説明

酒粕入りパン生地およびパンの製造法

【課題】酒粕をパン製造の際の調味添加材として活用した、酒粕入りパン生地およびパンの製造法を提供する。
【解決手段】小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に、酒粕分散液を混入して塊状物を混成し、該塊状物を練り上げ、ねかせ、さらに加温し醗酵させて生成したパン生地を焼き上げて製造する。酒粕を小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散させて主原料に混入してパン生地を生成し、焼き上げてパンAを製造する。酒粕に含まれる酵素を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分が向上し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンAの脹らみを大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒粕入りパン生地およびパンの製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒米を醸造すると相当量(重量比で25%程度)の酒粕が出る。日本酒醸造の際の副産物として得られる酒粕は廃棄されることもあるが、酒粕は酵母菌体、麹菌体、エチルアルコールを始めとするアルコール類、酢酸イソアミル、カブロン酸エチル等の各種エステル類、乳酸,コハク酸、酢酸等の有機酸、ビタミンB群、グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸等を含有する栄養価の高い代謝産物であり健康食品として注目されている。酒粕は食物繊維[米の細胞壁;セルロース(不溶性の食物繊維)]が豊富であり、ビタミン類やアミノ酸などの栄養素も含まれているが、アルコール分の割合もかなりの割合(8%程度)で残っている。また、小麦粉(強力粉)はパンの主原料となるが、「日本食品標準成分表」(五訂増補)によれば、「酒粕」「強力粉」の可食部100g当りの主な成分は表1のとおりである。
【0003】
【表1】

