さは、最も一般的な赤面皮膚疾患である。症状の類似性およびおそらくは病理学的要因を共有する、他の赤面に関連する皮膚疾患は、尋常性ざ瘡、脂漏性皮膚炎、光線皮膚炎および接触皮膚炎を含む。これらの赤面に関連する症状は、熱および鋭敏度の知覚から、強烈な鋭敏度を伴う紅潮または灼熱までの範囲で変化する可能性がある(非特許文献4参照)。酒さおよび他の赤面に関連する皮膚疾患を有する患者は、しばしば、環境要因および局所的要因に対する極度の鋭敏度を示す(非特許文献5参照)。ステロイドに誘起される酒さ様の皮膚炎(またはステロイド酒さ)は、毛細血管拡張症を伴うかまたは伴わず、紅斑および浮腫の基礎を伴う丘疹性および膿疱性障害であり、顔に対する局所ステロイド剤の長期にわたる適用により、または局所ステロイド剤の投薬中止後の反跳症状として起こる(非特許文献6および7参照)。セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブのようなEGFR阻害剤は、顔または他の被覆域においてざ瘡様皮膚炎を起こし、それは、30〜90%の患者において丘疹性膿疱反応、紅斑、毛細血管拡張症、および紅潮を含み、かつ黄色ブドウ球菌のような細菌によって重複感染される恐れがある(非特許文献8および9参照)。
【0004】
3.酒さの発生病理
酒さの病因は、詳細には判明していない。種々の要因が、酒さの発生および発現に寄与することが示唆されてきている。しかしながら、それらのいずれも、明確には確認されていない(非特許文献1参照)。
【0005】
3.1 遺伝子の寄与
以前の研究では、顔の酒さの最初の発現である紅潮に対する遺伝子の寄与が示された(非特許文献10参照)。加えて、グルタチオンS−トランスフェラーゼMU−1(GSTM1)およびグルタチオンS−トランスフェラーゼθ1(GSTT1)のナル遺伝子型が、酒さの危険の増大に関連することが報告された(非特許文献11参照)。
【0006】
3.2 炎症および先天免疫系
酒さが進行するにつれて、炎症性障害が顕著になってくる。尋常性ざ瘡とは異なり、炎症性酒さは、毛脂腺系の細菌性疾患ではない。面ぽうは通常存在せず、酒さの患者から採取された皮膚試料中には、通常の細菌叢のみが確認される(非特許文献12参照)。酒さの炎症段階は、慢性無菌性蜂窩織炎の形式であるとみなされる可能性がある(非特許文献13参照)。酒さの潜在的寄与要因として微生物の存在が試験されているが、その結果は決定的なものではなかった(非特許文献1参照)。ダニに対する炎症反応は症状をさらに悪化させるが、ニキビダニ(Demnodex folliculorum)は、片利共生であるとみなされ、酒さにおける重要な病原的役割を果たすものではない(非特許文献14参照)。
【0007】
Yamasakiらは、酒さの患者由来の皮膚障害中の組織病理学的染色によって、異常に高いレベルのカテリシジン類を見いだした。カテリシジンペプチドで刺激されたヒト表皮ケラチノサイトは、IL−8の放出を増大させることが見いだされた。マウスの皮膚に対するカテリシジンペプチドの注射は、ヒトの酒さの皮膚疾患の特徴である、好中球浸潤および微小欠陥を伴う炎症性の変化を起こした(非特許文献15参照)。おそらく、カテリシジンは、免疫において2つの役割を有する。なぜなら、それは、微生物を殺すこともできるし、IL−8放出のようなホストの炎症性応答を刺激することもできるからである(非特許文献16参照)。酒さにおいて増大することが見いだされた他の炎症性サイトカインは、IL−1αおよびトランスフォーミング成長因子β−2を含む(非特許文献17および18参照)。
【0008】
3.3 脈管メディエーター
炎症性メディエーターは、酒さの患者に見いだされる血管拡張の原因である可能性がある。たとえば、サブスタンスP、ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニンまたはプロスタグランジン類が示唆されてきた(非特許文献19参照)。Smithらは、酒さにおいて、脈管内皮細胞成長因子およびその受容体の発現が増大することを報告した(非特許文献20参照)。
【0009】
4.酒さの現状の処理
酒さの治療において、テトラサイクリンおよびドキシサイクリンのような多数の抗生物質が用いられてきている。そのような抗生物質は、抗微生物効果よりも抗炎症効果を奏することが示唆されてきている。しかしながら、酒さの治療において、他の抗炎症剤は有効ではない。コルチコステロイドのような免疫抑制剤は、しばしば酒さの炎症性症状を悪化させる。
【0010】
