説明

酒燗器及び燗方法

【課題】好みの燗温度までに短時間で酒を加熱できる湯せん式の酒燗器及び燗方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、加熱容器11中に温水14を収容し、この温水14により燗用容器15を加熱して前記燗用容器15内の液体を所望の燗温度Tに加熱するための酒燗器10において、前記温水14を加熱する加熱手段21と、前記加熱手段21を作動させて前記温水を予め設定した所望の燗温度Tに保つ第1の制御手段と、前記燗用容器15を前記温水14の中に入れた際に、前記温水14の温度が前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで前記加熱手段21を作動させる第2の制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒燗器及び燗方法に関し、特に湯せん式の酒燗器及びそれに用いられる燗方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒を所望の燗温度に加熱(「燗をつける」ともいわれる)する酒燗器としては、酒燗器本体の上部に設置されたキュビテーナ(主に18リットル入り容器)や倒立設置された一升ビン等から熱交換により所定量の酒を所望の燗温度にまで加熱してお銚子等に注入する熱交換方式のもの(下記特許文献1参照)と、電気やガスを熱源に使用した湯せん式の酒燗器(「燗どうこ」ともいわれる)が知られている(下記特許文献2参照)。
【0003】
このうち、前者の熱交換方式のものは、多量の酒を短時間に所望の燗温度に加熱できることから、主として大型の店舗で使用されているが、後者の湯せん式の酒燗器は、一度に多量の酒を加熱するには時間がかかることから、比較的小型の店舗や家庭で多く使用されている。
【0004】
ここで、下記特許文献1に開示されている湯せん式かつ卓上式の酒燗器を、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5は、卓上式酒燗器の概略的な断面図であり、図6は図5の平面図である。この下記特許文献1に開示されている卓上式酒燗器50は、図5に示したように、可搬の卓上型の容器51と、前記容器51の上縁に着脱自在に係止される加熱ユニット52を有している。
【0005】
加熱ユニット52は、支持部53の下端に電気ヒータ54が取り付けられており、電気ヒータ54の反対側の上端に制御部55が取り付けられている。ここで、電気ヒータ54は、バイメタルスイッチ(図示せず)により湯56の温度を一定温度に保つように自動制御されている。そして、制御部55は、強制タイマ、強制タイマスイッチ、リセットスイッチ等(図示せず)を備えている。また、容器51には、水(又は湯)56が収容されており、更に、水56中には被加温材である酒の入った徳利57が収容されている。なお、容器51は木材、プラスチック材、陶器等で形成され、徳利57は陶器、金属、合成樹脂(例えば、ペットボトル)又はガラス等で形成されている。
【0006】
使用に際しては、容器51に水(又は湯)56を入れ、電気ヒータ54により水56が所望の燗温度(例えば、50℃)に達するまで加熱を行い、この状態で、酒の入った徳利57を湯56の中に入れる。そして、加熱ユニット52の制御部55に備わっている強制タイマのスイッチを入れると、同じく加熱ユニット52の制御部55に備わっている強制タイマに予め設定してあるT1時間(例えば、2.5分間)、湯56を電気ヒータ54により加熱する。これによって湯56は70℃近くまで上昇するため、強制加熱が終了した後に加熱ユニット52を取り出して容器10と徳利12をそのまま運べば、2〜3分後には徳利57内の酒の温度も50℃近くになる。
【特許文献1】特開平 8− 47452号公報
【特許文献2】特開2003−19070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1に代表される従来の酒燗器50によれば、予め湯56を目標とする酒燗温度に電気ヒータ54により保っておき、この湯の中に徳利57を入れるとともに、電気ヒータ54により徳利内の酒の量に応じて設定された強制加熱時間だけ湯の加熱を行った後、電気ヒータにより加熱を停止し、以降加熱された湯により酒の加熱を行って所定温度に加熱する構成を採用している、このため、容器51内の湯56の温度は、加熱時間に応じて蓄積される熱量によって決まるため、徳利57の大小や容器51の大小、電気ヒータ54の容量、あるいは酒の保管温度、季節等によって設定時間T1の間に上昇する容器51内の湯56の温度が異なってくる。
【0008】
すなわち、徳利57内の酒が目的とする好みの燗温度になるように容器51内の湯56の温度を調整するためには、従来の酒燗器50では徳利57の大きさ、容器51の大きさ、酒の保管温度等に応じて強制タイマによる加熱時間を変更する必要があるため、最適な酒燗温度になるように加熱制御することが難しいという課題を有している。
【0009】
特に、冬季や酒の保管温度が極度に低い場合には、電気ヒータ54により強制加熱された直後の湯56の温度と徳利57内の酒の温度との差が大きいため、強制タイマによる強制加熱時間では最適な酒燗温度に必要な熱量が十分に得られないことになり、結果として好みの燗温度になるまでに時間がかかってしまう。