【0004】
酒粕は次のようにして得られる(非特許文献1)。
1.原料玄米を精米し白米とする。
2.白米を浸漬し、蒸きょう(蒸す)する。
3.蒸米で麹を造る。
4.麹、蒸米および水に酵母を添加して酒母を造る
5.酒母、麹、蒸米および水を合わせて醪を仕込む。
醪の中での変化は酵素によるところが大であり、主な変化は次ぎのとおりである。
(1)糖化:[アミラーゼ…]澱粉(蒸米)→糖分
(2)アルコール醗酵:[酵母菌…]糖分→アルコール+炭酸ガス
(3)酸酵母:[酵母菌…]糖分その他→有機酸(乳酸,コハク酸等)
(4)蛋白質の分解:[プロテアーゼ…]蛋白質→ペプチド→アミノ酸→高給アルコール
(5)脂肪の分解:[リパーゼ…]脂肪(蒸米)→グリセリン+脂肪酸→エステル
【0005】
醗酵に酒種を使った「あんぱん」が1874年に銀座「木村家」により案出されている(非特許文献2)。また、酒粕液の中に繊維分解酵素を添加して高速回転で酒粕繊維を微細化処理し、微細化された酒粕液を高圧力下で超微細粒子化と均質化処理を施した酒粕加工品をパンの補助品に使用した発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−68488号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「株式会社産業調査会 事典出版センター」発行の「総合食品安全事典」(初版第1刷:1994年5月12日)第526頁
【非特許文献2】2009年9月21日付「東京新聞」(東京版)朝刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酒粕はアルコール,乳酸等の有機酸が含まれているので細菌感染が少ない。また、酒粕は一年を通して安定供給が可能であり繊維質(食物繊維)が多く含まれており、安価でくせも無く使用量の多寡により味の調整が比較的容易である。しかしながら、酒粕をパン製造の際の調味添加材(補助材)として利用する場合に、
(1)添加量が多すぎると酒粕の味が残り、少ない場合にはパンの嵩が膨らまない等パン製造にはあまり寄与しない、
(2)特許文献1に記載された酒粕加工品は、液状化された酒粕液の中に繊維分解酵素であるセルラーゼを添加して攪拌機と摩砕機を通過させてエマルダー処理して酒粕繊維を摩砕させたものであり、この酒粕加工品をパンの製造に用いても、酒粕中の食物繊維(セルロース)が摩砕されかつセルラーゼで酵素分解されているため、食物繊維が本来持っている有用性(大腸の働きを促す)を発揮することができない、
等の問題点があった。
【0009】
本発明は、繊維質に富むとともに栄養分を豊富に含み安定供給が可能な酒粕を調味添加材として利用することについて鋭意研究を重ねた結果、小麦粉、糖分、油脂、塩、天然のドライイースト(酵母)を含む主原料に、調味添加材である酒粕を小麦粉の重量%に対して3〜8重量%の分量を水に分散させた状態で混入し、パン生地を生成し、焼き上げてパンを製造することにより、焼き上がったパンがソフトでもちもち感があるとともに、パン自体も脹らんで嵩が増してボリューム感があり、しかも酒粕含有酵素によりパン原料が十分に分解されて食した場合に濃味を感じさせ酒粕の味を全く感じさせない酒粕入りパンが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
本発明の目的は、酒粕をパン製造の際の調味添加材として活用し、焼き上がったパンがソフトでもちもち感があるとともにパン自体も脹らんで嵩が増してボリューム感があり、しかも酒粕含有酵素によりパン原料が分解されて食した場合に濃味を感じさせ酒粕の味を全く感じさせない、酒粕入りパン生地およびパンの製造法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、日本酒醸造の際の副産物として安価に得られ安定供給が可能な酒粕を有効に活用できる、酒粕入りパン生地およびパンの製造法を提供することにある。
【0012】
加えるに、本発明の目的は、酒粕をパン製造に用いることにより、酒粕に含まれる多くの酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくできる、酒粕入りパン生地およびパンの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
酒粕入りのパンは、小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に、調味添加材である酒粕を水に分散させた酒粕分散液を混入して塊状物を混成し、該塊状物を練り上げ、ねかせ、さらに加温し醗酵させて生成したパン生地を焼き上げて製造するに際し、酒粕を小麦粉の重量の3〜8重量%、好ましくは3〜5重量%の分量を水に分散させて主原料に混入してパン生地を生成し、焼き上げてパンを製造することにより、酒粕に含まれる酵素を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分が向上し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくすることにより得られる。
【0014】
酒粕入りのパンは、小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に、調味添加材である酒粕を水に分散させた酒粕分散液を混入して塊状物を混成し、該塊状物を練り上げ、ねかせ、さらに加温し醗酵させて生成したパン生地を焼き上げて製造するに際し、酒粕を小麦粉の重量の3〜8重量%、好ましくは3〜5重量%の分量を水に分散させて主原料に混入してパン生地を生成し、焼き上げてパンを製造することにより、酒粕に含まれる酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分が向上し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくすることにより得ることもできる。
【0015】
酒粕を水に分散させた酒粕分散液を生成するに際し、酒粕を小麦粉の重量の3重量%未満とする場合には、焼き上がったパンの表皮が固く、また食すると塩味を感じさせイースト風味となるため、一方、酒粕を小麦粉の重量の8重量%より多くする場合には、アルコール分が多くなりアルコール醗酵が進み、食すると酸味を強く感じさせ酒粕の味がするため、酒粕を混入する割合は小麦粉の重量の3〜8重量%とすることが肝要である。
【0016】
酒粕入りの食パンを製造するに当っては、調味添加材である酒粕を水に分散し酒粕分散液を得る工程と、得られた酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、該塊状物を練り上げて練成物を得る練り工程と、練り工程を経た練成物をねかせるねかし工程と、該ねかし工程を経た練成物を加温し醗酵させてパン生地を得る醗酵工程と、生成したパン生地を焼き上げてパンを得る焼き上げ工程とを少なくとも含み各工程を経て製造されるものであり、酒粕は小麦粉の重量に対して3〜8重量%の分量を水に分散させた酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、焼き上げてパンを製造する。
【0017】
酒粕には、清酒製造時に生成される多くの酵素が含まれている。酒粕をパン製造に用いることにより、酒粕が含む酵素および食物繊維を活用して、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、種々の有機酸、分解された種々の糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)焼き上げたパンがソフトでもちもち感があるとともにパン自体も脹らんで嵩が増してボリューム感があり、しかも酒粕含有酵素によりパン原料が分解されて食した場合に濃味を感じさせ酒粕の味を全く感じさせない、酒粕入りパン生地およびパンの製造法が得られる。
(2)日本酒醸造の際の副産物として安価に得られ安定供給が可能な酒粕を有効に活用できる、酒粕入りパン生地およびパンの製造法が得られる。
(3)酒粕をパン製造に用いることにより、酒粕に含まれる多くの酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくできる、酒粕入りパン生地およびパンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る製造法の実施例のフローダイヤグラムである。
【図2】本発明に係る製造法の作業手順を示す図である。
【図3】本発明により得られた酒粕入りパン(食パン)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施例の説明に先立ち先ず本発明を総括的に説明する。
酒粕入りパンAは、小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に、調味添加材である酒粕を水に分散させて得られた酒粕分散液を混入して塊状物を混成し、該塊状物を練り上げ、ねかせ、さらに加温し醗酵させて生成したパン生地を焼き上げて得られるパンであって、酒粕を小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散した酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、焼き上げてパンを製造することにより得られる。
【0021】
油脂は、パン生地をきめ細かくするとともに柔らかくするために加える。油脂としてバター(有塩バター、無塩バター)、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等を用いることができる。
【0022】
糖分は、パン酵母の栄養分となり醗酵熟成を促すととともに、風味や香り、表皮の焼き色をよくするために加える。糖分として砂糖、黒砂糖、ざらめ、蜂蜜等を用いることができる。
【0023】
加える糖分の割合は小麦粉の重量の4〜7重量%程度混入すればよく、糖分の割合が小麦粉の重量の4重量%程度でもパン生地に酒粕が配合されているため焼き上がったパンの香りはよくソフトであり、ボリューム感のあるパンが得られる。
【0024】
塩分は、味付け、歯ごたえを与えるため、また雑菌の繁殖を防ぐために加える。
【0025】
脱脂粉乳はパンの味や香りをよくする。
【0026】
パン焼きの際の焼成終了(最終)時の温度は170〜200℃が適当である。
【0027】
酒粕を水に分散するに当っては、酒粕に水を加え高速ミキサー、ホモミキサーを用いて分散することができる。
【0028】
酒粕分散液は50〜100メッシュ程度の篩にかけて濾過して得るようにしてもよい。
【0029】
加える水の温度は室温のものを用いることができ、必要に応じて5℃程度の低温の水を用いてもよい。
【0030】
練り工程では材料を練り合わせて生地に粘りをだしてグルテンを生成させる。
【0031】
ねかし工程では生地のグルテンを安定させ、生地をなじませ均一化する。
【0032】
醗酵工程ではパン酵母を活性化させ、炭酸ガスを発生させてパン生地を膨らませる。
【0033】
酒粕入りの食パンAは、副材である酒粕を水に分散させ酒粕分散液を得る工程と、酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、該塊状物を練り上げて練成物を得る工程と、該練成物をねかせるねかし工程と、ねかせた練成物を加温し醗酵させパン生地を生成する醗酵工程と、生成したパン生地を焼き上げてパンを得る焼き上げ工程とを少なくとも含み各工程を経て製造されるものであり、酒粕は小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散した状態で主原料に混入し、酒粕に含まれる酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量してパンの脹らみを大きくする。
【0034】
パン生地は、小麦粉(強力粉)、水、イースト(酵母)、卵、脂肪、塩を含み、これらの原料が混合調整されるとイーストが糖に働きアルコールと炭酸ガスを生成し、さらに生地を捏ねるとグリアジンとグルテニンが結びつき分子が網の目のようにからみあい粘りのあるグルテンが生成される。発生する炭酸ガスはグルテンにより粘りが生じている生地を膨らませる。配合された糖が無くなると醗酵は止まるが、小麦粉に含まれている酵素(アミラーゼ)が、小麦粉中の澱粉を麦芽糖やブドウ糖などの糖に変え醗酵を継続させる。原料中の酵素が無くなると炭酸ガスの生成が止まりパンの大きさも止まる。酵素による糖類の分解の概略は表2のとおりである。
【0035】
【表2】