酒さの最前線の治療として、局所用メトロニダゾールおよびある種の全身性抗生物質がしばしば用いられる。経口のテトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンは、酒さを治療するために一般的に用いられる。経口抗生物質の有効性は、おそらく、抗生物効果よりもむしろ抗炎症効果による(非特許文献21参照)。アゼライン酸15%ゲルは、軽度から中程度の酒さの局所治療に関して、2002年にアメリカ合衆国の食品医薬品局(FDA)に認可された(非特許文献22参照)。「適応外」の方法において用いられてきた他の伝統的な局所薬は、クリンダマイシン、スルファセタミドおよび硫黄を含むが、それらの機構は明確には判明していない。
【0011】
5.非皮膚疾患におけるベルベリンの使用
ベルベリン(ナチュラル・イエロー18、5,6−ジヒドロ−9,10−ジメトキシベンゾ[g]−1,3−ベンゾジオキソロ[5,6−a]キノリジニウム)は、オウレン(coptidis rhizome)、オウバク、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)、Mahonia aquifolium、およびヘビノボラズのようなハーブ植物中に存在するイソキノリンアルカロイドである(非特許文献23参照)。ベルベリンおよびその誘導体は、抗菌活性および抗マラリア活性を有することが見いだされている。ベルベリンは、真菌、酵母菌、寄生虫、細菌およびウィルスのような種々の病原体に対して作用することができる(非特許文献24参照)。ベルベリンは、他の潜在的利点を有することが見いだされている。たとえば、ベルベリンは、高血中コレステロール、心血管疾患、糖尿病および腫瘍を使用する潜在能力を有する可能性がある。
【0012】
また、正確な機構は知られていないものの、ベルベリンは抗炎症作用を有する。最近になって、ある研究者が、COX−2が炎症において増大するプロスタグランジン類の合成において鍵となる役割を果たすため、ベルベリンの抗炎症機構にはシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)が介在することを報告した(非特許文献26参照)。ベルベリンは、トラコーマの治療のためのある種の点眼薬または眼軟膏の成分として用いられる(非特許文献27参照)。
【0013】
6.皮膚疾患におけるベルベリンの使用
米国特許第6,440,465号明細書は、乾癬の治療のための、ベルベリンを含有する軟化剤ベース中のグルコサミンを有する局所用皮膚配合物に関する(特許文献1参照)。米国特許出願公開第2005/0158404号明細書は、経口投与によるざ瘡の治療のための、ビタミンA、ビタミンE、セレン、ビタミンB6、亜鉛、クロム、およびベルベリンを有するハーブ原料を含有する栄養補給製品、食餌補助品または薬剤組成物に関する(特許文献2参照)。米国特許第6,974,799号明細書は、しわ、皮膚線条、暗色のくまを含む加齢の可視的兆候の治療のための、トリペプチド(N−パルミトイル−Gly−His−Lys)およびテトラペプチド(N−パルミトイル−Gly−Gln−Pro−Lys)を含む局所用組成物に関する(特許文献3参照)。その配合物は、ベルベリンを含む追加の成分を含有してもよい。これらの発明において、ベルベリンは多くの成分の1つとして含まれており、その濃度は特定されていない。
【0014】
米国特許出願公開第2004/0146539号明細書は、痩身、健康安定および老化防止の利点を有する局所用機能性食品組成物に関する。その組成物は、皮膚の加齢、皮膚のしわ、皮膚の剥離、ざ瘡、酒さ、および他の皮膚の問題を治療するために用いられてもよい(特許文献4参照)。この発明の組成物は、ベルベリンを含むいくつかの剤から選択される抗菌剤を含む。これらの機能性食品組成物中に、ベルベリンは多くの成分の1つとして含まれており、その濃度は特定されていない。乾癬の治療のための、0.1%のベルベリンを含有する10%Mahonia aquifoliuクリーム(Relieva(商標)、Apollo Pharmaceutical Canada Inc)が存在している(非特許文献28参照)。
【0015】
酒さおよび他の赤面に関連する皮膚疾患の治療におけるベルベリンの治療効果は知られていない。現在まで、ベルベリンが酒さの症状を改善できることを示唆する直接的証拠は存在しない
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,440,465号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0158404号明細書
【特許文献3】米国特許第6,974,799号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0146539号明細書
【非特許文献】
【0017】