【0010】
また、夏季や酒の保管温度が比較的高い場合には、電気ヒータ54により強制加熱された直後の湯56の温度と徳利57内の酒の温度との差が小さいため、強制タイマによる強制加熱時間では酒燗温度としては高温過ぎることになり、逆に、温め過ぎてしまうことが多くなる。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、好みの燗温度までに短時間で酒を加熱できる湯せん式の酒燗器及び燗方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は以下の構成により解決し得る。すなわち、請求項1に係る酒燗器の発明は、加熱容器中に温水を収容し、この温水により燗用容器を加熱して前記燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱するための酒燗器において、前記温水を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段を作動させて前記温水を予め設定した所望の燗温度Tに保つ第1の制御手段と、前記燗用容器を前記温水の中に入れた際に、前記温水の温度が前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで前記加熱手段を作動させる第2の制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の酒燗器において、前記第2の制御手段を作動させる手動スイッチ手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の酒燗器において、前記手動スイッチ手段は第2の制御手段作動用のスタートパルスを発生させるためのワンプッシュスイッチであることを特徴とする。
【0015】
更に、請求項4に係る燗方法の発明は、加熱容器中に温水を収容し、この温水により燗用容器を加熱して前記燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱する燗方法において、前記温水を加熱手段により予め定めた所望の燗温度Tに保っておき、前記燗用容器を前記温水中に入れた際に、前記温水の温度が前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで前記加熱手段を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成を備えることにより、以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る酒燗器の発明によれば、第1の制御手段により加熱手段を作動させることによって加熱容器中に収容された温水を常時予め定められた所望の燗温度Tに保つことができ、しかも、この状態の温水の中に燗用容器を入れた際には、第2の制御手段により加熱容器中に収容された温水を更に加熱して、加熱容器中の温水の温度が前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで上昇させることになる。すなわち、請求項1に係る発明によれば、予め温水を加熱手段により常時目標とする燗温度である所望の燗温度Tに保っておき、この温水の中に燗用容器を入れた際には、第2の制御手段によって作動される加熱手段により加熱容器中の温水が更に2℃〜5℃高い設定温度Tになるまで加熱が行なわれた後、加熱手段による加熱が停止され、以降第1の制御手段による制御下で燗用容器内の溶液の加熱が行なわれる。
【0017】
したがって、請求項1に係る発明によれば、加熱容器中に収容された温水の温度は、予め定められた所望の燗温度Tから更に2℃〜5℃高い設定温度Tになった後、燗用容器内の液体の加熱及び自然放熱によって徐々に温度が下がり、その後は第1の制御手段により予め定められた所望の燗温度Tとなるように制御されるから、燗用容器内の液体は、最初の段階では予め定められた所望の燗温度Tから設定温度Tにまで温度が上昇する温水により加熱され、それ以降は徐々に温度が所望の燗温度Tにまで下がる温水により加熱されることとなり、従来例のものよりも短時間で燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱することができるようになるとともに、それ以降は常時燗用容器内の液体の温度を所望の燗温度Tに維持することができる。
【0018】
加えて、請求項1に係る発明によれば、燗用容器の大小や温水を収容する容器の大小、あるいは燗用容器に収容される溶液の保管温度、季節等が変化した場合においても、加熱容器中の温水の量は燗用容器内の液体の量よりも遙かに多いために、
(1)燗用容器を前記温水の中に入れた際の温水の温度低下は実質的に無視しえること、
(2)加熱容器中の温水を所望の燗温度Tから2℃〜5℃高い設定温度Tに加熱するまでの時間及び設定温度Tに加熱された温水が所望の燗温度Tにまで低下するまでの時間は実質的に一定と見なすことができること、
から、所望の燗温度Tが異なっても、温水の中に燗用容器を入れて第2の制御手段を作動させてから実質的に一定の時間で燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱することができるようになる。
【0019】
なお、設定温度Tと所望の燗温度Tとの差が2℃未満であると、燗用容器内の液体と温水との温度差が小さすぎ、燗用容器の液体の加熱速度が遅くなるため、燗用容器の液体を所望の燗温度Tに加熱するまで時間がかかりすぎるようになるので好ましくない。また、設定温度Tと所望の燗温度Tとの差が5℃を越えると、逆に燗用容器内の液体と温水との温度差が大きすぎ、燗用容器の液体の加熱速度が速くなるため、燗用容器の液体の温度が所望の燗温度Tよりも高くなってしまうことがあるため、好ましくない。より好ましい設定温度Tと所望の燗温度Tとの差は3℃近傍である。
【0020】
また、請求項2に係る発明によれば、手動スイッチ手段を作動させたときに第2の制御手段を稼動させて加熱手段を作動させることができるため、燗用容器を温水の中に入れた際に同時に手動スイッチ手段を操作することにより、温水の温度を前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに加熱することができるようになる。
【0021】
また、請求項3に係る発明によれば、燗用容器を温水の中に入れた際に単にスイッチ手段にタッチするだけで第2制御手段を作動させることができるから、簡単な操作で燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱することができるようになる。
【0022】
更に、請求項4に係る発明によれば、容易に請求項1に係る発明の効果を奏することができる燗方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体例な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための酒燗器を例示するものであって、本発明をこの酒燗器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0024】
なお、図1は、本発明の実施例に係る酒燗器の概略的な断面図であり、図2は、本発明の実施例に係る酒燗器の動作制御を説明する概略的なブロック図であり、図3は、本発明の実施例に係る酒燗器の動作を説明するフローチャート図であり、図4は、本発明の実施例に係る燗方法を説明するための加熱温度特性図である。
【0025】
本実施例の酒燗器10は、図1に示すように、可搬の加熱容器11及び内部に燗制御部12を備えた操作パネル13を備えている。このうち、加熱容器11は、木材、プラスチック材、陶器等で形成され、なるべく熱絶縁性の良いものが用いられ、内部に温水14が収容されている。また、この温水14の中には、被加温材である酒の入った燗用容器(例えば、徳利、チロリ等)15が収容されるが、この燗用容器15は陶器、金属、合成樹脂又はガラス等で形成されているものが使用される。
【0026】
燗制御部12は、図2に示すように、制御手段20、ヒータ21、温度設定手段22、電源スイッチ(SW)23、再加熱スイッチ(SW)24、発光ダイオード(LED)25、温度検出手段26、温度過昇防止手段27、及び、タイマ手段28を有している。
【0027】
制御手段20は、マイクロプロセッサ(CPU)からなり、メモリ(図示せず)に予め記録されたプログラムを実行して各部・手段を制御する。ヒータ21は、商用電源により駆動する電気ヒータで構成されており、加熱容器11内に収容された温水14を加熱するものである。ここでは従来と同じくセラミック製で、水から出すと通電が切れるよう加熱空炊き防止機能を備えた投入式のものを使用しており、間違って手を触れて火傷をしないようにするための網状の保護枠(図示せず)を備えている。
【0028】
温度設定手段22は、酒燗器10の本体正面に設けられた操作パネル13上に取り付けられており、加熱容器11内に収容された温水14の温度を所望の燗温度Tとなるように設定するものである。例えば、図1に示した温度設定手段22は、ぬる燗に対応する温度として45℃、上燗に対応する温度として55℃、あつ燗に対応する温度として65℃が目盛付けられているおり、所望の燗温度Tとして使用者が適宜設定することができる。
【0029】
電源スイッチ23は、酒燗器10の本体正面に設けられた操作パネル13上に取り付けられており、酒燗器10内の各部に電源を供給するためのスイッチである。この電源スイッチ23がオンになると、常時ヒータ21のオンオフが制御されて加熱容器11中に収容された温水14が温度設定手段22により予め設定された所望の燗温度Tとなるように制御される。
【0030】
再加熱スイッチ24は、酒燗器10の本体正面に設けられた操作パネル13上に取り付けられたワンプッシュスイッチからなり、加熱容器11中に収容された温水14の中に燗用容器15を入れた際にこの再加熱スイッチ24を一度押すことにより、第2の制御手段(図示せず)に向けてスタートパルスが発生され、第2の制御手段により温水14を温度設定手段22によって予め設定された所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃ほど高い、好ましくは3℃高い設定温度Tに達するまで加熱する。
【0031】