【0036】
パン生地に酵素を多く含む醗酵食品(酒粕)を混合することにより、色々の役割を持つ酵素が多数供給され澱粉はアミラーゼで糖分に分解され、食物繊維はセルラーゼで糖分に分解され炭水化物に含まれる糖質をエネルギーのもとになるブドウ糖に分解する。
【0037】
天然の酵素は微生物(麹菌、酵母菌)で醗酵された酒粕に豊富に含まれ栄養素が増やされアミノ酸などの物質をつくる。微生物は無機物から必須アミノ酸(バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン、フェニールアラトン、トリプトファン)を造る。
【0038】
麹菌が持っている酵素には澱粉を分解する酵素のアミラーゼや蛋白質を分解する酵素のプロテアーゼがあり、アミラーゼ分解された澱粉がブドウ糖になりブドウ糖が酵母菌の餌になってアルコール醗酵してアルコールおよび炭酸ガス成分を造りだす。酵素は蛋白質からでき蛋白質は20種類のアミノ酸からできている。酵素は一つ一つの役割分担は厳密に決められており、一つの酵素が不足したからといって他の種類の酵素が補うことはできない。
【0039】
酒粕には微生物、酵素で分解され増殖された酵母菌、酵素、種々の栄養素が含まれている。本発明に寄与する主な酵素と各酵素の作用は次ぎのとおりである。
1.アミラーゼ
澱粉を加水分解してオリゴ糖、グルコースを生成する酵素。
2.βアミラーゼ
アミロースをマルトースに分解する酵素。
3.グルカナーゼ
グルコースなどの単糖が多数結合した多糖類の一種グルカンの加水分解反応の触媒となる酵素。
4.イヌリラーゼ
活性酵素の害を防ぐ酵素。
5.インベルターゼ
砂糖をブドウ糖、果糖に分解する炭水化物の分解酵素。
6.カタラーゼ
過酸化水素を分解する酵素。
7.グルコアミラーゼ
αアミラーゼにより分解された澱粉をブドウ糖に分解する酵素。
8.マルターゼ
炭水化物分解酵素の一種で二糖類である麦芽糖(マルトース)を加水分解してブドウ糖、グルコースにする酵素
9.セルラーゼ
食物繊維を加水分解する酵素。ブドウ糖が数個つながったオリゴ糖に分解する。
10.タンナーゼ
タンニン分解酵素。
11.プロテアーゼ
蛋白質をペプチド、アミノ酸まで分解する酵素。
12.リパーゼ
脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する酵素。
【実施例】
【0040】
以下は本発明の実施例についての説明である。
【0041】
パンの製造は市販の自動パン焼き機(パナソニック株式会社製の「ホームベーカリー」品番SD−BT103。以下、本明細書では「パン焼き機」という。)を用いて山形の食パンを製造することにより行なった。
【0042】
このパン焼き機を用いて行なうパンの製造作業の手順は次の1〜10のとおりである(図1および図2参照)。
手順1: パン焼き機の設定条件をセットする。
手順2: パン焼き機の本体蓋を開く。
手順3: 中のパンケースを取り出す。
手順4: ドライイーストを計量しパンケースの底に均等に投入する。その他の主原料である小麦粉(強力粉)、砂糖、粉末油脂、脱脂粉乳、食塩、を計量しパンケースに入れる。
手順5: 別途計量した水に酒粕を計量して入れ酒粕混入液を得る。酒粕混入液をミキサーで分散させ、さらに濾過して得られる酒粕濾過液をパンケースに投入し適宜混合してなじませる。
手順6: パンケースをパン焼き機にセットして蓋を閉める。
手順7: パン焼き機の本体蓋をした後ドライイーストのスイッチを入れ、スタートボタンを押す。ドライイーストのコース条件は次ぎのとおりである。
(ドライイースト4時間コース条件)
(1)練り :ハイ分間
(2)ねかし: 30分間
(3)練り : ハイ8分間
(4)醗酵 : 28℃ 140分間
(5)焼き : 200℃ 40分間
手順8: 焼き上がった後、本体蓋を開きパンケースを取り出す。
手順9: パンケースより焼き上がった食パンを取り出す。
手順10:食パンを室温に置きあら熱を取る。
【0043】
実施例1〜6に、調味添加材である酒粕を分散させる水の水温を28℃とし、酒粕の分量を異ならせた配合例を示す。主原料、水、調味添加材の分量は表3に示すとおりである。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例7に、原材料の分量を実施例2と同じとし酒粕を分散させる水の水温を20℃とした配合例を示す。主原料、水、調味添加材の分量は表4に示すとおりである。
【0046】
【表4】