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【非特許文献30】Iwasa K, Nanba H, Lee DU, Kang SI. Structure-activity relationships of protoberberines having antimicrobial activity. Planta Med. 1998; 64:748-751
【非特許文献31】Prabal Giri, Maidul Hossain and Gopinatha Suresh Kumar. RNA specific molecules: Cytotoxic plant alkaloid palmatine binds strongly to poly(A). Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters. 2006; 16:2364-2368
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
最小限の副作用を伴う、酒さおよび他の関連する皮膚疾患の治療のための効果的な治療法に対する要求が存在する。本発明は、酒さおよび他の赤面に関連する皮膚疾患(ざ瘡、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎および光線皮膚炎のようなもの)の治療において有効かつ安全である局所用薬剤配合物に関する。本発明は、成分としてベルベリンを含有する現在入手可能な局所用薬剤配合物または実験されている配合物の欠陥を認識し、この欠陥を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】ケラチン合成細胞をカテリシジンペプチド(LL−37)で刺激し、ケラチン合成細胞によるIL−8の放出をELISA分析によって評価される際の、カテリシジンペプチド(LL−37)に誘起されるヒトケラチン合成細胞におけるIL−8の放出のベルベリンによる阻害を示すグラフである。
【図1B】ケラチン合成細胞をカテリシジンペプチド(LL−37)で刺激し、ケラチン合成細胞によるIL−1αの放出をELISA分析によって評価される際の、カテリシジンペプチド(LL−37)に誘起されるヒトケラチン合成細胞におけるIL−1αの放出のベルベリンによる阻害を示すグラフである。
【図1C】ケラチン合成細胞をカテリシジンペプチド(LL−37)で刺激し、ケラチン合成細胞によるVEGFの放出をELISA分析によって評価される際の、カテリシジンペプチド(LL−37)に誘起されるヒトケラチン合成細胞におけるVEGFの放出のベルベリンによる阻害を示すグラフである。
【図2A】ベルベリン治療の開始時点、治療の第2週、および治療の第6週における観察者による全体的な評価のスコアを示すグラフである。
【図2B】局所用ベルベリン治療の開始時点、治療の第2週、および治療の第6週における総合的な紅斑の重症度のスコアを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
精製されたベルベリンまたはベルベリンのハーブ抽出物を含有する配合物のいずれかを用いたベルベリンの動物研究およびヒトの臨床試験においても、ベルベリンが薬剤活性成分であることを示す証拠の系列が存在する。細菌感染および真菌感染、ならびに心血管疾患の治療におけるような多くの疾患の兆候において、時としてベルベリンの統計的に有意な有効性の結果が得られた。乾癬におけるベルベリンの有効性が認められていなかったにもかかわらず、ベルベリン豊富な抽出物を含有する配合物を用いる乾癬に関する試験においても、有効な結果が得られた。これらの結果は、ベルベリンが分子ターゲットに作用することができること、ならびに、ベルベリンが本願の背景技術のセクションに記載されたもののようなある種の分子経路および細胞機能に修飾を加えることができることを示唆している。
【0021】
多くの薬剤化合物の薬理学的研究において、薬剤が治療される対象物において有意義な生物学的および薬理学的効果を達成し、それによって治療効果を達成するために、薬学的に活性な化合物は、特定の閾値濃度以上の濃度で、肉体または影響を受ける組織中に存在しなければならないことが明確に示されている。1つまたは複数の植物の抽出物を含有するハーブ医薬調製物中には、多くの活性薬剤成分が存在する。経口経路または局所経路のいずれかにおけるハーブ調製物を用いる大抵の治療において、個々の薬剤成分は、肉体または治療される対象の影響を受ける組織中に閾値以下の濃度で存在する。しかしながら、同一種または異種の植物に由来するいくつかの化合物が同一の分子ターゲットに作用する可能性があり、あるいは、同一種または異種の植物に由来するいくつかの化合物が同一の生物学的経路中の異種の分子ターゲットに作用する可能性がある。結果として、協奏的に作用する種々の化合物が有意義な生物学的および薬理学的効果をもたらし、それによって治療効果をもたらす。