この設定温度Tと所望の燗温度Tとの差が2℃未満であると、燗用容器15内の液体と温水14との温度差が小さすぎ、燗用容器15の液体の加熱速度が遅くなるため、燗用容器15の液体の温度を所望の燗温度Tに加熱するまで時間がかかりすぎるようになる。また、この設定温度Tと所望の燗温度Tとの差が5℃を越えると、逆に燗用容器15内の液体と温水14との温度差が大きすぎ、燗用容器15の液体の加熱速度が速くなるため、燗用容器15の液体の温度が所望の燗温度Tよりも高くなってしまうことがある。より好ましい設定温度Tと所望の燗温度Tとの差は3℃近傍である。
【0032】
なお、この実施例では設定温度Tと所望の燗温度Tとの差を2℃〜5℃の範囲で任意に選択できるように補助温度設定手段22’を設けた例を示したが、この補助温度設定手段22’は省略してもかまわない。補助温度設定手段22’を省略した場合は、設定温度Tと所望の燗温度Tとの差を2℃〜5℃の範囲内で所定の温度に固定しておく。
【0033】
LED(発光ダイオード)25は、酒燗器10の本体正面に設けられた操作パネル上に取り付けられており、電源スイッチ23又は再加熱スイッチ24をオンにすることによってヒータ21で加熱容器11内の温水14を加熱中か否かを判別する表示用照明である。この実施例では、ヒータがオン状態となっている場合には連続点灯となるように、また、ヒータがオフ状態となっている場合には点滅点灯状態となるようになされている。
【0034】
温度検出手段26は、サーミスタ、熱電対等の電子的温度検出器からなり、加熱容器11に収容された温水14の温度を検知するためのものである。この温度検出手段26は、第1の制御手段(図示せず)と組み合わされて、加熱容器11に収容された温水14の温度を検知し、温水14の温度が温度設定手段22に設定された所望の燗温度Tとなるように制御される。例えば、上燗の場合であれば、T=55℃に設定されているため、55℃以下になるとヒータ21による温水14の加温を開始させ、55℃以上になるとヒータ21による温水14の加熱を停止させる。これらの動作によって常に温水14の温度を55℃近傍になるように維持する。なお、第1の制御手段による温度制御の際には、僅かにヒステリシス特性を持たせて頻繁にオン−オフの切換がなされないようにしてある。
【0035】
温度過昇防止手段27は、温度検出手段26の出力を利用し、加熱容器11に収容された温水14の温度を検知し、温水14の温度が温度設定手段22によって設定された所望の燗温度Tよりも3℃ほど高い設定温度T、例えば、上燗であれば一旦58℃以上になるとヒータ21への通電を止め、常に温水14の温度が58℃以上にならないようにするものである。この設定温度Tと所望の燗温度Tとの差は、補助温度設定手段22’で設定ないしは予め所定の温度幅に設定しておく。また、タイマ手段28は、ヒータ21を所定時間だけ作動させるものであり、必要に応じて設けられる。
【0036】
次に、酒燗器10の動作を、図3に示したフローチャートを用いて説明する。なお、図3に示す処理動作は制御手段20がメモリ(図示せず)に記録された制御プログラムを実行することで実現される。
【0037】
制御手段20は、電源スイッチ23がオン状態にされると(ステップS30)、LED25を点灯させ、温度検出手段26によって加熱容器11中の温水14の温度が温度設定手段22により指定した所望の燗温度Tに達しているか否か判断する(ステップS31)。そして、温水14の温度が所望の燗温度Tに達していなければ、LED25を点灯させたままヒータ21をオン状態とし(ステップS32)、ステップS31に戻って温水14が所望の燗温度Tに達するまで加熱する。また、温水14が所望の燗温度Tに達していれば、ヒータ21をオフ状態とし(ステップS33)、LED25を点滅させる。
【0038】
そして、制御手段20は、この状態で、酒の入った燗用容器15が温水14の中に入れられ、再加熱SW24がオン状態とされたか否か判断し(ステップS34)、再加熱SW24がオフ状態である判断すると、更にLED25を点滅させたまま、電源SW23がオフされたか否か判断する(ステップS35)。ここで、電源SW23がオフ状態であると判断するとLED25を消灯して処理を終了し、電源SW23がオフ状態ではないと判断するとLED25を点滅させたままステップS31に戻る。
【0039】
一方、制御手段20は、ステップS34において、再加熱SW24がオン状態とされたと判断すると、LED25を点灯させ、温度過昇防止手段27によって加熱容器11中の温水14の温度が温度設定手段22により設定した所望の燗温度Tよりも3℃ほど高い設定温度Tに達しているか否か判断する(ステップS36)。
【0040】
制御手段20は、温水14が設定温度Tに達していなければ、LED25を点灯させたままヒータ21をオン状態とし(ステップS37)、ステップS36に戻って温水14が設定温度Tに達するまで加熱し、また、温水14が設定温度Tに達していればヒータ21をオフ状態とし(ステップS38)、LED25を点滅させてステップS31に戻る。
【0041】
ここで、図4を用いて実施例に係る酒の燗方法を説明する。なお、図4(a)は実施例の温水の加熱温度特性図を示し、また、図4(b)は図4(a)の丸印部分の拡大図であり、いずれも縦軸は温度、横軸は時間を示している。また、図4(a)の曲線Aは温度設定手段22の燗温度Tをぬる燗温度45℃に設定した場合、曲線Bは燗温度Tを上燗温度55℃に設定した場合、曲線Cは燗温度Tをあつ燗温度65℃に設定した場合のそれぞれの湯温曲線である。