【0047】
実施例8に、酒粕を分散させる水の水温を20℃とし、加える糖分の分量を小麦粉の4重量%(10g)として糖分をひかえ目にし、その他の原材料の分量は実施例2と同じとした配合例を示す。主原料、水、調味添加材の分量は表5に示すとおりである。後記の表8に示すとおり,酒粕を加えることにより糖分(砂糖)減らしても、食パンの評価と食パンの高さの点で、実施例1〜7と同程度のものが得られた。
【0048】
【表5】

【比較例】
【0049】
以下に実施例と配合を異ならせた比較例を示す。
比較例1〜5に、主原料、水の分量を実施例1〜6と同じとし調味添加材である酒粕の分量を実施例1〜6と異ならせ、実施例と同じ「パン焼き機」を用いて山形の食パンを製造した配合例を示す。主原料、水、調味添加材の分量は表6に示すとおりである。
【0050】
【表6】

【0051】
実施例1〜8に小麦粉の分量を250gとし酒粕を適量とする配合例を示したが、比較例6〜13に、酒粕を一切加えず小麦粉の分量を260g〜330gと実施例2に比べ10gずつ増量し、小麦粉を100とした場合の小麦粉の重量に対する他の原材料の混合重量%を実施例2と同じとして、実施例と同じ「パン焼き機」を用いて山形の食パンを製造した例を示す。主原料、水、調味添加材の分量は表7-1、表7-2に示すとおりである。
【0052】
【表7−1】