【0022】
ハーブ薬剤調製物が治療される対象における治療効果をもたらすことに失敗する場合、その中に含有される他の薬学的に活性な化合物が治療される対象中に低すぎる濃度で存在すること、および調製物中の化合物が単独または他の化合物との組み合わせで有意義な生物学的および薬理学的効果を起こすのに失敗することが考えられる。実際、多くの重要な薬剤化合物(単一の化学的存在)が、ハーブ調製物に用いられる植物から同定および単離されている。これらの純粋な化合物を用いた場合の治療有効性は、しばしば、その化合物を含有するハーブ調製物によって達成可能な治療有効性を凌駕する。
【0023】
ベルベリン豊富な植物の抽出物を含む局所用ハーブ薬剤配合物は、何世紀にもわたって、乾癬、ざ瘡、湿疹などのような種々の皮膚異常を含む種々の病気の治療に用いられてきている。これらの局所用ハーブ調製物は、多様な結果を達成してきた。それら調製物のいくつかにおいて、ベルベリン含有抽出物が配合物を構築するのに用いられる種々の成分の約10%を構成している。それらの局所用調製物全体におけるベルベリン化合物は、配合物完成品のおよそ0.1%(w/w)を占めると見積もられる(非特許文献28参照)。
【0024】
上記の論理的根拠に基づいて、本発明者らは、酒さの病因に含まれる可能性がある生物学的経路に関して、種々の濃度のベルベリンの効果を生体外で研究した。それらの結果および上記の論理的根拠に基づいて、本発明者らは、定義されたパーセンテージでベルベリンを含有する化学的に確定された局所用薬剤配合物を開発した。その配合物中のベルベリンの定義されたパーセンテージは、伝統的なハーブ由来のベルベリン含有薬剤配合物におけるベルベリンの濃度より高い。次いで、本発明者らは、酒さの患者の感染した皮膚の区域に関して、それら配合物を試験した。本発明者らの置換は、0.1%(v/v)超のベルベリンを含有する局所用薬剤組成物が、酒さおよび関連する敏感赤面疾患の治療において有効かつ許容可能な結果を達成できることを示す。
【0025】
ベルベリンの類似体
ベルベリン(5,6−ジヒドロ−9,10−ジメトキシベンゾ[g]−1,3−ベンゾジオキソロ[5,6−a]キノリジニウム)の構造を以下に示す。
【0026】
【化1】

【0027】
ベルベリンに類似の種々の生物学的活性を有する種々のプロトベルベリンアルカロイドを調製することができる。それらプロトベルベリンアルカロイドは、ジャトロリジン、パルマチン、コプチシン、9−デメチルベルベリン、9−デメチルパルマチン、13−ヒドロキシベルベリン、ベルベルビン、パルマトルビン、9−O−エチルベルベルビン、9−O−エチル−13−エチルベルベルビン、13−メチルジヒドロベルベリンN−メチル塩、テトラヒドロプロトベルベリン類およびそれらのN−メチル塩、13−ヘキシルベルベリン、13−ヘキシルパルマチン、および9−ラウロリルベルベルビンクロリドを含む(非特許文献29および30参照)。
【0028】
パルマチンは、種々の科の植物中、最も顕著にはFibrarurea Tinctoria Lourの根茎中に存在する。パルマチンはイソキノリンアルカロイドであり、パルマチンを含有する配合物は、中国において、婦人科系炎症、細菌性赤痢、腸炎、気道感染、尿路感染の治療に、広く用いられてきていた。加えて、パルマチンは、抗不整脈活性、防腐活性、静菌活性および抗ウィルス活性の機能を有する。また、パルマチンは抗腫瘍性薬剤のスクリーニングにおける化合物として用いることができる(非特許文献31参照)。局所用育毛抑制剤としてのパルマチン含有薬剤が存在する(Keramene, Divine Skin Solutions D S Laboratories Keramene Body Hair Minimizer)。
【0029】
コプチシンは、中国オウレン(Coptis chinensis)中で発見されたアルカロイドである。コプチシンは、細菌感染に起因する消化性疾患を治療するために、関連する化合物であるベルベリンを伴って中国のハーブ医薬中で用いられる。また、コプチシンは、腫瘍成長において、いくつかの重要な阻害を示す。生体外において、コプチチンは、ヒト腫瘍性大腸細胞ライン、ヒト肝細胞ガンおよび白血病細胞ラインにおける細胞毒であることが示されている(非特許文献32および33参照)。
【0030】
本発明者らの研究において、本発明者らは、酒さの病因に含まれる可能性がある生物学的経路に関して、種々の濃度のパルマチンおよびコプチシンの効果を生体内および生体外で研究した。それらの結果および上記の論理的根拠に基づいて、本発明者らは、定義されたパーセンテージでパルマチンまたはコプチシンを含有する化学的に定義された局所用薬剤配合物を開発した。これらの配合物は、酒さおよび関連する敏感赤面疾患の治療において有効かつ許容可能な結果を達成できた。
【実施例】