【0042】
本実施例の酒燗器10の使用に際しては、加熱容器11に水(又は湯)14を入れ、燗制御部12の温度設定手段22において好みの燗温度Tを指定して電源SW23をオン状態とする(図4において時間T)と、温水14が所望の燗温度T(例えば、ぬる燗は45℃、上燗は55℃、あつ燗は65℃)に達していなければ、ヒータ21により温水14が規定温度に達するまで加熱を行い、所望の燗温度Tに達していればヒータ21はオフ状態とされる。このようにして、温水14の温度は所望の燗温度Tに保たれる。
【0043】
この状態で、酒が入った燗用容器15を温水14の中に入れる。そして再加熱SW24を押すと(図5において時間tα)、温度設定手段22に予め設定された所望の燗温度T0、例えば55℃よりも3℃ほど高い設定温度T、例えば58℃に達する(図4において時間tβ)まで温水14をヒータ21により強制的に加熱する。これによって温水14の温度は58℃まで上昇する。強制加熱が終了すると、曲線B’に示されるように温水14の温度は、燗用容器15内の酒に熱を取られ、また、自然放熱のために所望の燗温度T=55℃に低下する(図4において時間tγ)が、これに伴い燗用容器15内の酒の温度もT=55℃に上昇する。なお、ここでは上燗の場合について説明したが、他の燗温度の場合も同様である。
【0044】
このように、本実施例の酒燗器10では、燗用容器15内の酒に所望の燗温度Tに加熱する際には加熱容器11内の温水14を常に設定温度Tまで加熱させることができるため、常に一定の温度条件の下で所望の燗温度Tに加熱することができるとともに、最適な所望の燗温度Tまで短時間でかつ実質的に一定の時間で加熱することができる酒燗器10が得られる。
【0045】
なお、上記の本実施例では、燗の温度として、ぬる燗を45℃、上燗を55℃、あつ燗を65℃としたが、これらの温度に限られるものではない。季節により、顧客の好みにより、更には酒の種類によって適宜設定することができる。また、ヒータにより強制加熱した設定温度Tを所望の燗温度Tよりも3℃ほど高くした例を示したが、この温度に限られるものではなく、適宜所定の固定温度に或は補助温度設定手段22’を用いる等により、設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例に係る酒燗器の概略的な断面図である。
【図2】実施例に係る酒燗器の動作制御を説明する概略的なブロック図である。
【図3】実施例に係る酒燗器の動作を説明するフローチャート図である。
【図4】実施例に係る酒燗方法を説明するための加熱温度特性図である。
【図5】従来の卓上式酒燗器の概略的な断面図である。
【図6】図6は図5に示した卓上式酒燗器の平面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 酒燗器
11 加熱容器
12 燗制御部
13 操作パネル
14 温水
15 燗用容器
20 制御手段
21 ヒータ
22 温度設定手段
22’ 補助温度設定手段
23 電源スイッチ
24 再加熱スイッチ
25 LED
26 温度検出手段
27 温度過昇防止手段
28 タイマ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱容器中に温水を収容し、この温水により燗用容器を加熱して前記燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱するための酒燗器において、前記温水を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を作動させて前記温水を予め設定した所望の燗温度Tに保つ第1の制御手段と、 前記燗用容器を前記温水の中に入れた際に、前記温水の温度が前記所望の燗温度Tよりも
2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで前記加熱手段を作動させる第2の制御手段と、
を備えることを特徴とする酒燗器。
【請求項2】
前記第2の制御手段を作動させる手動スイッチ手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の酒燗器。
【請求項3】
前記手動スイッチ手段は第2の制御手段作動用のスタートパルスを発生させるためのワンプッシュスイッチであることを特徴とする請求項2に記載の酒燗器。
【請求項4】
加熱容器中に温水を収容し、この温水により燗用容器を加熱して前記燗用容器内の液体を所望の燗温度Tに加熱する燗方法において、前記温水を加熱手段により予め定めた所望の燗温度Tに保っておき、前記燗用容器を前記温水中に入れた際に、前記温水の温度が前記所望の燗温度Tよりも2℃〜5℃高い設定温度Tに達するまで前記加熱手段を作動させることを特徴とする燗方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−143808(P2007−143808A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341628(P2005−341628)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】