【0053】
【表7−2】

【0054】
実施例1〜8、比較例1〜5の配合分量により同一の温度により焼き上げた食パンを食した時の味の評価(味の特徴等)、および得られた食パンの高さHを測定して表8-1、表8-2に示す。
【0055】
【表8−1】

【0056】
【表8−2】

【0057】
比較例6〜13の各配合割合により製造し得られた食パンの高さHと、食パン(パン生地)1個あたりの製造単価を実施例2と比較して表9に示す。比較例6〜13において、小麦粉の分量を増やせば得られる食パンのボリュームは膨らむことが認められるが製造単価は上がる。実施例2によれば17.5cmの高さの食パンが、また比較例12によれば17.2cmの高さの食パンがそれぞれ得られるが、比較例12の製造単価は実施例2の製造単価の1.23倍となる。
【0058】
【表9】

【符号の説明】
【0059】
A 食パン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
調味添加材である酒粕を水に分散し酒粕分散液を得る工程と、
得られた酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、
該塊状物を練り上げて練成物を得る練り工程と、
練り工程を経た練成物をねかせるねかし工程と、
該ねかし工程を経た練成物を加温し醗酵させてパン生地を得る醗酵工程とを少なくとも含み、
酒粕は小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散させた酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、酒粕に含まれる酵素を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量し、焼き上げてパンの脹らみを大きくできる、酒粕入りパン生地の製造法。

【請求項2】
調味添加材である酒粕を水に分散し酒粕分散液を得る工程と、
得られた酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、
該塊状物を練り上げて練成物を得る練り工程と、
練り工程を経た練成物をねかせるねかし工程と、
該ねかし工程を経た練成物を加温し醗酵させてパン生地を得る醗酵工程とを少なくとも含み、
酒粕は小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散させた酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、酒粕に含まれる酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量し、焼き上げてパンの脹らみを大きくできる、酒粕入りパン生地の製造法。

【請求項3】
調味添加材である酒粕を水に分散し酒粕分散液を得る工程と、
得られた酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、
該塊状物を練り上げて練成物を得る練り工程と、
練り工程を経た練成物をねかせるねかし工程と、
該ねかし工程を経た練成物を加温し醗酵させてパン生地を得る醗酵工程と、
生成したパン生地を焼き上げてパンを得る焼き上げ工程とを少なくとも含み、各工程を経て製造されるものであり、
酒粕は小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散させた酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、酒粕に含まれる酵素を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量し、焼き上げてパンの脹らみを大きくする、酒粕入りパンの製造法。

【請求項4】
調味添加材である酒粕を水に分散し酒粕分散液を得る工程と、
得られた酒粕分散液を小麦粉、糖分、油脂、塩、ドライイーストを含む主原料に混入して塊状物を混成する工程と、
該塊状物を練り上げて練成物を得る練り工程と、
練り工程を経た練成物をねかせるねかし工程と、
該ねかし工程を経た練成物を加温し醗酵させてパン生地を得る醗酵工程と、
生成したパン生地を焼き上げてパンを得る焼き上げ工程とを少なくとも含み、各工程を経て製造されるものであり、
酒粕は小麦粉の重量の3〜8重量%の分量を水に分散させた酒粕分散液の状態で主原料に混入してパン生地を生成し、酒粕に含まれる酵素および食物繊維を活用し、パン生地醗酵時に分解生成されるアルコール、アミノ酸、有機酸、糖類により旨味成分を引き出し、酵素により分解された糖類が酵母菌の増殖を活発にしてアルコール、炭酸ガスを増量し、焼き上げてパンの脹らみを大きくする、酒粕入りパンの製造法。

【請求項5】
前記酵素が、アミラーゼ、βアミラーゼ、グルカナーゼ、イヌリラーゼ、インベルターゼ
、カタラーゼ、グルコアミラーゼ、マルターゼ、セルラーゼ、タンナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの群から選ばれたものである請求項1または2記載の酒粕入りパン生地の製造法。

【請求項6】
前記酵素が、アミラーゼ、βアミラーゼ、グルカナーゼ、イヌリラーゼ、インベルターゼ
、カタラーゼ、グルコアミラーゼ、マルターゼ、セルラーゼ、タンナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの群から選ばれたものである請求項3または4記載の酒粕入りパンの製造法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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