【0031】
[実施例1:カテリシジンベプチドに誘起されるヒトケラチン合成細胞によるサイトカイン分泌を阻害することにおけるベルベリンの効果(生体外試験)]
本発明者らの生体外研究のために、ベルベリン(Sigma, St. Louis, MO, USA)を、水、メタノール、エタノール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させた。0.06mMのCa2+、1%のEpiLife確定成長補助剤および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, CA, USA)を補足したEpiLife培地中で、正常なヒトケラチン合成細胞(Invitrogen, CA, USA)を成長させた。細胞は、5%CO2および95%空気の加湿雰囲気中、37℃で成長させた。ヒトケラチン合成細胞を培養して集密させ、合成カテリシジンペプチド(LL−37)(6.4μM)で16時間にわたって処理して、酒さにおいて観察されるものと同様の炎症性応答を誘起した。カテリシジン処理したケラチン合成細胞の培養物のいくつかを、1.25μg/mlから12.5μg/mlまでの濃度のベルベリンとともに共インキュベートした。カテリシジンまたは1%エタノールを伴うカテリシジンで処理し、かつベルベリンで処理しなかったケラチン合成細胞培養物を、負の比較対照として用いた。上澄みを収集し、製造業者(R&D Systems, MN, USA)の指示に従ってインターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−1α(IL−1α)および静脈表皮細胞成長因子(VEGF)のELISAのために、滅菌した96ウェルプレート中に配置した。
【0032】
その結果は、カテリシジンが、培養されたヒトケラチン合成細胞からのIL−8、IL−1αおよびVEGF放出を誘起することができることを示した。培養培地に対して異なる濃度(0〜12.5μg/ml)のベルベリンを添加することによって、IL−8(図1A)、IL−1α(図1B)、およびVEGF(図1C)の放出に対するベルベリンの阻害効果を試験した。カテリシジン刺激したケラチン合成細胞を1.25μg/mlベルベリンで処理した場合、1%エタノールを伴うカテリシジンペプチド処理した比較対照と比較して、IL−8、IL−1α、およびVEGFの放出が、それぞれ31.4%、24.9%および29.1%減少した(P<0.05)。これらの結果は、用量に依存する様式において、特にベルベリンの濃度が6.25μg/mlより大きい際に、ベルベリンが、カテリシジンに誘起された炎症性応答を顕著に阻害できることを示す。これは、ベルベリンが、酒さに関連するカテリシジンに誘起されるサイトカインの放出に対する抗炎症活性を有することを示す。
【0033】
[実施例2:確定されたパーセンテージで精製されたベルベリンおよびパルマチンを含有する局所用薬剤配合物の調製]
上記の論理的根拠に基づいて、本発明の局所用ベルベリン含有薬剤配合物は1つの鍵となる特徴を有する。その特徴は、確定されたパーセンテージで精製されたベルベリンを含有することである。その確定されたパーセンテージは、ベルベリン豊富な植物の抽出物を用いる従来の配合物において得ることができるパーセンテージよりも高い。種々の濃度を、動物モデル研究およびヒト臨床研究における試験にかけた。
【0034】
動物モデルおよびヒト患者に対する本発明者らの研究のために、精製されたベルベリンを100%エタノール中に溶解させ、次いで水を添加して、最終溶液中のベルベリンの所望される濃度に到達させた。たとえば、ゲル配合物においては、10%エタノール中の0.1%または0.2%ベルベリンを調製した。溶液またはゲル配合物は蓋をし、使用するまで4℃で保管した。酒さを有する動物モデルおよびヒト酒さ患者に対する本発明者らの研究の結果は、一貫性のある満足な結果を達成するためには、配合物中のベルベリンの濃度が0.1%以上であるべきことを示す。これらの濃度は、ベルベリン豊富な植物の抽出物を用いて従来調製されたベルベリン含有配合物よりも高いものである。
【0035】
実験を継続して、臨床医および患者の使用により適当である、軟膏、ゲル、クリーム、ローションまたはスプレーの形態の配合物を調製した。本発明の局所用薬剤配合物において、ベルベリンまたはベルベリンの生物学的に等価な類似体(たとえば、パルマチンおよびコプチシン)は、唯一のまたは主要な活性薬剤化合物である。本発明者らの研究に用いられる精製されたパルマチンは、100%水中に溶解させ、次いで希釈されて、定義されたパルマチン濃度(たとえば、0.02%、0.1%または0.2%のパルマチン)の最終的な溶液またはゲル配合物に到達する。
【0036】
しかしながら、改善または修飾された配合物は、ベルベリンまたはその類似体の溶解度の増大、乳化、潤滑、抗生物活性または水和のための追加の成分を含んでもよい。
【0037】
ベルベリンまたはベルベリンの生物学的に等価な類似体の溶解度を増大させる本発明の1つの好ましい実施形態は、配合物にグリセロールを添加することである。配合物の抗生物活性を増大させる本発明の1つの実施形態は、抗生物活性を有することが示されている植物抽出物を添加することである。本発明の局所用配合物の水和特性を向上させる1つの実施形態は、ヒアルロン酸を添加することである。
【0038】
[実施例3:酒さのマウスモデルに対する本発明の局所用薬剤配合物の効果]
(酒さの動物モデル)
以前の報告から、酒さの動物モデルを採用した(非特許文献18参照)。簡潔に言えば、処理24時間前に剃毛したBALB/cおよびC57BL/6マウスの背中に、1日2回、40μlのカテリシジンペプチド(320μM)を皮下注射した。最初の注射後48時間(合計4回の注射)において、注射を行った区域に紅斑および浮腫が観察され、酒さの臨床特徴を模倣した。
【0039】
本発明者らの実験において、カテリシジンを注射されたマウスを、1日2回、局所用ベルベリンを用いてまたは用いずに処置して、炎症を減少させることに関するベルベリンの効果を観察した。その結果は、カテリシジンペプチドの皮下注射を受けたマウスが、48時間後に、酒さの臨床的特徴と類似する紅斑および皮膚内の静脈の拡張を誘起されたことを示した。次いで、カテリシジンを注射されたマウスを2つの群に分離した。それらの群は、それぞれ、引き続く2日間にわたってベルベリンで処置する群(n=3)、またはベルベリンで処置しない群(n=3;比較対照として)である。カテリシジンで誘起された病変に0.1%ベルベリンを含有する局所用配合物を1日2回塗布した。比較対称群においては、7日以上にわたって紅斑性すなわち炎症性病変が継続した。第4日において、比較対照と比較して、ベルベリンで処置した群における紅斑および静脈拡張が著しく減少した。この結果は、局所用ベルベリンが、生体内でカテリシジンによって誘起された炎症反応を減少できることを示す。
【0040】
[実施例4:酒さの患者に対する本発明の局所用薬剤配合物の有効性を調査するヒト臨床研究]
(方法)
酒さおよび関連する皮膚疾患に対する本発明の局所用ベルベリン配合物の有効性を確認するために、オープンラベルの臨床研究を実施した。この研究に参加する患者は、皮膚科専門医によって臨床的に定義された酒さを有すると診断された。全ての患者に対して、6週間にわたり1日2回0.1%ベルベリンゲルが与えられた。処理開始時、処理後2週および処理後6週の時点において、患者は、その酒さの症状の評価を受けた。患者は、その皮膚症状のための他の医薬品(抗生物質を含む)の使用を許可されなかった。掻痒症状の緩和のために、経口の抗ヒスタミン薬のみが許可された。
【0041】
処理の有効性を評価するために、National Rosacea Society Expert Committee on the Clasification and Staging of Rosaceaにより開発された酒さの標準的格付けシステムを用いた(非特許文献3参照)。加えて、観察者による全体的な評価(IGA)および患者の総合的な紅斑の重症度を、ベルベリン治療の第0週、第2週および第6週に記録した。IGAは、0(クリア)から6(重症)までの範囲を用いる7点スコア系にしたがって表わした。総合的な顔の紅斑および毛細血管拡張症の重症度は、それぞれ、0〜3のスコアを用い、「無し」、「軽度」、「中程度」および「重症」で格付けした。総合的な顔の紅斑の重症度を評価するのに用いた格付けシステムは、以前に記載されている(非特許文献34参照)。
【0042】
(結果)
合計20名(18名の女性および2名の男性)の酒さの患者が、この研究に登録された。研究対象集団の平均年齢は43.3歳(19歳〜85歳)であった。ベルベリン試料に先立つ酒さの平均継続期間は4年(1年〜24年)であった。20名の酒さの患者の中で、13の症例(65%)は紅斑性毛細血管拡張症型であり、7の症例(35%)は丘疹膿疱型であり、5の症例(25%)は腫瘤型であった。
【0043】
7点スコア系に従い、ベースライン(処置の開始)における酒さのIGAスコアは、4.1±1.3であった。このスコアは、第2週に2.6±0.9間で減少し、次いで第6週で1.6±0.8まで減少した。第0週、第2週および第6週の間のIGAスコアの際は、統計学的に有意であった(第2週−第0週:対t試験P<0.0001;第6週−第0週:対t試験P<0.0001)。処置の開始時点において、大多数(95%)の患者は、軽度から中程度(3)から重症(6)までの格付けを有した。処置の終了時点において、20名の患者の内の19名(95%)は軽度(2)からクリア(0)の格付けを有した。
【0044】
観察者によって評価された総合的な紅斑の重症度は、処置の開始時点において2.35±0.6であり、第2週において1.5±0.5であり、第6週において0.95±0.4であった。第2週または第6週における改善は統計学的に有意であった(第2週−第0週:対t試験P<0.0001;第6週−第0週:対t試験P<0.0001)。処置の開始時点において、大多数(95%)の患者は、中程度(2)から重症(3)までの紅斑の格付けを有した。処置の終了時点において、20名の患者の内の19名(95%)は軽度(1)から無し(0)の紅斑の格付けを有した。
【0045】
(安全性および許容度)
研究中に深刻な不都合な事象は発生しなかった。2の症例(10%)のみにおいて、局所治療の区域における一時的な掻痒/刺激感覚が発生したが、研究を中断すること無しに許容可能なものであった。
【0046】
[実施例5:ステロイドに誘起される酒さ様皮膚炎およびEGFR阻害剤に誘起されるざ瘡皮膚炎の治療における局所用ベルベリンの有効性]
同様に、本発明者らは、ステロイドに誘起される酒さ様皮膚炎の10名の患者およびEGFR阻害剤に誘起されるざ瘡皮膚炎の5名の患者に対する0.1%ベルベリンゲルを、6週間にわたる1日2回の投薬計画を用いて研究した。酒さにおいて観察されたように、15名の患者の全てにおいて症状の改善が見られ、かつ局所治療を許容された。
【0047】
[実施例6:酒さまたは赤面疾患の治療に対するパルマチンの有効性]
同様に、本発明者らは、10名のしゅさおよび関連する赤面疾患の患者に対して0.02%(w/w)でパルマチンを含有する局所用配合物を研究した。ベルベリンにおいて観察されたように、10名の患者の全てにおいて症状の改善が見られ、かつ局所治療を許容された。
【0048】
[実施例から導出される結論]
生体外の培養物の研究は、カテリシジンに誘起されるヒトケラチン合成細胞によるIL−8、IL−1αおよびVEGF生産の阻害することによって、ベルベリンが抗炎症効果を示すことを例示した。酒さおよび関連する皮膚疾患の病原が炎症を伴うため、ベルベリンの抗炎症効果は、酒さおよび関連する炎症性皮膚疾患におけるベルベリンの臨床的に有益な効果の説明となる。
【0049】
本発明者らの研究の結果は、0.1%より高い濃度の精製されたベルベリンまたは0.02%より高い濃度の精製されたパルマチンを含有する本発明の局所用薬剤配合物が、酒さおよび赤面に関連する疾患(ざ瘡、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、および光線皮膚炎、ステロイドに誘起される酒さ様皮膚炎、およびEGFR阻害剤に誘起されるざ瘡皮膚炎のようなもの)の治療において有効であり、安全であり、かつ十分に許容可能であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.02%w/wのベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体を含むことを特徴とする、赤面に関連する皮膚疾患を治療するための局所用薬剤組成物。
【請求項2】
ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体が主要な薬学的活性成分であることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項3】
ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体が唯一の薬学的活性成分であることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項4】
赤面に関連する皮膚疾患が、酒さ、尋常性ざ瘡、脂漏性皮膚炎、光線皮膚炎、接触皮膚炎、ステロイドに誘起される酒さ様の皮膚炎、およびEGFR阻害剤に誘起されるざ瘡皮膚炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項5】
赤面に関連する皮膚疾患が、酒さであることを特徴とする請求項4に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項6】
ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体の濃度が約0.1%w/wと約2%w/wとの間であることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項7】
水、エタノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項8】
可溶化剤、乳化剤、潤滑剤、および水和剤からなる群から選択される1つまたは複数の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項9】
グリセロール、ヒアルロン酸および/または植物抽出物をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項10】
ざ瘡および/または酒さを治療するための1つまたは複数の剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項11】
ざ瘡および/または酒さを治療するための剤は、抗生剤または抗菌剤であることを特徴とする請求項10に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項12】
ざ瘡および/または酒さを治療するための剤は、アゼライン酸、レチノイド、メトロニダゾル、過酸化ベンゾイル、スルファセタミドナトリウム、および硫黄からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項13】
溶液、ローション、ゲル、クリーム、軟膏またはスプレーの形態にあることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項14】
ベルベリンの生物学的に等価な類似体は、ジャトロリジン、パルマチン、コプチシン、9−デメチルベルベリン、9−デメチルパルマチン、13−ヒドロキシベルベリン、ベルベルビン、パルマトルビン、9−O−エチルベルベルビン、9−O−エチル−13−エチルベルベルビン、13−メチルジヒドロベルベリンN−メチル塩、テトラヒドロプロトベルベリン類およびそれらのN−メチル塩、13−ヘキシルベルベリン、13−ヘキシルパルマチン、および9−ラウロリルベルベルビンクロリドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項15】
ベルベリンの生物学的に等価な類似体は、パルマチンまたはコプチシンであることを特徴とする請求項14に記載の局所用薬剤組成物。
【請求項16】
感染した皮膚に対して薬学的に有効な量の薬剤組成物を局所的に塗布する工程を含み、該薬剤組成物は、ベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体を含むことを特徴とする、赤面に関連する皮膚疾患を治療する方法。
【請求項17】
赤面に関連する皮膚疾患が、酒さ、尋常性ざ瘡、脂漏性皮膚炎、光線皮膚炎、接触皮膚炎、ステロイドに誘起される酒さ様の皮膚炎、およびEGFR阻害剤に誘起されるざ瘡皮膚炎からなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
赤面に関連する皮膚疾患が、酒さであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該薬剤組成物が、少なくとも0.02%w/wのベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
該薬剤組成物が、約0.1%w/wと約2%w/wとの間のベルベリンまたはその生物学的に等価な類似体を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ベルベリンの生物学的に等価な類似体は、ジャトロリジン、パルマチン、コプチシン、9−デメチルベルベリン、9−デメチルパルマチン、13−ヒドロキシベルベリン、ベルベルビン、パルマトルビン、9−O−エチルベルベルビン、9−O−エチル−13−エチルベルベルビン、13−メチルジヒドロベルベリンN−メチル塩、テトラヒドロプロトベルベリン類およびそれらのN−メチル塩、13−ヘキシルベルベリン、13−ヘキシルパルマチン、および9−ラウロリルベルベルビンクロリドからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
ベルベリンの生物学的に等価な類似体は、パルマチン、またはコプチシンであることを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2012−531448(P2012−531448A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518003(P2012−518003)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000983
【国際公開番号】WO2011/000218
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512002297)デルマン バイオメディシン カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】